説明

欠陥検査方法および欠陥検査装置

【課題】 検査対象における輝点等の欠陥の有無を精度良く検査することができる欠陥検査方法を提供すること。
【解決手段】 有機ELパネルをCCDカメラで撮像する撮像工程S1と、撮像データから検査対象領域を検出し、検査対象領域の色情報および輝度情報を各撮像画素毎に取得する撮像画素データ取得工程S2と、検査対象領域全体の基準色情報を求め、基準色情報に対する各撮像画素の色情報の偏差を求め、色情報偏差に基づいて強調係数を求める強調係数算出工程S3と、前記強調係数を用いて、前記各撮像画素の輝度情報を補正輝度情報に補正する輝度情報補正工程S4と、前記補正輝度情報に基づいて前記検査対象領域内の欠陥を検出する欠陥検出工程S5とを備える。色情報偏差によって欠陥部分の輝度値を強調できるので、補正後の輝度値に基づいて欠陥部分を精度良く検出できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、欠陥検査方法および欠陥検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
有機ELディスプレイ(OLED:Organic Light Emitting Diode Display)等のディスプレイパネル(画像表示装置)において、パネルの表示画素内に輝点やシミ・ムラとよばれる異常発光部分(欠陥)が発生することがあった。このような欠陥は、従来、検査員が目視で検査していたが、ディスプレイパネルの量産化を図る上で、前記欠陥検査の自動化が求められている。
【0003】
輝点等の欠陥は、周囲に比べて明るさが異なるものであるから、表示画素の輝度データを取得し、この輝度データを用いて欠陥を検出する方法が検討されている。
例えば、検査対象画像をCCDカメラによって撮像して、各カメラ画素(撮像画素)での受光輝度により構成される受光輝度分布データを取得し、ある1つのカメラ画素を選択し、その周囲の4近傍の画素との輝度値を比較して輝度差が所定の範囲にある場合にはこれらの各画素を一つの領域にまとめる処理を繰り返し、対象領域を複数の連続した部分領域に分割し、この部分領域の輝度値をそこに含まれる全画素の平均値で置き換えて表示することにより、対象領域に存在する輝点やムラなどの欠陥部分を視認しやすくした色ムラ欠陥検査方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】特開2001−266122号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の方法では、撮像画素の輝度情報のみを使用して輝点やムラ欠陥を検出しているため、特に欠陥部分と非欠陥部分とで輝度の差が小さい場合には、これらを区別するための閾値の設定が難しく、欠陥の検出結果が従来の検査員が目視で行った結果と異なる可能性があり、検出精度の向上が難しいという問題があった。
同様の問題は、輝点欠陥などの異常発光欠陥を検出する場合に限らず、黒点欠陥などの異常非発光欠陥の有無の検査でも発生していた。すなわち、撮像画素の輝度値に基づいて欠陥検出を行う場合に共通する問題であった。
ここで、異常発光欠陥とは、検査対象画像における平均的な輝度よりも所定程度以上大きい輝度を有する欠陥のことであり、輝点欠陥や白ムラ欠陥等を意味する。また、異常非発光欠陥とは、検査対象画像における平均的な輝度よりも所定程度以上小さい輝度を有する欠陥のことであり、黒点欠陥や黒ムラ欠陥等を意味する。なお、異常発光欠陥と異常非発光欠陥とをまとめる場合、「異常発光/非発光欠陥」と表記する。
【0006】
本発明の目的は、検査対象における異常発光/非発光欠陥の有無を精度良く検査することができる欠陥検査方法および欠陥検査装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の欠陥検査方法は、複数の撮像画素を有する撮像手段によって検査対象を撮像する撮像工程と、前記撮像工程で撮像された撮像データにおいて検査対象領域を検出し、その検査対象領域の色情報および輝度情報を各撮像画素毎に取得する撮像画素データ取得工程と、前記検査対象領域全体の基準色情報を求め、この基準色情報に対する各撮像画素の色情報の偏差を求め、この色情報偏差に基づいて強調係数を求める強調係数算出工程と、前記強調係数算出工程で求めた強調係数を用いて、前記各撮像画素の輝度情報を補正輝度情報に補正する輝度情報補正工程と、前記輝度情報補正工程で補正された補正輝度情報に基づいて前記検査対象領域内の欠陥を検出する欠陥検出工程と、を備えることを特徴とする。
【0008】
本発明においては、撮像画素毎の色情報を、基準色情報と比較して偏差を求め、その色情報の偏差に基づいて求められる強調係数を利用して撮像画素毎の輝度情報を補正しているので、例えば、基準色情報に対する色情報の偏差が大きくなるほど強調係数が大きくなるように設定すれば、色の違いの情報を輝度値に反映させることができる。
すなわち、OLED等では、輝点欠陥部分、つまり輝度が局所的に高くなる部分は、同時にその部分の色が他の正常部分の色と異なっていることが多い。従って、各撮像画素の輝度情報を、その撮像画素の色情報偏差に基づく強調係数で補正すれば、輝点欠陥部分のように、色が異なる欠陥部分の輝度情報をより大きく強調することができる。このため、補正後の輝度情報を用いれば、欠陥部分と非欠陥部分とで輝度値の差を大きくでき、これらを区別する閾値も容易に設定でき、欠陥部分を容易にかつ精度良く検出することができる。
【0009】
本発明の欠陥検査方法では、前記強調係数算出工程は、前記検査対象領域に含まれる各撮像画素の色情報の平均値を基準色情報とし、この基準色情報に対する各撮像画素の色情報の偏差の絶対値を求め、この偏差の絶対値に基づいて強調係数を求めることが好ましい。
基準色情報を求める方法としては、例えば、色彩計などの他の装置を用いて基準色情報を求めることもできるが、色の測定工程が必要となるため、検査時間が長くなる。これに対し、本発明のように、撮像画素の色情報の平均値を基準色情報とすれば、データ処理のみで基準色情報を求めることができ、処理が容易となって検査時間も短縮できる。
また、撮像された実データに基づいて基準色情報を算出できるので、設計情報などに基づいて予め基準色情報を設定する場合に比べて、精度の高い基準色情報を得ることができる。このため、基準色情報に基づいて求められる強調係数も精度の高いものが得られ、欠陥部分の輝度情報を適切に強調でき、欠陥部分を精度良く検出できる。
【0010】
本発明の欠陥検査方法では、前記輝度情報補正工程は、撮像画素の輝度情報が予め設定された輝度情報用閾値を超えている場合のみ、前記強調係数算出工程で求めた強調係数を用いて、前記各撮像画素の輝度情報を補正輝度情報に補正することが好ましい。
このような本発明においては、輝度情報用閾値を超えている撮像画素の輝度情報のみを補正することができるので、すべての撮像画素に対して補正する場合に比べて、補正処理時間を短縮することができ、輝点欠陥部分を効率的に検出することができる。
【0011】
本発明の欠陥検査方法では、前記撮像画素データ取得工程は、各撮像画素毎にR,G,Bの各強度データVr,Vg,Vbを取得するRGBデータ取得工程と、前記RGBの3種類の強度データの少なくとも1種類の強度データまたは各撮像画素の輝度データに基づいて検査対象領域を判定する領域判定工程と、検査対象領域にある各撮像画素の強度データVr,Vg,Vbを、その撮像画素の色情報および輝度情報に変換するデータ変換工程と、を備えることが好ましい。
【0012】
このような本発明においては、例えば、3板式のカラーCCDカメラを用いて検査対象を撮像すれば、撮像画素毎にR,G,Bの各強度データVr,Vg,Vbを直接取得できる。
そして、各強度データVr,Vg,Vbの少なくとも1種類の強度データや各撮像画素の輝度データを所定の閾値と比較するなどして検査対象領域を判定し、その検査対象領域内の各撮像画素の強度データVr,Vg,Vbを、各撮像画素の色情報および輝度情報に変換しているので、撮像データの全領域の強度データVr,Vg,Vbを、各撮像画素の色情報および輝度情報に変換する場合に比べて、データ変換工程の処理時間を短縮でき、効率的に処理できる。
なお、各撮像画素の輝度データは、例えば、RGBの各強度データから算出すればよい。
【0013】
本発明の欠陥検査方法では、前記データ変換工程は、RGB空間の情報をHSL空間の情報に変換する変換式を用いて、検査対象領域にある各撮像画素の強度データVr,Vg,Vbを、色相データVh、彩度データVs、輝度データVLに変換し、前記色相データVhを撮像画素の色情報とし、輝度データVLを撮像画素の輝度情報とすることが好ましい。
RGBの撮像データをHSL空間の情報に変換すれば、色情報を色相データVhの1つのパラメータのみで示すことができるので、各撮像画素の色情報と基準色情報との比較も容易に行うことができる。また、HSL空間は、等色差性を持っているので、測定対象がどのような色であっても、色情報および基準色情報の偏差を適切な大きさで表すことができ、前記色情報偏差に基づく強調係数も精度良くかつ簡単に設定できる。
【0014】
本発明の欠陥検査方法では、前記強調係数算出工程は、前記各撮像画素の色相データVhの平均値を基準色情報V0とし、この基準色情報V0に対する各撮像画素の色相データVhの偏差の絶対値を求め、この偏差の絶対値を前記基準色情報V0で除することで強調係数Veを算出し、前記輝度情報補正工程は、輝度データVLに強調係数Veを乗じて算出した強調値を輝度データVLに加算して補正輝度情報VL’を求めることが好ましい。
すなわち、強調係数Veは、Ve=|Vh−V0|/Voで求め、補正輝度情報VL’は、VL’=VL+VL×Veによって求めることが好ましい。
【0015】
例えば、色相および輝度がそれぞれ8ビット(0〜255)の数値で表されるとした際に、基準色情報V0が60、ある撮像画素の色相データVhが63の場合、前記強調係数Veは次の式で求められる。すなわち、Ve=|Vh−V0|/V0=|63−60|/60=0.05である。
そして、前記撮像画素における輝度データVLが180であった場合、補正輝度情報VL’は次のように求められる。すなわち、VL’=VL+VL×Ve=180+180×0.05=189となる。
同様に、他の撮像画素の色相データVhが66、輝度データVLが190であった場合、VL’=209となる。各撮像画素の元の輝度データVLの差は「10」であるが、補正輝度情報VL’の差は「20」となり、大幅に拡大する。従って、補正輝度情報VL’を所定の閾値と比較するなどの処理を行う際に、欠陥部分の補正輝度情報VL’と、正常部分の補正輝度情報VL’の差が大きくなるため、前記閾値を適切に設定でき、輝点等の欠陥を高精度に検出することができる。
【0016】
本発明の欠陥検査方法では、前記強調係数算出工程は、前記各撮像画素の色相データVhの平均値を基準色情報V0とし、この基準色情報V0に対する各撮像画素の色相データVhの偏差の絶対値を求め、この偏差の絶対値を前記基準色情報V0で除することで強調係数Veを算出し、前記輝度情報補正工程は、予め設定された定数をαとした際に、定数αに強調係数Veを乗じて算出した強調値を輝度データVLに加算して補正輝度情報VL’を求めるものでもよい。
すなわち、強調係数Veは、Ve=|Vh−V0|/Voで求め、補正輝度情報VL’は、VL’=VL+α×Veによって求めることが好ましい。
【0017】
このような本発明においても、αを適切な値に設定することで、輝点欠陥部分の輝度情報を補正輝度情報VL’に強調することができ、補正輝度情報VL’を所定の閾値と比較するなどの処理を行うことで、輝点等の欠陥を高精度に検出することができる。
【0018】
本発明の欠陥検査装置は、複数の撮像画素を有し、検査対象を撮像して撮像データを取得する撮像手段と、前記撮像手段で得られた撮像データにおいて検査対象領域を検出し、その検査対象領域の色情報および輝度情報を各撮像画素毎に取得する撮像画素データ取得手段と、前記検査対象領域全体の基準色情報を求め、この基準色情報に対する各撮像画素の色情報の偏差を求め、この色情報偏差に基づいて強調係数を求める強調係数算出手段と、前記強調係数算出手段で求めた強調係数を用いて、前記各撮像画素の輝度情報を補正輝度情報に補正する輝度情報補正手段と、前記輝度情報補正手段で補正された補正輝度情報に基づいて前記検査対象領域内の欠陥を検出する欠陥検出手段と、を備えることを特徴とする。
【0019】
本発明においても、撮像画素毎の色情報を、基準色情報と比較して偏差を求め、その色情報の偏差に基づいて求められる強調係数を利用して撮像画素毎の輝度情報を補正しているので、例えば、基準色情報に対する色情報の偏差が大きくなるほど、強調係数が大きくなるように設定すれば、補正輝度情報を強調することができる。従って、各撮像画素の輝度情報を、その撮像画素の色情報偏差に基づく強調係数で補正すれば、輝点欠陥部分のように、色が異なる欠陥部分の輝度情報をより大きく強調することができ、補正後の輝度情報に基づいて欠陥部分を容易にかつ精度良く検出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1に、本実施形態にかかる欠陥検査装置(異常発光欠陥検査装置)としての輝点欠陥検査装置1と、画像表示装置としての有機ELパネル2を示す。
輝点欠陥検査装置1は、有機ELパネル2によって表示される検査対象画像を撮像する撮像手段としてのCCDカメラ11と、CCDカメラ11から入力される撮像データに基づいて画像処理を行い、検査対象画像における輝点欠陥の有無を検査する画像処理部12を備えて構成される。
【0021】
ここで、CCDカメラ11は、3板式のカラーCCDカメラであり、RGBの各撮像データを所定のデジタルデータ(例えば12ビットのデジタルデータ)として出力可能なものである。なお、アナログデータを出力するCCDカメラを用いた場合には、アナログ信号をデジタル信号に変換するAD変換器を介して画像処理部12に撮像データを入力すればよい。
【0022】
画像処理部12は、例えば、検査用に設けられたパーソナルコンピュータ等で構成され、機能的には、CCDカメラ制御手段120、撮像画素データ取得手段121、強調係数算出手段122、輝度情報補正手段123、欠陥検出手段124を備えて構成されている。
CCDカメラ制御手段120は、CCDカメラ11を制御し、検査対象の有機ELパネル2の撮影を制御する。
撮像画素データ取得手段121は、CCDカメラ11で得られた撮像データにおいて検査対象領域を検出し、その検査対象領域の色情報および輝度情報を各撮像画素毎に取得する。
強調係数算出手段122は、前記検査対象領域全体の基準色情報を求め、この基準色情報に対する各撮像画素の色情報の偏差を求め、この色情報偏差に基づく強調係数を求める処理を行う。
輝度情報補正手段123は、前記強調係数算出手段122で求めた強調係数を用いて前記各撮像画素の輝度情報を補正して補正輝度情報を求める。
欠陥検出手段124は、前記輝度情報補正手段123で求めた補正輝度情報に基づいて前記検査対象領域内の欠陥を検出する。
【0023】
次に、輝点欠陥検査装置1を用いて有機ELパネル2の輝度欠陥を検出する方法について説明する。
本実施形態において、輝度欠陥を検出する画像検査方法は、図2に示すように、撮像工程S1、撮像画素データ取得工程S2、強調係数算出工程S3、輝度情報補正工程S4、欠陥検出工程S5を備える。以下、各工程を詳述する。
【0024】
[1.撮像工程]
撮像工程S1が実施されると、CCDカメラ制御手段120は、有機ELパネル2によって表示される検査対象画像を、CCDカメラ11によって撮像する。
具体的には、CCDカメラ11は、図3に示す有機ELパネル2の各表示画素21を撮像し、図4に示すような撮像データ41を取得している。
【0025】
なお、図3に示されるように、有機ELパネル2には、一般に、RGB各色の表示画素21が周期的に整列配置され、各表示画素21の間には、各表示画素21のスイッチングを行うTFT(薄膜トランジスタ)などが配置されるブラックマトリックス22が構成されている。
図4は、図3において点線によって囲まれるエリア23をCCDカメラ11によって撮像して得られるデータである。
【0026】
ここで、CCDカメラ11は、3板式であるため、3つのCCDを有し、入射光をプリズムで3原色(RGB)に分解し、それぞれの光を別のCCDで検知するように構成されている。各CCDは、整列配置される多数の微小なカメラ画素(撮像画素)111を有したエリアセンサである。
従って、CCDカメラ11は、RGB用に設けられた各CCDのカメラ画素111での受光輝度に応じてRGB3色の強度データVr,Vg,Vbを出力する。このため、CCDカメラ11からは、図4に示すように、各カメラ画素111のR(赤)の強度データVrが二次元に配列された撮像データ41Rと、G(緑)の強度データVgが二次元に配列された撮像データ41Gと、B(青)の強度データVgが二次元に配列された撮像データ41Bとが出力される。ここで、各撮像データ41R,41G,41Bにおける強度データの数、つまりカメラ画素111の数は、撮像倍率などに応じて適宜設定できる。例えば、図4の例では、カメラ画素111は縦000〜038の計39行、横000〜014の計15列の計585個設けられている。
【0027】
これらの撮像データ41R,41G,41Bは、画像処理部12に入力されて処理される。なお、本実施形態では、各強度データVr,Vg,Vbは8ビットつまり0から255までの間のデジタル値を有するデジタル信号である。
【0028】
[2.撮像画素データ取得工程]
撮像工程S1の後に、撮像画素データ取得工程S2が実行される。撮像画素データ取得工程S2は、撮像画素データ取得手段121により実行され、図2に示すように、CCDカメラ11から入力されるRGBの各強度データVr,Vg,Vbを取得するRGBデータ取得工程S21と、前記RGBの3種類の強度データから1種類の強度データを選択し、選択した強度データが、予め設定された強度データ用閾値を超えている撮像画素領域を検査対象領域と判定する領域判定工程S22と、検査対象領域にある各撮像画素の強度データVr,Vg,Vbを、その撮像画素の色情報および輝度情報に変換するデータ変換工程S23とが実行される。
【0029】
RGBデータ取得工程S21では、撮像画素データ取得手段121は、CCDカメラ11から出力された撮像データ41R,41G,41Bをメモリに記憶して取得する。
次に、領域判定工程S22が実行されると、撮像画素データ取得手段121は、撮像データ41R,41G,41Bの各強度データVr,Vg,Vbのうち、最も大きな強度データを有する1種類の撮像データ41(例えばRの撮像データ41R)を選択する。そして、その撮像データ41Rにおける各カメラ画素111の強度データVrを所定の強度データ用閾値と比較し、強度データ用閾値以上のカメラ画素111の領域を選択する。例えば、図4においては、強度データVrが強度データ用閾値以上のカメラ画素111を選択した領域を領域Aとしている。なお、ブラックマトリックス22の強度データVrと、表示画素21部分の強度データVrとの間には差があるので、強度データ用閾値を各強度データの間となるように適切に設定すれば、撮像されたエリア23において、発光する表示画素21部分と、ブラックマトリックス22とを分離でき、表示画素21部分を検査対象領域として抽出できる。
なお、この検査対象領域Aは、表示画素21部分であるから、他の2つの強度データにおいても同じ検査対象領域Aを設定すればよい。
【0030】
次に、データ変換工程S23が実行されると、撮像画素データ取得手段121は、検査対象領域Aに含まれる各カメラ画素111の色情報および輝度情報を取得する。具体的には、RGB空間の情報をHSL空間の情報に変換する変換式を用いて、各カメラ画素111の強度データVr,Vg,Vbから、色相データVh、彩度データVs、輝度データVLを求める。
変換式は例えば以下のようなものが利用できる。
【0031】
【数1】

【0032】
[3.強調係数算出工程]
式1〜5を用いた変換を、検査対象領域Aに含まれるすべてのカメラ画素111に対して行って撮像画素データ取得工程S2を終了すると、強調係数算出工程S3が実行される。
強調係数算出工程S3が実行されると、強調係数算出手段122は、まず、検査対象領域A全体の基準色情報を求める。本実施形態では、強調係数算出手段122は、検査対象領域Aに含まれるすべてのカメラ画素111の色相データVhの平均値V0を求め、この値を検査対象の表示画素21の正常な色相と見なし、基準色情報V0と定義する。
【0033】
次に、強調係数算出手段122は、検査対象領域A内の各カメラ画素111の色相データVhと、基準色情報V0との偏差の絶対値を求め、これを基準色情報V0で除することで、正規化された強調係数Veを各カメラ画素111毎に算出する。すなわち、各強調係数Veは、|Vh−V0|/V0で求められる。
【0034】
[4.輝度情報補正工程]
強調係数Veを求めて強調係数算出工程S3が終了すると、輝度情報補正工程S4が実行される。
輝度情報補正工程S4が実行されると、輝度情報補正手段123は、検査対象領域Aに含まれる各カメラ画素111の輝度データVLのうち、予め設定された輝度情報用閾値Vthより大きい輝度データVLのカメラ画素111を選択する。このような処理を行うのは、本実施形態では、輝点欠陥を検出するものであるため、検査対象領域Aの中で、ある程度、輝度データVLが高く、輝点欠陥の候補となり得るカメラ画素111を抽出するためである。
【0035】
次に、輝度情報補正手段123は、抽出された各カメラ画素111の輝度データVLを補正して補正輝度データVL’を求める。本実施形態では、各輝度データVLに強調係数Veを乗じ、強調量を算出し、この強調量を元の輝度データVLに加算して補正輝度データVL’を求めている。すなわち、VL’は、VL+VL×Veで算出している。従って、色相データVhと基準色情報V0の色相差が大きくなればなるほど、補正輝度データVL’は大きく強調されることになる。
【0036】
[5.欠陥検出工程]
カメラ画素111の補正輝度データVL’が求められて輝度情報補正工程S4が終了すると、欠陥検出工程S5が実行される。
欠陥検出工程S5が実行されると、欠陥検出手段124は、各カメラ画素111の輝度データに基づいて欠陥を検出する。例えば、輝点欠陥検出用閾値を設定し、上記各カメラ画素111の補正輝度データVL’が輝点欠陥検出用閾値を超えた場合には、そのカメラ画素111部分を輝点欠陥と判断し、欠陥を検出する。
また、欠陥検出手段124による欠陥検出方法としては、例えば、本出願人が既に出願した特願2004-292799の画像検査方法や、前記特許文献1(特開2001-266122号公報)に開示された色ムラ欠陥検査方法を利用してもよい。
【0037】
<実施形態の効果>
(1)カメラ画素111の輝度データVLに基づいて欠陥検出を行う際に、基準色情報V0に対する各カメラ画素111の色相データVhの偏差に基づいて強調係数Veを求め、この強調係数Veによって前記輝度データVLを補正輝度データVL’に強調補正しているので、輝点欠陥部分の輝度データと正常部分の輝度データの差を大きくできる。このため、欠陥部分と正常部分の輝度差が小さい場合には、輝点欠陥検出用閾値を適切に設定することが難しく、欠陥部分を正常部分と誤検出したり、逆に正常部分を欠陥部分と誤検出してしまうことがあるが、本実施形態では、色相の偏差に基づいて欠陥部分と正常部分の輝度差を大きくできるので、輝点欠陥検出用閾値を適切に設定することができ、欠陥部分を精度良く検出することができる。
従って、特に、有機ELパネル2のように、輝度が局所的に高くなると同時にその部分の色が正常部分と異なることが多い検査対象における輝点欠陥を、容易にかつ高精度に検出することができる。
【0038】
(2)有機ELパネル2をCCDカメラ11で撮像して得られた輝度値を強調して欠陥の検出率を向上できるため、各撮像画素の輝度値に基づいて欠陥を検出する様々な既存の検査方法においても、本実施形態の処理を追加することで欠陥の検出率を向上できる。このため、既存の検査方法が既にハードウェア化されている場合でも、本実施形態の処理によって強調された輝度値をハードウェアに入力するだけで容易に適用でき、ハードウェア化された既存の検査装置の性能を容易にかつ低コストで向上できる。
【0039】
(3)基準色情報V0を、検査対象領域Aに含まれる各カメラ画素111の色相データVhの平均値で算出しているので、精度の高い基準色情報を容易に得ることができる。このため、その基準色情報V0に基づいて求められる強調係数Veも精度の高いものが得られ、欠陥部分の輝度データVLを適切に強調でき、欠陥部分を精度良く検出できる。
【0040】
(4)撮像画素データ取得手段121は、各強度データVr,Vg,Vbを強度データ用閾値と比較して検査対象領域Aを判定し、その検査対象領域A内の各カメラ画素111の強度データVr,Vg,Vbのみを、各カメラ画素111の色情報および輝度情報に変換しているので、撮像データ41R,41G,41Bの全領域の強度データVr,Vg,Vbを、各カメラ画素111の色情報および輝度情報に変換する場合に比べて、データ変換工程の処理時間を短縮できる。このため、欠陥検出処理時間を短縮できる。
【0041】
(5)撮像画素データ取得手段121は、各強度データVr,Vg,VbをHSL空間の色相データVh、彩度データVs、輝度データVLに変換しているので、色情報を色相データVhの1つのパラメータのみで示すことができる。このため、各カメラ画素111の色相データVhと基準色情報V0との比較も容易に行うことができる。また、HSL空間は、等色差性を持っているので、測定対象がどのような色であっても、色相データVhおよび基準色情報V0の偏差を適切な大きさで表すことができ、前記色情報偏差に基づく強調係数Veも精度良くかつ簡単に設定できる。
【0042】
(6)輝度情報補正手段123は、各カメラ画素111の輝度データVLが、予め設定された輝度情報用閾値Vthを超えている場合のみ、補正輝度データVL’を求めているので、検査対象領域Aに含まれるすべてのカメラ画素111を補正する必要が無く、補正処理時間を短縮することができ、輝点欠陥部分を効率的に検出することができる。
特に、前記実施形態のように、乗算(VL×Ve)が含まれる演算処理はコンピュータにおいて時間がかかるため、補正処理を行うカメラ画素111を必要最小限に抑えることで処理時間を大幅に短縮することができ、計算処理によるスループットの低下も防止できる。
【0043】
なお、本発明は前記の各実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
例えば、輝度情報補正手段123による補正輝度データVL’の算出方法は前記実施形態に限らず、予め定数αを設定し、VL’=VL+α×Veによって補正輝度データVL’を求めてもよい。なお、定数αは検査対象等に応じて最適な値を設定すればよい。要するに、補正輝度データVL’の算出方法は、強調係数Veが大きくなった際に、補正輝度データVL’が強調されて大きな値になるようなものであればよい。
【0044】
前記実施形態では、RGB空間の情報をHSL空間の情報に変換して色情報や輝度情報を取得していたが、HSL空間以外の色空間の情報に変換して色情報や輝度情報を取得してもよい。
【0045】
前記実施形態では、輝度情報用閾値を超えているカメラ画素111のみ輝度データVLの補正を行っていたが、検査対象領域Aのすべてのカメラ画素111に対して輝度データVLの補正を行ってもよい。
また、前記実施形態では、検査対象領域Aの全カメラ画素111の色相データVhの平均値で基準色情報V0を求めていたが、例えば、欠陥部分と推測されるカメラ画素111の色相データVhが影響しないように、所定の輝度値範囲内のカメラ画素111の色相データVhのみで平均値を算出してもよい。さらに、基準色情報V0の算出方法は、例えば、色彩計などの他の装置を用いて基準色情報を求めてもよいし、設計上の各表示画素21の色情報を基準色情報としてもよい。
【0046】
前記実施形態では、検査対象領域Aを各強度データVr,Vg,Vbに基づいて検出し、検査対象領域A内のカメラ画素111の強度データVr,Vg,Vbを、HSL空間の情報に変換していたが、先に各カメラ画素111の強度データVr,Vg,Vbを、色相データVh、彩度データVs、輝度データVLに変換し、輝度データVLが所定の閾値を超えた画素部分を検査対象領域Aと設定してもよい。特に、白色有機ELとRGBカラーフィルタでカラー表示を可能とした有機ELディスプレイにおいて、白色有機EL層だけを検査する場合には、CCDカメラ11の撮像データから輝度データVLを算出し、その輝度データVLに基づいて検査対象領域Aを検出すれば、検査対象領域Aをより精度良く検出できる。
【0047】
さらに、前記実施形態では、有機ELパネル2の各表示画素21における輝点欠陥の有無の検査について述べたが、本発明の欠陥検査方法によれば、液晶パネルやプラズマディスプレイなどの各種の画像表示装置によって表示される画像における欠陥の有無も検査できる。
【0048】
また、本発明は、輝点欠陥に限らず、黒点欠陥の検出や、輝点・黒点に比べて面積の大きなシミ・ムラ欠陥の検出に利用しても良い。要するに、本発明は、正常部分と異なる輝度値の欠陥部分を検出する欠陥検出方法に広く適用できる。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明は、有機ELパネル、液晶パネル、液晶プロジェクタ、プラズマディスプレイなどの各種の画像表示装置によって表示される画像の検査、特に、画像表示装置の画像画素における輝点や黒点欠陥等の有無の検査に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の実施形態にかかる輝点欠陥検査装置を示すブロック図。
【図2】輝点欠陥検査装置の欠陥検査方法の工程を示すフローチャート。
【図3】有機ELパネル上に整列配置される画像画素とブラックマトリックスとを示す図。
【図4】CCDカメラで撮像した撮像データを示す図。
【符号の説明】
【0051】
1…輝点欠陥検査装置、2…有機ELパネル、11…撮像手段であるCCDカメラ、12…画像処理部、21…表示画素、23…エリア、111…撮像画素であるカメラ画素、120…CCDカメラ制御手段、121…撮像画素データ取得手段、122…強調係数算出手段、123…輝度情報補正手段、124…欠陥検出手段。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の撮像画素を有する撮像手段によって検査対象を撮像する撮像工程と、
前記撮像工程で撮像された撮像データにおいて検査対象領域を検出し、その検査対象領域の色情報および輝度情報を各撮像画素毎に取得する撮像画素データ取得工程と、
前記検査対象領域全体の基準色情報を求め、この基準色情報に対する各撮像画素の色情報の偏差を求め、この色情報偏差に基づいて強調係数を求める強調係数算出工程と、
前記強調係数算出工程で求めた強調係数を用いて、前記各撮像画素の輝度情報を補正輝度情報に補正する輝度情報補正工程と、
前記輝度情報補正工程で補正された補正輝度情報に基づいて前記検査対象領域内の欠陥を検出する欠陥検出工程と、
を備えることを特徴とする欠陥検査方法。
【請求項2】
請求項1に記載の欠陥検査方法において、
前記強調係数算出工程は、
前記検査対象領域に含まれる各撮像画素の色情報の平均値を基準色情報とし、この基準色情報に対する各撮像画素の色情報の偏差の絶対値を求め、この偏差の絶対値に基づいて強調係数を求めることを特徴とする欠陥検査方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の欠陥検査方法において、
前記輝度情報補正工程は、
撮像画素の輝度情報が予め設定された輝度情報用閾値を超えている場合のみ、前記強調係数算出工程で求めた強調係数を用いて、前記各撮像画素の輝度情報を補正輝度情報に補正することを特徴とする欠陥検査方法。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載の欠陥検査方法において、
前記撮像画素データ取得工程は、
各撮像画素毎にR,G,Bの各強度データVr,Vg,Vbを取得するRGBデータ取得工程と、
前記RGBの3種類の強度データの少なくとも1種類の強度データまたは各撮像画素の輝度データに基づいて検査対象領域を判定する領域判定工程と、
検査対象領域にある各撮像画素の強度データVr,Vg,Vbを、その撮像画素の色情報および輝度情報に変換するデータ変換工程と、
を備えることを特徴とする欠陥検査方法。
【請求項5】
請求項4に記載の欠陥検査方法において、
前記データ変換工程は、
RGB空間の情報をHSL空間の情報に変換する変換式を用いて、検査対象領域にある各撮像画素の強度データVr,Vg,Vbを、色相データVh、彩度データVs、輝度データVLに変換し、前記色相データVhを撮像画素の色情報とし、輝度データVLを撮像画素の輝度情報とすることを特徴とする欠陥検査方法。
【請求項6】
請求項5に記載の欠陥検査方法において、
前記強調係数算出工程は、
前記各撮像画素の色相データVhの平均値を基準色情報V0とし、この基準色情報V0に対する各撮像画素の色相データVhの偏差の絶対値を求め、この偏差の絶対値を前記基準色情報V0で除することで強調係数Veを算出し、
前記輝度情報補正工程は、輝度データVLに強調係数Veを乗じて算出した強調値を輝度データVLに加算して補正輝度情報VL’を求めることを特徴とする欠陥検査方法。
【請求項7】
請求項5に記載の欠陥検査方法において、
前記強調係数算出工程は、
前記各撮像画素の色相データVhの平均値を基準色情報V0とし、この基準色情報V0に対する各撮像画素の色相データVhの偏差の絶対値を求め、この偏差の絶対値を前記基準色情報V0で除することで強調係数Veを算出し、
前記輝度情報補正工程は、予め設定された定数をαとした際に、定数αに強調係数Veを乗じて算出した強調値を輝度データVLに加算して補正輝度情報VL’を求めることを特徴とする欠陥検査方法。
【請求項8】
複数の撮像画素を有し、検査対象を撮像して撮像データを取得する撮像手段と、
前記撮像手段で得られた撮像データにおいて検査対象領域を検出し、その検査対象領域の色情報および輝度情報を各撮像画素毎に取得する撮像画素データ取得手段と、
前記検査対象領域全体の基準色情報を求め、この基準色情報に対する各撮像画素の色情報の偏差を求め、この色情報偏差に基づいて強調係数を求める強調係数算出手段と、
前記強調係数算出手段で求めた強調係数を用いて、前記各撮像画素の輝度情報を補正輝度情報に補正する輝度情報補正手段と、
前記輝度情報補正手段で補正された補正輝度情報に基づいて前記検査対象領域内の欠陥を検出する欠陥検出手段と、
を備えることを特徴とする欠陥検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−266750(P2006−266750A)
【公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−82381(P2005−82381)
【出願日】平成17年3月22日(2005.3.22)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】