説明

機能性貴金属製品およびその製造方法

【課題】発癌性を有する結晶性シリカを一切含有せずに、血行・血流促進効果を発揮することのできる機能性貴金属製品およびその製造方法を提供する。
【解決手段】機能性貴金属製品は、金、銀、プラチナおよびそれらの合金からなる群から選ばれた貴金属と、この貴金属の素地中に分散したアモルファスシリカ粒子とを備える。この機能性貴金属製品は、所定の比率で秤量した貴金属粉末粒子とアモルファスシリカ粒子との混合粉末粒子を金型に充填した状態で加熱および焼結することにより、得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人体に対して発癌性を有する結晶性シリカを一切含有しない、血行・血流促進効果を有する機能性貴金属製品およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
金、プラチナ、ホワイトゴールド、銀などの貴金属は、その輝きを特徴として宝飾品、装飾品、美術工芸品、時計、指輪、ネックレス、ペンダント、食器などに幅広く使われている。最近では、身体の健康増進や治療・治癒効果を主たる目的にした貴金属や、それらの効果を副次的に謳った健康志向型の貴金属が知られている。
【0003】
例えば、特開2000−144283号公報(特許文献1)には、銀に適正量のゲルマニウムとインジウムとを含有させることで、遠赤外線効果を発揮する装身具が提案されている。また、特開平11−56425号公報(特許文献2)には、マイナスイオンを発生するセラミックスを含有する貴金属製装身具が提案されている。さらに、特開2002−283491号公報(特許文献3)には、マイナスイオンを発生する鉱石を表面に塗布した装飾品が提案されている。
【特許文献1】特開2000−144283号公報
【特許文献2】特開平11−56425号公報
【特許文献3】特開2002−283491号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の従来技術に開示された貴金属製品において、遠赤外線効果やマイナスイオン発生効果を有する物質の一つとして、シリカ(酸化ケイ素:SiO)粒子、またはそれを主成分とする鉱石(例えば、貴陽石、トルマリン、医王石、麦飯石、シリカブラック、稲田石、小野鉱石など)が使用されている。使用されているシリカは、いずれも結晶性シリカである。
【0005】
国際癌研究機関(IARC)によれば、「結晶性シリカは人体に対する発癌性がある(グループ1)」との報告がなされている。そのため、昨今のアスベスト問題などを背景に、結晶性シリカについては、その使用制限がなされる可能性がある。これに対し、アモルファス(非結質)シリカについては、同機関の調査では、グループ3に分類されており、人体への発癌性の指摘はなされていない。
【0006】
従来の貴金属製品においては、その貴金属の製造過程または貴金属製品の製造過程において、原料となる結晶性シリカを取り扱う際に、発癌性物質としての人体への影響が懸念される。
【0007】
本発明の目的は、発癌性を有する結晶性シリカを一切含有せずに、血行・血流効果を発揮することのできる機能性貴金属製品およびその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に従った機能性貴金属製品は、金、銀、プラチナおよびそれらの合金からなる群から選ばれた貴金属と、この貴金属の素地中に分散したアモルファスシリカ粒子とを備える。
【0009】
ここで、本明細書中で使用する「機能性貴金属製品」という用語は、貴金属を用いた宝飾品、美術工芸品、時計、指輪、ネックレス、ペンダント、食器などの製品を含むことは勿論であるが、そのような製品を作るための素材としての貴金属材料をも含むものとして理解されねばならない。
【0010】
好ましくは、貴金属の素地中に含まれるアモルファスシリカ粒子の含有率は、体積分率で1%以上20%以下であり、より好ましくは、体積分率で3%以上12%以下である。
【0011】
好ましくは、アモルファスシリカ粒子におけるシリカ含有量は、重量基準で90%以上であり、より好ましくは、重量基準で95%以上である。
【0012】
好ましくは、アモルファスシリカ粒子の粒子径は、50ナノメートル以上500ミクロン以下であり、より好ましくは、500ナノメートル以上200ミクロン以下である。
【0013】
上記の機能性貴金属製品を、物品全体または素材全体として使用することもできるし、物品の一部として使用することもできる。
【0014】
一つの局面における本発明に従った貴金属製品の製造方法は、以下の工程を備える。
(a)金、銀、プラチナおよびそれらの合金からなる群から選ばれた貴金属の粉末粒子と、アモルファスシリカ粒子とを準備する工程。
(b)上記貴金属粉末粒子と上記アモルファスシリカ粒子とを所定の比率で秤量する工程。
(c)所定の比率になっている上記貴金属粉末粒子と上記アモルファスシリカ粒子とを混合して混合粉末粒子を得る工程。
(d)上記混合粉末粒子を金型に充填した状態で加熱および焼結することにより、アモルファスシリカ粒子を貴金属の素地中に分散させる工程。
【0015】
好ましくは、上記貴金属粉末粒子の融点をTmとすると、上記の混合粉末粒子に対する加熱および焼結温度は0.9Tm〜1.2Tmの範囲内である。
【0016】
一つの実施形態では、金型内の混合粉末粒子に圧力を付与しながら、上記混合粉末粒子に対する加熱および焼結処理を行う。この場合、好ましくは、上記貴金属粉末粒子の融点をTmとすると、上記の混合粉末粒子に対する加熱および焼結温度は0.8Tm〜1.2Tmの範囲内である。
【0017】
好ましくは、上記混合粉末粒子に対する加熱および焼結処理を、真空中または不活性ガス雰囲気中で行う。
【0018】
他の局面における本発明に従った貴金属製品の製造方法は、以下の工程を備える。
【0019】
(e)金、銀、プラチナおよびそれらの合金からなる群から選ばれた貴金属の粉末粒子と、アモルファスシリカ粒子とを準備する工程。
(f)上記貴金属粉末粒子と上記アモルファスシリカ粒子とを所定の比率で秤量する工程。
(g)所定の比率になっている上記貴金属粉末粒子と上記アモルファスシリカ粒子とを混合して混合粉末粒子を得る工程。
(h)上記混合粉末粒子を金型に充填した後に加圧することにより圧粉固化体を作製する工程。
(i)上記圧粉固化体に対して熱間塑性加工を施して緻密化することにより、アモルファスシリカ粒子を貴金属の素地中に分散させる工程。
【0020】
好ましくは、上記の熱間塑性加工に先立ち、圧粉固化体を真空中または不活性ガス雰囲気中で加熱する。好ましくは、貴金属粉末粒子の融点をTmとすると、上記の圧粉固化体の加熱温度は0.5Tm〜1.0Tmの範囲内である。
【0021】
圧粉固化体に対する熱間塑性加工は、例えば、押出加工、圧延加工、鍛造加工、スエージング加工、プレス加工または線引き加工である。
【0022】
上記規定内容の意義および作用効果等については、以下に詳細に説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明は、発癌性を有する結晶性シリカを一切含有せずに、血行・血流促進効果を発揮する機能性貴金属製品およびその製造方法を提供するものである。具体的には、アモルファスシリカ粒子を出発原料粉末として用いることで、貴金属および貴金属製品の製造工程における人体への悪影響を阻止する。
【0024】
(1)機能性貴金属製品におけるアモルファスシリカ粒子の含有率
本発明に係る機能性貴金属製品においては、金、銀、プラチナおよびそれらの合金からなる群から選ばれた貴金属の素地中にアモルファス(非晶質)シリカ(SiO)粒子が分散している。好ましいアモルファスシリカ粒子の含有率は、体積分率で1%以上20%以下である。含有率が1%未満の場合、機能性貴金属製品の血行・血流促進効果が十分に発現しない。他方、含有率が20%を超えると、機能性貴金属素材の靱性が低下するために、後工程での塑性加工の際に素材に亀裂、割れ、破損などが発生する。
【0025】
より好ましいアモルファスシリカ粒子の含有率は、体積分率で3%以上12%以下である。含有率を3%以上にすることで、より顕著な血行・血流効果が現れる。アモルファスシリカ粒子を12%を超えて添加しても、血行・血流効果はさらに顕著には向上せず、多量に添加したシリカ粒子によって貴金属の外観が損なわれる場合がある。
【0026】
(2)アモルファスシリカ粒子におけるシリカ含有量(シリカ純度)
好ましくは、アモルファスシリカ粒子におけるシリカ含有量は、重量基準で90%以上である。シリカ含有量が90%未満では、アモルファスシリカ粒子が貴金属素地中に分散していても、上記の血行・血流効果が十分に得られない。一方、不純物としては、アルミナ(Al)、酸化カリウム(KO)、酸化鉄(Fe)、酸化カルシウム(CaO)、酸化マグネシウム(MgO)などの酸化物のほかに、炭素(C)などが含まれるが、これらは人体への影響は極めて少なく問題にはならない。
【0027】
なお、より好ましいシリカ含有量は95%以上である。不純物が少なく、純度が高いシリカ粒子を用いると、より少ないシリカ粒子添加によって上記の血行・血流効果を有する機能性貴金属製品を作製できる。その結果、貴金属素材の鍛造加工や圧延加工などの塑性加工性が向上するといった利点がある。
【0028】
(3)アモルファスシリカ粒子の粒子径
好ましいアモルファスシリカ粒子の粒子径は、50ナノメートル以上500ミクロン以下である。粒子径が50ナノメートル未満であれば、シリカ粒子が凝集し、素地中で大きな欠陥となるために機能性貴金属製品の強度や塑性加工性が低下する。一方、粒子径が500ミクロンを超える場合も同様に、その粗大なシリカ粒子が欠陥または応力集中部となる。
【0029】
より好ましいアモルファスシリカ粒子の粒子径は、500ナノメートル以上200ミクロン以下である。粒子径が500ナノメートル以上であれば、上記の凝集の問題もなく、素地中に均一にシリカ粒子が分散し、またシリカ粒子の価格も安価となるために経済性の点においても優れる。他方、粒子径が200ミクロン以下であれば、欠陥や応力集中部になることもなく、また素地を構成する原料粉体との混合性も良好であるために、素地中での粒子分散性が向上する。
【0030】
機能性貴金属製品の素地を構成する金、銀、プラチナまたはそれらの合金からなる貴金属粉末については、その純度に関する規定は無い。指輪やネックレスなどのジュエリーや装飾品としての外観が損なわれない範囲の純度であれば、特に問題はない。また貴金属粉末の粒子径に関しても特に限定すべき範囲はないが、本発明に係る貴金属製品の製造方法においては、100ミクロンから3mm程度の範囲の大きさを有する素地用粉末であることが成形固化性および焼結性の点において好ましい。
【0031】
アモルファスシリカ粒子は、様々な製造方法によって得られる。例えば、石英ガラスを粉砕して上述した所定の粒子径を有する粉末とする方法や、木材や農作物等のバイオマスに含まれるアモルファスシリカを酸処理および焼成によって抽出する方法がある。さらには、フェロモリブデン(FeMo)やフェロシリコン(FeSi)などの高融点の鉄系化合物を製造する際に発生する微細なアモルファスシリカ粒子なども利用できる。
【0032】
(4)機能性貴金属製品の製造方法
(a)投入原料の準備
出発原料として、金、銀、プラチナおよびそれらの合金からなる群から選ばれた貴金属粉末粒子と、アモルファスシリカ粒子とを準備する。両者を前述した所定の適正な比率で秤量し、これをボールミル、V型混合機、ロッキングミルなどによる従来の乾式混合法によって均一に混合して混合粉末を得る。この混合粉末を投入原料粉末として用いる。
【0033】
(b)金型内焼結法
上記(a)の投入原料粉末を金型に充填した状態で、好ましくは真空中または不活性ガス雰囲気中で加熱・焼結することで、アモルファスシリカ粒子が貴金属の素地中に分散した機能性貴金属製品を作製する。金型の材質としては、耐熱性の点でカーボンを主に用いるが、温度条件によっては鉄鋼材料や超硬などを適用できる。
【0034】
加熱および焼結条件に関しては、用いる貴金属粉末粒子の融点をTmとすると、好ましくは、加熱および焼結する際の金型内における投入原料粉末の温度は0.9Tm〜1.2Tmである。加熱・焼結温度が0.9Tm未満の場合、貴金属粉末粒子同士で十分な拡散現象が進行しないために焼結後の素材の強度は低くなる。その結果、後工程での圧延加工や鍛造加工において貴金属素材に亀裂、割れ、欠損などの不良が生じる。加熱および焼結は、好ましくは真空中あるいは不活性ガス雰囲気中で行うが、これは貴金属粉末粒子の酸化による粒子間の焼結現象の低下を抑制するためである。
【0035】
加熱および焼結温度が1.2Tmを超えると、貴金属粉末粒子全体において液相が発生し、その粘性が低下するために、金型の隙間から溶融した貴金属が染み出るといった問題が生ずる。なお、加熱および焼結温度が貴金属粉末粒子の融点Tmに達した時点から貴金属粉末粒子表面に液相が発生するが、粉末の内部までが完全に液相化せず、表面での液相拡散によって形状を維持しながら焼結体が得られる。言い換えると、このような液相拡散現象を利用した良好な貴金属焼結素材は、加熱・焼結温度がTm以上1.2Tm以下において得られる。
【0036】
(c)金型内加圧・焼結法
上記(a)の投入原料粉末を金型に充填した状態で、好ましくは真空中または不活性ガス雰囲気中で圧力を付与しながら、同時に加熱・焼結することで、アモルファスシリカ粒子が貴金属素地中に分散した機能性貴金属製品を作製する。金型の材質としては、耐熱性の点でカーボンを主に用いるが、温度条件によっては鉄鋼材料や超硬などを適用できる。
【0037】
加熱・焼結条件に関しては、用いる貴金属粉末粒子の融点をTmとすると、好ましくは、金型内で加圧しながら加熱・焼結する際の金型内における投入原料粉末の温度は0.8Tm〜1.2Tmである。ここでは、上記(b)と異なり、加熱過程で貴金属粒子に圧力を付与することで、粒子間の拡散現象がより進行し易い条件となる。よって、加熱・焼結温度が0.8Tm以上であれば、良好な貴金属焼結素材が得られる。他方、加熱・焼結温度の上限値に関しては、上記(b)と同様、1.2Tmを超えると、貴金属粉末粒子全体において液相が発生し、その粘性が低下するために、金型の隙間から溶融した貴金属が染み出るといった問題が生じる。
【0038】
(d)粉体成形・熱間塑性加工法
上記(a)の投入原料粉末を金型に充填した後、所定の圧力を付与して原料粉末を圧粉固化する。得られた圧粉固化体を不活性ガス雰囲気中で加熱した後、直ちに熱間塑性加工を施して緻密化することで、アモルファスシリカ粒子が素地中に分散した機能性貴金属製品を作製する。金型の材質としては、より緻密な圧粉固化体を作製するため、高い圧力を付与できる鉄鋼材料や超硬などを利用する。
【0039】
加熱・焼結条件に関しては、用いる貴金属粉末粒子の融点をTmとすると、好ましくは、加熱・焼結する際の金型内における投入原料粉末の温度は0.9Tm〜1.2Tmである。また熱間塑性加工法として、押出加工、圧延加工、鍛造加工、スエージング加工、プレス加工または線引き加工などを適用して、貴金属素材を更に緻密化する。
【0040】
先ず、投入原料粉末を金型で加圧する場合、緻密な圧粉固化体を得るためには、通常、400MPa以上の成形圧力を付与することが望ましい。一方、成形圧力の上限値に関しては、通常、1000MPa以下とする。成形圧力が1000MPa超えると、金型の欠損や、貴金属粉末粒子と金型壁面との凝着(焼付き)現象などが発生する。
【0041】
次に、得られた圧粉固化体の加熱・焼結は、好ましくは真空中または不活性ガス雰囲気中で行うが、これは貴金属粉末粒子の酸化による粒子間の焼結現象の低下を抑制するためである。加熱・焼結条件に関しては、上記(b)と同様の理由により、良好な貴金属焼結素材を得るための適正な条件として0.9Tm〜1.2Tmを選定する。
【0042】
続く熱間塑性加工法として押出加工、圧延加工、鍛造加工、スエージング加工、プレス加工、線引き加工などを適用することで、貴金属焼結素材の相対密度を99%以上に緻密化する。それぞれの加工において貴金属焼結素材の変形抵抗を小さくして加工し易くするために、加工前に貴金属焼結素材を再度、加熱する必要がある。その際の加熱温度は、好ましくは、0.5Tm〜1.0Tmである。熱間塑性加工前の加熱温度が0.5Tm未満の場合、素材の変形抵抗が十分に小さくないため、上記の塑性加工過程で貴金属素材に亀裂、割れ、欠損などが発生する。他方、熱間塑性加工前の加熱温度が貴金属粉末粒子の融点Tmを超えると、熱間塑性加工過程で発生する加工熱が加わることで、素材の液相発生が顕著となるために素材が溶融するといった問題が生じる。
【0043】
(e)機能性貴金属素材の2次加工
前記(b)〜(d)の製造方法で得られた機能性貴金属を再度、不活性ガス雰囲気中で加熱した後、直ちに熱間塑性加工を施すことで、アモルファスシリカ粒子が素地中に分散した機能性貴金属製品を作製する。ここでは、貴金属焼結素材をさらに緻密化するとともに、最終製品の形状を上記の熱間塑性加工によって形成することを目的とする。
【0044】
熱間塑性加工法として押出加工、圧延加工、鍛造加工、スエージング加工、プレス加工、線引き加工などを適用することで、貴金属焼結素材の相対密度を99%以上に緻密化する。それぞれの加工において貴金属焼結素材の変形抵抗を小さくして加工し易くするために、熱間塑性加工前に貴金属焼結素材を再度、加熱する必要がある。その際の加熱温度は、0.5Tm〜1.0Tmである。なお、加熱温度の設定理由は、上記(d)と同様である。
【0045】
(5)機能性貴金属製品の用途
血行・血流促進効果を有する機能性貴金属製品は、物品または素材全体として使用しても良いし、あるいは物品の一部として使用しても良い。
【0046】
機能性貴金属製品の用途を、以下に例示的に列挙する。
【0047】
a)貴金属を主体とした素材。
【0048】
b)宝飾品および装飾品。
【0049】
c)美術工芸品。
【0050】
d)万年筆やボールペンなどの筆記用具。
【0051】
e)キーホルダー、根付、時計、時計ベルト、めがねフレーム、めがねチェーン、携帯ストラップ、ドッグタグ、ペットジュエリーなど、身体に接触する装身具。
【0052】
f)下着金具、衣類金具、サンダル金具、靴金具、履物金具、ベルト金具など。
【0053】
g)敷布、枕、マフラー、手袋、帽子、ヘアバンド、サポータ、下着、服など、身体に接触する寝具類および衣料品。
【実施例1】
【0054】
貴金属素材の素地を構成する原料として、表1に示す平均粒子径を有する18金粉末、銀粉末、プラチナ粉末、ホワイトゴールド粉末を準備した。
【0055】
【表1】

【0056】
アモルファスシリカ粒子としては、籾殻を希塩酸水溶液中で洗浄・加水分解処理し、これを1000℃で5分間焼成して得られた試料をボールミルで所定の粒子径に粉砕したものを用いた。なお、シリカ粉末の純度は99.6%であった。また粒子径は粉砕条件を制御することで表1に示す値とした。
【0057】
V型ミキサーを用いて各素地構成用原料とアモルファスシリカ粒子とを表1に示す比率(体積分率で表示)で乾式混合した。
【0058】
各投入原料粉末を焼結固化する際、放電プラズマ焼結装置を用いて内径30mmΦのカーボン製金型内に各原料粉末を充填し、真空雰囲気で原料粉末に圧力50MPaを付与した状態で室温から表1に示す所定の温度まで昇温し、その温度で15分間維持した。その後、炉内冷却を行い、直径約30mm、厚み約3〜4mmの焼結体試料を取り出した。
【0059】
得られた貴金属焼結素材について、双ロール圧延加工を施して厚み0.3mmの機能性貴金属素材を作製した。
【0060】
なお、圧延加工時における試料の加熱温度は素地の融点をTmとした場合、0.6〜0.7Tmとし、その温度で5分間加熱した後、直ちに圧延加工を施した。
【0061】
各試料について、亀裂、割れ等の発生状況を外観観察により評価した。また血行・血流促進効果を評価するために、手のひらに各試料を置いて5分後にサーモグラフィーによって手のひら全体の温度分布を測定し、試料を置く前後での指先の温度変化を調査した。それらの評価結果をまとめて表1に示す。
【0062】
表1に示すように、本発明例である試料No.1〜17においては、アモルファスシリカ粒子が適切な粒子径と含有率を有し、かつ適切な温度で加圧・加熱を行っているので、アモルファスシリカ粒子が素地中に均一に分散する良好な機能性貴金属複合材料が得られた。さらに、この複合材料を適正な条件下で圧延加工することにより、亀裂、割れ、欠損等がない外観上、装飾品として良好な機能性貴金属製品が得られた。また血行・血流促進効果に関しても、指先での温度上昇も実証できたことからその効果が確認された。
【0063】
一方、比較例である試料No.18〜26においては、次のような問題が発生した。試料No.18では、最大シリカ粒子径が800μmと大きいために、圧延加工過程で素材に亀裂・割れが発生した。試料No.19および試料No.25では、最小シリカ粒子径が35nmと小さいために、粒子が凝集して斑点状に存在して装飾品・宝飾品としての外観上、好ましくないものとなった。試料No.20および試料No.21では、シリカ含有量が少ないために、十分な血行・血流促進効果が得られなかった。試料No.22および試料No.26では、シリカ含有量が20%を超えて多いために、圧延加工過程で素材に亀裂・割れが発生した。試料No.23では、加熱・焼結温度が0.7Tmと低いために、貴金属焼結素材の強度が低下し、圧延加工過程で素材に亀裂・割れが発生した。試料No.24では、加熱・焼結温度が1.3Tmと高いために、金型から貴金属(銀)の液相が流出して良好な試料素材が得られなかった。
【実施例2】
【0064】
貴金属素材の素地を構成する原料として、平均粒子径220μmを有する銀粉末を準備した。アモルファスシリカ粒子として、最大粒子径が320μmで最小粒子径が3.2μmのものを使用した。シリカ粒子の含有率が体積分率で10%となるように銀粉末とシリカ粒子とを秤量・混合した。
【0065】
得られた混合粉末を内径30mmΦのカーボン製金型に充填し、上下を同様のカーボン製の円盤状冶具(外径29.8mmΦ、厚み5mm)で抑えた状態でアルゴンガス雰囲気中にて昇温・加熱保持を行った。昇温速度は1℃/秒とし、加熱保持温度は表2に示す通りであった。なお、Tmは、用いた銀粉末の融点を意味する。また保持時間はいずれも15分とした。
【0066】
加熱終了後、炉内で室温まで徐冷した後に、直径約30mm、厚み約3mmの焼結体試料を取り出した。
【0067】
得られた貴金属焼結素材に対して、双ロール圧延加工を施して厚み0.4mmの機能性貴金属素材を作製した。なお、圧延加工時における試料の加熱温度は素地の融点をTmとした場合、0.7Tmとし、その温度で10分間加熱した後、直ちに圧延加工を施した。
【0068】
各試料について亀裂、割れ等の発生状況を外観観察により評価した。その結果を表2に示す。また良好な貴金属焼結素材については、実施例1と同様に、手のひらに試料を置いて5分後にサーモグラフィーによって手のひら全体の温度分布を測定し、試料を置く前後での指先の温度変化を調査した。
【0069】
【表2】

【0070】
本発明例である試料No.27〜31では、金型内の投入原料粉末を適切な加熱温度で保持することで、銀粉末粒子間で十分に拡散現象が進行した。その結果、後工程である圧延加工において亀裂・割れなどが生じることのない外観上、装飾品として良好な機能性貴金属素材が得られた。またサーモグラフィーによる温度測定の結果、指先において8.0〜8.4℃の温度上昇が実証できたことから、これらの機能性貴金属の血行・血流促進効果が確認された。
【0071】
一方、比較例である試料No.32〜35については、以下の問題が生じた。試料No.32および試料No.33では、加熱保持温度が0.8Tmを下回るために、十分な焼結が進行せず、銀粉末焼結体の強度が低下した。その結果、圧延加工過程で素材に亀裂・割れが発生した。試料No.34および試料No.35では、加熱保持温度が1.2Tmを上回るために、金型から銀の液相が流出して良好な試料素材が得られなかった。
【実施例3】
【0072】
実施例2で用いた投入原料粉末(素地:銀粉末,アモルファスシリカ含有量:10体積%)を常温でSKD11製金型(内径30mmΦ)に充填し、面圧600MPaを付与して外径30.1mmΦ、厚み3.2mmの圧粉固化体を作製した。
【0073】
得られた圧粉固化体を真空雰囲気(10−3torr)中で、表3に示す温度条件下で30分間保持した後、同雰囲気中で室温まで冷却して直径約30mm、厚み約3mmのシリカ粒子が分散した銀焼結素材を作製した。なお、Tmは用いた銀粉末の融点を意味する。
【0074】
得られた円盤状焼結素材を表3に示す温度で10分間加熱保持した後、直ちに内径31mmΦのコイン状金型に投入して、上・下パンチ方向によって面圧800MPaを付与して熱間鍛造加工によって緻密化を行った。なお、焼結素材の加熱はアルゴンガス雰囲気中で行い、また鍛造用金型温度は500℃とした。
【0075】
【表3】

【0076】
本発明例である試料No.36〜40では、いずれも焼結工程において適切な加熱保持温度を適用し、また熱間鍛造加工前の焼結素材の加熱温度も適正範囲で行った。従って、鍛造加工後のいずれの試料においても、亀裂、割れ、損傷などが生じることのない外観上、装飾品として良好で、かつ相対密度が99.9%以上の緻密な機能性貴金属素材が得られた。
【0077】
一方、比較例である試料No.41〜46では、次のような問題が生じた。試料No.41および試料No.42では、焼結過程での加熱保持温度が0.8Tmを下回るために、十分な焼結が進行せず、銀粉末焼結体の強度が低下した。その結果、鍛造加工過程で素材に亀裂・割れが発生した。試料No.43および試料No.44では、焼結過程での加熱保持温度が1.2Tmを上回るために、金型から銀の液相が流出して良好な試料素材が得られず、鍛造加工の実施に至らなかった。試料No.45では、熱間鍛造加工前の温度が0.5Tmを下回るために、変形抵抗が大きく、鍛造加工時に焼結素材に亀裂・割れが発生した。試料No.46では、熱間鍛造加工前の温度がTmを上回るため、鍛造加工時に液相が発生して良好な鍛造素材が得られなかった。
【実施例4】
【0078】
籾殻を酸処理する際の希塩酸の濃度および浸漬時間を調整することで、表4に示すシリカ純度を有するアモルファスシリカ粉末を作製した。なお、いずれも粒子径は150nm〜280μmの範囲であった。また貴金属素材の素地を構成する原料として、平均粒子径315μmを有する銀粉末を準備した。シリカ粉末の含有率が体積分率で10%となるように両者の粉末を秤量・混合した。
【0079】
得られた混合粉末を焼結固化する際、実施例1と同様、放電プラズマ焼結装置を用いて内径30mmΦのカーボン製金型内に各原料粉末を充填し、真空雰囲気で原料粉末に圧力50MPaを付与した状態で室温から0.9Tm(Tm:用いた銀粉末の融点)にまで昇温し、その温度で15分間維持した。その後、炉内冷却を行い、直径約30mm、厚み約3mmの焼結体試料を取り出した。
【0080】
血行・血流促進効果を評価するために、手のひらに各焼結体試料を置いて5分後にサーモグラフィーによって手のひら全体の温度分布を測定し、試料を置く前後での指先の温度変化を調査した。その評価結果を表4に示す。
【0081】
【表4】

【0082】
本発明例である試料No.47〜51では、純度90%以上のアモルファスシリカ粒子を用いている。これらの試料では、サーモグラフィーによる温度測定の結果、指先において7.0〜8.5℃の温度上昇が実証できた。これにより、適正な純度を有するアモルファスシリカ粉末を用いた機能性貴金属素材においては、十分な血行・血流促進効果が確認された。
【0083】
一方、比較例であり試料No.52〜55では、いずれも90%未満の純度を有するシリカ粒子を用いている。その結果、本発明例と比較して、血行・血流促進効果が少ないことが確認できた。
【実施例5】
【0084】
実施例1に記載の試料No.8(本発明例)の機能性貴金属材料をメガネフレームに用いたところ、肩こりによる痛みが解消した。また同じ材料をベルトのバックルに用いたところ、腰痛が解消した。さらに、同じ材料を粉末状に粉砕し、それをマフラーと手袋に縫い付けたところ、保温効果が確認された。このように本発明の機能性貴金属材料が有する血行・血流促進効果を利用して、宝飾品・装飾品以外の製品・物品に適用することで同様の作用・効果が確認できた。
【0085】
以上、この発明の実施形態を説明したが、この発明は、上述した実施形態のものに限定されない。上述の実施形態に対して、この発明と同一の範囲内において、あるいは均等の範囲内において、種々の修正や変形を加えることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0086】
この発明は、血行・血流促進効果を発揮する機能性貴金属製品として有利に利用され得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金、銀、プラチナおよびそれらの合金からなる群から選ばれた貴金属と、
前記貴金属の素地中に分散したアモルファスシリカ粒子とを備える、機能性貴金属製品。
【請求項2】
前記貴金属の素地中に含まれるアモルファスシリカ粒子の含有率は、体積分率で1%以上20%以下である、請求項1に記載の機能性貴金属製品。
【請求項3】
前記貴金属の素地中に含まれるアモルファスシリカ粒子の含有率は、体積分率で3%以上12%以下である、請求項1に記載の機能性貴金属製品。
【請求項4】
前記アモルファスシリカ粒子におけるシリカ含有量は、重量基準で90%以上である、請求項1〜3のいずれかに記載の機能性貴金属製品。
【請求項5】
前記アモルファスシリカ粒子におけるシリカ含有量は、重量基準で95%以上である、請求項1〜3のいずれかに記載の機能性貴金属製品。
【請求項6】
前記アモルファスシリカ粒子の粒子径は、50ナノメートル以上500ミクロン以下である、請求項1〜5のいずれかに記載の機能性貴金属製品。
【請求項7】
前記アモルファスシリカ粒子の粒子径は、500ナノメートル以上200ミクロン以下である、請求項1〜5のいずれかに記載の機能性貴金属製品。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の機能性貴金属製品を備えた物品。
【請求項9】
金、銀、プラチナおよびそれらの合金からなる群から選ばれた貴金属の粉末粒子と、アモルファスシリカ粒子とを準備する工程、
前記貴金属粉末粒子と前記アモルファスシリカ粒子とを所定の比率で秤量する工程、
所定の比率になっている前記貴金属粉末粒子と前記アモルファスシリカ粒子とを混合して混合粉末粒子を得る工程、および
前記混合粉末粒子を金型に充填した状態で加熱および焼結することにより、アモルファスシリカ粒子を貴金属の素地中に分散させる工程とを備える、機能性貴金属製品の製造方法。
【請求項10】
前記混合粉末粒子に対する加熱および焼結処理を、真空中または不活性ガス雰囲気中で行う、請求項9に記載の機能性貴金属製品の製造方法。
【請求項11】
前記金型内の前記混合粉末粒子に圧力を付与しながら、前記混合粉末粒子に対する加熱および焼結処理を行う、請求項9または10に記載の機能性貴金属製品の製造方法。
【請求項12】
前記貴金属粉末粒子の融点をTmとすると、前記混合粉末粒子に対する加熱および焼結温度は0.9Tm〜1.2Tmの範囲内である、請求項9または10に記載の機能性貴金属製品の製造方法。
【請求項13】
前記貴金属粉末粒子の融点をTmとすると、前記混合粉末粒子に対する加熱および焼結温度は0.8Tm〜1.2Tmの範囲内である、請求項11に記載の機能性貴金属製品の製造方法。
【請求項14】
金、銀、プラチナおよびそれらの合金からなる群から選ばれた貴金属の粉末粒子と、アモルファスシリカ粒子とを準備する工程、
前記貴金属粉末粒子と前記アモルファスシリカ粒子とを所定の比率で秤量する工程、
所定の比率になっている前記貴金属粉末粒子と前記アモルファスシリカ粒子とを混合して混合粉末粒子を得る工程、
前記混合粉末粒子を金型に充填した後に加圧することにより圧粉固化体を作製する工程、および
前記圧粉固化体に対して熱間塑性加工を施して緻密化することにより、アモルファスシリカ粒子を貴金属の素地中に分散させる工程を備える、機能性貴金属製品の製造方法。
【請求項15】
前記熱間塑性加工に先立ち、前記圧粉固化体を真空中または不活性ガス雰囲気中で加熱する、請求項14に記載の機能性貴金属製品の製造方法。
【請求項16】
前記貴金属粉末粒子の融点をTmとすると、前記圧粉固化体の加熱温度は0.5Tm〜1.0Tmの範囲内である、請求項15に記載の機能性貴金属製品の製造方法。
【請求項17】
前記圧粉固化体に対する熱間塑性加工は、押出加工、圧延加工、鍛造加工、スエージング加工、プレス加工または線引き加工である、請求項14〜16のいずれかに記載の機能性貴金属製品の製造方法。

【公開番号】特開2007−126689(P2007−126689A)
【公開日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−318354(P2005−318354)
【出願日】平成17年11月1日(2005.11.1)
【出願人】(593157297)株式会社デスク・トウー・ワン (4)
【出願人】(504100802)
【Fターム(参考)】