説明

歩行者横断誘導システムおよび歩行者用信号灯器

【課題】横断可否を判断するのに必要な横断情報を、歩行者の視覚を介さずに正確かつ容易に伝達する。
【解決手段】信号灯器1は、各発光部1A,1Bの点灯形態が制御部2により制御されて、歩行者が横断可否を判断するための横断情報を各発光部1A,1Bの点灯形態により示し、横断情報を情報信号にて発信する信号生成部4を有する。さらに信号生成部4から発せられる情報信号を変調する変調部7を備え、変調信号に基づき各発光部1A,1Bの明滅あるいは光量を制御して横断情報を各発光部1A,1Bからの可視光情報信号として送信する。これに対し、受信装置8は送信された可視光情報信号を受光部81で受信すると、これを復調部82で振動信号または音声信号に復調し、出力手段83により前記横断情報として出力する。そして、歩行者が受信装置8を携行することで、交差点等における横断情報を視覚に頼らずとも直接的に伝達可能とされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、横断歩道における歩行者横断誘導システムおよび歩行者用信号灯器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の歩行者用信号灯器は、「横断可」の青色点灯表示から「横断不可」の赤色点灯表示へと切り替わるとき、青色表示を点滅させることによって信号が切り替わることを示し、歩行者に横断の注意を促していた。しかし、高齢者や子供などは横断歩道を渡っている途中で信号が赤になってしまい、立ち往生することがあった。また、高齢者でなくとも、信号が点滅し始めるまで、信号の点灯残り時間を予測できないため、あわてて走らなければならなかったり、横断歩道を渡り損なったりすることがあった。さらに、赤信号については、待ち時間がどの程度あるかわからないため、いらいらしたり、無理な横断をしたりする原因になっていた。
【0003】
このような信号表示の残り時間が不明であることから起こる不都合を解消する方法の一つとして、例えば特許文献1に記載されているような歩行者用信号灯器も提案されている。この種の信号灯器は、上下発光部それぞれの人形図柄の左右両側に、表示信号の残り時間を示すゼブラ模様が設けられている。そして、例えば赤信号のときには、中央の人形図柄が白色で点灯するとともに、その人形図柄の左右のゼブラ模様が赤色で点灯して時間の経過とともに上から順次消灯することで、赤信号の残り時間を示すようになっている。
【0004】
また、視覚障害者の横断を支援するために、横断可能時には、横断歩道の両端に対向配置された二つのスピーカから、同一音響を交互に発するようにして、横断歩道の方向性や距離感を伝達できるように構成された信号灯器も普及している。加えて、交差点において東西方向の青信号に対しては「カッコー」、南北方向の青信号に対しては「ピヨピヨ」というように、異なる鳥の鳴き声を横断方向に応じて発するような工夫もなされている。
【0005】
この種の音声案内機能を備えた信号灯器として、例えば特許文献2には、視覚障害者の横断をスムーズに誘導するための音響式視覚障害者用交通信号付加装置について記載されている。これによれば、横断歩道の両端に設けられた二つのスピーカを用いて、横断する視覚障害者に対して横断歩道の両端から異なる音響を交互に鳴き交わす用に出力される。また、横断歩道の両端に二つずつ配置された四つのスピーカのうち、任意の二つから構成された組を単位として制御することにより横断する視覚障害者に対し横断歩道の両端から所定の音響を出力するように構成されている。
【特許文献1】特開平6−96388号公報
【特許文献2】特開2000−123281号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記特許文献1にあるような信号表示の残り時間を歩行者に知らせる技術によれば、歩行者は信号灯器の表示を目視して、ゼブラ模様の点灯状態を把握しなければ、残り時間を認識することができず、視覚障害者に対しては、かかる信号灯器の表示している情報を伝達できないものである。
【0007】
また、前記特許文献2にあるような交通信号付加装置では、歩行者に信号表示の残り時間を知らせる機能はなく、信号灯器が青信号であるか、赤信号であるかの判断をさせるにとどまる。
【0008】
そこで、視覚障害者の横断をさらにスムーズに誘導するために、例えば、前記の鳥の鳴き声で横断を誘導することに加えて、残り時間に関する案内を音声で発信する方法も考えられる。しかし、自動車や人が多く行き交う交差点等の路上において、様々な騒音が発せられている中、視覚障害者が必要とする横断情報のみを聴覚から正確に得るのは大変なことであり、危険も伴うおそれがある。
【0009】
したがって、残りの横断可能時間や横断可能となるまでの待ち時間といった横断可否を判断するために必要な横断情報を、歩行者の視覚に頼らなくとも、正確かつ容易に伝達できるような、横断歩道における視覚バリアフリーを実現して、視覚障害者も含めて歩行者の横断安全性をより一層高めるようにすることが望まれる。
【0010】
そこで本発明は、上記のような問題点にかんがみてなされたものであり、横断可否を判断するのに必要な横断情報を、歩行者の視覚を介さずに正確かつ容易に伝達することのできる歩行者横断誘導システムおよび歩行者用信号灯器を提供し、これにより横断歩道等における歩行者の安全性を高めて視覚バリアフリー化を図ることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記した目的を達成するため、本発明に係る歩行者横断誘導システムは、「横断不可」を表示する第1発光部と「横断可」を表示する第2発光部との点灯形態が制御部により制御されて、歩行者が横断可否を判断するための横断情報を各発光部における点灯形態により示すとともに、前記横断情報を情報信号にて発信する信号生成部を有し、さらに前記信号生成部から発せられる情報信号を変調する変調部を備えて、変調された変調信号に基づいて前記各発光部の明滅あるいは光量を制御し、前記横断情報を各発光部からの可視光情報信号として横断方向に送信しうる信号灯器と、送信された可視光情報信号を受信する受光部と、受信した可視光情報信号を情報信号に復調する復調部と、復調された情報信号を前記横断情報として出力しうる出力手段とを備えた受信装置とを用いて、当該受信装置を携行する歩行者に、前記横断情報を直接的に伝達可能とされたことを特徴とする。
【0012】
この構成によれば、歩行者が横断可否を判断するのに必要な横断情報を不特定の歩行者に発信することが可能であることに加え、その横断情報と同様の情報を、受信装置を携行する歩行者に対して直接的に伝達することができる。したがって、各発光部を視認するという歩行者の視覚を介した情報送信だけでなく、視覚を介さない情報送信も可能にし、横断歩道等における視覚バリアフリー化を図ることが可能になる。
【0013】
また、かかる横断情報は可視光により通信されるので、信号灯器の各発光部の向きによって情報の発信方向を指定できる。これに対し、歩行者は、携行する受信装置の向きを信号灯器の方向に合わせればその横断情報が得られることになるので、発信元の信号灯器の方向性を特定でき、横断しようとする方向の安全性を正確に認識して、容易に状況判断することが可能になる。
【0014】
ここで、前記情報信号としては、振動信号または音声信号であることが好ましい。これにより、視覚を介さない歩行者への情報送信の多様性を得ることができ、振動信号や音声信号を復調して歩行者に直接的に横断情報を案内することができる。
【0015】
また、本発明は前記構成において、信号灯器の各発光部の光源には多数のLEDが用いられ、LED群によって各発光部が点灯表示されるとともに、前記可視光情報信号は該LED群の明滅あるいは光量によって送信されることを特徴とする。
【0016】
本発明において発信される横断情報は、信号灯器の設置された横断歩道等の道路状況に応じて時間とともに変化するものであるため、このような情報量に変調光を対応させられるように、応答特性の高速なものを用いることが好ましい。したがって、発光部の光源にはLED(発光ダイオード)を用いるのが好ましく、LEDの特徴である高い電力効率を利用できるだけでなく、その良好な応答特性から明滅あるいは光量を制御することによって可視光によるデータの送信源として好適に利用することができる。
【0017】
ここで、前記受信装置の出力手段は、イヤホンまたはヘッドホンであることが好ましい。これにより、イヤホンまたはヘッドホンを歩行者が耳に装着していることにより、他の音に遮られることなく、送信された横断情報を音声として直接的に聴き取ることができる。
【0018】
また、前記受信装置の出力手段は、骨伝導スピーカであってもよい。これによれば、歩行中に耳を塞いで交差点等の状況を聴き取るのを妨げることがなく、送信された横断情報を骨伝導で直接的に得ることができる。
【0019】
さらに、本発明は前記構成において、信号灯器の各発光部には、「横断不可」または「横断可」を示す人形図柄と、残りの横断可能時間または横断可能となるまでの待ち時間を表示する残時間表示部とがそれぞれ設けられたことを特徴とする。
【0020】
このような構成により、いずれか一方の発光部で「横断不可」または「横断可」を表示し、これと同時に他方の発光部で横断可能時間または横断可能までの待ち時間を表示するので、従来と同様の「横断不可」または「横断可」の各発光部の表示形態に影響することなく、また、時間表示用の新たな表示装置を信号灯器に付属させる必要もなく、「横断不可」または「横断可」の表示とは別個の表示として残時間を歩行者に示すことができる。したがって、交通信号灯器の基準を遵守しつつ、信号表示の残り時間を変化する残時間表示用透光部の点灯個数によって知らせることができ、歩行者のいらいら感を緩和させたり、無理な横断を防止したりすることも可能である。
【0021】
また上記目的を達成するため、本発明の歩行者用信号灯器は、「横断不可」を表示する第1発光部と「横断可」を表示する第2発光部との点灯形態が制御部により制御されて、歩行者が横断可否を判断するための横断情報を各発光部における点灯形態により示すとともに、前記横断情報を情報信号にて発信しうる信号生成部を備えた歩行者用信号灯器であって、前記信号生成部から発せられる情報信号を変調する変調部が設けられて、変調された変調信号に基づいて前記各発光部の明滅あるいは光量を制御することにより前記横断情報を各発光部からの可視光情報信号として横断方向に送信可能となされ、この可視光情報信号を受信する受光部と、受信した可視光情報信号を前記情報信号に復調する復調部と、復調された情報信号を前記横断情報として出力しうる出力手段とを備えた受信装置を携行する歩行者に前記横断情報を直接的に伝達しうることを特徴とする。
【0022】
この構成によれば、歩行者が横断可否を判断するのに必要な横断情報を不特定の歩行者に発信することが可能であるとともに、前記受信装置を携行する歩行者に対しては、視覚を介さない情報送信を行えるので、横断歩道等における視覚バリアフリー化を図ることが可能になる。また、かかる横断情報は可視光により通信されるので、各発光部の向きによって情報の発信方向を指定できる。したがって、歩行者が横断しようとする方向の安全性を正確に認識して、容易に状況判断することを可能にし、横断安全性を高めるのに功を奏する。
【0023】
また、本発明は、前記各発光部の背面側にLED群が配置され、このLED群によって各発光部が点灯表示されるとともに、前記可視光情報信号が該LED群の明滅あるいは光量によって送信可能となされたことを特徴とする。
【0024】
これにより、LEDの特徴である高い電力効率を利用できるだけでなく、その良好な応答特性から明滅あるいは光量を制御することによって可視光によるデータの送信源として好適に利用することができる。
【0025】
また、本発明において各発光部には、「横断不可」または「横断可」を示す人形図柄と、残りの横断可能時間または横断可能となるまでの待ち時間を表示する残時間表示部とがそれぞれ設けられていることが好ましい。
【0026】
このような構成により、いずれか一方の発光部で「横断不可」または「横断可」を表示し、これと同時に他方の発光部で横断可能時間または横断可能までの待ち時間を表示するので、従来と同様の「横断不可」または「横断可」の各発光部の表示形態に影響することなく、また、時間表示用の新たな表示装置を信号灯器に付属させる必要もなく、「横断不可」または「横断可」の表示とは別個の表示として残時間を歩行者に示すことができる。したがって、交通信号灯器の基準を遵守しつつ、信号表示の残り時間を変化する残時間表示用透光部の点灯個数によって知らせることができ、歩行者のいらいら感を緩和させたり、無理な横断を防止したりすることも可能である。
【発明の効果】
【0027】
上述のように構成される本発明の歩行者横断誘導システムおよび歩行者用信号灯器によれば、残りの横断可能時間や横断可能となるまでの待ち時間といった横断可否を判断するために必要な横断情報を、視覚に頼らなくとも正確かつ容易に歩行者に伝達することが可能となる。したがって、交差点などの雑踏の中であっても、視覚障害者も含めた歩行者の横断を安全に誘導することができ、横断歩道における視覚バリアフリー化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明に係る歩行者横断誘導システム、および当該システムにおける歩行者用信号灯器の最良の形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0029】
図1は本発明の歩行者横断誘導システムの構成例を示す説明図であり、図2は本発明の歩行者用信号灯器の一例を示す正面図、図3は図2の信号灯器の第2発光部を示す分解斜視図である。
【0030】
本発明の歩行者横断誘導システムは、その点灯形態により横断の可否を示す歩行者用信号灯器1と、歩行者が携行して横断情報を受信する受信装置8とを備えて構成されている。
【0031】
本発明の歩行者用信号灯器1は、「横断不可」を表示する第1発光部1Aと、「横断可」を表示する第2発光部1Bとが上下に配置されている。各発光部1A,1Bは、樹脂成形品のユニットケース11内に、多数のLED(13B,13R)が実装されたLED基板12、前面カバー14、透光板15、押えカバー板16などを備えている。前面カバー14は、例えばポリカーボネート樹脂等の透明樹脂によりレンズ状に成形された樹脂成形品からなる。
【0032】
透光板15には、歩行者をかたどった「横断不可」を示す人形図柄C1と、「横断可」を示す人形図柄C2が形成されている。これらの各人形図柄C1,C2の背面側には、LED基板12に実装されたLED群(13B,13R)が光源として配置されている。LED群の発光色は、第1発光部1Aの人形図柄C1に対しては赤色(LED13R)であり、人形図柄C2に対しては青色(LED13B)とされている。これにより、人形図柄C1は赤色で点灯表示し、人形図柄C2は青色で点灯表示しうる構成となされている。
【0033】
さらに、各発光部1A,1Bの透光板15の端部近傍には、複数個の残時間表示部17a,17bがそれぞれ設けられている。残時間表示部17a,17bは、それぞれが矩形状の透光部であり、人形図柄C1,C2の左右両側に均等間隔で配設されている。そして、残時間表示部17a,17bの背面側には、第1発光部1Aでは青色のLED群13Bが配置され、第2発光部1Bでは赤色のLED群13Rが配置されている。すなわち、人形図柄C1の左右両側の残時間表示部17aは青色で点灯表示し、人形図柄C2の左右両側の残時間表示部17bは赤色で点灯表示しうるようになされている。
【0034】
このような歩行者用信号灯器1は、第1発光部1Aまたは第2発光部1Bのうち一方の人形図柄を点灯表示させ、同時に他方の発光部において全ての残時間表示部17a,17bを点灯させる仕組みとされている。そして時間の経過に伴って、他方の発光部の各残時間表示部17a,17bを順に消灯または減光させていき、点灯形態を変化させることによって、人形図柄が点灯している発光部の残りの点灯時間、つまり横断可能時間または横断可能となるまでの待ち時間を歩行者に知らせることができるようになっている。
【0035】
したがって、歩行者は各発光部1A,1Bの点灯形態によって、例えば、信号灯器1が青信号(横断可)または赤信号(横断不可)とともに、青信号になってからの経過時間や、赤信号の残りの待ち時間等の横断歩道の横断可否を判断するための横断情報を得ることができるようになっている。
【0036】
また、図1に示すように、この信号灯器1の点灯制御系には制御部2が備えられている。制御部2にはLED駆動用の電源電圧が電源部3から供給され、各発光部1A,1Bをあらかじめ規定された時間で点灯動作や点滅動作等を行わせる点灯信号が、外部の信号制御器9から送信される。また制御部2は、各発光部1A,1Bに接続されており、点灯信号を発信可能となされている。これにより、第1発光部1Aと第2発光部1Bとの点灯状態が時間の経過に伴って切り替えられるようになされている。
【0037】
加えて、信号灯器1には、前記横断情報を音声信号に合成しうる信号生成部4が設けられている。この信号生成部4は、信号制御器9から送信される青信号(横断可)または赤信号(横断不可)の信号情報に応じて、第1発光部1Aまたは第2発光部1Bが示す横断情報を音声信号として出力する。そして、かかる横断情報の音声信号が増幅回路5を介してスピーカ6から音声ガイダンス、あるいは連続音、断続音、メロディーなどの音声として発信される構成となっている。音声ガイダンスは、例えば「赤信号となるまでの残り時間は、あと10秒です。」等の横断情報の音声案内であり、この案内を歩行者が聴くことで横断の可否を判断し、安全性を確認できるようになされている。
【0038】
さらに信号灯器1は、信号生成部4から発せられる音声信号を変調する変調部7を備えている。制御部においては、この変調部7によって変調された変調信号に基づいて各発光部1A,1BのLED群(13B,13R)における明滅あるいは光量が制御される。すなわち、前記横断情報を、変調部7からの変調信号によりパルス化するとともに、各発光部1A,1BのLED群(13B,13R)に対して変調信号と同一周期の変調点灯信号を出力して、可視光情報信号として信号灯器1の第1発光部1Aまたは第2発光部1Bから横断方向に送信しうるようになっている。
【0039】
このように、信号灯器1においては、各発光部1A,1BのLED群(13B,13R)によって発せられる可視光を、歩行者に横断情報を送信するための通信媒体として用いている。これによれば、送信側においては、通常の信号灯器に使用されて人形図柄C1,C2等を表示するためのLED群(13B,13R)を可視光通信手段に用い、受信側ではLED群(13B,13R)による可視光情報信号を受光して情報内容を判別するようになされる構成である。ここで、各発光部1A,1Bに用いられるLED13B,13Rは、高速な応答特性を有しているため、高速に明滅させたり、光量を変化させたりすることが可能であり、また歩行者がこれを感知することはなく、歩行者への視覚的な横断情報の発信には影響を与えることなく空間中を情報送信することができる。
【0040】
例示の形態において、前記横断情報の可視光情報信号の受信側には受信装置8を用いている。この受信装置8は、適宜の電源を備え、送信された可視光情報信号を受光部81で受信し、受信した可視光情報信号を復調部82にて音声信号に復調するものである。さらに、受信装置8は、復調された横断情報の音声信号を歩行者に音声として伝達しうる出力手段83とを備えている。
【0041】
出力手段83には、例えばイヤホンまたはヘッドホン等の装着型の音声出力装置が受信装置8に接続されていることが好ましい。かかるイヤホン等を歩行者が耳に装着していることにより、騒音などに遮られることなく、送信された横断情報を音声として直接的に、耳から得ることができる。
【0042】
このほか、受信装置8は、受信した可視光情報信号を復調部82にて振動信号に復調するものであってもよい。この場合、出力手段83には、復調された振動信号を横断情報として歩行者に対し出力するように、例えば骨伝導スピーカが用いられることが好ましい。
【0043】
歩行者は受信装置8に接続した骨伝導スピーカを頭部に装着する。この場合、復調部82により音声信号に復調された横断情報を、骨伝導スピーカを通して音声振動として歩行者の頭部へ直接伝達するものであり、骨伝導によって容易に認識することができる。
【0044】
例えば、視覚障害者の場合には、聴覚から得られる情報が非常に重要となるので、歩行中に耳を塞いで交差点の状況を聴き取るのを妨げないようにすることが好ましい。したがって、出力手段83として、このような骨伝導スピーカを用いれば、歩行者は聴覚による状況判断をすることができるとともに、信号灯器1からの横断情報も視覚に頼らずに容易に得ることができる。また、バイブレーション等の振動機能を受信装置8に設けて、振動信号を直接歩行者に伝えることにより、横断情報を案内するようにしてもよい。
【0045】
かかる受信装置8を歩行者が携行するとき、受光部81を歩行者の進行方向に向けておくことで、交差点等において受信した横断情報の発信源である信号灯器1の設置方向を特定することができる。すなわち、信号灯器1の各発光部1A,1BのLED群(13B,13R)が発する光は、直進性の良い可視光であるので、各発光部1A,1Bの向けられた方向がそのまま信号送信方向であり、横断情報を送信する方向性を指定できるので、これを受信する歩行者側においては、歩行者自身の向く方向に応じた横断情報を得ることができる。したがって、歩行者は横断可能方向およびその方向の横断情報を容易に得られ、歩行者の横断を安全かつ確実に誘導することができる。
【0046】
このように、本発明の歩行者横断誘導システムおよび歩行者用信号灯器によれば、各発光部1A,1Bが表示する内容、すなわち、赤信号または青信号表示の所定の横断可否情報だけでなく、これに付随する残りの横断可能時間や横断可能となるまでの待ち時間といった横断可否を判断するために必要な横断情報をも、歩行者の視覚を介さずに正確かつ容易に伝達することが可能になる。これにより、視覚障害者も含めた歩行者の横断安全性をより一層高めて、横断歩道等における歩行者の視覚バリアフリーを実現することができる。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明は交差点等の横断歩道などにおいて歩行者の横断安全性を高めるために利用することができ、特に視覚障害を持つ人に有効に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明に係る歩行者横断誘導システムの構成例を示す説明図である。
【図2】本発明に係る歩行者用信号灯器の一例を示す正面図である。
【図3】図2の信号灯器の第2発光部を示す分解斜視図である。
【符号の説明】
【0049】
1 歩行者用信号灯器
1A 第1発光部
1B 第2発光部
11 ユニットケース
12 LED基板
13R LED(赤色)
13B LED(青色)
14 前面カバー
15 透光板
16 押えカバー板
17a,17b 残時間表示部
2 制御部
T タイマー
3 電源部
4 信号生成部
5 増幅回路
6 スピーカ
7 変調部
8 受信装置
81 受光部
82 復調部
83 出力手段
9 信号制御器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
「横断不可」を表示する第1発光部と「横断可」を表示する第2発光部との点灯形態が制御部により制御されて、歩行者が横断可否を判断するための横断情報を各発光部における点灯形態により示すとともに、前記横断情報を情報信号にて発信する信号生成部を有し、さらに前記信号生成部から発せられる情報信号を変調する変調部を備えて、変調された変調信号に基づいて前記各発光部の明滅あるいは光量を制御し、前記横断情報を各発光部からの可視光情報信号として横断方向に送信しうる信号灯器と、
送信された可視光情報信号を受信する受光部と、受信した可視光情報信号を情報信号に復調する復調部と、復調された情報信号を前記横断情報として出力しうる出力手段とを備えた受信装置とを用いて、
当該受信装置を携行する歩行者に、前記横断情報を直接的に伝達可能とされたことを特徴とする歩行者横断誘導システム。
【請求項2】
前記情報信号は、振動信号または音声信号であることを特徴とする請求項1に記載の歩行者横断誘導システム。
【請求項3】
前記信号灯器の各発光部の光源には多数のLEDが用いられ、LED群によって各発光部が点灯表示されるとともに、前記可視光情報信号は該LED群の明滅あるいは光量によって送信されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の歩行者横断誘導システム。
【請求項4】
前記受信装置の出力手段は、イヤホンまたはヘッドホンであることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の歩行者横断誘導システム。
【請求項5】
前記受信装置の出力手段は、骨伝導スピーカであることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の歩行者横断誘導システム。
【請求項6】
前記信号灯器の各発光部には、「横断不可」または「横断可」を示す人形図柄と、残りの横断可能時間または横断可能となるまでの待ち時間を表示する残時間表示部とがそれぞれ設けられたことを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれかに記載の歩行者横断誘導システム。
【請求項7】
「横断不可」を表示する第1発光部と「横断可」を表示する第2発光部との点灯形態が制御部により制御されて、歩行者が横断可否を判断するための横断情報を各発光部における点灯形態により示すとともに、前記横断情報を情報信号にて発信しうる信号生成部を備えた歩行者用信号灯器であって、
前記信号生成部から発せられる情報信号を変調する変調部が設けられて、変調された変調信号に基づいて前記各発光部の明滅あるいは光量を制御することにより前記横断情報を各発光部からの可視光情報信号として横断方向に送信可能となされ、
この可視光情報信号を受信する受光部と、受信した可視光情報信号を前記情報信号に復調する復調部と、復調された情報信号を前記横断情報として出力しうる出力手段とを備えた受信装置を携行する歩行者に前記横断情報を直接的に伝達しうることを特徴とする歩行者用信号灯器。
【請求項8】
前記情報信号は、振動信号または音声信号であることを特徴とする請求項7に記載の歩行者用信号灯器。
【請求項9】
各発光部の背面側にはLED群が配置され、このLED群によって各発光部が点灯表示されるとともに、前記可視光情報信号が該LED群の明滅あるいは光量によって送信可能となされたことを特徴とする請求項7または請求項8に記載の歩行者用信号灯器。
【請求項10】
各発光部には、「横断不可」または「横断可」を示す人形図柄と、残りの横断可能時間または横断可能となるまでの待ち時間を表示する残時間表示部とがそれぞれ設けられたことを特徴とする請求項7〜請求項9のいずれかに記載の歩行者用信号灯器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2007−207175(P2007−207175A)
【公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−28627(P2006−28627)
【出願日】平成18年2月6日(2006.2.6)
【出願人】(000195029)星和電機株式会社 (143)
【Fターム(参考)】