説明

歯形部品の製造方法、歯形部品の製造装置、歯形部品

【課題】成形型の寿命の向上を図ることができる歯形部品の製造方法、歯形部品の製造装置、歯形部品を提供すること。
【解決手段】本発明の一態様は、円柱状の素材10をもとに成形型を用いて製造するデフピニオンギヤ12の製造方法において、素材10の外周面22の一部を拘束しつつ素材10の中央部分27に対し軸方向に向かって荷重を加えて素材の構成材料を外側に向かって流動させて素材10の外側部分43に傘歯車部11を形成する時に、素材10の外周面22の拘束域を減らしつつ、素材10の中間部分45の構成材料を材料逃げ部32に向かって軸方向に流動させて突起部46を形成し、荷重が最も大きくなった時に、傘歯車部11と歯形成形型16との間および突起部46と歯形成形型16との間に空間33,47を設けておくこと、を特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鍛造により傘歯車部などの歯形部を備える歯形部品を製造するための歯形部品の製造方法、歯形部品の製造装置、歯形部品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、素材に対して鍛造を行うことにより、歯形部を備える歯形部品を製造することが行われている。このような鍛造においては、円柱状の素材の軸方向から素材を圧縮して素材の構成材料を素材の径方向の外側に向かって流動させて、成形型の内部に素材の構成材料を充満させることにより、外周面に歯形部を備える歯形部品を製造する。
【0003】
このように素材の軸方向から素材を圧縮すると、まず成形型において素材の径方向の内側部分に素材の構成材料が充満するが、その後、素材の構成材料は素材の径方向の外側に向かって一方向に流動する。そして、更に素材の軸方向から素材を圧縮しようとすると、成形型において既に素材の構成材料が充満した部分の面圧が高くなるので、素材に加える荷重(成形荷重)をさらに大きくする必要がある。そのため、成形型への負荷が大きくなるので、成形型の寿命が短くなってしまう。
【0004】
ここで、特許文献1には鍛造の技術が開示されている。この特許文献1の技術によれば、リング状素材の外周面を拘束しながらリング状素材を軸方向から加圧機構により加圧し、リング状素材の構成材料を加圧方向に向かって流動させながら成形型の歯形部内に充満させている。そして、さらにリング状素材を軸方向から加圧機構により加圧することにより、成形型の歯形部内に連通する開放空所にリング状素材の構成材料の一部を余肉として押し出している。これにより、一定の圧力下でリング状素材の構成材料を流動させることができ、素材の体積のバラつきによる製品寸法および精度のバラつきを減少できるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭57−177845号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の技術によれば、リング状素材の構成材料を成形型の歯形部内に充満させた後に、さらにリング状素材を軸方向から加圧機構により加圧しており、成形荷重が大きくなってしまう。そのため、成形型への負荷が大きくなり、成形型の寿命が短くなってしまう。
【0007】
そこで、本発明は上記した問題点を解決するためになされたものであり、成形型の寿命の向上を図ることができる歯形部品の製造方法、歯形部品の製造装置、歯形部品を提供すること、を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するためになされた本発明の一態様は、円柱状の素材をもとに成形型を用いて製造する歯形部品の製造方法において、前記素材の外周面の一部を拘束しつつ前記素材の径方向の中央部分に対し前記素材の軸方向に向かって荷重を加えて前記素材の構成材料を前記径方向の外側に向かって流動させて前記素材の径方向の外側部分に歯形部を形成する時に、前記素材の外周面の拘束域を減らしつつ、前記中央部分と前記外側部分との間の中間部分の前記素材の構成材料を前記成形型の窪み部に向かって前記軸方向に流動させて突起部を形成し、前記荷重が最大となった時に、前記歯形部と前記成形型との間および前記突起部と前記成形型との間に空間を設けておくこと、を特徴とする。
【0009】
この態様によれば、素材の軸方向に向かって加える荷重が最も大きくなり歯形部を形成し終えた時に、成形型と素材との間に空間を設けて成形型に素材の構成材料を充満させていない。これにより、この空間内に素材の構成材料が流れる余地を持たせている。そのため、閉塞鍛造のように、成形荷重が極端に大きくなることを防止できる。したがって、成形型への負荷を抑制できるので、当該成形型の寿命を向上させることができる。
【0010】
また、素材の構成材料を、径方向の外側に向かう方向と成形型の窪み部に向かう方向の2つの方向に流動させるので、成形荷重の低減効果を得ることができる。そのため、成形型への負荷を抑制できるので、当該成形型の寿命を向上させることができる。
【0011】
上記の態様においては、前記窪み部の外形は、前記軸方向に向かって小さくなっていること、が好ましい。
【0012】
この態様によれば、歯形成形型の窪み部に素材の構成材料が流れ難くなるので、歯形部を形成し終えた時に成形型の窪み部に素材が充満せず、素材と成形型との間に空間が設けられ易くなる。そのため、素材の構成材料の流動性に関わらず、成形荷重が極端に大きくなることを防止できる。したがって、素材の構成材料の流動性に関わらず成形型への負荷を抑制できるので、当該成形型の寿命を向上させることができる。
【0013】
上記の態様においては、前記成形型として前記素材の前記外側部分に前記歯形部を形成する歯形成形型と前記素材の外周面を拘束する外側拘束型と前記外側拘束型よりも内側に設けられた内側成形型とを使用し、前記歯形成形型と前記外側拘束型と前記内側成形型とで前記素材を囲んだ状態で、前記歯形成形型と前記外側拘束型とを同期させながら前記内側成形型に対して相対的に前記軸方向に移動させること、が好ましい。
【0014】
この態様によれば、歯形成形型が配置される方向から歯の形状を張らせながら歯を素材の径方向の内側から外側に向かって形成するようにして、素材の径方向の外側に歯形部を形成することになる。そのため、素材と歯形成形型との間に空間を残しつつ素材の成形加工を行うことができる。
【0015】
上記の態様においては、前記歯形部品は、差動装置に使用されるデフピニオンギヤであること、が好ましい。
【0016】
この態様によれば、デフピニオンギヤの製造において成形型の寿命が向上するので、製造コストを低減しつつデフピニオンギヤを量産することができる。
【0017】
上記課題を解決するためになされた本発明の他の態様は、円柱状の素材をもとに成形型を用いて製造する歯形部品の製造装置において、前記素材の外周面の一部を拘束しつつ前記素材の径方向の中央部分に対し前記素材の軸方向に向かって荷重を加えて前記素材の構成材料を前記径方向の外側に向かって流動させて前記素材の径方向の外側部分に歯形部を形成する時に、前記素材の外周面の拘束域を減らしつつ、前記中央部分と前記外側部分との間の中間部分の前記素材の構成材料を前記成形型の窪み部に向かって前記軸方向に流動させて突起部を形成し、前記荷重が最大となった時に、前記歯形部と前記成形型との間および前記突起部と前記成形型との間に空間を設けておくこと、を特徴とする。
【0018】
この態様によれば、素材の軸方向に向かって加える荷重が最も大きくなり歯形部を形成し終えた時に、素材と成形型との間に空間を設けて成形型に素材の構成材料を充満させていない。これにより、この空間内に素材の構成材料が流れる余地を持たせている。そのため、閉塞鍛造のように、成形荷重が極端に大きくなることを防止できる。したがって、成形型への負荷を抑制できるので、当該成形型の寿命を向上させることができる。
【0019】
上記課題を解決するためになされた本発明の他の態様は、円柱状の素材をもとに成形型を用いて製造された歯形部品において、前記素材の外周面の一部を拘束しつつ前記素材の径方向の中央部分に対し前記素材の軸方向に向かって荷重を加えて前記素材の構成材料を前記径方向の外側に向かって流動させて前記素材の径方向の外側部分に歯形部を形成する時に、前記素材の外周面の拘束域を減らしつつ、前記中央部分と前記外側部分との間の中間部分の前記素材の構成材料を前記成形型の窪み部に向かって前記軸方向に流動させて突起部を形成し、前記荷重が最大となった時に、前記歯形部と前記成形型との間および前記素材の前記突起部と前記成形型との間に空間を設けておくことにより製造されたものであって、前記突起部は、前記歯形部に対して前記径方向の内側にて前記軸方向に突出するように形成されていること、を特徴とする。
【0020】
この態様によれば、素材の軸方向に向かって加える荷重が最も大きくなり歯形部を形成し終えた時に、素材と成形型との間に空間を設けて成形型に素材の構成材料を充満させていない。これにより、この空間内に素材の構成材料が流れる余地を持たせている。そのため、閉塞鍛造のように、成形荷重が極端に大きくなることを防止できる。したがって、成形型への負荷を抑制できるので、当該成形型の寿命を向上させることができる。
【0021】
また、構成材料を素材の軸方向に流動させることにより形成された突起部は歯形部の径方向の内側(歯形部の内径側端部の内側)に設けるので、歯形部にて他の歯形部品と噛み合わせる際に、歯形部品の機能性に影響を与えない。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係る歯形部品の製造方法、歯形部品の製造装置、歯形部品によれば、成形型の寿命の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】素材の成形加工前における歯形部品の製造装置の要部構成図である。
【図2】図1における材料逃げ部の周辺の拡大図である。
【図3】素材の成形加工中における歯形部品の製造装置の要部構成図である。
【図4】図3における材料逃げ部の周辺の拡大図である。
【図5】成形加工中における素材の断面図である。
【図6】成形加工中における素材の外観斜視図である。
【図7】素材の成形加工の完了時における歯形部品の製造装置の要部構成図である。
【図8】図7における材料逃げ部の周辺の拡大図である。
【図9】デフピニオンギヤの断面図である。
【図10】デフピニオンギヤの外観斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明を具体化した実施形態について、添付図面を参照しつつ詳細に説明する。本実施例では歯形部品として、例えば、車両における差動装置に使用されるデフピニオンギヤを例に挙げて説明する。なお、差動装置のデフピニオンギヤは、デフケース内において、デフサイドギヤと噛み合う状態でピニオンシャフトにより回転可能に支持されているギヤである。
【0025】
〔製造装置の説明〕
まず、歯形部品の製造装置1について説明する。製造装置1は、鍛造により円柱状の素材10(図1参照)から、傘歯車部11を備えるデフピニオンギヤ12(図10参照)を製造するものである。
【0026】
図1に示すように、製造装置1は、外側拘束型14と歯形成形型16と内側成形型18の各成形型を有する。また、製造装置1は、これらの各成形型の動作を行うための油圧シリンダ等のアクチュエータ(不図示)と、当該アクチュエータの動作を制御する制御装置(不図示)なども有する。なお、図1は、素材10の成形加工前における製造装置1の要部構成図である。
【0027】
外側拘束型14は、円筒状に形成されており、その内周面20の内側に素材10が配置され、さらに内側成形型18が設けられている。そして、外側拘束型14は、素材10の外周面22の外側に設けられ、素材10の成形加工時において素材10の外周面22の一部を拘束する。
【0028】
歯形成形型16は、圧縮部24と歯形成形部26とを備え、円柱状の圧縮部24の外側に円筒状の歯形成形部26が設けられている。圧縮部24は、素材10の径方向の中央に位置する中央部分27に対応する位置に設けられている。そして、歯形成形部26は、下側(外側拘束型14や内側成形型18が設けられる側)に、傘歯の形状を形成した歯形部28を備えている。これにより、後述するように、歯形成形部26は素材10の外側部分43に傘歯車部11を形成する。
【0029】
また、図2に示すように、歯形成形部26は、歯形部28の内側、すなわち、圧縮部24と歯形部28との間(歯形部28と歯形成形部26の内周面30との間)に、材料逃げ部32を備えている。材料逃げ部32は、上方向(圧縮部24により素材10に荷重を加える方向とは反対方向)に向かって窪んでおり、外形が上方向に向かって小さくなるように先細りした形状に形成されている。また、材料逃げ部32は、歯形成形部26の内周面30に沿って歯形成形部26の周方向に環状に形成されている。なお、図2は、図1における材料逃げ部32の周辺の拡大図である。また、材料逃げ部32は、本発明における「窪み部」の一例である。
【0030】
内側成形型18は、円柱状に形成され、上側(歯形成形型16が設けられる側)の端面34に凸部36を備えており、外側拘束型14の内周面20の内側に設けられている。
【0031】
〔製造方法の説明〕
次に、以上のような構成を有する製造装置1を使用したデフピニオンギヤ12の製造方法について説明する。
【0032】
まず、図1に示すように、内側成形型18の凸部36が外側拘束型14の上側(歯形成形型16が設けられる側)の端面38よりも下側に位置する状態で、外側拘束型14の内周面20の内側において、内側成形型18の凸部36の上に円柱状の素材10を配置する。そして、外側拘束型14の端面38に歯形成形部26を配置し、素材10の上側(歯形成形型16が設けられる側)の端面40に圧縮部24を配置するようにして、歯形成形型16を配置する。これにより、外側拘束型14と歯形成形型16と内側成形型18の各成形型で囲まれた空間内に、素材10を配置する。このとき、素材10は、内側成形型18の凸部36と圧縮部24の端面42との間で挟まれ、外周面22の一部が外側拘束型14により拘束される。
【0033】
次に、図3に示すように、外側拘束型14と歯形成形型16とを一体的に(同期させながら)、内側成形型18に対して相対的に下方向(内側成形型18が設けられている方向)に移動させる。この時、歯形成形型16の圧縮部24により素材10の中央部分27に対し下方向に向かって荷重を加えて当該中央部分27を圧縮して、素材10の構成材料を素材10の径方向の外側に(図3の左右方向に)向かって流動させる。そして、外側拘束型14による素材10の外周面22の拘束域を減らしつつ、素材10の外側部分43に歯形を形成して傘歯車部11を形成していく。
【0034】
この時、図4に示すように、素材10の中央部分27と外側部分43との間に位置する中間部分45における構成材料を材料逃げ部32の内部に流動させることにより、素材10の構成材料を上方向に流動させる。さらに詳細には、歯形成形型16の圧縮部24により素材10の中央部分27に対し荷重を加えた方向と反対方向に、素材10の構成材料を流動させる。なお、材料逃げ部32の内部には空間が残っており、材料逃げ部32の内部は素材の構成材料が充満していない。このとき、素材10は図5と図6に示すような形状になる。
【0035】
なお、図3は素材10の成形加工中における製造装置1の要部構成図であり、図4は図3における材料逃げ部32の周辺の拡大図である。また、図5は成形加工中における素材10の断面図であり、図6は成形加工中における素材10の外観斜視図である。
【0036】
このように、素材10の成形加工中において、素材10の構成材料を材料逃げ部32に流れ込ませて逃がしている。そのため、素材10の構成材料は径方向だけではなく、軸方向(上方向)に向かって流動する。そのため、歯形成形型16から素材10に加える成形荷重を抑制しながら、素材10の成形加工を行うことができる。したがって、外側拘束型14や歯形成形型16や内側成形型18の各成形型への負荷を抑制できる。
【0037】
また、材料逃げ部32の内部には空間が残っており、材料逃げ部32の内部は素材の構成材料が充満していないので、その後の素材10の成形加工中においても、素材10の構成材料は径方向だけではなく、軸方向に向かって流動する。そのため、その後の素材10の成形加工中においても、歯形成形型16から素材10に加える成形荷重を抑制できるので、外側拘束型14や歯形成形型16や内側成形型18の各成形型への負荷を抑制できる。
【0038】
そして、図7に示すように、さらに内側成形型18に対して、相対的に外側拘束型14と歯形成形型16とを一体的に下方向に移動させると、素材10がさらに歯形成形型16により圧縮される。これにより、素材10の構成材料が素材10の径方向の外側に向かって(図7の左右方向に向かって)にさらに流動する。そして、歯形成形型16の歯形部28に素材10の構成材料が流れ込んで素材10の外側部分43に傘歯が形成され、素材10の成形加工が完了する。これにより、図9と図10に示すように、回転対称形状に形成され、傘歯車部11を備えるデフピニオンギヤ12を製造することができる。
【0039】
なお、素材10の成形加工が完了する時には、外側拘束型14と歯形成形型16とが最も下方向の位置に移動し、成形荷重が最も大きくなる。また、素材10の成形加工が完了した時には、デフピニオンギヤ12(素材10)には、内側端面44から上方向(歯形成形型16の圧縮部24により素材10に荷重を加えた方向とは反対方向)に突出した突起部46が形成されている。
【0040】
図8に示すように、素材10の成形加工が完了した時には、歯形成形型16の材料逃げ部32に素材10の構成材料が充満しておらず、突起部46(素材10の中間部分45)と歯形成形型16との間に空間33を設けておく。また、傘歯車部11と歯形成形型16との間にも空間47を設けておく。これにより、この空間33,47内に素材10の構成材料が流れる余地を持たせている。そのため、素材10の成形加工の完了時に、成形荷重が極端に大きくなることを防止できる。
【0041】
また、突起部46は、図9や図10に示すように、傘歯車部11に対して径方向の内側にて形成される。そのため、この突起部46は、噛み合わせる相手部品(デフサンギヤ)などと干渉しない部分に形成されることになり、差動装置に使用されるデフピニオンギヤ12の機能性に影響を与えない。
【0042】
なお、図7は素材10の成形加工の完了時における製造装置1の要部構成図であり、図8は図7における材料逃げ部32の周辺の拡大図である。また、図9はデフピニオンギヤ12の断面図であり、図10はデフピニオンギヤ12の外観斜視図である。
【0043】
なお、以上のように製造されたデフピニオンギヤ12に対し、その中央部分48(図9と図10参照)に軸方向(図9の上下方向)に穴加工などの追加工を行って、デピニオンシャフト(不図示)を挿入するための軸穴を形成する。
【0044】
〔本実施例の効果の説明〕
本実施例によれば、素材10の軸方向に向かって加える成形荷重が最も大きくなり傘歯車部11を形成し終えた時に成形型に素材10の構成材料が充満しておらず、傘歯車部11と歯形成形型16との間および突起部46(素材10の中間部分45)と歯形成形型16との間に空間33,47を設けておく。これにより、この空間33,47内に素材10の構成材料が流れる余地を持たせている。そのため、閉塞鍛造のように、成形荷重が極端に大きくなることを防止できる。したがって、外側拘束型14や歯形成形型16や内側成形型18の各成形型への負荷を抑制できるので、当該各成形型の寿命を向上させることができる。なお、実験評価の結果、例えば、成形荷重が約10%低減し、成形型の寿命が1.2倍になる効果を得ることができた。
【0045】
また、材料逃げ部32の外形は、軸方向に向かって小さくなっているので、材料逃げ部32に素材10の構成材料が流れ難くなる。そのため、傘歯車部11を形成し終えた時に材料逃げ部32に素材10が充満せず、素材10と歯形成形型16との間に空間33が設けられ易くなる。したがって、素材10の構成材料の流動性に関わらず、成形荷重が極端に大きくなることを防止できる。ゆえに、素材10の構成材料の流動性に関わらず外側拘束型14や歯形成形型16や内側成形型18の各成形型への負荷を抑制できるので、当該各成形型の寿命を向上させることができる。
【0046】
また、外側拘束型14と歯形成形型16とを同期させながら下方向に移動させるので、歯形成形型16が配置される方向から歯の形状を張らせながら歯を素材10の径方向の内側から外側に向かって形成するようにして、素材10の外側部分43に傘歯車部11を形成する。そのため、傘歯車部11と歯形成形型16との間および突起部46と歯形成形型16との間において、確実に空間33,47を残しながら素材10の成形加工を行うことができる。
【0047】
また、デフピニオンギヤ12の製造において各成形型の寿命が向上するので、製造コストを低減しつつデフピニオンギヤ12を量産することができる。
【0048】
なお、上記した実施の形態は単なる例示にすぎず、本発明を何ら限定するものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変形が可能であることはもちろんである。
【符号の説明】
【0049】
1 製造装置
10 素材
11 傘歯車部
12 デフピニオンギヤ
14 外側拘束型
16 歯形成形型
18 内側成形型
22 (素材の)外周面
24 圧縮部
26 歯形成形部
27 (素材の)中央部分
28 (歯形成形部の)歯形部
32 材料逃げ部
33 空間
43 (素材の)外側部分
45 (素材の)中間部分
46 (デフピニオンギヤの)突起部
47 空間
48 (デフピニオンギヤの)中央部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円柱状の素材をもとに成形型を用いて製造する歯形部品の製造方法において、
前記素材の外周面の一部を拘束しつつ前記素材の径方向の中央部分に対し前記素材の軸方向に向かって荷重を加えて前記素材の構成材料を前記径方向の外側に向かって流動させて前記素材の径方向の外側部分に歯形部を形成する時に、前記素材の外周面の拘束域を減らしつつ、前記中央部分と前記外側部分との間の中間部分の前記素材の構成材料を前記成形型の窪み部に向かって前記軸方向に流動させて突起部を形成し、
前記荷重が最大となった時に、前記歯形部と前記成形型との間および前記突起部と前記成形型との間に空間を設けておくこと、
を特徴とする歯形部品の製造方法。
【請求項2】
請求項1の歯形部品の製造方法において、
前記窪み部の外形は、前記軸方向に向かって小さくなっていること、
を特徴とする歯形部品の製造方法。
【請求項3】
請求項1または2の歯形部品の製造方法において、
前記成形型として前記素材の前記外側部分に前記歯形部を形成する歯形成形型と前記素材の外周面を拘束する外側拘束型と前記外側拘束型よりも内側に設けられた内側成形型とを使用し、
前記歯形成形型と前記外側拘束型と前記内側成形型とで前記素材を囲んだ状態で、前記歯形成形型と前記外側拘束型とを同期させながら前記内側成形型に対して相対的に前記軸方向に移動させること、
を特徴とする歯形部品の製造方法。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1つの歯形部品の製造方法において、
前記歯形部品は、差動装置に使用されるデフピニオンギヤであること、
を特徴とする歯形部品の製造方法。
【請求項5】
円柱状の素材をもとに成形型を用いて製造する歯形部品の製造装置において、
前記素材の外周面の一部を拘束しつつ前記素材の径方向の中央部分に対し前記素材の軸方向に向かって荷重を加えて前記素材の構成材料を前記径方向の外側に向かって流動させて前記素材の径方向の外側部分に歯形部を形成する時に、前記素材の外周面の拘束域を減らしつつ、前記中央部分と前記外側部分との間の中間部分の前記素材の構成材料を前記成形型の窪み部に向かって前記軸方向に流動させて突起部を形成し、
前記荷重が最大となった時に、前記歯形部と前記成形型との間および前記突起部と前記成形型との間に空間を設けておくこと、
を特徴とする歯形部品の製造装置。
【請求項6】
円柱状の素材をもとに成形型を用いて製造された歯形部品において、
前記素材の外周面の一部を拘束しつつ前記素材の径方向の中央部分に対し前記素材の軸方向に向かって荷重を加えて前記素材の構成材料を前記径方向の外側に向かって流動させて前記素材の径方向の外側部分に歯形部を形成する時に、前記素材の外周面の拘束域を減らしつつ、前記中央部分と前記外側部分との間の中間部分の前記素材の構成材料を前記成形型の窪み部に向かって前記軸方向に流動させて突起部を形成し、前記荷重が最大となった時に、前記歯形部と前記成形型との間および前記素材の前記突起部と前記成形型の窪み部との間に空間を設けておくことにより製造されたものであって、
前記突起部は、前記歯形部に対して前記径方向の内側にて前記軸方向に突出するように形成されていること、
を特徴とする歯形部品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−171013(P2012−171013A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−38974(P2011−38974)
【出願日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【出願人】(000100768)アイシン・エィ・ダブリュ株式会社 (3,717)
【Fターム(参考)】