説明

欠陥モニタリング装置

【課題】
電位差法を用いて欠陥の進展,発生をモニタリングする小型の装置を提供する。
従来技術では、電位差を測定するための端子や電流を供給する端子を被測定物へ接続する手段が複雑かつ大型であるため、被測定物が狭隘部または被覆材で覆われている場合には適用が困難であった。
【解決手段】
電位測定用の端子,電流供給用の端子をフィルム状の基盤にプリントすることにより、被測定物が狭隘部や被覆材に覆われている場合にも本技術の適用が可能になる。また、そのフィルムを可塑性の耐熱性高分子材料を用いることにより、被測定物が高温に曝される場合も本技術の適用が可能である。
【効果】
進展,発生,電位測定用の端子,電流供給用の端子をフィルム状の基盤にプリントすることにより、装置の構造を大幅に小型化し、適用対象部が拡大される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
欠陥を有する、または欠陥の発生が予測される構造物の欠陥の進展,発生の状態をモニタリングする技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の技術として電位差法で欠陥をモニタリングする技術に関し、例えば、特許文献1に示されているように電位差を計測するための端子や電流供給機器をボックス状の構造物に配置した装置およびシステムに関する従来技術がある。
【0003】
また電位差法で欠陥をモニタリングする技術として、例えば、特許文献2,3に示されているように計測システムを遠隔操作が可能なロボットに具備した従来技術がある。
【0004】
また電位差法で欠陥をモニタリングする技術として、例えば、特許文献4に示されているように欠陥対象部の近傍に電位測定用の端子を溶接により格子状に固定し、欠陥の進展をモニタリングする従来技術がある。
【0005】
【特許文献1】特許第3553439号公報
【特許文献2】特許第2511020号公報
【特許文献3】特開平10−90211号公報
【特許文献4】特公平7−6936号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1から4に示した従来技術の共通問題点として、電位差を測定するための端子や電流を供給する端子を被測定物へ接続する手段が複雑かつ大型であるため、被測定物が狭隘部または被覆材で覆われている場合には適用が困難である。
【0007】
また電位差測定用の端子は一定の圧力で固定する必要があるため、従来技術ではそのための複雑な機構を必要としていた。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の欠陥モニタリング装置では、電位測定用の端子,電流供給用の端子をフィルム状の基盤にプリントすることにより、被測定物が狭隘部や被覆材に覆われている場合にもモニタリング技術の適用が可能になる。また、そのフィルムを可塑性の耐熱性高分子材料を用いることにより、被測定物が高温に曝される場合も本技術の適用が可能である。
【0009】
また、本発明の欠陥モニタリング装置では、フィルムセンサを高温耐性の接着剤,溶接材で固定する、バンド状の固定治具で固定する、又は接着材や溶接材の固定とバンドによる機械的固定を同時に実施することにより、確実に安定して電位測定用の端子,電流供給用の端子を固定することが可能である。
【発明の効果】
【0010】
構造物の欠陥の進展,発生をモニタリングするための装置をフィルム状にすることにより装置の構造を大幅に小型化することが可能となり、狭隘部や被覆材で覆われているような構造物に対しても適用することが実現出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図1に構造物の欠陥の進展,発生をモニタリングするフィルムセンサの構造を示したものである。
【0012】
図1(a)はフィルムセンサの前面を上部からみたものである。図1(b)は図1(a)のB断面を示したものである。図1(c)は図1(a)のA断面を示したものである。図1(d)はモニタリング装置の配線系統の構成を示したものである。
【0013】
フィルムセンサ10は電流を供給するための電流供給端子11,欠陥周りの電位を測定するための電位測定端子12,電流供給端子11への電流供給や電位測定端子12の信号情報を外部へ転送するための配線13,配線13と電流供給装置20や電圧測定装置30を接続するための端子台15を備えている。電流供給端子11や電位測定端子12はセンサ用フィルム16に取付けられている。更に、電位測定端子12は格子状に配置されており、電流供給端子11は電位測定端子12を包括する位置に配置されている。
【0014】
そして、センサ用フィルム16は400℃の温度環境でも耐性を持つ高分子材料、例えばポリイミドで構成されている。電流供給端子11や電位測定端子12の先端構造は、被測定物との接触抵抗を一様にすることを目的に、図1(b)や図1(c)に示すように先端が凸の低抵抗端子50になっている。また、低抵抗端子の代わりに半溶融金属を用いて接触抵抗を一様にすることも可能である。
【0015】
また、フィルムセンサ10には配線13が接続され、この配線13は図1(d)に示した端子台15に接続されるようになっている。そして、端子台15には電流供給装置20と電圧測定装置30が接続される。
【0016】
図2は電流供給端子11,電位測定端子12と配管構造物1に欠陥5が存在した場合の実施例を示したものである。
【0017】
欠陥5の位置は、配管構造物1の内面または外面どちらに存在しても問題ない。欠陥5を包括するように電位測定端子12を配置する。また、長期間の欠陥モニタリングにフィルムセンサ10を適用する場合には、進展が予想される部位も包括するように電位測定端子12、および電流供給端子11を配置する。例えば、配管構造物1の欠陥5が周方向に進展することが予測される場合には、配管構造物1の全周を覆うようにフィルムセンサ
10を固定する。
【0018】
電位差法で欠陥の進展,発生をモニタリングするための装置として、従来の技術と比較すると、装置の構造を小型化することが実現出来るので測定出来る構造物の対象部位を拡大することが可能になる。
【0019】
図3にフィルムセンサ10を配管構造物に適用した実施例を示す。配管構造物1において欠陥の発生が予想される場所、または事前の検査において欠陥が検出された位置にフィルムセンサ10を固定する。固定方法は電流供給端子11や電位測定端子12の部分を除くセンサ用フィルム16と被測定物1との接触面に高温耐性を有する接着剤を用いる。接着剤としては例えば高温硬化性ポリイミドがある。また、長期間連続で使用する場合や電気的に完全に接続することが必要な場合には導電性材料で接着、または低温溶接も適用出来る。
【0020】
配管構造物1に固定されたフィルムセンサ10には配線13を介して端子台15に接続されている。端子台15には電流供給装置20と電圧測定装置用配線31を介して電圧測定装置30(図示せず)が接続されている。または無線ターミナル32を介して測定結果を収集することも可能である。
【0021】
図4にフィルムセンサ10を配管構造物に機械的に固定した実施例を示す。
【0022】
この実施例では、機械的に固定する場合に図に示す固定治具40を用いたものである。ここで、フィルムセンサ10を配管構造物1に固定し、配線13を引出した状態で初期の電位出力を測定し、フィルムセンサ10と配線13を配管構造物1に固定したまま一定期間放置し、一定時間経過後、再度電位出力を測定し、初期の電位出力との差から欠陥の進展や発生を評価することが出来る。
【0023】
図5に配管構造物1が被覆材2で覆われている場合にフィルムセンサ10を適用した実施例を示す。
【0024】
配管構造物1で欠陥が検出された、または欠陥の発生が予想される位置にフィルムセンサ10を配置する。フィルムセンサ10の配線13を延長し、被覆材2の接続の途切れ目3から配線13を引出す。引出された配線13は端子台15まで延長されて、前述した機器により測定結果を収集する。
【0025】
図6にフィルムセンサ10を遠隔で使用した場合の実施例を示す。
【0026】
隔離壁6で隔離された環境に配置された配管構造物1の複数の位置にフィルムセンサ
10を固定する。固定されたフィルムセンサ10からそれぞれ配線13を引出し、端子台15に接続する。ここで端子台15は配線13の数だけ配置する。または場所ごとにまとめて複数の配線13を接続できるようにすることも可能である。個々の端子台15には無線ターミナル32や電流供給装置20を接続する。隔離壁6の配線取出し口7近傍には、無線ターミナル32の中継ターミナル33を配置し、配線取出し口7に電位測定用配線
31を通して電圧測定装置30に接続する。電位信号を連続的に測定する場合には電位測定装置30に制御装置100を接続し、電位測定結果の収集、電流供給装置20への電流供給信号の送信を実施する。ここで、無線ターミナル32の代わりに端子台15から配線31を延長して電位測定装置30に接続する場合もある。また、フィルムセンサ10を配管構造物1に固定し、配線13を引出した状態で初期の電位出力を測定し、フィルムセンサ10と配線13を配管構造物1に固定したまま一定期間放置し、一定経過後、再度電位出力を測定し、初期の電位出力との差から欠陥の進展や発生を評価することも可能である。
【0027】
図7に欠陥5の周りに配置された電位測定端子12の出力結果の実施例を示す。
【0028】
図7(a)は図7(b)の欠陥5の周りに配置された電位測定端子12の位置P1からP8に関し、対向している電極間の電位出力を示したものである。
【0029】
このグラフが示しているように欠陥5の深さに応じて電位差の出力値に差が発生するため、電位出力値の分布形態から欠陥の深さ,長さの形状を評価することが実現出来る。
【0030】
また、図7(c)は欠陥5の周りに配置された電位測定端子12の特定位置35(位置P4)での対向している電極間の電位差出力の時間経過による変化を示したものである。
【0031】
このグラフが示しているようにある欠陥5に対してこれを検出する電極間の電位差出力を連続的にモニタリングすることにより、欠陥5の進展速度,状態を評価することが実現出来る。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明によれば、欠陥を有する、または欠陥の発生が予測される構造物の欠陥の進展,発生の状態をモニタリングすることが可能になり、例えば、狭隘部や被覆材で覆われているような構造物に対しても適用することが実現出来る。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】フィルムセンサの基本構成。
【図2】欠陥に対するフィルムセンサの固定例。
【図3】配管構造物へのフィルムセンサ適用例。
【図4】フィルムセンサの機械的固定例。
【図5】被覆材で覆われた配管構造物へのフィルムセンサ適用例。
【図6】環境隔離された状態でのフィルムセンサ適用例。
【図7】フィルムセンサによる測定結果例。
【符号の説明】
【0034】
1…配管構造物、2…被覆材、5…欠陥、6…隔離壁、7…配線取出し口、10…フィルムセンサ、11…電流供給端子、12…電位測定端子、13…配線、15…端子台、
16…センサ用フィルム、20…電流供給装置、30…電圧測定装置、31…電圧測定用配線、32…無線ターミナル、33…中継ターミナル、35…電位測定端子A、36…電位測定端子Aの時間出力変化、37…電位出力端子出力、40…固定治具、50…低抵抗端子、100…制御装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造物に発生した欠陥を電位差法でモニタリングする方法において、
電流を供給するための電流供給端子,欠陥周りの電位を測定するための電位測定端子がフィルム状の基盤にプリントされているフィルムセンサと、
該フィルムセンサを構造物に固定する固定手段と、
前記フィルムセンサに電流を供給する電流供給手段とを備えたことを特徴とする欠陥モニタリング装置。
【請求項2】
請求項1の欠陥モニタリング装置において、
前記電流供給端子および前記電位測定端子において、被測定物と接触する部分の形状が凸構造または半溶融金属になっていることを特徴とする欠陥モニタリング装置。
【請求項3】
請求項1の欠陥モニタリング装置において、前記構造物の欠陥を挟み込むように格子状に前記電位測定端子を配置し、該電位測定端子を包括する位置に前記電流供給端子を配置したことを特徴とする欠陥モニタリング装置。
【請求項4】
請求項1の欠陥モニタリング装置において、
前記フィルムセンサにおいて、前記基盤の材料が絶縁性材料であり、400℃までの温度に耐性を有する可塑性の高分子材料を備えたことを特徴とする欠陥モニタリング装置。
【請求項5】
請求項1の欠陥モニタリング装置において、
前記固定手段は絶縁性材料であり、400℃までの温度に耐性を有する材料で接着すること、前記フィルムセンサを機械的に押付けること、又は、前記フィルムセンサの接着と押付けを同時に実施することを特徴とする欠陥モニタリング装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−57448(P2007−57448A)
【公開日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−245230(P2005−245230)
【出願日】平成17年8月26日(2005.8.26)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】