説明

機械装置

【課題】潤滑油の交換時以外のときでも磁石の確認を容易に行なうことができ、摺動部品の摩耗状態を随時チェックできる機械装置を提供する。
【解決手段】エンジン1(機械装置)のオイルパン3(ハウジング)にのぞき窓8を設け、オイルパン3の内部に設けられた磁石7をのぞき窓8を介して外部から視認できるようにする。これにより、エンジン1を分解したり、エンジン1の内部の潤滑油を抜いたりすることなく、磁石7に摩耗粉が付着しているか否かを容易に確認することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軸受や歯車等の摺動部品を有する機械装置であって、具体的には、エンジン、軸受支持装置、減速装置などの機械装置に関する。
【背景技術】
【0002】
軸受や歯車等の摺動部品を有する機械装置では、摺動部品の摩耗により生じた金属摩耗粉が潤滑油に混入する恐れがある。この摩耗粉が潤滑油と共に摺動部品に供給されると、摺動部品に摩耗粉が噛み込まれて損傷する恐れがある。
【0003】
例えば特許文献1に示されている減速装置(ギヤケース)は、ハウジングの内部(磁性体回収室)に磁石を設けている。この磁石を潤滑油と接触させ、潤滑油に混入した摩耗粉を磁石で吸着することにより、上記のように摩耗粉が摺動部品に噛み込まれる事態を防止できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−210043号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような機械装置では、磁石に付着している摩耗粉の量を確認することで、摺動部品の摩耗状態をチェックすることができる。しかし、ハウジングの内部に設けられた磁石を確認するためには、機械装置を分解したり、機械装置の内部に保持した潤滑油を一旦抜いたりする必要があるため、作業性が悪い。このため、実際には潤滑油の交換時にしか磁石を確認することができず、それ以外のときに摺動部品の摩耗状態をチェックすることは難しかった。
【0006】
本発明の解決すべき課題は、潤滑油の交換時以外のときでも磁石の確認を容易に行なうことができ、摺動部品の摩耗状態を随時チェックできる機械装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、本発明は、ハウジングと、ハウジングの内部に配された摺動部品と、ハウジングの内部に保持され、摺動部品を潤滑する潤滑油と、ハウジングの内部の潤滑油と接触する位置に設けられた磁石とを備えた機械装置であって、ハウジングのうち、外部から磁石を視認できる位置にのぞき窓を設けたことを特徴とする。
【0008】
このように、ハウジングにのぞき窓を設けることで外部から磁石を視認することができるため、機械装置を分解したり、機械装置の内部の潤滑油を抜いたりすることなく、磁石に摩耗粉が付着しているか否かを容易に確認することができる。
【0009】
磁石とのぞき窓とを一体化すれば、機械装置に磁石及びのぞき窓を同時に取り付けることができるため、取り付け作業が簡略化できる。
【0010】
磁石は、例えば潤滑油を貯留する油貯留室に設けることができる。この場合、油貯留室から潤滑油を排出するための排出口と、該排出口を閉塞する閉塞栓とを設け、この閉塞栓を磁石で形成すれば、閉塞栓と磁石を別々に形成する場合と比べて部材数及び取り付け作業工数を削減することができる。
【0011】
通常、ハウジングの内部は密閉された暗い空間であるため、のぞき窓を設けても磁石に摩耗粉が付着しているか否かを確認しにくい恐れがある。そこで、ハウジングの内部に明かりを取り入れるための明かり窓を設けたり、ハウジングの内部を照らす照明部材を設けたりすれば、磁石の状態を確認しやすくなる。後者の場合、照明部材を閉塞栓に設ければ、ハウジングの内部に設けた照明部材に閉塞栓を通じて配線を供給することができる。
【0012】
上記のような機械装置は、エンジンや軸受支持装置、あるいは減速装置として使用することができる。
【発明の効果】
【0013】
以上のように、本発明の機械装置は、磁石を外部から視認できるのぞき窓を設けることで、磁石の確認を容易に行なうことができる。これにより、磁石への摩耗粉の付着をいつでも確認することができるため、摺動部品の摩耗状態を随時チェックすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態にかかる機械装置としてのエンジンを概念的に示す断面図である。
【図2】図1のオイルパンをA方向から見た側面図である。
【図3】他の実施形態にかかるエンジンののぞき窓付近の断面図である。
【図4】他の実施形態にかかるエンジンののぞき窓付近の側面図である。
【図5】他の実施形態にかかるエンジンののぞき窓付近の側面図である。
【図6】他の実施形態にかかるエンジンののぞき窓付近の側面図である。
【図7】他の実施形態にかかる機械装置としての軸受支持装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0016】
図1は、本発明の一実施形態に係る機械装置としてのエンジン1を示している。エンジン1は、エンジンブロック2と、エンジンブロック2の下部に設けられたオイルパン3とを備える。エンジンブロック2の内部には、軸受や歯車等の摺動部品(図示省略)が設けられる。オイルパン3の内部には油貯留室4が設けられ、油貯留室4に貯留した潤滑油Pをエンジンブロック2の内部の摺動部品に供給することにより、摺動部品の潤滑が行なわれる。このように、本実施形態では、エンジンブロック2及びオイルパン3が、摺動部品及び潤滑油を内部に有するハウジングとして機能する。
【0017】
オイルパン3の下部には、潤滑油Pを排出するための排出口5と、排出口5を閉塞する閉塞栓6とが設けられる。本実施形態では、閉塞栓6が、排出口5にネジ固定されるボルトで構成される。
【0018】
ハウジングの内部(本実施形態では、オイルパン3の内部)には、磁石7が設けられる。この磁石7が、油貯留室4に貯留された潤滑油Pと接触することにより、潤滑油Pに混入した金属摩耗粉が磁石7に吸着される。磁石7は、フェライト磁石等の永久磁石、あるいは電磁石で構成することができ、本実施形態では永久磁石が使用される。永久磁石は、配線等が不要で取り付け及びメンテナンスが容易という利点がある。一方、電磁石は、磁力を容易に調整することができるため、潤滑油に混入した摩耗粉の吸着能力を所望の値に設定することができる。磁石7は、オイルパン3の内面に適宜の手段で固定される。本実施形態では、図2に示すように、オイルパン3の側壁の内面に固定された固定板7aと、固定板7aから水平方向に伸びた支持棒7bとを介して、磁石7がオイルパン3に固定される。
【0019】
ハウジング(本実施形態では、オイルパン3の側壁)にはのぞき窓8が設けられる。本実施形態では、オイルパン3の側壁のうち、磁石7と同じ高さにのぞき窓8が設けられる。こののぞき窓8から、オイルパン3の内部に設けられた磁石7を視認することができる。のぞき窓8は、図2に示すように、オイルパン3に固定される枠8aと、枠8aの内側に固定され、ガラス等の透明な材料で形成された透過部材8bとからなる。尚、のぞき窓8の位置は、外部から磁石7を視認することができれば上記に限定されず、例えばオイルパン3の底部に設けることもできる。
【0020】
エンジンブロック2の内部に設けられた軸受や歯車等の摺動部品の摺動状態が良好であれば、磁石7にはほとんど摩耗粉が付着しない。一方、何らかの原因により摺動部品の摺動状態が悪化し、摺動部品に異常な摩耗が生じれば、磁石7に多くの摩耗粉が付着する。本発明では、上記のようにのぞき窓8を介して磁石7を外部から視認することができるため、磁石7に摩耗粉が付着しているか否か、あるいは摩耗粉の付着量を容易に確認することができ、これにより摺動部品の摺動状態をチェックすることができる。尚、磁石7は、摩耗粉の付着の有無を識別しやすくするために、摺動部品の材料と異なる色(例えば白色)としてもよい。
【0021】
本発明は上記の実施形態に限られない。以下、本発明の他の実施形態を説明するが、上記の実施形態と同様の機能を有する箇所には同一の符号を付して説明を省略する。
【0022】
図3に示す実施形態では、磁石7とのぞき窓8とが一体化されている。具体的には、のぞき窓8の枠8aに、支持棒7bを介して磁石7が固定されている。これにより、磁石7及びのぞき窓をオイルパン3に同時に固定することができるため、取り付け作業が簡略化できる。
【0023】
図4に示す実施形態では、閉塞栓6が磁石7で形成されている。具体的には、閉塞栓6としてのボルトが、頭部6aと、ネジ部6bとを備え、少なくともネジ部6bの先端部が磁石7で形成されている。本実施形態では、閉塞栓6全体が磁石7で形成されている。これにより、上記の実施形態のように閉塞栓6と磁石7とを別体に形成する場合と比べて、部品点数及び取り付け工数が削減できる。
【0024】
図5に示す実施形態では、オイルパン3の内部に明かりを取り入れるための明かり窓9が設けられる。これにより、外部からの光L(自然光、あるいは、照明器具の光)により、明かり窓9を介して磁石7を照らすことができるため、磁石7への摩耗粉の有無を容易に確認することができる。図示例では、のぞき窓8及び明かり窓9がそれぞれオイルパン3の異なる側壁に設けられ、のぞき窓8を介して作業者が磁石7を視認する方向(図5の紙面と直交する方向)と、のぞき窓を介して光Lが磁石7に照射される方向(図5の左右方向)とが、交差(図示例では水平方向で略直交)している。尚、明かり窓9は必ずしも上記のように磁石7と同じ高さに設ける必要はなく、例えば明かり窓9を磁石7よりも上方位置に設ければ、上方からの明かりをオイルパン3の内部に取り入れやすくなる。
【0025】
図6に示す実施形態では、オイルパン3の内部に照明部材10が設けられる。この照明部材10の明かりにより、磁石7への摩耗粉の付着の有無を容易に確認することができる。図示例では、閉塞栓6が磁石7で形成され、この閉塞栓6のネジ部6bの先端部に照明部材10が設けられる。このように閉塞栓6に直接照明部材10を設けることにより、磁石7(閉塞栓)を確実に照らすことができる。また、照明部材10の配線11を、閉塞栓6の内部を通して供給することができるため、配線11のために別途の穴をオイルパン3に設ける必要がなくなる。
【0026】
以上の実施形態では、磁石7を油貯留室4の潤滑油Pに接触する位置に設けているが、エンジン1の内部の潤滑油と接触する位置であればこれに限られない。例えば、エンジンブロック2の内部で潤滑油を流通させる油通路に磁石7を配しても良い(図示省略)。
【0027】
また、以上の実施形態では、本発明に係る機械装置がエンジン1である場合を示しているが、これに限らず、例えば、図7に示すような軸受支持装置20に本発明を適用することができる。軸受支持装置20は、回転軸Sを支持する軸受21と、軸受21を内部に保持するハウジング22とを備える。ハウジング22の内部には、潤滑油Pを貯留する油貯留室4が設けられる。ハウジング22の内部には磁石7が設けられ、図示例ではハウジング22を貫通して排出口5が設けられ、この排出口5を閉塞する閉塞栓6が磁石7で形成される。閉塞栓6の先端部は、油貯留室4の潤滑油Pに接触する。ハウジング22には、外部から閉塞栓6を視認するためののぞき窓8が設けられる。
【0028】
この他、図示は省略するが、減速機(例えば自動車のトランスミッション)に本発明を適用することもできる。
【符号の説明】
【0029】
1 エンジン
2 エンジン本体
3 オイルパン
4 油貯留室
5 排出口
6 閉塞栓
7 磁石
8 のぞき窓
9 明かり窓
10 照明部材
20 軸受支持装置
21 軸受
22 ハウジング
P 潤滑油
S 回転軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングと、前記ハウジングの内部に配された摺動部品と、前記ハウジングの内部に保持され、前記摺動部品を潤滑する潤滑油と、前記ハウジングの内部の前記潤滑油と接触する位置に設けられた磁石とを備えた機械装置であって、
前記ハウジングのうち、外部から前記磁石を視認できる位置にのぞき窓を設けたことを特徴とする機械装置。
【請求項2】
前記磁石と前記のぞき窓とを一体化した請求項1記載の機械装置。
【請求項3】
前記潤滑油を貯留する油貯留室を有し、該油貯留室に磁石を配した請求項1又は2記載の機械装置。
【請求項4】
前記油貯留室から前記潤滑油を排出するための排出口と、該排出口を閉塞する閉塞栓とを設け、前記閉塞栓を前記磁石で形成した請求項3記載の機械装置。
【請求項5】
前記ハウジングの内部に明かりを取り入れるための明かり窓をさらに設けた請求項1〜4の何れかに記載の機械装置。
【請求項6】
前記ハウジングの内部に照明部材を設けた請求項1〜4の何れかに記載の機械装置。
【請求項7】
前記閉塞栓に照明部材を設けた請求項6記載の機械装置。
【請求項8】
請求項1〜7の何れかに記載の機械装置としてのエンジン。
【請求項9】
請求項1〜7の何れかに記載の機械装置としての軸受支持装置。
【請求項10】
請求項1〜7の何れかに記載の機械装置としての減速装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−252458(P2011−252458A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−127856(P2010−127856)
【出願日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【出願人】(000102692)NTN株式会社 (9,006)
【Fターム(参考)】