説明

欠陥観察装置、および欠陥観察方法

【課題】指定された座標に試料ステージを移動して試料を観察する観察装置において、ズレ量の測定を必要最小限にしてスループットの低下を抑え、また、検出画像の観察視野サイズを最適化する。
【解決手段】まず、ADRを開始する前に、上位の検査装置が出力した試料位置と実際に観察装置で検出した試料位置とのズレ量を測定して、ズレ量が最小となるように座標補正式を最適化するファインアライメント処理を開始するS201。ファインアライメント処理S201では、座標補正式に基づく補正座標と、実際に検出した試料位置とのズレを測定し(S202)、座標補正式を最適化する手順を繰り返す(S203)。ズレ量を算出した後に、ズレ量の収束判定を行う(S204)。ズレ量が収束していなければ、ファインアライメントを継続する(S208)。ズレ量が収束していれば、ADRの観察視野がズレの収束値以上になるように設定し(S205)、ファインアライメントを終了し(S206)、ADRを開始する(S207)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、指定された座標に試料ステージを移動して試料を観察する観察装置に関し、特に、SEM(Scanning Electron Microscope)式欠陥観察装置のように、上位の検査装置で検出した欠陥位置情報をもとに、ADR(Automatic Defect Review)により、観察位置を決定する欠陥観察装置に関する。
【0002】
観察視野に試料が入るように指定座標と観察座標の補正を行い、高スループットと試料位置検出精度とを両立するために最適な観察視野サイズを設定する方法、および観察装置に関するものである。
【背景技術】
【0003】
例えば半導体製造工程において高い歩留りを確保するためには、製造工程において発生する欠陥を早期に発見し、いち早く対策を施すことが重要である。近年、半導体の微細化に伴い、微小な欠陥であっても、歩留りに与える影響を無視できなくなり、観察対象とする必要がある欠陥サイズが微小になってきている。SEM式欠陥観察装置は、このような微小な欠陥を観察するための装置のうちの重要な装置の1つであり、一般に、例えば光学顕微鏡や別のSEM装置などの上位の検査装置で検出した欠陥位置をもとに、さらに欠陥を観察する装置である。手動で欠陥を観察する場合には、上位の検査装置が出力した座標を目標に試料ステージを移動し、試料が視野内に入る程度の低倍率で撮像し、欠陥位置を目視で確認した後に、欠陥位置が視野中心に来るように試料ステージを移動させ、高倍率で観察用の欠陥画像を取得する。この工程を自動化した装置がADR(Automatic Defect Review)である。
【0004】
上記ADRでは、欠陥位置を検出するための低倍画像(以下、「検出画像」と称する。)の視野内に出現した欠陥を画像処理により検出し、検出した欠陥を視野の中心に来るように試料ステージを移動させ、欠陥の詳細が観察しやすい倍率で高倍画像(以下、「観察画像」と称する。)を取得する。この際、画像処理を行うという観点からは、検出画像は欠陥が大きく見える高倍率であることが好ましいが、倍率を上げすぎると欠陥が視野内に入ってこない(以下、「視野ズレ」と称する。)確率が高くなるため、ADRの設定において、検出画像の倍率設定は、ユーザーの経験に頼ることになり、設定が難かしいパラメータである。
【0005】
特に、微小な欠陥の検出と、視野ズレ防止と、を両立する手段として、倍率は変更せずに観察視野サイズを拡大する手法が採用され始めており、検出画像の倍率と視野サイズとを組み合わせて設定を行う必要があるため、より一層、設定の難易度が高くなるという問題がある。
【0006】
検出画像の倍率設定作業を効率良く行うための方法として、上位の検査装置が出力した欠陥位置と、実際に検出した欠陥位置と、のズレ量から、ズレ量が最小となるように座標補正式を最適化する方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。また、検出したズレ量に応じて検出画像の倍率を最適化する方法が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0007】
【特許文献1】特開2001−338601号公報
【特許文献2】特開2002−131253号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記特許文献1に開示されている方法によれば、座標補正式を最適化し、測定したズレ量から検索倍率を設定することが可能である。
【0009】
しかしながら、上位の検査装置の座標精度が低い場合には、補正効果が期待できないため、SEM式欠陥観察装置の場合において、SEMによるADRを実施する前に、SEMより高速に欠陥位置検出が可能な、観察装置に付属する、例えば光学式顕微鏡を使用して、観察対象である全欠陥位置を検出するのが一般的である。このように、全欠陥位置を検出してから観察し直す場合に、スループットの低下が著しくなるため、座標補正式の最適化処理を必要最小限に抑える手法の開発が求められている。
【0010】
また、上記のような従来の技術では、数点のズレ量測定による座標補正式最適化により、十分な補正効果が得られる場合であっても、補正効果に関する評価を行う手段がないため、予め設定した点数を満たすまで、ズレ量測定を実行し続けることになる。このように、上記の検査装置の座標精度が良い場合においても、座標補正式最適化処理を必要最小限に抑える手法の開発が求められている。
【0011】
さらに、上位検査装置の種類や状態により座標精度は大きく異なるため、同一処理による座標補正精度にはバラツキが生じる。このような状態で、観察視野から試料が外れないように、かつ、ADR検出精度向上のために、できるだけ高倍率で、検出画像の倍率と観察視野サイズとを組み合わせて設定する作業は、たとえ熟練者であっても難しい作業であり、だれでも簡単に設定できる仕組みの構築が求められている。
【0012】
本発明は、ズレ量の測定作業を必要最小限にしてスループットの低下を抑えることを目的とする。また、検出画像の観察視野サイズを最適化することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために、本発明の実施態様は、試料上の欠陥を観察する欠陥観察装置において、外部装置から送られる欠陥の座標情報に基づいて欠陥を検出する検出光学部と、検出された欠陥の座標と座標情報との差を演算する演算部とを備え、演算部は差の値が予め定められた値より小さくなった場合に、差の演算の継続を判断する構成とする。
【0014】
本発明の他の観点によれば、試料上の欠陥を観察する欠陥観察装置において、試料の画像を予め定められた視野の大きさで表示する表示装置と、外部装置から送られる欠陥の座標情報に基づいて欠陥を検出する検出光学部と、検出された欠陥の座標と座標情報との差を演算する演算部とを備え、演算部は、差の値と視野の大きさから決められた基準値とに基づいて、差の演算の継続を判断する構成とする。
【0015】
本発明の他の観点によれば、試料上の欠陥を観察する欠陥観察装置において、試料の画像を予め定められた大きさの視野で表示する表示装置と、外部装置から送られる欠陥の座標情報に基づいて欠陥を検出する検出光学部と、検出された欠陥の座標と座標情報との差を演算する演算部とを備え、演算部で演算された差の値が、視野の大きさから決められた基準値内に含まれる場合に、差の演算の継続を判断する構成とする。
【0016】
本発明の他の観点によれば、試料上の欠陥を観察する欠陥観察装置において、試料の画像を予め定められた大きさの視野で表示する表示装置と、外部装置から送られる欠陥の座標情報に基づいて欠陥を検出する検出光学部と、検出された欠陥の座標と座標情報との差を演算する演算部とを備え、演算部は、表示装置に表示された試料の画像に欠陥が現れる場合に、差の演算の継続を判断する構成とする。
【0017】
本発明の他の観点によれば、予め算出されている第1の座標系における座標位置に試料を移動して第2の座標系によりその位置が特定される試料の欠陥を観察する欠陥観察装置において、予め算出された座標位置と実際の試料位置とのズレ量を計測するズレ量計測部と、計測されたズレ量を最小化する方向に第2の座標系から第1の座標系への変換を行うための座標補正式を最適化する座標補正式適正化部と、ズレ量が収束したことを判断するズレ量収束判定部と、を有し、ズレ量が収束した場合に、座標補正式の適正化のための計測を終了する構成とする。
【0018】
本発明の他の観点によれば、予め算出されている第1の座標系における座標位置に試料を移動して第2の座標系によりその位置が特定される試料の欠陥を観察する欠陥観察方法において、前記第1の座標位置と前記第2の座標位置とのズレ量を測定し、該ズレ量が最小となるように座標補正式を最適化するファインアライメント処理を開始するステップと、前記座標補正式に基づく補正座標と、実際に検出した試料位置とのズレを測定しながら前記座標補正式を最適化する手順を繰り返すステップと、前記ズレ量の収束判定を行うステップと、ズレ量が収束していなければ、前記ファインアライメントステップを継続し、ズレ量が収束していれば、観察視野がズレの収束値以上になるように設定し、ファインアライメントを終了し、ADRを開始するステップと、を有することを特徴とする欠陥観察方法が提供される。
【0019】
前記ズレ量の収束値とFOVとの大小関係の比較を行うステップと、ズレ量の収束値がFOV以下であった場合には、ファインアライメントを終了してADRを開始し、収束値が設定FOVより大きい場合は、観察倍率は固定したまま、ADRのFOVを拡大するステップと、を有することが好ましい。
【0020】
本発明は、上記ステップをコンピュータに実行させるためのプログラムであっても良く、或いは、このプログラムを格納するコンピュータ読みとり可能な記録媒体であっても良い。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、座標補正式を用いた際のズレ量が収束した時点で、座標補正式最適化のための計測を終了するため、スループットの低下を最小限に抑えることができる。
【0022】
また、算出したズレ量の収束値から、試料が観察視野から外れないために必要な観察視野サイズを自動設定できるため、ADR実行時に試料が視野から外れているために試料位置検出に失敗する頻度を低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下に、本発明の一実施の形態による欠陥観察蔵置について図面を参照しながら説明を行う。図1は、本実施の形態によるSEM式欠陥観察装置の一構成例を示す断面図である。図1に示すSEM式欠陥観察装置は、電子銃101、レンズ102、偏向器103、対物レンズ104、試料105、ステージ106、二次粒子検出器109、電子光学系制御部110、A/D変換部111、ステージ制御部112、全体制御部113、画像処理部114、ディスプレイ115、キーボード116、記憶装置117、マウス118、光学式顕微鏡119を含んで構成されている。電子銃101から発射された電子ビーム107は、レンズ102で集束され、偏向器103で偏向された後に、対物レンズ104で集束されて、試料105に照射される。電子ビーム107が照射された試料105から、試料の形状や材質に応じて二次電子や反射電子等の二次粒子108が発生する。発生した二次粒子108は、二次粒子検出器109で検出され、A/D変換部111でデジタル信号に変換されて、SEM画像が形成される。生成したSEM画像を使用して、欠陥検出などの画像処理が画像処理部114で実行される。レンズ102、偏向器103、対物レンズ104の制御は、電子光学系制御部110で行われる。試料の位置制御は、ステージ制御部112で制御されたステージ106で実行される。全体制御部113は、キーボード116、マウス118、記憶装置117から送られた入力信号を解釈し、電子光学系制御部110、ステージ制御部112、画像処理部114等を制御して、必要に応じてディスプレイ115、記憶装置117に処理内容を出力する。
【0024】
図2は、ズレ量の測定を最小限にすることでスループットの低下を抑え、また、観察視野サイズ(以下、FOV:Field of View)を最適化する処理の流れを示すフローチャート図である。まず、ADRを開始する前に、上位の検査装置が出力した試料位置と実際に観察装置で検出した試料位置とのズレ量、すなわち、座標の差を演算して、ズレ量が最小となるように座標補正式を最適化するファインアライメント処理を開始する(S201)。ファインアライメント処理のステップS201では、座標補正式に基づく補正座標と、実際に検出した試料位置とのズレを測定し(S202)、座標補正式を最適化する手順を繰り返す(S203)。
【0025】
尚、座標補正式としては、例えば、以下のような式を用いることができる。
【0026】
例えば、特許文献1にも記載されているように、座標誤差要因が原点オフセット(a,b)と回転方向誤差β、X軸及びY軸の寸法精度誤差m,n、座標軸の直交精度誤差αの場合、座標変換式は次の式(1)で表される。
【0027】
【数1】

【0028】
ここで、(x1,y1):異物検査装置で測定された異物座標値、(x,y):SEMの座標系に適合するように変換された異物座標値、(a,b):異物検査装置の座標原点誤差、m:異物検査装置のX軸寸法精度誤差、n:異物検査装置のY軸寸法精度誤差、α:異物検査装置の座標の直交性誤差、β:座標軸間の角度誤差である。異物検査装置で測定された異物座標(x1,y1)がSEMで測定された座標(x,y)に高精度に合致するように最小自乗法によってパラメータa,b,m,n,α,βを決定して作成された座標変換式により、異物検査装置からの座標値がSEM用に補正される。これは、例えばコンピューター内でソフト的に実行することができる。
【0029】
座標補正式としては、特許文献2に記載される以下のような式を用いても良い。
dX=a+b*X−c*Y …(2)
dY=d+e*Y+f*X …(3)
【0030】
ここで、dX:x軸方向の位置補正量、dY:y軸方向の位置補正量、X:検出座標系でのx軸方向の欠陥位置、Y:検出座標系でのy軸方向の欠陥位置、a:検出座標系に対する観察座標系のx軸方向のオフセット成分の定数、b:検出座標系に対する観察座標系のx軸方向の拡大成分の定数(係数)であり、
c:検出座標系に対する観察座標系のx軸方向の回転成分の定数(係数)、
d:検出座標系に対する観察座標系のy軸方向のオフセット成分の定数、
e:検出座標系に対する観察座標系のy軸方向の拡大成分の定数(係数)、
f:検出座標系に対する観察座標系のy軸方向の回転成分の定数(係数)、
である。
【0031】
なお、検出座標系に対する観察座標系の回転成分については、反時計周りの回転方向をプラスとしている。
【0032】
上記のいずれかを選択して用いることができる仕組みにしてもよい。
【0033】
ズレの要因としては、上位検査装置のステージ精度を含む座標検出精度に依存する誤差、観察装置のステージ精度に依存する誤差、などが挙げられる。観察装置のステージ精度に依存する誤差は、観察装置で制御および補正することが比較的容易であるが、多種多様な上位の検査装置に起因する誤差を観察装置側で補正するのは困難である。そこで、観察のたびにズレ量を計測して、座標補正式のパラメータを変更して最適化するのが一般的である。また、ズレ量の測定点数を増やして座標補正式最適化の繰り返し回数を増やすほど、補正精度は向上する傾向にあるが、補正精度の向上の程度は、上位検査装置の種類や状態および設定条件により変動するため、何回繰り返せば十分かに関して事前に判断することは、極めて困難である。
【0034】
そのため、上位検査装置の座標精度が悪いと予測される場合には、スループット向上よりも、確実に試料観察を成功させることを重視して、観察対象すべてに対してファインアライメントを実施するのが一般的である。尚、本実施の形態では、座標補正式の形式は任意である。例えば、特許文献1に記載の形式で行っても良く、他の形式でも良い。次に、ズレ量を算出した後に、ズレ量の収束判定を行い、ファインアライメントの継続を判断する(S204)。ズレ量が収束していなければ、ファインアライメントを継続し、ズレ量の演算を継続する(S208)。ズレ量が収束していれば、ADRの観察視野がズレの収束値以上になるように設定し(S205)、ファインアライメントを終了してズレ量の演算を停止し(S206)、ADRを開始する(S207)。
【0035】
図3は、ズレ量の収束値から算出したFOVが装置で設定できない条件であった場合の、観察視野サイズFOVを最適化する処理の流れを示すフローチャート図である。FOVが装置で設定できない条件であった場合とは、例えば、収束値が大きな値で、装置で設定できるFOVの最大値を上回っているような場合である。この意味は、FOVの外に欠陥が存在するということなので、後述の図3のステップS312の周辺探索機能を使用する。
【0036】
ステップS301、S302、S303、S304、S306、S307、S308に示す処理は、図2のステップS201、S202、S203、S204、S206、S207、S208の処理と同様の処理である。ステップS305では、ズレ量の収束値とFOVとの大小関係の比較を行う。ズレ量の収束値がFOV以下であった場合には、ファインアライメントを終了して(S306)、ADRを開始する(S307)。
【0037】
この場合、残りの試料に関しては、ズレ量が収束していることから、設定FOVで試料が観察視野内に入ってくることが期待できるため、ファインアライメント処理なしでADRが実行でき、スループットが向上するという利点がある。ステップS305の判定により、収束値が設定FOVより大きい場合は、観察倍率は固定したまま、ADRのFOVを拡大する(S309)。ここで観察倍率を固定する理由は、ADRの検出感度を低下させないためである。すなわち、観察倍率を下げれば、同じ画像サイズで撮像できる視野サイズは大きくなるが、一画素あたりの情報量は低下するため、画像処理による検出感度は低下する。従って、観察倍率は下げずに、画像サイズを拡大するようにしている。このような理由から、複数の画像サイズで撮像できる機能を持つ観察装置が増えてきているが、ハードウェアおよびソフトウェア上の制約から、予め用意された数種類の画像サイズから、ユーザーが画像サイズを選択設定する手法が一般的である。また、画像サイズが大きくなれば、試料が視野から外れる可能性は低くなるが、広い視野から欠陥を探すために欠陥を検出するための画像処理時間が増加するため、画像サイズをむやみに大きくすることはできない。この適切な画像サイズの設定作業は、特に熟練していないユーザーにとっては負担となる。
【0038】
次に、観察倍率固定でFOVを拡大した後に(S309)、再度、収束値とS309で拡大したFOVとの大小比較処理を行う(S310)。収束値が拡大したFOV以下であれば、試料が視野内に見えることが期待できるので、ファインアライメントを終了し(S306)、ADRを開始する(S307)。収束値が拡大したFOVより大きければ、ファインアライメントを継続するか否かを判断する(S311)。ファインアライメント点数を増やせば、ズレ量は少なくなり、すなわち収束値は小さくなる傾向があるため、ファインアライメントを継続することにより、設定可能なFOVを満たす収束値が得られる可能性が高くなる。ファインアライメントを継続しない場合は、一回の撮像では試料が視野内に入ってこない場合があると予想されるため、一回目の撮像で視野内に試料が入ってこなかった場合には、周辺視野を観察する周辺探索設定を行う(S312)。
【0039】
図4は、ADRの周辺探索設定の最適化処理に関する説明を行うための模式図である。512×512ピクセルの画像サイズ、768×768ピクセルの画像サイズ、1024×1024ピクセルの画像サイズから必要画素サイズを設定するケースを例にして説明する。
【0040】
例えば、画像サイズをS、その画像の画素数を下付添え字で表すとすると、ファインアライメントの収束値、検出したい最小欠陥サイズ、画像処理能力から決定した必要画像サイズSが、例えばS512<S<S768の範囲にある場合は(401)、ADRの画像サイズは、余裕をみて画素数が高い方のS768に設定する(402)。
【0041】
次に、ファインアライメントの収束値、検出したい最小欠陥サイズ、画像処理能力から決定した必要画像サイズSが、S1024<Sの場合は(403)、1回の撮像では視野内に試料が入ってこない場合があり得るため、以下に述べるように周辺探索設定処理が必要となる。図4の符号404では、それぞれの画素が512×512ピクセルの画像サイズの画像で周辺探索する例を示している。768×768ピクセル、あるいは1024×1024ピクセルで周辺探索しても良いが、画像サイズが小さいほど画像処理時間を短縮することができるため、符号404では最小画像サイズである512×512ピクセルの画像9個により周辺探索している。符号404に示すように、中心の512×512ピクセルの画像サイズの画像の周りに、同じ512×512ピクセルの画像サイズの画像を上下・左右・斜め4方向に配置し、1536×1536の大きな画像であって、実際には、9つの512×512ピクセルの画像サイズの画像に分割されている画像を形成する。これにより、512×512ピクセルの画像サイズの画像の処理を、例えば並列に9回行うことで、処理速度を速めることができる。また、中心の画像における探索を最優先し、次に上下左右、斜めというように探索順序に優先度をつけることで、より素早く欠陥の探索を行うこともできる。
【0042】
図5は、本実施の形態による収束判定方式の一例を説明するための、ファインアライメント実行点数Nとズレ量の絶対値Dとの関係を示すグラフである。FOVの線は、FOVの大きさから決められた基準値であり、予め設定したり、変更したりすることができる。ファインアライメント実行点数Nが多くなるほど、ズレ量の絶対値Dが小さくなり、収束していく。本実施の形態では、収束判定方式の種類は任意である。例えば、簡単な例として、ズレ量の絶対値Dが予め定められたFOVの値以下になったら収束したと判定する。しかし、これは、ズレ量の絶対値Dの収束を真に判定しているわけではないため、FOVの値を小さく設定した場合、ズレ量の絶対値が収束していないにもかかわらず収束したと判定してしまう可能性がある。したがって、ズレ量の絶対値Dが予め定められたFOVの値以下になっても、ほぼ収束と判断されるまで数点又は数十点の測定を行ってから収束と判定する必要がある。
【0043】
別の例として、下記式(4)に示すように、測定したズレ量Dと直前のズレ量Dn−1との比が設定値ε以下の場合に収束したと判断するアルゴリズムを用いることができる。より正確さを増すためには、Dがある値以下とする条件を付けてもよいし、ある設定回数だけ連続して式(4)を満たした場合に収束したとする条件を追加してもよい。
/Dn−1<ε (4)
【0044】
例えば、ファインアラインメント実行点数とズレ量Dとの関係を示す図5において、Ni+1で収束したと判断した場合には(黒丸の最後のプロット)、ADRのFOVをNi+1に対応するDi+1以上に設定してファインアライメントを終了し、ADRを実行することができる。このように、式(4)に示す手法によれば、収束条件を測定したズレ量Dと直前のズレ量Dn−1との比が設定値ε以下の場合というように、ズレ量がある値以下になった場合、又は、それが1〜2回ほど続いた場合には収束と判断することができるため、処理が簡単になる。また、ズレ量のバラツキが大きく収束値が不明な場合でも、ADR設定FOVの値を収束値と近似して決定することができるため、処理がさらに簡単になるという利点がある。
【0045】
図6は、ファインアライメント結果を解析して自動設定されたFOVの確認、およびFOVの手動設定を行うためのGUIの一例を示す図である。画面中では、FOVが直線や円などのマークで表示され、予め設定したり、位置を変更したりすることができる。図6に示す画面601(図1の115に対応)は、ズレ量とファインアライメント点数の関係を表すグラフであり、各測定点におけるズレ量602、ズレ量の収束値603、FOV604を画面に表示している。FOV604は、マウス等の指示デバイスを用いたドラッグ&ドロップ操作、あるいは、移動ボタン(図では▲または▼)により設定を変更することができる。画面605は、座標補正式最適化の前後のズレ量の変化を表すグラフである。FOV606と座標補正式最適化前の各測定点における白丸○で示すズレ量607、FOV606と座標補正式最適化後の各測定点における黒丸●で示すズレ量608の両方を表示している。破線609は、ズレ量の収束値603に対応する収束値を表しており、座標補正式最適化後のズレ量が収束値以下に収まっていることがわかる。FOV606は、マウス等の指示機能を用いたドラッグ&ドロップ操作、あるいは移動ボタン(図では▲または▼)により設定を変更することができる。
【0046】
表610には、ズレ量の収束値とFOV611が表示されており、FOV611は、キーボード等の入力デバイスを用いて数値を入力、更新することができる。また、画面601におけるFOV604と、画面605におけるFOV606と、表610におけるFOV611とは連動しており、1箇所の設定を更新した結果は、他の2箇所にも自動的に反映される。表612には、ADRにおける検出対象となる最小欠陥サイズ613、最小欠陥サイズ613と画像処理能力との関係から算出される各画像サイズにおけるFOVの最大値を表示する。
【0047】
最小欠陥サイズ613は、キーボード等の入力デバイスを用いて数値を入力、更新することができる。例えば、3画素以上の差異を検出できる画像処理能力を有し、最小欠陥サイズを30nmとした場合には、1画素あたり10nmの検出が可能であるため、512画素サイズにおける最大FOVは5.2μm、768画素サイズにおける最大FOVは7.7μm、1024画素における最大FOVは10.3μmと算出できる。
【0048】
一般に、画像サイズが小さいほど、ADRにおける欠陥検出処理時間は短くなるので、設定されたFOVを満たす、最小画素の画像サイズが選択されることになる。図6では、512画素の画像サイズを選択するのが、スループットの面から有利となる。
【0049】
尚、図6に示す各画面のうち、ズレ量とファインアライメント点数の関係を表す画面601のグラフ、座標補正式最適化の前後のズレ量の変化を表す画面605のグラフ、表610のズレ量の収束値とFOV611、表612の各画素サイズにおけるFOVの最大値のうち、少なくともいずれかが設けられておれば良く、必ずしも全てが容易されていなくても良い。また、画面切替によりそれぞれの画面に切り替わるようになっていても良い。
【0050】
以上に説明したように、本実施の形態によれば、座標補正式を用いた際のズレ量が収束した時点で、座標補正式最適化のための計測を終了するので、スループットの低下を最小限に抑えることができる。さらに、算出したズレ量の収束値から、試料が観察視野から外れないために必要な観察視野サイズを自動設定できるので、ADR実行時に試料が視野から外れているために試料位置検出に失敗する頻度を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の一実施の形態によるSEM式半導体欠陥レビュー装置の基本構成を示す断面図である。
【図2】本実施の形態によるファインアライメント終了判定とFOV最適化の処理の流れを示すフローチャート図である。
【図3】ファインアライメント終了判定とFOV最適化、周辺探索設定最適化のフローチャート図である。
【図4】画像サイズおよび周辺探索設定の関係を表す図である。
【図5】ファインアライメント実行点数とズレ量およびFOVの関係を表す図である。
【図6】ファインアライメント解析およびFOV設定のGUIの一例を示す図である。
【符号の説明】
【0052】
110…電子光学系制御部、113…全体制御部、114…画像処理部、115…ディスプレイ、117…記憶装置、601…画面、605…画面、610…表、612…表。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
予め算出されている第1の座標系における座標位置に試料を移動して第2の座標系によりその位置が特定される試料の欠陥を観察する欠陥観察装置において、
予め算出された座標位置と実際の試料位置とのズレ量を計測するズレ量計測部と、
計測されたズレ量を最小化する方向に前記第2の座標系から前記第1の座標系への変換を行うための座標補正式を最適化する座標補正式適正化部と、
前記ズレ量が収束したことを判断するズレ量収束判定部と、を有し、
前記ズレ量が収束した場合に、前記座標補正式の適正化のための計測を終了することを特徴とする欠陥観察装置。
【請求項2】
予め算出されている第1の座標系における座標位置に試料を移動して第2の座標系によりその位置が特定される試料の欠陥を観察する欠陥観察装置において、
予め算出された座標位置と実際の試料位置とのズレ量を計測するズレ量計測部と、
計測されたズレ量から、該ズレ量を最小化する方向に前記第2の座標系から前記第1の座標系への変換を行うための座標補正式を最適化する座標補正式適正化部と、
前記ズレ量が収束したことを判断するズレ量収束判定部と、を有し、
前記ズレ量の収束値が予め設定した値以下になることを、前記座標補正式の最適化のための計測を終了する契機とすることを特徴とする欠陥観察装置。
【請求項3】
請求項2の記載において、
前記座標補正式適正化部は、
前記ズレ量の収束値から算出した観察視野サイズが、試料位置検出に必要な最小倍率では実現できない場合には、前記座標補正式の最適化のための計測を継続することを特徴とする欠陥観察装置。
【請求項4】
請求項2の記載において、
前記観察視野サイズ自動設定部は、
前記ズレ量の収束値から算出した観察視野サイズが、試料位置検出に必要な最小倍率では実現できない場合に、試料位置検出視野を複数領域に分割することを特徴とする欠陥観察装置。
【請求項5】
請求項1の記載において、
前記ズレ量の前記収束値に基づいて、前記試料が観察視野から外れない大きさのうちで可能な限り小さい必要画素サイズを算出し、該必要画素サイズに基づいて観察視野サイズを自動設定する観察視野サイズ自動設定部を有することを特徴とする欠陥観察装置。
【請求項6】
請求項5の記載において、
前記座標補正式適正化部は、
前記ズレ量の収束値から算出した観察視野サイズが、試料位置検出に必要な最小倍率では実現できない場合には、前記座標補正式の最適化のための計測を継続することを特徴とする欠陥観察装置。
【請求項7】
請求項5の記載において、
前記観察視野サイズ自動設定部は、
前記ズレ量の収束値から算出した観察視野サイズが、試料位置検出に必要な最小倍率では実現できない場合に、試料位置検出視野を複数領域に分割することを特徴とする欠陥観察装置。
【請求項8】
請求項1の記載において、
各計測点におけるズレ量とファインアラインメント点との関係を示す第1の測定結果と、座標補正式最適化前後のズレ量の変化を表す第2の測定結果と、ズレ量の収束値とFOVとの関係を示す第3の測定結果と、ADRにおける検出対象となる最小欠陥サイズ、該最小欠陥サイズと画像処理能力との関係から算出される各画像サイズにおけるFOVの最大値を示す第4の測定結果との、うちから選択される複数項目を並列表示する制御を行う表示制御部を備えることを特徴とする欠陥観察装置。
【請求項9】
予め算出されている第1の座標系における座標位置に試料を移動して第2の座標系によりその位置が特定される試料の欠陥を観察する欠陥観察方法において、
前記第1の座標位置と前記第2の座標位置とのズレ量を測定し、該ズレ量が最小となるように座標補正式を最適化するファインアライメント処理を開始するステップと、
前記座標補正式に基づく補正座標と、実際に検出した試料位置とのズレを測定しながら前記座標補正式を最適化する手順を繰り返すステップと、
前記ズレ量の収束判定を行うステップと、
ズレ量が収束していなければ、前記ファインアライメントステップを継続し、ズレ量が収束していれば、観察視野がズレの収束値以上になるように設定し、ファインアライメントを終了してADRを開始するステップと
を有することを特徴とする欠陥観察方法。
【請求項10】
請求項9の記載において、
前記ズレ量の収束値とFOVとの大小関係の比較を行うステップと、
ズレ量の収束値がFOV以下であった場合には、ファインアライメントを終了してADRを開始し、収束値が設定FOVより大きい場合は、観察倍率は固定したまま、ADRのFOVを拡大するステップと
を有することを特徴とする欠陥観察方法。
【請求項11】
試料上の欠陥を観察する欠陥観察装置において、
外部装置から送られる欠陥の座標情報に基づいて欠陥を検出する検出光学部と、
該検出された欠陥の座標と前記座標情報との間の座標の差を演算し、
予め定められた値と比較する演算部とを備えたことを特徴とする欠陥観察装置。
【請求項12】
請求項11の記載において、前記演算部は前記差の値が予め定められた値より小さくなった場合に、前記差の演算の継続を判断することを特徴とする欠陥観察装置。
【請求項13】
請求項11の記載において、前記演算部は前記差の値が予め定められた値より小さくなった場合に、前記差の演算を停止するかしないかを判断することを特徴とする欠陥観察装置。
【請求項14】
請求項11の記載において、前記演算部は前記差の値が予め定められた値より小さくなった場合に、前記差の演算を停止することを特徴とする欠陥観察装置。
【請求項15】
試料上の欠陥を観察する欠陥観察装置において、
前記試料の画像を視野の大きさを示すマークとともに表示する表示装置と、
外部装置から送られる欠陥の座標情報に基づいて欠陥を検出する検出光学部と、
該検出された欠陥の座標と前記座標情報との間の座標の差を演算し、前記視野の大きさから決められた基準値と比較する演算部とを備えたことを特徴とする欠陥観察装置。
【請求項16】
請求項15の記載において、
前記演算部で演算された前記差の値が、前記視野の大きさから決められた基準値内に含まれる場合に、前記差の演算の継続を判断することを特徴とする欠陥観察装置。
【請求項17】
請求項16の記載において、前記基準値は変更可能であることを特徴とする欠陥観察装置。
【請求項18】
請求項15の記載において、前記演算部で演算された前記差の値が、前記視野の大きさから決められた基準値内に含まれる場合に、前記差の演算を停止するかしないかを判断することを特徴とする欠陥観察装置。
【請求項19】
請求項18の記載において、前記基準値は変更可能であることを特徴とする欠陥観察装置。
【請求項20】
請求項15の記載において、前記演算部で演算された前記差の値が、前記視野の大きさから決められた基準値内に含まれる場合に、前記差の演算を停止することを特徴とする欠陥観察装置。
【請求項21】
請求項20の記載において、前記基準値は変更可能であることを特徴とする欠陥観察装置。
【請求項22】
試料上の欠陥を観察する欠陥観察装置において、
前記試料の画像を表示する表示装置と、
外部装置から送られる欠陥の座標情報に基づいて欠陥を検出する検出光学部と、
該検出された欠陥の座標と前記座標情報との間の座標の差を演算する演算部とを備え、
前記演算部は、前記表示装置に表示された前記試料の画像に前記欠陥が現れるか否かに応じて、前記差の演算の継続を判断することを特徴とする欠陥観察装置。
【請求項23】
請求項22の記載において、前記演算部は、前記表示装置に表示された前記試料の画像に前記欠陥が現れる場合に、前記差の演算の継続を停止することを特徴とする欠陥観察装置。
【請求項24】
請求項22の記載において、前記演算部は、前記表示装置に前記差の演算の継続を判断するための基準を示すマークを表示することを特徴とする欠陥観察装置。
【請求項25】
請求項24の記載において、前記マークの位置は変更可能であることを特徴とする欠陥観察装置。
【請求項26】
請求項22の記載において、前記表示装置に表示された前記試料の画像に前記欠陥が現れない場合には、当該画像に隣接する領域の画像を撮像し、これを前記欠陥が現れるまで繰り返すことを特徴とする欠陥観察装置。
【請求項27】
試料上の欠陥を観察する欠陥観察装置において、
外部装置から送られる欠陥の座標情報を入力する入力部と、
少なくとも前記座標情報に基づいて所望の演算を実行する演算部と、
該演算部で実行された演算の結果を表示する表示部とを備え、
前記演算部は、前記座標情報に基づいて検出した欠陥の座標と前記座標情報との間の差の大きさの変化を前記表示部へ表示させることを特徴とする欠陥観察装置。
【請求項28】
請求項27の記載において、前記演算装置は、前記差の大きさの変化が予め定められた値より小さくなった場合に、前記差の大きさを前記表示部へ表示させることを特徴とする欠陥観察装置。
【請求項29】
試料上の欠陥を観察する欠陥観察装置において、
外部装置から送られる情報を入力する入力部と、
少なくとも前記情報に基づいて所望の演算を実行する演算部と、
該演算部で実行された演算の結果を表示する表示部とを備え、
前記入力部は、外部装置から送られた前記試料上の着目位置の座標を受け取り、
前記演算部は、前記外部装置から送られた試料上の着目位置の座標は複数であって第1の座標とし、
前記ステージに載置された前記試料上の前記着目位置に対応する着目位置の座標は複数であって第2の座標としたとき、
前記第1の座標と前記第2の座標との間の差を少なくするように前記第2の座標を補正し、
該差が小さくなるように前記第2の座標の補正を繰返し実行し、
前記差が収束したと判定された場合に収束の結果を前記表示部へ表示させる
ことを特徴とする欠陥観察装置。
【請求項30】
請求項29の記載において、前記差の収束の判定用の判定値が前記表示部へ表示されることを特徴とする欠陥観察装置。
【請求項31】
請求項29の記載において、前記演算部は、前記差の収束に基づいて、前記着目位置を観察する像倍率および観察視野サイズを決定することを特徴とする欠陥観察装置。
【請求項32】
請求項31の記載において、前記表示部には、前記演算部で決定された像倍率および観察視野サイズが表示されることを特徴とする欠陥観察装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2008−292472(P2008−292472A)
【公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−112065(P2008−112065)
【出願日】平成20年4月23日(2008.4.23)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】