説明

機材の取付構造

【課題】構造母体への機材の取り付けや取り外しを容易かつ迅速に行うことができ、しかも、専用工具を使わずとも機材をガタ付き無くしっかりと構造母体へ固定することができる機材の取付構造を提供すること。
【解決手段】構造母体の機材取付部13の取付軸31を対向面41a,41a間に挟む一対の弾性アーム部41,41には、対向面41a,41aに形成されて取付軸31が嵌合することで割り込み時の撓みを戻す軸係合凹部48と、該軸係合凹部48の周囲に設けられて当該弾性アーム部41,41の可撓性を高める肉抜き孔46と、肉抜き孔46に着脱可能に嵌合装着されて前記肉抜き孔46を埋めることで弾性アーム部41,41の剛性を向上させる孔埋めピン47と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の車体等の構造母体に対して、電子部品等を収容した電気接続箱、電子制御装置、オーディオ関連機器などの機材を固定する機材の取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車では、車体等の構造母体に対して、電子部品等を収容した電気接続箱、電子制御装置、オーディオ関連機器などの各種の機材を取り付けている。
【0003】
従来、このような機材を構造母体に固定する機材の取付構造としては、機材に一体装備した取付用フランジ部にねじ挿通孔を設けておいて、構造母体にボルトやナットで締結する構成のものが普及していた。
【0004】
しかし、ボルトやナットによる締結作業には手間がかかり、機器を簡単に着脱することができないという問題があった。
【0005】
また、近年では、車両の廃棄処分時には、資源の再利用等のために、車両に取り付けられている機器を取り外して回収することが行われているが、前述したボルトやナットで締結する構成の取付構造の場合は、取り外し作業に手間がかかり、機器の回収が効率良くできないという問題もあった。
【0006】
そこで、機材の取り付けや取り外しを容易にすることのできる機材の取付構造として、図8に示す機材の取付構造が提案されている。
【0007】
図8の機材の取付構造は、下記特許文献1に開示されたもので、機材4に装備された取付用の板部材1は、ボルト挿通孔2の周囲に、ボルトを径方向に抜き差し可能な切り離し部3を設けた構成になっている。
【0008】
切り離し部3には、開口幅L1がボルト挿通孔2の内径よりも小さくなるように、係止片5が突設されている。
【0009】
係止片5は、ボルト挿通孔2を挿通しているボルトが不用意に切り離し部3から抜けることを防止する一方、機材4の取り外し時には、ボルトやナットの締結を緩めた状態で、板部材1が図8の矢印A方向に引っ張られると、係止片5が撓んで、簡単にボルトが切り離し部3から抜けるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2004−066852号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところが、特許文献1に示された機材の取付構造は、ボルト及びナットによる締結力で固定することを前提としたもので、取り付け時にはボルト及びナットの締め付け操作が必要となり、また、取り外し時にも、ボルト及びナットの締結を緩める作業が必要となり、機材の取り付けや取り外しを更に容易にする改善が望まれていた。
【0012】
また、ボルト及びナットによる上記の取付構造では、機材をガタ付き無くしっかりと固定するには、ボルト及びナットの締め付けトルクを正確に管理する必要があり、締め付けトルクの管理等のために専用工具の使用が必要になるなどの問題も生じた。
【0013】
そこで、本発明の目的は上記課題を解消することに係り、構造母体への機材の取り付けや取り外しを容易かつ迅速に行うことができ、しかも、専用工具を使わずとも機材をガタ付き無くしっかりと構造母体へ固定することができる機材の取付構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の前述した目的は、下記の構成により達成される。
(1)構造母体の機材取付部と、前記機材取付部に取り付けられる機材に装備されて前記機材取付部との結合を果たす母体取付部とから構成される機材の取付構造であって、
前記機材取付部は、取付軸と、この取付軸に固定装備されて前記取付軸に取り付けられた前記母体取付部の軸方向の移動を規制する一対の挟持板部とを備え、
前記母体取付部は、前記取付軸の外径よりも狭い離間間隔で対向配置されて互いに離反する方向の撓み変形により対向面間に前記取付軸を割り込ませることが可能な一対の弾性アーム部と、各弾性アーム部に一体形成されて前記一対の弾性アーム部の対向面間に前記取付軸が係合するときに前記一対の挟持板部に挟持される被挟持部とを備え、
前記弾性アーム部には、前記対向面に形成されて前記取付軸が嵌合することで割り込み時の撓みを戻す軸係合凹部と、該軸係合凹部の周囲に設けられて当該弾性アーム部の可撓性を高める肉抜き孔と、前記肉抜き孔に着脱可能に嵌合装着されて前記肉抜き孔を埋めることで前記弾性アーム部の剛性を向上させる孔埋めピンとが備えられたことを特徴とする機材の取付構造。
【0015】
(2)前記被挟持部は、厚み寸法が前記一対の挟持板部間の間隔よりも小さく設定されて前記一対の挟持板部間に挿入される本体部と、前記一対の挟持板部間の間隔と前記本体部との寸法差よりも大きな高さ寸法で前記本体部に隆起形成されて、前記本体部と一緒に前記一対の挟持板部間に挿入される潰しリブと、を備え、
前記潰しリブは、前記一対の挟持板部間に挿入された時に一部が潰れて前記一対の挟持板部と前記本体部との間の隙間を無くすことを特徴とする上記(1)に記載の機材の取付構造。
【0016】
(3)構造母体の機材取付部と、前記機材取付部に取り付けられる機材に装備されて前記機材取付部との結合を果たす母体取付部とから構成される機材の取付構造であって、
前記機材取付部は、取付軸と、この取付軸に固定装備されて前記取付軸に取り付けられた前記母体取付部の軸方向の移動を規制する一対の挟持板部とを備え、
前記母体取付部は、前記取付軸の外径よりも狭い離間間隔で対向配置されて互いに離反する方向の撓み変形により対向面間に前記取付軸を割り込ませることが可能な一対の弾性アーム部と、各弾性アーム部に一体形成されて前記一対の弾性アーム部の対向面間に前記取付軸が係合するときに前記一対の挟持板部に挟持される被挟持部とを備え、
前記弾性アーム部には、前記取付軸が割り込む対向面に形成されて前記取付軸が嵌合することで割り込み時の撓みを戻す軸係合凹部が設けられ、
前記被挟持部は、厚み寸法が前記一対の挟持板部間の間隔よりも小さく設定されて前記一対の挟持板部間に挿入される本体部と、前記一対の挟持板部間の間隔と前記本体部との寸法差よりも大きな高さ寸法で前記本体部に隆起形成されて、前記本体部と一緒に前記一対の挟持板部間に挿入される潰しリブと、を備え、
前記潰しリブは、前記一対の挟持板部間に挿入された時に一部が潰れて前記一対の挟持板部と前記本体部との間の隙間を無くすことを特徴とする機材の取付構造。
【0017】
上記(1)の構成によれば、母体取付部の一対の弾性アーム部の対向間隙の先端を所定以上の押し付け力で構造母体の取付軸に押し当てて、前記取付軸を前記一対の弾性アーム部の対向面間に割り込ませる。そして、更に、一対の弾性アーム部を取付軸側に押し込んで、前記取付軸を前記一対の弾性アーム部の軸係合凹部に嵌合させると、一対の弾性アーム部が構造母体の取付軸を挟持した状態になる。このとき、前記一対の弾性アーム部に一体の被挟持部が構造母体の一対の挟持板部に挟持された状態になって、取付軸の軸方向への移動が規制され、機材が構造母体に結合された状態になる。
【0018】
一方、構造母体に結合されている機材を取り付け時とは逆の方向に所定以上の力で引くと、母体取付部の一対の弾性アーム部の対向端面間から取付軸が抜け出すと共に、前記被挟持部が構造母体側の一対の挟持板部間から抜け出して、機材と構造母体との間の結合が解除される。
【0019】
即ち、上記(1)の取付構造では、操作に手間のかかるボルトやナットを使用しておらず、機材の構造母体へと取り付けや取り外しは、機材の母体取付部を構造母体の機材取付部に押し付けたり、あるいは引き抜くという簡単な操作だけで実現できる。従って、専用工具を使わずとも、構造母体への機材の取り付けや取り外しを容易かつ迅速に行うことができる。
【0020】
また、母体取付部の一対の弾性アーム部は、肉抜き孔から孔埋めピンを外した状態では、肉抜き孔の周辺での曲げ剛性が下がって、小さな操作力でも、撓み変形が生じ易くなる。
【0021】
従って、一対の弾性アーム部を機材取付部の取付軸に係脱する時には、孔埋めピンを肉抜き孔から外した状態で、取付軸への押し付けや取付軸からの引き抜きを行うことで、機材の取り付けや取り外しに必要な操作力を小さくすることができ、構造母体への機材の取り付けや取り外し作用を更に容易に、更に迅速に行うことが可能になる。
【0022】
一方、前記一対の弾性アーム部は、肉抜き孔に孔埋めピンが嵌合装着されている時には、肉抜き孔を設けていない中実構造と同様の高い曲げ剛性が確保され、撓み変形が生じ難くなる。従って、機材を構造母体に取り付けた使用状態では、肉抜き孔に孔埋めピンを嵌合装着した状態にしておくことで、一対の弾性アーム部が撓み変形を起こし難くなり、高い取付強度を得ることができる。
【0023】
また、取付軸を挟む一対の弾性アーム部は、前記取付軸が軸係合凹部に係合した状態で適度に弾性変形が残るように寸法設定して置けば、各弾性アーム部の弾性復元力で一対の弾性アーム部と取付軸とが密着状態になるため、専用工具を使わずとも機材をガタ付き無くしっかりと構造母体へ固定することが可能になる。
【0024】
上記(2)の取付構造によれば、母体取付部の被挟持部は、機材取付部の一対の挟持板部間に嵌入する際に、本体部に突設した潰しリブの一部が潰れて、密着状態で一対の挟持板部に挟持される。そのため、被挟持部は、機材取付部の取付軸の軸方向へガタ付くことが無く、しっかりと固定される。
【0025】
従って、機材の取付時に手間のかかる締め付けトルクの調整作業等が不要で、専用工具を使わずとも取付軸の軸方向へ機材がガタ付くことが無く、機材をしっかりと構造母体へ固定することができる。
【0026】
上記(3)の構成によれば、母体取付部の一対の弾性アーム部の対向間隙の先端を所定以上の押し付け力で構造母体の取付軸に押し当てて、前記取付軸を前記一対の弾性アーム部の対向面間に割り込ませる。そして、更に、一対の弾性アーム部を取付軸側に押し込んで、前記取付軸を前記一対の弾性アーム部の軸係合凹部に嵌合させると、一対の弾性アーム部が構造母体の取付軸を挟持した状態になる。このとき、前記一対の弾性アーム部に一体の被挟持部が構造母体の一対の挟持板部に挟持された状態になって、取付軸の軸方向への移動が規制され、機材が構造母体に結合された状態になる。
【0027】
一方、構造母体に結合されている機材を取り付け時とは逆の方向に所定以上の力で引くと、母体取付部の一対の弾性アーム部の対向端面間から取付軸が抜け出すと共に、前記被挟持部が構造母体側の一対の挟持板部間から抜け出して、機材と構造母体との間の結合が解除される。
【0028】
即ち、上記(3)の取付構造では、操作に手間のかかるボルトやナットを使用しておらず、機材の構造母体へと取り付けや取り外しは、機材の母体取付部を構造母体の機材取付部に押し付けたり、あるいは引き抜くという簡単な操作だけで実現できる。従って、専用工具を使わずとも、構造母体への機材の取り付けや取り外しを容易かつ迅速に行うことができる。
【0029】
また、上記(3)の取付構造では、母体取付部の被挟持部は、機材取付部の一対の挟持板部間に嵌入する際に、本体部に突設した潰しリブの一部が潰れて、密着状態で一対の挟持板部に挟持される。そのため、被挟持部は、機材取付部の取付軸の軸方向へガタ付くことが無く、しっかりと固定される。
【0030】
従って、機材の取付時に手間のかかる締め付けトルクの調整作業等が不要で、専用工具を使わずとも取付軸の軸方向へ機材がガタ付くことが無く、機材をしっかりと構造母体へ固定することができる。
【発明の効果】
【0031】
本発明による機材の取付構造によれば、操作に手間のかかるボルトやナットを使用しておらず、機材の構造母体へと取り付けや取り外しは、機材の母体取付部を構造母体の機材取付部に押し付けたり、あるいは引き抜くという簡単な操作だけで実現できる。従って、専用工具を使わずとも、構造母体への機材の取り付けや取り外しを容易かつ迅速に行うことができる。
【0032】
また、取付軸を挟む一対の弾性アーム部は、前記取付軸が軸係合凹部に係合した状態で適度に弾性変形が残るように寸法設定して置けば、各弾性アーム部の弾性復元力で一対の弾性アーム部と取付軸とが密着状態になるため、専用工具を使わずとも機材をガタ付き無くしっかりと構造母体へ固定することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明に係る機材の取付構造の一実施形態の分解斜視図である。
【図2】図1に示した機材のB矢視図である。
【図3】図2のC−C断面図である。
【図4】図1に示した母体取付部の拡大斜視図である。
【図5】図1のD矢視図で、母体取付部と機材取付部の側面図である。
【図6】一実施形態の一対の弾性アーム部間に取付軸が嵌合する時の一対の弾性アーム部の撓み変形を示す平面図である。
【図7】一実施形態の一対の弾性アーム部間への取付軸の嵌合が完了した状態の平面図である。
【図8】従来の機材の取付構造の要部の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明に係る機材の取付構造の好適な実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0035】
図1〜図3は、本発明に係る機材の取付構造の一実施形態を示したものである。
この一実施形態の機材の取付構造は、構造母体である自動車の車体に機材11を取り付けるもので、前記車体に固定装備される機材取付部13と、機材11に装備されて機材取付部13との結合を果たす母体取付部15とから構成されている。
【0036】
本実施形態の場合、機材11は、ワイヤハーネスに接続するリレーやヒューズ等の回路部品を収容した電気接続箱である。
【0037】
機材11は、回路部品の収容部を有したケース本体21と、このケース本体21の上部開口部を開閉可能に覆う蓋体23とから構成されている。ケース本体21及び蓋体23は、いずれも、樹脂製である。
【0038】
ケース本体21の底面には、車体側への取り付けを補助する第2の母体取付部25が装備されている。
【0039】
この一実施形態の第2の母体取付部25は、一対の弾性アーム部25a間に、頭付きボルト等が嵌合する切欠溝25bを設けた簡易な構造になっている。
【0040】
機材取付部13は、図1及び図5に示したように、円柱状の取付軸31と、この取付軸31に軸方向に離間して固定装備された一対の挟持板部32,32とを備えている。
【0041】
一対の挟持板部32,32は、取付軸31に取り付けられた母体取付部15の一部を挟持して、取付軸31の軸方向への母体取付部15の移動を規制する。
【0042】
母体取付部15は、図4及び図5に示すように、取付軸31の外径よりも狭い離間間隔で対向配置された一対の弾性アーム部41,41と、各弾性アーム部41に一体形成された被挟持部43とを備えている。
【0043】
一対の弾性アーム部41,41の対向面41a,41aの先端には、面取り45が形成されている。この面取り45は、取付軸31に押し付けた時に、一対の弾性アーム部41,41の先端部に、互いに離反する方向の押圧力(図4のF1,F2)を作用させて、取付軸31の割り込みを容易にする。
【0044】
また、一対の弾性アーム部41,41は、図6に示すように、互いに離反する方向(図6の矢印E,F方向)の撓み変形により、対向面41a,41a間に取付軸31を割り込ませることが可能なように、各部の寸法及び弾性特性が設定されている。
【0045】
被挟持部43は、一対の弾性アーム部41,41の対向面41a,41a間に取付軸31が係合するときに、一対の挟持板部32,32に嵌入して、これらの一対の挟持板部32,32に挟持される。
【0046】
本実施形態の場合、それぞれの弾性アーム部41には、対向面41aに形成されて取付軸31が嵌合することで割り込み時の撓みを戻す軸係合凹部48と、該軸係合凹部48の周囲に設けられて当該弾性アーム部41,41の可撓性を高める肉抜き孔46と、肉抜き孔46に着脱可能に嵌合装着されて肉抜き孔46を埋めることで弾性アーム部41の剛性を向上させる孔埋めピン47(図1参照)とが備えられている。
【0047】
肉抜き孔46は、横断面形状が真円形の貫通穴である。
孔埋めピン47は、図1に示すように、肉抜き孔46に挿入されて肉抜き孔46の孔埋めを行う略円柱状の本体部47aと、この本体部47aの上端に鍔状に設けられて肉抜き孔46の周縁部に当接する位置決め鍔部47bと、本体部47aを肉抜き孔46に抜き差しする際の把持部となる摘み47cとを備えている。本体部47aは、肉抜き孔46よりもわずかに小径に形成されると共に、周面に微小突起47dが形成されている。そして、本体部47aを肉抜き孔46に挿入するときに微小突起47dを変形させて圧入することにより、本体部47aを肉抜き孔46内に固定することができる。
【0048】
被挟持部43は、本体部51と、この本体部51の上面の上に隆起形成された潰しリブ53とを備えている。
【0049】
本体部51は、図5に示すように、厚み寸法t1が一対の挟持板部32,32間の間隔Sよりも小さく設定されていて、一対の挟持板部32,32間に挿入される。
【0050】
潰しリブ53は、図5に示すように、高さ寸法h1が、一対の挟持板部32,32間の間隔Sと本体部51の厚み寸法t1との寸法差Δtよりも大きく設定されていて、本体部51と一緒に一対の挟持板部32,32間に挿入される。
【0051】
また、潰しリブ53は、横断面形状が、上方にいくほど寸法が狭まる三角形状になっている。このような形状だと、三角形の頂部側は挟持された時の圧力で潰れ易く、本体部51と一緒に一対の挟持板部32,32間に挿入された際に、潰しリブ53の頂部が潰れることで、一対の挟持板部32,32と被挟持部43との間の隙間を無くす。
【0052】
以上に説明した一実施形態の機材の取付構造では、機材11を取り付ける場合には、機材11を図1で矢印G方向に移動させて、母体取付部15の一対の弾性アーム部41,41の対向間隙の先端を所定以上の押し付け力で構造母体の取付軸31に押し当てて、図6に示したように、前記取付軸31を一対の弾性アーム部41,41の対向面41a,41a間に割り込ませる。
【0053】
そして、更に、一対の弾性アーム部41,41を取付軸31側に押し込んで、取付軸31を一対の弾性アーム部41,41の軸係合凹部48に嵌合させると、一対の弾性アーム部41,41が構造母体の取付軸31を挟持した状態になる。
【0054】
このとき、図7に示すように、一対の弾性アーム部41,41に一体の被挟持部43が構造母体の一対の挟持板部32,32に挟持された状態になって、取付軸31の軸方向への移動が規制され、機材11が構造母体に結合された状態になる。
【0055】
一方、構造母体に結合されている機材11を取り付け時とは逆の方向に所定以上の力で引くと、母体取付部15の一対の弾性アーム部41,41の対向端面間から取付軸31が抜け出すと共に、前記被挟持部43が構造母体側の一対の挟持板部32,32間から抜け出して、機材11と構造母体との間の結合が解除される。
【0056】
即ち、上記一実施形態の取付構造では、操作に手間のかかるボルトやナットを使用しておらず、機材11の構造母体へと取り付けや取り外しは、機材11の母体取付部15を構造母体の機材取付部13に押し付けたり、あるいは引き抜くという簡単な操作だけで実現できる。従って、専用工具を使わずとも、構造母体への機材11の取り付けや取り外しを容易かつ迅速に行うことができる。
【0057】
また、母体取付部15の一対の弾性アーム部41,41は、肉抜き孔46から孔埋めピン47を外した状態では、肉抜き孔46の周辺での曲げ剛性が下がって、小さな操作力でも、撓み変形が生じ易くなる。
【0058】
従って、一対の弾性アーム部41,41を機材取付部13の取付軸31に係脱する時には、孔埋めピン47を肉抜き孔46から外した状態で、取付軸31への押し付けや取付軸31からの引き抜きを行うことで、機材11の取り付けや取り外しに必要な操作力を小さくすることができ、構造母体への機材11の取り付けや取り外し作用を更に容易に、更に迅速に行うことが可能になる。
【0059】
一方、一対の弾性アーム部41,41は、肉抜き孔46に孔埋めピン47が嵌合装着されている時には、肉抜き孔46を設けていない中実構造と同様の高い曲げ剛性が確保され、撓み変形が生じ難くなる。従って、機材11を構造母体に取り付けた使用状態では、肉抜き孔46に孔埋めピン47を嵌合装着した状態にしておくことで、一対の弾性アーム部41,41が撓み変形を起こし難くなり、高い取付強度を得ることができる。
【0060】
また、取付軸31を挟む一対の弾性アーム部41,41は、前記取付軸31が軸係合凹部48に係合した状態で適度に弾性変形が残るように寸法設定して置けば、各弾性アーム部41,41の弾性復元力で一対の弾性アーム部41,41と取付軸31とが密着状態になるため、専用工具を使わずとも機材11をガタ付き無くしっかりと構造母体へ固定することが可能になる。
【0061】
更に、本実施形態の取付構造では、母体取付部15の被挟持部43は、機材取付部13の一対の挟持板部32,32間に嵌入する際に、本体部51に突設した潰しリブ53の一部が潰れて、密着状態で一対の挟持板部32,32に挟持される。そのため、被挟持部43は、機材取付部13の取付軸31の軸方向へガタ付くことが無く、しっかりと固定される。
【0062】
従って、機材11の取付時に手間のかかる締め付けトルクの調整作業等が不要で、専用工具を使わずとも取付軸31の軸方向へ機材11がガタ付くことが無く、機材11をしっかりと構造母体へ固定することができる。
【0063】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良等が自在である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数値、形態、数、配置場所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【0064】
例えば、上記一実施形態の機材の取付構造では、肉抜き孔46及び潰しリブ53のそれぞれから有用な作用・効果を得ているが、本発明に係る機材の取付構造では、上記肉抜き孔46あるいは潰しリブ53の何れか一方を省略して、その分、取付構造の単純化を図るようにしても良い。
【0065】
また、本発明に係る機材の取付構造の利用分野は、上記実施形態に示した車体の電気接続箱に限定されるものではない。例えば、車載の電子制御装置やオーディオ関連機器などの機材の取り付けにも利用することができ、また、車載以外の機材の取り付けに利用することも可能である。
【符号の説明】
【0066】
11 機材
13 機材取付部
15 母体取付部
21 ケース本体
23 蓋体
31 取付軸
32 挟持板部
41 弾性アーム部
41a 対向面
43 被挟持部
45 軸係合凹部
46 肉抜き孔
47 孔埋めピン
51 本体部
53 潰しリブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造母体の機材取付部と、前記機材取付部に取り付けられる機材に装備されて前記機材取付部との結合を果たす母体取付部とから構成される機材の取付構造であって、
前記機材取付部は、取付軸と、この取付軸に固定装備されて前記取付軸に取り付けられた前記母体取付部の軸方向の移動を規制する一対の挟持板部とを備え、
前記母体取付部は、前記取付軸の外径よりも狭い離間間隔で対向配置されて互いに離反する方向の撓み変形により対向面間に前記取付軸を割り込ませることが可能な一対の弾性アーム部と、各弾性アーム部に一体形成されて前記一対の弾性アーム部の対向面間に前記取付軸が係合するときに前記一対の挟持板部に挟持される被挟持部とを備え、
前記弾性アーム部には、前記対向面に形成されて前記取付軸が嵌合することで割り込み時の撓みを戻す軸係合凹部と、該軸係合凹部の周囲に設けられて当該弾性アーム部の可撓性を高める肉抜き孔と、前記肉抜き孔に着脱可能に嵌合装着されて前記肉抜き孔を埋めることで前記弾性アーム部の剛性を向上させる孔埋めピンとが備えられたことを特徴とする機材の取付構造。
【請求項2】
前記被挟持部は、厚み寸法が前記一対の挟持板部間の間隔よりも小さく設定されて前記一対の挟持板部間に挿入される本体部と、前記一対の挟持板部間の間隔と前記本体部との寸法差よりも大きな高さ寸法で前記本体部に隆起形成されて、前記本体部と一緒に前記一対の挟持板部間に挿入される潰しリブと、を備え、
前記潰しリブは、前記一対の挟持板部間に挿入された時に一部が潰れて前記一対の挟持板部と前記本体部との間の隙間を無くすことを特徴とする請求項1に記載の機材の取付構造。
【請求項3】
構造母体の機材取付部と、前記機材取付部に取り付けられる機材に装備されて前記機材取付部との結合を果たす母体取付部とから構成される機材の取付構造であって、
前記機材取付部は、取付軸と、この取付軸に固定装備されて前記取付軸に取り付けられた前記母体取付部の軸方向の移動を規制する一対の挟持板部とを備え、
前記母体取付部は、前記取付軸の外径よりも狭い離間間隔で対向配置されて互いに離反する方向の撓み変形により対向面間に前記取付軸を割り込ませることが可能な一対の弾性アーム部と、各弾性アーム部に一体形成されて前記一対の弾性アーム部の対向面間に前記取付軸が係合するときに前記一対の挟持板部に挟持される被挟持部とを備え、
前記弾性アーム部には、前記取付軸が割り込む対向面に形成されて前記取付軸が嵌合することで割り込み時の撓みを戻す軸係合凹部が設けられ、
前記被挟持部は、厚み寸法が前記一対の挟持板部間の間隔よりも小さく設定されて前記一対の挟持板部間に挿入される本体部と、前記一対の挟持板部間の間隔と前記本体部との寸法差よりも大きな高さ寸法で前記本体部に隆起形成されて、前記本体部と一緒に前記一対の挟持板部間に挿入される潰しリブと、を備え、
前記潰しリブは、前記一対の挟持板部間に挿入された時に一部が潰れて前記一対の挟持板部と前記本体部との間の隙間を無くすことを特徴とする機材の取付構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−38533(P2011−38533A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−183291(P2009−183291)
【出願日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】