説明

機器の異常診断システム

【課題】監視対象機器の種類や数量に因らず、複数のプラントにまたがる機器の異常診断の運用を1つのシステムで実現可能な機器の異常診断システムを得ること。
【解決手段】監視対象である複数の機器またはその近辺に配置され、前記複数の機器に関する情報をセンシングして複数のセンサ情報を生成する複数のセンサ部と、前記複数の機器またはその近辺に配置され、前記複数のセンサ情報をデジタル化処理して一時保存する一時保存部と、前記機器またはその近辺に配置され、一時保存した前記複数のセンサ情報を送信する通信部と、移動可能に設けられ、前記一時保存部から送信された前記複数のセンサ情報を受信して記憶する移動式記憶部と、前記移動式記憶部に記憶された前記複数センサ情報を取り込んで解析し、前記機器の異常を診断する解析部と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は変電所等に代表される、通常は無人で運転されている機器(以下、監視対象機器)の異常を診断するシステムにおける機器の異常診断システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、監視対象機器の状態を診断するための技術(異常診断システム)が提案されている。このようなシステムとしては、たとえば各種情報を得るためのセンサを配置した検出器、これら検出量を処理し、異常値の判定及び一部の診断を行いその結果を上位の診断装置に伝送する現地盤、ここからの信号を遠隔地へ送るための伝送部、送られた信号を処理し総合診断を行う本館盤より構成され、監視対象機器に設置したセンサの信号を現地盤に内蔵した信号処理装置で所定の処理を行い、伝送部にて処理を行い、さらに本館盤に情報を転送して追加の処理,データ収納,人間への情報表示を行うものがある(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
また、監視対象機器に設置したセンサの情報を収集するセンサブロックと、センサの信号を解析するデータ処理ブロックを備え、両ブロックの間を通信でつなぐことによって監視対象機器の運転状態を監視するものがある(たとえば、特許文献2参照)。
【0004】
【特許文献1】特開平7−49362号公報、図1
【非特許文献1】特開平8−289376号公報、図1
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来の技術によれば、監視対象機器に設置したセンサ情報を当該機器専用の信号処理システムで信号処理する構成とされていたり、信号処理ブロックもしくは盤間の情報伝送に専用の通信システムを設置している。このため、数多くのプラントで機器の監視を行うためには、それぞれの監視対象機器に専用のシステムを配置する必要があった。また、温度、水位、油面、機器動作回数などの情報量が少なく簡単な処理しか必要としない監視項目に対しても同じシステム構成を取っていた。このため、数多くのプラントにおいてこの技術を活用するためには膨大な数の監視システムを必要とし、費用面や監視システムの保守面において大きな課題となっていた。
【0006】
また、上記のような従来のシステムでは、監視対象機器の増設等によりセンサの数が増加した場合には、同じ情報処理アルゴリズムを持つ情報処理システムをリピート増設すると共に、これら増設分のデータを含めて一つの新しいシステムとして機能させるために、システム統括制御ソフトウェアを新しく作り変える必要があり、コスト面や納期面で大きな制約となっていた。
【0007】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、監視対象機器の種類や数量に因らず、複数の機器やプラントにまたがる異常診断の解析、運用を1つのシステムで実現可能な機器の異常診断システムを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明にかかる機器の異常診断システムは、監視対象である複数の機器に関する情報を取得して該情報に基づいて前記機器の異常を診断する機器の異常診断システムであって、前記複数の機器またはその近辺に配置され、前記複数の機器に関する情報をセンシングして複数のセンサ情報を生成する複数のセンサ部と、前記複数の機器またはその近辺に配置され、前記複数のセンサ情報をデジタル化処理して一時保存する一時保存部と、前記機器またはその近辺に配置され、一時保存した前記複数のセンサ情報を送信する通信部と、移動可能に設けられ、前記一時保存部から送信された前記複数のセンサ情報を受信して記憶する移動式記憶部と、前記移動式記憶部に記憶された前記複数センサ情報を取り込んで解析し、前記機器の異常を診断する解析部と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
この発明によれば、現場の監視対象機器に設置する装置を最小限とし、且つ監視対象機器から収集したセンサ情報は共用の1つの計算機に入力して解析させることで、複数の監視対象機器やプラントにまたがる異常診断の解析、運用を1つのシステムで実現することができる。これにより、現場の監視対象機器やプラントには簡素且つ最低限の設備を配置するだけで、監視対象機器やプラントの数に関わらず、センサ情報の統括管理が可能となる、という効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下に、本発明にかかる機器の異常診断システムの実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、本発明は以下の記述に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。
【0011】
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1にかかる機器の異常診断システムにより監視対象である機器(以下、監視対象機器と呼ぶ。)の異常診断を行うための情報収集の概念を模式的に示した図である。
【0012】
図1に示すように、本実施の形態にかかる機器の異常診断システムは、監視対象機器Mの一部に設置したセンサ1aと、監視対象機器Mの他の一部に設置したセンサ1bと、監視対象機器Mのさらに他の一部に設置したセンサ1cと、を備える。センサ1a、1b、1cは、それぞれ目的の情報を監視項目別に予め設定された所定のインターバルで監視対象機器Mからセンシングして、センサ情報を生成する(これらのセンサ1a、1b、1cは、請求項のセンサ部に対応する。)。
【0013】
なお、センサ1a、1b、1cは、それぞれ監視対象機器Mに直接接触して設けられても良く、センシングする情報の内容により監視対象機器Mの近辺に配置されても良い。
【0014】
センサ1aには、該センサ1aのセンサ情報をデジタル化して一時保存するAD(analog to digital translation:アナログ−デジタル)モジュール2aが信号ケーブル4aにより接続されている。同様に、センサ1bには、該センサ1bのセンサ情報をデジタル化して一時保存するADモジュール2bが信号ケーブル4bにより接続されている。同様に、センサ1cには、該センサ1cのセンサ情報をデジタル化して一時保存するADモジュール2cが信号ケーブル4cにより接続されている。
【0015】
なお、ADモジュール2a、2b、2cは、それぞれセンサ1a、1b、1cの極近傍に配置されても良く、また、監視対象機器Mの構造等の関係により、センサ1a、1b、1cからある程度離間した場所に配置されても良い。これらのADモジュール2a、2b、2cは、請求項における一時保存部としての機能を有する。
【0016】
また、ADモジュール2aには、ADモジュール2aに一次保存された情報を近距離通信するためにアンテナを含めた通信装置3aが設けられている。同様に、ADモジュール2bには、ADモジュール2bに一次保存された情報を近距離通信するためにアンテナを含めた通信装置3bが設けられている。同様に、ADモジュール2cには、ADモジュール2cに一次保存された情報を近距離通信するためにアンテナを含めた通信装置3cが設けられている。これらの通信装置3a、3b、3cは、請求項における通信部に対応する。
【0017】
そして、ADモジュール2a、2b、2cは、それぞれ通信装置3a、3b、3cを介して、通信器を備えたデータロガー5と無線で通信を行うことができる。ここで、データロガー5は、移動可能に設けられ、ADモジュール2a、2b、2cから送信されたセンサ情報を受信して記憶する小型の記録計(移動式記憶部)である。データロガー5は、温度、湿度、照度、振動、電圧や電流など、種々のセンサが出力するデータを取り込んで任意の時間ごとにデータを表示、記録、蓄積、解析し、専用の計算機やパソコン等の計算機に出力することができる。このデータロガー5は、請求項における移動式記憶部に対応する。
【0018】
また、たとえばプラントの制御拠点(制御室)等には、データロガー5に記憶されたセンサ情報を取り込んで監視項目別の解析処理等を行い、機器の異常を診断する解析装置10を有する。この解析装置10は、種々のセンサ情報に対応しており、1台で種々のセンサ情報を解析することが可能である(この解析装置10は、請求項における解析部に対応する。)。
【0019】
次に、本実施の形態にかかる機器の異常診断システムの動作について説明する。図1においてセンサ1a、1b、1cは、それぞれ目的の情報を監視項目別に予め設定された所定のインターバルで監視対象機器Mからセンシングする。センサ1a、1b、1cが監視対象機器Mに関する情報をセンシングして生成したセンサ情報は、それぞれ信号ケーブル4a、4b、4cを介してADモジュール2a、2b、2cに送信される。
【0020】
ADモジュール2a、2b、2cは、それぞれセンサ1a、1b、1cからセンサ情報を受信すると、該センサ情報をAD変換する。ADモジュール2a、2b、2cは、それぞれAD変換したセンサ情報を該ADモジュール2a、2b、2c内に備えるメモリーにそれぞれ一時収納する同時に、過去に蓄積した情報と合わせてそれぞれ通信装置3a、3b、3cを介して無線通信で発信する。
【0021】
かかる状態にて監視対象機器M近傍に通信器を備えたデータロガー5がADモジュール2a、2b、2cに接近し、ADモジュール2a、2b、2cとの通信領域内に入ると、該データロガー5はADモジュール2a、2b、2cが発信したセンサ情報を受信し、自装置内に格納する。これにより、センサ1a、1b、1cにおいてセンシングされ、ADモジュール2a、2b、2cに蓄積されたセンサ情報はデータロガー5に収納される。データロガー5は、たとえば自動の移動装置等によりADモジュール2a、2b、2cとの通信領域内に移動することが可能である。なお、検査時等において、作業員がデータロガー5を持って巡回することでも、データロガー5をADモジュール2a、2b、2cとの通信領域内に移動させることは可能である。
【0022】
ここで、ADモジュール2a、2b、2cからデータロガー5に転送されるセンサ情報は、センサ1a、1b、1cにおいてセンシングされて生成された情報をAD変換しただけの情報であり、AD変換以外の特別な変換や解析等は行われていない。すなわち、ADモジュール2a、2b、2cではAD変換およびセンサ情報の送信という、簡便な処理のみを行っている。
【0023】
本実施の形態にかかる機器の異常診断システムは、上記のような動作を行うことにより、データロガー5がADモジュール2a、2b、2cとの通信領域内に位置するだけで、センサ1a、1b、1cによりセンシングした監視対象機器Mのセンサ情報の全てを、順次データロガー5に収納、記憶することができる。すなわち、たとえば自動の移動装置によりADモジュール2a、2b、2cの通信領域内にデータロガー5を移動させることで、センサ1a、1b、1cによりセンシングした監視対象機器Mのセンサ情報の全てを、順次データロガー5に収納することができる。なお、検査時等において、作業員がADモジュール2a、2b、2cの通信領域内にデータロガー5を持って巡回することでも、センサ1a、1b、1cによりセンシングした監視対象機器Mのセンサ情報の全てを、順次データロガー5に収納することは可能である。
【0024】
そして、データロガー5が複数の監視対象機器Mまたはプラントを巡回することにより、複数の監視対象機器Mのセンサ情報を全てデータロガー5に記憶することができる。
【0025】
また、ADモジュール2a、2b、2cからのセンサ情報の送信は常に行われている。データロガー5は、ADモジュール2a、2b、2cからのセンサ情報の情報転送(受信)が完了した場合には、該センサ情報の転送確認応答であるアクノレッジ信号をADモジュール2a、2b、2cに対して送信する。そして、ADモジュール2a、2b、2cは、データロガー5から送信されたアクノレッジ信号を受信することで、データロガー5への該センサ情報の情報転送が完了したことを確認することができる。これにより、ADモジュール2a、2b、2cでは、保存している過去の情報を消去し、次回の巡回(センサ情報の転送)までの間のデータ蓄積用のメモリー空間を確保することが可能となる。
【0026】
データロガー5に記憶した全てのまたは所望の監視対象機器Mのセンサ情報は、解析装置10に取り込まれる。データロガー5から解析装置10へのセンサ情報の転送は、無線通信でも良くまた有線通信でも良い。また、解析装置10が、解析装置10と共通仕様の取り外し可能な記録媒体を備える場合は、これを用いても良い。
【0027】
そして、解析装置10は、データロガー5から取り込んだセンサ情報に対して、監視項目別の解析処理等を行い、機器の異常を診断する。その処理結果は、解析装置10が備える出力装置、たとえばディスプレイやプリンターなどに出力される。
【0028】
上述したように、実施の形態1にかかる機器の異常診断システムにおいては、監視対象機器Mやプラントには、センシングを行ってセンサ情報を生成するセンサ1a、1b、1cと、およびセンサ情報の簡単な変換及び情報保存を行うADモジュール2a、2b、2cと、そのセンサ情報を近距離無線などの手段で送信する通信装置3a、3b、3cと、のみを配置する。そして、ADモジュール2a、2b、2cに一時保存したセンサ情報は、移動式記憶部であるデータロガー5によって簡易に収集されて、監視対象機器Mやプラントから離れた位置に配置されている解析装置10に取り込まれ、監視項目別の解析処理等が行われる。
【0029】
このような本実施の形態にかかる機器の異常診断システムによれば、現場の監視対象機器Mに設置する装置を最小限とし、且つ監視対象機器Mから収集したセンサ情報は共用の1つの計算機に入力して解析させることで、監視対象機器の種類や数量に因らず、複数の監視対象機器Mやプラントにまたがる解析、運用を1つのシステムで実現できる。すなわち、本実施の形態にかかる機器の異常診断システムによれば、現場の監視対象機器Mやプラントには簡素且つ最低限の設備を配置するだけで、監視対象機器Mやプラントの数に関わらず、センサ情報の統括管理が可能となり、また監視対象機器の増設等によりセンサの数が増加した場合においても、計算機の処理機能を新しく作り変える必要が無く、費用面や納期面や監視システムの保守面において優れたシステムが実現されている。
【0030】
なお、上記においては、無線通信によりADモジュール2a、2b、2cとのデータロガー5との通信に無線通信を用いた場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、ADモジュール2a、2b、2cとのデータロガー5との通信に有線による通信を用いることも可能である。
【0031】
実施の形態2.
上述した実施の形態1においては、通信装置3a、3b、3cからのセンサ情報の送信は常に行われており、データロガー5からのアクノレッジ信号が確認された時点でメモリーが消去されて新しい情報の蓄積が始まる。実施の形態2では、実施の形態1にかかる機器の異常診断システムにおいて情報のセキュリティの向上と省電力化を図った実施の形態について説明する。
【0032】
図2は、本発明の実施の形態2にかかる機器の異常診断システムにより監視対象である機器(以下、監視対象機器と呼ぶ。)の異常診断を行うための情報収集の概念を模式的に示した図である。
【0033】
図2に示すように、実施の形態2にかかる機器の異常診断システムは、通信装置3a、3b、3cの代わりにセキュリティ型通信装置6a、6b、6cを備え、さらに、データロガー5側にICタグ7を備えること以外は、実施の形態1にかかる機器の異常診断システムと同じ構成を有する。すなわち、実施の形態2にかかる機器の異常診断システムは、監視対象機器Mの一部に設置したセンサ1a、1b、1cと、ADモジュール2a、2b、2cと、信号ケーブル4a、4b、4cと、セキュリティ型通信装置6a、6b、6cと、ICタグ7と、を備える。なお、実施の形態1にかかる機器の異常診断システムと同じ構成については、同じ符号を付すことで詳細な説明は省略する。
【0034】
ICタグ7には、セキュリティ型通信装置6a、6b、6cとの通信が許可されたICタグのみに与えられる登録情報としてのIDが予め登録がされている。セキュリティ型通信装置6a、6b、6cは、通常はセンサ情報の発信を行っていない。セキュリティ型通信装置6a、6b、6cは、通常は通信部の電源がオフされており、ICタグ7との交信のみを行うように設定されている。セキュリティ型通信装置6a、6b、6cは、それぞれ自装置との通信が許可されたIDが登録されたICタグ7から通信を受信することにより、自装置との通信が許可されたデータロガー5が近距離通信範囲内に到着したことを認知する。
【0035】
そして、セキュリティ型通信装置6a、6b、6cは、通信部の電源をオンにしてデータロガー5との通信を開始し、ADモジュール2a、2b、2cに一時保存したセンサ情報をデータロガー5に送信する。データロガー5を自動で移動させるため移動装置によりADモジュール2a、2b、2cの通信領域内にデータロガー5を移動させる場合、ICタグ7をこの移動装置に配置しても良い。なお、検査時等において、作業員がADモジュール2a、2b、2cの通信領域内にデータロガー5を持って巡回する場合、作業員がICタグ7を保持しても同様に動作する。
【0036】
このように、センサ情報の収集を許可されたデータロガー5にのみ予め所定のIDが登録され、該データロガー5がセキュリティ型通信装置6a、6b、6cとの通信範囲内に入った時にのみ、セキュリティ型通信装置6a、6b、6cがデータロガー5との通信を行うことで、センサ情報の収集に関して物理的にセキュリティが確保される。また、セキュリティ型通信装置6a、6b、6cは、所定のIDが登録されたデータロガー5が自装置の通信範囲内に入った時以外の状態では通信部の電源をオフとすることで、省電力も同時に実現することができる。
【0037】
次に、本実施の形態にかかる機器の異常診断システムの動作について説明する。図2においてセンサ1a、1b、1cは、それぞれ目的の情報を監視項目別に予め設定された所定のインターバルで監視対象機器Mからセンシングする。センサ1a、1b、1cが監視対象機器Mに関する情報をセンシングして生成したセンサ情報は、それぞれ信号ケーブル4a、4b、4cを介してADモジュール2a、2b、2cに送信される。
【0038】
ADモジュール2a、2b、2cは、それぞれセンサ1a、1b、1cからセンサ情報を受信すると、該センサ情報をAD変換する。ADモジュール2a、2b、2cは、それぞれAD変換したセンサ情報を該ADモジュール2a、2b、2c内に備えるメモリーにそれぞれ一時収納する。ここで、本実施の形態においては、この時点ではセンサ情報は送信しない。
【0039】
かかる状態にて監視対象機器M近傍にセンサ情報の収集を許可されたデータロガー5、すなわち所定のIDが登録された該データロガー5がセキュリティ型通信装置6a、6b、6cとの通信範囲内に入ると、該データロガー5はセキュリティ型通信装置6a、6b、6cに対してIDとともに通信要求を送信する。セキュリティ型通信装置6a、6b、6cは、データロガー5から送信されたIDを受信するとIDを確認する。受信したIDが予め自装置に登録されているIDであった場合のみ、セキュリティ型通信装置6a、6b、6cは自装置の通信部の電源をオンにしてデータロガー5との通信を開始し、ADモジュール2a、2b、2cに一時保存したセンサ情報をデータロガー5に送信する。
【0040】
ここで、ADモジュール2a、2b、2cからデータロガー5に転送されるセンサ情報は、センサ1a、1b、1cにおいてセンシングされて生成された情報をAD変換しただけの情報であり、AD変換以外の特別な変換や解析等は行われていない。すなわち、ADモジュール2a、2b、2cではAD変換およびセンサ情報の送信という、簡便な処理のみを行っている。
【0041】
本実施の形態にかかる機器の異常診断システムは、上記のような動作を行うことにより、データロガー5がADモジュール2a、2b、2cとの通信領域内に位置するだけで、センサ1a、1b、1cによりセンシングした監視対象機器Mのセンサ情報の全てを、順次データロガー5に収納、記憶することができる。
【0042】
また、センサ情報の収集を許可された、所定のIDが登録されたデータロガー5とのみセキュリティ型通信装置6a、6b、6cが通信を行うことで、センサ情報の収集に関して物理的にセキュリティが確保されている。また、セキュリティ型通信装置6a、6b、6cは、所定のIDが登録されたデータロガー5が自装置の通信範囲内に入った時以外の状態では通信部の電源をオフとすることで、省電力も同時に実現されている。
【0043】
そして、データロガー5が複数の監視対象機器Mまたはプラントを巡回することにより、複数の監視対象機器Mのセンサ情報を全てデータロガー5に記憶することができる。
【0044】
また、データロガー5は、ADモジュール2a、2b、2cからのセンサ情報の情報転送(受信)が完了した場合には、該センサ情報の転送確認応答であるアクノレッジ信号をADモジュール2a、2b、2cに対して送信する。そして、ADモジュール2a、2b、2cは、データロガー5から送信されたアクノレッジ信号を受信することで、データロガー5への該センサ情報の情報転送が完了したことを確認することができる。これにより、ADモジュール2a、2b、2cでは、保存している過去の情報を消去し、次回の巡回(センサ情報の転送)までの間のデータ蓄積用のメモリー空間を確保することが可能となる。
【0045】
データロガー5に記憶した全てのまたは所望の監視対象機器Mのセンサ情報は、解析装置10に取り込まれる。そして、解析装置10は、データロガー5から取り込んだセンサ情報に対して、監視項目別の解析処理等を行い、機器の異常を診断する。その処理結果は、解析装置10が備える出力装置、たとえばディスプレイやプリンターなどに出力される。
【0046】
上述したように、実施の形態2にかかる機器の異常診断システムにおいては、監視対象機器Mやプラントには、センシングを行ってセンサ情報を生成するセンサ1a、1b、1cと、およびセンサ情報の簡単な変換及び情報保存を行うADモジュール2a、2b、2cと、そのセンサ情報を近距離無線などの手段で送信する通信装置6a、6b、6cと、のみを配置する。そして、ADモジュール2a、2b、2cに一時保存したセンサ情報は、移動式記憶部であるデータロガー5によって簡易に収集されて、監視対象機器Mやプラントから離れた位置に配置されている解析装置10に取り込まれ、監視項目別の解析処理等が行われる。
【0047】
したがって、本実施の形態にかかる機器の異常診断システムによれば、現場の監視対象機器Mに設置する装置を最小限とし、且つ監視対象機器Mから収集したセンサ情報は共用の1つの計算機に入力して解析させることで、監視対象機器の種類や数量に因らず、複数の監視対象機器Mやプラントにまたがる解析、運用を1つのシステムで実現できる。これにより、現場の監視対象機器Mやプラントには簡素且つ最低限の設備を配置するだけで、監視対象機器Mやプラントの数に関わらず、センサ情報の統括管理が可能となる。
【0048】
また、本実施の形態にかかる機器の異常診断システムにおいては、センサ情報の収集を許可されたデータロガー5にのみ予め所定のIDが登録され、該データロガー5がセキュリティ型通信装置6a、6b、6cとの通信範囲内に入った時にのみ、セキュリティ型通信装置6a、6b、6cがデータロガー5との通信を行う。これにより、センサ情報の収集に関して物理的にセキュリティを確保することができる。さらに、セキュリティ型通信装置6a、6b、6cは、所定のIDが登録されたデータロガー5が自装置の通信範囲内に入った時以外の状態では通信部の電源をオフとすることで、省電力も同時に実現することができる。
【0049】
なお、上記においては説明の都合上、図1、図2において監視対象機器Mにセンサを設置することにしたが、工業用テレビジョン(ITV:Industrial Television)カメラに代表される非接触センサは機器に取り付ける必要は無い。また、変圧器の二次出力監視等で特別のセンサを必要とせずに電気信号で情報が取れることもある。ADモジュール2a、2b、2cについても、たとえばリミットスイッチ接点のようにAD変換器を経由せずともデジタル情報が収集できることもある。さらには、通信装置3a、3b、3cおよびセキュリティ型通信装置6a、6b、6cで利用される近距離通信部は、BLUE−TOOTHに代表される電波通信、IR(infrared rays)通信に代表される光空間通信、超音波通信に代表される音波通信等、各種の手段が利用可能であり、これら手段の差や組み合わせの差異は本発明の請求の範囲を越える物ではない。
【産業上の利用可能性】
【0050】
以上のように、本発明にかかる機器の異常診断システムは、複数の種類や数量の監視対象機器の種類や数量に因らず、複数の機器やプラントにまたがる異常診断の運用に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の実施の形態1にかかる機器の異常診断システムにおける情報収集の概念を模式的に示す図である。
【図2】本発明の実施の形態2にかかる機器の異常診断システムにおける情報収集の概念を模式的に示す図である。
【符号の説明】
【0052】
1a センサ
1b センサ
1c センサ
2a ADモジュール
2b ADモジュール
2c ADモジュール
3a 通信装置
3b 通信装置
3c 通信装置
4a 通信ケーブル
4b 通信ケーブル
4c 通信ケーブル
5 データロガー
6a セキュリティ型通信装置
6b セキュリティ型通信装置
6c セキュリティ型通信装置
7 ICタグ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
監視対象である複数の機器に関する情報を取得して該情報に基づいて前記機器の異常を診断する機器の異常診断システムであって、
前記複数の機器またはその近辺に配置され、前記複数の機器に関する情報をセンシングして複数のセンサ情報を生成する複数のセンサ部と、
前記複数の機器またはその近辺に配置され、前記複数のセンサ情報をデジタル化処理して一時保存する一時保存部と、
前記機器またはその近辺に配置され、一時保存した前記複数のセンサ情報を送信する通信部と、
移動可能に設けられ、前記一時保存部から送信された前記複数のセンサ情報を受信して記憶する移動式記憶部と、
前記移動式記憶部に記憶された前記複数センサ情報を取り込んで解析し、前記機器の異常を診断する解析部と、
を備えることを特徴とする機器の異常診断システム。
【請求項2】
前記通信部は、自通信部との通信が予め許可されている移動式記憶部とのみ通信を行うこと、
を特徴とする請求項1に記載の機器の異常診断システム。
【請求項3】
前記通信部は、通常時は自装置の通信部の電源をオフの状態にしており、自通信部との通信が予め許可されている移動式記憶部にのみ与えられる登録情報を受信した場合にのみ自装置の通信部の電源をオンの状態にして前記一時保存した前記センサ情報を送信すること、
を特徴とする請求項2に記載の機器の異常診断システム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−293132(P2008−293132A)
【公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−135884(P2007−135884)
【出願日】平成19年5月22日(2007.5.22)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】