説明

欠陥検査装置及び欠陥検査方法

【課題】検査対象である相互に同一であるべきパターンを撮像して得た検査画像と参照画像とを比較して、相違する箇所を前記パターンの欠陥として検出する欠陥検査において、検査画像と参照画像とに含まれる飽和画素による影響を回避する。
【解決手段】欠陥検査装置1は、検査画像に含まれる各画素とこれら画素にそれぞれ対応する参照画像の各画素のうち、対応する画素の両方のグレイレベル値が所定の閾値より小さいものについて、対応する画素間のグレイレベル差を検出するグレイレベル差検出部25を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検査対象である相互に同一であるべきパターンを撮像して得た検査画像と参照画像とを比較して、相違する箇所を前記パターンの欠陥として検出する欠陥検査装置及び欠陥検査方法に関する。より詳しくはこのような欠陥検査において、検査画像と参照画像との相違の検出に用いる検出閾値や検査画像と参照画像との間の色ムラの補正量を決定する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウエハや、フォトマスク用基板、並びに液晶表示パネルなどの半導体装置等の製造は多数の工数から成り立っており、最終及び途中の工程での欠陥の発生具合を検査して製造工程にフィードバックすることが歩留まり向上の上からも重要である。製造工程の途中で欠陥を検出するために、半導体ウエハ、フォトマスク用基板、液晶表示パネル用基板、液晶デバイス用基板などの試料の表面に形成されたパターンを撮像し、これにより得られた画像を検査することにより試料表面に存在する欠陥を検出するパターン欠陥検査が広く行われている。
以下の説明では、半導体ウエハ上に形成されたパターンの欠陥を検査する半導体ウエハ用欠陥検査装置を例として説明する。しかし、本発明はこれに限定されるものではなく、半導体メモリ用フォトマスク用基板や、液晶デバイス用基板、液晶表示パネル用基板などの半導体装置を検査する欠陥検査装置にも広く適用可能である。
【0003】
図1に、本願の出願人が特願2003−188209(下記特許文献1)にて提案するものと同様の欠陥検査装置のブロック図を示す。欠陥検査装置1には、3次元方向に移動可能なステージ11が設けられており、ステージ11の上面には試料台(チャックステージ)12が設けられている。この試料台12の上に検査対象となる試料であるウエハ2を載置して固定する。
また試料台12の上方には、ウエハ2の表面の光学像を撮像するための撮像部14が設けられる。撮像部14としては、1次元又は2次元のCCDカメラ好適にはTDIカメラなどのイメージセンサが使用され、その受光面に結像されたウエハ2の表面の光学像を電気信号に変換する。本構成例では撮像部14として1次元のTDIカメラを使用する。ステージ11の移動により撮像部14とウエハ2とを相対的に移動させることによって、ウエハ2に対して撮像部14をX方向又はY方向に走査させてウエハ2の表面の2次元画像を得る。なお、撮像部14によるウエハ2の表面の画像の撮像には、明視野照明光学系及び暗視野照明光学系のどちらを使用する場合もありうる。
【0004】
撮像部14から出力される画像信号は、多値のディジタル信号(グレイレベル信号)に変換された後に画像記憶部21に記憶される。
ウエハ2上には、図2に示すように複数のダイ(チップ)3がX方向とY方向にそれぞれ繰返しマトリクス状に配列されている。各ダイには同じパターンが形成されるので、これらのダイを撮像した画像同士は本来同一となるはずであり、各ダイの撮像画像の対応する部分同士の画素値は本来同様の値となる。
【0005】
したがって2つのダイの撮像画像内の本来同一となるべき対応箇所同士の画素値の差分(グレイレベル差信号)を検出すると、両方のダイに欠陥がない場合に比べて一方のダイに欠陥がある場合にグレイレベル差信号が大きくなり、このような大きなグレイレベル差を検出することによりダイ上に存在する欠陥を検出できる(ダイトゥダイ比較)。
また、1つのダイ内にメモリセルのような繰り返しパターンが形成されている場合には、この繰り返しパターン内の本来同一となるべき対応箇所を撮像した画像同士のグレイレベル差を検出しても欠陥を検出できる(セルトゥセル比較)。
なお、ダイトゥダイ比較では、隣り合う2つのダイ同士を撮像した画像を比較するのが一般的である(シングルティテクション)。これではどちらのダイに欠陥があるか分からない。したがって、更に異なる側に隣接するダイとの比較を行い、再び同じ部分のグレイレベル差が閾値より大きくなった場合にそのダイに欠陥があると判定する(ダブルディテクション)。セルトゥセル比較でも同様である。
【0006】
図1に戻り、欠陥検査装置1は差分検出部22を備える。差分検出部22には、画像記憶部21に記憶された撮像画像において本来互いに同一となる箇所のグレイレベル信号が入力され、差分検出部22はこれらのグレイレベル信号同士の差信号(グレイレベル差)を算出する。
【0007】
撮像部14をウエハ2に対して相対的に走査される間に、1次元TDIカメラである撮像部14の出力信号を取り込むと、画像記憶部21にウエハ2の2次元画像が蓄積される。
ダイトゥダイ比較を行う場合には、隣接する2つのダイの互いに対応する部分の各々の画像が画像記憶部21から取り出されて、差分検出部22に入力される。これら2つの画像の一方は検査画像、他方は参照画像とされ、差分検出部22は、検査画像と参照画像との間の対応箇所の画素同士のグレイレベル差信号を各々算出する。グレイレベル差信号は検出閾値決定部23と欠陥検出部24に入力される。
セルトゥセル比較を行う場合には、検査画像及び参照画像として、隣接する2つのセルの互いに対応する部分の各々の画像が画像記憶部21から取り出され、差分検出部22は、これら検査画像と参照画像との間の対応箇所の画素同士のグレイレベル差信号を各々算出する。
【0008】
検査速度を向上させるため、画像比較処理では並列処理が行われるのが通常である。この場合には、ウエハ2を撮像して得た撮像画像を「フレーム」と呼ばれる所定サイズの小さな部分画像に分割し、本来互いに同一となる2箇所のフレームをそれぞれ検査画像及び参照画像として使用する。
【0009】
検出閾値決定部23は、差分検出部22が検出したグレイレベル差の分布に基づいて、以下に説明するような所定の統計処理により検出閾値を決定して欠陥検出部24に出力する。
欠陥検出部24は、差分検出部22から入力したグレイレベル差と検出閾値決定部23が決定した検出閾値とを比較して、検査画像に含まれる欠陥を検出する。すなわち欠陥検出部24は、グレイレベル差信号が検出閾値を超える場合には、検査画像及び参照画像のうちどちらかが、このようなグレイレベル差信号を算出した画素の位置に欠陥を含んでいると判断する。
そして欠陥検出部24は、検出した欠陥の位置、大きさ、検査画像と参照画像との間のグレイレベル差、これらの画像のグレイレベル値等の情報を含む欠陥情報を検出した欠陥毎に作成し、出力する。
【0010】
図3は、検出閾値決定部23の構成例を示すブロック図である。図示するように、検出閾値決定部23は、差分検出部22が出力するグレイレベル差を入力して、その累積頻度を算出する累積頻度算出部31と、この累積頻度を入力して、グレイレベル差に対してリニアな関係になるように累積頻度を変換し変換累積頻度を算出する変換累積頻度算出部32と、この変換累積頻度全体を直線近似して、近似直線を算出する近似直線算出部33と、この近似直線に基づいて所定の累積頻度の値から所定の算出方法に従って閾値を決定する閾値決定部34とを備える。
このように構成された検出閾値決定部23及び上記各構成要素の動作を、図4の(A)〜図4の(C)を参照して説明する。ここに、図4の(A)〜図4の(C)は、図3に示す検出閾値決定部23による検出閾値計算処理の説明図である。
【0011】
検査画像と参照画像の対応し合う画素(ピクセル)同士についてそれぞれ検出されたグレイレベル差は、図3の累積頻度算出部31に入力される。累積頻度算出部31は、検査画像及び参照画像に含まれる画素について各々算出されたグレイレベル差のヒストグラムを、図4の(A)に示すように作成する。なお、対象となる画素数が多い場合には、ヒストグラムはすべての画素のグレイレベル差を使用して作成する必要はなく、サンプリングした一部の画素のグレイレベル差を使用して作成される。
そして累積頻度算出部31は、このヒストグラムからグレイレベル差の累積頻度を算出する。
【0012】
変換累積頻度算出部32は、検出閾値決定部23に入力されるグレイレベル差がある所定の分布に従うと仮定した上で、累積頻度算出部31が算出した累積頻度を、グレイレベル差に対して累積頻度が直線関係となるように変換する。このとき、変換累積頻度算出部32は、グレイレベル差が正規分布、ポアソン分布、又はχ二乗分布などのある分布に従うと仮定して累積頻度を変換する。この変換累積頻度を図4の(B)に示す。
【0013】
近似直線導出部33は、変換累積頻度算出部32が変換した変換累積頻度に応じて、グレイレベル差と変換累積頻度との関係を示す近似直線(y=ax+b)を導出する(図4の(C)参照)。
閾値決定部34は、近似直線のパラメータa、b及び感度設定パラメータ(固定値)から検出閾値Tを決定する。ここでは、グレイレベル差と変換累積頻度の近似直線において、固定の感度設定パラメータとしてVOPとHOを設定しておき、累積確率(p)に相当する累積頻度P1(pにサンプル数を乗じて求める。)になる直線上の点を求め、その点から縦軸方向にVOP、横軸方向にHO移動したグレイレベル差を検出閾値Tとする。従って、検出閾値Tは、所定の計算式、
T=(P1−b+VOP)/a+HO …(1)
により算出される。このようにして、被検査画像のグレイレベル差のヒストグラムに応じて検出閾値Tを適切に設定することができる。
【0014】
【特許文献1】特開2004−177397号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
撮像部14により生成される撮像画像の画素値のダイナミックレンジには限りがあるため、撮像画像中にはグレイレベル値が飽和した画素も存在する。例えば、セル領域などの配線の集積度が高い領域における欠陥検出感度を高めるために、この領域に合わせて撮像時の露出条件を決定すると、反対に配線の集積度が低い領域の画素値が大きくなりすぎるため、このような集積度の低い領域において画素値の飽和が生じやすい。
【0016】
このような飽和した画素が存在することによって以下の2つの問題が生じる。まず、第1に飽和した画素を含む検査画像と参照画像を用いて、上記図4の(A)〜図4の(C)を参照して説明した統計処理によって検出閾値を決定すると、グレイレベル差の分散が過小になるために検出閾値が適正値よりも低めに設定される傾向があり、このため疑似欠陥を発生させてしまう。この理由を図5を参照して説明する。図5は、検査画像と参照画像の間のグレイレベル差の分散を説明する図であり、図において実線は飽和画素を含まない場合のグレイレベル差のヒストグラムを示し、点線は飽和画素を含む場合のヒストグラムを示す。
画素値が飽和している箇所では検査画像と参照画像のグレイレベル値がダイナミックレンジの上限を超えるまたは上限近辺の値であるため差がつかず、これらの領域ではグレイレベル差ΔGLは0または非常に小さい値となる。このため飽和画素を含む場合のヒストグラムは、飽和画素を含まない場合のそれと比べてグレイレベル差ΔGL=0付近の出現頻度が多くなるので分散値が小さくなる。
【0017】
第2に、検査画像と参照画像が飽和した画素を含むと、これらの画像間の色ムラ補正値の決定に影響を及ぼすという問題がある。図6は、検査画像と参照画像の間に色ムラがある場合のグレイレベル差のヒストグラムである。ここで「色ムラ」の語は、検査画像内に含まれる画素のグレイレベル値の平均的な値と、参照画像内に含まれる画素のグレイレベル値の平均的な値との間の違いを意味し、本明細書及び特許請求の範囲の全体を通してこの意味において使用される。
【0018】
検査画像と参照画像の間に色ムラがある状態で検出したグレイレベル差ΔGLは、図6にて実線にて示すようにその分布の中心に「ΔGL=0」からずれるため、このようなグレイレベル差ΔGLを用いて適正に欠陥検出を行うためには、色ムラの大きさに応じて、検出されたグレイレベル差を全体的にシフトさせるか、欠陥検出に使用する検出閾値Tにオフセットを与える必要がある。
検査画像と参照画像が飽和した画素を含む場合のグレイレベル差のヒストグラムを点線にて示す。上述の通り、検査画像と参照画像が飽和した画素を含むと、グレイレベル差「ΔGL=0」となる画素数が多くなる。このためこのような分布に基づいて検査画像と参照画像の間の色ムラ量を決定すると、検査画像と参照画像との間の差が小さい画素の出現頻度が高くなるため、本来の値Δuよりも小さな値Δu’となってしまう。
【0019】
本発明は上記のような問題点に鑑みてなされたものであり、検査対象である相互に同一であるべきパターンを撮像して得た検査画像と参照画像とを比較して、相違する箇所を前記パターンの欠陥として検出する欠陥検査において、検査画像と参照画像とに含まれる飽和画素による影響を回避することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上記目的を達成するため、本発明では、欠陥検査において、検査画像に含まれる各画素とこれら画素にそれぞれ対応する参照画像の各画素のうち、対応する画素の両方のグレイレベル値が所定の閾値より小さいものについて、対応する画素間のグレイレベル差を検出する。
このようなグレイレベル差のみを検出することによって、検査画像と参照画像の対応し合う画素同士の間で検出されるグレイレベル差のうち、検査画像内及び参照画像内の飽和した画素について算出されたグレイレベル差を除外することが可能となる。
【0021】
飽和した画素について算出されたグレイレベル差を除いたグレイレベル差を用いて検出閾値を決定することによって、従来生じていた検出閾値が過剰に低くなるという問題が解消される。
また飽和した画素について算出されたグレイレベル差を除いたグレイレベル差を用いて色ムラ補正量を算出することによって、色ムラ補正量が過剰に小さくなるという問題を解消される。
【発明の効果】
【0022】
検査画像と参照画像とを比較して、相違する箇所を前記パターンの欠陥として検出する欠陥検査において、検査画像と参照画像とに含まれる飽和画素による影響が回避される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、添付する図面を参照して本発明の実施例を説明する。図7は、本発明の実施例による欠陥検査装置のブロック図である。欠陥検査装置1は、図1を参照して説明した構成と類似の構成を有しており、同様の構成要素には同じ参照番号を付すこととし同様の機能については説明を省略する。欠陥検査装置1は、有効グレイレベル差検出部25と、色ムラ補正値算出部26を備える。
【0024】
有効グレイレベル差検出部25は、画像記憶部21から取り出され差分検出部22へ入力される検査画像と参照画像と、差分検出部22によって検出される検査画像と参照画像との間のグレイレベル差(差画像)とを入力する。
そして有効グレイレベル差検出部25は、差分検出部22から入力された各グレイレベル差について、そのグレイレベル差が算出された検査画像の画素と参照画像の画素のグレイレベル値とがともに所定の閾値GLTよりも小さいか否かを判定し、これら対応する画素のグレイレベル値がともに閾値GLTよりも小さいときのみ、これら画素間で検出されたグレイレベル差を検出閾値決定部23及び色ムラ補正値算出部26に出力する。
ここで所定の閾値GLTは、検査画像及び参照画像の画素の飽和グレイレベル値、すなわちこれら画像の画素値のダイナミックレンジの上限値、またはこの飽和グレイレベル値から所定のマージンを差し引いた値に設定してよい。このような値に閾値GLTを設定することによって、有効グレイレベル差検出部25から出力されるグレイレベル差は、差分検出部22によって検出されるグレイレベル差から、飽和した検査画像と参照画像の画素について検出されたグレイレベル差を除外したものとなる。
【0025】
図1に示す従来の構成では検出閾値決定部23は、差分検出部22から出力されるグレイレベル差を入力していたが、これに代えて、図7に示す本実施例の構成では検出閾値決定部23は、有効グレイレベル差検出部25から出力されるグレイレベル差を入力する。そして飽和した画素について検出されたグレイレベル差を除外したグレイレベル差の分布に基づいて、図3及び図4の(A)〜図4の(C)を参照して説明した統計処理により検出閾値を決定し、検出閾値を欠陥検出部24へ出力する。
【0026】
有効グレイレベル差検出部25から出力されるグレイレベル差信号は、飽和した画素について検出されたグレイレベル差が除外されているので、差分検出部22から直接出力されるグレイレベル差と比べて、グレイレベル差ΔGL=0付近の出現頻度が少なくなり分散値が大きくなる。
例えば図4の(A)〜図4の(C)を参照して説明した統計処理により検出閾値を決定する場合には、グレイレベル差ΔGLの分散値が大きくなることにより図4の(C)に示す変換累積頻度の傾きaが小さくなるので、検出閾値が従来よりも大きい値に設定される。このため、従来の検出閾値の決定処理において、飽和した画素について検出したグレイレベル差の影響によって検出閾値が適正値よりも低めに設定される問題が解消される。
【0027】
検査画像の差画像のグレイレベル差を統計処理して欠陥の検出感度を決定する際に、統計処理から飽和した画素のグレイレベル差を除外することは、図4の(A)〜図4の(C)のような検出閾値決定方法だけでなく、様々な決定方法においても広く良好な効果をもたらすことが予想される。なぜならば、飽和した画素について検出されたグレイレベル差を除外することによって、グレイレベル差の分散値が過小になることを防止することは、一般に検査画像のノイズレベルが過小に検出されることを防止することを意味するので、他の検出感度決定方法においても、検出感度を過大に設定する(例えば検出閾値を過小に設定する)問題を回避しうるからである。
【0028】
図7に戻り、色ムラ補正値算出部26は、有効グレイレベル差検出部25から出力されるグレイレベル差信号に所定の統計処理を行うことにより、グレイレベル差信号の分布に基づいて、検査画像と参照画像との間の色ムラ補正量を検出する。統計処理の例としては、色ムラ補正値算出部26は、入力したグレイレベル差の平均値を相殺する値を色ムラ補正量として採用してよい。色ムラ補正値算出部26により算出された色ムラ補正量は、欠陥検出部24に入力される。
【0029】
欠陥検出部24は、差分検出部22により検出されたグレイレベル差と検出閾値決定部23により決定された検出閾値とを比較して、グレイレベル差信号が検出閾値を超える場合には、検査画像及び参照画像のうちどちらかが、このようなグレイレベル差信号を算出した画素の位置に欠陥を含んでいると判断する。
このとき欠陥検出部24は、色ムラ補正値算出部26により算出された色ムラ補正量に基づいて、検査画像と参照画像との間の色ムラの補正を行う。例えば色ムラ補正処理は、差分検出部22により検出されたグレイレベル差を、算出された色ムラ補正量だけシフトすることによって行ってもよく、又は検出閾値決定部23により決定された検出閾値に色ムラ補正量に応じたオフセットを与えて行ってもよい。
【0030】
図8は、本発明の実施例による欠陥検査方法のフローチャートである。本フローチャートは、ウエハ2を撮像して得た撮像画像を所定サイズの小さな部分画像に分割した「フレーム」単位に検出閾値を決定する実施例について説明している。ステップS1からステップS5により構成されるループでは、1つのフレームの検査画像と1つのフレームの参照画像にそれぞれ含まれる画素を順次入力し、各画素のグレイレベル差を差分検出部22により検出する(ステップS2)。
【0031】
ステップS3において、有効グレイレベル差検出部25は、差分検出部22が検出した各グレイレベル差について、そのグレイレベル差が算出された検査画像の画素と参照画像の画素のグレイレベル値とがともに所定の閾値GLTよりも小さいか否かを判定することにより、これらの画素のいずれかが飽和しているか否かを判定する。
そしてステップS4において、有効グレイレベル差検出部25は、対応する画素のグレイレベル値がともに飽和していないときのみ、これら画素間で検出されたグレイレベル差を有効グレイレベル差として抽出し、検出閾値決定部23及び色ムラ補正値算出部26に出力する。
【0032】
1つのフレームの画素全てについて、グレイレベル差の検出と有効グレイレベル差の抽出が終了すると、ステップS6では、検出閾値決定部23は、ステップS4にて有効グレイレベル差検出部25が抽出した有効グレイレベル差の分布に基づいて、上述の統計処理により検出閾値を決定し、検出閾値を欠陥検出部24へ出力する。
ステップS7では、色ムラ補正値算出部26は、ステップS4にて有効グレイレベル差検出部25が抽出したグレイレベル差信号に上述の統計処理を行うことにより、検査画像と参照画像との間の色ムラ補正量を検出する。
【0033】
ステップS8において、欠陥検出部24は、ステップS2にて差分検出部22が検出したグレイレベル差とステップS6にて検出閾値決定部23が決定した検出閾値とを比較することによって、検査画像及び参照画像のどちらかに含まれる欠陥を検出する。このとき欠陥検出部24は、ステップS7にて色ムラ補正値算出部26により算出された色ムラ補正量に基づいて、検査画像と参照画像との間の色ムラの補正を行う。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明は、検査対象である相互に同一であるべきパターンを撮像して得た検査画像と参照画像とを比較して、相違する箇所を前記パターンの欠陥として検出する欠陥検査に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】従来の欠陥検査装置のブロック図である。
【図2】半導体ウエハ上のダイの配列を示す図である。
【図3】検出閾値決定部の構成例を示すブロック図である。
【図4】図3に示す検出閾値決定部による検出閾値決定処理の説明図である。
【図5】検査画像と参照画像の間のグレイレベル差の分散の説明図である。
【図6】検査画像と参照画像の間に色ムラがある場合のグレイレベル差のヒストグラムである。
【図7】本発明の実施例による欠陥検査装置のブロック図である。
【図8】本発明の実施例による欠陥検査方法のフローチャートである。
【符号の説明】
【0036】
1 欠陥検査装置
2 ウエハ
14 撮像部
21 画像記憶部
22 差分検出部
23 検出閾値決定部
24 欠陥検出部
25 有効グレイレベル差検出部
26 色ムラ補正値検出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
相互に同一であるべきパターンを撮像して得た検査画像と参照画像とを比較して、相違する箇所を前記パターンの欠陥として検出する欠陥検査装置において、
前記検査画像に含まれる各画素とこれら画素にそれぞれ対応する前記参照画像の各画素のうち、対応する画素の両方のグレイレベル値が所定の閾値より小さいものについて、前記対応する画素間のグレイレベル差を検出するグレイレベル差検出部を備えることを特徴とする欠陥検査装置。
【請求項2】
前記グレイレベル差検出部により前記検査画像と前記参照画像にて検出された前記グレイレベル差に対して所定の統計処理を行うことにより検出閾値を決定する検出閾値決定部と、
前記検査画像と前記参照画像の対応する画素同士のグレイレベル差と前記検出閾値とを比較することにより、前記検査画像と前記参照画像とが相違する画素を欠陥として検出する欠陥検出部と、
を備えることを特徴とする請求項1に記載の欠陥検査装置。
【請求項3】
前記グレイレベル差検出部により前記検査画像と前記参照画像にて検出された前記グレイレベル差に基づいて、前記検査画像と前記参照画像との間の色ムラの補正値を算出する色ムラ補正値算出部を備えることを特徴とする請求項1に記載の欠陥検査装置。
【請求項4】
相互に同一であるべきパターンを撮像して得た検査画像と参照画像とを比較して、相違する箇所を前記パターンの欠陥として検出する欠陥検査方法において、
前記検査画像に含まれる各画素とこれら画素にそれぞれ対応する前記参照画像の各画素のうち、対応する画素の両方のグレイレベル値が所定の閾値より小さいものについて、前記対応する画素間のグレイレベル差を検出することを特徴とする欠陥検査方法。
【請求項5】
前記検査画像と前記参照画像にて検出された前記グレイレベル差に対して所定の統計処理を行うことにより検出閾値を決定し、
前記検査画像と前記参照画像の対応する画素同士のグレイレベル差と前記検出閾値とを比較することにより、前記検査画像と前記参照画像とが相違する画素を欠陥として検出する、
ことを特徴とする請求項4に記載の欠陥検査方法。
【請求項6】
前記検査画像と前記参照画像にて検出された前記グレイレベル差に基づき、前記検査画像と前記参照画像との間の色ムラの補正を行うことを特徴とする請求項4に記載の欠陥検査方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−97921(P2009−97921A)
【公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−268084(P2007−268084)
【出願日】平成19年10月15日(2007.10.15)
【出願人】(000151494)株式会社東京精密 (592)
【Fターム(参考)】