説明

正極材料、その製造方法及びリチウムイオン電池

【課題】安全であり、かつ高性能の電池を製造し得る正極材料を提供する。
【解決手段】下記式(1)を満たす活物質粒子と、活物質粒子の表面の90%以上を被覆している第一固体電解質層と、を含む正極材料。
y≧−0.0304x+0.6182・・・(1)
(式中、yは活物質粒子の表面積(m/g)を、xは活物質粒子の粒径(μm)を示す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、活物質を含む正極材料及びその製造方法、並びに、それを用いた電極合材及びチウムイオン二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン二次電池は、他の二次電池よりもエネルギー密度が高く、高電圧での動作が可能という特徴を有している。そのため、小型軽量化を図りやすい二次電池として、携帯電話等の情報機器に使用されている。また、近年、ハイブリッド自動車用等、大型の動力用としての需要も高まっている。
【0003】
リチウムイオン二次電池は、正極層及び負極層と、これらの間に配置される電解質とを有し、電解質は、非水系の液体又は固体によって構成される。電解質に非水系の液体(以下において「電解液」という。)が用いられる場合には、電解液が正極層の内部へと浸透する。そのため、正極層を構成する正極活物質と電解質との界面が形成されやすく、性能を向上させやすい。ところが、広く用いられている電解液は可燃性であるため、安全性を確保するためのシステムを搭載する必要がある。
一方、固体電解質は不燃性であるため、上記システムを簡素化できる。それため、不燃性である固体の電解質(以下適宜「固体電解質層」という。)が備えられるリチウムイオン二次電池が提案されている。
【0004】
固体電解質について、非特許文献1に開示された技術によれば、コバルト酸リチウムの表面をニオブ酸リチウムで被覆することにより、界面抵抗を低減することが可能になると考えられる。ところが、圧粉全固体電池の正極合材層を作製するために、表面が被覆された正極活物質と固体電解質とを混合すると、正極活物質表面の被覆が剥がれやすく、界面抵抗の低減効果が損なわれやすいという問題があった。かかる問題は、非特許文献1に開示された技術と、特許文献1〜特許文献3に開示された技術とを組み合わせたとしても、解決が困難であった。
これに対し、特許文献4では、正極活物質の表面をニオブ酸リチウムでコートする技術が開示されている。しかし、特許文献4に記載の技術では、正極活物質の表面積の7割程度を被覆する技術しか開示されていないため、電池性能が十分とはいえない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−52733号公報
【特許文献2】特開2001−6674号公報
【特許文献3】特開2004−175609号公報
【特許文献4】特開2009−193940号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Electrochemistry Communications、9(2007)、p.1486−1490
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、安全であり、かつ高性能の電池を製造し得る正極材料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、以下の正極材料等が提供される。
1.下記式(1)を満たす活物質粒子と、前記活物質粒子の表面の90%以上を被覆している第一固体電解質層と、を含む正極材料。
y≧−0.0304x+0.6182・・・(1)
(式中、yは活物質粒子の表面積(m/g)を、xは活物質粒子の粒径(μm)を示す。)
2.前記第一固体電解質が窒素物又は酸化物系固体電解質である1に記載の正極材料。
3.前記活物質粒子が、下記式(2)又は(3)で表される化合物である1又は2に記載の正極材料。
LiNi1−x (2)
LiNiCoAl1−a−b (3)
(式中、xは0.1<x<0.9を満たす数であり、MはFe,Co,Mn及びAlからなる群から選ばれる元素であり、0≦a≦1、0≦b≦1である。)
4.上記1〜3のいずれか一項に記載の正極材料と、第二固体電解質粒子と、を含む電極合材。
5.上記4に記載の電極合材を含む正極層と、固体電解質を含む電解質層と、負極層と、を備えるリチウムイオン電池。
6.第一固体電解質を構成する元素を含む溶液を、下記式(1)を満たす活物質表面全体に付着させる段階と、付着後の活物質粒子を200℃以上400℃未満で焼成する段階と、を含む正極材料の製造方法。
y≧−0.0304x+0.6182・・・(1)
(式中、yは活物質粒子の表面積(m/g)を、xは活物質粒子の粒径(μm)を示す。)
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、安全であり、かつ高性能の電池を製造し得る正極材料を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施形態であるリチウムイオン電池の概略断面図である。
【図2】実施例及び比較例で使用した活物質粒子の、表面積と粒径の関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の正極材料は、下記式(1)を満たす活物質粒子と、この活物質粒子の表面の90%以上を被覆している第一固体電解質層とを含むことを特徴とする。
y≧−0.0304x+0.6182・・・(1)
式(1)において、yは活物質粒子の表面積(m/g)を示し、xは活物質粒子の粒径(μm)を示す。ここで、表面積はBET法により測定した値である。また、粒子の粒径はD50である。
【0012】
被覆対象である活物質粒子としては、本技術分野で使用される正極活物質が使用できる。例えば、LMO、NMC、LCO、LNCO、LNCAO、オリビン型化合物(Fe、Co、Ni、Mn)が挙げられ、好ましくはLi含有遷移金属複合酸化物である。
尚、LMOとはマンガン酸リチウム(LiMn)、NMCとはニッケルマンガンコバルト酸リチウム(LiNi1/3Mn1/3Co1/3)、LCOとはコバルト酸リチウム(LiCoO)、LNCOとはニッケルコバルト酸リチウム(LiNi0.8Co0.2)、LNCAOとはニッケルコバルト酸リチウム(LiNi0.8Co0.15Al0.05)である。
【0013】
上記Li含有遷移金属複合酸化物としては、例えばLiCoO、LiNiCoO、LiNiCoAlO、LiMn、LiNi1/3Mn1/3Co1/3、LiNiO、LiMn1.6Ni0.4、LiCoPO、LiNiPO、LiFePO、LiMnPO等が挙げられる。
【0014】
本発明において、活物質粒子は下記式(2)又は式(3)で表わされる化合物であることが好ましい。
LiNi1−x (2)
LiNiCoAl1−a−b(3)
(式中、xは0.1<x<0.9を満たす数であり、MはFe,Co,Mn及びAlからなる群から選ばれる元素である。a、bは、それぞれ0以上1以下である。)
【0015】
具体的には、LiNi0.8Co0.15Al0.05、LiNi0.8Co0.2、LiNiO、LiNi0.5Co0.5が特に好ましい。
活物質粒子の粒径は、0.5μm〜20μmであることが好ましい。
【0016】
本発明では、活物質粒子の表面積及び粒径が上述した式(1)の要件を満たす。これにより、放電容量や性能のよい電池が得られる。活物質粒子の表面積は、公知の粉砕方法等によって粒子径を調整することによって制御できる。
【0017】
上述した活物質粒子を被覆する第一固体電解質は、窒化物、又は酸化物系固体電解質であることが好ましい。
例えば、LiN、LISICON類、Thio−LISICON類、La0.55Li0.35TiO等のペロブスカイト構造を有する結晶や、NASICON型構造を有するLiTi12、さらにこれら結晶化させた電解質等を用いることができる。
また、LiO−B−P系、LiO−B−ZnO系、LiO−Al−SiO−P−TiO系の酸化物系非晶質固体電解質や、LiTi12,LiNbO,LiTaOを用いることができる。
【0018】
第一固体電解質で被覆した活物質粒子は、例えば、上記式(1)の関係を満たす活物質粒子の表面に、第一固体電解質を構成する元素を含む溶液を付着する段階と、付着後の活物質粒子を200℃以上400℃未満で焼成する段階と、を含む製造方法によって製造することができる。
第一固体電解質を構成する元素を含む溶液としては、例えば、各種金属のアルコキシドの水溶液が使用できる。アルコキシドとしては、リチウムエトキシド、チタンイソプロポキシド、ニオブイソプロポキサイド、タンタルイソプロポキサイド等が使用できる。
【0019】
例えば、Li−Ti系の固体電解質の被膜を形成する場合は、リチウムのアルコキシド及びチタンのアルコキシドを含有する溶液を、活物質粒子の表面に塗布、乾燥後、焼成すればよい。
尚、溶剤は特に制限はないが、例えば、エタノール等のアルコール、トルエン等の芳香族系溶剤、ヘキサンなどの炭化水素系溶剤、Nメチルピロリドン等のアミド系溶剤等を使用できる。
溶液の濃度については、被覆層の膜厚や使用する化合物の粘度等を考慮して適宜調整することができる。
また、活物質粒子の表面への付着法も制限はなく、例えば、浸漬やスプレーコーティング法等を使用できる。
【0020】
形成した被覆層は、200℃以上400℃未満で焼成する。焼成温度が200℃未満、又は400℃以上では、電池を作製した際の放電容量が低下したり、充電終了電圧と放電開始電圧の差が大きくなり、電池の性能が向上しない場合がある。焼成温度は250℃〜390℃が好ましい。
焼成時間は1分〜10時間が好ましく、特に、10分〜4時間が好ましい。
尚、被覆層の形成については、下記文献を参照できる。
「N.Ohta,K.Takada,L.Zhang,R.Ma,M.Osada,T.Sasaki,Adv.Mater.18,2226(2006)」
【0021】
本発明で使用する活物質粒子は、表面積の90%以上が第一固体電解質で被覆されている。このような活物質粒子は、上述した製造方法で得ることができる。
本発明では、活物質粒子の表面の95%以上が被覆されていることが好ましく、最も好ましくは、活物質粒子の表面のすべてが被覆されている状態である。
尚、被覆率は透過型電子顕微鏡(TEM)による断面観察により、膜の厚さを測定し、その値と元素分析値、BET表面積値から計算した値である。
【0022】
被覆層の厚さは、1nm〜30nmであることが好ましく、2nm〜25nmであることが好ましい。
【0023】
本発明の正極材料は、第二固体電解質粒子と混合することにより電極合材となる。
第二固体電解質としては、硫化物系固体電解質が好ましい。硫化物系固体電解質は、硫黄、りん及びリチウムのみからなるものの他、Al、B、Si、Ge等を含む他の物質を含んでいてもよく、有機化合物、無機化合物、あるいは有機・無機両化合物からなる材料を原材料として製造してもよい。
【0024】
原材料としては、硫化リチウム(LiS)と五硫化二燐(P)、又は硫化リチウムと単体燐及び単体硫黄、さらには硫化リチウム、五硫化二燐、単体燐及び/又は単体硫黄から生成するリチウムイオン伝導性無機固体物質が挙げられる。
上記硫化リチウムと、五硫化二燐又は単体燐及び単体硫黄の混合モル比は、通常50:50〜80:20である。好ましくは、60:40〜75:25である。特に好ましくは、LiS:P=70:30(モル比)程度である。
【0025】
上記の原料を溶融反応した後、急冷するか、又は、原料をメカニカルミリング法(MM法)により処理して、ガラス状の固体電解質を得る。さらに熱処理することにより結晶性の固体電解質が得られる。ここで、イオン伝導性の観点からは、結晶性の無機固体電解質が好ましい。
第二固体電解質粒子の具体的な製造方法は、例えば、特開2005−228570号公報等を参照すればよい。
【0026】
第二固体電解質粒子の粒径は、0.01〜50μmであることが好ましい。より好ましくは、0.1〜10μmである。さらに好ましくは、0.1〜7μmである。
尚、粒子径はレーザー回折法で測定した平均値(D50)を意味する。
【0027】
また、本発明の電極合材において、活物質粒子と第二固体電解質粒子の混合比(正極活物質:電解質 「重量比」)は95:5〜5:5である。好ましくは、95:50〜50:50である。
【0028】
本発明のリチウム電池は、上述した本発明の電極合材を含む正極層を有すればよく、他の構成部材は本技術分野にて公知のものが使用できる。
図1は、本発明の一実施形態であるリチウムイオン電池の概略断面図である。
リチウムイオン電池1は、正極層5及び負極層3で電解質層4を挟んだ構成を有する。本実施形態では、正極層5には正極集電体6が、負極層3には負極集電体2が接している。尚、本発明に係るリチウム電池は、二次電池に限定されず、一次電池も含まれる。
以下、各部材の例を示す。
【0029】
1.負極
負極は、通常の電池の負極に使用できるものであれば、特に制限されない。
例えば、負極活物質と固体電解質を混合した負極合材から負極を製造してもよく、また、カーボン負極を用いても良い。
【0030】
負極活物質としては、市販されているものを特に限定なく使用することができる。例えば、炭素材料やSn金属、In金属等を好適に用いることができる。具体的には、天然黒鉛や各種グラファイト、Sn,Si,Al,Sb,Zn,Bi等の金属粉、SnCu,SnCo,SnFe等の金属合金粉、その他アモルファス合金やメッキ合金が挙げられる。粒径に関しても特に制限はないが、平均粒径が数μm〜80μmのものを好適に用いることができる。
【0031】
固体電解質についても特に限定はなく、例えば、本発明の電極合材で説明した固体電解質を使用することができる。
負極活物質と固体電解質を所定の割合で混合することにより負極合材が作製される。
負極は、上記負極合材を使用して従来公知の方法により製造することができる。
【0032】
2.固体電解質
特に限定はなく、本技術分野にて公知のものが使用できる。例えば、酸化物系固体電解質、硫化物系固体電解質、ポリマー系固体電解質のいずれでも良いが、リチウムイオンの伝導温度、イオン伝導度の観点から硫化物系固体電解質であることが好ましく、上述した電極合材に使用する硫化物系固体電解質が好ましい。
【0033】
3.正極集電体及び負極集電体
正極集電体及び負極集電体としては、例えば、ステンレス鋼、金、白金、亜鉛、ニッケル、スズ、アルミニウム、モリブデン、ニオブ、タンタル、タングステン、チタン等の金属、及び、これらの合金にて、シート、箔、網状、パンチングメタル状、エキスパンドメタル状等に形成されたものが用いられる。特に、正極集電体ではアルミニウム箔が、負極集電体ではアルミニウム箔やスズ箔が、集電性、加工性、コストの点で好ましい。
【0034】
リチウムイオン電池の製造方法は、特に限定されない。例えば、図1に示したリチウムイオン電池1の場合、正極層5と正極集電体6とを積層した正極合材シート、負極層3と負極集電体2とを積層した負極合材シート、及び固体電解質シート(電解質層4)を、それぞれ作製し、これらを重ね合わせてプレスする方法がある。
【0035】
また、正極集電体6上に正極層5を形成しておき、その上に電解質層4を形成し、さらにその上に負極集電体2に形成させた負極層3を、電解質層4と負極層3が接するように重ね合わせてもよい。
【0036】
正極合材シート及び負極合材シートの製造方法としては、例えば、正極層5及び負極層3を、正極集電体6及び負極集電体2の少なくとも一部に膜状に形成することで作製できる。製膜方法としては、ブラスト法、エアロゾルデポジション法、コールドスプレー法、スパッタリング法、気相成長法又は溶射法等が挙げられる。
【0037】
また、正極集電体6及び負極集電体2に上記正極層5及び負極層3の極材を溶液化し、塗布する方法や、上記正極層5及び負極層3の極材を正極集電体6及び負極集電体2上に圧縮して積層させる方法もある。
【実施例】
【0038】
[実施例1]
(1)活物質粒子の作製
活物質粒子として、LiNi0.8Co0.15Al0.05(粒径(D50):6.2μm、表面積:0.43m/g、「以下、LNCAOと略記する」)を使用した。この活物質粒子は下記文献を参照して作製した。
「N.Ohta,K.Takada,L.Zhang,R.Ma,M.Osada,T.Sasaki,Adv.Mater.18,2226(2006)」
第一固体電解質からなる被覆層を形成する溶液として、純度が99%のチタンイソプロポキシド(TiOCHCHCH)208.9gと、Li金属4.1gとエタノール487gで調整したリチウムエトキシド(LiOCHCH)溶液491.1gの混合液を使用した。
この溶液をLNCAO粒子にスプレー法にて塗布した。乾燥して余分な溶剤を除去した後、マッフル炉を使用し、300℃で0.5時間、粒子を焼成して、LNCAO表面にLTO(Li4/3Ti5/3)層を形成した活物質粒子を得た。
この活物質粒子の表面被覆率をTEMによる断面観察及び膜厚測定で測定した結果と元素分析値およびBET表面積測定結果の値から算出した膜厚との比から算出した。結果は92%であった。また、被覆層の厚さは4.2nmであった。
尚、活物質粒子の粒径、表面積及び被覆層の厚さは、下記方法で測定した。
(A)粒子径(D50)
レーザー回折式粒度分布測定装置(シスメックス社製、マスターサイザー2000)で測定した。
(B)比表面積(BET表面積)
試料を200℃で20分間脱気後、カンタクロム社製の商品名「NOVA2000」を用いてN吸着BET法により測定した。
(C)被覆層の平均厚さ
SIIナノテクノロジー(株)のSPS5100(ICP発光分光分析装置)によって測定した。
【0039】
(2)第二固体電解質の作製
高純度硫化リチウムを0.6508g(0.01417mol)と五硫化二燐を1.3492g(0.00607mol)をよく混合し、これらの粉末をアルミナ製ポットに投入し完全密閉した。このポットを遊星型ボールミル機に取り付け、出発原料を十分に混合する目的で数分間低速回転(85rpm)でミリングを行った。その後、徐々に回転数を上げ370rpmで20時間メカニカルミリングを行った。得られた粉末をX線測定によりガラス化を確認し、その後、300℃で2時間、熱処理し目的物を得た。
イオン伝導度を交流インピーダンス法(測定周波数100Hz〜15MHz)により測定したところ、室温で1.0×10−3S/cmを示した。
【0040】
(3)リチウムイオン電池の作製
上記(1)で得た活物質粒子70wt%及び上記(2)で得た第二固体電解質30wt%を混合して、正極合材とした。
上記(2)で得た固体電解質50mgを直径10mmのプラスティック製の円筒に投入し、加圧成型した。その後、上記で調整した正極合材を30mg投入し再び加圧成型した。次に、正極合材とは反対側からインジウム箔(厚さ0.1mm、9mmφ)を投入し陰極層とし、三層構造を有するリチウムイオン電池を作製した。
この電池を、1cmあたり、500μAで3.6Vまで充電し、その後10mA/cmの放電電流密度にて放電した際の放電容量及びΔE(充電終了電圧と放電開始電圧の差)を測定した。被覆層の焼成温度及び測定結果を表1に示す。
【0041】
[実施例2]
被覆層形成時の焼成温度を350℃にした以外は実施例1と同様にして、リチウムイオン電池を作製し、評価した。結果を表1に示す。
【0042】
[実施例3]
活物質粒子として、粒径(D50)が11.8μm、表面積が0.26m/gであるLNCAOを使用した以外は実施例1と同様にして、リチウムイオン電池を作製し、評価した。結果を表1に示す。
【0043】
[比較例1]
被覆層形成時の焼成温度を400℃にした以外は実施例1と同様にして、リチウムイオン電池を作製し、評価した。結果を表1に示す。
【0044】
[比較例2]
被覆層形成時の焼成温度を190℃にした以外は実施例1と同様にして、リチウムイオン電池を作製し、評価した。結果を表1に示す。
【0045】
[比較例3]
被覆層を形成しなかった以外は実施例1と同様にして、リチウムイオン電池を作製し、評価した。結果を表1に示す。
【0046】
[比較例4]
活物質粒子として、LNCAOに代えてLiCoO(粒径D50:6.8μm、表面積:0.38m/g)を用い、被覆層形成時の焼成温度を400℃にした以外は実施例1と同様にして、リチウムイオン電池を作製し、評価した。結果を表1に示す。
【0047】
[比較例5]
活物質粒子として、LNCAOに代えてLiCoO(粒径D50:12.2μm、表面積:0.2m/g)を用い、被覆層形成時の焼成温度を400℃にした以外は実施例1と同様にして、リチウムイオン電池を作製し、評価した。結果を表1に示す。
【0048】
【表1】

ΔE=充電終了電圧−放電開始電圧
【0049】
上記実施例及び比較例で使用した活物質粒子の、表面積と粒径の関係を示すグラフを図2に示す。
図2から、活物質粒子の表面積と粒径が式(1)の条件を満たす場合に高性能なリチウムイオン電池が得られることが確認できる。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明の正極材料及び電極合材は、リチウムイオン電池の正極として好適である。また、本発明のリチウムイオン電池は、各種電化製品の電源等として好適に使用できる。
【符号の説明】
【0051】
1 リチウムイオン電池
2 負極集電体
3 負極層
4 電解質層
5 正極層
6 正極集電体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)を満たす活物質粒子と、
前記活物質粒子の表面の90%以上を被覆している第一固体電解質層と、
を含む正極材料。
y≧−0.0304x+0.6182・・・(1)
(式中、yは活物質粒子の表面積(m/g)を、xは活物質粒子の粒径(μm)を示す。)
【請求項2】
前記第一固体電解質が窒素物又は酸化物系固体電解質である請求項1に記載の正極材料。
【請求項3】
前記活物質粒子が、下記式(2)又は(3)で表される化合物である請求項1又は2に記載の正極材料。
LiNi1−x (2)
LiNiCoAl1−a−b (3)
(式中、xは0.1<x<0.9を満たす数であり、MはFe,Co,Mn及びAlからなる群から選ばれる元素であり、0≦a≦1、0≦b≦1である。)
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の正極材料と、
第二固体電解質粒子と、
を含む電極合材。
【請求項5】
請求項4に記載の電極合材を含む正極層と、
固体電解質を含む電解質層と、
負極層と、
を備えるリチウムイオン電池。
【請求項6】
第一固体電解質を構成する元素を含む溶液を、下記式(1)を満たす活物質表面全体に付着させる段階と、
付着後の活物質粒子を200℃以上400℃未満で焼成する段階と、
を含む正極材料の製造方法。
y≧−0.0304x+0.6182・・・(1)
(式中、yは活物質粒子の表面積(m/g)を、xは活物質粒子の粒径(μm)を示す。)

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−65887(P2011−65887A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−216018(P2009−216018)
【出願日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【出願人】(000183646)出光興産株式会社 (2,069)
【Fターム(参考)】