説明

止水用シール材およびこのシール材を使用する止水方法

【課題】 コンクリート構造物に形成される溝状の目地に嵌合し、目地部における止水を行うために、ジッパー係合溝が設けられた長尺の弾性本体と、ジッパー係合溝に装入されるジッパーとを有する止水用シール材において、ジッパー係合溝へのジッパー装入が容易に行え、弾性本体外側部に設けた止水リブによる止水作用が効果的にもたらされるようにすること。
【解決手段】ジッパー係合溝11aを、ジッパー差込口11aと、このジッパー差込口の幅寸法よりも大きい幅寸法を有するジッパー収容部11aを有するものとし、前記ジッパー12は、前記ジッパー差込口と略同じかそれよりも小さい幅にて前記ジッパー差込口を通過して前記ジッパー収容部内へ装入され、前記ジッパー収容部内で拡幅されるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、漏水対策用の、特にトンネル等覆工コンクリート構造物の漏水対策用の止水用シール材に関する。
【背景技術】
【0002】
一般にトンネル等コンクリート構造物は、年月を経ると亀裂が生じて漏水が生じ、その被害が大きな問題となっている。また、コンクリート構造物の継ぎ目部には目地が形成されるが、この目地は漏水が生じないよう処理されなければならない。従って、漏水防止を目的とした工事が多く行われている。
【0003】
このような漏水防止目的に使用される止水用シール材として下記特許文献1に示されているものが提案されている。この止水用シール材は、コンクリート構造物の亀裂発生部を削って形成した溝状の目地に嵌め込まれ、この目地を埋めるように形成される弾性本体と、前記弾性本体に長手方向に形成されたジッパー係合溝に装入されるジッパーとを有している。前記ジッパーは、弾性材本体が溝状目地内に嵌めこまれた後、前記ジッパー係合溝に圧入され、それにより弾性本体を側方へ押し広げ、弾性本体外側部に形成した止水リブを目地の側壁面に押圧して止水効果を高めるように作用する。
【0004】
上記従来の止水用シール材のジッパーは、横断面で見ると丸頭部と台形基部が結合した形状を有し、丸頭部と台形基部との間には括れ部が設けられている。一方、上記弾性本体に形成されたジッパー係合溝は、前記ジッパーの丸頭部の嵌入溝を内奥側に有し、前記台形基部の収容スペースをジッパー装入用差込口側に有しており、前記嵌入溝と台形基部収容スペースは狭幅の間隙によって連通している。
【0005】
前記ジッパー係合溝にジッパーを嵌合させるには、前記ジッパーの丸頭部を前記差込口に当て、前記台形基部後方から圧力を加える。この圧力によって前記丸頭部は前記狭幅間隙を押し開き、そこを通過して前記丸頭部嵌入溝に入り込む。同時に、前記ジッパーの括れ部は前記狭幅間隙に係合し、前記台形基部は前記台形基部収容スペース内に納まる。
【0006】
横断面で見て、前記丸頭部嵌入溝は前記ジッパー丸頭部に比較して小径となされているので、前記ジッパー丸頭部が前記嵌入溝に装入したとき、前記弾性本体は側方へ押し広げられた状態になり、従って弾性本体側壁部に形成した止水リブは目地の側壁面に押圧され止水効果をもたらす。また、前記狭幅間隙は前記ジッパー丸頭部が前記嵌入溝から離脱するのを阻止する。
【0007】
【特許文献1】特開2002−194332号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記従来の止水用シール材の構成によると、前記ジッパー丸頭部を前記嵌入溝内へ押し込む際、前記ジッパー丸頭部によって前記狭幅間隙を押し広げてこれを通過させなければならないため、前記ジッパーにはかなりの打込み力または押圧力を加える必要があり、従って作業性が悪いという問題があり、また前記ジッパー丸頭部が前記狭幅間隙を通過する時点で前記シール材の弾性本体の拡幅は最大限になり、通過後には弾性本体幅員の若干の縮小が生じるため、その分止水効果が低下するという問題がある。
【0009】
そこで本発明は、上記ジッパー係合溝へのジッパー装入が大きな打込み力或いは押圧力を必要とせずに達成可能であり、しかもシール材弾性本体の拡幅が拡幅過程で幅員縮小を伴うことなく効果的に行われるように構成した止水用シール材及びこの止水用シール材使用する止水方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明のうち請求項1に記載の発明は、コンクリート構造物の亀裂発生部を削って形成されるか、或いはコンクリート構造物の継ぎ目部に形成される溝状の目地に嵌合するように形成され、前記目地の延伸方向に相当する方向に延伸するジッパー係合溝が設けられた長尺の弾性本体と、前記目地内に嵌装された前記弾性本体のジッパー係合溝内に装入され、この装入により前記弾性本体の幅員を拡大するように作用するジッパーとを有する止水用シール材において、前記ジッパー係合溝は、ジッパー差込口と、このジッパー差込口の幅寸法よりも大きい幅寸法を有するジッパー収容部を有しており、前記ジッパーは、前記ジッパー差込口と略同じかそれよりも小さい幅にて前記ジッパー差込口を通過して前記ジッパー収容部内へ装入され、前記ジッパー収容部内で拡幅される部材であることを特徴とする。
【0011】
請求項1に記載の発明によると、前記ジッパーを前記ジッパー係合溝へ装入する際、前記差込口を押し広げることなく推進できるのでジッパーの装入作業が極めて容易になり、また前記ジッパーは前記ジッパー係合溝内で拡幅せしめられ、その拡幅動作が効率よく前記弾性本体に及ぼされ、止水効果を高める作用をもたらす。
【0012】
請求項2に記載の発明は、前記ジッパーが、前記ジッパー係合溝の底面に対向する端面からジッパー内部へ切れ込み且つジッパー長手方向へ延伸する切込みを有し、前記ジッパーを前記ジッパー係合溝へ装入する際に前記切込みに尖端部が係合し、前記ジッパー係合溝内への前記ジッパーの装入進行過程で前記切込みの内部へ前記尖端部を先にして進入せしめられ、前記ジッパーの幅員をジッパー装入方向先端側から順次拡大させる楔片が、前記ジッパーと前記弾性本体との間に介装されていることを特徴とする。
【0013】
請求項2に記載の発明によると、前記ジッパーは前記ジッパー係合溝への装入が進むに従って、前記楔片の作用により拡幅し、それにより前記弾性本体の幅員の漸増的拡大をもたらすが、その際、前記ジッパーは、その差込方向先端側の一部が前記ジッパー係合孔の差込口に差し込まれた後、その先端が前記ジッパー係合溝底部に接近するにつれて次第に拡幅することになり、このことは前記ジッパー係合溝の当初の溝幅がジッパーの当初の幅と大差ない状態になっていることを可能にし、従って前記ジッパー係合溝へのジッパーの装入を比較的小さな押圧力で円滑に行うことができる。更に、ジッパーの拡幅が、ジッパー係合溝差込口側よりも前記ジッパー係合溝底部側において大きくなることによって、ジッパー装入完了後における前記ジッパー係合溝からのジッパー脱離を確実に防止できる。
【0014】
請求項3に記載の発明は、前記ジッパー係合溝が、横断面で見てジッパー係合溝の差込口から内奥へ向かって広がった状態の略台形状を有し、前記ジッパーが、横断面で見て略四角形であることを特徴とする。
【0015】
請求項3に記載の発明によると、前記ジッパーの当初の幅寸法を前記ジッパー係合溝差込口の当初の幅寸法と略同等にしておくことにより、前記ジッパー係合溝への前記ジッパーの装入が比較的小さな押圧力で円滑に達成でき、装入が進むにつれて前記ジッパーは前記楔片の作用により次第に拡幅するが、その際ジッパーは前記楔片の作用により横断面で見て略台形に変形され、前記台形ジッパー係合溝の側面と密着する状態になるので、ジッパーの拡幅が効果的に前記弾性本体に及ぼされる。しかも、装入完了の時点で、前記ジッパー係合溝とジッパーとは、横断面で見て、ジッパー係合溝の底部側が下底となり、ジッパー係合溝の差込口側が上底となる台形を形成して相互に密着するので、前記ジッパーは前記ジッパー係合溝内に確実に保持される。
【0016】
請求項4に記載の発明は、前記ジッパー係合溝がその底部の幅方向中央部にジッパー係合溝に沿って延伸する溝孔を有しており、前記楔片の基端部が前記溝孔によって定置されることを特徴とする。
【0017】
請求項4に記載の発明によると、前記ジッパー係合溝の底部の幅方向中央部にジッパー係合溝に沿って延伸する溝孔が前記弾性本体の拡幅を助成し、従って弾性本体拡幅のためにジッパーへ与えられるべき押圧力が低減可能であり、また前記楔片の基端部が前記溝孔によって保持されるようになされていることによって、前記楔片の基端部位置が固定され、楔片によるジッパー拡幅作用が確実にもたらされる。
【0018】
請求項5に記載の発明は、前記ジッパーが、前記差込口と略同じ幅寸法に圧縮可能であり、前記ジッパー収容部内に装入された後、内部に注入される加圧材料により膨張し、拡幅する弾性的管体を有していることを特徴とする。
【0019】
請求項5に記載の発明によると、前記差込口からの前記弾性的管体の装入が極めて容易に行えると共に、前記弾性的管体内に注入される材料の量、或いは該材料に与えられる圧力の大きさ、或いは該材料によってもたらされる圧力の大きさを調整することによって前記弾性本体の拡幅の大きさを調節することができる。
【0020】
請求項6に記載の発明は、コンクリート構造物の亀裂発生部を削って形成されるか、或いはコンクリート構造物の継ぎ目部に形成される溝状の目地に嵌合するように形成され、前記目地の延伸方向に相当する方向に延伸するジッパー係合溝を有し、更に外側部にジッパー係合溝と同方向へ延伸する止水リブが形成されている長尺の弾性本体と、前記目地内に嵌装された前記弾性本体のジッパー係合溝に装入され、前記弾性本体の幅員を拡大するように作用するジッパーとを有し、前記ジッパー係合溝はジッパー差込口と、その内奥のジッパー収容部とを有している止水用シール材を使用する止水方法であって、前記目地の側面に接着剤を塗布した後、前記弾性本体を前記目地内に嵌入し、前記接着剤の硬化後に、前記ジッパーを、前記ジッパー差込口の幅寸法と略同じか、それよりも小さい寸法にて該ジッパー差込口からジッパー収容部内へ装入し次いで、前記ジッパー収容部内のジッパーを拡幅し、その拡幅によって前記弾性本体を拡幅し、目地側壁とジッパーとの間の前記弾性本体に残留応力を発現させることを特徴とする。
【0021】
請求項7に記載の発明は、請求項6に記載の止水方法において、前記ジッパー差込口の幅寸法がジッパー収容部の幅寸法よりも小さいジッパー係合溝を有する弾性本体と、前記ジッパー差込口と略同じか、それよりも小さい幅寸法を有し、横断面が略四角形のジッパーとを使用し、前記接着剤の硬化後に前記ジッパーを前記ジッパー差込口からジッパー収容部内へ装入する過程で、前記ジッパー収容部内に入ったジッパー部分を、このジッパー部分にその差込み方向先端側から楔片を差し込むことによって拡幅し、この拡幅によって前記弾性本体を拡幅することを特徴とする。
【0022】
請求項8に記載の発明は、請求項6に記載の止水方法において、前記ジッパー差込口の幅寸法がジッパー収容部の幅寸法よりも小さいジッパー係合溝を有する弾性本体と、前記ジッパー差込口の幅寸法よりも小さい幅寸法に縮小可能の弾性的管体より成るジッパーとを使用し、前記接着剤の硬化後に前記弾性的ジッパー管体を前記ジッパー差込口の幅寸法よりも小さい幅寸法に縮小してジッパー差込口からジッパー収容部内へ装入し、前記ジッパー収容部内のジッパー管体の密封孔内に内圧付与材を注入して該ジッパー管体を拡径し、この拡径によって前記弾性本体を拡幅し、目地側壁とジッパーとの間の前記弾性本体に残留応力を発現させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
本発明は、前記コンクリート構造物の亀裂発生部を削って形成されるか、或いはコンクリート構造物の継ぎ目部に形成される溝状の目地を止水用シール材によって止水処理する場合に、目地内への止水用シール材の取付け作業が極めて容易になり、更にシール材による止水作用を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態を図によって詳細に説明する。
【0025】
図1は、コンクリート構造物躯体A及び、このコンクリート構造物躯体Aに形成された目地Bに装入される本発明による止水用シール材10をそれぞれ部分的に斜視図にて示すものである。図示の目地Bは2つのコンクリート躯体A1,A2の間の継ぎ目部に設けた横断面四角形の目地である場合を示している。この目地は、覆工コンクリート構造物の躯体Aに発生した亀裂に沿ってハツリにより形成する場合もある。
【0026】
[止水用シール材の第1の実施形態]
図1に示すように、止水用シール材10は、クロロプレンゴム或いはEPCM製の弾性本体11と、同じくクロロプレンゴム或いはEPCM製のジッパー12と、プラスチック製の楔片13とを有している。これら部材は他の適当な材料で製作してもよい。例えば、弾性本体11及びジッパー12はエチレンプロピレンゴム(EPM)製であってもよい。
【0027】
弾性本体11は目地Bに装入可能な寸法を有する長尺な部材であって、その内部に弾性本体長手方向に延伸するジッパー係合溝11aが設けられ、このジッパー係合溝11aを設けたことによって生じる側壁11bの外側部には、前記長手方向へ伸延する止水リブ11cが形成されている。止水リブ11cは片側に数段に亙って設けた場合が示されているが、その段数は必要に応じて増減可能である。
【0028】
ジッパー係合溝11aは差込口11aから内奥へ向かって幾分末広がり状の略台形状横断面を有するジッパー収容部11aを有している。
【0029】
ジッパー係合溝11aには、その底面11aの幅方向中央部に上記長手方向へ伸延する溝孔11aが形成されており、この溝孔11aは上記の弾性本体側壁11bが下記のようなジッパー12と楔片13による作用を受けた場合に外側方へ偏倚することを助成する。
【0030】
上記ジッパー12は上記弾性本体11と同長であって、横断面で見て実質的に略四角形に形成されている。ジッパー12の高さ寸法はジッパー係合溝11aの深さ寸法に合わせられており、幅寸法は上記差込口11aの幅寸法と略同じになされている。
【0031】
上記ジッパー12には、このジッパーを上記ジッパー係合溝11aに装入したときに上記底面11aに対向する端面12aから反対側の端面へ向けて切り込まれ且つ上記長手方向へ延伸する切込み12bが幅方向の中央部に設けられている。この切込み12bの切込み深さはジッパー12の高さ寸法の半分以上であることが好ましい。
【0032】
上記楔片13は上記ジッパー12と同長であり、その先鋭部分を先にして上記切込み12bに部分的にまたは全体的に差し込まれるようになされている。楔片13の幅寸法は、切込み12bに差し込まれた際、ジッパー12を所要量拡幅するように選定されている。
【0033】
[実施形態1の止水用シール材を用いた止水方法]
図2〜図4は目地Bに止水用シール材10を設置するための施工手順を示している。
【0034】
最初に図2に示すように、コンクリート躯体に形成された目地Bに、弾性本体11がその差込口11aを目地Bの開放側に向けて嵌装されるが、この嵌装に先立って目地Bの壁面に接着剤Cを塗付しておく。嵌装時、止水リブ11cは弾性本体11の弾性により目地Bの壁面に押し付けられ、変形した状態になる。
【0035】
次いで、図3に示すように、ジッパー12がジッパー係合溝11aの差込口11aに仮差込みされるが、この差し込みに先立って、ジッパーの切込み12bに楔片13の尖端側の一部が差し込まれ、ジッパー12と楔片13とが一体化される。この時点での切込み12bへの楔片13の差し込みは、それによるジッパー12の拡幅が僅少であるようになされる。
【0036】
上記接着剤の硬化後に、楔片13を保持したジッパー12が弾性本体の差込口11aからジッパー収容部11aの内奥部へ打ち込まれる。楔片13の底部が溝孔11aに達するまではジッパー12の幅寸法は変化せず、従ってジッパー12及び差込口11aの幅が相互に略等しくされていれば、ジッパー収容部11a内へのジッパー12の打ち込みは、大きな打ち込み力を要することなく容易に行い得る。
【0037】
楔片13の底部が溝孔11aに達した後、ジッパー12を更に打ち込むことにより、楔片13は次第に切込み12b内の内奥へ進入し、それに伴いジッパー12は次第に拡幅する。弾性本体側壁11bは拡幅するジッパー12により目地Bの壁面に向う方向へ偏倚する力を及ぼされ、それによって止水リブ11cは更に強く目地壁面に押し付けられる。
【0038】
図4に示すように、ジッパー12の差込方向先端がジッパー係合溝11aの底面11aに衝合した時点でジッパー12は最大限に拡幅され、従って弾性本体側壁11bを目地壁面方向へ最大限に偏倚させるように作用する。止水リブ11cを有する弾性本体側壁11bはそのような偏倚作用を受けるにも拘わらず、目地壁面によって動きを拘束されるため圧縮状態になり、それによって生じる残留応力(内部応力)はジッパー12に発生する残留応力(内部応力)と共に止水リブ11cを強力に目地壁面に圧接する作用をもたらす。
【0039】
ジッパー12の主体部は楔片13の作用により最終的に横断面が台形の状態になり、ジッパー収容部11aの横断面が、上記のように差込口11a側から内奥へ向かって広がった状態の略台形を呈していることにより、ジッパー12とジッパー収容部11aとは輪郭的に整合し、この結果上記差込口11aが最も狭幅となるので、ジッパー収容部11aからのジッパー12の脱離が防止される。
【0040】
[止水用シール材の第2の実施形態]
図5〜図8に示す第2の実施形態による止水用シール材20は、クロロプレンゴム或いはEPCM製の弾性本体21とジッパー22を有する。図5に示すように、弾性本体21は第1の実施形態の弾性本体11と外形的に略同じ形状を有しているが、弾性本体21に形成されたジッパー係合溝21aのジッパー収容部21aは、弾性本体11の場合と異なり、横断面が円形、卵形、楕円形叉はそれに近い形状に形成され、卵形、楕円形の場合には、その短径が弾性本体21の側壁21bの方向となるように設けられている。図示のように、ジッパー係合溝21aの差込口21aの幅寸法は、ジッパー収容部11aの直径叉は短径より小さくなされる。
【0041】
ジッパー22は、図5に示すようなホース或いはチューブなどの管体22aを有しており、この管体22aは例えばゴム或いはプラスチックなど伸縮可能な材料で製作され、その内部には気体、液体などの流体、或いは発泡材などが注入可能であり、これら流体の加圧注入、或いは注入発泡材の発泡作用によって膨張し、拡径するようになされている。
【0042】
上記流体として、セメントミルクやゴム系ラテックスを使用してもよい。これら材料は管体22a内に適切な圧力で充填され、管体22aを拡幅した状態で硬化する。
【0043】
[実施形態2の止水用シール材を用いた止水方法]
先ず、実施形態1の止水用シール材を用いた止水方法と同様に、コンクリート躯体に形成された目地Bの壁面に接着剤Cが塗付され、弾性本体21がその差込口21aを目地Bの開放側に向けた状態で目地B内に嵌装される。図示の目地Bの場合も、図1の場合と同様、2つのコンクリート躯体A1,A2の間の継ぎ目部に設けた場合を示している。
【0044】
次いで、図6に示すように、押しつぶされて縮径された管体22aが差込口21aからジッパー収容部21a内へ装入され、図7に示すようにジッパー収容部21a内に延伸した状態で配置される。
【0045】
目地壁面に塗布された上記接着剤の硬化後、図8に示すように、ジッパー収容部21a中の管体22a内に発泡剤22bが加圧注入され、この発泡剤を発泡させることにより管体22aを膨張させ、拡径させる。この拡径によって弾性本体21の側壁21bの側方への偏倚をもたらし、この側壁内に残留応力を発現させる。発泡剤の固化後、管体22aは拡径状態に維持されるので、爾後、側壁21bにおける残留応力は常時止水リブ21cに作用し、止水リブ21cによる確実な止水作用を持続する。セメントミルクを使用した場合も、固化後は発泡剤と同様の残留応力発現効果を得ることができる。
【0046】
管体22aの拡径を上記の流体を使用して行う場合、流体圧を調整して側壁21bに好ましい残留応力を発現させるようにすることが可能であり、また爾後適時に流体圧を調整して残留応力を適当な値に維持することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明による止水用シール材の第1実施形態を示す部分的斜視図である。
【図2】図1の止水用シール材を使用する目地止水処理工程の初期段階における、目地と止水用シール材構成部材の横断面図である。
【図3】図2の工程に続く目地止水処理工程の中途段階における止水用シール材構成部材の相互関係を示す横断面図である。
【図4】図3の工程に続く目地止水処理終了時における止水用シール材の横断面図である。
【図5】本発明による止水用シール材の第2実施形態を示す部分的斜視図である。
【図6】本発明の第2実施形態による止水用シール材を使用する目地止水処理工程の初期段階における、目地と止水用シール材構成部材の横断面図である。
【図7】図6の初期段階に続く中途段階における止水用シール材構成部材の相互関係を示す横断面図である。
【図8】図7の工程に続くジッパー形成工程並びに目地止水処理終了時における状態の止水用シール材の横断面図である。
【符号の説明】
【0048】
10 止水用シール材
11 弾性本体
11a ジッパー係合溝
11a 差込口
11a ジッパー収容部
11a 底面
11a 溝孔
11b 弾性本体側壁
11c 止水リブ
12 ジッパー
12a 突出縁部
12b 端面
12b 切込み
13 楔片
20 止水用シール材
21 弾性本体
21a ジッパー係合溝
21a 差込口
21a ジッパー収容部
21a 溝孔
21b 側壁
21c 止水リブ
22a 管体
22b 発泡剤
A1,A2 コンクリート躯体
B 目地
C 接着剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリート構造物の亀裂発生部を削って形成されるか、或いはコンクリート構造物の継ぎ目部に形成される溝状の目地に嵌合するように形成され、前記目地の延伸方向に相当する方向に延伸するジッパー係合溝が設けられた長尺の弾性本体と、前記目地内に嵌装された前記弾性本体のジッパー係合溝内に装入され、この装入により前記弾性本体の幅員を拡大するように作用するジッパーとを有する止水用シール材において、
前記ジッパー係合溝は、ジッパー差込口と、このジッパー差込口の幅寸法よりも大きい幅寸法を有するジッパー収容部を有しており、
前記ジッパーは、前記ジッパー差込口と略同じかそれよりも小さい幅にて前記ジッパー差込口を通過して前記ジッパー収容部内へ装入され、前記ジッパー収容部内で拡幅される部材であること、を特徴とする止水用シール材。
【請求項2】
前記ジッパーが、前記ジッパー係合溝の底面に対向する端面からジッパー内部へ切れ込み且つジッパー長手方向へ延伸する切込みを有し、
前記ジッパーを前記ジッパー係合溝へ装入する際に前記切込みに尖端部が係合し、前記ジッパー係合溝内への前記ジッパーの装入進行過程で前記切込みの内部へ前記尖端部を先にして進入せしめられ、前記ジッパーの幅員をジッパー装入方向先端側から順次拡大させる楔片が、前記ジッパーと前記弾性本体との間に介装されていること、を特徴とする請求項1に記載の止水用シール材。
【請求項3】
前記ジッパー係合溝が、横断面で見てジッパー係合溝の差込口から内奥へ向かって広がった状態の略台形状を有し、
前記ジッパーが、横断面で見て略四角形であること、を特徴とする請求項1叉は2に記載の止水用シール材。
【請求項4】
前記ジッパー係合溝がその底部の幅方向中央部にジッパー係合溝に沿って延伸する溝孔を有しており、前記楔片の基端部が前記溝孔によって定置されること、を特徴とする請求項1〜3の何れか1つに記載の止水用シール材。
【請求項5】
前記ジッパーが、前記差込口と略同じ幅寸法に圧縮可能であり、前記ジッパー収容部内に装入された後、内部に注入される加圧材料により膨張し、拡幅する弾性的管体を有していることを特徴とする請求項1に記載の止水用シール材。
【請求項6】
コンクリート構造物の亀裂発生部を削って形成されるか、或いはコンクリート構造物の継ぎ目部に形成される溝状の目地に嵌合するように形成され、前記目地の延伸方向に相当する方向に延伸するジッパー係合溝を有し、更に外側部にジッパー係合溝と同方向へ延伸する止水リブが形成されている長尺の弾性本体と、前記目地内に嵌装された前記弾性本体のジッパー係合溝に装入され、前記弾性本体の幅員を拡大するように作用するジッパーとを有し、前記ジッパー係合溝はジッパー差込口と、その内奥のジッパー収容部とを有している止水用シール材を使用し、
前記目地の側面に接着剤を塗布した後、前記弾性本体を前記目地内に嵌入し、
前記接着剤の硬化後に、前記ジッパーを、前記ジッパー差込口の幅寸法と略同じか、それよりも小さい寸法にて該ジッパー差込口からジッパー収容部内へ装入し、
次いで、前記ジッパー収容部内のジッパーを拡幅し、その拡幅によって前記弾性本体を拡幅し、目地側壁とジッパーとの間の前記弾性本体に残留応力を発現させること、を特徴とする止水方法。
【請求項7】
前記ジッパー差込口の幅寸法がジッパー収容部の幅寸法よりも小さいジッパー係合溝を有する弾性本体と、前記ジッパー差込口と略同じか、それよりも小さい幅寸法を有し、横断面が略四角形のジッパーとを使用し、
前記接着剤の硬化後に前記ジッパーを前記ジッパー差込口からジッパー収容部内へ装入する過程で、前記ジッパー収容部内に入ったジッパー部分を、このジッパー部分にその差込み方向先端側から楔片を差し込むことによって拡幅し、この拡幅によって前記弾性本体を拡幅すること、を特徴とする請求項6に記載の止水方法。
【請求項8】
前記ジッパー差込口の幅寸法がジッパー収容部の幅寸法よりも小さいジッパー係合溝を有する弾性本体と、前記ジッパー差込口の幅寸法よりも小さい幅寸法に縮小可能の弾性的管体より成るジッパーとを使用し、
前記接着剤の硬化後に前記弾性的ジッパー管体を前記ジッパー差込口の幅寸法よりも小さい幅寸法に縮小してジッパー差込口からジッパー収容部内へ装入し、
前記ジッパー収容部内のジッパー管体の密封孔内に内圧付与材を注入して該ジッパー管体を拡径し、この拡径によって前記弾性本体を拡幅し、目地側壁とジッパーとの間の前記弾性本体に残留応力を発現させること、を特徴とする請求項6に記載の止水方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−104895(P2006−104895A)
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−296580(P2004−296580)
【出願日】平成16年10月8日(2004.10.8)
【出願人】(504451449)
【Fターム(参考)】