説明

歪補償回路

【課題】ダイオードに印加するバイアス電圧を自動的に制御して超高周波入力信号平均電力における広い範囲に渡って低歪化を行う歪補償回路を提供する。
【解決手段】入力信号の一部を対数検波して入力信号の平均電力を得る。入力信号の平均電力に応じてバイアス電圧をアナログ回路で生成する。バイアス電圧に応じて歪発生ダイオード回路部が生成する歪を入力信号に加える。歪発生ダイオード回路部は、歪補償回路に接続された増幅器の歪を補償するように予め設計されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歪補償回路と、この歪補償回路を用いる歪補償増幅回路と、この歪補償回路を用いる歪補償方法とに係り、特に、ダイオードを用いる歪補償回路と、この歪補償回路を用いる歪補償増幅回路と、この歪補償回路を用いる歪補償方法とに係る。
【背景技術】
【0002】
ワイヤレス通信システムの高度化に伴い、マイクロ波送信用電力増幅器に対する要求は、高効率の面のみならず、低歪化の面においても、益々厳しくなっている。マイクロ波用の歪補償技術の分野では、小型で、かつ、広い帯域を有することを特徴とする、ダイオードを用いた歪補償回路が広く利用されている。
【0003】
図1は、従来技術による歪補償回路の構成例を示す回路図である。図1の歪補償回路は、入力部1と、出力部2と、ダイオード3と、第1、第2の容量4、5と、第1、第2のチョークコイル6、10と、第1、第2のマイクロ波主線路7、8と、バイアス抵抗9と、バイアス電圧供給部11とを具備している。
【0004】
図1の歪補償回路における構成要素の接続関係について説明する。入力部1は、第1の容量4の一方の端部に接続されている。第1の容量4の他方の端部は、第1のマイクロ波主線路7に接続されている。第1のマイクロ波主線路7は、バイアス抵抗9の一方の端部と、ダイオード3のアノードに接続されている。ダイオード3のカソードは、第2のマイクロ波主線路8に接続されている。第2のマイクロ波主線路8は、第1のチョークコイル6の一方の端部と、第2の容量5の一方の端部とに接続されている。第1のチョークコイル6の他方の端部は、グランドに接地されている。第2の容量5の他方の端部は、出力部2に接続されている。出力部2は、図示しない増幅器に接続される。バイアス抵抗9の他方の端部は、第2のチョークコイル10の一方の端部に接続されている。第2のチョークコイル10の他方の端部は、バイアス電圧供給部11に接続されている。このように、図1の歪補償回路では、ダイオード3が主線路7、8に直列に挿入されている。
【0005】
図1のような歪補償回路は、任意の増幅器の後段に接続されて、この増幅器が有する歪特性の相殺、すなわち歪補償を行う。増幅器の歪特性を相殺するためには、歪補償回路自身の歪特性を、増幅器の歪特性に合わせて精度良く調節する必要がある。歪特性は、利得偏移特性および位相偏移特性に分けて考えることが出来る。
【0006】
図1の歪補償回路における利得偏移特性および位相偏移特性は、バイアス抵抗9およびチョークコイル10を介してダイオード3に印加されるバイアス電圧によって調整可能であり、バイアス抵抗などダイオード周辺の素子の特性にも依存するが、まずはダイオード3自体の特性に大きく依存する。このように、歪特性を調節する条件には限りがあるので、歪補償にも限界がある。したがって、超高周波入力信号における平均電力の広い範囲にわたって、増幅器とは逆の利得偏移特性および位相偏移特性を持つ歪補償回路を作ることは、容易ではない。
【0007】
図2は、従来技術によるダイオード歪補償回路を含む増幅器の特性例を示すグラフである。図2のグラフは、ダイオードを用いた歪補償回路を備えた超高周波電力増幅器における、超高周波W−CDMA(Wideband Code Division Multiple Access)変調信号の平均入力電力に対する増幅出力のACPR(Adjacent −Channel Power Ratio:隣接チャネル漏洩電力比)特性を、歪補償の前後で比較した結果を示している。
【0008】
図2のグラフにおいて、横軸は平均出力電力を示し、縦軸はACPRを示している。図2のグラフには、第1〜第3のグラフ12〜14が描かれている。ここで、第1のグラフ12は、歪補償が無い特性を示す。第2のグラフ13は、入力信号平均電力の広い範囲でACPRを改善した場合の、歪補償特性を示す。第3のグラフ14は、入力信号平均電力の狭い範囲でACPRを改善した場合の、歪補償特性を示す。図2から、一般的には入力信号電力の範囲を狭くすれば歪特性がより改善できることが分かる。
【0009】
以上に関連して、特許文献1(特開2000−151295号公報)には、歪補償回路に係る記載が開示されている。特許文献1に記載の歪補償回路は、ベクトル調整器と、リニアライザと、非線形信号抽出経路と、レベル検出器と、制御回路とを備えたことを特徴としている。ここで、ベクトル調整器は、入力信号の振幅及び位相特性を電気的に調整可能である。リニアライザは、アナログの線形及び非線形素子で構成され、ベクトル調整器の出力である入力電力の変化に対して後段に接続された増幅器と逆の振幅及び位相特性を有し、入力電力の変化に対する振幅及び位相特性を電気的に調整可能である。非線形信号抽出経路は、ベクトル調整器の入力側から入力信号の一部を抽出する線形信号抽出経路と、増幅器の出力側から出力信号の一部を抽出する。レベル検出器は、線形信号抽出経路及び非線形信号抽出経路の合成電力レベルを検出する。制御回路は、検出合成電力レベルに応じてリニアライザのバイアス調整を行い、レベル検出器における検出電力が最小となるようにリニアライザを電気的に調整を行うとともに、リニアライザの調整を行う度に、レベル検出器における検出電力が最小となるようにベクトル調整器の調整を行う。
【0010】
また、特許文献2(特開2004−343296号公報)には、ダイオードリニアライザを用いた歪補償回路に係る記載が開示されている。特許文献2に記載のダイオードリニアライザを用いた歪補償回路は、無線周波数帯の入力信号を増幅するパワーアンプの前段に設けられてこのパワーアンプの出力歪みを補償するダイオードリニアライザを用いており、以下のことを特徴とする。すなわち、この歪補償回路は、パワーアンプに供給される入力信号のレベルに基づいて、ダイオードリニアライザのバイアス電圧を、少なくとも、第1バイアス電圧値又はこれとは異なる第2バイアス電圧値に切り替える切替制御手段を有する。ここで、第1バイアス電圧は、入力信号のレベルが所定の基準レベル以下の範囲において、第2バイアス電圧よりも、大きく出力歪みを補償する値である。第2バイアス電圧は、入力信号のレベルが基準レベルよりも高い範囲において、第1バイアス電圧よりも、大きく出力歪みを補償する値である。切替制御手段は、入力信号と所定の基準レベルとを比較し、入力信号のレベルが基準レベル以下の範囲では、バイアス電圧を第1バイアス電圧値に切り替え、入力信号のレベルが基準レベルより高い範囲では、バイアス電圧を第2バイアス電圧に切り替える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2000−151295号公報
【特許文献2】特開2004−343296号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、ダイオードに印加するバイアス電圧を自動的に制御して超高周波入力信号平均電力における広い範囲に渡って低歪化を行う歪補償回路を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
以下に、(発明を実施するための形態)で使用される番号を用いて、課題を解決するための手段を説明する。これらの番号は、(特許請求の範囲)の記載と(発明を実施するための形態)との対応関係を明らかにするために付加されたものである。ただし、それらの番号を、(特許請求の範囲)に記載されている発明の技術的範囲の解釈に用いてはならない。
【0014】
本発明による歪補償回路は、増幅器に接続されている。本発明による歪補償回路は、制御回路部と、歪発生ダイオード回路部とを具備する。ここで、制御回路部は、入力信号の一部を検出して得られる入力信号の平均電力に応じてバイアス電圧をアナログ回路で生成する。歪発生ダイオード回路部は、増幅器の歪特性を補償するための歪をバイアス電圧に応じて生成し、入力信号に歪を加える。
【0015】
本発明による歪補償方法は、入力信号の一部を検出するステップと、検出するステップで得られる入力信号の平均電力に応じたバイアス電圧をアナログ回路で生成するステップと、増幅器の歪特性を補償するための歪をバイアス電圧に応じて生成するステップと、歪をバイアス電圧に応じて生成するステップで得られる歪を入力信号に加えるステップとを具備する。
【発明の効果】
【0016】
本発明の歪補償回路によれば、ダイオードに印加するバイアス電圧を入力信号に基づいて自動的に制御することで、超高周波入力信号平均電力における広い範囲に渡って低歪化が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、従来技術による歪補償回路の構成例を示す回路図である。
【図2】図2は、従来技術によるダイオード歪補償回路を含む増幅器の特性例を示すグラフである。
【図3】図3は、本発明の第1の実施形態による歪補償回路および歪補償増幅回路の構成を示す回路図である。
【図4】図4は、本発明の第1の実施形態による歪発生ダイオード回路部の別の構成例を示す回路図である。
【図5】図5は、平均出力電力およびACPRの関係における、本発明および従来技術の比較を示すグラフである。
【図6】図6は、RF入力平均電力および最適ダイオードバイアス電圧の関係を示すグラフである。
【図7】図7は、本発明の第2の実施形態による歪補償回路および歪補償増幅回路の構成を示す回路図である。
【図8】図8は、本発明の第3の実施形態による歪補償回路および歪補償増幅回路の構成を示す回路図である。
【図9】図9は、本発明の第4の実施形態による歪補償回路および歪補償増幅回路の構成を示す回路図である。
【図10】図10は、本発明による歪補償回路における、平均出力電力と、ダイオードバイアス電圧を制御する制御電圧と、IMD3との関係を示すグラフである。
【図11】図11は、本発明による歪補償回路における、平均入力電力と、最適ダイオードバイアス電圧との関係を示すグラフである。
【図12】図12は、本発明の第4の実施形態による直流増幅器の構成の具体例を示す回路図である。
【図13A】図13Aは、本発明の第5の実施形態による歪補償回路および歪補償増幅回路の構成例を示す回路図である。
【図13B】図13Bは、本発明の第5の実施形態による歪補償回路および歪補償増幅回路の別の構成例を示す回路図である。
【図14A】図14Aは、本発明の第5の実施形態による歪発生ダイオード回路部33aの構成例を示す回路図である。
【図14B】図14Bは、本発明の第5の実施形態による歪発生ダイオード回路部33aの構成例を示す回路図である。
【図14C】図14Cは、本発明の第5の実施形態による歪発生ダイオード回路部33aの構成例を示す回路図である。
【図14D】図14Dは、本発明の第5の実施形態による歪発生ダイオード回路部33aの構成例を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
添付図面を参照して、本発明による歪補償回路と、この歪補償回路を用いる歪補償増幅回路と、この歪補償回路を用いる歪補償方法とを実施するための形態を以下に説明する。
【0019】
(第1の実施形態)
図3は、本発明の第1の実施形態による歪補償回路30および歪補償増幅回路の構成を示す回路図である。図3の歪補償回路30は、入力部31と、制御回路部32aと、歪発生ダイオード回路部33と、出力部35とを具備している。図3の歪補償増幅回路は、歪補償回路30と、増幅器34とを具備している。
【0020】
図3の歪補償回路30の構成要素の接続関係について説明する。入力部31は、制御回路部32aの入力部に接続されている。制御回路部32aの第1の出力部は、歪発生ダイオード回路部33の第1の入力部33Aに接続されている。制御回路部32aの第2の出力部は、歪発生ダイオード回路部33の第2の入力部33Bに接続されている。歪発生ダイオード回路部33の出力部33Cは、出力部35に接続されている。なお、出力部35は、歪補償回路30の後段に接続された超高周波増幅回路34の入力部に接続されている。
【0021】
図3の歪補償回路30の動作、すなわち本発明の第1の実施形態による歪補償方法について説明する。制御回路部32aは、入力信号の一部を取り込んで対数検波する。その結果、入力信号の平均電力が得られる。制御回路部32aは、後述するように、入力信号の一部を入力し、入力信号全体の平均電力を得て、入力信号の平均電力に応じたバイアス電圧を自動的に生成する。歪発生ダイオード回路部33は、このバイアス電圧に基づいた歪を入力信号に加えて出力する。ここで、バイアス電圧と歪みとの関係は、歪補正回路30の後段に接続された出力部34の特性に応じて予め設定されている。すなわち、本発明による歪補償回路は、上述した特許文献1に記載の歪補償回路とは異なり、出力部から入力部へのフィードバックを行わないことに注目されたい。
【0022】
また、入力信号の平均電力からバイアス電圧への変換は、アナログ回路を用いて行われる。すなわち、本発明による歪補償回路は、上述した特許文献2に記載のダイオードリニアライザを用いた歪補償回路のようなデジタル回路を用いていないことに注目されたい。
【0023】
歪発生ダイオード回路部33は、図1に示した従来技術による歪補償回路と同様に動作する。ここで、図1の歪補償回路の構成および動作について再度説明する。図1の歪補償回路は、入力部1と、出力部2と、ダイオード3と、第1、第2の容量4、5と、第1、第2のチョークコイル6、10と、第1、第2のマイクロ波主線路7、8と、バイアス抵抗9と、バイアス電圧供給部11とを具備している。入力部1は、第1の容量4の一方の端部に接続されている。第1の容量4の他方の端部は、第1のマイクロ波主線路7に接続されている。第1のマイクロ波主線路7は、バイアス抵抗9の一方の端部と、ダイオード3のアノードに接続されている。ダイオード3のカソードは、第2のマイクロ波主線路8に接続されている。第2のマイクロ波主線路8は、第1のチョークコイル6の一方の端部と、第2の容量5の一方の端部とに接続されている。第1のチョークコイル6の他方の端部は、グランドに接地されている。第2の容量5の他方の端部は、出力部2に接続されている。出力部2は、図示しない増幅器に接続される。バイアス抵抗9の他方の端部は、第2のチョークコイル10の一方の端部に接続されている。第2のチョークコイル10の他方の端部は、バイアス電圧供給部11に接続されている。ダイオード3は、入力部1から容量4を介して入力信号をアノードに供給されると同時に、バイアス電圧供給部11からチョークコイル10およびバイアス抵抗9を介してバイアス電圧がアノードに印加される。ダイオード3は、入力信号およびバイアス電圧に応じた信号をカソードから出力し、この信号はチョークコイル6および容量5からなるフィルタ回路を介して出力部2から出力される。このとき、ダイオード3の特性に応じた歪が出力信号に乗るが、バイアス電圧を調節することでこの歪を制御することが可能である。
【0024】
ここで、図3の歪発生ダイオード回路部33における第1の入力部33A、第2の入力部33Bおよび出力部33Cは、図1の歪補償回路における入力部1、バイアス電圧供給部11および出力部2にそれぞれ対応している。すなわち、歪発生ダイオード回路部33は、第1の入力部33Aに供給された入力信号に、第2の入力部33Bに印加されるダイオードバイアス電圧に応じた歪を加えて、出力部33Cから出力する。
【0025】
また、図3の歪発生ダイオード回路部33は、図1の歪補償回路以外の別の構成であっても良い。図4は、本発明の第1の実施形態による歪発生ダイオード回路部33の別の構成例を示す回路図である。
【0026】
図4の歪発生ダイオード回路部の構成要素について説明する。図4の歪発生ダイオード回路部は、入力部1と、第1の容量4と、第1のマイクロ波主線路7と、ダイオード3と、バイアス抵抗9と、チョークコイル10と、バイアス電圧供給部11と、第2のマイクロ波主線路8と、第2の容量5と、出力部2とを具備している。
【0027】
図4の歪発生ダイオード回路部の構成要素の接続関係について説明する。入力部1は、第1の容量4の一方の端部に接続されている。第1の容量4の他方の端部は、第1のマイクロ波主線路7に接続されている。第1のマイクロ波主線路7は、ダイオード3のアノードと、バイアス抵抗9の一方の端部と、第2のマイクロ波主線路8とに接続されている。ダイオード3のカソードは、グランドに接地されている。バイアス抵抗9の他方の端部は、第2のチョークコイル10の一方の端部に接続されている。第2のチョークコイル10の他方の端部は、バイアス電圧供給部11に接続されている。第2のマイクロ波主線路8は、第2の容量5の一方の端部に接続されている。第2の容量5の他方の端部は、出力部2に接続されている。
【0028】
図4のように、歪発生ダイオード回路部におけるダイオード3は、マイクロ波主線路7、8に対して並列に接続されていても、バイアス電圧供給部11に印加されるバイアス電圧に応じた歪を入力信号に加えて出力する。
【0029】
上記のように設計された本発明の第1の実施形態による歪補正回路の性能について説明する。なお、本発明の歪補正回路30、特に制御回路部32aの具体的な構成およびその設計方法については、本発明の全ての実施形態に共通するが、後述する本発明の第4の実施形態の説明において詳細に述べる。図5は、平均出力電力およびACPRの関係における、本発明および従来技術の比較を示すグラフである。図5のグラフにおいて、横軸は平均出力電力を示し、縦軸はACPRを示している。図5のグラフは、4本の曲線22〜25を有している。曲線22は、歪補償を行わない場合を示している。曲線23は、平均出力電力P1においてACPRが最小となるようなダイオードバイアス電圧V1を印加した場合を示している。曲線24は、平均出力電力P2においてACPRが最小となるようなダイオードバイアス電圧V2を印加した場合を示している。曲線25は、各平均出力電力Piにおいて、ACPRが最小となるようなダイオードバイアス電圧Viをそれぞれ印加する本発明の場合を示している。
【0030】
なお、図5では、変調方式として、W−CDMA変調信号を用いることを想定している。ただし、これはあくまでも一例に過ぎず、本発明において他の変調信号の使用を制限するものではない。
【0031】
図6は、RF入力平均電力および最適ダイオードバイアス電圧の関係を示すグラフである。図6のグラフにおいて、横軸はRF入力平均電力を示し、縦軸は最適ダイオードバイアス電圧を示している。図6の曲線から、例えば、RF入力平均電力がP1のときは最適ダイオードバイアス電圧がV1で、RF入力平均電力がP2のときは最適ダイオードバイアス電圧がV2であることが読み取れる。制御回路部32aの特性を、図6のグラフに合わせて予め調整しておくことによって、平均入力電力に基づく最適なダイオードバイアス電圧を生成することが可能である。
【0032】
以上のように、本発明の第1の実施形態に係る歪補償回路30では、入力信号の一部を取り込むアナログ回路としての制御回路部32aを具備しているので、ダイオードに印加するバイアス電圧を入力信号に基づいて自動的に制御することで、超高周波入力信号平均電力における広い範囲にわたって低歪化が可能となる。
【0033】
(第2の実施形態)
図7は、本発明の第2の実施形態による歪補償回路30aおよび歪補償増幅回路の構成を示す回路図である。図7の歪補償回路30aは、図3の歪補償回路30に以下の変更を加えたものに等しい。すなわち、図7の制御回路部32aは、容量36および制御回路部32bを具備している。図7の歪補償増幅回路は、図7の歪補償回路30aの後段に増幅器34を接続したものに等しい。
【0034】
ここで、入力部31は、容量36の一方の端部と、歪発生ダイオード回路33の第1の入力部33Aとに接続されている。容量36の他方の端部は、制御回路部32bの入力部に接続されている。制御回路部32bの出力部は、歪発生ダイオード回路33の第2の入力部33Bに接続されている。
【0035】
本発明の第2の実施形態による歪補償回路30aにおけるその他の構成、設計方法、動作などは、本発明の第1の実施形態の場合と同じであるので、共通する構成要素については同じ番号を用いた上で、さらなる詳細な説明を省略する。
【0036】
容量36は、入力信号の一部を取り出して制御回路部32bに向けて供給する。
【0037】
以上のように、本発明の第2の実施形態に係る歪補償回路30aでは、入力信号の一部を取り込む容量36と、その後段に接続されたアナログ回路としての制御回路部32bを具備しているので、ダイオードに印加するバイアス電圧を入力信号に基づいて自動的に制御することで、超高周波入力信号平均電力における広い範囲にわたって低歪化が可能となる。また、容量36を用いることで、歪補償回路部30aを簡単かつ小型な回路で構成することができる。
【0038】
(第3の実施形態)
図8は、本発明の第3の実施形態による歪補償回路30bおよび歪補償増幅回路の構成を示す回路図である。図8の歪補償回路30bは、図7の歪補償回路30aに以下の変更を加えたものに等しい。すなわち、図8に示されるように、歪補償回路30bは、入力部31および歪発生ダイオード回路33の間を結ぶ線路と、制御回路32bとの接続点に、方向性結合器37が設けられている。図8の歪補償増幅回路は、図8の歪補償回路の後段に増幅器34を接続したものに等しい。
【0039】
ここで、入力部31は、方向性結合器37の入力部37Aに接続されている。方向性結合器37の一方の出力部37Bは、歪発生ダイオード回路33の第1の入力部33Aに接続されている。方向性結合器37の第2の出力部37Cは、制御回路部32bの入力部に接続されている。
【0040】
本発明の第3の実施形態による歪補償回路30bにおけるその他の構成、設計方法、動作などは、本発明の第2の実施形態の場合と同じであるので、共通する構成要素については同じ番号を用いた上で、さらなる詳細な説明を省略する。
【0041】
本発明の第3の実施形態における方向性結合器37は、本発明の第2の実施形態における容量36と同様に、入力信号の一部を取り出して制御回路部32bに向けて供給する。なお、本発明の第3の実施形態における方向性結合器37および制御回路部32bが、本発明の第1の実施形態における制御回路部32aに含まれている、と捉えても良い。
【0042】
以上のように、本発明の第3の実施形態に係る歪補償回路30bでは、入力信号の一部を取り込む方向性結合器37と、その後段に接続されたアナログ回路としての制御回路部32bを具備しているので、ダイオードに印加するバイアス電圧を入力信号に基づいて自動的に制御することで、超高周波入力信号平均電力における広い範囲にわたって低歪化が可能となる。
【0043】
(第4の実施形態)
図9は、本発明の第4の実施形態による歪補償回路30cおよび歪補償増幅回路の構成を示す回路図である。図9の歪補償回路30cは、図7の歪補償回路に以下の変更を加えたものに等しい。すなわち、図9に示されるように、図7における制御回路部32aを、図9における制御回路部32bと、容量36とに置き換える。制御回路部32bは、対数検波回路41と、LPF(Low Pass Filter:低域通過フィルタ)42と、直流増幅回路43とで構成されている。図9の歪補償増幅回路は、図9の歪補償回路30cの後段に増幅器34を接続したものに等しい。
【0044】
ここで、入力部31は、容量36の一方の端部と、歪発生ダイオード回路部33の第1の入力部33Aとに接続されている。容量36の他方の端部は、対数検波回路部41の入力部に接続されている。対数検波回路部41の出力部は、LPF42の入力部に接続されている。LPF42の出力部は、直流増幅回路部43の入力部に接続されている。直流増幅回路部43の出力部は、歪発生ダイオード回路34の第2の入力部33Bに接続されている。
【0045】
本発明の第4の実施形態による歪補償回路30cにおけるその他の構成は、本発明の第2の実施形態の場合と同じであるので、共通する構成要素については同じ番号を用いた上で、さらなる詳細な説明を省略する。
【0046】
本発明の第4の実施形態による歪補償回路30cの動作について説明する。入力部31に入力された入力信号のうち、一部分は容量36に供給され、残りの大部分は歪発生ダイオード回路34に供給される。対数検波回路41は、容量36に供給された入力信号の一部分を対数検波して、LPF42に向けて出力する。なお、対数検波回路41として、所定の特性を有するダイオードを用いても良い。
【0047】
LPF42は、対数検波回路41の出力信号から直流成分を取り出して直流増幅回路43に向けて出力する。なお、LPF42は、受動的なフィルタであっても良いし、オペアンプなどを用いた能動的なフィルタであっても良い。
【0048】
対数検波回路41およびLPF42の後段に配置された直流増幅回路43は、入力信号の平均電力に対応する信号を入力する。直流増幅回路43は、入力信号の平均電力に基づいて、歪発生ダイオード回路を制御するダイオードバイアス電圧を出力する。ここで、直流増幅回路43は、入力信号の平均電力ごとに最適なダイオードバイアス電圧を出力するように設計されている。
【0049】
本発明の制御回路部32a(その中でも特に制御回路部32bに内蔵された直流増幅回路43)の設計方法について説明する。なお、この設計方法は、前述したとおり、本発明の第4の実施形態のみならず、他の全ての実施形態の制御回路部32aにおいても同様に用いられる。まず、歪発生ダイオード回路33および増幅回路34のみを接続した回路、言い換えれば図9の回路から制御回路部32aを取り除いた回路で、平均出力電圧ごとにIMD3(third−order InterModulation Distortion:三次相互変調歪)が最適となるダイオードバイアス電圧を求める。次に、やはり歪発生ダイオード回路33および増幅回路34のみを接続した回路における、平均入力電圧と、最適なダイオードバイアス電圧との関係性を求める。最後に、上記の関係性にしたがって、平均入力電圧に応じて最適なダイオードバイアス電圧を出力する制御回路部32a(その中でも特に直流増幅回路43)を、アナログ的に調節する。以下、上記3つのステップについて詳細に説明する。
【0050】
まず、平均出力電圧ごとにIMD3が最適となるダイオードバイアス電圧を求めるステップについて説明する。図10は、本発明による歪補償回路30、30a〜30cにおける、平均出力電力と、ダイオードバイアス電圧を制御する制御電圧と、IMD3との関係を示すグラフである。図10のグラフにおいて、横軸は平均出力電力を示し、縦軸はIMD3を示す。
【0051】
図10のグラフには、12対の曲線が描かれている。これら12対の曲線のうち、11対の曲線は、0.50V、0.52V、…、0.70Vの制御電圧Vcにそれぞれ対応する。残る1対の曲線は、制御電圧を印加しない、すなわちバイアス電圧を印加しなかった場合に対応する。また、これら12対の曲線のそれぞれは、実線の曲線と、破線の曲線とを有している。ここで、実線の曲線は、上側IMD3に対応し、破線の曲線は下側IMD3に対応する。なお、図10のグラフは、実測データに基づいて作成されている。
【0052】
図10のグラフにおいて、12対の曲線は、縦軸で下に行くほど結果が良いことを示す。したがって、12対の曲線に下から接する包絡線を求めることで、平均出力電力と、制御電圧との、理想的な関係が得られる。
【0053】
なお、図10のグラフにおいて、横軸に平均出力電力を用いているが、これはあくまでも慣例に従ってのことであって、代わりに平均入力電力を用いても構わない。また、平均出力電力と、平均入力電力とは、増幅器の特性に応じて一対一に対応する。したがって、平均出力電力および最適制御電圧の関係を得ることは、平均入力電力および制御電圧の関係を得ることと同意である。
【0054】
次に、平均入力電圧と、最適なダイオードバイアス電圧との関係性を求めるステップについて説明する。図11は、本発明による歪補償回路30、30a〜30cにおける、平均入力電力と、最適ダイオードバイアス電圧との関係を示すグラフである。図11のグラフにおいて、横軸は平均入力電力を示し、縦軸は最適ダイオードバイアス電圧を示す。
【0055】
図11のグラフは、2つの点群を有している。黒丸は、図10のグラフに基づいてプロットされた、平均入力電力および最適ダイオードバイアス電圧の関係を示す点群である。白丸は、黒丸の電圧を得るように設計調整した制御回路の出力電圧の測定値である。なお、図11の黒丸を適切につなげることで、図6のグラフが得られる。
【0056】
次に、平均入力電圧に対して最適なダイオードバイアス電圧を出力するように直流増幅回路をアナログ的に調節するステップについて説明する。図12は、本発明の第4の実施形態による直流増幅回路43の構成の具体例を示す回路図である。図12の直流増幅回路43は、前段のLPF42に接続された入力部Inと、第1〜第4のオペアンプA1〜A4と、第1および第2のダイオードD1、D2と、第1〜第3の容量C1〜C3と、第1〜第5の抵抗R1〜R5と、第1〜第3の可変抵抗VR1〜VR3と、後段の歪発生ダイオード回路33に接続された出力部Outとを具備している。
【0057】
図12の直流増幅回路43の構成要素の具体例を示す。第1のオペアンプA1としては、アナログ・デバイセズ製のAD817を用いている。第2〜第4のオペアンプA2〜A3としては、NEC製のμPC4570を用いている。なお、これらはあくまでも一例であって、これらの構成要素を限定するものではない。
【0058】
図12の直流増幅回路43の構成要素同士の接続関係について説明する。入力部Inは、第1の抵抗R1の一方の端部に接続されている。第1の抵抗R1の他方の端部は、第1の容量C1の一方の端部と、第2の抵抗R2の一方の端部とに接続されている。第1の容量C1の他方の端部は、グランドに接地されている。第2の抵抗R2の他方の端部は、第2の容量C2の一方の端部と、第3の抵抗R3の一方の端部とに接続されている。第3の抵抗R3の他方の端部は、第3の容量C3の一方の端部と、第1のオペアンプA1の非反転側入力部とに接続されている。第3の容量C3の他方の端部は、グランドに接地されている。第2の容量C2の他方の端部は、第1のオペアンプA1における反転側入力部および出力部と、第2の可変抵抗VR2の一方の端部とに接続されている。第2の可変抵抗VR2の他方の端部は、グランドに接地されている。第2の可変抵抗VR2の可動端部は、第2のオペアンプA2の非反転側入力部に接続されている。第2のオペアンプA2の反転側入力部は、第4の抵抗R4の一方の端部と、第5の抵抗R5の一方の端部とに接続されている。第4の抵抗R4の他方の端部は、第2のオペアンプA2の出力部と、第1のダイオードD1のアノードとに接続されている。第5の抵抗R5の他方の端部は、第3のオペアンプA3における反転側入力部および出力部に接続されている。第3のオペアンプA3の非反転側入力部は、第1の可変抵抗VR1の可動端部に接続されている。第1の可変抵抗VR1の一方の端部は、電源電圧供給部VDDに接続されている。第1の可変抵抗VR1の他方の端部は、グランドに接地されている。第1のダイオードD1のカソードは、第2のダイオードD2のカソードと、第4のオペアンプA4の非反転側入力部とに接続されており、グランドに接地されている。第2のダイオードD2のアノードは、第3の可変抵抗VR3の可動端部に接続されている。第3の可変抵抗VR3の一方の端部は、電源電圧供給部VDDに接続されている。第3の可変抵抗VR3の他方の端部は、グランドに接地されている。第4のオペアンプA4の反転側入力部は、第4のオペアンプA4の出力部と、出力部Outとに接続されている。
【0059】
図12の直流増幅回路43の動作について説明する。入力部Inの直後には、差周波帯域を直流成分(例:100Hz程度以下)にするためのローパスフィルタが配置されている。このローパスフィルタは、RC回路と、第1のオペアンプA1を用いたオペアンプ正帰還型ローパスフィルタ回路を含む。これらのローパスフィルタの後段には、除算回路およびボルテージフォロア回路として動作する第2、第3のオペアンプA2、A3が配置されている。除算回路およびボルテージフォロア回路では、第1、第2の可変抵抗VR1、VR2の抵抗値をそれぞれ調節することで、RF入力信号に対する出力電圧の傾きおよび切片を調整できる。最終段には、OR回路として動作する第4のオペアンプA4が配置されている。ここで、RF入力電圧が小さいときに、ダイオードバイアス電圧を0.5V以上かかるように設定されている。RF入力電圧が小さいまたは無い場合の出力電圧は、第3の可変抵抗VR3の抵抗値を調整することで決定できる。
【0060】
このように、第1〜第3の可変抵抗VR1〜VR3の抵抗値をアナログ的に調整することで、直流増幅回路は平均入力電圧に対して最適なダイオードバイアス電圧を出力出来る。なお、当然ながら、可変抵抗VR1〜VR3の抵抗値を調整する前に、第1〜第4のオペアンプA1〜A4や第1、第2のダイオードD1、D2としてそれぞれに適切な素子を選択し、第1〜第5の抵抗R1〜R5の抵抗値および第1〜第3の容量C1〜C3の容量値をそれぞれ適切に設定することも重要である。
【0061】
ここまで説明した図12の直流増幅回路43の構成要素、接続関係、動作などは、あくまでも一例であって、本発明による歪補正回路を限定するものではなく、他の構成を用いても良いことは言うまでもない。
【0062】
以上のように、本発明の第4の実施形態に係る歪補償回路30cでは、入力信号の一部を取り込む方向性結合器36と、その後段に直列に接続された対数検波回路41、低域通過フィルタ42および直流増幅回路43を具備しており、直流増幅回路43は平均入力電圧に応じて最適なダイオードバイアス電圧を自動的に出力するように調節されているので、超高周波入力信号平均電力における広い範囲にわたって低歪化が可能となる。
【0063】
(第5の実施形態)
図13Aは、本発明の第5の実施形態による歪補償回路30dおよび歪補償増幅回路の構成例を示す回路図である。図13Aの歪補償回路30dは、図3に示した本発明の第1の実施形態による歪補償回路30に、以下の変更を加えたものに等しい。すなわち、図3の歪発生ダイオード回路部33の代わりに図13Aの歪発生ダイオード回路部33aが配置されており、第2の制御回路部32cが追加されている。図13Aの歪補償増幅回路は、図13Aの歪補償回路の後段に増幅器34を接続したものに等しい。
【0064】
本発明の第5の実施形態による歪補償回路30dでは、歪発生ダイオード回路部33aが複数のダイオードを具備しており、これら複数のダイオードにダイオードバイアス電圧を供給する複数の制御回路部32a、32cが設けられている。ここでは、歪発生ダイオード回路部33aが2つのダイオードを具備し、歪補償回路30dが2つの制御回路部32a、32cを具備している例について説明するが、これらの数を2つに限定するものではない。
【0065】
また、歪発生ダイオード回路部33aが具備するダイオードの数と、歪補償回路30dが具備する制御回路の数とは、必ずしも一致する必要は無い。図13Bは、本発明の第5の実施形態による歪補償回路30eおよび歪補償増幅回路の別の構成例を示す回路図である。図13Bの歪補償回路30eは、図13Aに示した本発明の第5の実施形態による歪補償回路30dから、第2の制御回路32cを取り除いたものである。この場合は、1つの制御回路32aが出力する同じダイオードバイアス電圧を、歪発生ダイオード回路部33aの2つのダイオードに供給している。
【0066】
本発明の第5の実施形態による歪補償回路30d、30eの、歪発生ダイオード回路部33aの構成について説明する。図14A〜図14Dは、本発明の第5の実施形態による歪発生ダイオード回路部33aの構成例を示す回路図である。
【0067】
図14Aは、2つのダイオードが2本のマイクロ波主線路に対してそれぞれ直列に接続されて、かつ、2つのダイオードが互いに並列に接続されている場合の歪発生ダイオード回路部33aの構成を示す回路図である。図14Aの歪発生ダイオード回路部33aは、図1の歪補償回路に以下の変更を加えたものに等しい。すなわち、第2のダイオード3aと、第3、第4の容量4a、5aと、第3、第4のチョークコイル6a、10aと、第3、第4のマイクロ波主線路7a、8aと、第2のバイアス抵抗9aと、第2のバイアス電圧供給部11aとを追加する。ここで、入力部1と、第2のダイオード3aと、第3、第4の容量4a、5aと、第3、第4のチョークコイル6a、10aと、第3、第4のマイクロ波主線路7a、8aと、第2のバイアス抵抗9aと、第2のバイアス電圧供給部11aと、出力部2との接続関係は、入力部1と、第1のダイオード3と、第1、第2の容量4、5と、第1、第2のチョークコイル6、10と、第1、第2のマイクロ波主線路7、8と、第1のバイアス抵抗9と、第1のバイアス電圧供給部11と、出力部2との接続関係と、同様である。
【0068】
図14Bは、2つのダイオードが1本のマイクロ波主線路に対して並列に接続されて、かつ、2つのダイオードが互いに並列に接続されている場合の歪発生ダイオード回路部33aの構成を示す回路図である。図14Bの歪発生ダイオード回路部33aは、図4の歪補償回路に以下の変更を加えたものに等しい。すなわち、第2のダイオード3aと、第3の容量4aと、第3、第4のマイクロ波主線路7a、8aと、第2のバイアス抵抗9aと、第3のチョークコイル10aと、第2のバイアス電圧供給部11aとを追加する。ここで、第2のダイオード3aと、第3の容量4aと、第3、第4のマイクロ波主線路7a、8aと、第2のバイアス抵抗9aと、第3のチョークコイル10aと、第2のバイアス電圧供給部11aとの接続関係は、第1のダイオード3と、第1の容量4と、第1、第2のマイクロ波主線路7、8と、第1のバイアス抵抗9と、第2のチョークコイル10と、第1のバイアス電圧供給部11との接続関係と、同様である。そして、第2のマイクロ波主線路8および第2の容量5の間に第3の容量4aから第4のマイクロ波主線路8aまでの回路部が配置されている。
【0069】
図14Cは、2つのダイオードが1本のマイクロ波主線路に対して直列に接続されて、かつ、2つのダイオードが互いに直列に接続されている場合の歪発生ダイオード回路部33aの構成を示す回路図である。図14Cの歪発生ダイオード回路部33aは、図1の歪補償回路に以下の変更を加えたものに等しい。すなわち、第2のダイオード3aと、第3の容量4aと、第3、第4のチョークコイル6a、10aと、第3、第4のマイクロ波主線路7a、8aと、第2のバイアス抵抗9aと、第2のバイアス電圧供給部11aとを追加する。ここで、第2のダイオード3aと、第3の容量4aと、第3、第4のチョークコイル6a、10aと、第3、第4のマイクロ波主線路7a、8aと、第2のバイアス抵抗9aと、第2のバイアス電圧供給部11aとの接続関係は、第1のダイオード3と、第1の容量4と、第1、第2のチョークコイル6、10と、第1、第2のマイクロ波主線路7、8と、第1のバイアス抵抗9と、第1のバイアス電圧供給部11との接続関係と、同様である。そして、第2のマイクロ波主線路8および第2の容量5の間に第3の容量4aから第4のマイクロ波主線路8aまでの回路部が配置されている。
【0070】
図14Dは、2つのダイオードが1本のマイクロ波主線路に対して並列に接続されて、かつ、2つのダイオードが互いに直列に接続されている場合の歪発生ダイオード回路部33aの構成を示す回路図である。図14Dの歪発生ダイオード回路部33aは、入力部1と、出力部2と、第1、第2のダイオード3、3aと、第1、第2の容量4、4aと、第1〜第3のチョークコイル6、10、10aと、第1、第2のマイクロ波主線路7、8と、第1、第2のバイアス抵抗9、9aと、第1、第2のバイアス電圧供給部11、11aとを具備している。入力部1は、第1のマイクロ波主線路7に接続されている。第1のマイクロ波主線路7は、第1の容量4の一方の端部と、第2のマイクロ波主線路8とに接続されている。第2のマイクロ波主線路8は、出力部2に接続されている。第1の容量4の他方の端部は、第1のバイアス抵抗9の一方の端部と、第1のダイオード3のアノードとに接続されている。第1のバイアス抵抗9の他方の端部は、第2のチョークコイル10の一方の端部に接続されている。第2のチョークコイル10の他方の端部は、第1のバイアス電圧供給部11に接続されている。第1のダイオード3のカソードは、第1のチョークコイル6の一方の端部と、第2の容量4aの一方の端部に接続されている。第1のチョークコイル6の他方の端部は、グランドに接地されている。第2の容量4aの他方の端部は、第2のバイアス抵抗9aの一方の端部と、第2のダイオード3aのカソードとに接続されている。第2のバイアス抵抗9aの他方の端部は、第3のチョークコイル10aの一方の端部に接続されている。第3のチョークコイル10aの他方の端部は、第2のバイアス電圧供給部11aに接続されている。第2のダイオード3aのアノードは、グランドに接地されている。
【0071】
このように、図14A〜図14Dの歪発生ダイオード回路部33aは、2つのバイアス電圧をそれぞれ独立に印加される2つのダイオード3、3aによって、本発明の第1の実施形態の場合よりも複雑な歪を発生させることが可能である。
【0072】
また、図14A〜図14Dの例以外にも、ダイオードの数や、ダイオードの主線路に対する接続関係や、ダイオード同士の接続関係や、バイアス電圧の数などは自由に組み合わせることが可能である。この点において、本発明による制御回路部、その中でも特に直流増幅回路は、その数を増やすことで、複数のバイアス電圧を独立に調整して出力することが可能である。
【0073】
以上のように、本発明の第5の実施形態に係る歪補償回路30d、30eでは、入力信号の一部を取り込むアナログ回路としての制御回路部32aなどを具備しているので、ダイオードに印加するバイアス電圧を入力信号に基づいて自動的に制御することで、超高周波入力信号平均電力における広い範囲にわたって低歪化が可能となる。
【0074】
ここまでに説明した本発明の実施形態は、技術的に矛盾しない範囲で、自由に組み合わせることが可能であることは言うまでもない。例えば、第4の実施形態における容量36の代わりに、第3の実施形態における方向性結合回路37を用いても、なんら問題は無い。
【符号の説明】
【0075】
1 入力部
2 出力部
3、3a ダイオード
4、4a 容量
5、5a 容量
6、6a チョークコイル
7、7a マイクロ波主線路
8、8a マイクロ波主線路
9、9a バイアス抵抗
10、10a チョークコイル
11、11a バイアス電圧供給部
12〜14 ダイオード歪補償回路を含む増幅器の特性を示すグラフ曲線
22〜25 平均出力電力およびACPRの関係を示すグラフ曲線
30、30a、30b、30c、30d 歪補償回路
31 入力部
32a 制御回路部
32b 制御回路部
33、33a 歪発生ダイオード回路部
34 増幅器
35 出力部
36 キャパシタ
37 方向性結合器
41 対数検波回路
42 低域通過フィルタ
43 直流増幅回路
A1〜A4 オペアンプ
C1〜C3 容量
D1、D2 ダイオード
VR1〜VR3 可変抵抗
R1〜R5 抵抗

【特許請求の範囲】
【請求項1】
増幅器に接続されて使用される歪補償回路であって、
入力信号の一部を検出し、前記入力信号の平均電力に応じてバイアス電圧をアナログ回路で生成する制御回路部と、
前記増幅器の歪特性を補償するための歪を前記バイアス電圧に応じて生成し、前記入力信号に前記歪を加える歪発生ダイオード回路部と
を具備する
歪補償回路。
【請求項2】
請求項1に記載の歪補償回路において、
前記制御回路部は、
前記入力信号の一部を取り出す容量
を具備する
歪補償回路。
【請求項3】
請求項1または2に記載の歪補償回路において、
前記制御回路部は、
前記入力信号の一部を取り出す方向性結合回路
を具備する
歪補償回路。
【請求項4】
請求項2または3に記載の歪補償回路において、
前記制御回路部は、
前記入力信号の一部を対数検波して前記入力信号の平均電力を得る対数検波回路と、
前記対数検波回路の出力信号の直流成分を得るLPF(Low Pass Filter:低域通過フィルタ)と、
前記LPFの出力信号を増幅して前記バイアス電圧を生成する直流増幅回路と
をさらに具備する
歪補償回路。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の歪補償回路において、
前記歪発生ダイオード回路部は、
前記バイアス電圧に応じて前記歪を生成する複数のダイオード
をさらに具備し、
前記複数のダイオードは、線路に対して直列または並列に接続され、かつ、互いに直列または並列に接続されている
歪補償回路。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれかに記載の歪補償回路において、
前記入力信号の平均電力に応じて別のバイアス電圧を生成する別の制御部
をさらに具備し、
前記歪発生ダイオード回路部は、
前記バイアス電圧および前記別のバイアス電圧に応じて前記歪を生成する複数のダイオード
をさらに具備し、
前記複数のダイオードは、線路に対して直列または並列に接続され、かつ、互いに直列または並列に接続されている
歪補償回路。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の歪補償回路を有し、
前記増幅器が前記歪補償回路の後段に接続された
歪補償増幅回路。
【請求項8】
入力信号を検出するステップと、
前記検出するステップで得られる前記入力信号の平均電力に応じたバイアス電圧をアナログ回路で生成するステップと、
増幅器の歪特性を補償するための歪を前記バイアス電圧に応じて生成するステップと、
前記歪をバイアス電圧に応じて生成するステップで得られる歪を前記入力信号に加えるステップと
を具備する
歪補償方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13A】
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【図13B】
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【図14A】
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【図14B】
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【図14C】
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【図14D】
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【公開番号】特開2012−15860(P2012−15860A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−151349(P2010−151349)
【出願日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 刊行物名 :電気学会研究会資料 発行日 :平成22年3月26日 発行所 :社団法人 電気学会
【出願人】(504133110)国立大学法人電気通信大学 (383)
【Fターム(参考)】