説明

機能性ポリアゾール、その調製方法およびこれらの使用

本発明は、一般式(1a)および/または(1b)および/または(1c)および/または(2)の繰り返しイミダゾール単位を有する機能化されたポリアゾールに関するものであり、この際、基Ar、Ar及びArは、4価、2価または3価の芳香族または複素環式芳香族基であり、Yは、化学結合または1〜20炭素原子を有する基であり、vは、1〜10の整数であり、ならびにZは一般式(3)または(4)の基を表わし、この際、R及びRは、それぞれ独立して、炭素原子または1〜20炭素原子を有する基である。本発明の機能化されたポリアゾールは、有機溶剤に可溶性であるという特徴を有する。本発明はまた、該ポリアゾールを製造するための中間産物及び方法、さらには本発明のポリアゾールを含む高分子電解質膜及び燃料電池に関する。
【化1】


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ポリアゾールを用いてなり、ホスホン酸基で機能化されたポリマーに関するものであり、この際、当該ポリマーは、その優れた化学的及び熱安定性により、様々な目的に使用でき、高分子電解質膜(PEM)燃料電池での使用に特に適する。
【背景技術】
【0002】
ポリベンズイミダゾール(Celazole)等のポリアゾールは、長い間知られていた。このようなポリベンズイミダゾール(PBI)は、一般的に、3,3’,4,4’−テトラアミノビフェニルを、イソフタル酸若しくはジフェニルイソフタル酸またはこれらのエステルと、固相重合で反応させることによって調製される。得られるプレポリマーは反応器中で固化させた後、機械的に粉砕される。次に、粉末状のプレポリマーは、400℃以下の温度で十分重合されて、所望のポリベンズイミダゾールを得る。
【0003】
高分子膜を製造するために、PBIを、ジメチルアセトアミド(DMAc)等の極性のある非プロトン性溶剤中に溶解して、膜を従来の方法によって製造する。
【0004】
PEM燃料電池に使用される、プロトン伝導性ポリアゾール膜、即ち、酸でドープされたポリアゾール膜は、既に知られている。ゆえに、J. Electrochem. Soc. Volume 142, No. 7, 1995, pp. L121-L123には、リン酸中にポリベンズイミダゾールをドープすることが記載されている。ここで、塩基性ポリアゾール膜は、濃リン酸または硫酸でドープされた後、高分子電解質膜燃料電池(PEM燃料電池)においてプロトン伝導体及びセパレーターとして作用する。
【0005】
ポリアゾールポリマーの優れた特性により、このような高分子電解質膜は、処理されて膜−電極ユニット(MEU)を製造する際に、100℃を超える、特に120℃を超える長期間作動温度で燃料電池に使用できる。このような高い長期間作動温度により、膜−電極ユニット(MEU)中に存在する貴金属を使用した触媒の活性が向上できる。特に炭化水素の改質物を使用する場合には、かなりの量の一酸化炭素が改質ガス中に存在するので、一般的に、高価なガスのウォークアップ(work-up)またはガスの精製によって除去する必要がある。作動温度を上昇できると、有意により高濃度のCO不純物が長期間にわたって許容できる。
【0006】
ポリアゾールポリマーを用いた高分子電解質膜の使用により、第一に、場合によっては、高価なガスのウォークアップ(work-up)またはガスの精製を省略することができ、さらに、第二に、膜−電極ユニットへの触媒の積載量を減らすことができる。そうしなければPEM燃料電池システムのコストが高くなりすぎるので、双方ともPEM燃料電池の大量使用には絶対必要な条件である。
【0007】
Prog. Polym. Sci. 25 (2000) 1463-1502には、C−アルキルホスホン酸化ポリベンズイミダゾール、即ち、ホスホン酸基が共有結合したポリベンズイミダゾールが開示される。観察された伝導率は、プレスコンパクト(press compact)で測定された場合、10−3S/cmである。記載されたポリマーは伝導率が上昇しているものの、ジメチルアセトアミド(DMAc)等の極性のある非プロトン性溶剤からキャストすることによる高分子膜の形成には適さない。ポリベンズイミダゾールを水素化リチウムで脱プロトン化した後ホスホン酸2−クロロエチルと反応させることによって得られるポリマーは、Rikukawa et al.によると、すべての有機溶剤に不溶性であり、ゆえに、従来の方法による高分子膜の製造には適さない。著者らは、これは、置換反応中にホスホン酸基の凝集が起こることによる、ポリマーの架橋によるものであると推察している。
【0008】
既知のPEM燃料電池での問題としては、作動時間が長くなるにつれてその性能が損なわれることがある。さらに、水素の変換率に関する燃料電池の効率が改善される必要がある。
【発明の開示】
【0009】
したがって、本発明の目的は、寿命がより長くかつ性能がより良好である改善された燃料電池を提供することである。さらに、燃料電池の水素変換率が向上するべきである。
【0010】
燃料電池は、特に100℃を超える作動温度で使用でき、さらに燃料ガスをさらに湿潤化することなく作製できる必要がある。
【0011】
さらに、イオノマーは、高温の燃料電池での使用に利用でき、かつイオノマーは、特にホスホン酸でドープされたポリアゾール膜に適合する必要がある。
【0012】
上記目的は、有機溶剤に可溶性であり、下記一般式(1a)、(1b)(1c):
【0013】
【化1】

【0014】
および/または
【0015】
【化2】

【0016】
および/または
【0017】
【化3】

【0018】
および/または下記一般式(2):
【0019】
【化4】

【0020】
ただし、基Ar、Ar及びArは、4価、2価または3価の芳香族または複素環式芳香族基であり、
Yは、化学結合または1〜20炭素原子を有する基であり、
vは、基Yに結合する基Zの数であり、1〜10の整数であり、ならびに
Zは、下記一般式(3):
【0021】
【化5】

【0022】
または下記一般式(4):
【0023】
【化6】

【0024】
ただし、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子または1〜20炭素原子を有する基である、
の基である、
の繰り返し構造単位を有するポリアゾールによって達成される。
【0025】
基Yは、好ましくは、化学結合または1若しくは2炭素原子を有する基である。
【0026】
Rikukawa et al.の開示に基づいて、このようなポリマーは、ホスホン酸基の凝集の結果、有機溶剤に不溶性であると従来考えられていたため、当業者には非常に驚くべきことである。本発明を目的として、「可溶性である」とは、少なくとも0.1gの本発明のポリマーが100℃で100gのN,N−ジメチルアセトアミドに溶解できることを意味する。
【0027】
溶液は、一般的に、膜を製造するのに使用できるような均一な混合物である。溶けないことで生じる不溶性材料は既知の方法で分離できる。
【0028】
本発明のポリマーは、多くの利点をさらに有する。特にホスホン酸基を有するポリマーは、120℃で、少なくとも0.01S/cm、特に少なくとも0.02S/cmの高い伝導率を有する。これらの値は、インピーダンス分光分析(impedance spectroscopy)によって測定される。
【0029】
ホスホン酸基を有するポリマーは、特に、予めホスホン酸エステル基で修飾されたポリアゾールの加水分解によって得られる。このようなポリマーは、本発明によって同様にして提供される有益な中間体である。
【0030】
これらの機能性ポリアゾールは、下記一般式:
【0031】
【化7】

【0032】
および/または
【0033】
【化8】

【0034】
および/または
【0035】
【化9】

【0036】
および/または
【0037】
【化10】

【0038】
ただし、基Ar、Ar及びArは、4価、2価または3価の芳香族または複素環式芳香族基であり、
Yは、化学結合または1〜20炭素原子を有する基であり、
vは、基Yに結合する基Zの数であり、1〜10の整数であり、ならびに
Z’は、下記一般式の基であり、
【0039】
【化11】

【0040】
または
【0041】
【化12】

【0042】
ただし、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子または1〜20炭素原子を有する基であり、ならびにR及びRは、それぞれ独立して、1〜20炭素原子を有する基である、
の繰り返しイミダゾール単位を有する。
【0043】
上記式の基Ar、Ar及びArは、単環若しくは多環であってもよい4価、2価または3価の芳香族または複素環式芳香族基である。本発明によると、芳香族基は、好ましくは6〜14、特に6〜12炭素原子を有する単環または多環の芳香族化合物の基である。複素環式芳香族基は、少なくとも1つのCH基がNで置換されたおよび/または少なくとも2つの隣接するCH基がS、NH若しくはOで置換されたアリール基である。本発明を目的として好ましい芳香族または複素環式芳香族基は、ベンゼン、ナフタレン、ビフェニル、ジフェニルエーテル、ジフェニルメタン、ジフェニルジメチルメタン、ビスフェノン、ジフェニルスルホン、チオフェン、フラン、ピロール、チアゾール、オキサゾール、イミダゾール、イソチアゾール、イソオキサゾール、ピラゾール、1,3,4−オキサジアゾール、2,5−ジフェニル−1,3,4−オキサジアゾール、1,3,4−チアジアゾール、1,3,4−トリアゾール、2,5−ジフェニル−1,3,4−トリアゾール、1,2,5−トリフェニル−1,3,4−トリアゾール、1,2,4−オキサジアゾール、1,2,4−チアジアゾール、1,2,4−トリアゾール、1,2,3−トリアゾール、1,2,3,4−テトラゾール、ベンゾ[b]チオフェン、ベンゾ[b]フラン、インドール、ベンゾ[c]チオフェン、ベンゾ[c]フラン、イソインドール、ベンズオキサゾール、ベンゾチアゾール、ベンズイミダゾール、ベンズイソオキサゾール、ベンズイソチアゾール、ベンゾピラゾール、ベンゾチアジアゾール、ベンゾトリアゾール、ジベンゾフラン、ジベンゾチオフェン、カルバゾール、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、1,3,5−トリアジン、1,2,4−トリアジン、1,2,4,5−トリアジン、キノリン、イソキノリン、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン、1,8−ナフチリジン、1,5−ナフチリジン、1,6−ナフチリジン、1,7−ナフチリジン、フタラジン、ピリドピリミジン、プリン、プテリジンまたは4H−キノリジン、ジフェニルエーテル、アントラセン及びフェナントレン由来である。
【0044】
芳香族および/または複素環式芳香族基は、置換されてもよい。好ましい置換基としては、ハロゲン、1〜12炭素原子を有する基、ニトロ、スルホン酸、スルホン酸エステル、スルフィン酸、スルフィン酸エステル、チオール、シアン化物、ヒドロキシル基ならびに一般式:NR及びN10の基(この際、基R、R及びR10は、それぞれ独立して、水素、1〜6炭素原子を有するアルキル基、1〜6炭素原子を有するアルコキシ基またはアリール基である)がある。本発明によると、「ハロゲン」という表現は、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素原子を意味する。
【0045】
「1〜20炭素原子を有する基」という表現は、1〜20炭素原子を有する有機化合物の基を意味する。上記芳香族及び複素環式芳香族基に加えて、特に、アルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アルカノイル、アルコキシカルボニル基、2〜20炭素原子を有するアルケニル基ならびに3〜20炭素原子を有するシクロアルコキシ及びシクロアルキルチオ基ならびに炭素及び水素原子に加えて特に酸素、窒素、硫黄及びリン原子を有する複素脂肪族(heteroaliphatic)基を包含する。上記基は分岐鎖または枝なし鎖であってもよい。
【0046】
好ましいアルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、1−ブチル、2−ブチル、2−メチルプロピル、tert−ブチル、ペンチル、2−メチルブチル、1,1−ジメチルプロピル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、1,1,3,3−テトラメチルブチル、ノニル、1−デシル、2−デシル、ウンデシル、ドデシル、ペンタデシル及びエイコシル基が挙げられる。
【0047】
好ましいシクロアルキル基としては、それぞれ、分岐鎖または枝なし鎖のアルキル基で置換されてもよい、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル及びシクロオクチル基が挙げられる。
【0048】
好ましいアルケニル基としては、ビニル、アリル、2−メチル−2−プロペニル、2−ブテニル、2−ペンテニル、2−ドデセニル及び2−エイコセニル基が挙げられる。
【0049】
好ましいアルキニル基としては、エチニル、プロパルギル、2−メチル−2−プロピニル、2−ブチニル、2−ペンチニル及び2−デシニル基が挙げられる。
【0050】
好ましいアルカノイル基としては、ホルミル、アセチル、プロピオニル、2−メチルプロピオニル、ブチリル、バレロイル、ピバロイル、ヘキサノイル、デカノイル及びドデカノイル基が挙げられる。
【0051】
好ましいアルコキシカルボニル基としては、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、プロポキシカルボニル、ブトキシカルボニル、tert−ブトキシカルボニル、ヘキシルオキシカルボニル、2−メチルヘキシルオキシカルボニル、デシルオキシカルボニルまたはドデシルオキシカルボニル基が挙げられる。
【0052】
好ましいアルコキシ基としては、炭化水素ラジカルが上記好ましいアルキル基の一である、アルコキシ基が挙げられる。
【0053】
好ましいシクロアルコキシ基としては、炭化水素ラジカルが上記好ましいシクロアルキル基の一である、シクロアルコキシ基が挙げられる。
【0054】
好ましい複素脂肪族(heteroaliphatic)基としては、少なくとも1つの炭素単位がO、SまたはNR基で置換された上記好ましいシクロアルキル基があり、この際、Rは、水素、1〜6炭素原子を有するアルキル基、1〜6炭素原子を有するアルコキシ基またはアリール基である。
【0055】
本発明によると、1〜20炭素原子、好ましくは1〜12、好ましくは1〜6炭素原子、特に1〜4炭素原子を有する、分岐鎖または枝なし鎖のアルキルまたはアルコキシ基、および3〜20炭素原子、好ましくは5〜6炭素原子を有する、シクロアルキルまたはシクロアルキルオキシ基が、非常に特に好ましい。
【0056】
上記基の一以上の水素原子は上記ハロゲン原子、好ましくは塩素若しくはフッ素、チオール若しくはヒドロキシ基または一般式:NR及びN10(この際、基R、R及びR10は、それぞれ独立して、水素、1〜6炭素原子を有するアルキル基、1〜6炭素原子を有するアルコキシ基またはアリール基である)の基で置換されてもよいが、非置換ラジカルが特に好ましいことが見出された。
【0057】
本発明を目的として、Arは、任意の置換パターンを有していてもよい;例えば、フェニレンの場合には、Arは、オルト−、メタ−またはパラ−フェニレンであってもよい。特に好ましい基Ar、Ar及びArは、置換基を有していてもよい、ベンゼン及びビフェニレン由来である。
【0058】
本発明のポリマーは、下記一般式:
【0059】
【化13】

【0060】
および/または
【0061】
【化14】

【0062】
の繰り返しアゾール単位をさらに有していてもよい(「共重合体」)。
【0063】
基Xは、1〜20炭素原子を有する基、好ましくは分岐鎖若しくは枝なし鎖のアルキル、シクロアルキル若しくはアルコキシ基または置換若しくは非置換のアリール若しくはヘテロアリール基を追加の基として有してもよい、酸素原子(ベンゾキサル単位)、硫黄原子(ベンゾチアゾール単位)またはアミノ基(ベンズイミダゾール単位)である。
【0064】
式(12)の繰り返しアゾール単位を有するポリマーが本発明を目的として使用される際には、繰り返し単位内の基Xは、好ましい実施態様によると、同一である。
【0065】
本発明に従って使用できるポリマーは、原則、異なる繰り返し単位を有するものであってもよいが、1つの同じ繰り返し単位のみを有することが好ましい。ただし、当該構成要件がこれに制限されるものではない。
【0066】
本発明の特定の態様によると、元素分析によって測定される際の、窒素に対するリンのモル比、即ち、n(P)/n(N)比は、0.02〜0.5、好ましくは0.05〜0.35及び非常に特に好ましくは0.07〜0.25である。ただし、当該構成要件がこれに制限されるものではない。
【0067】
ホスホン酸塩基で修飾されるポリアゾールは、下記一般式:
【0068】
【化15】

【0069】
または
【0070】
【化16】

【0071】
の繰り返しイミダゾール単位を有するポリマーを段階A)で溶剤に溶解する方法によって調製できる。
【0072】
本発明のさらなる好ましい実施態様においては、相互に異なる式(5)および/または(6)の単位を少なくとも2種有する共重合体が、繰り返しイミダゾール単位を有するポリマーとして使用される。さらに、これらの共重合体は、式(12)および/または(13)の基をさらに有してもよい。
【0073】
使用されるポリマーにおける繰り返しイミダゾール単位(5)および/または(6)の数は、10以上であることが好ましい。特に好ましいポリマーは、少なくとも100個の繰り返しイミダゾール単位(5)および/または(6)を有する。
【0074】
本発明を目的として、繰り返しベンズイミダゾール単位を有するポリマーを使用することが好ましい。非常に好ましい繰り返しベンズイミダゾール単位を有するポリマーの例は、下記式(5a)を有する:
【0075】
【化17】

【0076】
ただし、nは、10以上、好ましくは100以上の整数である。
【0077】
溶剤としては、特に、極性有機溶剤、特にN,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド及びN−メチル−2−ピロリドンが挙げられ、好ましくはN,N−ジメチルアセトアミドである。
【0078】
ポリアゾールは、高分子量を有することが好ましい。固有粘度で測定される際に、DMAc中で25℃で測定される固有粘度は、好ましくは少なくとも1.0dl/g及び特に好ましくは少なくとも1.3dl/gであるが、これに制限されるものではない。
【0079】
固有粘度を測定するためには、本発明によるポリアゾール 0.4gを、80℃で60mlの98%硫酸中に溶かす。この溶液の固有粘度を、DIN 53728に従って、ウッベルホード粘度計(Ubbelhode viscometer)を用いて25℃で測定する。
【0080】
段階A)で得られた反応混合物について、段階B)で塩基によって芳香族NH基を脱プロトン化する。好ましい塩基は、25℃のpKが5以下、特に4以下、特に好ましくは2以下である。
【0081】
本発明に従って特に好ましく使用される塩基としては、特にNH、R’N、R’NH及びR’NHならびに下記アニオンの塩が挙げられる:
【0082】
【化18】

【0083】
これらの式において、R’は、1〜20炭素原子を有するアルキルまたはシクロアルキル基である。Ar’は、アリール基である。Phは、フェニル基である。上記塩は、好ましくは、Li、Na、K、Rb及びCs等のアルカリ金属カチオン、Be2+、Mg2+及びCa2+等のアルカリ土類金属カチオン、Al3+、Zn2+N(CHN(CN(C、特にLi及びNaを、対イオンとして有する。LiCO、LiH及びNaH、特にLiCOが、脱プロトン化に非常に有用であることが見出された。
【0084】
塩基の使用量は、ポリマーの望ましい修飾の程度によって異なる。出発ポリマーのN−H基に対して、0.01〜5モル当量、好ましくは0.1〜2.5モル当量、より好ましくは0.7〜1.5モル当量、特に0.9〜1.1モル当量の使用が好ましい。
【0085】
塩基との反応前のポリアゾール溶液は水分が低いことが好ましい。特定の実施態様においては、溶液の水分は、0.5重量%以下、特に好ましくは0.3重量%以下である。
【0086】
繰り返しイミダゾール単位を有するポリマーと塩基との反応は、大気圧下、減圧下または超大気圧(superatmospheric pressure)下で行なわれてもよい。反応温度はまた重要ではない。しかしながら、通常、−20°〜200℃、好ましくは20°〜200℃及び特に好ましくは50°〜120℃であるが、これに限定されるものではない。
【0087】
反応時間は、上記パラメーターによって異なる。数分後、ガスがかなり発生するが、これに限定されるものではない。脱プロトン化を完全に行なおうとする場合には、10分〜48時間でありうるより長い反応時間が必要である場合があるであろう。副反応を防止するために、不活性ガス、特に窒素及びアルゴンの使用が特に有用であることが同様にして見出された。
【0088】
本発明を目的として、段階B)の反応混合物を、下記一般式:
【0089】
【化19】

【0090】
【化20】

【0091】
【化21】

【0092】
【化22】

【0093】
および/または
【0094】
【化23】

【0095】
の少なくとも1つのホスホン酸塩、好ましくは一般式(7)、(8)および/または(9)のホスホン酸塩と、次の段階C)で反応させる。ここで、ホスホン酸塩は単独であるいは混合物として使用されてもよい。
【0096】
基R及びRは、それぞれ独立して、水素原子または1〜20炭素原子を有する基である。
【0097】
基R、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子または1〜20炭素原子を有する基であり、好ましくは分岐鎖若しくは枝なし鎖のアルキル、シクロアルキル若しくはアルコキシ基または置換された若しくは非置換のアリール若しくはヘテロアリール基である。本発明で特に好ましいアルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アリールまたはヘテロアリール基は、1〜20、好ましくは1〜12、好ましくは1〜6、特に1〜4個の、炭素原子を有する、上記好ましい基である。
【0098】
基R、R及びRの少なくとも1つが水素原子であることが特に非常に好ましく、基R、R及びRすべてが水素原子であることが好ましいことが判明した。
【0099】
基R及びRは、それぞれ独立して、1〜20炭素原子を有する基である。
【0100】
基Yは、化学結合または1〜20炭素原子を有する基であり、好ましくは分岐鎖若しくは枝なし鎖のアルキル、シクロアルキル若しくはアルコキシ基または置換された若しくは非置換のアリール若しくはヘテロアリール基である。本発明で特に好ましいアルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アリールまたはヘテロアリール基としては、1〜20、好ましくは1〜12、好ましくは1〜6、特に1〜4個の、炭素原子を有する、上記好ましい基がある。基Yは、2炭素原子を有する基であることが特に好ましい。
【0101】
基Xは、脱離基である。本発明を目的として、脱離基は、求核置換反応の本発明の場合には、置換反応中に離脱する基である。さらなる詳細な説明のためには、専門文献、例えば、March, Jerry, Advanced Organic Chemistry, Wiley Interscience, 1985、特にp. 179を参照してもよい。
【0102】
好ましい脱離基としては、下記の基が挙げられる:
ハロゲン原子、好ましくは塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子、下記一般式の基:
【0103】
【化24】

【0104】
ただし、Rは、フッ素化された若しくはフッ素化されない、直鎖若しくは分岐鎖の脂肪族若しくは脂環式の基または置換された若しくは非置換の芳香族基、好ましくは1〜6炭素原子を有するアルキル基、CF、フェニルまたはパラ−トシル、アルキルスルフェート、好ましくはメチルスルフェート、エチルスルフェート、カルボキシレート、好ましくはホルメート、アセテートである。
【0105】
塩素原子、臭素原子及びパラ−トルエンスルホネートが特に有用であることが見出された。
【0106】
数vは、基Yに結合する基Zの数であり、1〜10の整数であり、好ましくは1である。
【0107】
基Y’は、化学結合または1〜20炭素原子を有する基であり、好ましくは分岐鎖若しくは枝なし鎖のアルキル、シクロアルキル若しくはアルコキシ基または置換された若しくは非置換のアリール若しくはヘテロアリール基である。本発明で特に好ましいアルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アリールまたはヘテロアリール基としては、1〜20、好ましくは1〜12、好ましくは1〜6、特に1〜4個の、炭素原子を有する、上記好ましい基がある。
【0108】
本発明を目的として特に好ましいホスホン酸塩は、下記式(7a)及び(8a)を有する:
【0109】
【化25】

【0110】
【化26】

【0111】
ただし、mは、0〜11、即ち、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10及び11、好ましくは1〜6、好ましくは2〜4、特に2である。
【0112】
ホスホン酸塩の量は、望ましい修飾度合いによって異なる。出発ポリマーのN−H基に対して、0.01〜5モル当量、好ましくは0.1〜2.5モル当量、より好ましくは0.7〜1.5モル当量、特に0.9〜1.1モル当量の使用が好ましい。
【0113】
ポリマーの調製に使用できるホスホン酸塩は、当業者に既知である。
【0114】
繰り返しイミダゾール単位を有する脱プロトン化ポリマーと、ホスホン酸塩との反応は、大気圧下、減圧下または超大気圧(superatmospheric pressure)下で行なわれてもよい。反応温度はまた重要ではない。しかしながら、通常、−20°〜200℃、好ましくは20°〜200℃及び特に好ましくは50°〜120℃であるが、これに限定されるものではない。反応時間は、上記パラメーターによって異なる。通常、反応は、2〜48時間の時間がたつと終了するであろう。
【0115】
副反応を防止するために、不活性ガス、特に窒素及びアルゴンの使用が特に有用であることが同様にして見出された。
【0116】
ホスホン酸基で修飾されたポリアゾールを調製するために、段階C)の反応混合物は、酸で酸性化されてもよい。適当な酸は、25℃のpKが6未満、特に5未満、特に好ましくは4未満であることが好ましい。ここで、pKは、水における酸定数の10を基準としたマイナスの対数である。
【0117】
本発明で特に好ましく使用される酸としては、特に、HF−SBF、HClO、HI、HSO、HBr、HCl、Ar’SOH(この際、Ar’は、アリール基である)、CH(CN)、HNO、HF、HNO、R’COOH(この際、R’は、1〜20炭素原子を有するアルキルまたはシクロアルキルである)、HCOCHCOH、HCO、HSO及びHPOが挙げられる。
【0118】
段階B)の反応混合物の酸性化は、大気圧下、減圧下または超大気圧(superatmospheric pressure)下で行なわれてもよい。反応温度はまた重要ではない。しかしながら、通常、−20°〜200℃、好ましくは20°〜200℃及び特に好ましくは25°〜50℃であるが、これに限定されるものではない。
【0119】
反応時間は、上記パラメーターによって異なる。反応は、通常、10分〜48時間の反応時間がたつと終了する。
【0120】
修飾されたポリアゾールの構造は、当業者には自明である。例えば、一般式(9)のホスホン酸塩を使用すると、脱プロトン化ポリマーの付加は、通常、基R及びRを有する二重結合の炭素原子で起こる。したがって、式(6)の繰り返しイミダゾール単位を有するポリマーの反応によって、一般的に、下記一般式:
【0121】
【化27】

【0122】
の繰り返しイミダゾール単位を有するポリマーが生じる。
【0123】
これに対して、一般式(8)のホスホン酸塩を使用することによって、通常、反対方向で二重結合に付加される。したがって、式(6)の繰り返しイミダゾール単位を有するポリマーの反応により、下記一般式:
【0124】
【化28】

【0125】
の繰り返しイミダゾール単位を有するポリマーが一般的に得られる。
【0126】
ホスホン酸基を含み、かつ一般的(1)および/または(2)の繰り返しイミダゾール単位を有するポリマーの単離は、それ自体既知の方法で行なわれる。本発明の好ましい実施態様においては、大気圧下、減圧下または超大気圧下で溶剤を蒸発させることによって単離される。本発明のさらなる好ましい実施態様においては、適当に過剰で使用される、非溶剤、好ましくは水、アルコールまたはこれらの混合物中で沈殿させることによって単離される。
【0127】
さらに、本発明のポリマーは、極性溶剤に対して良好な溶解性を有する。これは、溶液からさらに処理できるため、次の処理において非常に好ましい。100℃でのN,N−ジメチルアセトアミドにおけるホスホン酸基を含むポリマーの溶解度は、それぞれ、100gの溶液に対して、好ましくは少なくとも0.1g、好ましくは少なくとも1g、特に少なくとも5gである。
【0128】
さらに伝導率を上げるために、ホスホン酸基を含む本発明のポリマーは、ドープされることが好ましい。ドープによって、即ち、ポリマー中にドーパントを存在させることによって、ドープされていないポリマーに比べて、プロトン伝導性が向上する。本発明のポリマー用のドーパントは、酸、好ましくは無機酸である。本発明を目的として、酸は、すべてのルイス及びブレンステッド酸、好ましくは無機のルイス及びブレンステッド酸である。ポリ酸、特にイソポリ酸及びヘテロポリ酸、ならびに様々な酸の混合物もまた使用できる。
【0129】
本発明のポリマーの伝導率は、ドープの程度の影響を受けうる。伝導率は、最大値に到達するまで、ドーパントの濃度の上昇に伴って増加する。本発明によると、ドープの程度は、ポリマーの繰り返し単位1モル当たりの、酸のモルとして報告される。本発明を目的として、3〜30、特に5〜18のドープの程度が好ましい。
【0130】
本発明に従って特に好ましいドーパントは、硫酸及びホスホン酸である。特に好ましいドーパントは、ホスホン酸(HPO)である。この酸は、85重量%以下、好ましくは30〜83重量%、特に好ましくは50〜80重量%及び非常に特に好ましくは60〜75重量%の濃度で使用できる。
【0131】
公知のポリアゾール膜は、一般的に、少なくとも85重量%の濃度を有するホスホン酸でドープされる。しかしながら、このような高濃度のホスホン酸は、膜の機械的安定性を損なうため、この膜は燃料電池では時期早々であるという問題がある。
【0132】
しかしながら、驚くべきことに、ホスホン酸で修飾されたポリアゾールは、P/Nモル比の増加に伴って膨潤性が増加して、公知のポリアゾールに比べて有意に良好な膨潤挙動を示すことを見出した。
【0133】
ホスホン酸基で修飾されたポリアゾールは、イオノマーとして特に好ましく使用される。イオノマーは、特に、触媒で予めドープされた、電極の処理に使用される。適当な触媒は、特に、白金および/またはルテニウム等の貴金属を含む。本発明によるイオノマーを使用することによって、触媒とPEMとの接触が改善され、燃料電池の性能及び長期間の安定性が驚くほど向上する。
【0134】
さらに、ホスホン酸基で修飾されたポリアゾールは、特に、高温燃料電池用の膜を製造するのに適する。これを目的としては、特に、0.02〜0.25、好ましくは0.05〜0.21、特に好ましくは0.07〜0.17の範囲のP/N/モル比を有するポリアゾールが使用される。驚くべきことに、このようなポリアゾールは、上記したような範囲の濃度を有するホスホン酸でドープした後に、非常に高い伝導率を比較的高い安定性で有し、これによりドープされたポリアゾール膜は燃料電池の膜として使用するのに特に適することを見出した。
【0135】
その特性プロフィールによって、本発明のポリマーはまた、既知の高分子電解質膜へのコーティングとしての用途に適するあるいは高分子電解質膜を製造するための既知のポリマー、特にポリアゾールとのブレンドとして使用できる。公知の高分子電解質膜は、一方の側または両側に修飾されたポリアゾールの層が形成されてもよく、この際のポリアゾールコーティングの厚みは、通常、5〜30μm、好ましくは10〜25μmである。高分子電解質膜の厚みは、通常、5μm〜2000μm、好ましくは10μm〜1000μm、特に好ましくは30μm〜200μmであるが、これに限定されるものではない。
【0136】
本発明はまた、本発明によるホスホン酸基を含む少なくとも1つのポリマーを有する膜−電極ユニットを提供するものである。膜−電極ユニットのさらなる情報に関しては、専門文献、特に米国特許第4,191,618号、米国特許第4,212,714号及び米国特許第4,333,805号を参照してもよく、これらの文献は本特許出願に参考によって明らかに引用される。
【0137】
ホスホン酸基で修飾されたポリマーが使用できる分野としては、特に、燃料電池への、電気分解への、キャパシターへの及びバッテリーシステムへの使用が挙げられる。本発明のポリマーは、燃料電池に特に好ましく使用される。したがって、本発明に従って修飾されたポリアゾールを有する燃料電池もまた本発明によって提供される。
【0138】
本発明を、実施例及び比較例によって以下で詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。
【0139】
膜の伝導性は、イオン交換能(IEC)として表わされる酸基の含量によってかなり異なる。イオン交換能を測定するために、3cm直径の試料を打ち抜いて、100mlの水の入ったガラス製のビーカーに入れる。遊離した酸を、0.1M NaOHで滴定する。次に、この試料を取り出して、過剰の水を軽くたたいて除き、試料を160℃で4時間乾燥する。さらに、乾燥重量、m、を、0.1mgの精度で重量測定法で測定する。次に、イオン交換能を、下記式によって、最初の滴定の終点までの0.1M NaOHの消費量、V(ml)、及び乾燥重量、m(mg)から算出する。
【0140】
【数1】

【0141】
膜の膨潤性は、酸でドープした後の面積の増加として算出される。
【0142】
比伝導率は、白金電極(ワイヤ、0.25mm直径)を用いた低電圧方式で4ポール配置した(in a 4-pole arrangement)インピーダンス分光分析(impedance spectroscopy)によって測定する。集電電極間の距離は2cmである。得られるスペクトルを、オーム抵抗及びキャパシターを平行に配置してなる簡単なモデルを用いて評価する。リン酸でドープした膜の試料断面を、試料を載せる直前に測定する。温度依存性を測定するために、測定セルをオーブン中で所望の温度にし、さらに試料のすぐそばに位置したPt−100抵抗温度計によって温度を調節する。所望の温度に到達したら、試料をこの温度に10分間維持した後、測定を開始する。
【0143】
PBIの一般的なリン酸化方法:
N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)における15%濃度のポリベンズイミダゾール溶液 80gを、ゆっくり80℃まで加熱して、DMAcで350mlに希釈した。次に、1元素単位当たり2.1当量の適当な塩基、例えば、実施例3では11.2gのKCO、を加えたところ、溶液は深い赤色になった。この混合物を80℃で3時間攪拌した。さらに、1元素単位当たり2当量のホスホン酸2−ブロモエチル(19.0g)を、滴下漏斗から反応混合物に滴下した。この反応混合物を85℃で60時間攪拌した。酸性化した後、反応混合物を、3リットルの水/エタノール混合液(1:1)に注いだ。沈殿物を濾別して、水及びメタノールでよく洗浄して、乾燥した。ポリマーを、DMAcに溶かして、メタノールで再沈殿させて、減圧下で少なくとも24時間乾燥した。
【0144】
【表1】

【0145】
【表2】

【0146】
【表3】

【0147】
Rikukawa et al.に記載されるのと同様の比較例:
A)モデル反応
A.1)モデル反応1
20mg(2.4mmol)のLiHを、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)における0.44g(2.3mmol)の2−フェニルベンズイミダゾールの溶液25mlに添加した。この混合物を、85℃に加熱し、この温度で2時間攪拌した。次に、0.36gのホスホン酸2−クロロエチル(90%、Aldrich)及び0.32mlのトリエチルアミン(25mlのDMAcに溶解)を、30分かけて25℃で滴下した。反応混合物を室温で24時間攪拌した後、200mlの水に注いだ。沈殿物を濾別して、乾燥した。収率は80%であった。予想された産物は302g/モルの分子量であるものの、主要なピークがFD質量スペクトルで366.7g/モルのところで観察された。水の濾液の試験は同様にしてうまくいかなかった。
【0148】
A.2)モデル反応2
40mg(4.8mmol)のLiHを、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)における0.55g(2.8mmol)の2−フェニルベンズイミダゾールの溶液25mlに添加した。この混合物を、85℃に加熱し、この温度で2時間攪拌した。次に、0.54gのホスホン酸2−クロロエチル(90%、Aldrich)及び1mlのトリエチルアミン(25mlのDMAcに溶解)を、30分かけて25℃で滴下した。反応混合物を室温で24時間攪拌した後、200mlの水に注いだ。沈殿物を濾別して、乾燥した。収率は85%であった。302g/モルの主要なピークはFD質量スペクトルでは見つけられなかった。H−NMRスペクトルから、固体は出発成分である2−フェニルベンズイミダゾールであることが示された。
【0149】
A.3)モデル反応3
130mg(3.25mmol)のNaH(油における60%分散液)を、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)における0.51g(2.6mmol)の2−フェニルベンズイミダゾールの溶液25mlに添加した。この混合物を、85℃に加熱し、この温度で2時間攪拌した。次に、0.44gのホスホン酸2−クロロエチル(90%、Aldrich)及び1mlのトリエチルアミン(25mlのDMAcに溶解)を、30分かけて25℃で滴下した。反応混合物を室温で24時間攪拌した後、200mlの水に注いだ。沈殿物を濾別して、乾燥した。収率は74%であった。302g/モルの主要なピークはFD質量スペクトルでは見つけられなかった。水の濾液の試験は同様にしてうまくいかなかった。
【0150】
A.4)モデル反応4
3mlのトリエチルアミンを、25℃で30分かけてN,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)における0.41g(2.1mmol)の2−フェニルベンズイミダゾールの溶液25mlに添加した。この混合物を50℃に加熱した。次に、0.36g(2.2mmol)のホスホン酸2−クロロエチル(90%、Aldrich)を、滴下漏斗から滴下した。この反応混合物を50℃で24時間攪拌した後、200mlの水に注いだ。沈殿物を濾別して、乾燥した。収率は85%であった。302g/モルの主要なピークはFD質量スペクトルでは見つけられなかった。水の濾液の試験は同様にしてうまくいかなかった。
【0151】
B)ポリマーの類似反応(analogous reaction)
N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)における15%濃度のポリベンズイミダゾール溶液 20gを、ゆっくり85℃まで加熱して、25mlのDMAcで希釈した。次に、80mgのLiHを加えたところ、溶液は深い赤色になった。この混合物を85℃で3時間攪拌した。さらに、3.12gのホスホン酸2−クロロエチル塩(25mlのDMAcに溶解、1繰り返し単位当たり2.0当量)及び3.0mlのトリエチルアミンを、滴下漏斗から反応混合物に滴下した。この反応混合物を25℃で48時間攪拌した。酸性化した後、反応混合物を、1リットルの水/エタノール混合液(1:1)に注いだ。暗い茶色の沈殿物を濾別して、アセトン及びエタノールでよく洗浄して、60℃で減圧下で48時間乾燥した。
【0152】
収率:3.7g(理論値の53%)
溶解度:DMSOでは不溶性、濃硫酸でのみ可溶性
修飾の程度 n(P)/n(N):0.25(4gが得られた)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式:
【化1】

および/または
【化2】

および/または
【化3】

および/または
【化4】

ただし、基Ar、Ar及びArは、4価、2価または3価の芳香族または複素環式芳香族基であり、
Yは、化学結合(bond)または1〜20炭素原子を有する基であり、
vは、1〜10の整数であり、ならびに
Zは、下記一般式の基であり、
【化5】

ただし、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子または1〜20炭素原子を有する基である、
の繰り返しイミダゾール単位を有する機能性ポリアゾール(functionalized polyazol)であって、該ポリアゾールは有機溶剤に可溶性であることを特徴とする機能性ポリアゾール。
【請求項2】
下記一般式:
【化6】

および/または
【化7】

および/または
【化8】

および/または
【化9】

ただし、基Ar、Ar及びArは、4価、2価または3価の芳香族または複素環式芳香族基であり、
Yは、化学結合または1〜20炭素原子を有する基であり、
vは、1〜10の整数であり、ならびに
Z’は、下記一般式の基であり、
【化10】

または
【化11】

ただし、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子または1〜20炭素原子を有する基であり、ならびにR及びRは、それぞれ独立して、1〜20炭素原子を有する基である、
の繰り返しイミダゾール単位を有する機能性ポリアゾール(functionalized polyazol)。
【請求項3】
ポリマーは、下記式(5a):
【化12】

ただし、nは、10以下の整数である、
の繰り返しベンズイミダゾール単位を有する、請求項1または2に記載のポリアゾール。
【請求項4】
酸でドープされる、請求項1〜3のいずれかに記載のポリアゾール。
【請求項5】
ドープの程度が3〜15である、請求項1〜4のいずれかに記載のポリアゾール。
【請求項6】
基Yは1または2炭素原子を有する基である、請求項1〜5のいずれかに記載のポリアゾール。
【請求項7】
窒素に対するリンのモル比、P/Nが0.02〜0.5である、請求項1〜6のいずれかに記載のポリアゾール。
【請求項8】
A)下記一般式:
【化13】

および/または
【化14】

の繰り返しイミダゾール単位を有するポリマーを溶剤に溶解し、
B)この溶液を塩基と反応させて、脱プロトン化し、
C)段階B)の溶液を、下記一般式:
【化15】

【化16】

【化17】

【化18】

および/または
【化19】

ただし、R、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子または1〜20炭素原子を有する基であり、
及びRは、それぞれ独立して、1〜20炭素原子を有する基であり、
Xは、脱離基であり、ならびに
Y’は、化学結合または1〜20炭素原子を有する基である、
の少なくとも一のホスホン酸塩と反応させることを特徴とする、請求項2〜7のいずれかに記載の機能性ポリアゾールの調製方法。
【請求項9】
段階C)で得られる溶液は酸で酸性化される、請求項1及び3〜7のいずれかに記載の機能性ポリアゾールを調製するための、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
7未満、好ましくは6未満、特に5未満のpKを有する塩基を段階A)で使用する、請求項8または9に記載の方法。
【請求項11】
下記一般式:
【化20】

【化21】

ただし、mは、0〜11の整数であり、および基X、R及びRは、上記と同様の定義である、
のホスホン酸塩が段階B)でホスホン酸塩として使用される、請求項8〜10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
請求項9に記載の方法によって得られるポリアゾール。
【請求項13】
請求項1〜7及び12のいずれかに記載のポリアゾールで被覆される高分子電解質膜。
【請求項14】
請求項1〜7及び12のいずれかに記載のポリアゾールを有する高分子電解質膜。
【請求項15】
請求項13または14に記載の高分子電解質膜を有する膜−電極ユニット。
【請求項16】
請求項1〜7及び12のいずれかに記載のポリアゾールに基づくイオノマーを有する膜−電極ユニット。
【請求項17】
請求項15または16に記載の膜−電極ユニットを有する燃料電池。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式:
【化1】

および/または
【化2】

および/または
【化3】

および/または
【化4】

ただし、基Ar、Ar及びArは、4価、2価または3価の芳香族または複素環式芳香族基であり、
Yは、化学結合(bond)または1〜20炭素原子を有する基であり、
vは、1〜10の整数であり、ならびに
Zは、下記一般式の基であり、
【化5】

ただし、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子または1〜20炭素原子を有する基である、
の繰り返しイミダゾール単位を有する機能性ポリアゾール(functionalized polyazol)であって、該ポリアゾールのN,N−ジメチルアセトアミドにおける溶解度は、100℃で、100gの溶液に対して、少なくとも0.1gであることを特徴とする機能性ポリアゾール。
【請求項2】
下記一般式:
【化6】

および/または
【化7】

および/または
【化8】

および/または
【化9】

ただし、基Ar、Ar及びArは、4価、2価または3価の芳香族または複素環式芳香族基であり、
Yは、化学結合または1〜20炭素原子を有する基であり、
vは、1〜10の整数であり、ならびに
Z’は、下記一般式の基であり、
【化10】

または
【化11】

ただし、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子または1〜20炭素原子を有する基であり、ならびにR及びRは、それぞれ独立して、1〜20炭素原子を有する基である、
の繰り返しイミダゾール単位を有する機能性ポリアゾール(functionalized polyazol)。
【請求項3】
ポリマーは、下記式(5a):
【化12】

ただし、nは、10以下の整数である、
の繰り返しベンズイミダゾール単位を有する、請求項1または2に記載のポリアゾール。
【請求項4】
酸でドープされる、請求項1〜3のいずれかに記載のポリアゾール。
【請求項5】
ポリマーの繰り返し単位1モル当たりの、酸のモルとして表わされる、ドープの程度が3〜15である、請求項4に記載のポリアゾール。
【請求項6】
基Yは1または2炭素原子を有する基である、請求項1〜5のいずれかに記載のポリアゾール。
【請求項7】
元素分析によって測定される際の、窒素に対するリンのモル比、P/Nが0.02〜0.5である、請求項1〜6のいずれかに記載のポリアゾール。
【請求項8】
A)下記一般式:
【化13】

および/または
【化14】

の繰り返しイミダゾール単位を有するポリマーを溶剤に溶解し、
B)この溶液を塩基と反応させて、脱プロトン化し、
C)段階B)の溶液を、下記一般式:
【化15】

【化16】

【化17】

【化18】

および/または
【化19】

ただし、R、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子または1〜20炭素原子を有する基であり、
及びRは、それぞれ独立して、1〜20炭素原子を有する基であり、
Xは、離脱基であり、ならびに
Y’は、化学結合または1〜20炭素原子を有する基である、
の少なくとも一のホスホン酸塩と反応させることを特徴とする、請求項2〜7のいずれかに記載の機能性ポリアゾールの調製方法。
【請求項9】
段階C)で得られる溶液は酸で酸性化される、請求項1及び3〜7のいずれかに記載の機能性ポリアゾールの、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
7未満、好ましくは6未満、特に5未満のpKを有する塩基を段階A)で使用する、請求項8または9に記載の方法。
【請求項11】
下記一般式:
【化20】

【化21】

ただし、mは、1〜11の整数であり、および基X、R及びRは、上記と同様の定義である、
のホスホン酸塩が段階B)でホスホン酸塩として使用される、請求項8〜10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
請求項9に記載の方法によって得られるポリアゾール。
【請求項13】
請求項1〜7及び12のいずれかに記載のポリアゾールで被覆される高分子電解質膜。
【請求項14】
請求項1〜7及び12のいずれかに記載のポリアゾールを有する高分子電解質膜。
【請求項15】
請求項13または14に記載の高分子電解質膜を有する膜−電極ユニット。
【請求項16】
請求項1〜7及び12のいずれかに記載のポリアゾールに基づくイオノマーを有する膜−電極ユニット。
【請求項17】
請求項15または16に記載の膜−電極ユニットを有する燃料電池。

【公表番号】特表2006−516294(P2006−516294A)
【公表日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−518655(P2004−518655)
【出願日】平成15年7月2日(2003.7.2)
【国際出願番号】PCT/EP2003/007020
【国際公開番号】WO2004/005373
【国際公開日】平成16年1月15日(2004.1.15)
【出願人】(505009737)ピーイーエムイーエーエス ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (2)
【Fターム(参考)】