説明

機能性脂質構築物

本発明は、細胞および多細胞構造物の表面で発現される機能的部分において定性的および定量的変化を生じさせる方法、並びにそのような方法で使用される機能性脂質構築物に関する。特に、本発明は、機能性脂質構築物、並びに診断的および治療的応用(血清診断を含む)における前記機能性脂質構築物の使用に関し、前記機能的部分は炭水化物、ペプチド、化学反応基、結合因子または蛍光団である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細胞および多細胞構造物の表面で発現される機能的部分において定性的および定量的変化を生じさせる方法、並びにそのような方法で使用される機能性脂質構築物に関する。
特に、本発明は、機能性脂質構築物、並びに診断的および治療的応用(血清診断を含む)における前記の使用に関し、前記機能的部分は炭水化物、ペプチド、化学反応基、結合因子または蛍光団である。
【背景技術】
【0002】
リポソーム、細胞および多細胞構造物の表面で発現される機能的部分において定性的および定量的変化を生じさせる能力は、一連の診断的および治療的応用を提供する。機能的部分は炭水化物、ペプチド、化学反応基(例えばマレイミド)、結合因子(例えばビオチン)または蛍光団(例えばフルオレセイン)である。
国際出願PCT/NZ2005/000052(公開番号WO 2005/090368)の明細書には、細胞および多細胞構造物の表面で発現される炭水化物のレベルに定性的および定量的変化を生じさせる方法において使用される炭水化物-脂質構築物の調製が記載されている。血液型判定および診断で使用される品質管理細胞の調製を目的とする前記構築物の使用が記載されている。
国際出願PCT/NZ2006/000245(公開番号WO 2007/035116)の明細書には、前記炭水化物がポリマーヒアルロン酸である炭水化物-脂質構築物のまた別の調製方法が記載されている。胚を改変して子宮内膜細胞との結合を促進する構築物の使用が記載されている。
国際出願PCT/NZ2007/000256(公開番号WO 2008/030115)の明細書には、蛍光団-脂質構築物の調製が記載されている。細胞を蛍光により標識する方法における前記構築物の使用が記載されている。
細胞の表面で発現されるペプチドにおいて変化を生じさせる公知の方法は遺伝子操作、膜ペプチドの化学的改変、および “細胞表面ペインティング”である。細胞表面ペインティングは脂質アンカー、例えばGPIを用いる(Legler et al. 2008, Morandat et al. 2002, Premkumar et al. 2001, Ronzon et al. 2004, Skountzou et al. 2007)。
【0003】
内因的に発現されるペプチドの変化を生じさせるこれらの方法の他に、ビオチン-アビジンコンジュゲーションを利用して、外因的に調製したペプチドを膜脂質と結合させることができる。ビオチンは、10-15 mol/Lの規模の解離定数(KD)でテトラマータンパク質のアビジンと結合する。この強力な結合は多数の実験室での応用で利用されている。
これらの実験室での応用では、ビオチンは、例えば炭水化物またはペプチドのような分子と連結される。アビジンとビオチンとの優先的結合は、ペプチドと膜脂質とのカップリングの他に、多数の単離または分離における応用で利用されている。
国際出願PCT/NZ02/00214(公開番号WO 03/039074)の明細書には、抗原(例えばペプチド)を細胞の表面に局在化させる“2工程方法”が記載されている。前記方法では、ビオチン化グリコシド(BioG)がそれらのジアシル脂質テールを介して当該細胞の細胞膜内に取り込まれるに十分な時間および温度で、BioG分子が細胞懸濁物と接触させられる。
続いて、外因的に調製したアビジニル化ペプチドをBioG改変細胞と接触させることによって、前記アビジニル化ペプチドを前記改変細胞の表面に局在化させることができる。あるいは、外因的に調製したビオチン化ペプチドを、ビオチン-アビジン架橋により改変細胞の表面に局在化させることができる。
前記“2工程方法”のどちらの変型においても、細胞表面に局在化されるペプチド量は、改変細胞を提供するためにBioG分子を細胞懸濁物と接触させる濃度、時間および温度を管理することによって制御することができる。しかしながら、この方法の有用性は、生体適合性媒体(例えば食塩水)におけるBioGの利用性および分散性によって制限される。
【0004】
国際出願PCT/NZ2005/000052(公開番号WO 2005/090368)の明細書には、細胞の表面に炭水化物抗原を局在化させる“1工程方法”が記載されている。前記“1工程方法”は、炭水化物-脂質構築物を利用し、前記構築物は、生体適合媒体中で分散性であり、したがって生存率を低下させることなく改変細胞を調製するために用いることができる。しかしながら、生体適合媒体中で相応な分散性を有し、さらにペプチドに対して普遍的に利用可能なペプチド-脂質構築物を調製する方法はこれまで報告されていない。
セルフアッセンブリ性脂質構造物(例えばリポソーム)でのペプチドの取り込み前の個々の成分としてのリン脂質とペプチドとの結合については比較的わずかな研究しか実施されていない。しかしながら、ペプチドとリポソーム表面との共有結合については多様な標準的技術が報告されている。
Martinら(1980)はペプチドを含む部分をリポソーム表面に結合させる方法について概説している。
Blumeら(1993)は、Kung & Redemann(1986)の方法による水溶性Glu-プラスミノーゲンとリポソームとの結合について記載している。化学的ECDI(1-エチル-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミドヒドロクロリド)を用いてリポソームを活性化し、その後で活性化リポソーム懸濁物とGlu-プラスミノーゲンとインキュベートする。ジステアリルホスファチジルエタノールアミン(DSPE)-PEG-COOHの末端に共有結合したGlu-プラスミノーゲンを有するプロテオ-PEG被覆リポソームが提供される。
【0005】
Haselgreubletら(1995)は、イムノリポソームの調製を容易にするために用いられるヘテロ二官能性架橋リンカーについて記載している。前記架橋リンカーは、ポリ(エチレングリコール)(PEG、平均分子量800ダルトン(18量体))のジアミン誘導体から合成される。前記架橋リンカーは、官能基として2-(ピリジルチオ)プロプロニル(PDP)およびN-ヒドロキシスクシンイミドエステル(NHS)を有する。
Ishidaら(2001)は、ポリエチレングリコール結合トランスフェリンを保持するリポソームの調製について記載している。トランスフェリンはDSPE-PEG-COOHの末端カルボキシル残基を介して連結された。前記リポソームは、化学療法剤またはプラスミドDNAの標的細胞へのin vivo細胞質誘導で有用であると提唱された。
Massaguerら(2001)は、化学的に活性化させたリポソームの表面へのペプチド配列(GGRGRS)および疎水性誘導体の取り込みについて記載している。前記取り込みは、N-グルタリルジパルミトイルホスファチジルコリン(NGPE)により実施された。
Massaguerら(2001)は、in vivoにおける潜在的な応用を考慮して(in vivo応用では、無菌性および簡便性は最も重要ないくつかの要件であろう)、余分な工程を必要とするリポソーム表面の化学反応に依存するプロセスは工業レベルでのスケールアップにはより困難を伴うであろうということを注記した。ペプチド配列の疎水性誘導体は、リポソーム表面への取り込みのための最適特性を提供するものと確認された。
Chungら(2004)は、細胞膜に取り込まれたDOPE-PEGの抗原決定基保護作用について記載し、生物学的細胞応答を調節する脂質-PEG(n)(s)の潜在能力について推測し、さらにこの概念をPEG鎖の末端への機能的分子の導入にまで拡大している。
Katoら(2004)は、巨大分子タンパク質を哺乳動物の生細胞膜にけい留する方法について記載している。疎水性ポリ(エチレングリコール)(PEG80)と結合させたジオレイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)誘導体が合成膜アンカーとして用いられた。ペプチドは、合成膜アンカーのアミノ反応性N-ヒドロキシスクシンイミド誘導体を介してPEG部分の遠位端に連結された。
【0006】
PEG80部分は水中での合成膜アンカーの可溶化を促進した。Katoら(2004)が記載したように、アンカーが水に不溶性である場合、コンジュゲートを細胞膜にけい留するために、望ましくなくかつ複雑なプロセス(例えばリポソームの調製およびリポソームと細胞膜との融合)が要求されよう。
Katoら(2004)が記載したまた別の利点は、高い親水性-親油性バランス値(高いオキシエチレン単位数を有するPEGスペーサーの属性である)をもつ合成膜アンカーは細胞溶解活性をもたないと結論されるということであった。しかしながら、合成膜アンカー(高いオキシエチレン単位数をもつPEGスペーサーを含む)の使用に際しては困難が生じる。
第一に、コンジュゲートされるペプチドまたは他の内因性細胞表面ペプチドの発現はPEGスペーサーによって隠蔽される可能性がある。第二に、高いオキシエチレン単位数を有するPEGスペーサーは、タンパク質(ある種の個体では抗体を含む)の非特異的結合および/または補体カスケードの非特異的活性化を誘引する可能性がある。
Wingerら(1996)は、ブロモアセチル化DSPEとそのC-末端に最小限のヒトトロンビン-レセプターペプチドアゴニスト(HS---SerPheLeuLeuArgAsn)を含むチオール末端を有するデカペプチドとの結合について記載している。
Hashimotoら(1986)は、ヨードアセチル化DSPEとチオール化化合物とのコンジュゲーションについて記載している。
【0007】
セルフアッセンブリ性脂質構造物(例えばリポソーム)中に個々の成分として組み入れることができるペプチド-脂質構築物を“1工程方法”によって調製する普遍的方法が希求される。前記方法は、生体適合性媒体中で容易に分散でき、さらに望ましくは細胞および多細胞構造物の膜に自発的に組み入れられるペプチド-脂質構築物を提供するはずである。
これらの特徴を有するペプチド-脂質構築物は、機能化されたリポソームの調製以外に、一連の治療的および診断的応用(特に血清診断)で有用性を有すると期待される。
本発明の目的は、生体適合性媒体中で分散性であり、さらに細胞および多細胞構造物の膜に自発的に取り込まれる機能性脂質構築物を提供することである。
本発明の目的は、生体適合性媒体中で分散性であり、さらに細胞および多細胞構造物の膜に自発的に取り込まれるペプチド-脂質構築物の調製に使用する機能性脂質構築物を提供することである。
本発明の目的は、生体適合性媒体中で分散性であり、さらに細胞および多細胞構造物の膜に自発的に取り込まれるペプチド-脂質構築物を提供することである。
上記の目的は、ともかくも有用な選択を人々に提供するという目的とは区別して理解されるべきである。
【発明の概要】
【0008】
第一の特徴では、本発明は、構造F-S-Lの機能性脂質構築物を提供する。式中、Fは機能的部分であり、Lはジアシルまたはジアルキル脂質であり、SはFをLに共有結合させるスペーサーであり、以下の基礎構造を含む:
【0009】

【0010】
式中、gは整数1、2または3であり、Mは一価の陽イオンまたは置換基であり、さらに*はH以外である。
好ましくは、前記基礎構造は以下であり:
【0011】

【0012】
式中、hは整数1、2、3または4である。
好ましくは、gは整数2であり、さらにhは整数1、2または4である。
好ましくは、MはHまたはCH3である。
好ましくは、Lはジアシルグリセロリン脂質である。より好ましくは、Lはホスファチジルエタノールアミンである。
好ましくは、前記機能性脂質構築物の構造は以下の部分構造を含む:
【0013】

【0014】
式中、vは整数3、4または5であり、M’は一価の陽イオンであり、さらにR1およびR2はそれぞれ独立して脂肪酸trans-3-ヘキサデセン酸、cis-5-ヘキサデセン酸、cis-7-ヘキサデセン酸、cis-9-ヘキサデセン酸、cis-6-オクタデセン酸、cis-9-オクタデセン酸、trans-9-オクタデセン酸、trans-11-オクタデセン酸、cis-11-オクタデセン酸、cis-11-エイコセン酸またはcis-13-ドコセン酸のアルキルまたはアルケニル置換基から成る群から選択される。
好ましくは、Fは、炭水化物、ペプチド、化学反応基、結合因子または蛍光団から成る群から選択される機能的部分である。
【0015】
第一の特徴の第一の変型では、本発明は以下の構造の機能性脂質構築物を提供する:
【0016】

【0017】
式中、Fは炭水化物であり、xは整数2、3または4であり、yは整数1、2または3であり、さらにR3は炭水化物の置換ヒドロキシルのOである。
第一の特徴の第二の変型では、本発明は以下の構造の機能性脂質構築物を提供する:
【0018】

【0019】
式中、Fはペプチドであり、wは整数1または2であり、さらにR3はペプチドのCys残基の置換スルフヒドリルのSである。
第一の特徴の第三の変型では、本発明は以下の構造の機能性脂質構築物を提供する:
【0020】

【0021】
(式中、Fは化学的反応性基マレイミドであり、wは整数1または2である)。
第一の特徴の第四の変型では、本発明は以下の構造の機能性脂質構築物を提供する:
【0022】

【0023】
(式中、Fは結合因子ビオチンあり、さらにkは整数2、3または4である)。
第一の特徴の第五の変型では、本発明は以下の構造の機能性脂質構築物を提供する:
【0024】

【0025】
(式中、Fはフルオレセイン(またはその誘導体の1つ)の蛍光団であり、zは整数3、4または5であり、さらにR3は、フルオレセイン(またはその誘導体の1つ)のイソチオシアネート誘導体のチオシアネート置換基のCである)。
【0026】
好ましくは、前記基礎構造はMCMG(1)と称される以下の構造であるか;
【0027】

【0028】
MCMG(2)と称される以下の構造であるか;
【0029】

【0030】
CMG(1)と称される以下の構造であるか;
【0031】

【0032】
またはCMG(2)と称される以下の構造である:
【0033】


【0034】
第二の特徴では、本発明は構造F-S-Lの水溶性ペプチド-脂質構築物を提供し、式中、Sはスルフィド結合を介してFに連結されるスペーサーであり、以下の基礎構造を含む:
【0035】

【0036】
(式中、gは整数1、2または3であり、Mは一価の陽イオンまたは置換基であり、さらに*はH以外である)。
好ましくは、前記基礎構造は以下の構造であり:
【0037】

(式中、hは整数1、2、3または4である)。
【0038】
好ましくは、gおよびhは整数2である。
好ましくは、M葉HまたはCH3である。
好ましくは、Lはジアシルグリセロリン脂質である。より好ましくは、Lはホスファチジルエタノールアミンである。
好ましくは、前記ペプチド-脂質構築物の構造は以下の部分構造を含む:
【0039】

【0040】
(式中、vは整数3、4または5であり、M’は一価の陽イオンであり、さらにR1およびR2はそれぞれ独立して脂肪酸trans-3-ヘキサデセン酸、cis-5-ヘキサデセン酸、cis-7-ヘキサデセン酸、cis-9-ヘキサデセン酸、cis-6-オクタデセン酸、cis-9-オクタデセン酸、trans-9-オクタデセン酸、trans-11-オクタデセン酸、cis-11-オクタデセン酸、cis-11-エイコセン酸またはcis-13-ドコセン酸のアルキルまたはアルケニル置換基から成る群から選択される)。
好ましくは、前記ペプチド-脂質構築物の構造は以下の部分構造を含む:
【0041】

【0042】
(式中、wは整数1または2であり、さらにR3はペプチドのCys残基の置換スルフヒドリルのSである)。
【0043】
第二の特徴のある実施態様では、本発明は以下の構造のペプチド-脂質構築物を提供する:
【0044】

【0045】
(式中、xおよびyの合計は5より大きい。場合によって、Fは、ペプチドの溶解性を高めるために選択される近位末端配列(PTS)を含むペプチドである)。
上記変型では好ましくは、ペプチドのPTSは、SerLysLysLysLysGly、AlaAlaAlaAla、GlySerGlySerGlyから成る群から選択される。
好ましくは、Cys残基はペプチドの末端Cys残基(Cys)である。
好ましくは、ペプチドの末端配列は、GlyLysLysLysLysSerCys、AlaAlaAlaAlaCys、GlySerGlySerGlyCysCysSerLysLysLysLysGly、CysAlaAlaAlaAla、CysGlySerGlySerGlyから成る群から選択される。
好ましくは、Cys残基は、ペプチドのカルボキシ末端にある当該ペプチドの末端Cys残基である。
好ましくは、Fは、グリコフォリンA、グリコフォリンBまたはその変異(MNS血液型系を含む)から成る群から選択される抗原のエピトープを含むペプチドである。より好ましくは、Fはペプチドリストから選択されるペプチドである。もっとも好ましくは、Fは以下から成る群から選択されるペプチドである:
GlnThrAsnAspLysHisLysArgAspThrTyrAlaAlaAlaAlaAlaCys
GlnThrAsnAspLysHisLysArgAspThrTyrGlySerGlySerGlyCys
GlnThrAsnAspMetHisLysArgAspThrTyrGlySerGlySerGlyCys
SerSerGlnThrAsnAspLysHisLysArgAspThrTyrCys
ThrTyrProAlaHisThrAlaAsnGluValCys
ThrTyrProAlaHisThrAlaAsnGluCys
ProAlaHisThrAlaAsnGluValCys
SerGlnThrAsnAspLysHisLysArgAspCys
CysThrTyrProAlaHisThrAlaAsnGlu。
好ましくは、Lは1,2-O-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスファチジルエタノールアミン(DOPE)および1,2-O-ジステアリル-sn-グリセロ-3-ホスファチジルエタノールアミン(DSPE)から成る群から選択されるグリセロリン脂質である。
【0046】
第二の特徴の例示的な第一の実施態様では、本発明は以下の構造のペプチド-脂質構築物を提供し:
【0047】

【0048】
この構築物はDOPE-Ad-CMG(2)-βAla-Mal-PTS-Milt(K)(IX)と称される。
第二の特徴の例示的な第二の実施態様では、本発明は以下の構造のペプチド-脂質構築物を提供し:
【0049】

【0050】
この構築物はDOPE-Ad-CMG(2)-βAla-Mal-Milt(K,M)(X)と称される。
第二の特徴の例示的な第三の実施態様では、本発明は以下の構造のペプチド-脂質構築物を提供し:
【0051】

【0052】
式中、R1およびR2は両方とも(CH2)7CHCH(CH2)7であり、この構築物はDOPE-Ad-CMG(2)-βAla-Mal-Mur(D14C)(XI)と称される。
第二の特徴の例示的な第四の実施態様では、本発明は以下の構造のペプチド-脂質構築物を提供し:
【0053】

【0054】
式中、R1およびR2はともに(CH2)7CHCH(CH2)7であり、この構築物はDOPE-Ad-CMG(2)-βAla-Mal-Syph(V8C)(XII)と称される。
【0055】
第三の特徴では、本発明は対象の血清中の反応性抗体を検出する方法を提供する。前記方法は、
−本発明の第一の特徴の第一もしくは第二の変形の機能性脂質構築物(F-S-L)、または本発明の第二の特徴のペプチド-脂質構築物を取り込ませて改変された細胞の懸濁液と前記血清のサンプルとを接触させて混合物を提供する工程、
−前記混合物を凝集させるために十分な時間および温度でインキュベートする工程、
および
−前記混合物中の細胞の凝集の程度を決定する工程を含み、この場合、Fは前記反応性抗体に対するエピトープを含む炭水化物またはペプチドである。
場合によって、前記方法は、
−前記混合物中の細胞の凝集の程度を決定する前に、前記混合物に抗-対象グロブリン抗体を添加するという中間工程を含む。
好ましくは、抗-対象グロブリン抗体は抗ヒトグロブリン(AHG)抗体である。
場合によって、Fはペプチドであり、前記方法は、ある量のペプチドを血清サンプルに添加するという予備工程を含み、前記ペプチドの量は非特異的凝集を中和するか、または反応性抗体の特異性を確認するために十分である。
好ましくは、前記反応性抗体は、グリコフォリンA、グリコフォリンBまたはその変異(MNS血液型系を含む)から成る群から選択される抗原に対して反応性である。
好ましくは、前記対象はヒトである。
好ましくは、前記細胞は赤血球である。
【0056】
第三の特徴では、本発明は本発明の第一の特徴の第三の変型の機能性脂質構築物とCys残基を含むペプチドを反応させる工程を含む、本発明の第二の特徴のペプチド-脂質構築物を調製する方法を提供する。
第四の特徴では、本発明は細胞または多細胞構造物の表面で発現される機能的部分において定性的および定量的変化を生じさせる方法を提供する。前記方法は、本発明の第一の特徴の機能性脂質構築物の溶液と細胞または多細胞構造物とを、前記細胞または多細胞構造物への前記構築物の取り込みを可能にするために十分な時間および温度で接触させる工程を含む。
第五の特徴では、本発明は1つもしくは2つ以上の細胞または多細胞構造物を固定する方法を提供する。前記方法は、以下の工程を含む:
−本発明の第一の特徴の第四の変型の構築物の溶液と前記細胞または多細胞構造物とを、前記細胞または多細胞構造物への前記構築物の有効量の取り込みを可能にするために十分な時間および温度で接触させて、改変細胞または多細胞構造物を提供する工程;および
−表面に可逆的に局在化させることができるアビジン被覆支持体と前記改変細胞または多細胞構造物とを接触させる工程。
好ましくは、前記アビジン被覆支持体は、アビジン被覆磁性ビーズから成る群から選択される。
好ましくは、表面への可逆的局在化は磁場の適用による。
【0057】
第五の特徴のある実施態様では、本発明は以下の工程を含む、1つもしくは2つ以上の細胞または多細胞構造物を固定化する方法を提供する:
−前記細胞または多細胞構造物を以下の構造(式中、R1およびR2はともに(CH2)7CHCH(CH2)7である)の構築物の分散物と、前記細胞または多細胞構造物への前記構築物の有効量の取り込みを可能にするために十分な時間および温度で接触させて、改変された細胞または多細胞構造物を提供する工程;
【0058】

【0059】
−前記改変細胞または多細胞構造物をアビジン被覆磁性ビーズと接触させる工程;および
−磁場を適用して、表面に前記ビーズを局在化させる工程。
【0060】
第六の特徴では、本発明は以下の工程を含む、第一および第二の細胞集団の凝集を促進する方法を提供する:
−本発明の第一の特徴の第四の変型の構築物の溶液と前記第一の細胞集団を、前記細胞への前記構築物の有効量の取り込みを可能にするために十分な時間および温度で接触させて、改変された第一の細胞集団を提供する工程;
−本発明の第一の特徴の第四の変型の構築物の溶液と前記第二の細胞集団とを、前記細胞への前記構築物の有効量の取り込み可能にするために十分な時間および温度で接触させて、改変された第一の細胞集団を提供する工程;
−前記集団の一方の改変細胞を過剰のアビジンと接触させる工程;および続いて、
−改変された前記第一の細胞集団と第二の細胞集団とを接触させる工程。
第六の特徴のある実施態様で、本発明は、以下の工程を含む、第一および第二の細胞集団の凝集を促進する方法を提供する:
−以下の構造の構築物の溶液と前記第一の細胞集団を、前記細胞への前記構築物の有効量の取り込みを可能にするために十分な時間および温度で接触させて、改変された第一の細胞集団を提供する工程;
【0061】

【0062】
−前記構築物の溶液と前記第二の細胞集団とを、前記細胞への前記構築物の有効量の取り込みを可能にするために十分な時間および温度で接触させて、改変された第一の細胞集団を提供する工程;
−前記集団の一方の改変細胞を過剰のアビジンと接触させる工程;および続いて、
−改変された前記第一の細胞集団と第二の細胞集団とを接触させる工程。
【0063】
本発明の全ての特徴において、Mは典型的にはH+であるが、別の陽イオン(例えばNa+、K+もしくはNH4+または一価の置換基(例えばCH3)によって置換されてもい。M’の表示は、一価置換基(例えばCH3)であるMを排除する。
ほとんどの部分について、ペプチドのアミノ酸残基は、2007年2月7日付の“Administrative Instruction under the Patent Cooperation Treaty”の付属文書Cの補遺2の表3にしたがい、さらに以下の取り決めにしたがって認定される:
H2N-XaaXaaXaa…..XaaXaaXaa-COOH
表では、許容できる大きさの表を提供するために、対応するアミノ酸残基用一文字コードが利用され得る。
本明細書の記述および特許請求の範囲では、以下の頭文字、用語および語句は以下の意味を有する。
“アビジン”は、鳥類、爬虫類および両生類の卵管で生成されそれらの卵の白身に蓄積されるビオチン結合性テトラマータンパク質、そのビオチン結合性ホモマーおよびそのビオチン結合性改変形(EXTRAVIDINTM、NEUTRAVIDINTMおよびNEUTRALITETMを含む)を意味する。
“ビオチン結合”とは、ビオチン部分との非共有結合を意味し、生体適合条件下で10-15Mの規模の解離定数(KD)を有する。
“診断マーカー”とは、対象の体液でのその存在が当該対象の表現型または病的状態の診断となる分子を意味する。
“生体適合媒体中で分散性である”とは、生存率の低下を生じることなく、細胞または多細胞構造物の表面で発現される機能的部分において定性的および定量的な変化を生じさせるために十分な濃度で媒体中に安定な単相系を形成することができることを意味する。
“(またはその誘導体の1つ)”とは、実質的に等価の物理化学的特性を有するがスペクトルの特徴が改変された蛍光団を提供する、化学的構造物の化学的改変を意味する。
“MNS血液型系”とは、グリコフォリンA、グリコフォリンB、またはグリコフォリンA/Bハイブリッドを生じる変異に存在する抗原および変異の血液型抗原またはエピトープを意味する。
“pcv”はパック細胞の体積を意味する。
“近位末端配列”とは、ペプチド(F)のアミノ末端またはカルボキシ末端に対して近位に存在する当該ペプチド配列の部分を意味する。
“反応性抗体”は、対象の体液中のその存在が当該対象の表現型または病的状態の診断となる免疫グロブリンを意味する。
“RBC”は赤血球を意味する。
“水溶性”とは、前記構築物を少なくとも100μg/mLの濃度でかつ有機溶媒または洗剤の非存在下で水または食塩水(例えばPBS)と接触させたとき、安定な単相系が形成されることを意味する。“可溶性”および“分散性”という用語が同義語として用いられる。
本発明の例示的実施態様を付随の説明図面の図を参照しながらこれから詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】構築物DOPE-Ad-CMG(1)アミン(11)の1H-NMRスペクトルである(D2O/CD3OD(2:1)中で5mg/mL、δppm)。
【図2】DOPE-Ad-CMG(1)-βAla-Mal-Syph(V8C)(XII)(FLEX-PC(Bruker)、DHB)のMALDI-TOF MSスペクトルである。
【図3】構築物DOPE-Ad-CMG(1)-βAla-Mal-Syph(V8C)(XII)の1H-NMRスペクトルである(D2O/CD3OD(4:1)中で7mg/mL、pH c. 7.5;600MHz、30℃、δppm)。
【図4】ビオチン-CMG(2)-Ad-DOPE(I)の1H-NMRスペクトルである(D2O/CD3OD(1:1)中で2.5mg/mL、δppm、600 MHz)。
【図5】ビオチン-CMG(2)-Ad-DOPE(I)のESI-MSスペクトルである(ThermoFinnigan LCQDecaXP(ネガティブモード、30% MeOH))。
【図6】ビオチン-CMG(2)-Ad-DOPE(I)(1mg/mL)と称する構築物で改変し、14日間保存したアビジンAF標識赤血球の蛍光顕微鏡観察。
【図7】ビオチン-CMG(2)-Ad-DOPE(I)(0.1mg/mL)と称する構築物で改変した、アビジンAF標識透明帯除去D3.5pcネズミ胚の蛍光顕微鏡観察(倍率400x)。
【図8】アビジンAFで標識したビオチン-CMG(2)-Ad-DOPE(I)改変ネズミ胚の蛍光共焦点顕微鏡試験。
【図9】ビオチン-CMG(2)-Ad-DOPE(I)と称する構築物とのインキュベーションによる精子の改変に続く、ストレプトアビジンビーズと精子との結合。
【図10】ビオチン-CMG(2)-Ad-DOPE(I)と称する構築物とのインキュベーションによるRBCの改変後のストレプトアビジンの保持。
【図11】ビオチン-CMG(2)-Ad-DOPEと称する構築物の構造。
【図12】無血清培養液中の20、100および500μg/mLのビオチン-CMG(2)-Ad-DOPEまたは培養液のみ(A、C、EおよびG)および血清含有培養液中の20、100および500μg/mLのビオチン-CMG(2)-Ad-DOPEまたは培養液のみ(B、D、FおよびH)で改変したRL95-2単層。
【図23】ビオチン-CMG(2)-Ad-DOPEで改変したRL95-2単層へのAvidin Alexa Fluor(商標)488の添加。Avidin Alexa Fluor(商標)488を添加、37℃でインキュベーション後の細胞の蛍光顕微鏡写真は、蛍光の内在化は4時間以内に開始し(C)、24時間細胞の内部に存在する(E)ことを示している。細胞を4℃でインキュベートしたときには内在化は観察されなかった(D、F)。
【発明を実施するための形態】
【0065】
第一に、本発明はスペーサー(S)を介して機能的部分をジアシルまたはジアルキル脂質(L)とコンジュゲートし、生体適合性媒体中で分散性であるが、さらにまた細胞膜または多細胞構造物の脂質二重層に自発的に組み込まれる構築物(F-S-L)を提供することに関する。
第二に、本発明は、記載した応用での選択構造モチーフ(CMG)の使用並びに前記構造モチーフおよびその誘導体の使用により生じる利点に関する。
“1工程方法” で使用される構築物、特にペプチド-脂質構築物の利用可能性、および“2工程方法”で使用されるBioGの利用可能性は、「背景技術」の見出しで言及した国際PCT出願の明細書に記載された細胞表面改変における進展にもかかわらず、これらの方法の幅広い応用に限界を生じる。
例えば、BioGまたは生物学的供給源から得られる他のコンジュゲートの使用を回避する、細胞または多細胞構造物の表面にペプチド抗原を局在化させる2工程方法が望ましい。
国際出願PCT/NZ2005/000052の明細書に記載されている炭水化物-脂質構築物のビオチン化は、“2工程方法”でBioGの代替物を提供すると理解されたが、これらのビオチン化炭水化物-脂質構築物の好ましい特性を有し、かつ“1工程方法”で使用し得るビオチン-脂質構築物を使用できることがなお所望されている。
機能(F)が炭水化物である構築物の調製と対比して、Fがペプチドである構築物の調製ではさらに別の技術的な問題が提起される。
【0066】
第一に、L−SまたはS−L部分に連結されたペプチド(F)は、水(例えば溶質の緩衝溶液、例えばPBS)または少なくとも生体適合性溶媒中に分散性であることが所望される。
この問題を克服するには、近位末端配列(PTS)を選別し、当該構築物の所望の生物学的特性を改変することなく可溶性を高めることが必要かもしれない。
第二に、提唱される応用の要件にしたがえば、ペプチド-脂質構築物は水にまたは少なくとも生体適合性緩衝溶液もしくは血清中に分散性であることが所望される(すなわち、構築物が本明細書に定義される“水溶性”であることが所望される)。
この問題を克服するには、スペーサー(S)を選別し、当該構築物の可溶性を高めることが必要かもしれない。
第三に、提唱される応用が細胞(例えば診断的応用で使用されるかまたは血液型判定での品質管理として使用される赤血球(RBC)))の改変である場合、当該構築物は、診断ペプチドまたは血液型判定抗原に特異的でない抗原-抗体交差反応性に関与することなく、生体適合性溶液中に分散性であることが要求される。
この要求を満足させるには、スペーサー(S)および/または近位末端配列(PTS)(後者が存在するならば)に適した構造モチーフを識別することが要求される。
応用が、細胞または多細胞構造物(例えば胚)の表面の改変で使用するためであり、改変細胞または改変多細胞構造物と標的表面(例えば子宮内膜)との結合を促進しようと考える場合、当該細胞または多細胞構造物を生体適合性でない溶媒または緩衝溶液に暴露することは避けなければならない。
第四に、改変細胞または多細胞構造物の表面でのペプチド脂質構築物のペプチドの提示は、診断マーカーとの交差反応性の程度に影響を及ぼすであろう。
【0067】
ペプチドのN-またはC-末端に近位の残基を介して細胞または多細胞構造物の表面に当該ペプチドを局在化させる能力は、細胞表面に対してペプチド配列の立体構造を天然に存在するものに近づけることを可能にし得る。
したがって当該ペプチド配列の形状を、親ポリペプチド(またはタンパク質)の三次元(または四次元)構造に類似させることができる。ペプチドを多数の残基を介して細胞表面に局在化させることが意図される。例えば、アミノ末端近位残基およびカルボキシ末端近位残基の両方を用いてペプチドを局在化させる場合は、当該ペプチドの“ループ形成”立体構造を表面で推進することができる。
国際特許出願PCT/NZ2008/000239の未公開明細書には、構築物の脂質をペプチド部分と共有結合させるスペーサーとしてエチレングリコールのオリゴマーが使用される、細胞および多細胞構造物の表面で発現されるペプチドのレベルにおいて定性的および定量的変化を生じさせる方法で使用されるペプチド-脂質構築物の調製について記載されている。血清診断で使用される細胞の調製のための前記構築物の使用が記載されている。
本発明のペプチド-脂質構築物では、CMGと称される構造モチーフが、脂質(L)とペプチド(F)を共有結合させるスペーサー(S)の成分(S1)として用いられる。この構造モチーフの包含によって、スペーサーに剛性が提供され、ペプチド-脂質構築物の機能的部分(ペプチド)が改変細胞または多細胞構造物の表面から引き離される。
【0068】
本発明のこの属性は、この構造的モチーフを包含する構築物(その機能的部分は炭水化物(例えばABO血液型抗原のグリコトープ)、蛍光団(例えばフルオレセイン(またはその誘導体の1つ))、または結合因子(例えばビオチン)である)の使用に関して本明細書で示した他の機能性脂質構築物の開発に有利に利用され得ることは理解されよう。
ビオチン([3aS-(3aα,4β,6aα)]-ヘキサヒドロ-2-オキソ-1H-チエノ[3,4-d]イミダゾール-4-ペンタン酸)は、B複合体(ビタミンHとも称される)の水溶性ビタミンである。ビオチンは全ての生細胞に微量で存在する増殖因子である。この化合物は、天然に生じる多数のカルボキシル化反応(脂肪酸の生成を含む)で必須の役割を果たす。
ビオチンは、水に約22mg/100mLおよび95%アルコールで約80mg/100mLの溶解性(25℃)を有する。この化合物は熱水および希アルカリで溶解性が増加するが、他の一般的な有機溶媒では比較的不溶性である。この機能的部分を細胞および多細胞構造物の表面に局在化させる能力は、提示のように多数の用途を提供する。
理論に拘束されないが、機能性脂質構築物の特性は具体的な応用に適合するように陽イオン(M+)の選択または構造モチーフの遊離カルボキシル基の誘導によって改変および精錬し、例えばメチルによる置換によって(CH3;MCMG)改変構造モチーフを提供することができると考えられる。
特許請求の範囲の方法で使用される機能性脂質構築物の特性は、溶媒または洗剤が存在しない生物学的に適合する媒体中でそれらを容易に分散することができるが、構築物の溶液が細胞または多細胞構造物の分散液と接触したとき膜の脂質二重層に取り込まれるものでなければならない。
【0069】
これら潜在的に相反する特性を有するペプチド-脂質構築物は、未改変(CMG)または改変(例えばMCMG)構造モチーフの包含および/またはペプチド(F)における近位末端配列の包含の他に、スペーサー(S)の他の成分を選択することによって調製される。
Sが、ペプチドのカルボキシ末端に存在するペプチドの末端Cys(Cys)残基と一緒に形成されたスルフィド結合を介してFと連結されてある、ペプチド-脂質構築物の調製は、当該ペプチドはより酸化されにくいので好ましい。
したがって、一連のペプチドは、細胞または多細胞構造物の表面で発現されるペプチドのレベルにおいて定性的および定量的変化を生じさせる方法で使用されるペプチド-脂質構築物として調製することができる。
ビオチン-脂質構築物の特別な利点は、それら構築物は、細胞または多細胞構造物の生物学的活性および生存率に対して最小限の損失で細胞または多細胞構造物の表面への局在化を許容するということである。
細胞の表面への局在化の例が提供される。表面への局在化がアビジン被覆磁性ビーズの手段によって達成される場合、前記局在化は可逆性であり、したがって細胞の選別および表面における細胞の配置を制御する機会が提供されることは特記されよう。
細胞部分の分画および膜結合細胞小器官の表面への局在化における構築物の有用性が検討される。ハイブリドーマ作製で要求され得る細胞集団の凝集促進における構築物の有用性もまた検討される。
【0070】
模式図I

【0071】
非特異的相互作用、例えばジアシル-もしくはジアルキル-グリセロ脂質またはグリセロリン脂質と膜との相互作用については、天然に存在する脂質の構造異性体および立体異性体が機能的に等価であり得ることは理解されよう。
例えば、ホスファチデート(ジアシルグリセロ3-ホスフェート)をジアシルグリセロ2-ホスフェートに置き換えることが考えられる。さらにまた、ホスファチデートの絶対配置はRまたはSのいずれかであり得ると考えられる。
構造モチーフ(CMG)は模式図Iおよび模式図IIに要約した方法によって調製され、MCMG(1)およびCMG(2)と称する基礎構造を提供することができる。
この構造モチーフの調製、この構造モチーフを利用する機能性脂質構築物の調製並びに化学的および生物学的応用におけるこれら構築物の使用を下記で述べる。
【実施例1】
【0072】
CMGと称する構造モチーフの調製
材料と方法:
アセトン、ベンゼン、クロロホルム、エチルアセテート、メタノール、トルエンおよびo-キシレンはChimmed(Russian Federation)から入手した。アセトニトリルはCryochrom(Russian Federation)から入手した。DMSO、DMF、CF3COOH、Et3N、N,N’-ジシクロヘキシルカルボジイミドおよびN-ヒドロキシスクシンイミドはMerck(Germany)から入手した。イミノ二酢酸ジメチルエステルヒドロクロリドはReakhim(Russian Federation)から入手した。
Dowex 50X4-400およびSephadex LH-20はAmersham Biosciences AB(スェーデン)から入手した。シリカゲル60はMerck(ドイツ)から入手した。テトラアミン(H2N-CH2)4Cx2H2SO4はLitherlandら(1938)の記載にしたがって合成した。薄層クロマトグラフィーはシリカゲル60F254アルミニウムシート(Merck, 1.05554)を用いて実施し、7%H3PO4浸漬後に焼き焦がすことによって検出した。
【0073】
{[2-(2-tert-ブトキシカルボニルアミノ-アセチルアミノ)-アセチル]-メトキシカルボニルメチル-アミノ}-酢酸メチルエステルの調製(模式図I)
DMF(15mL)中の(メトキシカルボニルメチル-アミノ)-酢酸メチルエステルヒドロクロリド(988mg、5mmol)の攪拌溶液に、Boc-GlyGlyNos(3293mg、10mmol)を添加し、さらに(CH3CH2)3N(3475μL、25mmol)を添加した。室温で一晩混合物を攪拌し、続いてo-キシレン(70mL)で希釈し、さらに蒸発させた。
シリカゲルでのフラッシュカラムクロマトグラフィー(トルエン中で充填、酢酸エチルで溶出)によって粗生成物を生じた。この粗生成物をクロロホルムに溶解し、水、0.5MのNaHCO3および飽和KClを用い連続的に洗浄した。
クロロホルム抽出物を蒸発させ、生成物をシリカゲルカラムで精製した(クロロホルム中で充填、15:1(v/v)のクロロホルム/メタノールで溶出)。分画を蒸発させ、残留物を真空下で乾燥させることによって、無色で濃厚なシロップが得られた。収量1785mg、(95%)。TLC:Rf=0.49(7:1(v/v)のクロロホルム/メタノール)。
1H NMR (500 MHz, [D6]DMSO, 30 ℃) δ, ppm: 7.826 (t, J=5.1 Hz, 1H; NHCO), 6.979 (t, J=5.9 Hz, 1H; NHCOO), 4.348および4.095 (s, 2H; NCH2COO), 3.969 (d, J=5.1 Hz, 2H; COCH2NH), 3.689 and 3.621 (s, 3H; OCH3), 3.559 (d, J=5.9 Hz, 2H; COCH2NHCOO), 1.380 (s, 9H; C(CH3)3)。
【0074】
{[2-(2-tert-ブトキシカルボニルアミノ-アセチルアミノ)-アセチル]-メトキシカルボニルメチル-アミノ}-酢酸の調製(模式図I)
メタノール(25mL)中の{[2-(2-tert-ブトキシカルボニルアミノ-アセチルアミノ)-アセチル]-メトキシカルボニルメチル-アミノ}-酢酸メチルエステル(1760mg、4.69mmol)の攪拌溶液に、0.2MのNaOH水溶液(23.5mL)を添加し、この溶液を室温で5分保持した。続いて、前記溶液を酢酸(0.6mL)で酸性化し、乾燥するまで蒸発させた。
シリカゲルによる残留物のカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル中で充填、2:3:1(v/v/v)のi-PrOH/酢酸エチル/水で溶出)によって{[2-(2-tert-ブトキシカルボニルアミノ-アセチルアミノ)-アセチル]-メトキシカルボニルメチル-アミノ}-酢酸メチルエステル(63mg、3.4%)が回収され、さらに標的化合物(1320mg)が得られた。続いて、中間生成物をメタノール/水/ピリジン混合物(20:10:1、30mL)に溶解し、イオン交換カラム(Dowex 50X4-400、ピリジン型、5mL)を通過させて残留ナトリウム陽イオンを除去した。
続いてカラムを同じ溶媒混合物で洗浄し、溶離液を蒸発させ、残留物をクロロホルム/ベンゼン混合物(1:1、50mL)に溶解し、続いて蒸発させさらに真空下で乾燥させた。10の収量は1250mg(74%)で白色固体であった。TLC:Rf=0.47(4:3:1(v/v/v)のi-PrOH/酢酸エチル/水)。
1H NMR (500 MHz, [D6]DMSO, 30 ℃)、N-カルボキシメチルグリシンユニットのcis-およびtrans-型の混合物 c.3:1. 主要型;δ, ppm: 7.717 (t, J=5 Hz, 1H; NHCO), 7.024 (t, J=5.9 Hz, 1H; NHCOO), 4.051 (s, 2H; NCH2COOCH3), 3.928 (d, J=5 Hz, 2H; COCH2NH), 3.786 (s, 2H; NCH2COOH), 3.616 (s, 3H; OCH3), 3.563 (d, J=5.9 Hz, 2H; COCH2NHCOO), 1.381 (s, 9H; C(CH3)3) ppm; 微量型、δ = 7.766 (t, J=5 Hz, 1H; NHCO), 7.015 (t, J=5.9 Hz, 1H; NHCOO), 4.288 (s, 2H; NCH2COOCH3), 3.928 (d, J=5 Hz, 2H; COCH2NH), 3.858 (s, 2H; NCH2COOH), 3.676 (s, 3H; OCH3), 3.563 (d, J=5.9 Hz, 2H; COCH2NHCOO), 1.381 (s, 9H; C(CH3)3)。
【0075】
{[2-(2-tert-ブトキシカルボニルアミノ-アセチルアミノ)-アセチル]-メトキシカルボニルメチル-アミノ}-酢酸N-オキシスクシンイミドエステル(Boc-Gly2(MCMGly)Nos)の調製(模式図I)
DMF(10mL)中の{[2-(2-tert-ブトキシカルボニルアミノ-アセチルアミノ)-アセチル]-メトキシカルボニルメチル-アミノ}-酢酸(1200mg、3.32mmol)およびN-ヒドロキシスクシンイミド(420mg、3.65mmol)の氷冷攪拌溶液に、N,N’-ジクロロへキシルカルボジイミド(754mg、3.65mmol)を添加した。混合物を0℃で30分、続いて室温で2時間攪拌した。
N,N’-ジシクロヘキシルウレアの沈殿物をろ過し、DMF(5mL)で洗浄し、ろ液を最少体積まで蒸発させた。続いて残留物を(CH3CH2)2O(50mL)とともに1時間かき混ぜ、エーテル抽出液をデカンテーションにより除去した。残留物を真空下で乾燥させ活性なエステル(1400mg、92%)を白色泡沫として提供する。TLC:Rf=0.71(40:1(v/v)のアセトン/酢酸)。
1H NMR (500 MHz, [D6]DMSO, 30 ℃)、N-カルボキシメチルグリシンユニットのcis-およびtrans-型の混合物c. 3:2.
主要型;δ, ppm: 7.896 (t, J=5.1 Hz, 1H; NHCO), 6.972 (t, J=5.9 Hz, 1H; NHCOO), 4.533 (s, 2H; NCH2COON), 4.399 (s, 2H; NCH2COOCH3), 3.997 (d, J=5.1 Hz, 2H; COCH2NH), 3.695 (s, 3H; OCH3), 3.566 (d, J=5.9 Hz, 2H; COCH2NHCOO), 1.380 (s, 9H; C(CH3)3)。
微量型;δ, ppm: 7.882 (t, J=5.1 Hz, 1H; NHCO), 6.963 (t, J=5.9 Hz, 1H; NHCOO), 4.924 (s, 2H; NCH2COON), 4.133 (s, 2H; NCH2COOCH3), 4.034 (d, J=5.1 Hz, 2H; COCH2NH), 3.632 (s, 3H; OCH3), 3.572 (d, J=5.9 Hz, 2H; COCH2NHCOO), 1.380 (s, 9H; C(CH3)3)。
前記活性なエステル(1380mg)をDMSOに溶解して6mLの体積を提供し、0.5M溶液として用いた(-18℃で保存)。
【0076】
模式図II

【0077】
{[2-(2-tert-ブトキシカルボニルアミノ-アセチルアミノ)-アセチル]-メトキシカルボニルメチル-アミノ}-酢酸メチルエステルの調製
DMF(15mL)中の(メトキシカルボニルメチル-アミノ)-酢酸メチルエステルヒドロクロリド(988mg、5mmol)の攪拌溶液に、Boc-GlyGlyNos(3293mg、10mmol)およびEt3N(3475μL、25mmol)を添加した。
この混合物を室温(r.t.)で一晩攪拌し、続いてo-キシレン(70mL)で希釈し、さらに蒸発させた。シリカゲルでのフラッシュカラムクロマトグラフィー(トルエン中で充填、酢酸エチルで溶出)によって粗生成物を生じた。
この粗生成物をクロロホルムに溶解し、水、0.5MのNaHCO3および飽和KClにより連続的に洗浄した。クロロホルム抽出液を蒸発させ、生成物をシリカゲルカラムで精製した(クロロホルム中で充填、15:1(v/v)のクロロホルム/メタノールで溶出)。
分画を蒸発させ、残留物を真空乾燥することによって、無色で濃厚なシロップ(3)が得られた(1785mg、95%)。
TLC:Rf=0.49(7:1のクロロホルム/メタノール)。
1H NMR (500 MHz, [D6]DMSO, 30 ℃) δ = 7.826 (t, J = 5.1 Hz, 1H; NHCO), 6.979 (t, J = 5.9 Hz, 1H; NHCOO), 4.348 and 4.095 (s, 2H; NCH2COO), 3.969 (d, J = 5.1 Hz, 2H; COCH2NH), 3.689および3.621 (s, 3H; OCH3), 3.559 (d, J = 5.9 Hz, 2H; COCH2NHCOO), 1.380 (s, 9H; CMe3) ppm。
【0078】
{[2-(2-tert-ブトキシカルボニルアミノ-アセチルアミノ)-アセチル]-メトキシカルボニルメチル-アミノ}-酢酸の調製
メタノール(25mL)中の{[2-(2-tert-ブトキシカルボニルアミノ-アセチルアミノ)-アセチル]-メトキシカルボニルメチル-アミノ}-酢酸メチルエステル(1760mg、4.69mmol)の攪拌溶液に、0.2MのNaOH水溶液(23.5mL)を添加した。この溶液を室温で5分間維持し、続いて酢酸(0.6mL)で酸性化し、さらに乾燥まで蒸発させた。
シリカゲルによる残留物のカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル中で充填、i-PrOH/酢酸エチル/水(2:3:1)で溶出)によって、回収(3)(63mg、3.4%)および粗標的化合物(1320mg)が得られた。
粗標的化合物をメタノール/水/ピリジン混合物(20:10:1、30mL)に溶解し、イオン交換カラム(Dowex 50X4-400、ピリジン型、5mL)を通過させて残留ナトリウム陽イオンを除去した。
このカラムを同じ混合物で洗浄し、溶離液を蒸発させ、クロロホルム/ベンゼン混合物(1:1、50mL)に溶解し、続いて蒸発させさらに真空下で乾燥させて純粋な(10)を提供した。収量は1250mg(74%)で白色固体であった。
TLC:Rf=0.47(i-PrOH/酢酸エチル/水(4:3:1))。
1H NMR (500 MHz, [D6]DMSO, 30℃)、N-カルボキシメチルグリシンユニットのcis-およびtrans-型の混合物c.3:1。
主要型:δ = 7.717 (t, J = 5 Hz, 1H; NHCO), 7.024 (t, J = 5.9 Hz, 1H; NHCOO), 4.051 (s, 2H; NCH2COOMe), 3.928 (d, J = 5 Hz, 2H; COCH2NH), 3.786 (s, 2H; NCH2COOH), 3.616 (s, 3H; OCH3), 3.563 (d, J = 5.9 Hz, 2H; COCH2NHCOO), 1.381 (s, 9H; CMe3) ppm。
微量型:δ = 7.766 (t, J = 5 Hz, 1H; NHCO), 7.015 (t, J = 5.9 Hz, 1H; NHCOO), 4.288 (s, 2H; NCH2COOMe), 3.928 (d, J = 5 Hz, 2H; COCH2NH), 3.858 (s, 2H; NCH2COOH), 3.676 (s, 3H; OCH3), 3.563 (d, J = 5.9 Hz, 2H; COCH2NHCOO), 1.381 (s, 9H; CMe3) ppm。
【0079】
{[2-(2-tert-ブトキシカルボニルアミノ-アセチルアミノ)-アセチル]-メトキシカルボニルメチル-アミノ}-酢酸N-オキシスクシンイミドエステルBoc-Gly2(MCMGly)Nosの調製
DMF(10mL)中の{[2-(2-tert-ブトキシカルボニルアミノ-アセチルアミノ)-アセチル]-メトキシカルボニルメチル-アミノ}-酢酸(1200mg、3.32mmol)およびN-ヒドロキシスクシンイミド(420mg、3.65mmol)の氷冷攪拌溶液に、N,N’-ジクロロへキシルカルボジイミド(754mg、3.65mmol)を添加した。混合物を0℃で30分、続いて室温で2時間攪拌した。
N,N’-ジシクロヘキシルウレアの沈殿物をろ過し、DMF(5mL)で洗浄し、ろ液を最少体積まで蒸発させた。
残留物をEt2O(50mL)とともに1時間かき混ぜた。エーテル抽出液をデカンテーションにより除去し、残留物を真空下で乾燥させ、白色泡沫として標的化合物(1400mg、92%)を得た。
TLC:Rf=0.71(アセトン/酢酸40:1)。
1H NMR (500 MHz, [D6]DMSO, 30 ℃)、N-カルボキシメチルグリシンユニットのcis-およびtrans-型の混合物c. 3:2.
主要型:δ = 7.896 (t, J = 5.1 Hz, 1H; NHCO), 6.972 (t, J = 5.9 Hz, 1H; NHCOO), 4.533 (s, 2H; NCH2COON), 4.399 (s, 2H; NCH2COOMe), 3.997 (d, J = 5.1 Hz, 2H; COCH2NH), 3.695 (s, 3H; OCH3), 3.566 (d, J = 5.9 Hz, 2H; COCH2NHCOO), 1.380 (s, 9H; CMe3) ppm。
微量型:δ = 7.882 (t, J = 5.1 Hz, 1H; NHCO), 6.963 (t, J = 5.9 Hz, 1H; NHCOO), 4.924 (s, 2H; NCH2COON), 4.133 (s, 2H; NCH2COOMe), 4.034 (d, J = 5.1 Hz, 2H; COCH2NH), 3.632 (s, 3H; OCH3), 3.572 (d, J = 5.9 Hz, 2H; COCH2NHCOO), 1.380 (s, 9H; CMe3) ppm。
【0080】
DOPE-Ad-CMG(I)アミンの調製(模式図III)
DOPE-Ad-CMG(2)アミンは、{[2-(2-tert-ブトキシカルボニルアミノ-アセチルアミノ)-アセチル]-メトキシカルボニルメチル-アミノ}-酢酸N-オキシスクシンイミドエステルBoc-Gly2(MCMGly)Nosから模式図IIIにしたがって調製した。
【0081】
模式図III
【化1】

【0082】
模式図IV
【化2】

【0083】
機能性脂質構築物(F-S-L)の調製(模式図IV)
DOPE-Ad-CMG(2)-βAla-Mal-Milt(K,M)(X)の調製
構築物DOPE-Ad-CMG(2)-βAla-Mal-Milt(K,M)(X)は模式図IVにしたがって調製された。
DOPE-Ad-CMG(2)アミンをi-PrOH-水中の5倍過剰3-マレイミドプロピオン酸オキシベンゾトリアゾールエステル(12)で処理した。
DOPE-Ad-CMG(2)のマレイミド誘導体への変換は、おそらく有機塩基ジイソプロピルエチルアミン(DOPE-Ad-CMG(2)を溶液として維持するために添加することが要求される)の量によって促進される中間体の急速な加水分解のために幾分低かった(約70%)。
マレイミド誘導体は、Sephadex LH-20でのゲル浸透クロマトグラフィー(i-PrOH-水、1:2)後に収量40%で単離された。
先ず初めに、マレイミド誘導体とペプチドとのコンジュゲーションがi-PrOH-TRIS緩衝液(pH8)(1:2)を用いて試みられたが、この媒体では中間体はほとんど不溶性のようであった。しかしながら、ピリジンの添加(1μL/mg中間体)は反応物の迅速な溶解と驚くほど純粋で実質的に完全な変換をもたらした。
注目すべきことには、ペプチドの酸化性不活性化の防止のための還元剤は用いなかったが、全反応混合物のMS分析でS-Sダイマーの痕跡は認められなかった。
所望の構築物(X)はSephadex LH-20カラムで精製した。(X)を含む分画がわずかに不透明であったので、溶解性の問題が再び生じた。
これは、溶離液に添加した塩基の量が、1−5mg/mLの濃度範囲で化合物の適切な荷電および可溶性を維持するためには不十分であることを示しているようである。
精製構築物(X)の構造はNMRおよびMSスペクトルによって明確に示された。
NMRスペクトルは、もっとも特徴的な芳香族およびオレフィン陽子に対するシグナル比から演繹される予想ペプチド:DOPE比を示した。
MSデータによれば、最終生成物(X)のほぼ半分がピログルタミル誘導体([M-17]+イオン)を偶発的に形成した。
(X)のMALDI MSスペクトルでは、未改変ペプチドに対応するピークが存在するが、一方、同じ物質のESI-MSスペクトルでは関連するピークは存在しない。これは、MALDIイオン化条件下(破壊的技術)におけるチオスクシンイミド結合の容易な分断化(レトロミカエル反応)に帰せられる。
ペプチド-脂質構築物調製の一般的方法をわずかな改変を加えながら、以下のペプチドリストから選択されるペプチド(F)を含む構築物の調製に応用した。
【0084】



【0085】
細胞または多細胞構造物の表面で発現されるペプチドのレベルにおいて定性的および定量的変化を生じさせるための方法におけるペプチド-脂質構築物の使用を、血清診断を参照にしながら例示した。
以下の表では、ポリクローナル血清および公知の特異性を有するモノクローナル抗体および構築物DOPE-Ad-CMG(I)-βAla-Mal-Mur(D14C)(XI)で改変した(2時間、37℃)赤血球(RBC)の交差反応性が要約されている。
【0086】



【0087】
ペプチド-脂質構築物による赤血球の改変
洗浄パック赤血球1容とペプチド-脂質構築物(細胞培養液(CelpresolTM)に10から1000μg/mLの濃度で分散)1容を混合することによって赤血球を改変する。
懸濁液を以下のどちらかのように処理する:
1.37℃で2時間インキュベートした後で、洗浄し、さらに血清学的分析のために0.8から3%の濃度で細胞培養液に分散(方法1)するか;または
2.室温(約25℃)で3時間から4時間、続いて4℃で18時間インキュベートした後で、洗浄し、さらに血清学的分析のために0.8から3%の濃度で細胞培養液に分散する(方法2)。
改変赤血球の試験管血清学的検査
血清学的反応は、2つの確立された系のどちらかによってグレード判定またはスコア判定される(0または‘−’=凝集無し;1+または3=非常に弱い凝集;2+または5=弱い凝集;3+または8=中等度に強い凝集;4+または10/12=強い凝集)。
使用される血清学的プラットフォームは試験管およびBioVueTMである。前者の場合、試薬および反応物はプラスチックまたはガラスの血清学試験管に添加され、適切なインキュベーション、洗浄および遠心後に、肉眼または10X倍率アイピースによって反応を観察し、後者の場合、ビーズ(いくつかの試薬を包含する)を含むカセットに試薬が添加され、適切なインキュベーションおよび遠心後にゲルマトリックス内に捕捉された反応パターンを観察する。BioVueはOrthoClinical Diagnosticsの血清学的カラム凝集プラットフォームである。DiamedはDiamed AGの血清学的カラム凝集プラットフォームである。
血清サンプルは、陰性の抗体スクリーニング状況を示す47人の血液提供者から入手できた。これらのサンプルを“陰性サンプル”としたが、抗ミルテンバーガー抗体を有しないことは決定していない。
3血清サンプル(T217、T6025、T5896)はミルテンバーガー関連抗体を持つことが分かっており、これらのサンプルは“陽性血清”としたが、DOPE-PEG6-βAla-Mal-Milt(K)(M00)と称される構築物のペプチドに対して抗抗体を有することは決定していない。
3%改変RBCの懸濁液をPBSで調製し、前記懸濁液の30μLを30μLの血清サンプルと混合した。続いて、前記混合物を37℃で45分インキュベートした。インキュベーション後に、RBCをImmufugeTMで10秒間遠心し(“high”に設定)、PBSで3回洗浄する前に凝集を観察した。
洗浄後、EpicloneTM抗ヒトグロブリン(AHG)の一滴を添加し、続いて試験管を判読し血清学スコアを記録した。
観察した血清学スコアに関するコメントは下記の表の説明文で提供される。
【表1】

表1:抗ミルテンバーガー活性を有するとは予想されない(“陰性サンプル”)47人の血液提供者の血清サンプルの反応性の要旨。AHG+は、抗ヒトグロブリン検査によって反応するサンプルを意味する。AHG−は、サンプルが非反応性であることを示す。RBCを表示の濃度のDOPE-PEG6-βAla-Mal-Milt(K) と称されるペプチド-脂質構築物で改変した。血清は、3日間保存した後の改変RBCに対して試験した。
【0088】
【表2】

表2:ミルテンバーガー複合体の抗原に対する抗体を含むことが判明している3血清の試験管血清検査の結果。スコアの結果は、抗ヒトグロブリン試験による反応性を示している:1+=弱、2+=中、3+=中/強、4+=強。−はサンプルが非反応性であることを意味する。RBCは表示の濃度のペプチド-脂質構築物で改変した。血清は、3日間および24日間保存した後の改変RBCに対して試験した(n.t.=試験せず)。
【0089】
【表3】

表3:ミルテンバーガー複合体の抗原に対する抗体を含むことが判明している3血清のDiamedカラム血清検査の結果。スコアの結果は、抗ヒトグロブリン試験による反応性を示している:1+=弱、2+=中、3+=中/強、4+=強。−はサンプルが非反応性であることを意味する。RBCは表示の濃度のペプチド-脂質構築物で改変した。血清は、3日間および24日間保存した後の改変RBCに対して試験した。
【0090】
【表4】

【0091】
表6:BioVue AHGカードで決定した天然に存在するミルテンバーガー抗原陽性(Milt+)ヒト赤血球の同定
【0092】
【表5】



【0093】
表7:ペプチド-脂質構築物の同定。小文字‘c’はシステイン残基(Cys)を示す。全てのペプチド-脂質構築物(F-S-LまたはL-S-F)はDOPE(L)変種として調製した。Mは分子構築物のための略称に該当し、以下の表で使用される。末端ペプチド配列はCysを表す“小文字c”で表示されたとおりであり、前記を介してSがLに連結される。スペーサーはスペーサー(S)の構造モチーフに該当する。CMGは本明細書に記載のペプチド-脂質構築物を示す。PEGは、受理当局としてニュージーランド特許庁(RO/NZ)に2008年9月11日に出願された国際PCT出願の明細書の発明の第二の特徴として記載されてある構造物のペプチド-脂質構築物を示す。全ての構築物はDOPE変種として調製された。
【0094】
【表6】

【0095】
表8:表示濃度で同定されたMUTペプチド-脂質構築物を取り込ませて改変したRBCのミルテンバーガー抗体陽性パネルに対する反応性についての選別データの分析。構築物は1つまたは2つ以上のポリクローナル抗体との反応性を示すことができ、1つまたは2つ以上のペプチド変種に対する特異性を示唆した。
【0096】
【表7】

【0097】
表9:表示濃度で同定されたMURペプチド-脂質構築物を取り込ませて改変したRBCのミルテンバーガー抗体陽性パネルに対する反応性についての選別データの分析。構築物は1つまたは2つ以上のポリクローナル抗体との反応性を示すことができ、1つまたは2つ以上のペプチド変種に対する特異性を示唆した。
【0098】
【表8】

【0099】
表10:陰性血清の反応性。ミルテンバーガー陰性赤血球を、50μg/mLの形質転換濃度のペプチド-脂質構築物M22で改変し、抗体陰性血清に対してフィールドで試験し偽陽性率を決定した。調査は、オーストラリア、マレーシアおよびフィリピンの臨床検査室で種々の血清学的プラットフォーム(カラム凝集プラットフォームBioVueおよびDiamedとともに単純な試験管反応技術)を用いて実施した。同体積のパックRBCと50μg/mLの構築物を含む溶液を室温で3時間、続いて4℃で18時間接触させた。このフィールドでの試験によって、臨床的抗体陰性血清は、BioVueTMプラットフォームでは0.4から4.5%の割合で、DiaMedTMプラットフォームでは0.4%の割合でM22形質転換細胞と反応することが見出された。試験管プラットフォームでは反応性は認められなかった。これらの結果は偽陽性反応と考えることができる。
【0100】
【表9】

表11:陽性血清の反応性。ミルテンバーガー陰性赤血球を、50μg/mLの形質転換濃度のペプチド-脂質構築物M22、200μg/mLの形質転換濃度のM17、200μg/mLの形質転換濃度のM24で改変し、天然のMi III抗体反応性ヒト血清に対してフィールドで試験し反応率を決定した。同体積のパックRBCと50μg/mLの構築物を含む溶液を室温で3時間、続いて4℃で18時間接触させた。MUT、MURおよびHILの3種の構築物は天然のMi III反応性ポリクローナル抗体の大半を特異的反応プロフィルに区別することができた。12の血清が改変細胞と反応せず、それらは別のMi III抗原に対して特異性を有する可能性を示唆した。
【0101】
【表10】

表12:抗MUT血清の反応性。ミルテンバーガー陰性赤血球を、10から200μg/mLの範囲の濃度のペプチド-脂質構築物M22、50μg/mLの濃度のM17、および50μg/mLの濃度のM24で改変した。フィールドで検出された天然のMi III抗体反応性台湾人血清(TAP1)に対して、前記改変細胞を試験し反応性プロフィルを決定した。反応性は天然のMi III抗原陽性細胞と比較した。TAP1(台湾人ミルテンバーガー抗体陽性サンプル)。TAP1血清は、天然のMi III陽性細胞に対するIgGおよびIgM抗体の両方(後者は食塩水中反応性である)を含むことが示された。AbtectcellTMおよびPhenocellTMスクリーニングおよび検証パネルに対する反応性の欠如によって、赤血球に対する他の抗体は存在しないと結論された。10から200μg/mLの形質転換濃度でのM22改変細胞との反応性(および非形質転換細胞(0μg/mL)とは反応しないこと)によって、MUTに対する抗体が存在すると結論された。M22改変細胞は食塩水中反応を検出できなかったことは、このアッセイはIgGクラス抗体にとって鋭敏であるがIgMにとっては鋭敏ではない(臨床的に好ましい結果である)ことを示唆している。M17およびM24形質転換細胞との反応性の欠如によって、MURおよびHIL変異に対する抗体が存在しないと結論された。
【0102】
【表11】

表13:抗MUT血清の反応性。ミルテンバーガー陰性赤血球を、100μg/mLの濃度のペプチド-脂質構築物M28および100μg/mLの濃度のM22で形質転換させて、フィールドで検出された天然のMi III抗体反応性台湾人血清(TAP2)に対して試験し反応性プロフィルを決定した。反応性は天然のMi III抗原陽性細胞と比較した。TAP2(台湾人ミルテンバーガー抗体陽性サンプル)。TAP2血清は、天然のMi III陽性細胞に対するIgG抗体を含むことが示された。AbtectcellTMスクリーニングおよび検証パネルに対する反応性の欠如によって、赤血球に対する他の抗体は存在しないと結論された。M28改変細胞との反応性およびM22改変細胞との非反応性によって、MUTに対する抗体が存在すると結論された。
【0103】
【表12】

【0104】
表14:抗MUTの検出用候補物としてのM37配列の同定。ミルテンバーガー陰性細胞を、50μg/mLの濃度のペプチド-脂質構築物M22、M33、M34、M35、M36、M37、M40およびM41で改変した。改変細胞を、ミルテンバーガー抗体陽性パネルの血清2、3、4および8並びに台湾Mi III抗体陽性血清TAP1に対して試験し、そのMUT反応性プロフィルを決定した。TAP1(台湾ミルテンバーガー抗体陽性サンプル)。ペプチド-脂質構築物M37で改変した細胞は、ミルテンバーガー抗体陽性パネルのサンプル2および4の抗MUT活性を検出することができた。MUR活性を含むサンプル3は陰性と予想された。複数の抗体を含むサンプル8は予想に反して陰性であったが、特異性を失ったのかもしれない。TAP1血清は全てのMUT変種を検出でき、いくつかのポリクローナル抗体は抗MUT活性を規定する能力が他のものより低い可能性を示唆した。
【0105】
【表13】

表15:抗MUT血清(TAP1)の反応性。ミルテンバーガー陰性細胞を、50μg/mLの濃度のペプチド-脂質構築物M22、M33、M34、M35、M36、M37、M40およびM41で改変した(2時間、37℃)。改変細胞を台湾Mi III抗体陽性血清TAP1に対して試験し、そのMUT反応性プロフィルを決定した。TAP1(台湾ミルテンバーガー抗体陽性サンプル)。TAP1血清は、いくつかの(ただし全てではない)MUT脂質変種を認識することができる。M40およびM41(HILペプチド)改変細胞並びに非変容細胞との反応性の欠如が期待される。
【0106】
【表14】

表16:抗MUR血清(TAP1)の反応性。ミルテンバーガー陰性細胞を、50μg/mLの濃度のペプチド-脂質構築物M17、M19、M25、M27、M28、M29、M30およびM31で改変した(2時間、37℃)。改変細胞をミルテンバーガー抗体陽性パネルの抗体陽性血清#7に対して試験し、それらのMUR反応性プロフィルを決定した。
【0107】
【表15】

【0108】
表17:陰性血清との偽陽性MUT構築物反応。偽陽性反応率を51人の血液提供者の血漿サンプル(PAC1−51)のパネルに対して決定した。血漿を、50μg/mLの濃度のペプチド-脂質構築物M22、M34、M36、M37およびM40で改変した(2時間、37℃)細胞に対して試験し、さらにBioVue AHGカードで試験した。アミノ酸配列は偽陽性反応率に影響を及ぼし得る。ポリペプチド鎖のいずれかの末端のアミノ酸が1つ多いか少ないかによって、血清に関して生じる非特異的反応の機会が増加することがある。
【0109】
【表16】

表18:102の陰性血清とのM17構築物偽陽性反応。ペプチド-脂質構築物M17で改変した細胞を102の陰性血清サンプルに対して試験した。ペプチド-脂質構築物M17で改変した細胞は、もっとも強い“偽陽性”反応構築物を提供し、陰性血清と36%もの偽陽性率を示した。
【0110】
Tシリーズ反応性(n=58)
【0111】

【0112】
39のT陰性サンプルは3構築物全てに関して陰性であった。
より大きなシリーズ=102。
【表17−1】

5サンプルは3つの構築物全てと反応した。
【0113】
【表17−2】

表19:他のMur構築物に対する“M17偽陽性”陰性血清の反応性。ペプチド-脂質構築物M17で改変した細胞に対してもっとも強い偽陽性を示す6つの陰性血清を、50μg/mLの濃度のペプチド-脂質構築物M19、M25、M26、M27、M28、M29、M30およびM31と接触(2時間、37℃)させることによって改変した細胞に対して試験した。改変細胞をBioVueTM AHGカードで試験した。ペプチド-脂質構築物M17で改変した細胞は陰性血清ともっとも強い“偽陽性”反応を示した。6つのもっとも強い偽陽性サンプルの反応性は、他の改変細胞に対して試験したときは、あるものは非反応性であり(M28、M27)、あるものはわずかに反応性であるかまたは単一の限定的反応性を示し(M5、M29、M19)、一方、他のものはより反応性である(M31、M26)。アミノ酸配列における小さな変化が偽陽性反応率に影響を及ぼし得る。構築物M30およびM28で改変した細胞は特異性および低い非特異性の両方を示す。
【0114】
【表18】

表20:M1ペプチド-脂質構築物またはM2ペプチド-脂質構築物を取り込ませるために500μg/mLの構築物分散液と細胞とを接触させる(方法1)ことにより改変したRBCと反応する血清を、ペプチドQTNDKHKRDTYで“中和”し、改変細胞に対して再試験した。血清は、1mg/mLのペプチド溶液10μLを50μL体積の血清に添加し37℃で30分インキュベートすることによって中和した。試験はBioVueTMカードを用いて実施した。
【0115】
【表19】

表21:M13ペプチド-脂質構築物を取り込ませるために500μg/mLの構築物分散液と細胞とを接触させる(方法1)ことにより改変したRBCと反応する血清を、ペプチドSSQTNDKHKRDTYで“中和”し、改変細胞に対して再試験した。血清は、1mg/mLのペプチド溶液10μLを50μL体積の血清に添加し37℃で30分インキュベートすることによって中和した。試験はBioVueTMカードを用いて実施した。
【0116】
【表20】

表22:細胞をペプチド-脂質構築物M22によって改変し(2時間、37℃)、2つの陽性反応を確認した。続いて中和実験を実施した。40μLの体積の血漿を1.0mg/mLの濃度のペプチドまたはAc-Cの10μLと37℃、30分インキュベートした。続いて、BioVueTMで標準的なAHG試験を実施した。PAC74についての偽陽性反応はペプチドの添加によって中和されない反応として確認された。TAP1についての真の陽性反応は、ペプチドおよび完全な構築物によって中和されるが、アセチル化システインのみを保有する構築物によっては中和されない反応として確認された。
【0117】
【表21】

表23:細胞をペプチド-脂質構築物M28によって改変し(2時間、37℃)、4つの陽性反応を確認した。続いて中和実験を実施した。40μLの体積の血漿を1.0mg/mLの濃度のペプチドまたはAc-Cの10μLと37℃、30分インキュベートした。続いて、BioVueTMで標準的なAHG試験を実施した。PAC70、71および72のM28ペプチドによる中和によって特異性が示唆された。無関係のペプチド22もまた血清PAC71およびPAC72の中和を惹起することができるという事実は、他の無関係の構造によるスコアの低下と相俟って、これら2つの血清についての結果は偽陽性反応と訂正する。PAC70はミルテンバーガー陽性細胞と反応しないという事実は、抗体は当該ペプチド配列に対して存在するようにみえるが、それは血液型特異的でないということを示唆している。対照的に、TAP2はペプチドによって完全には阻害されないが、スコアの実質的低下は特異性を示唆している。ただし、Cys-CMG-DEに対する反応スコアの低下によって示唆されるように、特異性が低レベルの非特異性と併せて存在する可能性もある。
前述の表で提示したMUTペプチドの反応性についての考察は、M22、M36およびM37はいずれも、配列1(は従来技術で識別された配列(Reid and Lomas-Francis 2004))と比較したとき、ヒトポリクローナル抗体パネルに対してより優れた感度および特異性を有することを示している。
【0118】
別の立体構造のペプチドを含むペプチド-脂質構築物による赤血球の改変
CMG(2)および以下のペプチドを含むペプチド-脂質構築物を調製した:
ThrTyrProAlaHisThrAlaAsnGluCys (M44)および
CysThrTyrProAlaHisThrAlaAsnGlu (M45)
前記ペプチドの末端をホルミル化およびアミド化して“キャップ化”ペプチドを提供する。任意のミルテンバーガー抗体陽性サンプルおよび3つの偽陽性抗体陰性サンプルの反応性を、上記の“キャップ化”ペプチド-脂質構築物を取り込ませて改変したRBCについて試験した(50μg/mL、37℃で2時間)。
反応性を評価し表24に記録した。ペプチドのキャッピングは陽性サンプルとの反応性に影響を与えず、偽陽性抗体-陰性サンプルとの反応性に影響を与えるようにも見えなかった。しかしながら、(カルボキシ末端とは反対に)アミノ末端に位置するCys残基によるペプチドの連結は、偽陽性抗体陰性サンプルとの反応性の確率を低下させ、既知の抗体陽性サンプルとの反応性を改善するようであった。
理論に拘束されないが、M45を取り込むように改変された細胞によるペプチドの提示は、天然に存在する抗原によって発現される対応するペプチド配列の提示にいっそう類似するかもしれないと推測される。
表24:
【表22】

【0119】
細胞および多細胞構造物のビオチン-脂質構築物による改変
ビオチン-CMG(2)-Ad-DOPEと称される構築物による赤血球(RBC)およびネズミ胚の改変をAvidin-Alexafluor(Avidin AF)を用いて実施した。
材料
ビオチン-CMG(2)-Ad-DOPEと称される構築物のストック溶液(100μL)を10μg/mLの濃度で水にて調製した。Avidin-Alexafluor(Avidin AF)のストック溶液を、2mg/mLの濃度で無菌的なリン酸緩衝食塩水(PBS)にて調製した。ビオチニル化ガングリオシド(BioG)のストック溶液を5mg/mLの濃度で無菌的PBSにて調製した。
赤血球
ビオチン-CMG(2)-Ad-DOPEおよびBioG(陽性コントロール)と称される構築物の0.001、0.1、0.1および1mg/mLの一連の希釈をCelpresolTMで調製した。15μLのパックRBCおよびビオチン-CMG(2)-Ad-DOPEまたはBioGと称される構築物の希釈物5μLをインキュベートすることによって、O型赤血球(RBC)を改変した。インキュベーションは、名目上体積が1.5mLのプラスチックのエッペンドルフチューブにおいて水浴中にて37℃で2時間実施した。陽性コントロールとしてO型RBCを0.33mg/mLの濃度のBioG溶液とともにインキュベートした。
インキュベートしたRBCをミニ遠心機でPBSにより3回洗浄した。洗浄した改変RBCの蛍光標識は、0.1mg/mLの濃度のAvidin-AF溶液10μLを添加することによって実施した。続いて、水浴にてRBCを37℃、1時間暗所でインキュベートし、PBSで3回洗浄した。
洗浄した蛍光標識RBCの85%溶液を、蛍光顕微鏡下にて488nmおよび写真露光1.903でカバースリップ付きスライドに乗せて観察した(図6)。蛍光シグナルの強さは0(蛍光観察無し)から4(最大の蛍光観察)のスコア判定系を用いて記録した。
1mg/mLの濃度のビオチン-CMG(2)-Ad-DOPEと称される構築物とのインキュベーションから得られた、改変洗浄RBCの適量を維持し、14℃で14日間保存した。RBCによる構築物の保持を、以前のようにAvidin-AFとのインキュベーションによって評価した。
蛍光の判定は表25に記録されている。
表25:
【表23】

【0120】
ネズミ胚
ネズミ胚(桑実胚/初期胚盤胞期、3.5日)をblastassistTM培養液にて50マイクロリットルのマイクロドロップ中でインキュベートした。0.1、1または2mg/mLの濃度のビオチン-CMG(2)-Ad-DOPEと称される構築物、または0.5mg/mLの濃度のBioG(陽性コントロール)とともに胚をインキュベートした。
マイクロドロップへの導入の前に、胚の透明帯を0.5%プロナーゼ処理(4分インキュベーション)によって除去し、胚操作培養液中で3回洗浄した。胚の導入前に、各マイクロドロップを37℃にて一晩5%CO2で平衡化した。
ビオチン-CMG(2)-Ad-DOPEと称される構築物および胚を含むマイクロドロップを37℃にて40分間5%CO2中でインキュベートした。胚およびBioGを含むマイクロドロップを37℃にて40分間5%CO2中でインキュベートした。
インキュベーションに続いて、胚の各群を操作培養液で3回洗浄し、蛍光標識のために2mg/mLのAvidin-AFマイクロドロップを含む50マイクロリットルのマイクロドロップに移した。移された胚を含むマイクロドロップを暗所で30分37℃にてインキュベートした。
続いて、胚の各群を操作培養液で3回洗浄し、ガラスの顕微鏡スライドに観察のためにマウントした。胚を蛍光顕微鏡下で488nmで観察した。蛍光シグナルの強さは0(蛍光無し)から4(最大の蛍光)のスコア判定系を用いて記録した。
表26:
【表24】

【0121】
精子および細胞の固定化
精子および赤血球(RBC)の固定化は、ビオチン-CMG(2)-Ad-DOPEと称される構築物およびストレプトアビジンビーズ(Dynabeads(商標) M-280)の使用によって実施した。
材料
ビオチン-CMG(2)-Ad-DOPEと称される構築物のストック溶液(100μL)を水にて10mg/mLの濃度で調製しさらに培養液(Medicult 10310060A)で希釈して、0.1mg/mLの試験希釈物を提供した。
新鮮な精液(採取後1日未満)の精子を、培養液での10倍希釈によって(Medicult 10310060A;37℃で最短2時間5%CO2にて予備インキュベーション)運動性について評価した(80%、グレード3(急速前進運動))。精子の計測(91.5x106/mL)は脱イオン水での10倍希釈によって実施した。
精子は、洗浄してさらにSpermGrad 125のグラディエント(Vitrolife 10099;15mLの丸底管中の2mLの80%溶液上に40%溶液2mL)上に新鮮な精液を重層し、500xgで20分間遠心することによって単離した。
前記グラディエントの下部層(約0.7mL)を4mLの丸底管に移し、さらに約2mLのフラッシング(操作)培養液(Medicult 10840125A)を添加した。前記管を300xgで10分間遠心し、精子をさらに2回洗浄した(管を逆さまにして混合)。
洗浄精子のサンプルを5%CO2にて一晩37℃でインキュベートした。精子の計測(約25x106/mL)は、一晩インキュベートした後で脱イオン水中の10倍希釈によって実施した。
精子
ビオチン-CMG(2)-Ad-DOPE(I)と称される構築物の試験希釈物の100μL体積を4本の0.6mLエッペンドルフチューブ(A−D)の各々に加え、さらに100μLの培養液を1本の0.6mLエッペンドルフチューブ(E)に添加した。
開放チューブを5%CO2雰囲気中で37℃にてインキュベートした後、各チューブに70μLの精子(約25x106/mL)を添加し、120分(A)、60分(B)、30分(C)、10分(B)、および120分(E)インキュベートした。
インキュベーションに続いて、数滴のフラッシング培養液を添加し、この管を300xgで5分間遠心した。精子をさらに2回フラッシング培養液で洗浄し、その後、培養液で最終体積100μLに再懸濁した。
約6.25x106/100μLの濃度のストレプトアビジンビーズをBSA+フラッシング培養液で35倍に希釈し、改変精子の希釈懸濁液と等体積で混合したとき0.1ビーズ/精子の比を提供した。
改変精子の希釈懸濁液の5μL体積をストレプトアビジンビーズの希釈懸濁液5μLとスライド上で混合し、カバースリップで被覆した。
前記混合物を400xの倍率で顕微鏡下で観察した。図9は、ビオチン-CMG(2)-Ad-DOPE(I)と称される構築物の0.1mg/mLと60分間(B)インキュベートした後で提供された混合物の顕微鏡写真を示す。
ストレプトアビジンビーズと改変精子との結合評価が表27に記録されている。
表27:
【表25】

ビーズと結合しているにもかかわらず精子は運動能力を保持しているのが認められ(アクロソーム反応は明瞭ではなかった)、運動性精子がもっぱら結合した。
【0122】
赤血球
CelpresolTMを用いてビオチン-CMG(2)-Ad-DOPE(I)と称される構築物の希釈液を1mg/mLの濃度で調製した。20μLの構築物希釈液と37℃で2時間インキュベートすることにより、60μL体積の洗浄A型赤血球(RBC)を改変した。
上記に記載したように、改変赤血球をPBSで2回、CelpresolTMで1回洗浄した。洗浄細胞(改変またはコントロール)の2%細胞懸濁液をCelpresolTMで調製し、血球計算板を用いて細胞濃度を決定した(150x106/mL)。同様に、ストレプトアビジンビーズ懸濁物の濃度を決定した(134x106/mL)。
基底にネオジミウム(希土類)スーパーマグネット(Magnets NZ Limited)を結合させた96ウェルプレートのウェルに50μL体積のストレプトアビジンビーズ懸濁物を添加した。50μL体積のRBC懸濁液を添加して、約1:1のビーズ対RBC比を提供し、室温で1時間インキュベートしてRBCを定着させた。
前記ウェルを3回PBSで洗浄し、ピペットで洗浄溶液を吸引した。前記洗浄ウェルを顕微鏡下で観察し、保持されているRBCを計測した(図10)。
【0123】
細胞集団の分離
ビオチン-CMG(2)-Ad-DOPE(I)と称される構築物の0.5mg/mL溶液をCelpresolTMで調製し、10μL体積を用いて1mLエッペンドルフチューブで30μL体積のO型RBCパック細胞を改変し、第一の細胞集団を提供した。未改変A型RBCを第二の細胞集団として用いた。
両細胞集団を水浴中にて37℃で2時間インキュベートし、続いてImmufuge II(低速、1分)を用いてPBSで2回、CelpresolTMで1回洗浄した。1.5mLを添加することによって各懸濁物の細胞濃度を2%にした。
RBC:ビーズがほぼ1の比率で前記RBC懸濁物をアビジン付加磁性ダイナビーズと混合し、室温にて10分間回転機上でインキュベートした。続いて、第一および第二のRBC集団サンプルをエッペンドルフチューブにて等体積(各々35μL)で2分間混合した。
エッペンドルフの中味を96ウェルプレートのウェルに移し、ウェルの下側に磁石を1分間適用した。磁石を適用したままビーズを懸濁させないで、上清を注意深く取り出した。続いて上清の細胞の血液型判定を、DynamedTMゲルカードに30μLの上清および30μLの抗A抗体を適用することによって実施した。遠心機でカードを10分間遠心した。ペレットにO型細胞が存在しないことによって、磁石にO型RBCが保持されたことが示された。
【0124】
ビオチン-脂質構築物による細胞層の改変
無血清培養液および血清含有培養液中での単層細胞株RL95-2(ヒト子宮内膜腺癌から樹立された(ATCC HTB CRL1671))の改変を評価した。
1%のペニシリン/ストレプトマイシンを含むD-MEM/F12(Gibco 15140-122)を無血清培養液として用いた。1%のペニシリン/ストレプトマイシンおよび5μg/mLのインスリン(Gibco 12585-014, Invitrogen NZ)を含むD-MEM/F12 10%FBS(Gibco 10091-130, Invitrogen NZ)を血清含有培養液として用いた。
細胞株RL95-2の懸濁物を予め温めた血清含有培養液中で所望の濃度(例えば4x105細胞/mL)に希釈した。前記希釈物の25μL体積を用い、各処理がデュープリケートとなるようにTerasakiトレーの必要なウェルに播種した。細胞単層がほぼ60%コンフルエントになるまで、前記プレートを5%CO2、37℃のインキュベーターで一晩インキュベートした。ビオチン-CMG(2)-Ad-DOPEの希釈物を調製し、12μL体積を洗浄細胞単層を含むウェルに添加し、20、100または500μg/mLの最終濃度を提供した。トレーを5%CO2、37℃で120分インキュベートした。
続いて細胞を洗浄し、0.1mg/mLのAvidin Alexa Fluor(商標)488の溶液12μLを添加した。続いて、細胞をさらに暗所にて30分室温でインキュベートした。
前記単層を最後に3回PBSで洗浄し、トレーを逆さまにしてオリンパスBX51蛍光顕微鏡で倍率200倍、露光時間475msで写真撮影した。
構築物を20、100および500μg/mLで無血清培養液にて挿入するとき、均質な強さの蛍光シグナルが細胞膜で観察され、構築物の濃度の増加とともに強さが増す(図12A、CおよびE)。構築物を血清含有培養液中で挿入するとき、弱められた蛍光が同一濃度で認められる(図12B、DおよびE)。これらの結果は、細胞膜への構築物の最適な挿入には無血清培養液が必要であることを示唆している。
構築物が無血清培養液中で20、100および500μg/mLで挿入されると、均質な強さの蛍光シグナルが細胞膜で観察され、強度は構築物の濃度の増加とともに強くなる。蛍光の強さはまた挿入時間が長くなるとともに増強する(表28)。これらの結果は、細胞膜への構築物の最適な挿入は、構築物の濃度の増加および/または挿入時間の増加にしたがってもたらされることを示唆している。
【0125】
【表26】

表28:細胞膜への構築物の最適な挿入は、構築物の濃度の増加および/または挿入時間の増加にしたがって生じる。‘na’は“評価せず”を意味する。
アビジンAlexa Fluor(商標)488を構築物改変RL95-2細胞に添加し、37℃で4時間および24時間インキュベートすると、蛍光は徐々に細胞表面から細胞内部へ移動した(図13)。細胞を4℃でインキュベートしたときには内在化は認められなかった。
無血清培養液で培養したとき、蛍光は構築物改変RL95-2細胞で挿入24時間後に検出されたが、ただし蛍光はT=0から低下した(表29)。しかしながら、細胞を血清含有培養液で培養したときは、1+の蛍光スコアが最高濃度の構築物(500mg/mL)で検出されたが、それより低い濃度では検出されなかった。これらの結果は、無血清培養液で培養されたとき、構築物は挿入24時間後に細胞膜内で最適に保持されるが、血清含有培養液では保持されないことを示唆している。
【0126】
【表27】

表29:挿入24時間後の構築物の保持。構築物は、無血清培養液で挿入後24時間培養した細胞で検出されたが、血清含有培養液では最高濃度でのみ検出された。‘na’は“評価せず”を意味する。
【0127】
抗原提示の改変
国際出願PCT/NZ2005/000052(公開番号WO2005/090368)の明細書に記載されているように、品質管理細胞の製造で使用される構築物の量は製造コストの決定要因である。
細胞表面の直ぐ側の環境から少し離れた場所での抗原の提示は、交差反応性抗体による認識およびそれに続く凝集を促進することが考えられた。機能性脂質構築物(F-S-L)(スペーサー(S)は本発明の構造モチーフを含む)の抗原(F)のために概算される細胞表面からの距離は、7.2nm(CMG(2))および11.5nm(CMG(4))である。これらの距離は、そのスペーサーが国際出願PCT/NZ2005/000052(公開番号WO2005/090368)の明細書に記載されているも構築物(F-S-L)(すなわちAtri-sp-Ad-DOPE(I))の抗原についての1.9nmに匹敵する。
この仮説を試験するために、4種の異なる三糖類(Atri)-脂質構築物の溶液をCelpresolTM中の50μM、10μMおよび5μM溶液として調製した。続いて、0.6mL(pcv)の洗浄RBCを対応する溶液の0.6mLと接触させて改変赤血球を調製した。この混合物を37℃で2時間インキュベートし、続いて3回洗浄して改変細胞懸濁物を提供した。
改変細胞懸濁物は、BioVue血清学カードに適したCelpresol LISSTM中にて0.8%で調製した。各カードに0.05mL体積のCSLモノクローナル抗A(026129801)を、続いて0.05mLの改変細胞懸濁物を適用した。反応はBioVueカセット遠心機での遠心後に記録した(表29)。
Atri-脂質構築物のモル濃度等価物についての記録反応の比較は、等価の血清学的結果を提供するためにはより少ないCMG(2)またはCMG(4)が必要であることを示している。CMG(4)と比較してCMG(2)に有意な増大はなかった。CMG(2)について、有意ではないが小さな変化があった。
本発明をこれまで実施例の手段によって説明してきたが、本発明の範囲を外れることなく特許請求の範囲の方法に対して変型および改変が実施できることは理解されよう。特記したように、非特異的相互反応、例えば機能性脂質構築物のジアシル-またはジアルキル-グリセロ脂質部分と膜との間の相互反応に対して、天然に存在する脂質の構造異性体および立体異性体は機能的に等価であり得ることは理解されよう。
具体的な特徴に対して公知の等価物が存在する場合、そのような等価物は、あたかも本明細書に具体的に言及したかのように包含される。例えば、ジアシルグリセロ2-ホスフェートはホスファチデート(ジアシルグリセロ3-ホスフェート)の代用とすることが可能であり、ホスファチデートの絶対配置はRもSも可能であると考えられる。
【0128】
表29

【0129】
参考文献
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【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造F-S-Lの機能性脂質構築物であって、式中、Fは機能的部分であり、Lはジアシルまたはジアルキル脂質であり、SはFをLに共有結合させるスペーサーであって以下の基礎構造を含む前記機能性脂質構築物:

式中、gは整数1、2または3であり、Mは一価の陽イオンまたは置換基であり、さらに*はH以外である)。
【請求項2】
基礎構造が以下の構造である、請求項1に記載の機能性脂質構築物:

(式中、hは整数1、2、3または4である)。
【請求項3】
gが整数2であり、さらにhが整数1、2または4である、請求項2に記載の機能性脂質構築物。
【請求項4】
MがHまたはCH3である、請求項3に記載の機能性脂質構築物。
【請求項5】
Lがジアシルグリセロリン脂質である、請求項1に記載の機能性脂質構築物。
【請求項6】
Lがホスファチジルエタノールアミンである、請求項1に記載の機能性脂質構築物。
【請求項7】
機能性脂質構築物の構造が以下の部分構造を含む、請求項6に記載の機能性脂質構築物:

(式中、vは整数3、4または5であり、M’は一価の陽イオンであり、さらにR1およびR2はそれぞれ独立して、脂肪酸trans-3-ヘキサデセン酸、cis-5-ヘキサデセン酸、cis-7-ヘキサデセン酸、cis-9-ヘキサデセン酸、cis-6-オクタデセン酸、cis-9-オクタデセン酸、trans-9-オクタデセン酸、trans-11-オクタデセン酸、cis-11-オクタデセン酸、cis-11-エイコセン酸またはcis-13-ドコセン酸のアルキルまたはアルケニル置換基から成る群から選択される)。
【請求項8】
Fが炭水化物、ペプチド、化学的反応基、結合因子または蛍光団から成る群から選択される機能的部分である、請求項7に記載の機能性脂質構築物。
【請求項9】
以下の構造の請求項8に記載の機能性脂質構築物:

(式中、Fは炭水化物であり、xは整数2、3または4であり、yは整数1、2または3であり、さらにR3は炭水化物の置換ヒドロキシルのOである)。
【請求項10】
以下の構造の請求項8に記載の機能性脂質構築物:

(式中、Fはペプチドであり、wは整数1または2であり、R3はペプチドのCys残基の置換スルフヒドリルのSである)。
【請求項11】
以下の構造の請求項8に記載の機能性脂質構築物:

(式中、Fは化学反応性基マレイミドであり、さらにwは整数1または2である)。
【請求項12】
以下の構造の請求項8に記載の機能性脂質構築物:

(式中、Fが結合因子、ビオチンあり、さらにkが整数2、3または4である)。
【請求項13】
以下の構造の請求項8に記載の機能性脂質構築物:

(式中、Fはフルオレセイン(またはその誘導体の1つ)の蛍光団であり、zは整数3、4または5であり、R3がフルオレセイン(またはその誘導体の1つ)のイソチオシアネート誘導体のチオシアネート置換基のCである)。
【請求項14】
基礎構造がMCMG(1)と称される以下の構造であるか;

MCMG(2)と称される以下の構造であるか;

CMG(1)と称される以下の構造であるか;

またはCMG(2)と称される以下の構造である、
請求項8から13のいずれか1項に記載の機能性脂質構築物:


【請求項15】
構造F-S-Lの水溶性ペプチド-脂質構築物であって、式中、Sはスルフィド結合を介してFに連結されるスペーサーであり、以下の基礎構造を含む、前記水溶性ペプチド-脂質構築物:

(式中、gは整数1、2または3であり、Mは一価の陽イオンまたは置換基であり、さらに*はH以外である)。
【請求項16】
基礎構造が以下の構造である、請求項15に記載のペプチド-脂質構築物:

(式中、hは整数1、2、3または4である)。
【請求項17】
gおよびhは整数2である、請求項16に記載のペプチド-脂質構築物。
【請求項18】
MがHまたはCH3である、請求項16に記載のペプチド-脂質構築物。
【請求項19】
Lがジアシルグリセロリン脂質である、請求項16に記載のペプチド-脂質構築物。
【請求項20】
Lがホスファチジルエタノールアミンである、請求項16に記載のペプチド-脂質構築物。
【請求項21】
以下の部分構造を含む、請求項16に記載のペプチド-脂質構築物:

(式中、vは整数3、4または5であり、M’は一価の陽イオンであり、さらにR1およびR2はそれぞれ独立して、脂肪酸trans-3-ヘキサデセン酸、cis-5-ヘキサデセン酸、cis-7-ヘキサデセン酸、cis-9-ヘキサデセン酸、cis-6-オクタデセン酸、cis-9-オクタデセン酸、trans-9-オクタデセン酸、trans-11-オクタデセン酸、cis-11-オクタデセン酸、cis-11-エイコセン酸またはcis-13-ドコセン酸のアルキルまたはアルケニル置換基から成る群から選択される)。
【請求項22】
以下の構造を有する、請求項21に記載のペプチド-脂質構築物:

(式中、wは整数1または2であり、R3はペプチドのCys残基(Cys)の置換スルフヒドリルのSである)。
【請求項23】
以下の構造を有する、請求項22に記載のペプチド-脂質構築物:

(式中、xおよびyの合計は5より大きい)。
【請求項24】
Fが、ペプチドの溶解性を高めるように選択される近位末端配列(PTS)を含むペプチドである、請求項23に記載のペプチド-脂質構築物。
【請求項25】
ペプチドのPTSが、SerLysLysLysLysGly、AlaAlaAlaAla、GlySerGlySerGlyから成る群から選択される、請求項24に記載のペプチド-脂質構築物。
【請求項26】
Cys残基がペプチドの末端Cys残基(Cys)である、請求項22に記載のペプチド-脂質構築物。
【請求項27】
ペプチドの末端配列が、GlyLysLysLysLysSerCys、AlaAlaAlaAlaCys、GlySerGlySerGlyCysCysSerLysLysLysLysGly、CysAlaAlaAlaAla、CysGlySerGlySerGlyから成る群から選択される、請求項26に記載のペプチド-脂質構築物。
【請求項28】
Cys残基がペプチドのカルボキシ末端にあるペプチドの末端Cys残基である、請求項27に記載のペプチド-脂質構築物。
【請求項29】
Fが、グリコフォリンA、グリコフォリンBまたはその変異(MNS血液型系を含む)から成る群から選択される抗原のエピトープを含むペプチドである、請求項15に記載のペプチド-脂質構築物。
【請求項30】
Fがペプチドリストから選択されるペプチドである、請求項26に記載のペプチド-脂質構築物。
【請求項31】
Fが以下から成る群から選択されるペプチドである、請求項30に記載のペプチド-脂質構築物:
CysThrTyrProAlaHisThrAlaAsnGlu
GlnThrAsnAspLysHisLysArgAspThrTyrAlaAlaAlaAlaAlaCys
GlnThrAsnAspLysHisLysArgAspThrTyrGlySerGlySerGlyCys
GlnThrAsnAspMetHisLysArgAspThrTyrGlySerGlySerGlyCys
SerSerGlnThrAsnAspLysHisLysArgAspThrTyrCys
ThrTyrProAlaHisThrAlaAsnGluValCys
ThrTyrProAlaHisThrAlaAsnGluCys
ProAlaHisThrAlaAsnGluValCys
SerGlnThrAsnAspLysHisLysArgAspCys
【請求項32】
Lが1,2-O-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスファチジルエタノールアミン(DOPE)および1,2-O-ジステアリル-sn-グリセロ-3-ホスファチジルエタノールアミン(DSPE)から成る群から選択されるグリセロリン脂質である、請求項15に記載のペプチド-脂質構築物。
【請求項33】
対象の血清中の反応性抗体を検出する方法であって、
−請求項9、10または15から32のいずれか1項に記載の機能性脂質構築物(F-S-L)を取り込ませて改変した細胞の懸濁液と血清のサンプルとを接触させて混合物を提供する工程、
−凝集させるために十分な時間および温度で前記混合物をインキュベートする工程、
および
−前記混合物中の細胞の凝集の程度を決定する工程を含み、
Fは前記反応性抗体に対するエピトープを含む炭水化物またはペプチドである、前記反応性抗体を検出する方法。
【請求項34】
混合物中の細胞の凝集の程度を決定する前に、混合物に抗-対象グロブリン抗体を添加する中間工程を含む、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
抗-対象グロブリン抗体が抗ヒトグロブリン(AHG)抗体である、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
Fがペプチドであり、ある量のペプチドを血清のサンプルに添加する予備工程を含み、前記ペプチドの量が非特異的凝集を中和するかまたは反応性抗体の特異性を確認するために十分である、請求項33に記載の方法。
【請求項37】
反応性抗体が、グリコフォリンA、グリコフォリンBまたはその変異(MNS血液型系を含む)から成る群から選択される抗原に対して反応性である、請求項33に記載の方法。
【請求項38】
対象がヒトである、請求項33に記載の方法。
【請求項39】
細胞が赤血球である、請求項33に記載の方法。
【請求項40】
請求項11に記載の機能性脂質構築物とCys残基を含むペプチドとを反応させる工程を含む、請求項33から39のいずれか1項に記載のペプチド-脂質構築物を調製する方法。
【請求項41】
−請求項1から14のいずれか1項に記載の機能性脂質構築物の溶液と細胞または多細胞造物を、前記細胞または多細胞構造物への前記構築物の取り込みを可能にするために十分な時間および温度で接触させる工程を含む、
細胞または多細胞構造物の表面で発現される機能的部分において定性的および定量的変化を生じさせる方法。
【請求項42】
以下の工程を含む、1つもしくは2つ以上の細胞または多細胞構造物を固定化する方法:
−請求項12に記載の構築物の溶液と細胞または多細胞構造物を、前記細胞または多細胞構造物への前記構築物の有効量の取り込みを可能にするために十分な時間および温度で接触させて、改変細胞または多細胞構造物を提供する工程;および
−表面に可逆的に局在化させることができるアビジン被覆支持体と前記改変細胞または多細胞構造物を接触させる工程。
【請求項43】
アビジン被覆支持体がアビジン被覆磁性ビーズから成る群から選択される、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
表面へ可逆的に局在化させることが磁場の適用によって行われる、請求項42に記載の方法。
【請求項45】
以下の工程を含む、請求項44に記載の方法:
−以下の構造(式中、R1およびR2はともに(CH2)7CHCH(CH2)7である)の構築物の分散物と細胞または多細胞構造物を、前記細胞または多細胞構造物への前記構築物の有効量の取り込みを可能にするために十分な時間および温度で接触させて、改変細胞または多細胞構造物を提供する工程;

−前記改変細胞または多細胞構造物をアビジン被覆磁性ビーズと接触させる工程;および
−磁場を適用して、表面に前記ビーズを局在化させる工程。
【請求項46】
以下の工程を含む、第一および第二の細胞集団の凝集を促進する方法:
−請求項12に記載の構築物の溶液と前記第一の細胞集団を、前記細胞への前記構築物の有効量の取り込みを可能にするために十分な時間および温度で接触させて、第一の集団の改変細胞を提供する工程;
−請求項12に記載の構築物の溶液と前記第二の細胞集団を、前記細胞への前記構築物の有効量の取り込みを可能にするために十分な時間および温度で接触させて、第一の集団の改変細胞を提供する工程;
−前記集団の一方の改変細胞を過剰のアビジンと接触させる工程;および
−前記第一の集団の改変細胞と第二の集団の改変細胞とを接触させる工程。
【請求項47】
以下の工程を含む、請求項46に記載の方法:
−以下の構造の構築物の溶液と前記第一の細胞集団とを、前記細胞への前記構築物の有効量の取り込みを可能にするために十分な時間および温度で接触させて、第一の集団の改変細胞を提供する工程;


−前記構築物の溶液と前記第二の細胞集団とを、前記細胞への前記構築物の有効量の取り込みを可能にするために十分な時間および温度で接触させて、第一の集団の改変細胞を提供する工程;
−前記集団の一方の改変細胞を過剰のアビジンと接触させる工程;および
−前記第一の改変細胞と第二の集団の改変細胞とを接触させる工程。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12A】
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【図12B】
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【図12C】
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【図12D】
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【図12E】
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【図12F】
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【図12G】
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【図12H】
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【図13A】
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【図13B】
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【図13C】
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【図13D】
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【図13E】
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【図13F】
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【公表番号】特表2011−501747(P2011−501747A)
【公表日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−528824(P2010−528824)
【出願日】平成20年10月13日(2008.10.13)
【国際出願番号】PCT/NZ2008/000266
【国際公開番号】WO2009/048343
【国際公開日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【出願人】(310021009)
【出願人】(310021010)
【出願人】(310021021)
【出願人】(310021032)
【Fターム(参考)】