説明

櫛型電極の製造方法

【課題】微細な形状である集電体の表面に、精度良く、多量の活物質を担持させることのできる櫛型電極の製造方法を提供すること。
【解決手段】本発明の櫛型電極1a、1bの製造方法は、基材4の表面に一対の櫛型形状の集電体2a、2bを形成させる集電体形成工程と、基材4の表面にレジスト層6形成させるレジスト塗布工程と、正極1a又は負極1bを形成させるためのガイド孔7a、7bを形成させるガイド孔形成工程と、を含み、レジスト層6を形成させるレジスト組成物として、(1)カチオン重合系レジスト組成物、(2)ノボラック系レジスト組成物、(3)化学増幅系レジスト組成物、又は(4)エチレン性の不飽和結合を有するモノマー及び/又は樹脂及びラジカル重合開始剤を含み、モノマーを含む場合、当該モノマーの1分子中に含まれるエチレン性の不飽和結合が3個以下であるラジカル重合系レジスト組成物を使用することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、櫛型電極の製造方法に関し、さらに詳しくは、正極及び負極がそれぞれ櫛型形状として形成され、これら正極及び負極が櫛型形状の歯の部分で互い違いに組み合うようにして対向配置された櫛型電極の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
充電と放電を繰り返すことのできる二次電池は、携帯電話やノート型のパーソナルコンピュータを初めとした携帯型の機器を初めとして、各種用途に普及が進んでいる。また、近年、これらの電池は、電気自動車やハイブリッド車等、環境関連分野への普及も進んでいる。
【0003】
このような二次電池は、正極活物質が担持された正極と、負極活物質が担持された負極とを組み合わせて構成される。一般的な二次電池では、薄膜で大きな面積を有する正極と負極とを、セパレータを介して対向するように組み合わせ、これらを巻回して構成される(例えば、特許文献1を参照)。二次電池をこのように構成することにより、二次電池における正極及び負極の面積を稼ぐことができ、二次電池の容量及び取り出すことのできる電流を大きくすることができる。しかし、このような二次電池は、比較的大きくなりがちであり、その用途は、例えば、ノート型のパーソナルコンピュータのような比較的大きな機器が対象となる。
【0004】
携帯電話等の小型機器用途の二次電池としては、ポリマー型のリチウムイオン二次電池が知られている(例えば、特許文献2を参照)。これは、導電性を有するポリマーが使用された二次電池であり、形状の自由度が大きく、機器の大きさや形状に合わせて望みの大きさや形状とすることが可能である。
【0005】
一方で、パターン化された導電体を形成する技術として、例えば、液晶ディスプレーや半導体装置の分野では、導電性物質からなる薄膜の導電層を形成し、この導電層をフォトリソグラフィ法等の方法によりパターニングして、所望の形状の導電体に加工する方法が知られている(例えば、特許文献3を参照)。このような方法によれば、例えば、液晶ディスプレーを駆動させるための微細な導電体を精度良く形成させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭60−41772号公報
【特許文献2】特開平8−124570号公報
【特許文献3】特開平8−74033号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで近年、上記のような小型機器よりも一層小型化されたマイクロデバイスが発展しつつあり、こうしたマイクロデバイスの電源として、マイクロオーダーの二次電池が求められるようになっている。このような二次電池では、マイクロデバイスの内部という限られた空間の中で効率良く電池を駆動する必要があり、電池の設計が重要となる。そのような電池の設計として、正極と負極とをフォトリソグラフィ法により微細な櫛型形状として形成させ、これらを櫛型形状の歯の部分で互いに対向配置させた構造が考えられる。このような構造の電池の場合、正極と負極とを微小な空間を介して互いに接近させることにより、セパレータとなる微小な空間を介して正極と負極とが接する面積を大きくすることができ、取り出すことのできる電流の増大を期待することができる。
【0008】
一方、電池容量は、正極及び負極にそれぞれ担持された正極活物質及び負極活物質の量に比例する。そのため、電池容量を大きくするという観点からは、正極又は負極が形成される集電体の表面に、いかに正極活物質又は負極活物質を多く担持させるかが問題となる。しかしながら、上記櫛型形状のように複雑で、かつマイクロオーダーとなる微細な形状の集電体の表面に、精度良く、多量の活物質を担持させる方法は未だ存在しないのが現状である。
本発明は、以上のような状況に鑑みてなされたものであり、微細な形状である集電体の表面に、精度良く、多量の活物質を担持させることのできる櫛型電極の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、基材の表面に櫛型形状の集電体を形成させてから、この集電体の上部空間が、正極又は負極活物質を堆積させるためのガイド孔となるようにレジストからなる樹脂パターンを基材の表面に形成させ、その後、このガイド孔を鋳型として、めっき加工や電気泳動法等の方法を使用して集電体表面に活物質を堆積させる方法を採用することにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
本発明は、正極及び負極がそれぞれ櫛型形状として形成され、前記正極及び負極が櫛型形状の歯の部分で互い違いに組み合うように対向配置された櫛型電極の製造方法であって、基材の表面に導電層を形成させ、当該導電層を少なくとも一対の櫛型形状にパターニングして集電体を形成させる集電体形成工程と、集電体形成工程で形成された集電体部分を含む前記基材の表面に、レジスト組成物を塗布してレジスト層を形成させるレジスト塗布工程と、前記レジスト層の表面にマスクを通して光を照射し現像することにより、前記レジスト層のうち前記集電体の上部に位置する部分を除去して、前記集電体の上方に、正極又は負極を形成させるためのガイド孔を形成させるガイド孔形成工程と、を有し、前記レジスト組成物が、下記(1)〜(4)のレジスト組成物のいずれかであることを特徴とする櫛型電極の製造方法である。
(1)エポキシ基を有する化合物及びカチオン重合開始剤を含むカチオン重合系レジスト組成物
(2)ノボラック樹脂及び感光剤を含むノボラック系レジスト組成物
(3)酸解離性の脱離基を有し、当該脱離基が露光により光酸発生剤から発生する酸の作用で脱離することによりアルカリ可溶性が増大する樹脂、及び光酸発生剤を含む化学増幅系レジスト組成物
(4)エチレン性の不飽和結合を有するモノマー及び/又は樹脂、並びにラジカル重合開始剤を含み、エチレン性の不飽和結合を有するモノマーを含む場合には、当該モノマーの1分子中に含まれるエチレン性の不飽和結合が3個以下であるラジカル重合系レジスト組成物
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、微細な形状である集電体の表面に、精度良く、多量の活物質を担持させることのできる櫛型電極の製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の櫛型電極の製造方法の第一実施態様で製造される櫛型電極を模式的に示す斜視図である。
【図2】(a)から(i)は、本発明の櫛型電極の製造方法の第一実施態様における工程を順次示す斜視図である。
【図3】本発明の櫛型電極の製造方法の第二実施態様で製造される櫛型電極(正極活物質層13a:負極活物質層13b=2:1)を模式的に示す平面図である。
【図4】本発明の櫛型電極の製造方法の第二実施態様で製造される櫛型電極(正極活物質層13a:負極活物質層13b=4:1)を模式的に示す平面図である。
【図5】本発明の櫛型電極の製造方法の第二実施態様で製造される櫛型電極を模式的に示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の櫛型電極の製造方法の第一実施態様について、図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の櫛型電極の製造方法の第一実施態様で製造される櫛型電極を模式的に示す斜視図である。図2の(a)から(i)は、本発明の櫛型電極の製造方法の第一実施態様における工程を順次示す斜視図である。なお、図2(h)では、図面の見易さを考慮して、ガイド孔7aの底部に存在する集電体2aを省略した。
【0014】
まず、本発明の櫛型電極の製造方法の第一実施態様で製造される櫛型電極1a及び1bの一例について、図1を参照しながら簡単に説明する。櫛型電極1a及び1bは、それぞれ、櫛型形状として形成され、櫛型形状の歯の部分で互い違いに組み合うように対向配置されて形成される。ここで、櫛型電極1aは正極であり、櫛型電極1bは負極である。櫛型電極1a及び1bがこのような構成を採ることにより、電極間距離が短く、電解液抵抗が一定になりリチウムイオン交換が効率良く行われることで、電気容量を大きくすることができる。
櫛型電極1aと櫛型電極1bとの間には、空間又は両者を隔離するセパレータ(図示せず)が設けられ、両者が電気的に分離される。櫛型電極1a及び1bは、表面が不導体である基材4の表面に形成される。このような基材4としては、表面に酸化膜を有するシリコン基板が例示される。
【0015】
正極である櫛型電極1aは、電流を取り出すための集電体2aと、集電体2aの表面に形成された正極活物質層3aと、を有する。集電体2aは、平面視で櫛型形状として形成される。そして、正極活物質層3aは、櫛型形状である集電体2aの表面に形成され、集電体2aと同様に、平面視で櫛型形状として形成される。
【0016】
集電体2aは、導電性を付与するために金属で構成され、好ましくは金で構成される。そして、集電体2aと基材4との間の密着性を確保するために、必要に応じて、集電体2aと基材4との間に密着付与層(図示せず)が形成される。密着付与層は、集電体2aの材質と基材4の材質とを考慮して適宜決定される。一例として、集電体2aが金で構成され、かつ基材4がシリコンで構成される場合、密着付与層としてチタンの薄膜が好ましく使用される。集電体2aの厚さ及び密着付与層の厚さは、特に限定されず、任意に決定することができる。一例として、集電体2aの厚さとして100nm、密着付与層の厚さとして50nmが挙げられるが、限定されない。
【0017】
負極である櫛型電極1bは、電流を取り出すための集電体2bと、集電体2bの表面に形成された負極活物質層3bと、を有する。櫛型電極1bのそれ以外の事項については、正極である上記櫛型電極1aと同様であるので、説明を省略する。
【0018】
正極である櫛型電極1aと負極である櫛型電極1bとの間には、電解質(図示せず)が設けられる。これにより、櫛型電極1a及び櫛型電極1bではそれぞれ電極反応が起こり、集電体2a及び集電体2bから電流を取り出すことができる。
【0019】
正極活物質層3a及び負極活物質層3bを構成する材質、並びに電解質の種類は、どのような種類の電池を形成させるかに応じて適宜決定される。一例としてリチウムイオン二次電池を挙げると、正極活物質層3aを構成する材質としては、コバルト酸リチウム等の遷移金属酸化物等が挙げられ、負極活物質層3bを構成する材質としては、炭素、グラファイト、チタン酸リチウム等が挙げられ、電解質を構成する材質としては、ヘキサフルオロリン酸リチウム等の塩が溶解された炭酸ジエチル等の有機溶剤が挙げられる。
【0020】
次に、本実施態様の櫛型電極の製造方法について説明する。本実施態様の櫛型電極の製造方法は、集電体形成工程と、レジスト塗布工程と、ガイド孔形成工程とを少なくとも備え、さらに、活物質層形成工程を備える。以下、各工程について、図2を参照しながら説明する。
【0021】
[集電体形成工程]
集電体形成工程は、図2(a)から(f)で順次示される工程である。
この工程では、まず、基材4の表面に薄膜の導電層2が形成される(図2(a)〜(b))。基材4は、不導体又は少なくとも表面に不導体の層が形成された導体若しくは半導体であり、例えば、表面に酸化膜を有するシリコン基板が例示される。導電層2は、導体であり、好ましくは金属の薄膜である。基材4の表面に導電層2を形成させるには、PVD法又はCVD法のような蒸着法、スパッタ法、めっき法、金属箔接着法等、各種公知の方法を使用することができる。導電層2の厚さは、櫛型電極1a及び1bに要求される性能を考慮して適宜決定すればよい。
【0022】
例えば、基材4が表面に酸化膜を有するシリコン基板であり、導電層2が金の薄膜で形成される場合、まず、シリコン基板4の表面にスパッタ法によりチタンの薄膜(図示せず)を形成させ、次いでこのチタンの薄膜の表面にスパッタ法により導電層2である金の薄膜を形成させる方法が挙げられる。この場合、チタンの薄膜は、導電層2のシリコン基板4への密着性を向上させるために設けられる。チタンの薄膜及び導電層2の厚さは、一例として、それぞれ50nm、100nmが挙げられるが、必要とされる性能を考慮して適宜決定すればよい。
【0023】
導電層2を形成した後、図2(c)に示すように、導電層2の表面に集電体形成用レジストを塗布し、集電体形成用レジスト層5を形成させる。集電体形成用レジスト層5は、導電層2をパターニングして、櫛型の集電体2a及び2bを形成するために設けられる。
【0024】
集電体形成用レジストは、公知の各種レジスト組成物を使用することができる。なお、「集電体形成用レジスト」という用語は、後述するガイド孔7a及び7bを形成するために使用されるレジストと区別するためのものである。集電体形成用レジストは、後述するガイド孔形成工程で使用されるレジストと同じでもよいし、異なってもよい。
【0025】
集電体形成用レジストを塗布する方法は、公知の方法を特に制限なく挙げることができる。このような方法としては、スピンコート法、ディップ法、はけ塗り法等が挙げられる。
【0026】
形成された集電体形成用レジスト層5は、櫛型形状のマスクパターンを介して選択的に露光及び現像されて、集電体形成用の樹脂パターン5a及び5bとなる。これにより、図2(d)に示すように、導電層2の表面に、集電体形成用の樹脂パターン5a及び5bが形成される。櫛型形状の樹脂パターン5a及び5bにおける歯の本数、歯の太さ、パターンとパターンとの間のギャップ(スペースギャップ)等は、必要とされる性能を考慮して適宜設定すればよい。歯の本数としては、例えば5〜500対が、歯の太さとしては、例えば1〜50μmが、スペースギャップとしては、例えば1〜50μmがそれぞれ挙げられる。一例として、歯の本数として100対(片方の樹脂パターンにおける歯の本数が100本である)、歯の太さとして20μm、スペースギャップとして10〜20μmが挙げられるが限定されない。
【0027】
次いで、導電層2のうち、パターン5a及び5bに覆われていない箇所を除去する。導電層2を除去するには、公知の方法を特に制限なく使用することができる。このような方法として、エッチング法、イオンミリング法等が例示される。導電層2のうち、パターン5a及び5bに覆われていない箇所が除去されることにより、櫛型形状の集電体2a及び2bが形成される。その後、パターン5a及び5bが除去され、図2(f)に示すように、櫛型形状の集電体2a及び2bが基材4の表面に露出する。
【0028】
[レジスト塗布工程]
次に、レジスト塗布工程について説明する。レジスト塗布工程は、上記集電体形成工程の後に行われる工程であり、図2(g)で示される工程である。
この工程では、上記集電体形成工程で形成された集電体2a及び2bの部分を含む基材4の表面に、レジスト組成物を塗布してレジスト層6を形成させる。
【0029】
基材4の表面にレジスト組成物を塗布してレジスト層6を形成させる方法は、公知の方法を特に制限なく使用することができる。レジスト層6には、後に説明するように、正極活物質層3a及び負極活物質層3bを形成させるためのガイド孔7a及び7bが形成される。このガイド孔7a及び7bは、正極活物質層3a及び負極活物質層3bを形成させる際の鋳型となるので、正極活物質層3a及び負極活物質層3bを形成させるのに十分な深さを有するように形成させる必要がある。レジスト層6の厚さは、将来、ガイド孔7a及び7bの深さとなるので、必要とされるガイド孔7a及び7bの深さを考慮して、適宜決定される。レジスト層6の厚さとして、10〜100μmが例示されるが、特に限定されない。
【0030】
レジスト層6を形成させるためのレジスト組成物として、(1)エポキシ基を有する化合物及びカチオン重合開始剤を含むカチオン重合系レジスト組成物、(2)ノボラック樹脂及び感光剤を含むノボラック系レジスト組成物、(3)酸解離性の脱離基を有し、当該脱離基が露光により光酸発生剤から発生する酸の作用で脱離することによりアルカリ可溶性が増大する樹脂、及び光酸発生剤を含む化学増幅系レジスト組成物、又は(4)エチレン性の不飽和結合を有するモノマー及び/又は樹脂、並びにラジカル重合開始剤を含み、エチレン性の不飽和結合を有するモノマーを含む場合には、当該モノマーの1分子中に含まれるエチレン性の不飽和結合が3個以下であるラジカル重合系レジスト組成物のいずれかを使用する。以下、各レジスト組成物について説明する。
【0031】
まず、上記(1)のカチオン重合系レジスト組成物について説明する。カチオン重合系レジスト組成物は、エポキシ基を有する化合物及びカチオン重合開始剤を少なくとも含み、紫外線等の活性エネルギー線の照射によってカチオン重合開始剤がカチオンを発生し、そのカチオンによってエポキシ基を有する化合物が重合して高分子量化し、硬化する組成物である。
【0032】
エポキシ基を有する化合物としては、分子内にエポキシ基を有するものであれば特に限定されないが、レジスト組成物から形成されたパターンに溶剤耐性やめっき液耐性を付与するとの観点からは、分子内に複数のエポキシ基を有する化合物であることが好ましい。このような化合物としては、多官能エポキシ樹脂が例示される。
【0033】
多官能エポキシ樹脂は、レジスト組成物から形成されたレジスト層6を硬化させるのに十分な数のエポキシ基を1分子中に含むエポキシ樹脂であれば、どのようなエポキシ樹脂でもよい。このような多官能エポキシ樹脂としては、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、オルトクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、トリフェニル型ノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂が好ましく例示される。
【0034】
多官能エポキシ樹脂の1分子中に含まれるエポキシ基の数である官能性は、3以上であることが好ましく、4〜12であることがより好ましい。多官能エポキシ樹脂の官能性が3以上であることにより、高いアスペクト比と解像性を有する樹脂パターンを形成することができるので好ましく、多官能エポキシ樹脂の官能性が12以下であることにより、樹脂合成の制御が容易となり、また樹脂パターンの内部応力が過剰に大きくなることを抑制できるので好ましい。
【0035】
多官能エポキシ樹脂の質量平均分子量は、700〜5000であることが好ましく、1000〜4000であることがより好ましい。多官能エポキシ樹脂の質量平均分子量が700以上であることにより、硬化性樹脂組成物が活性エネルギー線照射によって硬化する前に熱フローしてしまうことを抑制できる点で好ましく、多官能エポキシ樹脂の質量平均分子量が5000以下であることにより、現像時の適当な溶解速度を得ることができる点で好ましい。
【0036】
このような多官能エポキシ樹脂としては、8官能ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン株式会社製の製品名jER157S70)や、平均6.4官能ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂(DIC株式会社製の製品名エピクロンN−885)、平均5.6官能ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂(DIC株式会社製の製品名エピクロンN−865)等が特に好ましい。
【0037】
上記多官能ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂は、例えば、下記一般式(1)で表される。
【0038】
【化1】

(上記一般式(1)中、R〜Rは、水素原子又はメチル基である。また、xは、0又は正の整数であり、好ましくは1〜10の整数であり、より好ましくは1〜5の整数である。なお、上記式(1)中のエポキシ基は、他のビスフェノールA型エポキシ樹脂又はビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂と反応し、結合していてもよい。)
【0039】
カチオン重合系レジスト組成物における多官能エポキシ樹脂の含有量は、レジスト組成物の固形分に対して、70〜95質量%が好ましく、75〜93質量%であることがより好ましい。カチオン重合系レジスト組成物における多官能エポキシ樹脂の濃度が固形分に対して70質量%以上であれば、硬化によって得られた硬化物に十分な強度を付与することができるので好ましい。また、カチオン重合系レジスト組成物における多官能エポキシ樹脂の濃度が固形分に対して95質量%以下であれば、カチオン重合系レジスト組成物を光硬化させる際に十分な感度を得ることができるので好ましい。なお、本明細書において、「固形分」とは、組成物から溶剤分を除いた残りの成分を意味する。
【0040】
次に、カチオン重合開始剤について説明する。本発明で使用されるカチオン重合開始剤は、紫外線、遠紫外線、KrF、ArF等のエキシマレーザー光、X線、電子線等といった活性エネルギー線の照射を受けてカチオンを発生し、そのカチオンが重合開始剤となり得る化合物である。
【0041】
このようなカチオン重合開始剤は、例えば、下記一般式(2)で表される。
【0042】
【化2】

(上記一般式(2)中、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、酸素原子若しくはハロゲン原子を含んでもよい炭化水素基、又は置換基が結合してもよいアルコキシ基を表し、Rは、その水素原子の1つ又はそれ以上がハロゲン原子又はアルキル基により置換されてもよいp−フェニレン基を表し、R10は、水素原子、酸素原子又はハロゲン原子を含んでもよい炭化水素基、置換基を有してもよいベンゾイル基、置換基を有してもよいポリフェニル基を表し、Aは、オニウムイオンの対イオンを表す。)
【0043】
上記一般式(2)において、Aとして、具体的には、SbF、PF、AsF、BF、SbCl、ClO、CFSO、CHSO、FSO、FPO、p−トルエンスルホネート、ノナフロロブタンスルホネート、アダマンタンカルボキシレート、テトラアリールボレート、下記一般式(3)で表されるフッ素化アルキルフルオロリン酸アニオン等が例示される。
【化3】

(上記一般式(3)中、Rfは、水素原子の80%以上がフッ素原子で置換されたアルキル基を表す。bは、その個数を表し、1〜5の整数である。b個のRfは、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。)
【0044】
このようなカチオン開始剤としては、例えば、4−(2−クロロ−4−ベンゾイルフェニルチオ)フェニルジフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、4−(2−クロロ−4−ベンゾイルフェニルチオ)フェニルビス(4−フルオロフェニル)スルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、4−(2−クロロ−4−ベンゾイルフェニルチオ)フェニルビス(4−クロロフェニル)スルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、4−(2−クロロ−4−ベンゾイルフェニルチオ)フェニルビス(4−メチルフェニル)スルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、4−(2−クロロ−4−ベンゾイルフェニルチオ)フェニルビス(4−(β−ヒドロキシエトキシ)フェニル)スルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、4−(2−メチル−4−ベンゾイルフェニルチオ)フェニルビス(4−フルオロフェニル)スルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、4−(3−メチル−4−ベンゾイルフェニルチオ)フェニルビス(4−フルオロフェニル)スルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、4−(2−フルオロ4−ベンゾイルフェニルチオ)フェニルビス(4−フルオロフェニル)スルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、4−(2−メチル−4−ベンゾイルフェニルチオ)フェニルビス(4−フルオロフェニル)スルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、4−(2,3,5,6−テトラメチル−4−ベンゾイルフェニルチオ)フェニルビス(4−フルオロフェニル)スルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、4−(2,6−ジクロロ−4−ベンゾイルフェニルチオ)フェニルビス(4−フルオロフェニル)スルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、4−(2,6−ジメチル−4−ベンゾイルフェニルチオ)フェニルビス(4−フルオロフェニル)スルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、4−(2,3−ジメチル−4−ベンゾイルフェニルチオ)フェニルビス(4−フルオロフェニル)スルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、4−(2−メチル−4−ベンゾイルフェニルチオ)フェニルビス(4−クロロフェニル)スルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、4−(3−メチル−4−ベンゾイルフェニルチオ)フェニルビス(4−クロロフェニル)スルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、4−(2−フルオロ4−ベンゾイルフェニルチオ)フェニルビス(4−クロロフェニル)スルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、4−(2−メチル−4−ベンゾイルフェニルチオ)フェニルビス(4−クロロフェニル)スルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、4−(2,3,5,6−テトラメチル−4−ベンゾイルフェニルチオ)フェニルビス(4−クロロフェニル)スルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、4−(2,6−ジクロロ−4−ベンゾイルフェニルチオ)フェニルビス(4−クロロフェニル)スルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、4−(2,6−ジメチル−4−ベンゾイルフェニルチオ)フェニルビス(4−クロロフェニル)スルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、4−(2,3−ジメチル−4−ベンゾイルフェニルチオ)フェニルビス(4−クロロフェニル)スルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、4−(2−クロロ−4−アセチルフェニルチオ)フェニルジフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、4−(2−クロロ−4−(4−メチルベンゾイル)フェニルチオ)フェニルジフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、4−(2−クロロ−4−(4−フルオロベンゾイル)フェニルチオ)フェニルジフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、4−(2−クロロ−4−(4−メトキシベンゾイル)フェニルチオ)フェニルジフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、4−(2−クロロ−4−ドデカノイルフェニルチオ)フェニルジフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、4−(2−クロロ−4−アセチルフェニルチオ)フェニルビス(4−フルオロフェニル)スルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、4−(2−クロロ−4−(4−メチルベンゾイル)フェニルチオ)フェニルビス(4−フルオロフェニル)スルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、4−(2−クロロ−4−(4−フルオロベンゾイル)フェニルチオ)フェニルビス(4−フルオロフェニル)スルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、4−(2−クロロ−4−(4−メトキシベンゾイル)フェニルチオ)フェニルビス(4−フルオロフェニル)スルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、4−(2−クロロ−4−ドデカノイルフェニルチオ)フェニルビス(4−フルオロフェニル)スルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、4−(2−クロロ−4−アセチルフェニルチオ)フェニルビス(4−クロロフェニル)スルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、4−(2−クロロ−4−(4−メチルベンゾイル)フェニルチオ)フェニルビス(4−クロロフェニル)スルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、4−(2−クロロ−4−(4−フルオロベンゾイル)フェニルチオ)フェニルビス(4−クロロフェニル)スルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、4−(2−クロロ−4−(4−メトキシベンゾイル)フェニルチオ)フェニルビス(4−クロロフェニル)スルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、4−(2−クロロ−4−ドデカノイルフェニルチオ)フェニルビス(4−クロロフェニル)スルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、4−(2−クロロ−4−ベンゾイルフェニルチオ)フェニルジフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、4−(2−クロロ−4−ベンゾイルフェニルチオ)フェニルジフェニルスルホニウムテトラフルオロボレート、4−(2−クロロ−4−ベンゾイルフェニルチオ)フェニルジフェニルスルホニウムパークロレート、4−(2−クロロ−4−ベンゾイルフェニルチオ)フェニルジフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、4−(2−クロロ−4−ベンゾイルフェニルチオ)フェニルビス(4−フルオロフェニル)スルホニウムヘキサフルオロホスフェート、4−(2−クロロ−4−ベンゾイルフェニルチオ)フェニルビス(4−フルオロフェニル)スルホニウムテトラフルオロボレート、4−(2−クロロ−4−ベンゾイルフェニルチオ)フェニルビス(4−フルオロフェニル)スルホニウムパークロレート、4−(2−クロロ−4−ベンゾイルフェニルチオ)フェニルビス(4−フルオロフェニル)スルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、4−(2−クロロ−4−ベンゾイルフェニルチオ)フェニルビス(4−フルオロフェニル)スルホニウムp−トルエンスルホネート、4−(2−クロロ−4−ベンゾイルフェニルチオ)フェニルビス(4−フルオロフェニル)スルホニウムカンファースルホネート、4−(2−クロロ−4−ベンゾイルフェニルチオ)フェニルビス(4−フルオロフェニル)スルホニウムノナフルオロブタンスルホネート、4−(2−クロロ−4−ベンゾイルフェニルチオ)フェニルビス(4−クロロフェニル)スルホニウムヘキサフルオロホスフェート、4−(2−クロロ−4−ベンゾイルフェニルチオ)フェニルビス(4−クロロフェニル)スルホニウムテトラフルオロボレート、4−(2−クロロ−4−ベンゾイルフェニルチオ)フェニルビス(4−クロロフェニル)スルホニウムパークロレート、4−(2−クロロ−4−ベンゾイルフェニルチオ)フェニルビス(4−クロロフェニル)スルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、ジフェニル[4−(フェニルチオ)フェニル]スルホニウムトリフルオロトリスペンタフルオロエチルホスファート、ジフェニル[4−(p−ターフェニルチオ)フェニル]スルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、ジフェニル[4−(p−ターフェニルチオ)フェニル]スルホニウムトリフルオロトリスペンタフルオロエチルホスファート等が挙げられる。これらの化合物のうち、4−(2−クロロ−4−ベンゾイルフェニルチオ)フェニルビス(4−フルオロフェニル)スルホニウムヘキサフルオロアンチモネート(株式会社ADEKA製、アデカオプトマーSP−172)、ジフェニル[4−(フェニルチオ)フェニル]スルホニウムトリフルオロトリスペンタフルオロエチルホスファート(サンアプロ株式会社製、CPI−210S)、ジフェニル[4−(p−ターフェニルチオ)フェニル]スルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、ジフェニル[4−(p−ターフェニルチオ)フェニル]スルホニウムトリフルオロトリスペンタフルオロエチルホスファート(サンアプロ株式会社製、HS−1PG)が好ましい。
【0045】
カチオン重合系レジスト組成物におけるカチオン重合開始剤の含有量は、レジスト組成物の固形分に対して、0.1〜10質量%が好ましく、0.5〜5質量%であることがより好ましい。カチオン重合系レジスト組成物におけるカチオン重合開始剤の含有量が固形分に対して0.1質量%以上であれば、カチオン重合系レジスト組成物の活性エネルギー線露光による硬化時間を適切なものとすることができるので好ましい。また、カチオン重合系レジスト組成物におけるカチオン重合開始剤の含有量が固形分に対して10質量%以下であれば、活性エネルギー線による露光後の現像性を良好なものとできるので好ましい。
【0046】
カチオン重合系レジスト組成物には、必要とされる特性に応じて、増感剤、シランカップリング剤、溶剤等を添加することができる。
【0047】
増感剤としては、ナフトール型増感剤が例示される。カチオン重合系レジスト組成物の感度が高い場合には、フォトマスクとレジスト層6との間に間隙が存在すると、露光の結果、得られる樹脂パターン(硬化物)の寸法がフォトマスクの寸法に比べて太くなる現象を生じる場合があるが、この太り現象を、ナフトール型増感剤を含有させることにより、感度を下げずに、抑制することができる。このように、ナフトール型増感剤を添加すると、フォトマスクの寸法に対する樹脂パターンの寸法の誤差を抑えることができるため、好ましい。
【0048】
このようなナフトール型増感剤としては、1−ナフトール、β−ナフトール、α−ナフトールメチルエーテル、α−ナフトールエチルエーテルが好ましく例示され、感度を下げずに樹脂パターンの太り現象を抑制するという効果の点を考慮すると、1−ナフトールがより好ましく例示される。
【0049】
シランカップリング剤は、レジスト層6から形成された樹脂パターンと基材4との間の密着性を向上させるために使用される。シランカップリング剤としては、公知のものを特に制限なく使用することができるが、シランカップリング剤の分子を樹脂パターンの分子内に取り込むことにより、樹脂パターンと基材4との間の密着性をより強固にするとの観点からは、エポキシ基を有するシランカップリング剤を使用することが好ましい。このようなシランカップリング剤としては、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等が例示される。シランカップリング剤の添加量としては、カチオン重合系レジスト組成物の固形分に対して1〜10質量%が例示される。
【0050】
溶剤は、カチオン重合系レジスト組成物の感度を高め、また、カチオン重合系レジスト組成物の粘度を、基材4の表面に塗布するのに適したものとするのに使用される。このような溶剤としては、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、メチルイソブチルケトン(MIBK)、酢酸ブチル、メチルアミルケトン(2−ヘプタノン)、酢酸エチル、メチルエチルケトン(MEK)等が例示される。カチオン重合系レジスト組成物における溶剤の添加量は、カチオン重合系レジスト組成物の塗布性を考慮して適宜決定すればよい。
【0051】
次に、上記(2)のノボラック系レジスト組成物について説明する。ノボラック系レジスト組成物は、ノボラック型樹脂及び感光剤を含み、紫外線等の活性エネルギー線の照射によって現像液であるアルカリ水溶液への溶解性が増大する組成物である。
【0052】
ノボラック型樹脂は、アルカリ可溶性である。このアルカリ可溶性ノボラック型樹脂については、特に制限はなく、従来ポジ型フォトレジスト組成物において慣用されているアルカリ可溶性ノボラック型樹脂、例えば、フェノール、クレゾール、キシレノール等の芳香族ヒドロキシ化合物とホルムアルデヒド等のアルデヒド類とを酸性触媒の存在下に縮合させたものを使用することができる。
【0053】
感光剤としては、キノンジアジド基含有化合物が使用される。このキノンジアジド基含有化合物としては、例えば、2,3,4−トリヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン等のポリヒドロキシベンゾフェノン、1−[1−(4−ヒドロキシフェニル)イソプロピル]−4−[1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エチル]ベンゼン、1,4−ビス(4−ヒドロキシフェニルイソプロピリデニル)ベンゼン、トリス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)−4−ヒドロキシフェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシ−2,5−ジメチルフェニル)−4−ヒドロキシフェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)−2−ヒドロキシフェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシ−2,5−ジメチルフェニル)−2−ヒドロキシフェニルメタン等の特開平4−29242号公報に記載されたトリス(ヒドロキシフェニル)メタン類又はそのメチル置換体等と、ナフトキノン−1,2−ジアジド−5−スルホン酸又はナフトキノン−1,2−ジアジド−4−スルホン酸と、の完全エステル化物又は部分エステル化物等を挙げることができる。特に、1−[1−(4−ヒドロキシフェニル)イソプロピル]−4−[1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エチル]ベンゼン、1,4−ビス(4−ヒドロキシフェニルイソプロピリデニル)ベンゼン、上述のトリス(ヒドロキシフェニル)メタン類又はそのメチル置換体と、ナフトキノン−1,2−ジアジド−5−スルホン酸又はナフトキノン−1,2−ジアジド−4−スルホン酸と、の完全エステル化物や部分エステル化物は、エキシマレーザーや遠紫外線光の感光剤として好適に使用することができる。また、他のキノンジアジド基含有化合物、例えば、オルトベンゾキノンジアジド、オルトナフトキノンジアジド、オルトアントラキノンジアジド若しくはオルトナフトキノンジアジドスルホン酸エステル類又はこれらの核置換誘導体、オルトキノンジアジドスルホニルクロリド等と、水酸基又はアミノ基を有する化合物、例えば、フェノール、p−メトキシフェノール、ジメチルフェノール、ヒドロキノン、ビスフェノールA、ナフトール、ピロカテコール、ピロガロール、ピロガロールモノメチルエーテル、ピロガロール−1,3−ジメチルエーテル、没食子酸、水酸基を一部残してエステル化又はエーテル化された没食子酸、アニリン、p−アミノジフェニルアミン等と、の反応生成物も感光剤として使用することができる。これらの感光剤は、単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0054】
上記ノボラック型樹脂は、上記感光剤の10質量部当たり、5〜200質量部であることが好ましく、10〜60質量部であることがより好ましい。ノボラック型樹脂の使用量が上記範囲であることにより、ノボラック系レジスト組成物の再現性を良好にすることができる。
【0055】
ノボラック系レジスト組成物には、必要とされる特性に応じて、可塑剤、溶剤等を添加することができる。可塑剤としては、公知の可塑剤を特に制限無く使用することができる。このような可塑剤としては、ポリメチルビニルエーテル等が挙げられる。また、溶剤としては、上記カチオン重合系レジスト組成物で説明したのと同様のものを使用することができる。
【0056】
感光剤として1分子中に2以上のナフトキノンジアジド基を有する化合物を使用すると、形成された樹脂パターンに対して紫外線を照射するアフターキュアを行うことによって、ノボラック型樹脂に含まれる水酸基が感光剤に含まれるナフトキノンジアジド基によって架橋され、樹脂パターンの耐溶剤性を向上させることができるので好ましい。
【0057】
次に、上記(3)の化学増幅系レジスト組成物について説明する。化学増幅系レジスト組成物は、酸解離性の脱離基を有し、当該脱離基が露光により光酸発生剤から発生する酸の作用で脱離することによりアルカリ可溶性が増大する樹脂、及び光酸発生剤を少なくとも含む。つまり、化学増幅系レジスト組成物に含まれる樹脂は、露光前において、アルカリ可溶性を付与する置換基が保護基で保護されているため、アルカリ可溶性が小さいが、露光後において、光酸発生剤から生じた酸の作用によって上記保護基が外れてアルカリ可溶性を付与する置換基が現れ、アルカリ可溶性が大きくなる。このような作用により、上記化学増幅系レジスト組成物は、フォトマスクを通して選択露光された箇所が現像により除去され、樹脂パターンを形成する。
【0058】
光酸発生剤は、紫外線等の活性エネルギー線の照射を受けて酸を発生する化合物であれば特に限定されず、従来、化学増幅型レジスト組成物において酸発生剤として使用されている公知の化合物を用いることができる。このような光酸発生剤としては、例えば、[2−(プロピルスルホニルオキシイミノ)−2,3−ジヒドロチオフェン−3−イリデン](o−トリル)アセトニトリル(IRGACURE PAG103(商品名)、チバスペシャリティケミカルズ社製)、ビス(p−トルエンスルホニル)ジアゾメタン、メチルスルホニル−p−トルエンスルホニルジアゾメタン、1−シクロヘキシルスルホニル−1−(1,1−ジメチルエチルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(1,1−ジメチルエチルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(1−メチルエチルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(シクロヘキシルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(2,4−ジメチルフェニルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(4−エチルフェニルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(3−メチルフェニルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(4−メトキシフェニルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(4−フルオロフェニルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(4−クロロフェニルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(4−tert−ブチルフェニルスルホニル)ジアゾメタン等のビススルホニルジアゾメタン類;2−メチル−2−(p−トルエンスルホニル)プロピオフェノン、2−(シクロヘキシルカルボニル)−2−(p−トルエンスルホニル)プロパン、2−メタンスルホニル−2−メチル−(p−メチルチオ)プロピオフェノン、2,4−ジメチル−2−(p−トルエンスルホニル)ペンタン−3−オン等のスルホニルカルボニルアルカン類;1−p−トルエンスルホニル−1−シクロヘキシルカルボニルジアゾメタン、1−ジアゾ−1−メチルスルホニル−4−フェニル−2−ブタノン、1−シクロヘキシルスルホニル−1−シクロヘキシルカルボニルジアゾメタン、1−ジアゾ−1−シクロヘキシルスルホニル−3,3−ジメチル−2−ブタノン、1−ジアゾ−1−(1,1−ジメチルエチルスルホニル)−3,3−ジメチル−2−ブタノン、1−アセチル−1−(1−メチルエチルスルホニル)ジアゾメタン、1−ジアゾ−1−(p−トルエンスルホニル)−3,3−ジメチル−2−ブタノン、1−ジアゾ−1−ベンゼンスルホニル−3,3−ジメチル−2−ブタノン、1−ジアゾ−1−(p−トルエンスルホニル)−3−メチル−2−ブタノン、2−ジアゾ−2−(p−トルエンスルホニル)酢酸シクロヘキシル、2−ジアゾ−2−ベンゼンスルホニル酢酸−tert−ブチル、2−ジアゾ−2−メタンスルホニル酢酸イソプロピル、2−ジアゾ−2−ベンゼンスルホニル酢酸シクロヘキシル、2−ジアゾ−2−(p−トルエンスルホニル)酢酸−tert−ブチル等のスルホニルカルボニルジアゾメタン類;p−トルエンスルホン酸−2−ニトロベンジル、p−トルエンスルホン酸−2,6−ジニトロベンジル、p−トリフルオロメチルベンゼンスルホン酸−2,4−ジニトロベンジル等のニトロベンジル誘導体;ピロガロールのメタンスルホン酸エステル、ピロガロールのベンゼンスルホン酸エステル、ピロガロールのp−トルエンスルホン酸エステル、ピロガロールのp−メトキシベンゼンスルホン酸エステル、ピロガロールのメシチレンスルホン酸エステル、ピロガロールのベンジルスルホン酸エステル、没食子酸アルキルのメタンスルホン酸エステル、没食子酸アルキルのベンゼンスルホン酸エステル、没食子酸アルキルのp−トルエンスルホン酸エステル、没食子酸アルキルのp−メトキシベンゼンスルホン酸エステル、没食子酸アルキルのメシチレンスルホン酸エステル、没食子酸アルキルのベンジルスルホン酸エステル等のポリヒドロキシ化合物と脂肪族又は芳香族スルホン酸とのエステル類等を挙げることができる。上記没食子酸アルキルにおけるアルキル基は、炭素数1〜15のアルキル基、特にオクチル基及びラウリル基が好ましい。上記光酸発生剤の中でも、特にビススルホニルジアゾメタン類が好ましく、その中でもビス(シクロヘキシルスルホニル)ジアゾメタン及びビス(2,4−ジメチルフェニルスルホニル)ジアゾメタンが好適に使用される。これらの光酸発生剤は、単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0059】
化学増幅系レジスト組成物で使用される樹脂は、光酸発生剤から発生する酸の作用でアルカリ可溶性が増大するものであり、従来、化学増幅型レジスト組成物における樹脂成分として使用されている公知の合成樹脂を使用することができる。このような樹脂としては、例えば、カルボキシル基の一部が保護基により保護されたポリアクリル酸や、水酸基の一部が保護基により保護されたポリヒドロキシスチレンを挙げることができる。この保護基として、例えば、tert−ブトキシカルボニル基、tert−ブチル基、tert−アミルオキシカルボニル基、アルコキシアルキル基、テトラヒドロピラニル基、テトラヒドロフラニル基、1−エチルシクロヘキサン−1−イル基等が例示される。
【0060】
上記化学増幅系レジスト組成物で使用される光酸発生剤の使用量は、上記樹脂との組み合わせに応じて適宜設定すればよいが、上記樹脂の100質量部当たり0.1〜20質量部であることが好ましい。
【0061】
化学増幅系レジスト組成物には、必要に応じて、感度調整剤、溶剤等を添加してもよい。感度調整剤は、光酸発生剤から発生した酸の一部を捕捉するために添加され、レジスト組成物の感度や解像性を良好にするために使用される。このような感度調整剤(クエンチャー)としては、脂肪族アミン、特に第2級脂肪族アミンや第3級脂肪族アミンが例示され、具体例としてはn−ヘキシルアミン、n−ヘプチルアミン、n−オクチルアミン、n−ノニルアミン、n−デシルアミン等のモノアルキルアミン;ジエチルアミン、ジ−n−プロピルアミン、ジ−n−ヘプチルアミン、ジ−n−オクチルアミン、ジシクロヘキシルアミン等のジアルキルアミン;トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリ−n−ブチルアミン、トリ−n−ペンチルアミン、トリ−n−ヘキシルアミン、トリ−n−ヘプチルアミン、トリ−n−オクチルアミン、トリ−n−ノニルアミン、トリ−n−デシルアミン、トリ−n−ドデシルアミン等のトリアルキルアミン;ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン、ジ−n−オクタノールアミン、トリ−n−オクタノールアミン等のアルキルアルコールアミンが挙げられる。溶剤としては、上記カチオン重合系レジスト組成物で説明したものと同様のものを使用することができる。
【0062】
次に、上記(4)のラジカル重合系レジスト組成物について説明する。ラジカル重合系レジスト組成物は、エチレン性の不飽和結合を有するモノマー及び/又は樹脂、並びにラジカル重合開始剤を少なくとも含み、紫外線等の活性エネルギー線の照射によってラジカル重合開始剤がラジカルを発生し、そのラジカルによってエチレン性の不飽和基を有するモノマー及び/又は樹脂が重合して高分子量化し、硬化する組成物である。
【0063】
エチレン性の不飽和結合を有するモノマーや樹脂としては、従来、ラジカル重合系レジスト組成物に使用されている公知のものを使用することができる。ただし、エチレン性の不飽和結合を有するモノマーを使用する場合、当該モノマーの1分子中に含まれるエチレン性の不飽和結合が3個以下であることが必要である。モノマーに含まれるエチレン性の不飽和結合の数が4個以上になると、モノマー分子がかさ高くなり、現像後に残渣を発生し、パターンの再現性がわずかに低下する。通常の用途では、このような残渣の発生に伴うパターン再現性の低下はさほど問題にならない。しかし、本発明で製造される櫛型電極のように、パターンとパターンとの間が近接した微細な構造を有する場合、このような残渣が発生すると、集電体2a及び2bの形状通りにパターンを抜くことが難しくなり、後述するガイド孔7a及び7bの形状が、平面視で、集電体2a及び2bの形状よりも小さくなる。そうすると、集電体2a及び2bの表面に、十分な量の正極活物質層3a及び負極活物質層3bを形成させることができなくなり、電池の容量が十分に得られないことにつながる。このため、本発明では、エチレン性の不飽和結合を有するモノマーを使用する場合、当該モノマーの1分子中に含まれるエチレン性の不飽和結合が3以下のモノマーを使用する。これにより、微細構造である櫛型電極を製造するのに十分なパターンの再現性を得ることができる。
【0064】
エチレン性の不飽和結合を有する樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物の末端グリシジルエーテル、フルオレンエポキシ樹脂等のエポキシ樹脂類と(メタ)アクリル酸との反応物であるエポキシ(メタ)アクリレート;ポリオール類と有機イソシアネート類と水酸基含有エチレン性不飽和化合物類との反応物であるウレタン(メタ)アクリレート;ポリオール類と多塩基酸と(メタ)アクリル酸とのエステル化物であるポリエステル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらは、単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。なお、エチレン性の不飽和結合を有する樹脂は、上記エチレン性の不飽和結合を有するモノマーと異なり、1分子中に4個以上のエチレン性の不飽和結合を有してもよい。
【0065】
エチレン性不飽和結合を有するモノマーは、当該モノマーの1分子中に含まれるエチレン性の不飽和結合が3個以下である。このようなモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリルアミド、メチロール(メタ)アクリルアミド、メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、エトキシメチル(メタ)アクリルアミド、プロポキシメチル(メタ)アクリルアミド、ブトキシメトキシメチル(メタ)アクリルアミド、アクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、無水イタコン酸、シトラコン酸、無水シトラコン酸、クロトン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、tert−ブチルアクリルアミドスルホン酸、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−フェノキシ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピルフタレート、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノ(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、2,2,2−トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3−テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、フタル酸誘導体のハーフ(メタ)アクリレート、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、ビスフェノールA型化合物、ビスフェノールF型化合物若しくはビスフェノールS型化合物に2個の(メタ)アクリロイル基を導入した化合物である2,2−ビス[4−{(メタ)アクリロキシトリエトキシ}フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−{(メタ)アクリロキシペンタエトキシ}フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−{(メタ)アクリロキシデカエトキシ}フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−{(メタ)アクリロキシトリプロポキシ}フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−{(メタ)アクリロキシペンタプロポキシ}フェニル]プロパン、及び2,2−ビス[4−{(メタ)アクリロキシデカプロポキシ}フェニル]プロパン等のビスフェノール(A、F若しくはS)変性ジアクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロキシジエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロキシポリエトキシフェニル)プロパン、2−ヒドロキシ−3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、フタル酸ジグリシジルエステルジ(メタ)アクリレート、グリセリントリアクリレート、メチレンビス(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリルアミドメチレンエーテル、トリアクリルホルマール、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレンポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレンポリトリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピルフタレート、2−(メタ)アクロイルオキシエチル−2−ヒドロキシエチルフタレート、グリシジル基含有化合物にα,β−不飽和カルボン酸を反応させて得られる化合物、ウレタンモノマー、γ−クロロ−β−ヒドロキシプロピル−β’−(メタ)アクリロイルオキシエチル−o−フタレート、β−ヒドロキシエチル−β’−(メタ)アクリロイルオキシエチル−o−フタレート、β−ヒドロキシプロピル−β’−(メタ)アクリロイルオキシエチル−o−フタレート等が例示される。これらは、単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0066】
上記グリシジル基含有化合物にα,β−不飽和カルボン酸を反応させて得られる化合物としては、例えば、トリグリセロールジ(メタ)アクリレート等を挙げることができるが、この例示に限定されるものではない。
【0067】
上記ウレタンモノマーとしては、例えば、β位にOH基を有する(メタ)アクリルモノマーとイソホロンジイソシアネート、2,6−トルエンジイソシアネート、2,4−トルエンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート等との付加反応物、EO変性ウレタンジ(メタ)アクリレート、EO、PO変性ウレタンジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0068】
ラジカル重合開始剤としては、従来、ラジカル重合系レジスト組成物に使用されている公知のものを使用することができる。このようなラジカル重合開始剤としては、例えば、2,4−ジエチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2−クロルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン等のチオキサントン誘導体;ベンゾフェノン、N,N’−テトラメチル−4,4’−ジアミノベンゾフェノン、N,N’−テトラエチル−4,4’−ジアミノベンゾフェノン、4−メトキシ−4’−ジメチルアミノベンゾフェノン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン−1,2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフホリノ−プロパノン−1等の芳香族ケトン;2−エチルアントラキノン、フェナントレンキノン、2−tert−ブチルアントラキノン、オクタメチルアントラキノン、1,2−ベンズアントラキノン、2,3−ベンズアントラキノン、2−フェニルアントラキノン、2,3−ジフェニルアントラキノン、1−クロロアントラキノン、2−メチルアントラキノン、1,4−ナフトキノン、9,10−フェナンタラキノン、2−メチル1,4−ナフトキノン、2,3−ジメチルアントラキノン等のキノン類;ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインフェニルエーテル等のベンゾインエーテル化合物;ベンゾイン、メチルベンゾイン、エチルベンゾイン等のベンゾイン化合物;ベンジルジメチルケタール等のベンジル誘導体;2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジ(メトキシフェニル)イミダゾール二量体、2−(o−フルオロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2−(o−メトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2−(p−メトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2,4,5−トリアリールイミダゾール二量体等の2,4,5−トリアリールイミダゾール二量体;9−フェニルアクリジン、1,7−ビス(9,9’−アクリジニル)ヘプタン等のアクリジン誘導体;エタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾル−3−イル]−,1−(O−アセチルオキシム)等のオキシムエステル類;N−フェニルグリシン;並びにクマリン系化合物等を挙げることができる。ラジカル重合開始剤は、単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0069】
上記ラジカル重合開始剤の使用量は、上記エチレン性の不飽和基を有するモノマー及び/又は樹脂の100質量部に対して、1〜10質量部が好ましく、1〜5質量部がより好ましい。ラジカル重合開始剤の使用量が上記の範囲であることにより、ラジカル重合系レジスト組成物に良好な硬化性を付与することができ、ラジカル重合開始剤の過剰な添加によるコストの上昇を抑制することできる。
【0070】
ラジカル重合系レジスト組成物には、必要に応じて、エチレン性の不飽和結合を持たない樹脂成分、シランカップリング剤、重合禁止剤、溶剤等を添加してもよい。エチレン性の不飽和結合を持たない樹脂成分は、現像性向上のために添加され、一例として、側鎖のカルボキシル基がアルコール類でエステル化されてもよい(メタ)アクリル樹脂が例示される。
【0071】
シランカップリング剤は、レジスト層6から形成された樹脂パターンと基材4との間の密着性を付与するために使用される。シランカップリング剤としては、公知のものを特に制限なく使用することができるが、シランカップリング剤の分子を樹脂パターンの分子内に取り込むことにより、樹脂パターンと基材4との間の密着性をより強固にするとの観点からは、エチレン性の不飽和結合を有するシランカップリング剤を使用することが好ましい。このようなシランカップリング剤としては、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン等が例示される。シランカップリング剤の添加量としては、ラジカル重合系レジスト組成物の固形分量比で1〜10質量%が例示される。
【0072】
重合禁止剤は、露光時のハレーション現象を抑制するために添加される。重合禁止剤としては、公知のものを特に制限なく使用することができる。このような重合禁止剤としては、1,5−ジヒドロキシナフタレン、1,4−ジヒドロキシナフタレン、2,3−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、1,3−ジヒドロキシナフタレン、1,8−ジヒドロキシナフタレン等が例示される。重合禁止剤の添加量としては、ラジカル重合系レジスト組成物の固形分量比で0.1〜5質量%が例示される。溶剤としては、上記カチオン重合系レジスト組成物で説明したものと同様のものを使用することができる。
【0073】
[ガイド孔形成工程]
次に、ガイド孔形成工程について説明する。ガイド孔形成工程は、上記レジスト塗布工程の後に行われる工程であり、図2(h)で示される工程である。なお、図2(h)では、図面の見易さを考慮して、ガイド孔7aの底部に存在する集電体2aを省略した。
本実施態様では、この工程において、上記レジスト塗布工程で形成されたレジスト層6に、櫛型形状である集電体2a及び2bと平面視で同一形状となる形状のガイド孔7a及び7bを形成させる。ガイド孔7a及び7bは、集電体2a及び2bの表面までレジスト層6を貫通する貫通孔として形成される。ガイド孔7a及び7bは、後に説明する活物質層形成工程において、正極又は負極活物質を堆積させるための鋳型として使用される。
【0074】
本実施態様では、この工程において、まず、集電体2a及び2bと平面視で同一形状となるマスクを介して、上記レジスト塗布工程で形成されたレジスト層6を選択露光させる。これにより、レジスト層6がネガ型のレジストで形成されている場合には、将来ガイド孔7a及び7bとならない箇所が硬化して現像液に不溶となり、将来ガイド孔7a及び7bとなる部分は現像液に対して可溶のままとなる。また、レジスト層6がポジ型のレジストで形成されている場合には、将来ガイド孔7a及び7bとなる部分が現像液に対して可溶となり、将来ガイド孔7a及び7bとならない箇所が現像液に対して不溶のままとなる。
【0075】
選択露光を受けたレジスト層6は、現像される。現像は、公知の現像液を使用し、公知の方法により行うことができる。このような現像液としては、例えば、アルカリ性の水溶液が例示される。また、現像方法としては、浸漬法、スプレー法等が例示される。
【0076】
現像されたレジスト層6には、櫛型形状である集電体2a及び2bと平面視で同形状、かつ集電体2a及び2bの表面まで貫通するガイド孔7a及び7bが形成される。ガイド孔7a及び7bが形成されたレジスト層6は、必要に応じて、紫外線等の活性エネルギー線を照射するアフターキュアや、追加の熱処理であるポストベークが施される。レジスト層6は、アフターキュアやポストベークが施されることにより、後述の活物質層形成工程で必要とされる溶剤耐性やめっき液耐性がさらに向上する。
【0077】
[活物質層形成工程]
次に、活物質層形成工程について説明する。活物質層形成工程は、上記ガイド孔形成工程の後に行われる工程であり、図2(i)で示される工程である。
この工程では、上記ガイド孔形成工程で形成されたガイド孔7a及び7bを鋳型として、集電体2aの表面に正極活物質層3aを、集電体2bの表面に負極活物質層3bをそれぞれ形成させる。これにより、櫛型電極1a及び1bが完成する。
【0078】
ガイド孔7a及び7bを鋳型として、集電体2a及び2bの表面に活物質層3a及び3bを形成させる方法としては、電気泳動法やめっき法が挙げられる。以下、これらの方法を説明する。
【0079】
電気泳動法は、正極又は負極活物質の粒子を分散させた極性溶剤に、ガイド孔7a及び7bが形成された基材4を浸し、集電体2a又は2bのいずれか一方に電圧を印加することによって、溶剤に分散させた正極又は負極活物質の粒子を、電圧が印加された集電体の表面に対して選択的に堆積させる方法である。これにより、ガイド孔7a又は7bを鋳型として、集電体2a又は2bの任意の一方に活物質層3a又は3bを堆積させることができる。
【0080】
溶剤に分散させる活物質としては、粒径100〜10000nm、好ましくは100〜1000nmの、LiCoO、LiFePO、LiMn等の正極活物質粒子や、黒鉛、LiTi12、Sn合金、Si系化合物等の負極活物質粒子が例示される。また、溶剤に分散させる活物質の量としては、1〜50g/Lが例示され、使用される溶剤としては、アセトニトリル、N−メチルピロリドン、アセトン、エタノール、水が例示される。さらに、溶剤には、カーボンブラック、ポリフッ化ビニリデン、ヨウ素等の導電助剤や結着剤を添加してもよい。溶剤中の導電助剤や結着剤の量としては、それぞれ0.1〜1g/Lが例示される。
【0081】
そして、電気泳動を行う際には、集電体2a又は2bの1cm程度上方に、ニッケルや金等の基板を対向電極として用いて電気泳動を行うことができる。その際の電圧は1〜1000Vが例示される。電場密度としては、集電体2aと2bとの間、あるいは集電体2a又は2bと、集電体2a又は2bに対向する電極との間に、1〜1000V/cmの印加が例示される。
【0082】
めっき法は、水溶性のめっき液を使用して、集電体2a又は2bの表面に活物質層3a又は3bを形成させる方法である。このようなめっき液としては、SnCl・2HOの0.01〜0.3M水溶液、SnCl・2HOとNiCl・6HOの混合0.01〜0.3M水溶液、SnCl・2HOとSbClの混合0.01〜0.3M水溶液、SnCl・2HOとCoClの混合0.01〜0.3M水溶液、SnCl・2HOとCuSOの混合0.01〜0.3M水溶液が例示される。また、めっき液には、添加剤として、グリシン、K、NHOH水溶液等を例えば0.01〜0.5Mの濃度で添加してもよい。
【0083】
特に限定されないが、上記電気泳動法により一方の集電体2a又は2bに対して選択的に活物質層3a又は3bを形成させた後に、上記めっき法を行うことにより、活物質層3a又は3bの形成されていない他方の集電体2b又は2aに対して選択的に活物質層3b又は3aを形成させることができる。このようにして、集電体2aの表面に正極活物質層3aを、集電体2bの表面に負極活物質層3bをそれぞれ選択的に形成させることができる。
【0084】
また、集電体2a又は2bの表面に活物質層3a又は3bを形成させるにあたり、上記電気泳動法やめっき法の他にも、上記正極活物質粒子又は負極活物質粒子を上記溶剤に分散させた溶液を、キャピラリーを用いてガイド孔7a又は7bに注入させるインジェクション法も適用可能である。
【0085】
以上のように、レジスト層6に形成されたガイド孔7a及び7bを鋳型として、正極活物質層3a及び3bが電気泳動法やめっき法によって形成される。このため、活物質層形成工程におけるレジスト層6には、電気泳動法で使用される溶剤やめっき法で使用されるめっき液に対して耐性を備えることが好ましい。この点、上記(1)〜(4)で挙げた各レジスト組成部の中でも、めっき液に対する耐性を付与するとの観点からは、(1)のカチオン重合系レジスト組成物、(2)ノボラック系レジスト組成物又は(3)化学増幅系レジスト組成物が好ましい。そして、これら(1)〜(3)のレジスト組成物の中でも、上記電気泳動法で使用される溶剤に対する耐性を付与するとの観点からは、(1)のカチオン重合系レジスト組成物がより好ましい。
【0086】
集電体2a及び2bの表面にそれぞれ正極活物質層3a及び3bを形成させた後、ガイド孔7a及び7bの形成されたレジスト層6は除去される。これにより、図1に示す櫛型電極1a及び1bが形成される。レジスト層6を除去する方法としては、高温で加熱することによりレジスト層6を分解させるアッシング法、エッチング法が挙げられる。
【0087】
次に、本発明の櫛型電極の製造方法の第二実施態様について、図面を参照しながら説明する。図3及び図4は、本発明の櫛型電極の製造方法の第二実施態様で製造される櫛型電極を模式的に示す平面図である。なお、本実施態様の説明において、上記第一実施態様と同様の構成には同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0088】
本実施態様で形成される櫛型電極11a及び11bでは、正極活物質層13a及び13bが複数の多角形形状の島構造として櫛型の集電体2a及び2bの表面に形成される。
【0089】
複数の多角形形状の島構造として形成される正極活物質層13aは、櫛型の集電体2aの一本一本の歯に沿って設けられる。このとき、それぞれの正極活物質層13aは、その一部分が集電体2aに接するように設けられる。これにより、正極活物質層13aの電極反応によって生じた電流が集電体2aによって取り出される。
【0090】
複数の多角形形状の島構造として形成される負極活物質層13bは、櫛型の集電体2bの一本一本の歯に沿って設けられる。このとき、それぞれの負極活物質層13bは、その一部分が集電体2bに接するように設けられる。これにより、負極活物質層13bの電極反応によって生じた電流が集電体2bによって取り出される。
【0091】
それぞれの正極活物質層13a及び負極活物質層13bは、櫛型形状の歯の部分で互い違いに組み合うように対向配置された集電体2a及び2bの表面に沿って形成される。したがって、それぞれの正極活物質層13a及びそれぞれの負極活物質層13bは、櫛型形状の歯の部分で互い違いに組み合うように対向配置されることになり、全体としては、正極11a及び負極11bが櫛型形状の歯の部分で互い違いに組み合うように対向配置されることになる。そのため、このような櫛型電極を形成させる本実施態様もまた、本発明の一つである。このような正極11a及び負極11bを形成させる手順は、先に説明した第1実施態様と同様であるので、ここでの説明を省略する。また、正極活物質層13a及び負極活物質層13bを構成する材質についても、先に説明した第1実施態様における正極活物質層3a及び負極活物質層3bと同様であるので、ここでの説明を省略する。
【0092】
正極活物質層13a及び負極活物質層13bの平面形状は、特に限定されず、図3及び4に示すように多角形であってもよいし、丸型等であってもよい。正極活物質層13a及び負極活物質層13bの平面形状が多角形である場合、このような多角形としては、正三角形、正方形、正五角形、正六角形等が例示されるが、中でも正六角形が好ましい。正極活物質層13a及び負極活物質層13bの平面形状が正六角形であることにより、正極活物質層13aと負極活物質層を13bとを、その間隔がほぼ等間隔になるように整然と配置することが可能となり、これらの活物質層間におけるリチウムイオン等といった電荷物質の移動距離を短くすることができる。これにより、二次電池から得られる電流を大きくすることが可能である。また、負極活物質層13bがカーボン以外の材質で形成されている場合は、充放電に伴うリチウムイオン等の電荷物質の出入りに伴って負極活物質層13bが大きな体積変化を生じ、この体積変化によって負極活物質層13bにクラックが発生する場合があるが、上記のような形状をとることにより、体積変化に伴う負極活物質層13bへのクラックの発生を抑制することができる。なお、負極活物質層13bがカーボンやLiTi12等のような体積変化の小さな材質で形成されている場合であっても、これらの材質が充放電に伴う体積変化を生じることには変わりはないので、本発明に係る櫛型電極では従来使用されてきた電極よりもクラックの発生が抑制されることになり、本発明の効果を得ることができる。
【0093】
ところで、一つ一つの負極活物質層13bにおけるリチウムイオン等の電荷物質の蓄積量は、負極活物質層13bを構成する材質によって変化する。このため、正極活物質層13aを構成させる材質に基づく理論容量と、負極活物質層13bを構成させる材質に基づく理論容量とを考慮して、正極11aに含まれる正極活物質層13aと負極11bに含まれる負極活物質層13bとの質量比(以下、「正極/負極比率」とも呼ぶ。)を適宜決定し、両者の容量バランスを調節することが好ましい。
【0094】
このような質量比の決定について、正極活物質層13aをLiCoOで形成させる場合を例として説明する。LiCoOの正極理論容量は、140mAh/gである。
【0095】
上記の例において、負極活物質層13bをカーボン(負極理論容量360mAh/g)で構成させる場合には正極/負極比率は1:1程度が好ましく、負極活物質層13bを合金系材料(Sn系、負極理論容量800〜900mAh/g)で構成させる場合には正極/負極比率は2:1〜3:1程度が好ましく、負極活物質層13bをシリコン系材料(SiC、SiO等、負極理論容量2000mAh/g)で構成させる場合は正極/負極比率は4:1〜5:1程度が好ましい。
【0096】
正極/負極比率を調節する方法としては、特に限定されないが、一例として、正負一方の活物質層の一個当たりの質量を大きくし、他方の活物質層の一個当たりの質量を小さくする方法や、正負一方の活物質層の個数を他方の活物質層の個数よりも多くする方法が挙げられる。
【0097】
図3及び4では、正極/負極比率を調節するために、正極活物質層13aの個数を負極活物質層13bの個数よりも多くした状態を示している。図3では、正極活物質層13a及び負極活物質層13bの個数を正極活物質層13a:負極活物質層13b=2:1となるように調節している。この場合、図3にて破線で囲まれた範囲に含まれる2個の正極活物質層13aと1個の負極活物質層13bとが1組となって、1個の電池単位を構成する。図4では、正極活物質層13a及び負極活物質層13bの個数を正極活物質層13a:負極活物質層13b=4:1となるように調節している。この場合、図4にて破線で囲まれた範囲に含まれる4個の正極活物質層13aと1個の負極活物質層13bとが1組となって、1個の電池単位を構成する。
【0098】
1個当たりの正極活物質層13a又は負極活物質層13bの大きさは、特に限定されないが、活物質層へのクラックの発生を抑制するとの観点からは、最大径が、80〜120μm程度であることが好ましく、100μm程度であることが最も好ましい。また、個々の正極活物質層13a及び負極活物質層13bの設置間隔は、特に限定されないが、10〜50μm程度であることが好ましく、20μm程度であることが最も好ましい。なお、ここでいう設置間隔とは、隣接する関係となる正極活物質層13a及び負極活物質層13bの間の距離である。
【0099】
櫛型電極に含まれる電池単位の個数は、櫛型電極の設置面積や、必要とされる電池容量を考慮して適宜設定すればよい。このような一例としては、峰と歯とからなる櫛型形状の峰方向に1電池単位以上又は10電池単位以上並べることが挙げられ、櫛型形状の歯方向に1電池単位以上又は10電池単位以上並べることが挙げられるが、特に限定されない。
【0100】
本実施態様で作製される櫛型電極の具体的な寸法の一例を図5に示す。図5は、本発明の櫛型電極の製造方法の第二実施態様で製造される櫛型電極を模式的に示す平面図である。図5に示す櫛型電極では、簡略化により理解を容易するために、4個の正極活物質層13aと1個の負極活物質層13bとからなる1個の電池単位のみからなる構造とした。本実施態様では、上述のガイド孔形成工程及び活物質層形成工程を備えることにより、図5に示すような微細な櫛形電極を有する二次電池であっても再現性良く作製することができる。
【0101】
本願発明によれば、櫛型形状といった微細な構造を有し、かつ表面に活物質層の形成された電極を再現性良く形成させることができる。このような電極は、微小なサイズで形成させることができるので、例えば、マイクロマシーン等における組み込み型の二次電池用途として好適に使用される。
【実施例】
【0102】
以下、実施例を示して本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例に何ら限定されるものではない。
【0103】
[実施例1]
クレゾール型ノボラック樹脂(m−クレゾール:p−クレゾール=6:4(質量比)、質量平均分子量20000)48質量部と、p−ヒドロキシスチレン及びスチレンの共重合体(ヒドロキシスチレン:スチレン=85:15(質量比)、質量平均分子量2500)12質量部と、アクリル酸1−エチルシクロヘキシル、ブチルアクリレート、アクリル酸及び2−メトキシエチルアクリレートの共重合体(組成比10:2:1:8(質量比)、質量平均分子量250000)40質量%と、光酸発生剤として、[2−(プロピルスルホニルオキシイミノ)−2,3−ジヒドロチオフェン−3−イリデン](o−トリル)アセトニトリル(IRGACURE PAG103(商品名)、チバスペシャリティケミカルズ社製)1質量部と、トリエタノールアミン0.1質量部とに対して、溶剤としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)を固形分濃度が40質量%になるように添加してから、混合して溶解させ、実施例1のレジスト組成物とした。実施例1のレジスト組成物は、化学増幅系であり、ポジ型である。
【0104】
[実施例2]
クレゾール型ノボラック樹脂(m−クレゾール:p−クレゾール=6:4(質量比)、質量平均分子量30000)70質量部と、感光剤として1,4−ビス(4−ヒドロキシフェニルイソプロピリデニル)ベンゼンのナフトキノン−1,2−ジアジド−5−スルホン酸ジエステル15質量部と、可塑剤としてポリメチルビニルエーテル(質量平均分子量100000)15質量部とに対して、溶剤としてPGMEAを固形分濃度が40質量%になるように添加してから、混合して溶解させ、実施例2のレジスト組成物とした。実施例2のレジスト組成物は、ノボラック系であり、ポジ型である。
【0105】
[実施例3]
8官能ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン株式会社製、製品名jER157S70)100質量部と、カチオン重合開始剤として4−(2−クロロ−4−ベンゾイルフェニルチオ)フェニルビス(4−フルオロフェニル)スルホニウムヘキサフルオロアンチモネート(株式会社ADEKA製、SP−172)3質量部と、増感剤として1−ナフトール1質量部と、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン5質量部とに対して、溶剤としてPGMEAを固形分濃度が70質量になるように添加してから、混合して溶解させ、実施例3のレジスト組成物とした。実施例3のレジスト組成物は、カチオン重合系であり、ネガ型である。
【0106】
[実施例4]
樹脂固形分に換算して100質量部のベンジルメタクリレート:メタクリル酸の質量比が80:20の共重合体(質量平均分子量80000、50質量%メチルエチルケトン溶液)と、二官能性モノマーとしてエトキシ化ビスフェノールAジメタクリレート(新中村化学工業株式会社製、製品名BPE500)と、ラジカル重合開始剤として2,4−ジエチルチオキサントン(日本化薬株式会社製、製品名DETX−S)3.5質量部と、を混合して溶解させ、実施例4のレジスト組成物とした。実施例4のレジスト組成物は、ラジカル重合系であり、ネガ型である。
【0107】
[比較例1]
3,4−エポキシシクロヘキシルメチルメタクリレート:スチレン:3−トリメトキシシリルプロピルメタクリレート=60:35:5(質量比)の共重合体(質量平均分子量45000)40質量部と、ラジカル重合開始剤(チバスペシャリティケミカルズ社製、製品名CGI−242)2質量部と、3−メタクリロキキシプロピルトリメトキシシラン10質量部と、6官能モノマーとしてジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(製品名:DPHA、ダイセルサイテック社製)50質量部と、重合禁止剤として1,5−ジヒドロキシナフタレンを0.8質量部とに対して、溶剤としてPGMEAを固形分濃度が50質量%になるように添加してから、混合して溶解させ、比較例1のレジスト組成物とした。比較例1のレジスト組成物は、ラジカル重合系であり、ネガ型である。
【0108】
<評価用試験片の作成>
[試験例1]
5インチのシリコンウェーハの表面にスパッタ法によって厚さ500nmの銅の層を形成させた。その後、形成させた銅の層の表面に実施例1のレジスト組成物を塗布し、レジスト組成物に含まれていた溶剤を蒸発させ、厚さ20μmのレジスト層を形成させた。このレジスト層にマスクを通して、紫外線(ghi混合線、300mJ/cm)を照射し、次いでアルカリ現像液で現像し、純水で洗浄した。これを試験例1の試験片とした。
【0109】
[試験例2]
5インチのシリコンウェーハの表面にスパッタ法によって厚さ500nmの銅の層を形成させた。その後、形成させた銅の層の表面に実施例2のレジスト組成物を塗布し、レジスト組成物に含まれていた溶剤を蒸発させ、厚さ20μmのレジスト層を形成させた。このレジスト層にマスクを通して、紫外線(ghi混合線、3000mJ/cm)を照射し、次いでアルカリ現像液で現像し、純水で洗浄した。これを試験例2の試験片とした。
【0110】
[試験例3]
5インチのシリコンウェーハの表面にスパッタ法によって厚さ500nmの銅の層を形成させた。その後、形成させた銅の層の表面に実施例2のレジスト組成物を塗布し、レジスト組成物に含まれていた溶剤を蒸発させ、厚さ20μmのレジスト層を形成させた。このレジスト層にマスクを通して、紫外線(ghi混合線、3000mJ/cm)を照射し、次いでアルカリ現像液で現像し、純水で洗浄した。その後、得られた樹脂パターンにアフターキュアとして、紫外線(ghi混合線)を10分間照射した。これを試験例3の試験片とした。
【0111】
[試験例4]
5インチのシリコンウェーハの表面にスパッタ法によって厚さ500nmの銅の層を形成させた。その後、形成させた銅の層の表面に実施例3のレジスト組成物を塗布し、レジスト組成物に含まれていた溶剤を蒸発させ、厚さ20μmのレジスト層を形成させた。このレジスト層にマスクを通して、紫外線(ghi混合線、300mJ/cm)を照射し、次いでアルカリ現像液で現像し、純水で洗浄した。これを試験例4の試験片とした。
【0112】
[試験例5]
5インチのシリコンウェーハの表面にスパッタ法によって厚さ500nmの銅の層を形成させた。その後、形成させた銅の層の表面に実施例4のレジスト組成物を塗布し、レジスト組成物に含まれていた溶剤を蒸発させ、厚さ20μmのレジスト層を形成させた。このレジスト層にマスクを通して、紫外線(ghi混合線、300mJ/cm)を照射し、次いでアルカリ現像液で現像し、純水で洗浄した。これを試験例5の試験片とした。
【0113】
[比較試験例1]
5インチのシリコンウェーハの表面にスパッタ法によって厚さ500nmの銅の層を形成させた。その後、形成させた銅の層の表面に比較例1のレジスト組成物を塗布し、レジスト組成物に含まれていた溶剤を蒸発させ、厚さ20μmのレジスト層を形成させた。このレジスト層にマスクを通して、紫外線(ghi混合線、300mJ/cm)を照射し、次いでアルカリ現像液で現像し、純水で洗浄した。これを比較試験例1の試験片とした。
【0114】
<パターニング性評価>
試験例1〜5及び比較試験例1の試験片のそれぞれについて、形成された樹脂パターンを顕微鏡で観察し、残渣の有無を調べた。そして、観察の結果、残渣の無いものをパターニング性良好(○)とし、残渣の存在するものをパターニング性不良(×)として評価した。その結果を表1に示す。
【0115】
<めっき液耐性>
めっき液(EEJA社製、Microfab Au100)を用意し、試験例1〜5及び比較試験例1の試験片のそれぞれについて、用意しためっき液に60℃で30分間浸漬した。その後、試験片の表面の樹脂パターンを顕微鏡で観察し、めっき液への浸漬による樹脂パターンのクラックの発生の有無を調べた。評価は、クラックの発生の無いものをめっき液耐性良好(○)とし、クラックの発生の有るものをめっき液耐性不良(×)とした。その結果を表1に示す。
【0116】
<溶剤耐性>
評価溶剤として、純水、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール(IPA)、プロピレングリコール(PG)、ジブチルエーテル(DBE)、アセトニトリル、トルエン及びm−キシレンを用意した。これらの評価溶剤のそれぞれを使用して、以下の方法で溶剤耐性評価を行った。なお、試験例5及び比較試験例1については、先のめっき液耐性試験が良好でなかったため、溶剤耐性試験を行わなかった。
1)試験例1〜4のそれぞれについて、室温にて、形成させた樹脂パターンの表面に評価溶剤をスポイトで1〜2滴滴下した。
2)純水及びプロピレングリコール以外の溶剤は、滴下後、自然乾燥にて溶剤を除去した。プロピレングリコールは、滴下してから5分後に純水で洗浄し、窒素ブローにより風乾した。純水は、滴下してから5分後に窒素ブローにより風乾した。
3)溶剤を除去した後の樹脂パターンの表面を金属顕微鏡にて観察し、樹脂パターンの膜べりが観察されないものを溶剤耐性良好(○)とし、樹脂パターンの膜べりが観察されたものを溶剤耐性不良(×)とした。その結果を表1に示す。
【0117】
【表1】

【0118】
表1に示すように、カチオン重合系レジスト組成物(試験例4)、ノボラック系レジスト組成物(試験例2及び3)、化学増幅系レジスト組成物(試験例1)又は3官能以下のモノマーを使用したラジカル重合系レジスト組成物(試験例5)は、パターニング性が良好であり、本発明のように微細な構造を有する電極の作製において好適に使用できることが理解される。これに対して、3官能を超えるモノマーを使用したラジカル重合系レジスト組成物(比較試験例1)は、パターニング性が不良であり、本発明のように微細な構造を有する電極の作製には好ましくないことが理解される。
【0119】
また、表1に示すように、カチオン重合系レジスト組成物(試験例4)、ノボラック系レジスト組成物(試験例2及び3)又は化学増幅系レジスト組成物(試験例1)は、めっき液耐性を有することから、めっきによって活物質層を形成するのに好ましいことが理解される。さらに、これらのレジスト組成物の中でも、カチオン重合系レジスト組成物(試験例4)は、優れた溶剤耐性を示すことから、電気泳動法によって活物質層を形成するのに好ましいことが理解される。
【0120】
<櫛型電極の作製>
試験例3及び4でめっき液耐性及び溶剤耐性が良好だったので、これらの試験例で使用した実施例2又は3のレジスト組成物を使用して櫛型電極を作製した。なお、この櫛型電極は、上述した本発明の櫛型電極の製造方法の第一実施態様によるものとした。
まず、5インチのシリコンウェーハの表面にスパッタ法によりチタン及び金の膜をそれぞれ50及び100nm順次形成させた。次に、形成させた金の膜の表面にレジスト組成物(東京応化工業株式会社製、製品名TFR−940PM)をスピンコート法(1580rpm、25秒間)により塗布し、120℃で60秒間プリベークした。次いで、櫛型形状における歯の本数100対(片方の櫛型電極に含まれる歯の本数が100本)、パターン太さ20μm、スペースギャップ10nmである一対の櫛型形状が対向して形成されたマスクを使用して、レジスト組成物を選択露光(ghi混合線、露光量600mJ/cm、ハードコンタクト)し、アルカリ現像液で現像し、得られた樹脂パターンを130℃で180秒間ポストベークした。次いで、パターンの形成されたシリコンウェーハを、KI/I水溶液(水:KI:I=40:4:1(質量比))に浸漬して、上記で形成させた金の膜のうち表面が露出した部分をエッチングし、イオン交換水で洗浄し、さらに、フッ化水素水溶液(0.2質量%)に浸漬して、金の膜が除去されて露出したチタンの膜をエッチングし、イオン交換水で洗浄した。その後、シリコンウェーハをアセトンに浸漬して、樹脂パターンを剥離することによって、シリコンウェーハの表面に1対の櫛型形状の集電体を形成した。このようなシリコンウェーハを2枚作製した。
【0121】
[実施例2のレジスト組成物によるガイド孔の作製]
櫛型の集電体が形成されたシリコンウェーハのうちの1枚を使用して、実施例2のレジスト組成物によるガイド孔を作製した。まず、集電体の形成されたシリコンウェーハの表面に、実施例2のレジスト組成物をスピンコート法により塗布し、30μmのレジスト層を形成させ、120℃にて6分間プリベークした。そして、形成された櫛型の集電体と平面視で同一形状となるポジマスクを使用して、櫛型の集電体の上部に位置するレジスト層に露光(ghi混合線、3000mJ/cm、ハードコンタクト)した。次いで、アルカリ現像液で現像し、アフターキュアとして形成されたパターンに紫外線(ghi混合線)を10分間照射した。これにより、シリコンウェーハの表面に、1対の櫛型形状のガイド孔を形成させた。なお、ガイド孔の底部には、櫛型形状の集電体が露出していた。
【0122】
[実施例3のレジスト組成物によるガイド孔の作製]
レジスト組成物として実施例3のレジスト組成物を使用したこと以外は、上記実施例2のレジスト組成物の場合と同様に、シリコンウェーハの表面に、1対の櫛型形状のガイド孔を作製した。
【0123】
[活物質層の堆積]
上記実施例2又は3のレジスト組成物によるガイド孔が形成されたシリコンウェーハのそれぞれについて、一対の櫛型集電体における一方の集電体表面に電気泳動法による正極活物質層を堆積させた後、他方の集電体表面にめっき法による負極活物質層を形成させた。
電気泳動法による正極活物質層の堆積を、LiCoO粒子を10g/Lの濃度で分散させ、かつ導電助剤としてカーボンブラック(ケッチェンブラック)を0.6g/L、結着剤としてポリフッ化ビニリデンを0.4g/L、ヨウ素を0.2g/Lの濃度で含むアセトンにシリコンウェーハを浸漬し、櫛型形状の集電体の一方とそれに対向する集電体との間に電圧を印加し行った。集電体間の電場強度が100V/cmとなる電圧を1秒間印加する操作を5回繰り返すことによって行った。次いで、めっき法による負極活物質層の形成を、SnCl・2HOを0.175M、NiCl・6HOを0.075M、グリシンを0.125M、Kを0.50M含む水溶液に28%のアンモニア水を1vol%添加したメッキ浴を用いて電解めっきにより行った。
【0124】
実施例2又は3のレジスト組成物を使用して活物質層を形成させた櫛型電極のそれぞれについて、顕微鏡で活物質層の形成状況の観察を行った。その結果、実施例3のレジスト組成物(カチオン重合系レジスト組成物)を使用した方は、ガイド孔の形状が維持され、そのガイド孔の内部に活物質層が精度良く多量に形成されているのを確認することができた。一方、実施例2のレジスト組成物(ノボラック系レジスト組成物)を使用した方は、電気泳動の際に使用した溶剤による膨潤でガイド孔の一部が変形し、活物質層が精度良く形成されていなかった。このことから、微細な構造を有する櫛型電極の製造方法において、ガイド孔を形成するためのレジスト組成物として、カチオン重合系のレジスト組成物が好適であると理解される。
【符号の説明】
【0125】
1a、1b 櫛型電極
2 導電層
2a、2b 集電体
3a、3b 活物質層
4 基材
6 レジスト層
7a、7b ガイド孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極及び負極がそれぞれ櫛型形状として形成され、前記正極及び負極が櫛型形状の歯の部分で互い違いに組み合うように対向配置された櫛型電極の製造方法であって、
基材の表面に導電層を形成させ、当該導電層を少なくとも一対の櫛型形状にパターニングして集電体を形成させる集電体形成工程と、
集電体形成工程で形成された集電体部分を含む前記基材の表面に、レジスト組成物を塗布してレジスト層を形成させるレジスト塗布工程と、
前記レジスト層の表面にマスクを通して光を照射し現像することにより、前記レジスト層のうち前記集電体の上部に位置する部分を除去して、前記集電体の上方に、正極又は負極を形成させるためのガイド孔を形成させるガイド孔形成工程と、を有し、
前記レジスト組成物が、下記(1)〜(4)のレジスト組成物のいずれかであることを特徴とする櫛型電極の製造方法。
(1)エポキシ基を有する化合物及びカチオン重合開始剤を含むカチオン重合系レジスト組成物
(2)ノボラック樹脂及び感光剤を含むノボラック系レジスト組成物
(3)酸解離性の脱離基を有し、当該脱離基が露光により光酸発生剤から発生する酸の作用で脱離することによりアルカリ可溶性が増大する樹脂、及び光酸発生剤を含む化学増幅系レジスト組成物
(4)エチレン性の不飽和結合を有するモノマー及び/又は樹脂、並びにラジカル重合開始剤を含み、エチレン性の不飽和結合を有するモノマーを含む場合には、当該モノマーの1分子中に含まれるエチレン性の不飽和結合が3個以下であるラジカル重合系レジスト組成物
【請求項2】
前記レジスト組成物が、上記(1)〜(3)のいずれかである請求項1記載の櫛型電極の製造方法。
【請求項3】
前記レジスト組成物が、上記(1)である請求項1記載の櫛型電極の形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−238589(P2011−238589A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−28228(P2011−28228)
【出願日】平成23年2月14日(2011.2.14)
【出願人】(000220239)東京応化工業株式会社 (1,407)
【出願人】(305027401)公立大学法人首都大学東京 (385)
【Fターム(参考)】