説明

機関用燃料としてVOCを使用する方法及び装置

希釈VOCガス流からエネルギーを生成するための装置及び方法。装置100は、希釈VOCガスを濃縮VOC燃料に濃縮する濃縮器120を含む。濃縮VOC燃料は機関160の燃料入口に供給される。装置100は、濃縮器120内の吸着媒質上にVOCを吸着することによって作動される。濃縮器120はVOCの単位体積あたりの濃度を高める。吸着されたVOCはその後、濃縮VOC燃料流を形成するため脱離させられる。濃縮VOC燃料流は、液化VOC若しくは、より濃縮されたVOCガス流のいずれかでもよい。濃縮VOC燃料流はその後、運動エネルギー若しくは電気エネルギーを生成するため機関に送られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、揮発性有機化合物(Volatile Organic compounds:VOC)をエネルギーに転換する方法及び装置である。より具体的には、本発明は、濃縮器を使用して希釈炭化水素ガスをガス状又は液状の濃縮VOC燃料に濃縮する方法及び装置に関する。濃縮燃料は、その後、機関の燃料入口に供給される。
【背景技術】
【0002】
種々の製造業、農業、汚染修復及び工業のプロセスにおいて、炭化水素濃度の低い廃ガス流が概して空気中に放出される。それらのいくつかにおいてVOCが汚染土又は水のような固体又は液体の媒体中に混入される。VOCは気体へ転換し固体又は液体の媒体から分離することが出来る。VOCガスを発生する若しくは含有するプロセスもある。VOCを燃焼又は酸化させるための方法は数多く存在するが、本発明はエネルギーを回収するものである。もしVOCの濃度又が純度が十分大きく、機関を作動するのに適しているならば、それを回転動力若しくは電力を生成する機関に直接供給することが可能である。場合によっては、このような希釈炭化水素濃度は、機関を効率的に作動させるためにはエネルギー含有量の面で不十分なこともある。機関は、燃焼機関(内燃又は外燃)、スターリング・サイクル・エンジン、又は、ガスタービンエンジンを含む。場合によっては、廃ガス流が機関を作動するために十分なエネルギー含有量を持っているが、機関がその廃ガスを直接使用して作動するためには炭化水素の形態に大幅な修正を必要とすることもある。例えば、廃ガスが、様々な濃度又は微粒子の複合炭化水素を含む場合がある。もし廃ガスが処理あるいは改質油に転換されないならば、廃ガスがECDに損傷を与える可能性がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
希釈炭化水素濃度の廃ガス流を発生する製造工程は現在のところ、VOCを燃やす(フレアさせる:flare)か燃焼させる(burn)か、又は、燃焼空気の一部として機関に供給するものがある。廃ガスをフレアさせてもエネルギーは回収されない。廃ガスを燃焼させることは熱を発生させる。電気或いは運動エネルギーを回収することは、一般的に、熱エネルギーの回収よりもかなり価値が高い。2002年1月1日に公開されここに引用されるGB特許出願2364257は、VOCを含むガス流を二つの流れに分ける。第一の流れは機関の空気吸入部に送られ、第二の流れは燃焼ユニットに送られる。機関からの排気熱は第二の流れと混ざり、これを燃焼させる。この引例は、VOCを濃縮すること、VOCを機関の燃料口に送ること、のいずれも教示していない。1995年11月16日に公開されここにに引用されるWO9530470は、廃ガス流と機関とが互いに独立して作動し得るよう二つの吸着/脱離ユニットを持つことによって機関内のVOCを燃焼させる装置を開示する。第一のユニットは、必要に応じてVOCを集めて濃縮することが出来、第二のユニットは、必要に応じてVOCを機関に供給する。この引例及びGB引例は、VOCを燃焼エアの中に残しており、機関の燃料吸入部にVOCを供給していない。2002年8月1日に公開されここに引用されるUS2002/100277もまた、VOCを内燃機関に送ることを教示するが、VOCは装置によって濃縮されていない。それらの濃度は、容器内のVOCの蒸気圧に基づく。機関に送られないVOCは、冷却器によって液体に凝縮されるが、このように液化されたVOCは、燃料として機関に供給されない。
【0004】
廃ガスを機関の燃焼用エア又は排気に直接に供給出来ることが知られている。市販のシステムの1つは、産業活動からの廃ガスをタービン・エンジンに供給する。2002年9月に公開されここに引用されるNeill及びGunterによる論文「VOC Destruction using Combustion Turbines」は、ガスタービンを作動するために廃VOCを天然ガスと混合する装置を記載する。そのガスタービンは、設備用の電力を生成する。その廃ガスは、産業活動の排気ガスから直接、得られて燃焼用空気の一部として機関に供給される。そのタービン・エンジンは、大量の燃料を供給するために別個の燃料源を持つ。排気は、エンジンを作動するのに必要とされるエネルギーの含有量割合は比較的低い(未燃炭化水素とVOC が200から5000ppm)。このような装置は、その装置の通常運転時の一部において、外的な燃料供給を必要とする。この外的な燃料供給は、単に始動運転時や一定負荷運転時の一部ではない。これらの引例はVOCを濾過や改質すること無く機関に直接供給することを示し、VOCを消費することが出来る機関を必要とする。VOCを燃焼用空気に送るためには非常に大きな機関/発電機が必要とされる。Neill及びGunterに示された例は、150,000標準立方フィート/分(scfm)の空気を受ける20MWのタービンである。
【0005】
1995年9月19日発行の米国特許5,451,249は、ゴミ埋立地から燃料電池の燃料源として使用するためのガス流を供給する装置及び方法を教示する。ゴミ埋立地の天然ガス成分が望ましく、ゴミ埋立地の中に含まれるVOCガスは除去されて、燃料電池へ燃料を供給するためには使用されない。5,451,249特許は、改質に先立ってガス流から除去されなければならない汚染物質成分としての重質炭化水素を開示する。本発明は、VOCが汚染物質であることを教示するよりむしろ、これらの炭化水素を改質器の供給原料として利用することを教示する。
【0006】
本発明は、機関の主燃料としてVOCを使用することにより、VOCからのエネルギーを利用する装置及び方法である。本発明は廃ガスから、より価値が高い運動エネルギー又は電気エネルギーを生成することが可能である。本発明は廃ガス流からの希釈VOCを再利用する。本発明は、自動車塗装ブースからの排気ガスを用いて示されるが、多くの他の製造工程、化学工程、工業工程、農業工程及び、廃物管理工程が、本発明が適用可能なVOCガス流を発生する。空気中に容易に気化する有機化合物である希釈VOCガス流は、直鎖炭化水素、分岐鎖炭化水素、芳香族炭化水素あるいは含酸素炭化水素を含む可能性がある。本発明は、電気を起こすのと同時に炭化水素を減らすという二重の利点を持つ。機関は、いなかる種類の、内燃機関若しくは外燃機関、スターリングサイクルエンジン又は、通常、出力シャフト駆動力の形態である運動エネルギー又は電気を生成可能な他の機関でもよい。本発明は、製造業、工業、農業、環境保全、化学あるいは、廃棄のプロセスに存在し、若しくは、そこから排出されるガス流の中に混入している炭化水素を利用する、エネルギー有効利用方法である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、希釈VOCガス流からエネルギーを生成するための装置及び方法を提供する。本装置は、希釈VOCガス流を濃縮VOC燃料に濃縮する濃縮器を含む。濃縮されたVOC燃料は、機関の燃料入口に供給される。本装置は、濃縮器内の吸着媒体上に希釈VOCを吸着させることによって動作する。濃縮器は、単位体積あたりのVOC濃度を増加させる。吸着されたVOCはその後、濃縮VOC燃料を形成すべく脱離させられる。濃縮VOC燃料は、液化VOC燃料又は、気体濃縮VOC燃料のいずれの場合もあり得る。その後、濃縮VOC燃料は、運動エネルギー若しくは電気エネルギーを生成すべく、機関に送られる。
【0008】
殆どの工業用濃縮器は、高温の空気を用いて脱離を行なう。炭化水素の濃度が爆発下限(体積百分率で約1.5%の炭化水素)に近づく危険性ゆえに、これらの装置内のガスについての濃度は、脱離物がECDの主燃料として作用するのに充分なだけ燃料リッチになることは決して無い。本発明の背景技術に記載したように、先行技術の装置は、脱離物を単に燃焼用空気の一部として機関に供給するものであった。機関は、動作するために別個の燃料供給部を必要とし、本発明によって必要とされる大きさよりも、かなり大きくならざるを得ない。
【0009】
本装置は、製造工程又は他の工程から廃ガスを受け入れる。もし、そのガスが微粒子を含む傾向があるならば、濃縮される前に多段濾過装置によって濾過される。その後、ガスは吸着室に送られ、そこにおいてVOCガスが廃棄流から吸着媒体上に除去される。吸着媒体は所定間隔でVOC含有ガス源から分離され、VOCを放出又は脱離するために加熱される。脱離サイクルのタイミングは、吸着媒体上のVOCの飽和レベルが予め設定されたレベルを超えないようにされる。VOC含有吸着媒体を加熱することが、VOCを急激に高温蒸気とし、それはその後、機関に送られる。本発明の種々の実施形態が、必要に応じて、機関内に導入するため燃料流を更に処理すべく、凝縮器を用いる。機関内の燃焼の結果として生じる水及びCO2ガスは、大気中に排出される。制御装置が、この一連の工程を監視及び制御するために使用される。
【0010】
種々の機関が、濃縮燃料をエネルギーに転換するために利用され得る。運動エネルギーを電気に転換するために発電機を使用することが出来る。実施形態の一つにおいて、希釈VOC含有ガス流は、任意の多段微粒子フィルター及び、吸着/脱離式濃縮器を通る。VOCがガスから取り出され、吸着媒体に付着する。清浄なガスは大気に放出されるか、或いは、工程内のどこか別の所で使用され、そしてVOCを脱離させるために掃引ガスが吸着剤を通る。掃引ガスは、水蒸気、不活性燃焼生成物、メタンや他のアルカンのような気体燃料、又は、付着したVOCや吸着剤を酸化若しくは反応しない他の気体であり得る。その後、掃引ガスと濃縮VOCの混合気は、電気エネルギーを発生させるために、機関の燃料入口に入る。
【0011】
別の実施形態において、VOC含有ガス流は、任意の多段微粒子フィルター及び、吸着/脱離式濃縮器を通る。VOCがガスから取り出され、吸着媒体に付着する。清浄ガスは大気中に出されるか、或いは、工程内のどこか別のところで使用される。窒素ような不活性ガスがVOCを脱離するために吸着媒体を通る。不活性ガスとVOCの混合気は凝縮器に送られ、そこにおいて混合気が、VOCを凝縮すべく冷却される。その後、不活性ガスは脱離室に再循環させられる。液体に凝縮された冷却されたVOCが機関に送られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明は、一連の図面に示され、そこにおいて類似の構成要素は、参照符号の末尾の数字が同じであり、最初の数字は図面番号に一致している。本発明を理解しやすくするため、種々の構成要素と参照符号のテーブルを以下に示す。
【0013】
【表1】

【0014】
本発明の実施形態の一つにおいて、VOCガスは掃引運搬ガスに運ばれ、機関内の燃焼に供されるべく機関に送られる。本手順は、VOCに含まれている炭化水素を用いて、最終的にエネルギーを抽出する処理を提供する。本装置は、電気又は運動エネルギーを生成するための燃料として希釈VOCガス流から分離した複数成分を利用すると同時に、大気への排出物質を減少させる。
【0015】
製造工程からの廃ガス流は、もしそのガス流の中に粒子状物質が含まれるならば、多段濾過装置によって濾過される。その後、ガス流は吸着室内に送られ、そこにおいてVOCが廃棄流から吸着媒体上に取り出される。この吸着媒体は、所定の間隔でVOC含有ガス源から分離され、VOCを放出又は脱離させるべく加熱される。
【0016】
脱離サイクルのタイミングは、吸着媒体上のVOCの飽和レベルが予め設定されたレベルを超えないようにされる。VOC含有吸着媒体を加熱して急激に高温蒸気とし、その後、機関に送る。機関は、機器に動力を供給するために、又は、電気を起こすよう発電機を運転するために使用され得る。
【0017】
本発明の別の実施形態は、機関内での効率的な利用のため、必要に応じて脱離VOCを更に処理するための凝縮器を用いる。機関内の燃焼の結果として生じる水蒸気及びCO2ガスは、大気中に排出される。制御装置が、この一連の工程を監視及び制御するために使用される。
【0018】
図1は、製造工程の廃ガス流からVOCを取り出し、そのVOCを、電気を起こすために使用可能な燃料に転換するための装置100の第一の実施形態を示す。既に述べたように、装置及び方法は工業プロセスや希釈VOCガス流を発生させる他のプロセスにも使用され得る。処理は、VOC含有ガス源101において開始する。このガス源101は、VOC含有ガスを、普通は開状態のダンパー102を介して任意の多段微粒子フィルター110の入口に通すことを可能とする。ダンパー102は、装置100によって処理されるように希釈VOCガス流を導く。通常は閉じた状態のバイパス用ダンパー103は、廃ガス処理装置100が作動していないときに、VOCの大気中への一時的な排出を可能とする。昇圧ファン115は、濾過されたガスを吸着/脱離式濃縮器120の入口に送る。希釈VOCガス流は濃縮器の吸着部に入り、そこにおいてVOCが吸着媒体に付着する。吸着媒体は、活性炭素、ゼオライト、合成樹脂、又はそれらの混合物のような、どの市販の吸着剤でもよい。VOC含有吸着媒体は連続的な閉ループ内で濃縮器120の脱離部に送られる。そこにおいて吸着媒体を加熱し吸着媒体からVOCを取り出す(脱離する)べく、外部蒸気生成器又はボイラーから200-600°Fの蒸気がライン121を通って濃縮器120の中に入る。上記の代わりに、不活性燃焼生成物又は、メタンや他のアルカンのような気体燃料から構成される掃引ガスを、脱離されたVOCの輸送媒体として使用してもよい。追加の熱源(不図示)が濃縮器120の脱離部に必要とされる場合がある。排気孔122は、今しがたVOCが除去されたプロセスガスが大気中に放出されるか、又は、この処理内又は別の製造工程内での使用のために転送されるのを可能とする。そのとき気体の形態で掃引ガスによって運ばれる濃縮VOCは、出口123を経て濃縮器120を出て、この場合、スターリング・サイクル・エンジン又は高温の気体VOCを利用可能な他の機関である機関160の燃料入口に、燃料として送られる。天然ガスのような補助燃料(第2燃料)が入口弁164を通じて利用可能である。制御器(不図示)が機関160に供給される濃縮VOCの量に比例する信号を受け取る。制御器は、装置100によって生成された濃縮VOCの量に基づき機関160に供給される補助燃料の割合を調節する。
【0019】
VOC燃料の完全又は本質的に完全な酸化を可能にするため、空気が燃焼用空気入口161を通して加えられる。水蒸気及び空気が出口162を通して大気中に放出される。動力出力163は、機関によって生成された交流電力を設備の内部配電網と互換性を持つべく昇圧する開閉装置170に接続する。装置が緊急停止時に自立するのを可能にする保護されたバスである設備の配電網への接続は、コネクター171によって行なわれる。
【0020】
装置100は補助燃料で作動可能であるが、弁164を通して追加される補助燃料の量は90%より実質的に小さく、好ましくは0%となる。装置100は、VOC燃料のエネルギー含有量で完全に作動するように設計されている。補助燃料は概して、装置100の最初のや希釈VOCガス源の出力が装置100の効率的な作動よりも下がるときに使用される。補助燃料のみで装置100の運転を可能にすることは、その装置を利用する設備に予備のバックアップ電力を供給し、装置の架設コストに対して十分な根拠を示す一助となる。
【0021】
この装置は、大小のガス流に合わせて設計され得る。適用例の一つにおいて、自動車塗装ブースがこの装置100にダクト連結された。このブースは、フル稼働されたとき、2000から6500 scfmの希釈VOCガスを供給する。この希釈VOCガス流は、濃度が10から1000ppmキシレンのような芳香族炭化水素、ヘプタンのような直鎖炭化水素及び、ブチルアセレートのような含酸素炭化水素である。この濃度において、希釈VOCは空気中におけるVOCの爆発下限濃度より下になる。濃縮器120は、VOCの濃度を15,000ppmよりも高く、好ましくは200,000ppmよりも高い値に増加する。濃縮されたVOCが空気ではなく不活性ガスによって運ばれているので、爆発の可能性は、加圧された燃料ラインのそれに比べて大きくない。
【0022】
本発明の他の適用例は、エタノールの製造中に放出されるホルムアルデヒド及び酸性の酸、或いは、焼成工程で排出されるVOCの捕捉を含む。土壌又は水に混ざったVOCは、その後、処理用装置100に供給される希釈VOCガス流に放出することが出来る。別の適用例において、この装置は、地下や地上のタンク、タンクローリーやタンカー、あるいは他の容器から、蓄積している間又は供給している間に出るガソリンを捕捉するために使用することが出来る。希釈VOCを含む他の多くの適用例が、本技術分野の当業者にとって明白であることになり、そして本発明により企図される。
【0023】
図2は、製造工程の廃ガスからVOCを取り出し、そのVOCを、電気を起こすために使用可能な燃料に転換するための装置200の、第二実施形態を示す。VOC処理はVOC含有ガス源201において開始し、VOC含有ガスを普通は開状態のダンパー202を介して任意の多段微粒子フィルター210の入口に通すことを可能とする。通常は閉じた状態のダンパー203は、廃ガス処理装置200が作動していないときに、大気中への一時的な排出を可能とする。昇圧ファン215は、濾過されたガスを吸着/脱離式濃縮器220の入口に送る。希釈VOCガス流は濃縮器の吸着部に入り、その濃縮器220を通過するときにVOCが吸着媒体に付着する。排気孔222は、今しがたVOCが除去されたプロセスガスが大気中に出るか、若しくは、本処理内又は別の製造工程内での使用のために転送されるのを可能とする。吸着媒体は、活性炭素、ゼオライト、合成樹脂、又はそれらの混合物のような、いかなる市販の吸着剤であり得る。VOC含有吸着媒体は連続的な閉ループ内で濃縮器の脱離部に送られる。そこにおいて吸着媒体を加熱し掃引ガスを濃縮器230内に通すことによって混入したVOCが脱離させられる。VOCは掃引ガスに混入されて出口223を通って濃縮器220から出て、冷却器230に送られる。冷却器230は不活性ガス及びそれによって運ばれるVOCを、VOCの気化温度よりも低く、不活性ガスの凝縮温度よりも高い温度に冷却し、それによって冷却器230内でVOC(液体)を不活性ガス(気体)から分離する。不活性ガスはライン229を通りファン225に送られ、そして入口ライン221を通り濃縮器220に再循環される。凝縮温度がVOCの凝縮温度より実質的に低い窒素、若しくは他の不活性ガスが、適切な分離を確かなものとするために使用される。そのとき、液体の形態のVOCは、出口231を通って凝縮器を出て、液化VOCで作動可能な機関260の燃料入口に向かって流れる。天然ガスのような補助燃料が入口ライン264を介して利用可能である。燃焼用空気が、VOC燃料の酸化反応を完全に若しくは本質的に完全に行なうことを可能とするため、入口ライン261を通して供給される。水蒸気及び空気が出口262を通して大気中に放出される。動力出力263は、生成された交流電力を設備の内部配電網と互換性をもつべく昇圧する開閉装置270に接続する。装置が緊急停止時に自立するのを可能にする保護されたバスである設備用配電網への接続は、コネクター271によって行なわれる。図2に示す実施形態において、濃縮VOC燃料の濃度は本質的に1,000,000ppmのVOCである。
【0024】
処理に関する上述の説明は、特定の好ましい実施形態を同定するが、説明された装置への適用に限定することを意図するものではない。
【0025】
両実施形態は、任意の多段フィルターシステムを示している。フィルターは、機関に悪影響を及ぼす可能性のある、いかなる有機微粒子及び無機微粒子をも除去するために使用される。いくつかのVOC源が微粒子を含んでいない場合もあり、いくつかの機関が微粒子に対する耐性を持っている場合もあるので、この処理の適用において濾過装置が必要でない場合もある。
【0026】
濃縮器は、吸着媒体が吸着部から脱離部まで運ばれる移送式装置として記載されている。流動層式装置又は、回転車輪に吸着媒体が付設された装置によって、濃縮が実行可能であることは理解される。また、吸着媒体を固定層に設け、源ガス流及び廃棄燃料流を導く弁を制御することによって吸着及び脱離を種々のパターンで代わる代わる実施するように濃縮器を構成することも可能である。濃縮器は、非酸化性環境においてVOCを脱離すること、吸着器に残っている清浄空気から脱離された廃棄物を分離すること、及び、脱離した廃棄物が、炭化水素濃度が15,000ppmより高いVOCを持つようにVOCを濃縮すること、が可能とされるべきである。掃引ガスは、脱離工程において装置内にある炭化水素と反応し得る遊離酸素を含まないよう、不活性ガス、水蒸気、燃焼副生成物、あるいはメタンや他のアルカンのような気体燃料とすればよい。
【0027】
本発明に記述された装置が、市販の構成要素から構築され、上述の特定の組み合わせで作動させられたとき、ある種の製造工程の廃ガス流から電気を起こす装置を形成することは明白であろう。上述した実施形態は、高温の気体燃料及び低温の気体燃料を含む種々の形態の燃料が、エンジン又はタービンに使用される結果となる。必要とされる燃料が、装置の構成部品の選択を誘導する。
【0028】
本発明の実施形態及び上述の燃料の形態は、本発明の適用を限定することを意図していない。装置の構成要素は、本発明の技術思想から逸脱することなく、他の形態に組替え可能である。特許請求の範囲によって要求されるものを除いて、本発明の適用を限定することは意図されていない。
【0029】
本発明の種々の目的の達成に関して、本発明の種々の好ましい実施形態を説明してきた。これらの実施形態が、単なる本発明の主題の例示であることを理解すべきである。実施形態の多くの修正及びその適用が、本発明の技術思想及び範囲から逸脱することなく、本技術分野の当業者にとって直ちに明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】ガス流から希釈VOCを取り出し、それを蒸気の混合VOCからなる高温の気体燃料に濃縮するための装置の説明図である。
【図2】ガス流から希釈VOCを取り出し、それを混合VOCからなる低温の液体燃料に濃縮するための装置の説明図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エネルギー生成装置であって、
希釈VOCガスを濃縮VOC燃料に濃縮する濃縮器、及び、
エネルギーを生成する機関を有し、
該機関が燃料入口を持ち、
上記濃縮VOC燃料が上記燃料入口に送られる、
装置。
【請求項2】
上記濃縮器が、上記希釈VOCガスを吸着する吸着媒体を含む、
請求項1に記載の装置。
【請求項3】
上記濃縮器が、
そこにおいて上記希釈VOCガスが上記吸着媒体に吸着される吸着室と、
そこにおいて上記吸着VOCガスが脱離される脱離室とを有する、
請求項2に記載の装置。
【請求項4】
上記吸着媒体が、活性炭、ゼオライト、合成樹脂及びそれらの混合物からなるグループから選択されたものである、
請求項2に記載の装置。
【請求項5】
上記濃縮器が上記濃縮VOC燃料を15,000ppmより高い濃度に濃縮する、
請求項1に記載の装置。
【請求項6】
上記濃縮器が上記濃縮VOC燃料を200,000ppmより高い濃度に濃縮する、
請求項5に記載の装置。
【請求項7】
吸着されたVOCを脱離する掃引ガスを更に有する、
請求項3に記載の装置。
【請求項8】
上記掃引ガスが水蒸気である、
請求項7に記載の装置。
【請求項9】
上記掃引ガスが不活性ガスである、
請求項7に記載の装置。
【請求項10】
上記掃引ガスが気体燃料である、
請求項7に記載の装置。
【請求項11】
上記濃縮VOC燃料を液体に凝縮する凝縮器を更に有する、
請求項1乃至10のいずれか一つに記載の装置。
【請求項12】
上記吸着媒体が流動層内にある、
請求項2に記載の装置。
【請求項13】
上記吸着媒体が回転車輪に付設されている、
請求項2に記載の装置。
【請求項14】
上記吸着媒体が固定層に含まれている、
請求項2に記載の装置。
【請求項15】
上記装置が、上記希釈VOCガスから微粒子を濾過するフィルターを含む、
請求項1に記載の装置。
【請求項16】
上記希釈VOCガスが、直鎖炭化水素、分岐鎖炭化水素、芳香族炭化水素、酸化炭化水素及び、それらの混合物からなるグループから選択されたものである、
請求項1に記載の装置。
【請求項17】
上記希釈VOCガスが1ppmから5000ppmのVOC濃度である、
請求項1に記載の装置。
【請求項18】
上記希釈VOCガスが塗装排気である、
請求項1に記載の装置。
【請求項19】
上記希釈VOCガスがガソリン蒸気である、
請求項1に記載の装置。
【請求項20】
上記希釈VOCガスがホルムアルデヒド及び酸性の酸を含む、
請求項1に記載の装置。
【請求項21】
第二の燃料を更に有し、上記機関が上記濃縮VOC燃料と上記第二燃料との混合燃料を消費する、
請求項1に記載の装置。
【請求項22】
上記機関に供給される上記濃縮VOC燃料と上記第二燃料の割合を調節する制御器を更に有する、
請求項21に記載の装置。
【請求項23】
上記機関に供給される上記濃縮VOC燃料の量に比例する信号が生成され、上記制御器が上記濃縮VOC燃料の量に応じて上記第二燃料の量を変更する、
請求項22に記載の装置。
【請求項24】
上記第二燃料の割合が混合燃料の0%から90%である、
請求項21に記載の装置。
【請求項25】
上記機関がスターリング・エンジンである、
請求項1に記載の装置。
【請求項26】
上記機関が内燃機関である、
請求項1に記載の装置。
【請求項27】
上記機関がガスタービンである、
請求項1に記載の装置。
【請求項28】
上記エネルギーが電気である、
請求項1に記載の装置。
【請求項29】
開閉装置及び配電網を更に有し、該開閉装置が上記電気エネルギーを配電網に互換可能に調節する、
請求項28に記載の装置。
【請求項30】
希釈VOCガスからエネルギーを取り出す装置であって、
希釈VOCガスを濃縮VOC燃料に濃縮する濃縮器、
上記濃縮VOC燃料を脱離させるために上記濃縮器内に掃引ガスを噴射する噴射器、
及び、上記掃引ガス及び濃縮VOC燃料を受け取りエネルギーを生成する機関、
を有する装置。
【請求項31】
上記濃縮器が、上記希釈VOCガスを吸着する吸着媒体を含む、
請求項30に記載の装置。
【請求項32】
上記濃縮器が、
そこにおいて上記希釈VOCガスが上記吸着媒体に吸着される吸着室と、
そこにおいて上記吸着VOCガスが脱離される脱離室とを有する、
請求項31に記載の装置。
【請求項33】
上記吸着媒体が、活性炭、ゼオライト、合成樹脂及びそれらの混合物からなるグループから選択されたものである、
請求項31に記載の装置。
【請求項34】
上記濃縮器が上記濃縮VOC燃料を15,000ppmより高い濃度に濃縮する、
請求項30に記載の装置。
【請求項35】
上記濃縮器が上記濃縮VOC燃料を200,000ppmより高い濃度に濃縮する、
請求項34に記載の装置。
【請求項36】
上記掃引ガスが水蒸気である、
請求項30に記載の装置。
【請求項37】
上記掃引ガスが気体燃料である、
請求項30に記載の装置。
【請求項38】
上記吸着媒体が流動層内にある、
請求項31に記載の装置。
【請求項39】
上記吸着媒体が回転車輪に付設されている、
請求項31に記載の装置。
【請求項40】
上記吸着媒体が固定層に含まれている、
請求項31に記載の装置。
【請求項41】
上記装置が、上記希釈VOCガスから微粒子を濾過するフィルターを含む、
請求項30に記載の装置。
【請求項42】
上記希釈VOCガスが、直鎖炭化水素、分岐鎖炭化水素、芳香族炭化水素、酸化炭化水素及び、それらの混合物からなるグループから選択されたものである、
請求項30に記載の装置。
【請求項43】
上記希釈VOCガスが1ppmから5000ppmのVOC濃度である、
請求項30に記載の装置。
【請求項44】
上記希釈VOCガスが塗装排気である、
請求項30に記載の装置。
【請求項45】
上記希釈VOCガスがガソリン蒸気である、
請求項30に記載の装置。
【請求項46】
上記希釈VOCガスがホルムアルデヒド及び酸性の酸を含む、
請求項30に記載の装置。
【請求項47】
第二の燃料を更に有し、上記機関が上記濃縮VOC燃料と上記第二燃料との混合燃料を消費する、
請求項30に記載の装置。
【請求項48】
上記機関に供給される上記濃縮VOC燃料と上記第二燃料の割合を調節する制御器を更に有する、
請求項47に記載の装置。
【請求項49】
上記機関に供給される上記濃縮VOC燃料の量に比例する信号が生成され、上記制御器が上記濃縮VOC燃料の量に応じて上記第二燃料の量を変更する、
請求項48に記載の装置。
【請求項50】
上記第二燃料の割合が混合燃料の0%から90%である、
請求項47に記載の装置。
【請求項51】
上記機関がスターリング・エンジンである、
請求項30に記載の装置。
【請求項52】
上記エネルギーが電気である、
請求項30に記載の装置。
【請求項53】
開閉装置及び配電網を更に有し、該開閉装置が上記電気エネルギーを配電網に互換可能に調節する。
請求項52に記載の装置。
【請求項54】
希釈VOCガスを受け取るエネルギー生成装置であって、
上記希釈VOCガスから微粒子を濾過するフィルター、
単位体積あたりのVOC量を濃縮する濃縮器、
上記濃縮VOCを脱離させるために上記濃縮器内に不活性ガスを噴射する不活性ガス噴射器、
VOCを凝縮する凝縮器、及び、
上記凝縮VOCを受け取りエネルギーを生成する機関、
を有する装置。
【請求項55】
上記濃縮器が、上記希釈VOCガスを吸着する吸着媒体を含む、
請求項54に記載の装置。
【請求項56】
上記濃縮器が、
そこにおいて上記希釈VOCガスが上記吸着媒体に吸着される吸着室と、
そこにおいて上記吸着VOCガスが脱離される脱離室とを有する、
請求項55に記載の装置。
【請求項57】
上記吸着媒体が、活性炭、ゼオライト、合成樹脂及びそれらの混合物からなるグループから選択されたものである、
請求項55に記載の装置。
【請求項58】
上記濃縮器が上記濃縮VOC燃料を15,000ppmより高い濃度に濃縮する、
請求項54に記載の装置。
【請求項59】
上記濃縮器が上記濃縮VOC燃料を200,000ppmより高い濃度に濃縮する、
請求項58に記載の装置。
【請求項60】
上記吸着媒体が流動層内にある、
請求項55に記載の装置。
【請求項61】
上記吸着媒体が回転車輪に付設されている、
請求項55に記載の装置。
【請求項62】
上記吸着媒体が固定層に含まれている、
請求項55に記載の装置。
【請求項63】
上記希釈VOCガスが、直鎖炭化水素、分岐鎖炭化水素、芳香族炭化水素、酸化炭化水素及び、それらの混合物からなるグループから選択されたものである、
請求項54に記載の装置。
【請求項64】
上記希釈VOCガスが1ppmから5000ppmのVOC濃度である、
請求項54に記載の装置。
【請求項65】
上記希釈VOCガスが塗装排気である、
請求項54に記載の装置。
【請求項66】
上記希釈VOCガスがガソリン蒸気である、
請求項54に記載の装置。
【請求項67】
上記希釈VOCガスがホルムアルデヒド及び酸性の酸を含む、
請求項54に記載の装置。
【請求項68】
第二の燃料を更に有し、上記機関が上記濃縮VOC燃料と上記第二燃料との混合燃料を消費する、
請求項54に記載の装置。
【請求項69】
上記機関に供給される上記濃縮VOC燃料と上記第二燃料の割合を調節する制御器を更に有する、
請求項68に記載の装置。
【請求項70】
上記機関に供給される上記濃縮VOC燃料の量に比例する信号が生成され、上記制御器が上記濃縮VOC燃料の量に応じて上記第二燃料の量を変更する、
請求項69に記載の装置。
【請求項71】
上記第二燃料の割合が混合燃料の0%から90%である、
請求項68に記載の装置。
【請求項72】
上記機関が内燃機関である、
請求項54に記載の装置。
【請求項73】
上記機関がガスタービンである、
請求項54に記載の装置。
【請求項74】
上記機関がスターリング・エンジンである、
請求項54に記載の装置。
【請求項75】
上記エネルギーが電気である、
請求項54に記載の装置。
【請求項76】
開閉装置及び配電網を更に有し、該開閉装置が上記電気エネルギーを配電網に互換可能に調節する、
請求項75に記載の装置。
【請求項77】
エネルギーを生成する方法であって、
希釈VOCガスを濃縮VOC燃料に濃縮する工程、及び、
上記濃縮VOC燃料を機関の燃料入口に送る工程を有し、
更に、上記機関が上記濃縮VOC燃料をエネルギーに転換する工程を有する、方法
【請求項78】
上記VOCガスを吸着媒体に吸着する工程を更に有する、
請求項77に記載の方法。
【請求項79】
上記吸着されたVOCを脱離させるため上記吸着媒体を加熱する工程を更に有する、
請求項78に記載の方法。
【請求項80】
上記吸着されたVOCを脱離させるため、上記濃縮器の中に掃引ガスを噴射する工程を更に有する、
請求項79に記載の方法。
【請求項81】
上記掃引ガスが水蒸気である、
請求項80に記載の方法。
【請求項82】
上記掃引ガスが不活性ガスである、
請求項80に記載の方法。
【請求項83】
上記掃引ガスが気体燃料である、
請求項80に記載の方法。
【請求項84】
上記濃縮VOC燃料を液体に凝縮する工程を更に有する、
請求項82に記載の方法。
【請求項85】
上記吸着媒体が連続的な閉ループ内にある、
請求項78に記載の方法。
【請求項86】
上記濃縮工程に先立って、上記希釈VOCガスを濾過する工程を更に有する、
請求項77に記載の方法。
【請求項87】
上記希釈VOCガスが、直鎖炭化水素、分岐鎖炭化水素、芳香族炭化水素、酸化炭化水素及び、それらの混合物を有するグループから選択されている、
請求項77に記載の方法。
【請求項88】
上記希釈VOCガスが1ppmから5000ppmの間のVOC濃度である、
請求項77に記載の装置。
【請求項89】
上記希釈VOCガスが塗装排気である、
請求項77に記載の装置。
【請求項90】
上記希釈VOCガスがガソリン蒸気である、
請求項77に記載の装置。
【請求項91】
上記希釈VOCガスがホルムアルデヒド及び酸性の酸を含む、
請求項77に記載の装置。
【請求項92】
上記機関に第二の燃料を供給する工程を更に有し、
上記機関が上記濃縮VOC燃料と上記第二燃料との混合燃料を消費する、
請求項77に記載の方法。
【請求項93】
上記機関に供給される上記濃縮VOC燃料と上記第二燃料との割合を調節する工程を更に有する、
請求項92に記載の方法。
【請求項94】
上記機関に供給される上記濃縮VOC燃料の量を測定する工程を更に有し、
制御器が、上記濃縮VOC燃料の量に応じて上記第二燃料の量を変更する、
請求項93に記載の方法。
【請求項95】
上記第二燃料の割合が上記混合燃料の0%から90%の間である、
請求項92に記載の方法。
【請求項96】
上記機関がスターリング・エンジンである、
請求項77に記載の方法。
【請求項97】
上記機関が内燃機関である、
請求項77に記載の方法。
【請求項98】
上記機関がガスタービン・エンジンである、
請求項77に記載の方法。
【請求項99】
上記機関が電気を生成する、
請求項77に記載の方法。
【請求項100】
上記電気を配電網に供給する工程を更に有する、
請求項99に記載の方法。
【請求項101】
上記不活性ガスが窒素である、
請求項82に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2007−521344(P2007−521344A)
【公表日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−504456(P2005−504456)
【出願日】平成15年6月20日(2003.6.20)
【国際出願番号】PCT/US2003/019418
【国際公開番号】WO2005/008031
【国際公開日】平成17年1月27日(2005.1.27)
【出願人】(500493207)フォード モーター カンパニー (22)
【Fターム(参考)】