説明

歯科用レーザー治療装置

【課題】 従来のように、レーザー光の出力が一定であると、低出力で歯肉をタンパク凝固させ痛みを麻痺させた後に、出力設定を変更することなく、連続的に高出力で患部を蒸散させるといった治療が行えないといった問題があった。
【解決手段】 足操作によって出力が変化するフットコントローラ1と、該フットコントローラよりの出力によって直線的に出力を変化させる出力調整手段23を含む制御回路2と、前記出力調整手段よりの出力に応じてレーザー光が変化して放射されるレーザー光照射手段4とから構成した歯科用レーザー治療装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭酸ガスレーザー光を患部に照射して、該患部を切開、蒸散等することにより治療を行うための歯科用レーザー治療装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の患部の切開、蒸散等することにより治療を行うための歯科用レーザー治療装置としては、例えば、特開平9−10229号公報に開示されている発明がある。この発明は、フットコントローラの踏み込み量を変えることで、レーザー光の照射、エア、水あるいはスプレー等の噴射を制御するものである。そして、この発明におけるレーザー光の制御は、予め設定された照射条件に基づいた出力によって連続照射するか、断続照射するかの制御しか行われていなかった。
【特許文献1】特開平9−10229号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、前記従来例のように、レーザー光の出力が一定であると、低出力で歯肉をタンパク凝固させ痛みを麻痺させた後に、高出力で患部を蒸散させるといった治療が行うためには、一度出力を停止した後に出力設定を変更し、再度照射する必要があった。また、レーザー光の照射中に患者が痛みを訴えた際には照射部位から距離を離してビーム径を広げて単位面積当たりのエネルギー密度を下げて対応している場合があったが、口腔内では可動範囲に制限があるために距離調整が容易ではなく、ビーム径を広げると患部以外の正常な歯肉にもレーザー光が照射されるといった問題もあった。さらに、治療開始時にレーザー光を患部に対して正確に照射することは熟練を要し、最初から高出力のレーザー光を照射した場合において治療個所から外れると正常な歯肉が蒸散されてしまうといった問題があった。
【0004】
本発明は前記した問題点を解決せんとするもので、その目的とするところは、フットコントローラの踏み込み量によってレーザー光の出力強度を変化させることが可能であることから、前記した問題を解決することが可能であり、また、レーザー光の出力を直線的、指数関数的あるいは対数関数的に変化可能となし、施術者が操作し易いものを選択することで治療の効率化と正確性を図ることができる歯科用レーザー治療装置を提供せんとするにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の歯科用レーザー治療装置は前記した目的を達成せんとするもので、請求項1の手段は、足操作によって出力が変化するフットコントローラと、該フットコントローラよりの出力によって直線的に出力を変化させる出力調整手段を含む制御回路と、前記出力調整手段よりの出力に応じてレーザー光が変化して放射されるレーザー光照射手段とから構成したものである。
【0006】
請求項2の手段は、足操作によって出力が変化するフットコントローラと、該フットコントローラよりの出力によって指数関数的に出力を変化させる出力調整手段を含む制御回路と、前記出力調整手段よりの出力に応じてレーザー光が変化して放射されるレーザー光照射手段とから構成したものである。
【0007】
請求項3の手段は、足操作によって出力が変化するフットコントローラと、該フットコントローラよりの出力によって対数関数的に出力を変化させる出力調整手段を含む制御回路と、前記出力調整手段よりの出力に応じてレーザー光が変化して放射されるレーザー光照射手段とから構成したものである。
【0008】
請求項4の手段は、足操作によって出力が変化するフットコントローラと、該フットコントローラよりの出力によって直線的、指数関数的あるいは対数関数的に出力を変化させる出力調整手段を含む制御回路と、前記出力調整手段よりの出力を切り換えるための切換手段と、該切換手段によって選択された前記出力調整手段よりの出力に応じてレーザー光が変化して放射されるレーザー光照射手段とから構成したものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明は前記したように請求項1にあっては、フットコントローラの踏み込み量に応じてレーザー光照射手段よりのレーザー光の出力が比例的に上昇するので、低出力で歯肉をタンパク凝固させ痛みを麻痺させた後に、高出力で患部を蒸散させるといった治療がフットコントローラの踏み加減に対してダイレクトな出力応答で行えるという効果が得られるものである。
【0010】
また、請求項2にあっては、フットコントローラの踏み込み量に応じてレーザー光照射手段よりのレーザー光の出力が低出力領域でレーザー光出力が緩やかに上昇し、高出力領域では急激に上昇するので、低出力で歯肉をタンパク凝固させ痛みを麻痺させる治療を微調整領域で行えるという効果が得られるものである。
【0011】
さらに、請求項3にあっては、フットコントローラの踏み込み量に応じてレーザー光照射手段よりのレーザー光の出力が低出力領域でレーザー光出力が急激に上昇し、高出力領域で緩やかに上昇するので、高出力で患部を蒸散させるといった治療を微調整領域で行えるという効果が得られるものである。
【0012】
また、請求項4にあっては、フットコントローラの踏み込み量に応じてレーザー光照射手段よりのレーザー光の出力を、直線的、指数関数的あるいは対数関数的に変化させるものの何れかを選択することが可能であることから、施術者の好みに合わせて選択することで、治療の効率化と正確性を図ることができるという効果が得られるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明は、足操作によってフットコントローラからの出力を変化させ、該フットコントローラよりの出力に応じてレーザー光照射手段からの出力を連続的に変化させることである。
【実施例1】
【0014】
以下、本発明に係る歯科用レーザー治療装置の実施例を図面と共に説明する。 図1は全体の構成を示す概略図にして、1はペダル1aの踏み込み量によって出力が変化する図示しないポテンショメータ、歪みゲージ、圧力センサ、静電容量センサ等のアナログセンサが組み込まれたフットコントローラである。なお、ペダル1aを踏み込むことで出力が変化する構造のもの以外に、ペダル1aを回転させることで出力が変化する構造のものであってもよい。
【0015】
2は図2に示した制御回路にして、前記アナログセンサよりのアナログ信号をデジタル信号に変換するAD変換回路21と、図3(a)に示すフットコントローラ1の踏みしろに対するレーザー出力を直線的に変化させるデータや、図3(b)に示す指数関数的に変化させるデータあるいは図3(c)に示す対数関数的に変化させるデータを記憶したメモリ22と、該メモリ22に記憶されている前記データを前記AD変換回路21よりの出力に応じて変化させ出力する出力調整手段とより構成されている。
【0016】
3は前記制御回路2が組み込まれたケース(図示せず)の上面等の施術者が見やすい個所に形成された表示パネルにして、電源のオン・オフスイッチやレーザー光の出力状態を表示するメータ等が取付けられている。4は前記出力調整手段23からの出力に応じてレーザー光を放射し、歯肉をタンパク凝固させ痛みを麻痺させ、かつ、患部を蒸散させるためのレーザー光照射手段にして、炭酸ガスレーザー等のレーザー発光手段が組み込まれている。
【0017】
次に、前記した構成に基づいて動作を説明する。
先ず、前記メモリ22に図3(a)に示す直線的に変化するデータが記憶されている場合について説明するに、前記フットコントローラ1のペダル1aを踏み込むと、該フットコントローラ1より踏みしろに応じたアナログ信号が出力され、該アナログ信号はAD変換回路21によりデジタル信号に変換される。このデジタル信号に応じて作成される出力信号としては、パルス周波数を変化させ、あるいはパルスデューティーサイクルを変化させた信号である。
【0018】
そして、AD変換回路21よりの前記デジタル信号が出力調整手段23に入力されると、該出力調整手段23は前記メモリ22に記憶されている直線的データに従ってパルス信号を作成し出力する。この出力によってレーザー光照射手段4はレーザー光を放射するので、フットコントローラ1の踏み加減に対してよりダイレクトな出力応答でレーザー光を患部に照射することとなる。
【0019】
また、メモリ22に図3(b)に示す指数関数的に変化するデータが記憶されている場合には、フットコントローラ1の踏みしろに対し、レーザー光照射手段4は低出力領域ではレーザー光の出力が緩やかに上昇し、高出力領域では急激に上昇するレーザー光を放射するので、低出力領域で出力を微調整するのに適した治療(例えば、歯肉をタンパク凝固させ痛みを麻痺させる治療)に有効となる。
【0020】
さらに、メモリ22に図3(c)に示す対数関数的に変化するデータが記憶されている場合には、フットコントローラ1の踏みしろに対し、レーザー光照射手段4は低出力領域ではレーザー光の出力が急激に上昇し、高出力領域では緩やかに上昇するレーザー光を放射するので、高出力領域で出力を微調整するのに適した治療(例えば、高出力で患部を蒸散させるといった治療)に有効となる。
【0021】
なお、前記した実施例にあっては、メモリ22に記憶するデータとしては、直線的、指数関数的あるいは対数関数的に変化するものの1つを記憶させ、該記憶されている1つのデータを利用して治療を行う場合について説明したが、前記3つのデータを記憶させておき、例えば、前記表示パネル3に何れのデータを選択するかの押しボタン等の選択手段を設けて、該選択手段によって選択された1つのデータをメモリ22から読み出して、フットコントローラ1の踏みしろに応じてレーザー光照射手段4を制御するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明に係る歯科用レーザー治療装置の一実施例を示す全体の概略を示す説明図である。
【図2】制御回路を示すブロック図である。
【図3】踏みしろに対するレーザー出力の特性図にして、(a)は直線的な特性図、(b)は指数関数的な特性図、(c)は対数関数的な特性図である。
【符号の説明】
【0023】
1 フットコントローラ
2 制御回路
21 AD変換回路
22 メモリ
23 出力調整手段
3 表示パネル
4 レーザー光照射手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
足操作によって出力が変化するフットコントローラと、該フットコントローラよりの出力によって直線的に出力を変化させる出力調整手段を含む制御回路と、前記出力調整手段よりの出力に応じてレーザー光が変化して放射されるレーザー光照射手段とから構成したことを特徴とする歯科用レーザー治療装置。
【請求項2】
足操作によって出力が変化するフットコントローラと、該フットコントローラよりの出力によって指数関数的に出力を変化させる出力調整手段を含む制御回路と、前記出力調整手段よりの出力に応じてレーザー光が変化して放射されるレーザー光照射手段とから構成したことを特徴とする歯科用レーザー治療装置。
【請求項3】
足操作によって出力が変化するフットコントローラと、該フットコントローラよりの出力によって対数関数的に出力を変化させる出力調整手段を含む制御回路と、前記出力調整手段よりの出力に応じてレーザー光が変化して放射されるレーザー光照射手段とから構成したことを特徴とする歯科用レーザー治療装置。
【請求項4】
足操作によって出力が変化するフットコントローラと、該フットコントローラよりの出力によって直線的、指数関数的あるいは対数関数的に出力を変化させる出力調整手段を含む制御回路と、前記出力調整手段よりの出力を切り換えるための切換手段と、該切換手段によって選択された前記出力調整手段よりの出力に応じてレーザー光が変化して放射されるレーザー光照射手段とから構成したことを特徴とする歯科用レーザー治療装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−15040(P2006−15040A)
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−197648(P2004−197648)
【出願日】平成16年7月5日(2004.7.5)
【出願人】(000108672)タカラベルモント株式会社 (113)
【Fターム(参考)】