説明

機能性部材

【課題】被処理成分を効果的に除去することができる機能性部材を提供する。
【解決手段】機能性部材(18)の基材(60)には、ゼオライトを含む中間層(61)が形成される。中間層(61)の表面には、パラジウム及び酸化アルミニウムから成る機能性材料(62a)を含むスラリー液が塗布される。このスラリー液を固化することで、中間層(61)の表面に処理層(62)が形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気体や液体中の有害成分等を除去する機能性部材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、空気や水等の清浄化・脱臭・有害成分除去を目的とした機能性部材が知られており、空気清浄機や水処理装置等に適用されている。
【0003】
例えば特許文献1には、フィルタ状の基材に被処理成分を除去する機能性材料が担持された機能性フィルタが開示されている。この機能性フィルタは、不織布から成る基材の表面に、光触媒や吸着材等の粒子状の機能性材料を塗装することで製造される。
【0004】
具体的に、この機能性フィルタの製造工程では、機能性材料、水、バインダ等を所定の配合比で調整したスラリー液を基材の表面に塗布する。なお、この塗布工程では、基材をスラリー液中に浸積させる含浸法や、スラリー液を基材の表面に直接吹き付けるスプレーコーティング法等が用いられる。その後、この基材を乾燥することで、基材表面のスラリー液が固化し、基材の表面には粒子状の機能性材料から成る処理層が形成される。
【0005】
以上のようにして製造された機能性フィルタは、基材の表面に機能性材料が露出された状態となる。処理対象となる空気が機能性フィルタを通過すると、空気中に含まれる被処理成分が各種の機能性材料と接触する。その結果、被処理成分は、機能性材料によって酸化分解、あるいは吸着されて除去される。
【特許文献1】特開平11−253716号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、特許文献1の機能性フィルタのような機能性部材の塗布工程時には、スラリー液中の機能性材料が基材内部に入り込んでしまうことがある。具体的には、例えば図10(A)に示すように、塗布工程によって基材(80)の表面にスラリー液(81)から成る塗膜を形成すると、このスラリー液(81)の液分が毛細管現象によって基材(80)内部まで浸透していく。このように液分が基材(80)内部へ浸透していくと、この液分の基材(80)方向への推進力によってスラリー液(81)中の機能性材料(82)までもが基材(80)の内部に入り込んでしまう。従って、例えば図10(B)に示すように、基材(80)の表面から露出する機能性材料(82)の表面積が減少し、被処理成分と機能性材料(82)との接触効率が低下する。その結果、機能性材料(82)による被処理成分の除去性能が低下してしまうという問題があった。
【0007】
本発明は、このような問題点に鑑みて創案されたものであり、その目的は、被処理成分を効果的に除去することができる機能性部材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の発明の機能性部材は、基材(60)と、該基材(60)の表面に形成される中間層(61)と、被処理成分を除去するための機能性材料(62a)を含むスラリー液を固化することによって、上記中間層(61)の表面に形成される処理層(62)とを備え、中間層(61)が上記基材(60)内部へのスラリー液の浸透を阻止するように構成されていることを特徴とするものである。
【0009】
第1の発明では、基材(60)の表面に中間層(61)が形成される。そして、この中間層(61)の表面に機能性材料(62a)を含むスラリー液が塗布される。つまり、本発明の機能性部材の製造時には、図10(A)の従来例のように基材(60)の表面にスラリー液を直接塗布せずに、基材(60)を中間層(61)で覆い、この中間層(61)の表面にスラリー液を塗りつけて処理層(62)を形成している。このため、塗布工程時において、スラリー液が毛細管現象によって基材(60)内部へ浸透してしまうことを阻止でき、結果として、機能性材料(62a)が基材(60)内部に入り込んでしまうのを抑制できる。従って、本発明の機能性部材では、その外表面に形成される処理層(62)において、被処理成分に対して露出される機能性材料(62a)の比表面積が増大する。
【0010】
第2の発明は、第1の発明の機能性部材において、上記中間層(61)が、疎水性材料を含んでいることを特徴とするものである。
【0011】
第2の発明では、基材(60)の表面が、疎水性材料を含む中間層(61)で覆われる。このため、本発明の中間層(61)の表面に水分を含むスラリー液を塗布した際、この水分が中間層(61)内部に浸透することを効果的に阻止できる。その結果、機能性材料(62a)が中間層(61)内部、あるいは基材(60)内部に入り込んでしまうのを回避でき、被処理成分に対して露出される機能性材料(62a)の表面積が更に増大する。
【0012】
第3の発明は、第1の発明の機能性部材において、上記中間層(61)が活性炭を含んでいることを特徴とするものである。
【0013】
第3の発明では、基材(60)の表面が、活性炭を含む中間層(61)で覆われる。このため、被処理成分は、中間層(61)の活性炭に吸着・除去される。また、活性炭は、水やアルコール等の極性の高い物質に対して、吸着能が低いことが知られている。このため、本発明の中間層(61)の表面に水分やアルコール分を含むスラリー液を塗布した場合、これらの液分が中間層(61)内部に引き寄せられるのを効果的に回避できる。その結果、本発明の機能性部材においても、被処理成分に対して露出される機能性材料(62a)の表面積が増大する。
【0014】
第4の発明は、第1の発明の機能性部材において、上記中間層(61)がゼオライトを含んでいることを特徴とするものである。
【0015】
第4の発明では、基材(60)の表面が、ゼオライトを含む中間層(61)で覆われる。このため、被処理成分は中間層(61)のゼオライトに吸着・除去される。また、ゼオライトは、その内部に形成される細孔の容積が比較的小さいので、スラリー液が中間層(61)内部に浸透してしまうのを回避できる。その結果、本発明においても、被処理成分に対して露出される機能性材料(62a)の比表面積が増大する。
【0016】
第5の発明は、第1の発明の機能性部材において、上記基材(60)が繊維材料で構成されていることを特徴とするものである。
【0017】
第5の発明では、繊維材料から成る基材(60)上に中間層(61)及び処理層(62)が形成される。このように基材(60)を繊維材料で構成すると、仮にスラリー液を基材に直接塗布すると、スラリー液中の液分が基材内に浸透し易くなる。一方、本発明では、繊維材料から成る基材(60)の表面に中間層(61)を形成するようにしたので、基材(60)への液分の浸透を効果的に抑制することができる。
【0018】
第6の発明は、第1乃至第5のいずれか1の発明の機能性部材において、上記処理層(62)が、基材(60)における被処理成分の流入側のみに形成されていることを特徴とするものである。
【0019】
第6の発明の基材(60)では、被処理成分の流入側のみに処理層(62)が形成される一方、それ以外の部位には処理層(62)が形成されない。このため、基材(60)の表面全体に処理層(62)を形成する場合と比較して、機能性材料(62a)の使用量が少なくなる。一方、処理層(62)を被処理成分の流入側に形成すると、被処理成分が処理層(62)の機能性材料(62a)と効率良く接触する。その結果、機能性材料(62a)の単位使用量当たりにおける被処理成分の除去性能が向上する。
【0020】
第7の発明の機能性部材は、基材(60)と、該基材(60)に設けられる処理層(6)とを備え、上記処理層(62)が、基材(60)における被処理成分の流入側のみに形成されていることを特徴とするものである。
【0021】
第7の発明では、被処理成分の流入側のみに処理層(62)が形成される一方、それ以外の部位には処理層(62)が形成されない。このため、基材(60)の表面全体に処理層(62)を形成する場合と比較して、機能性材料(62a)の使用量が少なくなる。一方、処理層(62)を被処理成分の流入側に形成すると、被処理成分が処理層(62)の機能性材料(62a)と効率良く接触する。その結果、機能性材料(62a)の単位使用量当たりにおける被処理成分の除去性能が向上する。
【発明の効果】
【0022】
第1の発明では、基材(60)の表面と処理層(62)の間に中間層(61)を形成するようにしている。このため、本発明によれば、この中間層(61)によって、スラリー液が基材(60)内部へ浸透してしまうの阻止することができる。その結果、被処理成分に露出される機能性材料(62a)の比表面積が増大し、被処理成分と機能性材料(62a)との接触効率も向上する。従って、本発明の機能性部材による被処理成分の除去効率を向上させることができる。
【0023】
特に第2の発明によれば、中間層(61)に疎水性材料を含めるようにしたので、中間層(61)や基材(60)へスラリー液中の水分が浸透してしまうのを効果的に抑制できる。従って、被処理成分に露出される機能性材料(62a)の表面積を更に増大させることができ、機能性部材による被処理成分の除去効率を更に向上させることができる。
【0024】
また、第3の発明によれば、中間層(61)に活性炭を含めるようにしたので、この活性炭の吸着能を利用して被処理成分を除去することができる。つまり、本発明によれば、被処理成分を中間層(61)と処理層(62)との双方で除去することができる。従って、この機能性部材で処理できる被処理成分の濃度範囲を拡大でき、また、複数種の被処理成分が空気中や水分中に混在する場合にも、これらの被処理成分を除去することができる。一方、このように中間層(61)に活性炭を含めるようにしても、活性炭は水やアルコールに対する吸着能が低いので、スラリー液中が中間層(61)内に引き寄せられてしまうのを抑制できる。
【0025】
また、第4の発明によれば、中間層(61)にゼオライトを含めるようにしたので、このゼオライトの吸着能を利用して被処理成分を除去することができる。従って、この機能性部材による被処理成分の除去性能を向上できる。
【0026】
第5の発明によれば、基材(60)を繊維材料で構成したので、軽量且つ取り扱いの容易な機能性部材を得ることができる。一方、このように基材(60)を繊維材料で構成すると、基材(60)内部へ液分が浸透し易くなる。しかし、本発明では、繊維材料から成る基材(60)と処理層(62)の間に中間層(61)を形成しているので、スラリー液が基材(60)内へ浸透してしまうのを効果的に抑制できる。
【0027】
更に、第6及び第7の発明によれば、処理層(62)を被処理空気の流入側のみに形成するようにしたので、機能性材料(62a)の使用量を削減しながら、被処理成分を効果的に除去することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0029】
本実施形態に係る機能性部材は、一般家庭向けの空気清浄機(10)に搭載されるものである。空気清浄機(10)は、室内空気中の被処理成分を除去し、室内を清浄化するものである。具体的に、空気清浄機(10)は、空気中の一酸化炭素、アセトアルデヒド、ホルムアルデヒド、NOX等の有害成分や、塵埃、ダニ、花粉、カビ類等の微小粒子等を除去可能に構成されている。
【0030】
<空気清浄機の全体構成>
図1及び図2に示すように、空気清浄機(10)は、一端が開放された箱形のケーシング(11)と、該ケーシング(11)の開放端部に装着される前面カバー(12)とを備えている。上記ケーシング(11)の前面寄りの左右側面及び上面、さらに上記前面カバー(12)の中央部には、室内空気が導入される空気吸込口(13)が形成されている。一方、ケーシング(11)の天板の背面側寄りには、室内空気が流出する空気吹出口(14)が形成されている。
【0031】
ケーシング(11)内には、空気吸込口(13)から空気吹出口(14)までに亘って室内空気が流れる空気通路(15)が形成されている。この空気通路(15)には、室内空気の流れの上流側から下流側に向かって順に、プレフィルタ(16)、イオン化部(30)、ストリーマ放電部(40)、静電フィルタ(17)、機能性フィルタ(18)、及びファン(19)が配置されている。また、ケーシング(11)の後部下側寄りには、上記イオン化部(30)及びストリーマ放電部(40)の電源(21)が設けられている。
【0032】
<プレフィルタ及びイオン化部の構成>
プレフィルタ(16)は、室内空気中に含まれる比較的大きな塵埃を捕集するフィルタである。イオン化部(30)は、プレフィルタ(16)を通過した比較的小さな塵埃を帯電させ、この塵埃を後述の静電フィルタ(17)で捕集するものである。このイオン化部(30)は、「コ」の字型の水平断面が左右方向に連なる形状の波形部材(50)の前面側に設けられている。具体的に、波形部材(50)の前面側には、該波形部材(50)によって区画される複数の柱状の空間が形成されており、この空間が前側開放部(51)を構成している。そして、各前側開放部(51)に上記イオン化部(30)がそれぞれ設けられている。
【0033】
各イオン化部(30)は、それぞれイオン化線(31)と電極板(32)とで構成されている。イオン化線(31)は、前側開放部(51)の水平方向における内部中央に位置し、波形部材(50)の上端から下端に亘って張架されている。一方、電極板(32)は、前側開放部(51)の左右内壁によって構成されており、イオン化線(31)と平行な状態となっている。そして、上記電源(21)からイオン化部(30)に電圧が印加されると、各イオン化線(31)と、各イオン化線(31)に対応する各電極板(32)との間では、塵埃を帯電させるためのコロナ放電が行われる。
【0034】
<ストリーマ放電部の構成>
ストリーマ放電部(40)は、波形部材(50)の後面側に設けられている。具体的に、波形部材(50)の後面側には、該波形部材(50)によって区画される複数の柱状の空間が形成されている。この空間のうち水平方向の断面積が広い2つの空間が後側開放部(52)を構成している。そして、これら2つの後側開放部(52)に上記ストリーマ放電部(40)がそれぞれ設けられている。また、ストリーマ放電部(40)の要部を上方から視た図3に示すように、後側開放部(52)には、水平断面が「コ」の字型で、波形部材(50)の上下方向に亘って延在する第1絶縁カバー(53)が設けられている。この第1絶縁カバー(53)には、前側に開放空間が形成されている。そして、ストリーマ放電部(40)は、波形部材(50)の後側面と上記第1絶縁カバー(53)の内側面とによって内包されている。なお、第1絶縁カバー(53)を構成する3つの壁面には、それぞれ複数の空気流通口(54)が形成されており、室内空気がストリーマ放電部(40)の近傍を流通可能となっている。
【0035】
ストリーマ放電部(40)には、複数の電極対(41,42)が設けられている。各電極対(41,42)は、ストリーマ放電の基端となる複数の放電電極(41)と、ストリーマ放電の終端となる複数の対向電極(42)とで構成されている。
【0036】
放電電極(41)は、図4(放電電極の要部拡大斜視図)に示すように、水平断面が「コ」の字型で上下方向に延在する電極保持部材(43)に支持されている。具体的に、電極保持部材(43)の所定の部位には、前方に向かって屈曲形成された複数の支持板(44)が形成されている。そして、線状ないし棒状の放電電極(41)は、該放電電極(41)を挟み込むようにしてかしめられた支持板(44)の先端部によって支持されている。以上のようにして、放電電極(41)の両端部は、支持板(44)から上下方向に突出した状態となっている。なお、本実施形態において、上記放電電極(41)は、線径が約0.2mmのタングステン線で構成されている。
【0037】
対向電極(42)は、図3に示すように、波形部材(50)の後側開放部(52)を形成する内壁のうち、上記放電電極(41)の前方に位置する支持面(55)に形成されている。具体的に、支持面(55)には、放電電極(41)に近い順に、上記対向電極(42)及びアース電極(23)が積層されている。対向電極(42)は、上下方向に延在する板状に形成されている。この対向電極(42)には、所定の位置に第2絶縁カバー(56)が設けられている。そして、対向電極(42)は、放電電極(41)の先端部に対峙する面が露出された状態となっている。上記アース電極(23)は、ストリーマ放電によって対向電極(42)を流れた後の電流が流れる通電板を構成している。
【0038】
ストリーマ放電部(40)の要部を側方から視た図である図5に示すように、上記放電電極(41)と対向電極(42)とは実質的に平行な姿勢となっている。また、対向電極(42)と上記電極保持部材(43)との間には、図示しないスペーサーが介設されている。このスペーサーは、本実施形態において、絶縁性の碍子で構成されている。そして、放電電極(41)の先端部から対向電極(42)までの間の距離が上記スペーサーによって一定間隔に保持されている。なお、本実施形態において、両電極(41,42)の間の距離は4.0±0.3mmとなっている。
【0039】
以上のような構成のストリーマ放電部(40)は、電源(21)から各電極対(41,42)に電圧が印加されることで、各電極対(41,42)の間でストリーマ放電を行う放電手段を構成している。
【0040】
<静電フィルタの構成>
静電フィルタ(17)は、ストリーマ放電部(40)の下流側に配置されている。この静電フィルタ(17)は、水平断面が波形状に屈曲して形成された、いわゆるプリーツフィルタで構成されている。また、静電フィルタ(17)は、上流側の面が上記イオン化部(30)によって帯電された比較的小さな塵埃を捕集する集塵面を構成する一方、下流側の面には光触媒(光半導体)が担持されている。この光触媒は、ストリーマ放電部(40)によるストリーマ放電によって生成される活性種(高速電子、ラジカル、励起分子等)によって更に活性化され、室内空気中の一酸化炭素等の有害成分や臭気成分の除去速度を増大させる。なお、この光触媒は、例えば二酸化チタンや酸化亜鉛、あるいはタングステン酸化物や硫化カドミウムなどが用いられる。
【0041】
<機能性フィルタの構成>
上記機能性フィルタ(18)は、本発明の機能性部材を構成しており、静電フィルタ(17)の下流側に配置されている。この機能性フィルタ(18)は、図6に示す基材(60)を備えている。この基材(60)は、セルロース繊維材料から成る板紙を成形することで構成されている。
【0042】
基材(60)は、矩形状の枠体部(60a)と、枠体部(60a)内で左右方向に配列される複数の支持板部(60b)と、各支持板部(60b)に狭持される波状(コルゲート状)の波板部(60c)とで構成されている。そして、基材(60)には、被処理成分を含む室内空気の通過を許容するように、その厚さ方向に複数の流通孔(60d)が形成されている。
【0043】
図7に示すように、基材(60)の表面には中間層(61)が形成されている。この中間層(61)は、ゼオライトを含んでおり、基材(60)の表面全体を覆っている。つまり、中間層(61)は、枠体部(60a)、支持板部(60b)、波板部(60c)の全表面を覆うように基材(60)をコーティングしている。
【0044】
また、中間層(61)の表面には、処理層(62)が形成されている。この処理層(62)には、被処理成分を除去するための機能性材料(62a)が含まれている。本実施形態では、この機能性材料(62a)として、パラジウム及び酸化アルミニウムが用いられている。また、図6及び図7に示すように、処理層(62)は、基材(60)の厚さ方向における前面側、つまり被処理空気の流入側の中間層(61)の表面のみに形成されており、基材(60)の内部や後側には形成されていない。
【0045】
<機能性フィルタの製造方法>
上記機能性フィルタは、以下のようにして製造される。
【0046】
まず、基材(60)の表面に中間層(61)を形成する工程を行う。この工程では、ゼオライト、水分、バインダ等を所定の配合比で混合し、中間層成形用のスラリー液を得る。次に、このスラリー液を基材(60)の表面全域に塗布する。なお、この塗布方法としては、基材(60)をスラリー液中に浸積させる含浸法が好ましい。塗布工程を終えると、基材(60)の表面全域には、スラリー液の塗膜が形成される。この状態の基材(60)を所定温度で乾燥することで、この塗膜が固化し、基材(60)の表面全域に上述の中間層(61)が形成される。
【0047】
次に、中間層(61)の表面に処理層(62)を形成する工程を行う。この工程では、機能性材料(62a)、水分、バインダ(例えばコロイダルシリカやアルミナゾル)を所定の配合比で混合し、処理層成形用のスラリー液を得る。なお、スラリー液中の機能性材料(60a)の濃度は、50重量%以上であることが好ましい。次に、このスラリー液を基材(60)の厚さ方向における片側のみに塗布する。なお、この塗布方法としては、比較的粘性の高いスラリー液を好適に扱うことができ、且つ基材(60)の片側の面のみに容易にスラリー液を塗布できるロール塗工法が好ましい。塗布工程を終えると、基材(60)の片側には、中間層(61)の表面にスラリー液の塗膜が形成される。この状態の基材(60)を所定温度で乾燥することで、この塗膜が固化し、中間層(61)の表面に機能性材料(62a)を含む処理層(62)が形成される(図8参照)。
【0048】
<空気清浄機の運転動作>
次に、本実施形態の空気清浄機(10)の運転動作について説明する。空気清浄機(10)が運転状態になると、ファン(19)が起動し、室内空気がケーシング(11)内の空気通路(15)を流通する。また、イオン化部(30)及びストリーマ放電部(40)へは、電源(21)からそれぞれ高電圧が印加される。
【0049】
図2に示すように、ケーシング(11)内に導入された室内空気は、まずプレフィルタ(16)を通過する。プレフィルタ(16)では、室内空気中の比較的大きな塵埃が除去される。その後、室内空気は、イオン化部(30)及びストリーマ放電部(40)へと流れる。イオン化部(30)では、イオン化線(31)と電極板(32)との間でのコロナ放電により室内空気中の比較的小さな塵埃が帯電する。このようにして帯電した塵埃は、室内空気が静電フィルタ(17)を通過する際、この静電フィルタ(17)の上流側の集塵面に捕集される。
【0050】
一方、ストリーマ放電部(40)では、放電電極(41)と対向電極(42)との間でのストリーマ放電により低温プラズマが発生している。そして、この低温プラズマの生成に伴い、高速電子、ラジカル、励起分子等の活性種が発生する。この活性種は、室内空気と接触して室内空気中の有害成分や臭気成分等を除去する。
【0051】
その後、室内空気は、静電フィルタ(17)を通過する。静電フィルタ(17)では、その集塵面において上述のように塵埃が捕集される。また、静電フィルタ(17)の下流側の面に担持される光触媒は、上記活性種によって活性化され、室内空気中の有害成分や臭気成分が更に除去される。その後、比較的低濃度の被処理成分を含む室内空気は機能性フィルタ(18)へ流入する。
【0052】
図7に示すように、機能性フィルタ(18)では、基材(60)の前面側に形成された処理層(62)が、室内空気の流れに対して対峙するような関係となる。このため、室内空気に含まれる被処理成分と、処理層(62)の機能性材料(62a)との接触効率が向上する。処理層(62)では、被処理成分としての一酸化炭素がパラジウムによって選択的に吸着されるとともに、パラジウムに吸着されて濃縮された一酸化炭素が酸化分解される。また、酸化アルミニウムの触媒作用によってパラジウムによる一酸化炭素の酸化分解速度が促進され、一酸化炭素は更に効果的に除去される。
【0053】
その後、室内空気は、基材(60)の各流通孔(60d)を通過する。この際、流通孔(60d)を流れる室内空気中の被処理成分は、支持板部(60b)や波板部(60c)の板面に形成された中間層(61)と接触する。その結果、被処理成分中に残存する有害成分や臭気成分は、中間層(61)のゼオライトに吸着されて更に除去される。
【0054】
以上のようにして機能性フィルタ(18)を通過した空気は、ファン(19)へ取り込まれ、空気吹出口(14)を介して室内空間に吹き出される。その結果、室内の清浄化が図られる。
【0055】
<機能性フィルタの性能評価>
次に、本実施形態に係る機能性フィルタ(18)の性能試験結果について図9を参照しながら説明する。
【0056】
この試験では、本実施形態に係る機能性フィルタ(18)(試料3)と、異なる製法で得た機能性フィルタ(試料1及び試料2)について、一酸化炭素の除去性能の比較検証を行った。なお、試料1及び試料2は、本実施形態に係る試料3のように基材(60)と処理層(62)の間に中間層(61)を形成せず、基材の表面に中間層を直接形成したものである。また、試料2は、処理層成形用のスラリー液中の機能性材料の濃度を2重量%とし、試料3では、その濃度を50重量%としたものである。つまり、試料2は試料3よりもスラリー液中の水分の濃度が低くなっている。これらの各試料1〜3について、同一条件下で一酸化炭素を曝露し、機能性材料1g当たりの一酸化炭素の除去速度を測定し、各試料の一酸化炭素除去率を算出した。
【0057】
その結果、中間層を形成せず、且つスラリー液中の水分濃度が高い試料1では、一酸化炭素除去率が顕著に低いものとなった。これは、例えば図10に示す従来例と同様に、試料1の基材の表面にスラリー液を塗布した際、スラリー液中の水分が基材内部へ毛細管現象によって浸透し、水分とともに機能性材料が基材内部へ入り込んでしまったため、基材の表面において一酸化炭素に曝露される機能性材料の表面積が小さくなったことに起因する。一方、中間層を形成せず、且つスラリー液中の水分濃度が低い試料2では、一酸化炭素除去率が試料1よりも高いものとなった。これは、水分濃度が低い試料2では、試料1と比較して基材に水分が浸透しにくいため、機能性材料が基材内部へ入り込む現象が抑制されたことに起因する。
【0058】
基材(60)と処理層(62)の間に中間層(61)を形成した試料3(本実施形態に係る機能性フィルタ)では、試料1や試料2と比較して、一酸化炭素除去率が極めて高いものとなった。これは、基材(60)の表面に中間層(61)を形成することで、この中間層(61)が基材(60)内部へのスラリー液の浸透を阻止したためである。即ち、図8に示すように、本実施形態に係る機能性フィルタでは、被処理成分に曝露される機能性材料(62a)の表面積が増大したので、一酸化炭素の除去率が飛躍的に向上した。
【0059】
−実施形態の効果−
上記実施形態に係る機能性部材(18)では、以下のような効果が発揮される。
【0060】
上記実施形態では、機能性部材(18)の基材(60)の表面に中間層(61)を形成することで、スラリー液が基材(60)内部へ浸透してしまうのを中間層(61)によって阻止することができる。このため、この機能性部材(18)では、被処理成分に露出される機能性材料(62a)の表面積が増大するので、被処理成分と機能性材料(62a)との接触効率を向上させることができる。従って、本実施形態に係る機能性部材(18)では、被処理成分を効果的に除去することができる。
【0061】
また、上記実施形態では、中間層(61)にゼオライトを含めるようにしたので、このゼオライトの吸着能を利用して、一酸化炭素以外の被処理成分も効果的に除去することができる。また、ゼオライトはその細孔容積が比較的小さいため、中間層(61)内にスラリー液を塗布した際、スラリー液が中間層(61)内に入り込んでしまうのを抑制できる。その結果、本実施形態の機能性部材(18)では、被処理成分に露出される機能性材料(62a)の表面積が更に増大し、被処理成分の除去性能も更に向上させることができる。
【0062】
更に、上記実施形態では、図6及び図7に示すように、基材(60)の流入側のみに処理層(62)を形成するようにしている。その結果、例えば、基材(60)の表面全体に処理層(62)を形成する場合と比較して、機能性材料(62a)の使用量を減らすことができる。一方、このように処理層(62)を被処理成分の流入側に形成すると、被処理成分が処理層(62)の機能性材料(62a)と効率良く接触する。従って、この構成によって、被処理成分を効率的に除去することができる。
【0063】
−実施形態の変形例−
上記実施形態については、以下のような構成としても良い。
【0064】
<機能性部材の基材>
上記実施形態では、機能性部材(18)にコルゲート状の基材(60)を用いている。しかしながら、この基材(60)として、平板状のもの、波板状のもの、ハニカム状のもの、シート状のもの、メッシュ状のもの等を用いても良い。また、基材(60)を構成する材料としては、炭素繊維、ナイロン、ポリウレタン等の合成繊維材料を用いても良いし、他の天然繊維材料を用いても良い。更に、基材(60)として繊維材料以外の材料を用いても良い。
【0065】
<機能性部材の中間層>
上記実施形態では、中間層(61)にゼオライトを含めるようにしている。しかしながら、この中間層(61)に活性炭を含めるようにしても良い。このようにすると、ゼオライトと同様、中間層(61)の活性炭で被処理成分を吸着・除去することができる。また、活性炭は、水やアルコール等の極性の高い物質に対しては、吸着能が低いことが知られている。このため、本発明の中間層(61)の表面に水分やアルコール分を含むスラリー液を塗布した場合にも、これらの液分が中間層(61)内部に引き寄せられるのを効果的に防止できる。その結果、この構成においても、被処理成分に対して露出される機能性材料(62a)の比表面積が増大する。また、中間層(61)として疎水性材料を用いると、スラリー液中の水分が基材(60)内部へ浸透してしまうのを積極的に阻止することができる。
【0066】
<機能性材料>
上記実施形態では、被処理成分を除去する機能性材料(62a)として、特に一酸化炭素の除去能力に優れたパラジウム及び酸化アルミニウムを用いている。しかしながら、この機能性材料(62a)としては、対象となる被処理成分に応じて他の材料を用いても良い。具体的に、機能性材料(62a)としては、イリジウム、ロジウム、オスニウム、ルテニウム、ニッケル、コバルト、鉄、マンガン、カドミウム、亜鉛、チタン、アルミニウム、金、銀、銅、プラチナのうち少なくとも一種の金属元素を含む材料や、鉄、チタン、マンガン、ニッケル、コバルト、銅、ジルコニウム、クロム、モリブデンのうち少なくとも1種から選ばれる金属の遷移金属酸化物材料、セリウム、イットリウム、ネオジム、プラセオジム、サマリウムのうち少なくとも1種から選ばれる金属の希土類酸化物材料、スズ、インジウム、アルミニウム、ケイ素、炭素、マグネシウム、カルシウムのうち少なくとも1種から選ばれる金属の典型元素酸化物材料等が挙げられる。
【0067】
《その他の実施形態》
上記実施形態の機能性部材(18)は、機能性フィルタとして空気清浄機(10)に搭載されている。しかしながら、この機能性部材(18)を空気調和装置に適用しても良いし、水処理装置等に適用して水質浄化に利用することもできる。
【0068】
なお、以上の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0069】
以上説明したように、本発明は、気体や液体中の有害成分等を除去する機能性部材に関し有用である。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】実施形態に係る空気清浄機の全体構成を示す斜視図である。
【図2】空気清浄機の内部を上流側から視た図である。
【図3】ストリーマ放電部の水平断面図である。
【図4】ストリーマ放電部の拡大斜視図である。
【図5】ストリーマ放電部を側方から視た図である。
【図6】機能性部材の要部構造を示す斜視図である。
【図7】機能性部材の水平断面図である。
【図8】機能性部材の基材表面構造を模式的に表した説明図である。
【図9】機能性部材の性能評価試験の結果を示す表である。
【図10】従来例の基材表面構造を模式的に表した説明図であり、(A)は基材表面にスラリー液を塗布した状態を説明するものであり、(B)は、基材内部にスラリー液が浸透した状態を説明するものである。
【符号の説明】
【0071】
10 空気清浄機
18 機能性フィルタ(機能性部材)
60 基材
61 中間層
62 処理層
62a 機能性材料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材(60)と、
上記基材(60)の表面に形成される中間層(61)と、
被処理成分を除去するための機能性材料(62a)を含むスラリー液を固化することによって、上記中間層(61)の表面に形成される処理層(62)とを備え、
上記中間層(61)は、上記基材(60)内部へのスラリー液の浸透を阻止するように構成されていることを特徴とする機能性部材。
【請求項2】
請求項1において、
上記中間層(61)は、疎水性材料を含んでいることを特徴とする機能性部材。
【請求項3】
請求項1において、
上記中間層(61)は、活性炭を含んでいることを特徴とする機能性部材。
【請求項4】
請求項1において、
上記中間層(61)は、ゼオライトを含んでいることを特徴とする機能性部材。
【請求項5】
請求項1において、
上記基材(60)は、繊維材料で構成されていることを特徴とする機能性部材。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1において、
上記処理層(62)は、基材(60)における被処理成分の流入側のみに形成されることを特徴とする機能性部材。
【請求項7】
基材(60)と、
上記基材(60)に設けられる処理層(62)とを備え、
上記処理層(62)は、基材(60)における被処理成分の流入側のみに形成されることを特徴とする機能性部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−283268(P2007−283268A)
【公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−116356(P2006−116356)
【出願日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】