歯科用光コヒーレンストモグラフィー装置
【課題】歯科測定に適用することができる光コヒーレンストモグラフィー装置を提供する。
【解決手段】歯科用光コヒーレンストモグラフィー装置は、光源と、光分割部と、干渉部と、光検出部と、演算部と、計測光を被計測体へ導いて照射し、被計測体で反射した計測光を受光して干渉部へ導くプローブと、プローブに、少なくとも1つの方向を回転軸として回転可能に取り付けられた回転体であって、回転軸と一定または可変の角度を有する方向へ計測光を照射する照射口を有する回転体と、回転体を回転させる駆動部とを備える。
【解決手段】歯科用光コヒーレンストモグラフィー装置は、光源と、光分割部と、干渉部と、光検出部と、演算部と、計測光を被計測体へ導いて照射し、被計測体で反射した計測光を受光して干渉部へ導くプローブと、プローブに、少なくとも1つの方向を回転軸として回転可能に取り付けられた回転体であって、回転軸と一定または可変の角度を有する方向へ計測光を照射する照射口を有する回転体と、回転体を回転させる駆動部とを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非破壊断層計測技術の1つである光コヒーレンストモグラフィー(低コヒーレンスな光をプローブとして用いる断層計測)装置に関する。特に、歯科測定に適用することができる光コヒーレンストモグラフィー装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、歯科の診断において、顎口腔領域を撮影するために、X線撮影装置、口腔内カメラ、歯科用カメラ、X線CT、MRI等が使用されてきた。
【0003】
X線撮影装置で得られる像は、あくまで透過像であり、被写体のX線進行方向の情報は、重ねあわされて検出される。そのため、被写体の内部構造を3次元的に知ることができない。また、X線は人体に有害であるため、年間被爆線量が決められており、資格を持った術者しか装置を扱えない上に、鉛・鉛ガラスなどの遮蔽部材に囲まれた部屋でしか使用できない。
【0004】
口腔内カメラは、口腔内組織の表面のみを撮像するので、歯等の内部情報が得られない。X線CTは、X線撮影装置と同様人体に有害である上に、分解能が悪く、装置も大型かつ高価である。MRIは、分解能が悪く、装置が大型かつ高価である上に、水分のない歯の内部構造は撮影できない。
【0005】
ところで、光コヒーレンストモグラフィー装置(以下、OCT装置と称する)は、人体に無害で、被写体の3次元情報が高分解能で得られるため、角膜や網膜の断層計測等の眼科の分野で応用されている(例えば、特開2003−329577号、特開2002−310897号、特開平11−325849号、および特開2001−059714号参照)。なお、OCTは、Optical coherence tomographyの略である。また、光コヒーレンストモグラフィー装置は、光学干渉断層撮影装置と呼ばれることもある。
【0006】
ここで、従来のOCT装置について説明する。図30は、従来のOCT装置の構成を示す図である。図30に示すOCT装置を構成するOCTユニット1において、光源2から射出された光はレンズ3でコリメートされた後に、ビームスプリッタ4により、参照光6と計測光5に分けられる。計測光5は、ガルバノミラー8を経てレンズ9によって被計測体10に集光され、そこで散乱、反射した後に再びレンズ9、ガルバノミラー8、ビームスプリッタ4を通ってレンズ7によって光検出器14に集光される。一方、参照光6は、レンズ12を通って参照ミラー13で反射し、再び、レンズ12、ビームスプリッタ4を通過した後に、計測光5と重なりあってレンズ7に入射し光検出器14に集光される。
【0007】
光源2は、時間的に低コヒーレンスな光源である。時間的に低コヒーレンスな光源から、異なった時刻に出た光どうしは極めて干渉しにくい。そのため、計測光5が通過する光路の距離と、参照光6が通過する光路の距離がほぼ等しいときにのみ干渉信号が現れることとなる。その結果、参照ミラー13を参照光6の光軸方向に動かして計測光5と参照光6の光路長差を変化させながら、光検出器14で干渉信号の強度を計測すると、被計測体10の奥行き方向(z軸方向)の反射率分布を得ることができる。つまり、光路長差走査により、被計測体10の奥行き方向の構造が得られる。
【0008】
被計測体10でz軸方向に反射した計測光5は、その電磁波としての波形上に被計測体10の物体情報を担っている。しかし、計測光5の光波形はあまりにも現象が速すぎて時間軸上で直接計測できる光検出器は存在しない。そこで、OCT装置は、被計測体10で反射した計測光5を参照光6と干渉させることによって、被計測体10各部の反射特性情報が干渉光の強度の変化に変換する。その結果、光検出器14は時間軸上での検出が可能となる。
【0009】
参照ミラー13による被計測体の奥行き方向(z軸方向)の走査に加えて、ガルバノミラー8による横方向(x軸方向)の走査を行うことで、被計測体10の2次元断面画像が得られる。このようなOCT装置では、数μmという高分解能な計測が可能である。したがって、OCT装置によって、非破壊、非接触で生体内部の高分解能な画像を得ることができる。
【0010】
OCT装置の歯科の分野への適用については、OCT装置を用いて、歯の断層を撮影した例が開示されている(例えば、下記文献1〜5参照)。
(文献1)レーザー研究 2003年10月号:医療を中心とする光コヒーレンストモグラフィーの技術展開
(文献2)Journal of Biomedical Optics, October 2002, Vol.7 No.4:Imaging caries lesions and lesion progression with polarization sensitive optical coherence tomography
(文献3)APPLIED OPTICS, Vol.37, No.16, 1 June 1998: Imaging of hard-
and soft-tissue structure In the oral cavity by optical coherence tomography
(文献4)OPTICS EXPRESS, Vol.3,No.6,14 September 1998: Dental OCT
(文献5)OPTICS EXPRESS, Vol.3,No.6,14 September 1998: In vivo OCT Imaging of hard and soft tissue of the oral cavity
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、OCT装置は実際の歯科診療に使用されていない。OCT装置を歯科診断に使用することは、少なくとも現時点では実用的ではなく、歯科用のOCT装置は製品として存在していない。なぜならば、OCT装置では、1枚の断層像を得るのに奥行き方向を含む2次元の機械的走査が必要であるため、撮像に時間がかかる上に、装置が複雑で高価となり、耐久性も劣っているためである。すなわち、OCT装置を実際の歯科測定に適用することが困難であるという課題があった。
【0012】
そこで、本発明は上記課題を鑑み、構造が簡単で、高速で撮像でき、歯科測定に適用することができる光コヒーレンストモグラフィー装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明にかかる歯科用光コヒーレンストモグラフィー装置は、生体の顎口腔領域における組織または顎口腔領域の人工組成物を被計測体とする歯科用光コヒーレンストモグラフィー装置であって、時間とともに所定範囲内において波長が変化する光を出射する可変波長光源と、前記可変波長光源から出射した光源光を、参照ミラーに照射する参照光と被計測体に照射する計測光とに分ける光分割部と、前記被計測体で反射した前記計測光と、前記参照ミラーで反射した参照光とを干渉させて干渉光とする干渉部と、時間とともに前記所定範囲内で波長が変化する干渉光を計測する光検出部と、前記光検出部が計測した干渉光の、前記変化する波長の各段階における強度をフーリエ変換またはフーリエ逆変換することにより、前記被計測体で前記計測光が反射した位置および反射強度を表す反射特性データを生成し、前記被計測体の画像を生成する演算部とを備える。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、構造が簡単で、高速で撮像でき、歯科測定に適用することができる光コヒーレンストモグラフィー装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】実施の形態1におけるFD−OCT装置の構成の一例を表す図である。
【図2】演算部が、計測した干渉光に基づいて、断面画像を生成する処理の例を示すフローチャートである。
【図3】層ごとに反射強度を補正する処理の流れを示すフローチャートである。
【図4】深さ方向の反射強度の分布を複数の層に分割する例を示す図である。
【図5】演算部が、被計測体の画像を表示する処理の一例を示すフローチャートである。
【図6】歯科形状ルール集のデータ構造の一例を示す図である。
【図7】歯科形状ライブラリに含まれるデータが表す形状の一例を示す図である。
【図8】(a)は、図1に示すプローブユニット200の内部構造を表す断面図である。(b)は、プローブユニット200をx軸方向から見た場合の平面図である。
【図9】レンズを駆動する方法の一例を説明するための概念図である。
【図10】マウスピースおよびマウスピースホルダの他の構成例である。
【図11】(a)は、マウスピースの代わりにシーネを用いた場合のプローブユニットの断面図である。(b)は、図11(a)に示すプローブユニットをx軸方向から見た平面図である。
【図12】(a)は、口角鉤76が設けられたマウスピースおよびマウスピースホルダのyz平面における断面図である。(b)は、図12(a)に示すマウスピースホルダ73aおよび口角鉤76のB−B線に沿う断面を示す図である。
【図13】マウスピースの変形例を示す断面図である。
【図14】本実施形態におけるプローブユニットの変形例を示す断面図である。
【図15】(a)は、マウスピースホルダおよびプローブユニットがマウスピースの形状に沿ってスライドする構造の例を示す図である。(b)は、(a)に示すマウスピースホルダおよびマウスピースのxz平面における断面図である。
【図16】マウスピースホルダを、直角に曲げた形状の例を示す図である。
【図17】(a)は、スペーサを固定部材に用いた場合のプローブユニットの断面図である。(b)は、スペーサを備えるプローブユニットの変形例を示す断面図である。
【図18】(a)および(b)は、スペーサを備えるプローブユニットの変形例を示す図である。
【図19】プローブユニットの変形例を示すxz平面における断面図である。
【図20】回転体の変形例を示す断面図である。
【図21】スリーブの変形例を示す断面図である。
【図22】実施の形態2におけるFD−OCT装置の構成の一例を表す図である。
【図23】実施の形態3におけるFD−OCT装置の構成の一例を表す図である。
【図24】(a)は、光源光偏光操作器35の構成を示す概略図である。(b)は、参照光偏光操作器36または、干渉光偏光操作器37の構成を示す概略図である。
【図25】OCT装置の光源の構成を示す図である。
【図26】実施の形態5におけるFD−OCT装置の構成の一例を表す図である。
【図27】(a)および(b)は、実施の形態6におけるOCT装置の参照ミラー付近の構成を示す図である。
【図28】実施の形態7におけるFD−OCT装置の構成の一例を表す図である。
【図29】実施の形態8におけるFD−OCT装置の構成の一例を表す図である。
【図30】従来のOCT装置の構成を示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明にかかる歯科用光コヒーレンストモグラフィー装置は、生体の顎口腔領域における組織または顎口腔領域の人工組成物を被計測体とする歯科用光コヒーレンストモグラフィー装置であって、時間とともに所定範囲内において波長が変化する光を出射する可変波長光源と、前記可変波長光源から出射した光源光を、参照ミラーに照射する参照光と被計測体に照射する計測光とに分ける光分割部と、前記被計測体で反射した前記計測光と、前記参照ミラーで反射した参照光とを干渉させて干渉光とする干渉部と、時間とともに前記所定範囲内で波長が変化する干渉光を計測する光検出部と、前記光検出部が計測した干渉光の、前記変化する波長の各段階における強度をフーリエ変換またはフーリエ逆変換することにより、前記被計測体で前記計測光が反射した位置および反射強度を表す反射特性データを生成し、前記被計測体の画像を生成する演算部とを備える。
【0017】
本発明にかかる歯科用光コヒーレンストモグラフィー装置において、前記可変波長光源から時間とともに所定範囲内で波長が変化する光が出射されるので、前記光検出部は、時間とともに所定範囲内で波長が変化する干渉光を検出できる。すなわち、前記光検出部は、変化する波長の各段階における干渉光強度を検出する。これにより、前記光検出部は、干渉光の波長分布を検出することになる。前記演算部は、変化する波長の各段階における干渉光強度をフーリエ変換またはフーリエ逆変換することにより、計測光の前記被計測体における各反射位置での反射強度を表すデータに変換する。これにより、前記演算部は、前記被計測体で前記計測光が反射した位置および反射強度を表す反射特性データを生成することができる。前記演算部は、前記反射特性データを用いて、前記被計測体の断層画像を生成する。すなわち、演算部は、各波長の干渉光のデータを基に、被計測体の深さ方向の情報を得ることができる。
【0018】
そのため、前記計測光の光軸方向、すなわち、被計測体の深さ方向の機械的走査をせずに、被計測体の深さ方向の情報を得ることができる。その結果、装置の構造が簡単になり、高速で撮像が可能になる。ひいては、歯科においてチェアサイドにOCT装置を配置することができ、OCT装置による歯科測定が可能になる。すなわち、歯科診断に適用できるOCT装置が得られる。
【0019】
光分割部と干渉部は、ビームスプリッタまたはファイバカプラにより両機能を兼用する構成が好ましい。
【0020】
本発明にかかる歯科用光コヒーレンストモグラフィー装置は、生体の顎口腔領域における組織または顎口腔領域の人工組成物を被計測体とする歯科用光コヒーレンストモグラフィー装置であって、光源と、前記光源から出射した光源光を、参照ミラーに照射する参照光と被計測体に照射する計測光とに分ける光分割部と、前記被計測体で反射した前記計測光と、前記参照ミラーで反射した参照光とを干渉させて干渉光とする干渉部と、前記干渉光を計測する光検出部と、前記光検出部が計測した干渉光に基づいて、前記被計測体で前記計測光が反射した位置および反射強度を表す反射特性データを生成し、前記被計測体の画像を生成する演算部と、前記計測光を、前記被計測体へ導いて照射し、前記被計測体で反射した前記計測光を受光して前記干渉部へ導くプローブと、前記プローブに固定され、前記被計測体の一部に接するかまたは接着部材を介して接着されることにより、前記プローブと前記被計測体との相対位置を固定する固定手段とを備える。
【0021】
前記プローブは、前記計測光を、前記被計測体へ導いて照射し、前記被計測体で反射した前記計測光を受光して前記干渉部へ導くので、複雑な構造を有する前記被計測体である顎口腔領域の測定箇所に前記計測光を照射し、反射光を受光することが可能になる。
【0022】
また、前記固定手段が前記プローブに固定され、かつ前記被計測体に接するかまたは接着部材を介して接着される状態では、前記プローブと前記被計測体との相対位置は固定されている。したがって、前記プローブにより、計測光の照射位置を被計測体の形状に合わせて柔軟に変化させることができるとともに、前記プローブと被計測体との相対位置を固定することができる。
【0023】
本発明にかかる歯科用光コヒーレンストモグラフィー装置において、前記プローブは、前記計測光を前記被計測体へ集光させる対物レンズを備え、前記固定部材は、前記被計測体に接した状態で、前記対物レンズによって集光される前記計測光の焦点が前記被計測体の表面または内部に位置するように、前記プローブと前記被計測体との相対位置を固定することが好ましい。
【0024】
前記固定部材が前記被計測体へ接することにより、前記プローブの前記被計測体に対する位置および方向は、前記対物レンズの焦点が前記被計測体にくるように固定される。そのため、測定者は、前記固定部材が前記被計測体に接するように前記プローブを保持することによって、前記プローブを測定に適した位置および方向に保つことができる。
【0025】
本発明にかかる歯科用光コヒーレンストモグラフィー装置において、前記固定手段は、被計測体を含む歯列の形状に適合する接着部材を装着する装着部を有するシーネコアか、あるいは、上歯列と下歯列とに挟まれる形状のマウスピースであることが好ましい。これにより、前記プローブと前記被計測体との相対位置は安定して固定される。
【0026】
本発明にかかる歯科用光コヒーレンストモグラフィー装置において、前記プローブは、前記被計測体に照射する前記計測光を、前記計測光の光軸に垂直な方向に走査する走査手段をさらに備えることが好ましい。前記プローブに前記走査手段が設けられているので、被計測体のある口腔内において2次元の走査あるいは3次元の走査が可能になる。
【0027】
本発明にかかる歯科用光コヒーレンストモグラフィー装置において、前記演算部は、前記干渉光に基づいて、前記被計測体に入射する前記計測光の深さと、前記深さにおける前記計測光の反射強度を表す反射特性データを生成し、前記反射強度を、前記深さzpまたは前記深さzpに関する関数または積分関数に応じて補正することによって、前記被計測体の光軸方向の断層画像を生成することが好ましい。
【0028】
被計測体の光軸方向の深さが深くなればなるほど、計測光の強度が減少するので、反射する光の強度も減少する。その結果、前記反射特性データが表す、前記深さzpの位置における前記計測光の反射強度は、深さzpが深くなるほど小さくなる傾向にある。そこで、前記反射特性データで表される反射強度を、前記深さzpまたは前記深さzpに関する関数または積分関数に応じて補正することによって、反射強度の深さによる減少の影響を緩和させることができる。
【0029】
本発明にかかる歯科用光コヒーレンストモグラフィー装置において、前記演算部は、前記干渉光に基づいて、前記被計測体に入射する前記計測光の深さ方向における前記計測光の反射強度の分布を表す反射特性データを生成し、前記反射強度の分布を前記深さ方向の複数の層に分割し、分割した各層の透過率を用いて、前記層ごとに反射強度を補正することによって、前記被計測体の光軸方向の断層画像を生成することが好ましい。
【0030】
被計測体が、光の透過率が異なる複数の層を有する場合、計測光の反射強度の深さに伴う減少の度合いは、層ごとに異なる。前記演算部は、分割した各層における光の透過率を用いて、層ごとに反射強度を補正するので、被計測体が、光の透過率が異なる複数の層を有する場合に、各層における反射強度の減少度合いの違いを考慮した補正ができる。光の透過率が異なる複数の層を有する被計測体の一例は歯である。歯は、エナメル質層、象牙質層、セメント質層、歯槽骨等を有する。
【0031】
本発明にかかる歯科用光コヒーレンストモグラフィー装置において、前記光源は、中心波長の異なる2以上の光源で構成され、前記2以上の光源のうち、いずれか1つの光源の光を前記光分割部へ導く光源切り替え部を備えることが好ましい。これにより、被計測体の構成物質に適した波長の光を光源の光として選択することができる。
【0032】
本発明にかかる歯科用光コヒーレンストモグラフィー装置は、生体の顎口腔領域における組織の各部位の形状を表す歯科形状データを記録する歯科形状データ記録部と、前記演算部で生成された画像を表示する表示部とをさらに備え、前記演算部は、生成した前記画像から、顎口腔領域における組織の各部位、病変部、補綴物または充填物を表す部分を、前記歯科形状データを用いて抽出し、他の部分と視覚的に区別可能な態様で、前記表示部へ表示することが好ましい。
【0033】
前記演算部は、顎口腔領域における組織の各部位の形状を表す前記歯科形状データを基にして、前記画像から、前記顎口腔領域における組織の各部位、病変部、補綴物または充填物の形状を示す部分を抽出することができる。演算部がこれらの抽出した部分をそれぞれ他の部分と視覚的に区別可能な態様で前記表示部へ表示することによって、その表示を見た操作者は、前記顎口腔領域における組織の各部位、病変部、補綴物または充填物の形状を認識しやすくなる。
【0034】
本発明にかかる歯科用光コヒーレンストモグラフィー装置は、生体の顎口腔領域における組織または顎口腔領域の人工組成物を被計測体とする歯科用光コヒーレンストモグラフィー装置であって、光源と、前記光源から出射した光源光を、参照ミラーに照射する参照光と被計測体に照射する計測光とに分ける光分割部と、前記被計測体で反射した前記計測光と、前記参照ミラーで反射した参照光とを干渉させて干渉光とする干渉部と、前記干渉光を計測する光検出部と、前記光検出部が計測した干渉光に基づいて、前記被計測体で前記計測光が反射した位置および反射強度を表す反射特性データを生成し、前記被計測体の画像を生成する演算部と、前記計測光を、前記被計測体へ導いて照射し、前記被計測体で反射した前記計測光を受光して前記干渉部へ導くプローブと、前記プローブに、少なくとも1つの方向を回転軸として回転可能に取り付けられた回転体であって、前記回転軸と一定または可変の角度を有する方向へ前記計測光を照射する照射口を有する回転体と、前記回転体を回転させる駆動部とを備える。
【0035】
前記照射口から前記被計測体へ照射される計測光の照射方向は、前記回転体の回転軸と一定または可変の角度を有しているので、前記回転体が回転することにより、前記計測光が前記被計測体に照射される位置が回転方向へ移動する。そのため、前記回転体が前記駆動部により回転させられることにより、前記回転体の前記照射口から照射される計測光は、回転方向へ走査される。
【0036】
本発明にかかる歯科用光コヒーレンストモグラフィー装置は、前記回転体に、ベアリングを介して覆うように設けられたスリーブであって、前記照射口から照射される計測光を通す窓を有するスリーブをさらに備えることが好ましい。
【0037】
前記スリーブの前記窓の位置を前記被計測体に対して固定することで、前記スリーブと前記被計測体との相対位置が固定される。前記スリーブはベアリングを介して前記回転体を覆うように設けられているので、前記回転体は、位置が固定された前記スリーブ内で回転する。すなわち、前記回転体と前記被計測体との相対位置も固定される。そのため、前記被計測体上の1方向について、安定して走査することができる。
【0038】
本発明にかかる歯科用光コヒーレンストモグラフィー装置は、前記光源光、前記参照光、前記計測光または前記干渉光の少なくとも1つの偏光状態を操作する偏光操作部をさらに備えることが好ましい。
【0039】
本発明にかかる歯科用光コヒーレンストモグラフィー装置においては、偏光操作部が、前記光源から前記光分割部へ照射される光、前記参照光、前記計測光または前記干渉光の少なくとも1つの偏光状態を操作するので、被計測体の偏光特性または複屈折特性を反映した画像が得られる。その結果、例えば、初期う蝕・象牙質・エナメル質・歯肉・歯槽骨等、特有の偏光特性または複屈折特性に富む口腔組織の観察が可能となる。
【0040】
本発明にかかる歯科用光コヒーレンストモグラフィー装置は、前記計測光の断面を、前記計測光の照射方向に垂直な面内の1軸方向に沿う線状にするシリンドリカルレンズまたはシリンドリカルミラーを更に備えることが好ましい。
【0041】
シリンドリカルレンズとは、光軸に対して直角な2方向のうち、片方にだけレンズとして作用するレンズのことであり、レンズとして作用する方向の断面の形状のみがその輪郭に曲線を含むレンズ特有の形状となり、レンズとして作用しない方向の断面の形状は、例えば、長方形になる。
【0042】
シリンドリカルミラーとは、光軸に対して直角な2方向のうち、片方にだけレンズとして作用するミラーのことであり、レンズとして作用する方向の断面の形状のみがその輪郭に曲線を含むレンズ特有の形状となり、レンズとして作用しない方向の断面の形状は、例えば、長方形になる。
【0043】
前記シリンドリカルレンズまたはシリンドリカルミラーは、光軸に垂直な面における前記計測光の断面形状を、前記計測光の照射方向に垂直な面内の1軸方向に沿う線状にする。そのため、前記計測光は、被計測体の前記1軸方向に分布照射される。すなわち、前記計測光は、前記被計測体において前記1軸方向のライン上に集光される。そのため、前記1軸方向に機械的走査をしなくても、前記被計測体の前記1軸方向の断面を計測することができる。
【0044】
本発明にかかる歯科用光コヒーレンストモグラフィー装置において、前記光源光、計測光、参照光、干渉光、スペクトルに分光された光のうち、少なくとも1つは、光ファイバで導光されることが好ましい。光ファイバにより、光の進む向きを柔軟に変化させることができる。その場合、複数の光ファイバを1列に平行に並べた光ファイバや、光軸に垂直な断面が略円状になるように束ねた光ファイバが用いられてもよい。
【0045】
本発明にかかる歯科用光コヒーレンストモグラフィー装置は、被計測物体表面上に該計測光または可視光パターンを投影し、2次元撮像装置によって計測部位の表面画像をモニタするか、またはさらに断層計測画像と同期記録する態様とすることが好ましい。これにより、操作者は、計測時に計測部位を確認することができる。
【0046】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
【0047】
(実施の形態1)
図1は、実施の形態1におけるフーリエドメイン光コヒーレンストモグラフィー装置(
以下、FD−OCT装置と称する)の構成の一例を表す図である。なお、FD−OCTは、Fourier−domain OCTの略である。
【0048】
FD―OCT装置は、低コヒーレントな光源から出射して被計測体で反射した計測光と、前記光源から出射して参照ミラーで反射した参照光との干渉光を測定し、その干渉光の情報からフーリエ変換またはフーリエ逆変換を用いて被計測体の深さ方向、すなわち計測光の光軸方向の光学特性を求めるOCT装置である。FD−OCT装置では、計測光の光軸方向の機械的走査が不要となる。FD−OCT装置の種類には、少なくとも、スウェプトソース型(Swept Source型)と、スペクトルドメイン型との2種類がある。本実施形態では、スウェプトソース型のFD−OCTについて説明する。
【0049】
なお、スペクトルドメイン型のFD−OCT装置は、干渉光を回折格子により分光して得られたスペクトルを検出し、このスペクトルから被計測体の計測光の光軸方向における情報を、フーリエ変換またはフーリエ逆変換を用いて求めることを特徴とするOCT装置である。
【0050】
(本実施形態におけるFD−OCT(スウェプトソース型)の構造の例)
図1に示すように、スウェプトソース型のFD−OCT装置は、OCTユニット100、プローブユニット200および計算機27で構成されている。OCTユニット100には、光源15、ファイバカップラ19、参照ミラー24、光検出器41が設けられている。プローブユニット200には、ガルバノミラー20a、20b、レンズ21a、21bが設けられている。計算機27は、光源15、光検出器41、ガルバノミラー20と接続されている。計算機27は、例えば、パーソナルコンピュータ等のコンピュータであり、CPU等の演算部27b、ハードディスク等の記録部27cを少なくとも備えている。また、計算機27は、例えば、液晶パネル、CRT、PDP等の表示部27aを備えてもよい。
【0051】
なお、OCTユニット100、プローブユニット200、計算機27の構成は、図1に示す構成に限られない。例えば、計算機27の機能をOCTユニット100内に組み込むことができる。
【0052】
光源15は、時間的および空間的に低コヒーレントな光源である。すなわち、中心波長を中心として狭い範囲に波長が分布した光を出射する光源である。また、光源15が照射する光は、時間とともにその中心波長が変化する。光源15が照射する光の波長は、例えば、一定時間ごとに装置固有の波長範囲内で変化する。すなわち、光源15から照射される光は、一定時間ごとに前記範囲の波長を走査する。
【0053】
光源15として、例えば、チューナブルLD(Laser Diode)のような可変波長の狭帯域レーザ光源が用いられる。光源15は例えば、830nm、1100nm、1300nm、1500nmまたは1600nmの中心波長に対して、±110nm、または±55nmの変化幅で中心波長が変化する光を照射する光源とすることができる。また、光源15は、例えば、17ナノ秒(17nsec)間に0.064nmずつ変化する光を出射してもよい。すなわち、光源15は、例えば、110nmの波長の変化幅を1700ポイントに分割して、60MHzの周期で1ポイントずつ波長を変化させて光を出射することができる。
【0054】
ファイバカップラ19は、光分割部および干渉部の機能を果たす光学干渉器の一例である。光学干渉器とは、2つの入力光を干渉させて2方向に出力する入出力可換な光学部品である。光学干渉器の例として、ファイバカップラ19の他にビームスプリッタ、ハーフミラー等が挙げられる。
【0055】
光検出器41は、光検出部の一例である。光検出器41は、例えば、フォトダイオードが用いられる。特に赤外フォトダイオードが光検出器41として適切である。スウェプトソース型のFD−OCT装置において、光検出器41が検出する光は0次元、つまり光線である。
【0056】
なお、スペクトルドメイン型のFD−OCT装置では、光検出器41が検出する光は、回折格子によって分光された光なので、1次元の広がりを持つ。そのため、光検出器41として、1次元以上の高解像度光検出アレイが必要となる。1次元以上の高解像度光検出アレイは、例えば、CCDイメージセンサがある。しかし、CCDイメージセンサで、特に1.3μの赤外帯域のものは、複雑、大型かつ高価である。これに比べて、スウェプトソース型のFD−OCT装置の光検出器41に用いられるフォトダイオードは、簡単、小型かつ安価である。この点は、スウェプトソース型のFD−OCT装置を歯科に適用することの非常に有利な効果となる。
【0057】
プローブユニット200は、レンズ21a、21bおよびガルバノミラー20a、20bを備える。OCTユニット100のファイバカップラ19で出力された計測光28を、被計測体22へ導いて照射し、被計測体22で反射した計測光28の反射成分を受光してファイバカップラ19へ導く。プローブユニット200の詳細な構成については後述する。
【0058】
プローブユニット200と、OCTユニット100とは光ファイバ18で接続されており、プローブユニット200と、OCTユニット100と間の光の伝達は、光ファイバ18によって行われる。これにより、プローブユニット200は、OCTユニット100と異なる筐体として構成することができる。すなわち、プローブユニット200の位置および向きは、OCTユニット100の位置および向きに制約を受けず、被計測体22の状態に応じて柔軟に変化することができる。また、プローブユニット200の可動範囲が広くなる。
【0059】
プローブユニット200は、操作者が手持ちで操作できる構成であることが好ましい。これにより、歯科診療において、操作者がチェアサイドで手軽に利用できる。患者とプローブユニット200の位置関係がフリーな状態で、操作者がOCT装置を使用できる。
【0060】
OCT装置を歯科用に適用する場合、患者が通常診療の際に座っている椅子のチェアサイドでOCT装置が使用されることが想定される。この場合、プローブユニット200を位置付けするのに、空中光学系(プローブユニットへの光路を光ファイバではなく空中とする)では、OCTユニット全体を患者の口腔に精密に位置付けしなければならない。また、比較的重いOCTユニットを、操作者が持って操作するのは、非現実的である。
【0061】
(FD−OCT装置の動作の例)
次に、図1に示すFD−OCT装置の動作について説明する。本実施形態では、被計測体22が、生体の顎口腔領域組織または、顎口腔領域の人工組成物である場合について説明する。また、以下の説明において、座標系を次のように定義する。図1に示すように、被計測体22においては計測光28の光軸方向すなわち被計測体22の深さ方向をz、z方向に垂直な平面をxy平面とする。ガルバノミラー20bのスキャン方向をy方向に、y方向に垂直な方向であって、ガルバノミラー20aのスキャン方向をx方向にとる。被計測体22以外の場所では被計測体22のx、y、zのそれぞれに光学的に対応する方向をx、y、zとする。光学的に対応するとは、ミラーやレンズ・光ファイバ等で空間的な方向が変化しても、光の進行方向をz、ガルバノミラー等で走査される方向をy、zとyの両方に垂直な方向をxとするということである。
【0062】
光源15から射出された光はレンズ17a、17bでコリメートされた後に、ファイバカップラ19により、参照光29と計測光28に分けられる。計測光28は、光ファイバ18、レンズ21a、ガルバノミラー20a、20bを経てレンズ21bによって被計測体22に集光される。計測光28は、被計測体22で反射、散乱および透過する。被計測体22で反射、散乱、透過した計測光のうち、反射または後方散乱した光(以下、単に反射光と称する)は、再びレンズ21b、ガルバノミラー20a、20b、レンズ21a、光ファイバ18、ファイバカップラ19を通ってレンズ30によって光検出器41に導かれる。
【0063】
一方、参照光29は、光ファイバ18、レンズ23a、23bを通って参照ミラー24で反射し、再び、レンズ23a、23bを通ってファイバカップラ19で計測光28の反射成分と干渉させられて、計測光28の反射生成分と重なりあってレンズ30に入射し光検出器41に導かれる。
【0064】
この計測光28と参照光29は、時間とともに波長が変化する光なので、ファイバカップラ19で干渉しあって光検出器41へ導かれる光も時間とともに波長が変化する。すなわち、光検出器41は、計測光28の反射成分と参照光29との干渉光を複数の波長について検出する。この光検出器41によって計測される各波長の干渉光を計算機27内の演算部27bがフーリエ変換またはフーリエ逆変換することによって、計測光28と参照光29の相関が得られる。この相関より、被計測体22の深さ方向(z軸方向)の位置とその位置での反射光の強度とを表すデータが得られる。すなわち、被計測体22の反射率特性が得られる。この反射率特性により、被計測体22の構造、組成または光学特性に関する情報が得られる。例えば、計算機27の演算部27bが、計測した干渉光に基づいて被計測体22の断面画像を生成する。計算機27の演算部27bが、断面画像を生成する処理の例については後述する。
【0065】
上記のFD−OCT装置においては、参照ミラー24を動かして、計測光28の光路長と参照光29の光路長を調節し、z軸方向の走査を行う必要がない。すなわち、z軸方向の機械的操作を行うことなく、被計測体22の深さ方向(z軸方向)の構造に関する情報を得ることができる。FD−OCT装置により、従来よりもS/N比が向上した断層情報が得られる。これにより、解像度の高い断層画像が得られる。また、従来に比べて、ぺネトレーション(到達度)が高くなるので、被計測体の内部の、より深い位置を観察することが可能となる。
【0066】
以上のように、計測光28と参照光29との各波長における干渉光に基づいて、被計測体z軸方向の内部情報を得るOCT装置がスウェプトソース型のFD−OCT装置である。
【0067】
被計測体22の3次元断面画像を得るためには、z軸方向に加えて、y軸方向およびx軸方向の走査を行うこと必要がある。本実施の形態において、y軸方向の走査は、ガルバノミラー20bを駆動することにより、x軸方向の走査は、ガルバノミラー20aを駆動することにより行われている。
【0068】
上述のように、スウェプトソース型のFD−OCT装置においては、被計測体22のz軸方向の構造は、時間とともに変化する波長についての干渉光から求められるので、被計測体22の断層像を得るための機械的走査が不要となる。その結果、装置の構造が簡単になり、高速で撮像が可能となる。ひいては、OCT装置の持つ被計測体の3次元的内部情報を定量的に取得できるという基本的特性や、非侵襲性、高分解能等の優れた特性が歯科分野で生かされることになる。
【0069】
すなわち、歯科分野では、被計測体が、例えば、歯牙や歯槽骨等の硬組織であることが多い。歯牙や歯槽骨のような硬組織は散乱が強いため、従来のOCT装置では、観察するのが困難であった。従来のOCT装置に比べてぺネトレーションが高いFD−OCT装置を歯科に適用することによって、歯牙や歯槽骨のような硬組織の内部のより深い部分を観察することが可能となる。
【0070】
(計算機27の演算部27bが断面画像を生成する処理の例)
図2は、計算機27の演算部27bが、計測した干渉光に基づいて、断面画像を生成する処理の例を示すフローチャートである。図2に示す例では、ステップS1〜3の処理が、各xy座標について繰り返される。ステップS1〜3において、演算部27bは、例えば、座標(xi、yi)で表される1つの計測点におけるz軸方向の反射強度の分布を求める。演算部27bは、まず、光検出器41が検出した干渉光の波長ごとの強度を取得する(ステップS1)。演算部27bは、例えば、座標(xi、yi)で反射した計測光28の反射成分と、参照光29との干渉光の強度を電流に変換した値を、光検出器41から取得する。ここで、光検出器41が出力する波数k(=2π/波長)の干渉光の強度を表す電流idet(k)は、例えば、下記(数1)で表される。
【0071】
【数1】
【0072】
η : フォトダイオードの感度
q : 電子の素電荷 (=1.6×10-19 クーロン)
hν : 光子エネルギー(νは振動数)
Pr : 参照光強度
P0 : 検出光強度
r(z) : 被写体のz方向の光反射係数の強度プロファイル
φ(z): 被写体のz方向の光反射係数の位相プロファイル
Γ(z): 光源光のコヒーレンス関数
k(t) : = 2π/λ(t) 光源光の波数(光源15により走査される)
上記(数1)において、第3項は、参照光29と計測光28の反射成分との干渉による光強度を表している。第1項および第2項は干渉によらないバックグラウンドの光強度を表している。なお、第1項および第2項は、次に述べるフーリエ逆変換でキャンセルされるが、検出系のダイナミックレンジやノイズには影響する。
【0073】
上記(数1)において、光源光の波数k(t)は、時間tによって変化する。すなわち、光源15は、光源光の波数kを時間tとともに変化させることによって、波数kを走査する。光検出器41は、光源15の波数kの走査に同期して、干渉光の強度を表す電流idet(k)の時系列データを出力することができる。
【0074】
演算部27bは、光検出器41の出力データを基に、計測光28の被計測体22における反射強度のz軸方向の分布F(z)を求める(ステップS2)。例えば、演算部27bは、光検出器41が出力した、idet(k)の時系列データをフーリエ逆変換することにより、深さzでの計測光28の反射成分の信号、すなわち、反射強度F(z)を求めることができる。F(z)は、例えば、下記(数2)によるフーリエ逆変換により求められる。
【0075】
【数2】
【0076】
idet(k)は、時間とともに変化する各波数km(m=0、1、2・・・)について、離散値idet(km)として光検出器41で検出される。そのため、演算部27bは、例えば、下記(数3)によるディスクリートフーリエ逆変換(離散フーリエ逆変換)により、深さzl(l=0、1、2・・・)における反射強度を表す値F(zl)を求めることもできる。
【0077】
【数3】
【0078】
m : 波数kのDFT(discrete Fourier transform)離散化番号
l : 深さzのDFT(discrete Fourier transform)離散化番号
Δk : 光源の波数の走査幅
なお、上記(数1)〜(数3)による演算は、スウェプトソース型のFD−OCT装置だけでなく、スペクトルドメイン型のFD−OCT装置でも用いられる。また、演算部27bは、光検出器41から得られたデータをディスクリートフーリエ逆変換する際に、周知の高速フーリエ変換の手法を用いることが好ましい。
【0079】
次に、演算部27bは、深さzにおける信号、すなわち反射強度を表す値F(z)を、深さzに応じて補正する(ステップS3)。演算部27bは、例えば、深さzpにおける反射強度F(zp)に下記(数4)、(数5)、(数6)または(数7)のいずれか1つで表される補正係数C(zp)を掛けることでF(zp)を補正してもよい。
【0080】
【数4】
【0081】
【数5】
【0082】
【数6】
【0083】
【数7】
ここで補正係数C(zp)がゼロになる場合があるが、これは補正後のデータをもとに画像を表現する際にその場所の輝度が基準の値になることであり、輝度がゼロになる(真っ黒になる)ことを必ずしも意味しない。上記式(数4)〜(数7)はあくまで、深さ方向の計測光の減衰を補正するものでよく、最終的な画像の輝度を意味するものである必要はない。また、補正のための数式は上記式(数4)〜(数7)に限らないし、必ずしも数式で与えられた値で補正する必要もない。深さ方向の強度の補正を行うことそのものに意味がある。
【0084】
OCT装置の被計測体の深さzに到達する計測光28の大きさは、深さ0〜zまでの光の反射強度が強ければ強いほど小さくなる。被計測体の深さzに到達した計測光28は、その部分特有の反射率Rで後方散乱または反射し、再び深さ0〜zpの間で減衰しながら被計測体の表面に戻ってきて、深さzにおける計測光29の反射成分として検出される。したがって、例えば、上記(数4)〜(数7)に示す式のいずれかによって、深さ0〜zpにおける反射光強度を表す値を用いて求められた補正係数C(zp)を、深さzpにおける反射強度F(zp)に掛けることで、深さzpに応じた補正ができる。
【0085】
演算部27bは、上記ステップS1〜3の処理を、各xy座標について繰返し行う。例えば、ガルバノミラー20bがy軸方向に、y=0〜10000(μm)で走査し、光検出器41が1μm間隔で干渉光を計測した場合、yi=0、10、20・・・10000(μm)の各y座標について上記ステップS1〜3の処理を繰り返すことが好ましい。また、ガルバノミラー20aがx軸方向に、x=0〜10000(μm)で走査し、光検出器41が10μm間隔で干渉光を計測した場合も同様に、xi=0、10、20・・・10000(μm)の各x座標について上記ステップS1〜3の処理を繰り返すことが好ましい。
【0086】
このように、演算部27bは、走査範囲における各xy座標において、z方向の反射強度分布を求めることで、被計測体の3次元画像を得ることができる。演算部27bは、例えば、Bモードと言われる2次元断面の断層を表す画像を生成することができる。さらに演算部27bは、Bモードで表される複数の断層から、いわゆるCモードと言われる3次元的被写体情報を得ることができる。
【0087】
OCT装置は基本的にある深さの反射光を抽出して計測情報とする原理のため、深くなればなるほど診断に使用される計測光の強度そのものが減衰するだけでなく、反射光の強度も減衰する。つまり、光の透過率の積分値の2乗に反比例して計測情報の強度が低下する。その結果、OCT装置の計測情報をそのまま画像化すると、同一の組織が異なる深さにあった場合、これらは同一の輝度で描像されないことになる。これは、従来のX線画像を見慣れてきた術者や診断者にとって非常に判断しにくい診断情報である。
【0088】
このように、観察組織の部位が深くなればなるほど、計測光・反射光の双方が減衰するという基本的な原理の下でOCT装置は動作する。そのために、なるべく深い部位を計測しようとすればするほど、ノイズの影響が大きくなる。
【0089】
演算部27bが、上記ステップS3において、反射強度を補正することによって、上記のような深さに応じて減衰する反射強度によって生じる不具合を緩和させることができる。なお、反射強度を補正する方法は、上記の例に限られない。
【0090】
(補正処理の変形例)
上記の補正処理の例では、深さzpまたは深さzpに関する積分関数を用いた補正の例を示したが、例えば、演算部27bは、深さ方向の反射強度の分布を複数の層に分割し、各層の光の透過率(=減衰率)を表す透過係数を用いて、層ごとに反射強度を補正することもできる。図3は、層ごとに反射強度を補正する処理の流れを示すフローチャートである。
【0091】
図3に示すように、演算部27bは、深さ方向の反射強度の分布を複数の層に分割する(ステップS31)。図4は、深さ方向の反射強度の分布を複数の層に分割する例を示す図である。図4に示す例では、被計測体22の計測光28が入射する表面22aから深さ方向に、順に層H1、層H2、層H3、層H4が存在する。
【0092】
被計測体22が歯の場合、演算部27bは、例えば、歯のエナメル質層、象牙質層、セメント層、歯槽骨層に対応する位置を、それぞれ層H1、層H2、層H3、層H4として、分割することができる。すなわち、同一の性質をもつ領域を1つの層として分割することができる。演算部27bは、例えば、深さ方向において、反射強度が急変している箇所を境界として、反射強度の分布を複数の層に分割することによって、同一の性質をもつ領域を1つの層として分割することができる。
【0093】
演算部27bは、表面22a直下の1番目の層H1について、透過係数を求める(ステ
ップS32)。層H1において、表面22aから入射する計測光28の強度をIH1とすると、層H1へ入射した光のうち、層H1を透過する透過光の強度I´H1は、下記(数8)で表される。
【0094】
【数8】
【0095】
そこで、演算部27bは、1番目の層H1の透過係数μH1を、表面22aでの反射強度
を表す輝度bH1と層H1の最深部での反射強度を表す輝度b'H1および層H1の深さzH1を用いて、例えば、下記(数9)で算出することができる。
【0096】
【数9】
【0097】
なお、透過係数μH1を求める方法は、上記(数9)を用いる方法に限られない。例えば、上記(数9)の最深部での反射強度を表す輝度b'H1の替わりに、層H1内の複数の位置での輝度を用いて、層H1内の深さが異なる複数の位置でにおける透過係数を算出し、これらの平均値を層H1における透過係数とすることもできる。また、深さ方向と垂直な面内に隣り合う適切な領域の透過係数を求め、それらの平均値を透過係数としてもよい。これはアーティファクトを除去するのに有効な方法である。例えば、深さ方向と垂直な方向における透過係数の平均値を用いて後述の補正処理を行うことで、OCT装置による計測画像で、計測光方向に線状あるいは帯状に現れるアーティファクトを除去することができる。
【0098】
層H1を透過する透過光の強度I´H1は、層H2に入る入射光の強度IH2と等しいので、IH2は、下記(数10)で表される。
【0099】
【数10】
【0100】
次に、演算部27bは、1番目の層H1における透過係数を用いて、2番目の層H2の反射強度を補正する(ステップS33)。演算部27bは、例えば、層H2内の最表面における反射強度を表す輝度bH2を用いて、上記(数10)に基づいて、下記(数11)でBH2を算出し、層H2の輝度をBH2に補正することができる。
【0101】
【数11】
【0102】
同様に、演算部27bは、層H2および層H3について、ステップS32、S33の処理を繰り返す。すなわち、演算部27bは、層H2の透過係数を求める処理(ステップS32)と、層H3の反射強度を補正する処理(ステップS33の)とを繰り返す。これにより、2番目以降の層について、反射強度が補正される。なお、最初の層H1の輝度BH1
は上記に基づき、層H1の最表面の輝度bH1を用いてBH1=bH1に補正される。
【0103】
なお、ステップS33の補正処理に用いられる透過係数は、必ずしも計算によって求める必要はない。例えば、層ごとの透過係数の値を予め記録部27cに記録しておき、その値を用いて補正処理を行うこともできる。
【0104】
なお、各層の厚さは必ずしも被計測体の特徴的な厚みにする必要は無い。例えばエナメル質の厚みは約0.5〜2mmであるが、これを5〜20分割して0.1mmの層に分割しても良い。この場合、各層の輝度は実物と異なって段階的に変化するアーティファクトが生じるのでこれを1次直線的にまたは2次曲線的にスムージングしても良い。
【0105】
(画像表示の例)
次に、演算部27bが、光検出器41で検出されたデータに基づいて生成した被計測体22の画像を表示する場合の処理の例を説明する。図5は、演算部27bが、被計測体22の画像を表示する処理の一例を示すフローチャートである。図5に示すように、演算部27bは、被計測体22の形状を表す3次元データを記録部27cから取得する(ステップS41)。3次元データは、例えば、各座標における反射強度を表す値で表される。
【0106】
演算部27bは、取得した3次元データから反射強度が急変している曲面を抽出する(ステップS42)。演算部27bは、抽出した曲面をつなげて閉曲面を構成する(ステップS43)。閉曲面が構成できない場合(ステップS44でNOの場合)は、演算部27bは、記録部27cに予め記録されている歯科形状データを参照して、閉曲面を補完する(ステップS45)。歯科形状データは、例えば、歯科形状ルール集や、歯科形状ライブラリ等である。図6は、歯科形状ルール集のデータ構造の一例を示す図である。図6に示す例では、エナメル質層、象牙質層、セメント質層、歯槽骨のそれぞれについて、部位、厚さ、形状、反射率(相対値)を表すデータが記録されている。
【0107】
図7は、歯科形状ライブラリに含まれるデータが表す形状の一例を示す図である。図7では、エナメル質層、象牙質層、セメント質層、歯槽骨のデータが、それぞれ表す形状が示されている。
【0108】
演算部27bは、一例として、被計測体22の画像を表す3次元データからある閉曲面の断層像を切り出して、この断層像と、ライブラリに含まれるデータが示す形状との相互相関を算出し、一定の水準に達しているか否かで、その閉曲面が歯牙のどの部位かを特定することができる。前記相互相関は、例えば、双方の形状データの平均値をゼロとした関数の積を含む積分とすることができる。
【0109】
なお、歯科形状データで表される歯科形状は、図6および図7に示す例に限られない。例えば、補綴物、病変部、充填物等の形状を表す歯科形状データが記録部27cに記録されていてもよい。
【0110】
演算部27bは、構成した閉曲面の位置・配置・形状・寸法等が、歯科形状ルール集および歯科形状ライブラリに合致しているか否かを判断する(ステップS46)。これにより、構成した閉曲面に合致する部位が抽出される。その結果、例えば、ある閉曲面は、エナメル質層の歯茎上部である等と特定される。演算部27bは、歯科形状データと、閉曲面とでパターンマッチングすることで、閉曲面が歯牙のどの部位かを特定することができる。同様にして、歯科形状データに、補綴物、病変部、充填物等の形状を表すデータが含まれる場合には、病変部、補綴物または充填物を表す部分を表す閉曲面を抽出することができる。
【0111】
閉曲面がいずれの部位にも合致しない場合(ステップS46でNOの場合)には、演算部27bは、再度、閉曲面の構成(ステップS43)を行う。閉曲面の部位が特定されれば(ステップS46でYES)、演算部27bは、被計測体22中の全部位についての閉曲面が抽出されたか否かを判断する(ステップS47)。
【0112】
全部位について、閉曲面が抽出されていれば(ステップS47でYES)、演算部27bは、各部位を他の部分と視覚的に区別可能な態様で、表示部27aへ表示する(ステップS48)。例えば、各部位を区分けして被計測体22の画像を表示することができる。例えば、各部位ごとに色を変えて表示することによって、区分け表示される。また、区分け表示の他に、特定の部位のみを強調して表示したり、抽出して表示したりしてもよい。このような、被計測体22の区分け、強調または抽出表示により、その表示を見た操作者は、診断がしやすくなる。
【0113】
(プローブユニット200の構造の例)
次に、プローブユニット200の構造について説明する。図8(a)は、図1に示すプローブユニット200の内部構造を表す断面図である。プローブユニット200は、ハウジング47内に備えられたレンズ21a、21b、レンズホルダ210a、210b、ガルバノミラー20a、20b、ガルバノミラー駆動用モータ43a、43bおよびハウジング47外に設けられたマウスピース73およびマウスピースホルダ73aで構成される。
【0114】
レンズホルダ210a、201bは、レンズ21a、21bをプローブユニット200内のハウジング47に固定する。ガルバノミラー駆動用モータ43aは、ガルバノミラー20aを、y軸方向を軸にして回転させ、ガルバノミラー駆動用モータ43bは、ガルバノミラー20bを、xz平面に平行な方向を軸にして回転させる。ガルバノミラー駆動用モータ43bは、スペーサ45によってハウジング47に固定されており、ガルバノミラー駆動用モータ43aは、スペーサ(図示せず)によってハウジング47に固定されている。
【0115】
ガルバノミラー駆動用モータ43a、43bの動作は、例えば、図1に示す計算機27からの信号によって制御される。計算機27は、例えば、ガルバノミラー20a、20bが、あらかじめ決められた角度範囲を回転するように、ガルバノミラー駆動用モータ43a、43bを動作させることができる。
【0116】
また、プローブユニット200は、OCTユニット100と光ファイバ18で繋がっている。光ファイバ18からプローブユニット200内へ入る計測光28は、レンズ21aを通り、ガルバノミラー20a、20bで反射し、レンズ21bを通って被計測体22へ集光される。被計測体22で反射した計測光28の反射成分は、再び、レンズ21bを通り、ガルバノミラー20b、20aで反射し、レンズ21aを通って光ファイバ18へ導かれる。
【0117】
計算機27は、例えば、ガルバノミラー20aを停止させて、ガルバノミラー20bをzy平面に平行な方向を軸に一定の角度ずつ回転させることで、ガルバノミラー20bで反射して被計測体22上へ向かう計測光28を、被計測体22上のy軸方向に走査することができる。また、計算機27は、例えば、ガルバノミラー20bを停止させて、ガルバノミラー20aを、y軸方向を軸に一定の角度ずつ回転させることで、ガルバノミラー20aで反射した後、ガルバノミラー20bで反射して被計測体22上へ向かう計測光28を、被計測体22上のx軸方向に走査することができる。
【0118】
本実施形態においては、プローブユニット200と、ファイバカップラ19等の干渉計を含むOCTユニット100との間が1本の光ファイバ18で結ばれた構造であるため、プローブユニット200は、被計測体22の位置および形状に合わせて柔軟に移動することができる。さらに、プローブユニット200は、x軸方向およびy軸方向の走査手段を内蔵する。そのため、被計測体22の深さ方向(z軸方向)を含む3次元情報取得が可能となる。3次元情報のうち、1次元の情報は電気的・光学的光源波長の走査により、残り2次元の情報はプローブユニット200での機械的走査によって得られる。これにより、OCTユニット100の位置に拘束されない計測が可能になるとともに、被計測体の3次元情報の取得も可能となる。これは、歯科領域においては、格別のアドバンテージを得る。
【0119】
なお、y軸方向およびx軸方向の走査方法として、ガルバノミラー20a、20bを駆動する方法の他に、後述するシリンドリカルレンズを用いる方法や、レンズを駆動する方法、光ファイバを駆動する方法、被計測体22を駆動する方法、または、操作者がプローブユニット200を動かす方法等を用いることができる。また、ガルバノミラー20a、20bを駆動する方法は、上記のガルバノミラー駆動用モータ43a、43bを用いる場合に限られない。
【0120】
ここで、y軸方向の走査方法の変形例として、レンズを駆動する方法を説明する。
【0121】
図9は、レンズを駆動する方法の一例を説明するための概念図である。レンズ30の一方の端部にリニアアクチュエータ31が接続され、レンズ30の他方の端部は装置に固定されている。リニアアクチュエータ31が、z方向に駆動する結果、レンズ30は回転軸32を中心に円弧状の往復運動を行う。レンズ30の円弧状往復運動の結果、レンズ30の光軸がzy平面内で運動し、被計測体をy方向に走査する。
【0122】
被計測体22の3次元構造を得るには、光源15の波長走査によるz軸方向の走査と、y軸方向の機械的走査とに加えて、x軸方向の走査を行う必要がある。x軸方向の走査は、y軸方向の走査同様にガルバノミラー20をx軸方向にも駆動させることによって、x軸方向の走査を行うことができる。また、x軸方向の走査においても、y軸方向の走査方法の例と同様の方法を用いることができる。上記のy軸方向の走査方法の例の中から適切なものを組み合わせて、y軸およびx軸方向の走査を行うことができる。
【0123】
なお、図8(a)に示す例のように、プローブユニット200内に2方向の走査手段を設ける構成は、FD−OCT装置に限らず、従来のOCT装置にも適用することができる。
【0124】
(マウスピースの構成の例)
次に、図8(a)に示すプローブユニット200の外側に設けられているマウスピース73およびマウスピースホルダ73aについて説明する。図8(b)は、プローブユニット200をx軸方向から見た場合の平面図である。図8(a)および(b)に示すように、マウスピースホルダ73aは、プローブユニット200のハウジング47に固定されている。マウスピースホルダ73aの先には、マウスピース73が設けられている。マウスピース73のx軸方向から見た平面形状は、例えば、人間の歯列の形状に合うような、馬蹄形をしている。すなわち、マウスピース73は、歯列の形状に合わせて湾曲した形状を有する。また、マウスピースは特定の患者の歯列の印象(型)によって作成されたものが好適である。
【0125】
被計測体22が生体の歯である場合、被計測者が、マウスピース73の形状に歯列を沿わせてマウスピース73を噛むことにより、被計測体22である被計測者の歯と、プローブユニット200との相対位置が固定される。このように、プローブユニット200と被計測者の歯との3次元的な位置関係が固定された状態で、プローブユニット200から計測光28が被計測体22である歯に照射される。これにより、計測光28に対して被計測体22が正確に位置付けされる。
【0126】
したがって、プローブユニット200を動かすことにより、計測光28の照射位置を被計測体22の形状に合わせて柔軟に変化させることができるとともに、被計測者が、被計測体22である歯で、マウスピース73を噛むことで、プローブユニット200と被計測体22との相対位置を固定することができる。
【0127】
マウスピース73は、弾力性のある材料で形成されることも好ましい。これにより。マウスピース73が歯で噛まれた際に、歯がマウスピース73に食い込むので、被計測体22である被計測者の歯と、プローブユニット200との相対位置が安定して固定される。
【0128】
なお、マウスピース73およびマウスピースホルダ73aの構成は、図8(a)および(b)に示す形状に限られない。図10は、マウスピース73およびマウスピースホルダ73aの他の構成例である。図10に示す例では、マウスピース74とマウスピースホルダ74aとが接する箇所が、図8(b)に示す例と異なっている。図8(b)に示すマウスピース73は、湾曲部の頂点がマウスピースホルダ73aに固定され、前歯部が被計測体22となる構成になっているが、図10ではマウスピース74の湾曲部の横側がマウスピースホルダ74aに固定され、犬歯や臼歯部が被計測体22となる構成になっている。
【0129】
また、プローブユニット200と被計測体22とを固定する手段として、マウスピースの他に例えば、シーネおよびシーネホルダを用いることができる。図11(a)は、マウスピースの代わりにシーネを用いた場合のプローブユニット200の断面図である。図11(b)は、図11(a)に示すプローブユニット200をx軸方向から見た平面図である。
【0130】
図11(a)および(b)に示す例では、ハウジング47にシーネホルダ75aが固定されている。シーネホルダ75aの先端には、シーネコア75bが設けられている。シーネコア75bと歯の間には、接着部材75cが設けられる。接着部材75cは、歯の形状に適合する形状であることが好ましい。接着部材75cとして、例えば、市販の即時重合レジンを用いることができる。なお、接着部材75cは、プローブユニット200の構成要素ではない。
【0131】
このように、接着部材75cを、被計測体22を含む歯列の形状に合うような形状に形成することによって、歯列に対するプローブユニット200の位置・方向を安定させることが可能である。また、一端、プローブユニット200を、被計測体22から遠ざけた後に再び近づけて、接着部材75cを、被計測体22を含む歯列にはめることで、被計測体22に対して、前回と同じ位置および同じ向きにプローブユニット200を配置することができる。
【0132】
例えば、被計測者である患者の再来院した場合等に、前回の計測時の、被計測体22に対するプローブユニット200の向きおよび位置を再現することができる。再計測および経過観察において、過去の計測に対して再現性のある計測が可能となる。つまり、例えば治療前と治療後、治療完了後の1週間後・1ヶ月後・1年後での計測においての治療部位の変化を診断する場合に、同じ位置・方向での計測が可能となる。これは、治療後に疾患が生じたことを把握できることだけでなく、治療ミスが無い(あるいはある)ことを客観的に証明するための証拠としても有効である。なお、マウスピースについても、歯列に合う形状に形成することもできる。
【0133】
例えば、被計測体22が、咬合状態の歯である場合などは、図8(a)に示すように、被計測者がマウスピース73を噛むことによってプローブユニット200と被計測体22と位置を固定することができない。そのような場合に、例えば、図11に示すようなシーネホルダ75aおよびシーネコア75bを固定手段に用いることができる。
【0134】
なお、マウスピースホルダ73aおよびシーネホルダ75aは、プローブユニット200から取り外し可能で、互いに取り替えることができる構成にしてもよい。また、マウスピースホルダ73aおよびシーネホルダ75aを取り外し可能とすることで、マウスピースホルダ73aおよびシーネホルダ75aを取り外して滅菌処理を行うことができる。また、マウスピースホルダ73aおよびシーネホルダ75aを取り外し可能で、ディスポーサブル(使い捨て)であってもよい。マウスピースにディスポーサブルのカバーを装着して使用することもできる。
【0135】
(口角鉤を備えるマウスピースの例)
マウスピースまたはシーネに、プローブユニット200の計測光28の出射口と被計測体22との間に、例えば、唇などの障害物が位置するのを防ぐための口角鉤を設けることができる。図12(a)は、口角鉤76が設けられたマウスピース73およびマウスピースホルダ73aのyz平面における断面図である。図12(b)は、図12(a)に示すマウスピースホルダ73aおよび口角鉤76のB−B線に沿う断面を示す図である。図12(a)および(b)に示すように、口角鉤76は、マウスピースホルダ73aを中心とするリングである。口角鉤76は、リングの内側とマウスピースホルダ73aとを接続する接続部76aによって、マウスピースホルダ73aに固定されている。
【0136】
図12に示す構成により、例えば、被計測体22である歯を有する被計測者がマウスピース73を噛んだ状態で、被計測者の唇が口角鉤76のリングの外側で止まり、口角鉤76のリングの内側に侵入しない。すなわち、被計測者の口が口角鉤76によって強制的に開けられた状態となる。そのため、リングの内側にある計測光28の光路に、被計測者の唇が侵入することが防止される。図12(b)において、点線の丸印28aは、z方向に進む計測光28の断面を表している。
【0137】
なお、上記例のように、プローブユニット200内にマウスピースやシーネ等の固定手段を設ける構成は、FD−OCT装置に限らず、従来のOCT装置にも適用することができる。
【0138】
(マウスピースの変形例)
図13は、マウスピースの変形例を示す断面図である。図13に示すマウスピース78は、内部に空洞を有するように、筒状に形成されている。マウスピース78は、プローブユニット200からの計測光28がマウスピース78内部の空洞に照射されるように、プローブユニット200のハウジング47に固定されている。マウスピース78の側面には、計測光28が通るための穴78aが設けられている。また、マウスピース78の内部には、計測光28を穴78aへ導くための対物ミラー82eが設けられている。
【0139】
例えば、被計測体22が歯である場合、被計測者が穴78aを被計測体22である歯で覆うように噛むことで、被計測体22とプローブユニット200との相対位置が固定される。
【0140】
また、プローブユニット200から出た計測光28は、対物ミラー82eで反射し、穴78aからマウスピース78の外部にある被計測体22へ照射される。被計測体22で反射した計測光28の反射成分は、穴78aからマウスピース78内の空洞に入り、対物ミラー82eで反射してプローブユニット200内へ導かれる。
【0141】
図8に示すマウスピース73は、歯または歯茎の唇側面に計測光28を照射するのに適しているのに対して、図13に示すマウスピース78は、歯または歯茎の咬合面に計測光28を照射するのに適している。
【0142】
(プローブユニットの変形例)
図14は、本実施形態におけるプローブユニットの変形例を示す断面図である。図14に示すプローブユニット203は、ハウジング47から突出したガイド48をさらに備える。ガイド48の先端には、計測光28が出入りするための窓を有する光照射部48aが設けられている。計測光28が出入りするための窓は、光照射部48aのプローブユニット203側の面に設けられている。ガイド48および光照射部48aは、計測光28の進む向きを変更するための中間ミラー81aおよび対物ミラー82aを備える。
【0143】
レンズ21bを通ってハウジング47から出た計測光28は、中間ミラー81aおよび対物ミラー82aで反射することにより、進む向きを180度変えて、光照射部48aの窓から出射する。図14に示すプローブユニット203の構成により、例えば、歯の舌側面等の入り組んだ位置にある被計測体22を測定することができる。
【0144】
また、ガイド48の上面および下面には、マウスピース77およびマウスピースホルダ77aが設けられており、例えば、被計測体22である歯を有する被計測者が、上下の歯で、ガイド48を挟むようにして、噛むことができる。これにより、プローブユニット203と、被計測体22である歯との相対位置が固定される。
【0145】
(マウスピースの他の変形例)
また、プローブユニットが、マウスピース73またはシーネコア75bに固定され、歯列に沿うべく形成されたガイドに沿って移動可能な構成にすることができる。例えば、図8(b)において、マウスピースホルダ73aおよびプローブユニット200がマウスピース73の形状に沿ってスライドする構造も好適である。
【0146】
図15(a)は、マウスピースホルダ73aおよびプローブユニット200がマウスピース73の形状に沿ってスライドする構造の例を示す図である。図15(b)は、図15(a)に示すマウスピースホルダ73aおよびマウスピース73のxz平面における断面図である。
【0147】
図15(a)、(b)に示すマウスピース73には、ガイド溝73cが形成されている。ガイド溝73cは、マウスピース73を噛む歯の歯列に沿うようにU字形に形成されている。プローブユニット200には、マウスピースホルダ73aが固定されている。マウスピースホルダ73aの先端は、上部と下部に分かれており、マウスピース73を上下に挟むことができる形状となっている。マウスピースホルダ73aの先端の上部と下部のそれぞれにツメ73bが設けられている。ツメ73bは、マウスピース73のガイド溝73cにはまる大きさである。そのため、マウスピース73は、ツメ73bによってマウスピースホルダ73aに固定される。
【0148】
マウスピースホルダ73aは、その先端でマウスピース73を挟んだ状態において、その内側に空洞73dができる構造となっている。マウスピースホルダ73aの空洞73d部分に向かって、上下から力が加わると、ツメ73bがマウスピース73を挟む力が緩む。例えば、操作者が、指でマウスピース73の空洞73d部分を押すことによって、マウスピース73のマウスピースホルダ73aに対する固定が緩和される。固定が緩和されると、操作者は、ガイド溝73cに沿ってマウスピースホルダ73aを動かすことができるようになる。操作者が指を離すと、ツメ73bはガイド溝73cに深く嵌まるので、マウスピース73は、マウスピースホルダ73aに固定される。
【0149】
上記構成により、マウスピースホルダ73aおよびプローブユニット200がマウスピース73のガイド溝73cに沿ってスライドすることができる。その結果、マウスピース73を噛む歯列において複数の歯の計測が可能となる。
【0150】
また、図16に示すように、マウスピースホルダ73aを、直角に曲げた形状にすることもできる。この場合、図示しないが、プローブユニット200に、図14に示したような、ミラー81aを有するガイド48が設けられることが好ましい。これにより、プローブユニット200から出た計測光の光軸を90度曲げることができる。その結果、例えば、口腔の開口部からプローブユニット200を侵入させ、計測光を臼歯部に斜めにあてることができる。
【0151】
(スペーサを固定部材に用いる例)
プローブユニット200と被計測体を固定する固定部材として、マウスピースやシーネの他に、例えば、スペーサを用いることができる。図17(a)は、スペーサを固定部材に用いた場合のプローブユニット200の断面図である。図17(a)に示す例では、スペーサ211がプローブユニット200に固定されている。スペーサ211の先端は、被計測体22に接するための面が形成されている。スペーサ211の長さは、レンズ21bの焦点距離に応じて決定される。すなわち、スペーサ211が被計測体22に接した状態で、レンズ21bによって集光される計測光28の焦点が被計測体22の表面または内部にくるように、前記スペーサ211の長さが決められる。
【0152】
上記のマウスピースを固定部材とした場合、被計測体22である上下の歯でマウスピースを噛んだ状態で固定されるので、より安定して固定できる反面、一旦固定するとプローブユニット200の計測位置を変えるのに手間がかかる。これに対して、スペーサ211を固定部材として用いる場合は、スペーサ211が被計測体22に接することでプローブユニット200の位置が固定されるので、プローブユニット200の計測位置を変えやすくなる。すなわち、操作者は、プローブユニット200の計測位置を自由に操作でき、かつ、計測時にはその計測位置を固定することができる。
【0153】
図17(b)は、スペーサを備えるプローブユニットの変形例を示す断面図である。図
17(b)に示すプローブユニット203は、図14に示したプローブユニット203と同じである。図17(b)に示すプローブユニット203には、マウスピースホルダ77aおよびマウスピース77の替わりに、スペーサ211が設けられている。被計測体22をスペーサ211の一部に当てることにより、プローブユニット203の被計測体22に対する位置と方向を固定することができる。
【0154】
図18(a)および(b)は、スペーサを備えるプローブユニットの変形例を示す図である。図18(a)に示すプローブユニット206は、光ファイバ18からの計測光を被計測体22へ導くためのレンズ21a、21bを備える。また、プローブユニット206には、計測光28を出射するための窓206aが設けられている。窓206aが設けられた面には、スペーサ211が固定されている。
【0155】
図18(a)に示すプローブユニット206において、ファイバ18から出た計測光28は、レンズ21aでコリメートされ、レンズ21bで集光され、被計測体22へ導かれる。スペーサ211の計測光28の光軸方向における長さは、レンズ21bの焦点距離に応じて決められる。すなわち、スペーサ211が被計測体22に接した状態で、被計測体22の内部にレンズ21bの焦点が来るように、スペーサ211の長さが決められる。
【0156】
図18(a)に示すプローブユニット206は、計測光を、x軸方向またはy軸方向の走査する手段を有していない。操作者は、プローブユニット206を手で持った状態でx軸方向またはy軸方向に移動させることで走査することができる。この場合、操作者は、スペーサ211が被計測体22に接した状態でプローブユニット206を移動させることにより、被計測体22とプローブユニット206との距離を一定に保ったまま走査することができる。これにより、操作者が手に持って被計測体22に対してフリーにかざすタイプのプローブユニットにおいて、高解像度・高到達度(計測光を到達させ反射光を捕らえられる最大深さ)の測定が可能になる。
【0157】
図18(b)に示すプローブユニット207は、レンズ21a、21bおよび計測光28の光軸の方向を90度変更するミラー83を備える。プローブユニット207には、ミラー83によって光軸が変更された計測光28を出射するための窓207aが設けられている。窓207aが設けられた面には、スペーサ211が固定されている。
【0158】
図18(b)に示すプローブユニット207において、ファイバ18から出た計測光28は、レンズ21aでコリメートされ、ミラー83で反射した後、レンズ21bで集光され、被計測体22へ導かれる。スペーサ211が被計測体22に接した状態で、被計測体22の内部にレンズ21bの焦点が来るように、スペーサ211の長さが決められる。
【0159】
(回転体を備えるプローブユニットの例)
図19は、本実施形態におけるプローブユニットの他の変形例を示すxz平面における断面図である。図19に示すプローブユニット204のハウジング471は、yz平面における断面が円形である円筒形に形成されている。プローブユニット204には、回転体131が取り付けられている。
【0160】
回転体131も、yz平面における断面が円形である円筒形である。回転体131の先端部は、ドーム形状で塞がれている。回転体131のハウジング側端部の内径に沿って、円筒形の回転体保持具154が設けられている。回転体保持具154の一部は、回転体131の内部から突出しており、この突出している部分とハウジング471との間にベアリング153が設けられている。これにより、回転体131は、円筒の中心軸の方向を回転軸として回転可能となっている。
【0161】
回転体131のハウジング側端部の外径に沿ってモータ回転子151が設けられている。ハウジング471の内径であって、このモータ回転子151に対応する部分には、モータ固定子152が埋込まれている。これらのモータ回転子151およびモータ固定子152が、回転体131を回転させる駆動部である。
【0162】
ハウジング471の光ファイバ保持部471aで保持された光ファイバ18は、回転体131の内部に、回転体の回転軸方向に導かれている。光ファイバ18の先端部には、光ファイバ18から出る計測光28を平行光にコリメートするレンズ21cが設けられている。レンズ21cは、レンズホルダ210cによって回転体131内部に固定されている。
【0163】
また、回転体131の内部には、対物ミラー82bが設けられている。対物ミラー82は、光ファイバ18から出射した計測光28の光路を、回転体131の回転軸方向から、回転軸と一定の角度を有する方向へ変える。
【0164】
回転体131の側面には、対物ミラー82bで光路の方向が変えられた計測光28を回転体131の内部から外部へ照射するための照射口131aが設けられている。照射口131aには、レンズ21dが設けられている。
【0165】
上記の構成により、光ファイバ18から出射し、回転体131の回転軸方向へ進む計測光28は、対物ミラー82bで反射して、回転軸方向と一定の角度を有する方向へ進む向きを変える。進む向きを変えた計測光28は、照射口131aのレンズ21dを通って、回転体131の外へ出て、被計測体22に集光される。
【0166】
また、被計測体22で反射した計測光28の反射成分は、照射口131aからレンズ21dを通って回転体131内部へ入る。照射口131aから回転体131へ入った計測光28の反射成分は、対物ミラー82bで反射して、進む向きを回転体131の回転軸方向へ変える。進む向きを変えた計測光28の反射成分は、レンズ21cで集光され光ファイバ18へ入射し、OCTユニット100へ導かれる。
【0167】
回転体131が、モータ回転子151およびモータ固定子152によって、回転させられると、照射口131aから照射される計測光28は、その回転方向へ移動する。その結果、計測光28は、被計測体22のy軸方向へ走査される。
【0168】
なお、回転体131内に、例えば、対物ミラー82bを、y軸方向を回転軸として回転させるアクチュエータが設けられてもよい。対物ミラー82bを回転させることで、対物ミラー82bから被計測体22へ向かう計測光28の光軸と、回転体131の回転軸との角度を変化させることができる。前記アクチュエータが対物ミラー82bを、y軸方向を回転軸として回転させることにより、被計測体22において、計測光28をx軸方向へ走査することができる。
【0169】
なお、x軸方向への走査手段は上記の方法に限られない。例えば、回転体131は、対物ミラー82bまたはレンズ21cを回転体131の回転軸方向へ平行移動させるアクチュエータを備えてもよい。
【0170】
図19に示すプローブユニット204によれば、被計測体22が、例えば、顎口腔領域の組織ように、狭い場所に存在する場合でも、回転体131を使って被計測体22を測定することができる。
【0171】
(回転体の変形例)
図20は、回転体の変形例を示す断面図である。図20に示す回転体132は、可撓性のある材料で形成されている。そのため、回転体132の回転軸を曲げて、計測光28を照射する方向を調節できるようになっている。また、回転体132の回転軸方向の長さは、図19に示す回転体131に比べて長いことが好ましい。
【0172】
回転体132の照射口132a付近には、回転体132の外周を覆う円筒状のスリーブ161が設けられている。スリーブ161と回転体132との間にはベアリング162が設けられている。これにより、回転体132が回転しても、その回転運動はスリープ161に伝わらない。したがって、スリーブ161を固定することによって、回転体132は、その曲がり具合および位置が保たれた状態で回転することが可能になる。その結果、回転体132と被計測体22との相対位置を固定した状態で、被計測体22を計測することが可能となる。
【0173】
例えば、操作者がスリーブ161を手に持って回転体132を適切な位置に保持した状態で、被計測体22を計測することができる。また、スリーブ161を据え置きの台やポール、または診療台に固定された多関節アームの先端に固定された状態で、被計測体22を計測することができる。
【0174】
図20に示す回転体132によれば、被計測体22の計測対象部分に合わせて、計測光28を照射する向きおよび位置を柔軟に変えることができるとともに、計測時には、回転体132と被計測体22との相対位置を固定することが可能となる。したがって、被計測体22が、例えば、顎口腔領域の組織ような複雑な形状をした物である場合に、本変形にかかる回転体132を備えるプローブユニット205は有効に活用されうる。
【0175】
(スリーブの変形例)
図21は、スリーブの変形例を示す断面図である。図21に示すスリーブ163は、回転体132の照射口132aおよび先端部を全て覆うように回転体132の外周に設けられている。スリーブ163は回転体132の外周を覆う円筒であって、その先端部は、ドーム形状で塞がれている。スリーブ163と回転体132との間には、ベアリング162が設けられている。そのため、スリーブ163は、回転体132が回転しても、それに連動して回転しない。
【0176】
また、スリーブ163の側面であって、回転体132の照射口132aに対応する部分には、計測光28が通るための2つの窓163a、163bが互いに対向する位置に形成されている。被計測体22が窓163aまたは窓163bを覆うようにスリーブ163に接することにより、被計測体22と回転体132との相対位置関係が固定される。
【0177】
例えば、被計測体22が被計測者の口腔内の歯または顎提(歯が抜けた状態での歯茎部分)である場合、被計測者が、スリーブ163を、被計測体22である上下顎歯列または顎堤で、窓163aおよび窓163bを覆うように噛むことで、回転体132と被計測体22との相対位置を固定することができる。その際、回転体132は、被計測体22との相対位置が固定された状態で回転することができるので、計測光28を被計測体22上でy方向について安定して走査させることができる。
【0178】
なお、スリーブ163は、回転体132の全体を覆うように設けられても良い。その場合、スリーブ163の根元は、ハウジング471に固定されることが好ましい。また、その場合、スリーブ163は、回転体132と同様に、可撓性を有する材料で形成されることが好ましい。
【0179】
また、上記の回転体131、132およびスリーブ161、163は、円筒形である場合について例示したが、これらの形状は円筒形これに限定されない。例えば、これらの形状を角柱等にすることができる。
【0180】
本実施形態ではプローブユニット200、203、204、205は、可撓性の光ファイバ18を通してOCTユニット100と接続されており、ハンズフリーな構成としている。この構成に替えて、例えば、プローブユニット200が、据え置きの台やポールもしくは診療台に固定される構成であってもよい。この場合、被計測者(患者)が固定されたプローブユニット200のマウスピース73を噛むことにより、プローブユニット200と被計測体22である歯との相対位置が固定される。また、この場合には計測光28は必ずしも光ファイバ18でOCTユニット100とプローブユニット200間を導光される必要はなく、空中を導光されても良い。すなわち、実施の形態2で後述するように、ファイバカップラ19の代わりにビームスプリッタが用いられてもよい。この場合は、シリンドリカルレンズを用いて、X軸方向またはY軸方向の機械的操作を省略することが好ましい。
【0181】
また、プローブユニット200は据え置きの台、ポールもしくは診療台に固定された多関節アームの先端に固定されていても良い。この場合には計測光は光ファイバ18でOCTユニット100とプローブユニット200間を導光される。
【0182】
(実施の形態2)
図22は、実施の形態2におけるFD−OCT装置の構成の一例を表す図である。図22において、図1に示すFD−OCT装置と同じ部分には、同じ番号を付し、その説明を省略する。
【0183】
図22に示すFD−OCT装置が図1に示すFD−OCT装置と異なる点は、シリンドリカルレンズ33が設けられている点と、ファイバカップラ19の代わりにビームスプリッタ34が用いられている点と、y軸方向の走査を行うガルバノミラーが設けられていない点と、光検出器42が2次元の光検出器である点である。
【0184】
実施の形態1においては、y軸方向の走査方法として、ガルバノミラー20bを駆動させる方法を用いていたが、本実施の形態においては、ガルバノミラー20bによるy軸方向の走査に替えて、シリンドリカルレンズ33によるy軸方向への光拡張を採用している。
【0185】
シリンドリカルレンズ33は、レンズとして機能する方向と光軸を含む平面内での断面は通常のレンズであり、この断面形状はレンズとして機能しない方向における位置によらず同一である。シリンドリカルレンズ33は、レンズとして機能する方向が、y方向となる様に配置する。つまり、シリンドリカルレンズ33によってy方向に広げられた光が被計測体22のy方向に分布照射される(シリンドリカルレンズ33上のy方向と被計測体22のy方向は、光学的に同一な方向であり、必ずしも空間的に同一の方向ではない)。シリンドリカルレンズ33がy方向光拡張手段になっている。計測光の断面は、y軸方向に沿う線状となる。
【0186】
なお、シリンドリカルレンズ33と同様の機能を、シリンドリカルミラーを用いて実現することもできる。
【0187】
計測光はy軸方向に空間的に拡張された光であるために、この光を光ファイバで導光する場合には、この光ファイバ18は、断面を1次元線上に束ねた光ファイバ、または断面を2次元円形に束ねた光ファイバであることが必要となる。なお、図22に示すFD−OCT装置では、計測光28および参照光29を光ファイバで導いかれているが、必ずしも光ファイバを用いる必要はない。すなわち、FD−OCT装置は、計測光28および参照光29を、光ファイバを用いずに空間伝播させる構造であってもよい。
【0188】
前記計測光28は、被計測体22のy軸方向に分布照射されるので、y軸方向に機械的走査をしなくても、被計測体22のy軸方向の断面を2次元の光検出器42で得ることができる。そのため、ガルバノミラー20aがx軸方向に走査を行うだけで、被計測体22の3次元的立体構造を得ることができる。
【0189】
その結果、装置が、簡単かつ安価になり、歯科測定に適用できるFD−OCT装置が得られる。
【0190】
なお、本実施に形態にかかるFD−OCT装置は、歯科用に好ましく用いられるが、歯科測定に限られず、他の分野の測定に用いることもできる。また、本実施の形態においては、FD−OCT装置について説明を行ったが、必ずしもFD−OCT装置である必要はなく、従来のOCT装置でもよい。
【0191】
(実施の形態3)
図23は、実施の形態3におけるFD−OCT装置の構成の一例を表す図である。図23において、図1に示すFD−OCT装置と同じ部分には、同じ番号を付し、その説明を省略する。
【0192】
図23に示すFD−OCT装置が図1に示すFD−OCT装置と異なる点は、光源光偏光操作器35、参照光偏光操作器36、干渉光偏光操作器37が設けられている点である。
【0193】
図24(a)は、光源光偏光操作器35の構成を示す概略図である。図24(a)において、偏光子67は、特定の偏光成分のみを通過させる部材であり、1/2波長板68は、通過光の波長を1/2波長だけずらす部材であり、1/4波長板69は通過光の波長を1/4波長だけずらす部材である。偏光子67によりまず、光源光または計測光28に基本偏光特性が与えられる。さらに1/2波長板68、1/4波長板69を光軸まわりに適切な角度で回転させることにより、偏光の方向を操作することができる。これらの波長板68、69を使うことで、光源光または計測光の偏光状態を任意に設定することができる。
【0194】
図24(b)は、参照光偏光操作器36または、干渉光偏光操作器37の構成を示す概略図である。これらは、1/2波長板70および1/4波長板71により構成され、これらの角度を調整することにより、反射光の偏光状態を調べることが出来る。
【0195】
一般に光の偏光状態は4成分のベクトル(4次元ベクトル)Siで表すことが出来る。ある偏光状態にある光が物体に入射した場合にその透過光、反射光はその物体との相互作用により偏光状態が変化する。つまり、反射光の偏光状態を表す4次元ベクトルS0は、入射光の偏光状態を表す4次元ベクトルSiとは異なるものとなる。従って、物体の「偏光状態を変化させる特性(例えば、複屈折特性)」は4×4のマトリクスM(ミュラー行列)で表現することが出来る。つまり、ベクトルSiで表される偏光状態を持つ光をマトリクスMで表される複屈折特性を持つ物質に入射したとき、その物質から出てくる光の偏光状態を表すベクトルS0は、S0=M×Siによって求められる。
【0196】
そこで、ある物質の複屈折特性を表すマトリクスMを測定するためには、任意の4つのベクトルで表される偏光状態を持つ光に物質を通過させ、通過後の光の4つのベクトル成分を検出すればよい。物体の各計測点でこのミュラーマトリクスが計測できる。
【0197】
本実施の形態においては、計測光が少なくとも4種類の独立した偏光状態になる様に計測光路にある光源光偏光操作器35を操作し、参照光偏光操作器36または干渉光偏光操作器37を操作して、これらの偏光状態である4つのベクトル成分による干渉光を観測する様にすれば、これらの関係から16種類のミュラー行列画像が得られる。これは被写体の断層画像各部の「偏光状態を変化させる特性=被写体固有の特性」を表す画像となる。
【0198】
なお、参照光偏光操作器36、干渉光偏光操作器37は、必要に応じていずれか一つだけ設けてもよい。
【0199】
口腔組織を含む生体組織はそれぞれ特有の偏光特性や複屈折特性を持っているので、本実施の形態によれば、歯芽や歯周組織の複屈折特性を検出できる。特にコラーゲンは大きな複屈折特性を持ち、例えばコラーゲンを含まないエナメル質と、コラーゲンを多量に含む象牙質の弁別観察が可能となる。また、口腔組織各部の固有の偏光特性や複屈折特性を反映した16種類の画像を取得可能であり、正常組織の弁別のみならず、う蝕やうっ血等の病変組織の可視化も可能となる。
【0200】
なお、本実施の形態は、図1に示すFD−COT装置に偏光操作器を設ける場合の例について説明したが、本発明は、これに限られない。例えば、図22に示す実施の形態2におけるFD−OCT装置にも適用することができる。
【0201】
(実施の形態4)
図25は、本実施の形態における光源の構成を示す図である。本実施の形態における光源は、OCT装置に用いられる。例えば、図1に示すFD−OCT装置の光源15は、1台の単一波長光源である。これに対し、本実施の形態においては、光源15の代わりに、2以上の互いに異なる波長の光源56a、56b、56cを備える。光源56aは、例えば、830nmを中心波長とする光源、光源56bは、例えば、1300nmを中心とする光源、56cは、例えば、1600nmを中心とする光源である。光源56a、56b、56cは、例えば、チューナブルLD(Laser Diode)であってもよい。光源56a、56b、56cのうちOCT装置によって計測に使用される光源は、回転ミラー57の駆動によって、切り替えられる。すなわち、回転ミラー57の特定の角度に対応する位置に光源56a、56b、56cが配置される。回転ミラー57としてガルバノミラーを用いることができる。
【0202】
ところで、口腔組織、口腔病変組織または口腔補綴物においては、光の吸収係数、透過係数、反射係数の波長依存性が様々である。例えば、800nmの付近の波長の光においては、セメント質や歯槽骨の透過係数が高く、エナメル質や象牙質の反射係数が比較的大きい。また、歯肉等の軟組織は、波長が1300nm付近や1500nm付近の光の透過性が高いので、このような光を光源に使用することは、歯肉下の歯槽骨やさらにその深部の歯芽光組織の観察に最適である。また、う蝕組織においては可視光領域での蛍光特性が正常組織と異なるので、該蛍光の波長に合わせた光源を使用する必要がある。したがって、従来の単一波長の光源を用いたOCT装置では、口腔組織の全ての構造を可視化することは困難であった。
【0203】
本実施の形態におけるOCT装置は、2以上の互いに異なる波長の光源56a、56b、56cを備えるので、光源の波長を適切に選択することにより、例えば、口腔組織・口腔病変組織等のように様々な光の吸収係数、透過係数、反射係数を持つ物質の微細構造を可視化できる。例えば、1300nm〜1500nm付近の長波長の光は、800nm付近短波長の光に比べて散乱しにくい反面、水に吸収されやすい。したがって、1300nm〜1500nm付近の長波長の光は、歯牙、歯槽骨等の硬い組織の計測に好適に用いられる。
【0204】
実施の形態4におけるOCT装置において、以上に説明した部分以外の部分は、実施の形態1〜3にかかるOCT装置または従来のOCT装置を適用することができる。また、光源56a、56b、56cは、上記例の例えば、チューナブルLD(Laser Diode)に限られない。例えば、光源56a、56b、56cは、波長800nm〜16000nmの範囲にあるスーパールミネッセントダイオードであってもよい。
【0205】
(実施の形態5)
図26は、実施の形態5におけるFD−OCT装置の構成の一例を表す図である。図26において、図22に示すFD−OCT装置と同じ部分には、同じ番号を付し、その説明を省略する。なお、本実施の形態は、図22に示すFD−OCT装置だけでなく、実施の形態1〜3にかかるFD−OCT装置、または従来のOCT装置に適用することができる。
【0206】
図26に示すFD−OCT装置が図22に示すFD−OCT装置と異なる点は、パイロット光源59およびハーフミラー58、60が設けられている点と、光検出器42の替わりにCCDカメラ26が設けられている点である。
【0207】
パイロット光源59は、被計測体22に投影するパイロット光を照射するために設けられている。パイロット光とは、OCT装置を使用して計測を行う操作者が、撮影部位、撮影範囲を撮影中または撮影前後に確認するために撮影範囲に照射される光である。パイロット光源59から照射されるパイロット光は、可視光であることが好ましい。
【0208】
パイロット光源59から出たパイロット光は、ハーフミラー58によって、光源15から出た光源光と同一光軸上に導かれる。パイロット光は、光源光、計測光とともに被計測体22に投影される。この投影は目視観測可能であり、計測光と同じ場所が照射されるので、操作者は計測範囲を認識することができる。
【0209】
パイロット光の光軸に垂直な面における断面は点状であっても線状であってもよい。断面が点状のパイロット光であれば、パイロット光は、その光軸を計測光の中心光軸上に配置されることが好ましい。断面が線状のパイロット光であれば、パイロット光の前記断面は、計測光28のy軸方向に沿うように配置されることが好ましい。図26に示すOCT装置は、シリンドリカルレンズ33を採用した形態であるので、パイロット光は、シリンドリカルレンズ33を通ることにより断面線状となって被計測体22に照射される。
【0210】
被計測体22で反射したパイロット光は、計測光28の反射成分とともに再びビームスプリッタ34を経て、干渉光とともにCCDカメラ26へ照射される。干渉光およびパイロット光はCCDカメラ26で検出される。
【0211】
CCDカメラ26は、2次元撮像装置としての可視光に感度帯域のある2D−CCDカメラと、シリンドリカルレンズを採用したFD−OCTに使用する2次元光検出器としての2D−CCDカメラとを兼用することが好ましい。これにより、CCDカメラ26によりFD−OCTによる干渉分光画像とともに歯の可視光画像が得られる。
【0212】
また、2次元撮像装置として可視光に感度帯域のある2D−CCDカメラをCCDカメラ26とは別に設けて、計測光軸上からハーフミラー60等を使って、可視光に感度帯域のある2D−CCDカメラにパイロット光を導くことによって、被計測体22の可視光像を得ることもできる。なお、可視光に感度帯域のある2D−CCDカメラは、300nm〜3000nmに感度帯域のある2次元撮像装置を用いることができる。
【0213】
なお、光ファイバ18は画像を伝送可能なイメージファイバで構成することが好ましい。
【0214】
また、計算機27において、パイロット光による計測部位の画像をモニターすることができる。また、さらにパイロット光による計測部位の可視光像を断層計測画像と同期記録することをもできる。
【0215】
(実施の形態6)
図27は、本実施の形態におけるOCT装置の参照ミラー付近の構成を示す図である。本実施の形態におけるOCT装置においては、参照光路上に位相変調素子を挿入すること、または参照ミラーを光軸方向に移動させることにより、参照光の位相が変化する。図27(a)は、参照光路上に位相変調素子を挿入する場合の装置の構成例を示す図である。図27(a)においては、参照ミラー24の前に位相変調素子62が挿入されている。位相変調素子62は、電気的な駆動信号により駆動する。位相変調素子62として、例えばラピッドスキャニングオプティカルディレイライン(RSOD)、音響光学素子、電気光学素子等が好ましく用いられる。
【0216】
図27(b)は、参照ミラーを光軸方向に移動させることにより、参照光の位相を変化させる場合の装置の構成例を示す図である。図27(b)においては、参照ミラー24に圧電素子63が設けられている。圧電素子63は、電気的な駆動信号により駆動する。圧電素子63が参照光の光軸方向に振動することにより、参照ミラー24が参照光の光軸方向と同じ方向に振動させられる。その結果、参照光の位相が変化させられる。
【0217】
本実施形態によれば、位相変調素子62もしくは圧電素子63により、参照光の位相を変化させることができるので、参照光の位相を、例えば90度ずつずらした5セットの回折分光干渉光強度分布を得ることができる。この回折分光干渉光強度分布を用いて、被計測体の奥行き方向(z軸方向)の形状を計測すると、奥行き方向の計測レンジを2倍に広げることができる。以下にその原理を詳細に説明する。
【0218】
一般に、FD−OCTの計測範囲は原理的には回折素子と対物レンズおよびCCDカメラの分解能により決定され、その結果奥行き方向の計測範囲が決定される。FD−OCTではCCDにより得られた回折素子のξ軸上の光強度分布(1次元または2次元)をコンピュータによりフーリエ変換またはフーリエ逆変換して時間t軸上の分布に変換(つまり、被計測体の奥行きz軸上の反射特性分布に変換)する。この場合、光強度分布はパワースペクトルなので、フーリエ逆変換の結果は、参照光の自己相関と、参照光およびz方向物体反射光の相互相関の複素共役信号が、奥行きz軸方向の分布に基本的な被写体に無関係に装置の欠陥により生じた像(アーティファクト)として重畳してしまう。このため、回折素子上の回折分光干渉像の計測が光強度分布だけではなく光の位相の分布をも計測できたと仮定して、完全な複素フーリエ逆変換を行った場合に比べて奥行き方向の計測レンジが半分になってしまう。
【0219】
回折分光干渉光の位相を直接計測することは、現象があまりにも高速(光の波長を光の速度で割った数フェムト秒以下の現象)であるためにこれを検出できる高速の光検出器は存在しない。そこで、時間的位相現象の代わりに空間的位相に変調を与えて、等価的に回折分光干渉光の位相を間接計測する。すなわち、位相変調素子62もしくは圧電素子63により、参照光の位相を例えば90度ずつずらした5セットの回折分光干渉光強度分布を得ることができる。この回折分光干渉光強度分布を、計算機27において、複素フーリエ逆変換することで、参照光の自己相関と、参照光およびz方向被計測体反射光(計測光の反射成分)の相互相関の複素共役信号によるアーティファクトを除去し、FD−OCT本来の奥行き方向の計測範囲が実現される。
【0220】
また、位相変調の周波数を適切に選んで、CCDの検出信号を同期検波することで、ノイズを除去して分解能を向上し、さらに計測範囲を広げることもできる。
【0221】
本実施形態におけるOCT装置は、以上に説明した部分以外の部分は、実施の形態1〜3にかかるFD−OCT装置または従来のOCT装置を適用することができる。
【0222】
(実施の形態7)
図28は、実施の形態7におけるFD−OCT装置の構成の一例を表す図である。図28において、図1に示すFD−OCT装置と同じ部分には、同じ番号を付し、その説明を省略する。なお、本実施の形態は、図1に示すFD−OCT装置だけでなく、実施の形態1〜3にかかるFD−OCT装置、または従来のOCT装置に適用することができる。
【0223】
図28に示すFD−OCT装置が図1に示すFD−OCT装置と異なる点は、計算機27と光源15との間に電気的変調器64が設けられている点である。
【0224】
計算機27は、電気的変調器64へON/OFF信号と共に光量変調信号を送る。電気的変調器64は、光源15に対して、光量変調信号に基づく光量制御信号を送る。光源15の出力光量は、電気的変調器64から出力される光量制御信号によって制御される。
【0225】
光検出器41で検出されたデータは、光量変調信号に従って計算機27において復調される。この変調・復調により、検出されたデータのS/N比が向上する。
【0226】
変調および復調の方式は、例えば、AM変調、FM変調とすることができる。また、電気的変調器64の代わりに光源15から照射される光の光路上に、光変調器を設けても良い。また、計測光28の反射成分(物体反射光)の光路上または参照光29の光路上に、光変調器を設けても良い。また、被計測体22および参照ミラー24の位置に同期した変調を掛ける変調器を設けてもよい。
【0227】
一般に、OCT装置の計測範囲は、ノイズの影響により狭められる。つまり、計測光は被計測体22に入るに従って減衰するので、z方向物体反射光は被計測体深部になればなるほどノイズに埋もれてしまう。このことによって、奥行き方向の計測範囲は狭まる。
【0228】
本実施の形態によれば、光源光、計測光または参照光に変調が掛けられ、検出信号が検波されるので、S/N比が改善し、計測可能範囲が広がる。
【0229】
(実施の形態8)
図29は、実施の形態8におけるFD−OCT装置の構成の一例を表す図である。図29において、図1に示すFD−OCT装置と同じ部分には、同じ番号を付し、その説明を省略する。なお、本実施の形態は、図1に示すFD−OCT装置だけでなく、実施の形態1〜3にかかるFD−OCT装置、または従来のOCT装置に適用することができる。
【0230】
図29に示すFD−OCT装置が図1に示すFD−OCT装置と異なる点は、参照光29の光路上に非線形光学素子65が設けられている点およびフィルタ66が設けられている点である。非線形光学素子65は、光の振動波形に高調波を生じさせる光学素子であり、例えば、ベータバリウムボーレイトであることが好ましい。
【0231】
また、ファイバカップラ19通過後の干渉光の光路上に光源光の波長成分をカットし、光源光の2分の1波長の波長成分を通過させるフィルタ66が設けられている。
【0232】
一般に、生体は多かれ少なかれ蛍光を発生し、その多くが2次高調波蛍光である。特に歯芽組織においては、う蝕等の病変により、この蛍光特性が変化するものが多い。
【0233】
本実施の形態によれば、非線形光学素子65を参照光上に設けることにより、参照光29の振動波形に高調波が生じる。この参照高調波の中の2次高調波成分と計測光28の反射成分(z方向物体反射光)の2次高調波成分をファイバカップラ19で干渉させる。その結果、被計測体22の蛍光特性をより鮮明に検出することができる。その結果、例えば、う蝕等の病変の断層画像弁別性が向上する。
【0234】
以下のその原理を詳しく説明する。
【0235】
生体は2光子吸収による2次高調波蛍光特性が顕著である。これは、生体構成原子に束縛された電子が計測光の光子2個分に相当するエネルギーを受けて高いポテンシャルエネルギー準位に跳躍し、そこからまた、元の準位に戻るときに発光する蛍光のことである。2次高調波蛍光のポテンシャルエネルギー準位は生体の場合、ほぼ連続的なバンドに近く、ほとんどの波長帯域に準位が存在する。さらにこの2次高調波蛍光に特徴的なのは、入射した計測光と同期した蛍光を発生する、つまりOCT装置としてのコヒーレント性が保持されているということである。この2次高調波蛍光が被計測体22内部から発光し、その一部がz方向物体反射光(計測光28の反射成分)となって戻ってくる。一方で、参照光29の経路上に非線形光学素子65が設けられているので、参照光29の振動波形に高調波が生じる。この参照光29とz方向物体反射光(計測光28の反射成分)との干渉光を計測することで、被計測体22内部の蛍光特性を検出することができる。したがって、例えば、蛍光特性の変化を伴うう蝕等の病変に診断に有効である。
【0236】
(実施の形態9)
実施の形態9におけるOCT装置は、以下に説明する部分以外の部分は、実施の形態1〜3にかかるFD−OCT装置または従来のOCT装置を適用することができるので、その説明を省略する。
【0237】
OCT装置においては、計測により得られた画像が、例えば、計算機27に備えられた表示部27a等により表示される。しかしながら、OCTのOCTの断層画像はそのまま表示したのではいくつかの違和感のある画像となる。本実施の形態におけるOCT装置では、以下のような表示を行うことによって、見やすい画像が提供される。
【0238】
被計測体の画像を表示する際に、計測光が被計測体に入射し到達した部分である光透過部と被計測体深部の計測光非到達部を弁別可能なように表示することが好ましい。
【0239】
また、OCT装置におけるワンショットでの計測範囲は、歯の大きさに比べて小さく、1枚の画像だけではどこをどの方角から撮影したものかの判別が困難である。そのため、複数の画像を合成したものを表示することが好ましい。
【0240】
また、OCTの画像における被計測体の奥行き方向(z軸方向)の距離は光学的距離であり、実際の距離ではない。そのため、光学距離を空間距離に補正したものを表示することが好ましい。
【0241】
また、z方向的に被写体表面から深くなればなるほど、計測光量が減じるのでz方向物体反射光量も減じる結果、画像表示上「暗い」=「反射の少ない」画像部分となる。そのため、奥行き方向を光学的距離または反射量積分値に基づいて濃淡補正をしたものを表示することが好ましい。
【0242】
また、通常のPCのモニタ画面上に表示した場合、特に拡大表示を行った場合には、PCモニタの画面上の解像度にくらべ、計測解像度の方が荒く、点表示または点密度表示または荒い階調表示になってしまう。そのため、点密度による濃淡表示をべた表示に修正したものを表示することが好ましい。
【0243】
また、あくまで計測で得られる画像は、物体の断層画像なので、空間的な位置・方向が把握しにくい。そのため、パイロットモニタ画像上に断層像を立体表示することが好ましい。また、操作者が任意に表示断面を選択できるユーザインターフェースを備えることが好ましい。
【0244】
また、撮影画像には、ノイズが含まれている場合がある。そのため、複数の断層画像をまたは複数の画像を積分平均して時間的なノイズ除去を行うことによって、空間的分解能を向上させたものを表示することが好ましい。また、縦方向(x方向)走査による複数の断層画像を積分平均してx方向の空間的なノイズ除去を行ったものを表示してもよい。さらに、複数の断層画像を積分平均してxおよび/またはy方向のノイズを除去したものを表示してもよい。
【0245】
また、口腔内カメラの画像と組み合わせてOCT装置で撮影、表示することもできる。
【0246】
なお、上記実施の形態を説明するために参照した図1〜16において、図中に表したものや焦点距離の大きさおよび長さの比率は、実物の比率を厳密に表しているものではない。
【0247】
以上述べてきたように、本発明にかかる歯科用OCT装置は、歯牙組織または歯周組織または歯科補綴物である被計測体の表面のみならず、内部の情報を、光を用いて取得し、表示しようとするものである。すなわち、本発明は、被計測体各部における測定分解能スケールの微小部位の歯科学的特性データを取得し、解析し、表示する歯科用光コヒーレンストモグラフィー装置に関するものである。
【0248】
本発明にかかる歯科用OCT装置は、2次元の走査を行うためのアクチュエータをプローブユニット内に備える。また、プローブユニットと被計測体との相対位置の固定にマウスピースまたはシーネが用いられることが好ましい。
【0249】
また、歯科用OCT装置における演算部は、視認性の良い計測画像の表示のために深さ方向の輝度補正を行うことが好ましい。さらに、演算部は、時間的に異なる波長の計測光による計測結果を演算することにより、被計測体の深さ方向の走査を不要にしたり、感度や計測レンジを拡大したりすることができる。すなわち、本発明にかかる歯科用OCT装置は、いわゆるスウェプトソース型OCT装置が歯科へ適用されたものである。
【産業上の利用可能性】
【0250】
本発明は、高速計測が可能であり、かつ簡単な構造で安価な光コヒーレンストモグラフィー装置として、特に歯科の分野で利用可能である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、非破壊断層計測技術の1つである光コヒーレンストモグラフィー(低コヒーレンスな光をプローブとして用いる断層計測)装置に関する。特に、歯科測定に適用することができる光コヒーレンストモグラフィー装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、歯科の診断において、顎口腔領域を撮影するために、X線撮影装置、口腔内カメラ、歯科用カメラ、X線CT、MRI等が使用されてきた。
【0003】
X線撮影装置で得られる像は、あくまで透過像であり、被写体のX線進行方向の情報は、重ねあわされて検出される。そのため、被写体の内部構造を3次元的に知ることができない。また、X線は人体に有害であるため、年間被爆線量が決められており、資格を持った術者しか装置を扱えない上に、鉛・鉛ガラスなどの遮蔽部材に囲まれた部屋でしか使用できない。
【0004】
口腔内カメラは、口腔内組織の表面のみを撮像するので、歯等の内部情報が得られない。X線CTは、X線撮影装置と同様人体に有害である上に、分解能が悪く、装置も大型かつ高価である。MRIは、分解能が悪く、装置が大型かつ高価である上に、水分のない歯の内部構造は撮影できない。
【0005】
ところで、光コヒーレンストモグラフィー装置(以下、OCT装置と称する)は、人体に無害で、被写体の3次元情報が高分解能で得られるため、角膜や網膜の断層計測等の眼科の分野で応用されている(例えば、特開2003−329577号、特開2002−310897号、特開平11−325849号、および特開2001−059714号参照)。なお、OCTは、Optical coherence tomographyの略である。また、光コヒーレンストモグラフィー装置は、光学干渉断層撮影装置と呼ばれることもある。
【0006】
ここで、従来のOCT装置について説明する。図30は、従来のOCT装置の構成を示す図である。図30に示すOCT装置を構成するOCTユニット1において、光源2から射出された光はレンズ3でコリメートされた後に、ビームスプリッタ4により、参照光6と計測光5に分けられる。計測光5は、ガルバノミラー8を経てレンズ9によって被計測体10に集光され、そこで散乱、反射した後に再びレンズ9、ガルバノミラー8、ビームスプリッタ4を通ってレンズ7によって光検出器14に集光される。一方、参照光6は、レンズ12を通って参照ミラー13で反射し、再び、レンズ12、ビームスプリッタ4を通過した後に、計測光5と重なりあってレンズ7に入射し光検出器14に集光される。
【0007】
光源2は、時間的に低コヒーレンスな光源である。時間的に低コヒーレンスな光源から、異なった時刻に出た光どうしは極めて干渉しにくい。そのため、計測光5が通過する光路の距離と、参照光6が通過する光路の距離がほぼ等しいときにのみ干渉信号が現れることとなる。その結果、参照ミラー13を参照光6の光軸方向に動かして計測光5と参照光6の光路長差を変化させながら、光検出器14で干渉信号の強度を計測すると、被計測体10の奥行き方向(z軸方向)の反射率分布を得ることができる。つまり、光路長差走査により、被計測体10の奥行き方向の構造が得られる。
【0008】
被計測体10でz軸方向に反射した計測光5は、その電磁波としての波形上に被計測体10の物体情報を担っている。しかし、計測光5の光波形はあまりにも現象が速すぎて時間軸上で直接計測できる光検出器は存在しない。そこで、OCT装置は、被計測体10で反射した計測光5を参照光6と干渉させることによって、被計測体10各部の反射特性情報が干渉光の強度の変化に変換する。その結果、光検出器14は時間軸上での検出が可能となる。
【0009】
参照ミラー13による被計測体の奥行き方向(z軸方向)の走査に加えて、ガルバノミラー8による横方向(x軸方向)の走査を行うことで、被計測体10の2次元断面画像が得られる。このようなOCT装置では、数μmという高分解能な計測が可能である。したがって、OCT装置によって、非破壊、非接触で生体内部の高分解能な画像を得ることができる。
【0010】
OCT装置の歯科の分野への適用については、OCT装置を用いて、歯の断層を撮影した例が開示されている(例えば、下記文献1〜5参照)。
(文献1)レーザー研究 2003年10月号:医療を中心とする光コヒーレンストモグラフィーの技術展開
(文献2)Journal of Biomedical Optics, October 2002, Vol.7 No.4:Imaging caries lesions and lesion progression with polarization sensitive optical coherence tomography
(文献3)APPLIED OPTICS, Vol.37, No.16, 1 June 1998: Imaging of hard-
and soft-tissue structure In the oral cavity by optical coherence tomography
(文献4)OPTICS EXPRESS, Vol.3,No.6,14 September 1998: Dental OCT
(文献5)OPTICS EXPRESS, Vol.3,No.6,14 September 1998: In vivo OCT Imaging of hard and soft tissue of the oral cavity
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、OCT装置は実際の歯科診療に使用されていない。OCT装置を歯科診断に使用することは、少なくとも現時点では実用的ではなく、歯科用のOCT装置は製品として存在していない。なぜならば、OCT装置では、1枚の断層像を得るのに奥行き方向を含む2次元の機械的走査が必要であるため、撮像に時間がかかる上に、装置が複雑で高価となり、耐久性も劣っているためである。すなわち、OCT装置を実際の歯科測定に適用することが困難であるという課題があった。
【0012】
そこで、本発明は上記課題を鑑み、構造が簡単で、高速で撮像でき、歯科測定に適用することができる光コヒーレンストモグラフィー装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明にかかる歯科用光コヒーレンストモグラフィー装置は、生体の顎口腔領域における組織または顎口腔領域の人工組成物を被計測体とする歯科用光コヒーレンストモグラフィー装置であって、時間とともに所定範囲内において波長が変化する光を出射する可変波長光源と、前記可変波長光源から出射した光源光を、参照ミラーに照射する参照光と被計測体に照射する計測光とに分ける光分割部と、前記被計測体で反射した前記計測光と、前記参照ミラーで反射した参照光とを干渉させて干渉光とする干渉部と、時間とともに前記所定範囲内で波長が変化する干渉光を計測する光検出部と、前記光検出部が計測した干渉光の、前記変化する波長の各段階における強度をフーリエ変換またはフーリエ逆変換することにより、前記被計測体で前記計測光が反射した位置および反射強度を表す反射特性データを生成し、前記被計測体の画像を生成する演算部とを備える。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、構造が簡単で、高速で撮像でき、歯科測定に適用することができる光コヒーレンストモグラフィー装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】実施の形態1におけるFD−OCT装置の構成の一例を表す図である。
【図2】演算部が、計測した干渉光に基づいて、断面画像を生成する処理の例を示すフローチャートである。
【図3】層ごとに反射強度を補正する処理の流れを示すフローチャートである。
【図4】深さ方向の反射強度の分布を複数の層に分割する例を示す図である。
【図5】演算部が、被計測体の画像を表示する処理の一例を示すフローチャートである。
【図6】歯科形状ルール集のデータ構造の一例を示す図である。
【図7】歯科形状ライブラリに含まれるデータが表す形状の一例を示す図である。
【図8】(a)は、図1に示すプローブユニット200の内部構造を表す断面図である。(b)は、プローブユニット200をx軸方向から見た場合の平面図である。
【図9】レンズを駆動する方法の一例を説明するための概念図である。
【図10】マウスピースおよびマウスピースホルダの他の構成例である。
【図11】(a)は、マウスピースの代わりにシーネを用いた場合のプローブユニットの断面図である。(b)は、図11(a)に示すプローブユニットをx軸方向から見た平面図である。
【図12】(a)は、口角鉤76が設けられたマウスピースおよびマウスピースホルダのyz平面における断面図である。(b)は、図12(a)に示すマウスピースホルダ73aおよび口角鉤76のB−B線に沿う断面を示す図である。
【図13】マウスピースの変形例を示す断面図である。
【図14】本実施形態におけるプローブユニットの変形例を示す断面図である。
【図15】(a)は、マウスピースホルダおよびプローブユニットがマウスピースの形状に沿ってスライドする構造の例を示す図である。(b)は、(a)に示すマウスピースホルダおよびマウスピースのxz平面における断面図である。
【図16】マウスピースホルダを、直角に曲げた形状の例を示す図である。
【図17】(a)は、スペーサを固定部材に用いた場合のプローブユニットの断面図である。(b)は、スペーサを備えるプローブユニットの変形例を示す断面図である。
【図18】(a)および(b)は、スペーサを備えるプローブユニットの変形例を示す図である。
【図19】プローブユニットの変形例を示すxz平面における断面図である。
【図20】回転体の変形例を示す断面図である。
【図21】スリーブの変形例を示す断面図である。
【図22】実施の形態2におけるFD−OCT装置の構成の一例を表す図である。
【図23】実施の形態3におけるFD−OCT装置の構成の一例を表す図である。
【図24】(a)は、光源光偏光操作器35の構成を示す概略図である。(b)は、参照光偏光操作器36または、干渉光偏光操作器37の構成を示す概略図である。
【図25】OCT装置の光源の構成を示す図である。
【図26】実施の形態5におけるFD−OCT装置の構成の一例を表す図である。
【図27】(a)および(b)は、実施の形態6におけるOCT装置の参照ミラー付近の構成を示す図である。
【図28】実施の形態7におけるFD−OCT装置の構成の一例を表す図である。
【図29】実施の形態8におけるFD−OCT装置の構成の一例を表す図である。
【図30】従来のOCT装置の構成を示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明にかかる歯科用光コヒーレンストモグラフィー装置は、生体の顎口腔領域における組織または顎口腔領域の人工組成物を被計測体とする歯科用光コヒーレンストモグラフィー装置であって、時間とともに所定範囲内において波長が変化する光を出射する可変波長光源と、前記可変波長光源から出射した光源光を、参照ミラーに照射する参照光と被計測体に照射する計測光とに分ける光分割部と、前記被計測体で反射した前記計測光と、前記参照ミラーで反射した参照光とを干渉させて干渉光とする干渉部と、時間とともに前記所定範囲内で波長が変化する干渉光を計測する光検出部と、前記光検出部が計測した干渉光の、前記変化する波長の各段階における強度をフーリエ変換またはフーリエ逆変換することにより、前記被計測体で前記計測光が反射した位置および反射強度を表す反射特性データを生成し、前記被計測体の画像を生成する演算部とを備える。
【0017】
本発明にかかる歯科用光コヒーレンストモグラフィー装置において、前記可変波長光源から時間とともに所定範囲内で波長が変化する光が出射されるので、前記光検出部は、時間とともに所定範囲内で波長が変化する干渉光を検出できる。すなわち、前記光検出部は、変化する波長の各段階における干渉光強度を検出する。これにより、前記光検出部は、干渉光の波長分布を検出することになる。前記演算部は、変化する波長の各段階における干渉光強度をフーリエ変換またはフーリエ逆変換することにより、計測光の前記被計測体における各反射位置での反射強度を表すデータに変換する。これにより、前記演算部は、前記被計測体で前記計測光が反射した位置および反射強度を表す反射特性データを生成することができる。前記演算部は、前記反射特性データを用いて、前記被計測体の断層画像を生成する。すなわち、演算部は、各波長の干渉光のデータを基に、被計測体の深さ方向の情報を得ることができる。
【0018】
そのため、前記計測光の光軸方向、すなわち、被計測体の深さ方向の機械的走査をせずに、被計測体の深さ方向の情報を得ることができる。その結果、装置の構造が簡単になり、高速で撮像が可能になる。ひいては、歯科においてチェアサイドにOCT装置を配置することができ、OCT装置による歯科測定が可能になる。すなわち、歯科診断に適用できるOCT装置が得られる。
【0019】
光分割部と干渉部は、ビームスプリッタまたはファイバカプラにより両機能を兼用する構成が好ましい。
【0020】
本発明にかかる歯科用光コヒーレンストモグラフィー装置は、生体の顎口腔領域における組織または顎口腔領域の人工組成物を被計測体とする歯科用光コヒーレンストモグラフィー装置であって、光源と、前記光源から出射した光源光を、参照ミラーに照射する参照光と被計測体に照射する計測光とに分ける光分割部と、前記被計測体で反射した前記計測光と、前記参照ミラーで反射した参照光とを干渉させて干渉光とする干渉部と、前記干渉光を計測する光検出部と、前記光検出部が計測した干渉光に基づいて、前記被計測体で前記計測光が反射した位置および反射強度を表す反射特性データを生成し、前記被計測体の画像を生成する演算部と、前記計測光を、前記被計測体へ導いて照射し、前記被計測体で反射した前記計測光を受光して前記干渉部へ導くプローブと、前記プローブに固定され、前記被計測体の一部に接するかまたは接着部材を介して接着されることにより、前記プローブと前記被計測体との相対位置を固定する固定手段とを備える。
【0021】
前記プローブは、前記計測光を、前記被計測体へ導いて照射し、前記被計測体で反射した前記計測光を受光して前記干渉部へ導くので、複雑な構造を有する前記被計測体である顎口腔領域の測定箇所に前記計測光を照射し、反射光を受光することが可能になる。
【0022】
また、前記固定手段が前記プローブに固定され、かつ前記被計測体に接するかまたは接着部材を介して接着される状態では、前記プローブと前記被計測体との相対位置は固定されている。したがって、前記プローブにより、計測光の照射位置を被計測体の形状に合わせて柔軟に変化させることができるとともに、前記プローブと被計測体との相対位置を固定することができる。
【0023】
本発明にかかる歯科用光コヒーレンストモグラフィー装置において、前記プローブは、前記計測光を前記被計測体へ集光させる対物レンズを備え、前記固定部材は、前記被計測体に接した状態で、前記対物レンズによって集光される前記計測光の焦点が前記被計測体の表面または内部に位置するように、前記プローブと前記被計測体との相対位置を固定することが好ましい。
【0024】
前記固定部材が前記被計測体へ接することにより、前記プローブの前記被計測体に対する位置および方向は、前記対物レンズの焦点が前記被計測体にくるように固定される。そのため、測定者は、前記固定部材が前記被計測体に接するように前記プローブを保持することによって、前記プローブを測定に適した位置および方向に保つことができる。
【0025】
本発明にかかる歯科用光コヒーレンストモグラフィー装置において、前記固定手段は、被計測体を含む歯列の形状に適合する接着部材を装着する装着部を有するシーネコアか、あるいは、上歯列と下歯列とに挟まれる形状のマウスピースであることが好ましい。これにより、前記プローブと前記被計測体との相対位置は安定して固定される。
【0026】
本発明にかかる歯科用光コヒーレンストモグラフィー装置において、前記プローブは、前記被計測体に照射する前記計測光を、前記計測光の光軸に垂直な方向に走査する走査手段をさらに備えることが好ましい。前記プローブに前記走査手段が設けられているので、被計測体のある口腔内において2次元の走査あるいは3次元の走査が可能になる。
【0027】
本発明にかかる歯科用光コヒーレンストモグラフィー装置において、前記演算部は、前記干渉光に基づいて、前記被計測体に入射する前記計測光の深さと、前記深さにおける前記計測光の反射強度を表す反射特性データを生成し、前記反射強度を、前記深さzpまたは前記深さzpに関する関数または積分関数に応じて補正することによって、前記被計測体の光軸方向の断層画像を生成することが好ましい。
【0028】
被計測体の光軸方向の深さが深くなればなるほど、計測光の強度が減少するので、反射する光の強度も減少する。その結果、前記反射特性データが表す、前記深さzpの位置における前記計測光の反射強度は、深さzpが深くなるほど小さくなる傾向にある。そこで、前記反射特性データで表される反射強度を、前記深さzpまたは前記深さzpに関する関数または積分関数に応じて補正することによって、反射強度の深さによる減少の影響を緩和させることができる。
【0029】
本発明にかかる歯科用光コヒーレンストモグラフィー装置において、前記演算部は、前記干渉光に基づいて、前記被計測体に入射する前記計測光の深さ方向における前記計測光の反射強度の分布を表す反射特性データを生成し、前記反射強度の分布を前記深さ方向の複数の層に分割し、分割した各層の透過率を用いて、前記層ごとに反射強度を補正することによって、前記被計測体の光軸方向の断層画像を生成することが好ましい。
【0030】
被計測体が、光の透過率が異なる複数の層を有する場合、計測光の反射強度の深さに伴う減少の度合いは、層ごとに異なる。前記演算部は、分割した各層における光の透過率を用いて、層ごとに反射強度を補正するので、被計測体が、光の透過率が異なる複数の層を有する場合に、各層における反射強度の減少度合いの違いを考慮した補正ができる。光の透過率が異なる複数の層を有する被計測体の一例は歯である。歯は、エナメル質層、象牙質層、セメント質層、歯槽骨等を有する。
【0031】
本発明にかかる歯科用光コヒーレンストモグラフィー装置において、前記光源は、中心波長の異なる2以上の光源で構成され、前記2以上の光源のうち、いずれか1つの光源の光を前記光分割部へ導く光源切り替え部を備えることが好ましい。これにより、被計測体の構成物質に適した波長の光を光源の光として選択することができる。
【0032】
本発明にかかる歯科用光コヒーレンストモグラフィー装置は、生体の顎口腔領域における組織の各部位の形状を表す歯科形状データを記録する歯科形状データ記録部と、前記演算部で生成された画像を表示する表示部とをさらに備え、前記演算部は、生成した前記画像から、顎口腔領域における組織の各部位、病変部、補綴物または充填物を表す部分を、前記歯科形状データを用いて抽出し、他の部分と視覚的に区別可能な態様で、前記表示部へ表示することが好ましい。
【0033】
前記演算部は、顎口腔領域における組織の各部位の形状を表す前記歯科形状データを基にして、前記画像から、前記顎口腔領域における組織の各部位、病変部、補綴物または充填物の形状を示す部分を抽出することができる。演算部がこれらの抽出した部分をそれぞれ他の部分と視覚的に区別可能な態様で前記表示部へ表示することによって、その表示を見た操作者は、前記顎口腔領域における組織の各部位、病変部、補綴物または充填物の形状を認識しやすくなる。
【0034】
本発明にかかる歯科用光コヒーレンストモグラフィー装置は、生体の顎口腔領域における組織または顎口腔領域の人工組成物を被計測体とする歯科用光コヒーレンストモグラフィー装置であって、光源と、前記光源から出射した光源光を、参照ミラーに照射する参照光と被計測体に照射する計測光とに分ける光分割部と、前記被計測体で反射した前記計測光と、前記参照ミラーで反射した参照光とを干渉させて干渉光とする干渉部と、前記干渉光を計測する光検出部と、前記光検出部が計測した干渉光に基づいて、前記被計測体で前記計測光が反射した位置および反射強度を表す反射特性データを生成し、前記被計測体の画像を生成する演算部と、前記計測光を、前記被計測体へ導いて照射し、前記被計測体で反射した前記計測光を受光して前記干渉部へ導くプローブと、前記プローブに、少なくとも1つの方向を回転軸として回転可能に取り付けられた回転体であって、前記回転軸と一定または可変の角度を有する方向へ前記計測光を照射する照射口を有する回転体と、前記回転体を回転させる駆動部とを備える。
【0035】
前記照射口から前記被計測体へ照射される計測光の照射方向は、前記回転体の回転軸と一定または可変の角度を有しているので、前記回転体が回転することにより、前記計測光が前記被計測体に照射される位置が回転方向へ移動する。そのため、前記回転体が前記駆動部により回転させられることにより、前記回転体の前記照射口から照射される計測光は、回転方向へ走査される。
【0036】
本発明にかかる歯科用光コヒーレンストモグラフィー装置は、前記回転体に、ベアリングを介して覆うように設けられたスリーブであって、前記照射口から照射される計測光を通す窓を有するスリーブをさらに備えることが好ましい。
【0037】
前記スリーブの前記窓の位置を前記被計測体に対して固定することで、前記スリーブと前記被計測体との相対位置が固定される。前記スリーブはベアリングを介して前記回転体を覆うように設けられているので、前記回転体は、位置が固定された前記スリーブ内で回転する。すなわち、前記回転体と前記被計測体との相対位置も固定される。そのため、前記被計測体上の1方向について、安定して走査することができる。
【0038】
本発明にかかる歯科用光コヒーレンストモグラフィー装置は、前記光源光、前記参照光、前記計測光または前記干渉光の少なくとも1つの偏光状態を操作する偏光操作部をさらに備えることが好ましい。
【0039】
本発明にかかる歯科用光コヒーレンストモグラフィー装置においては、偏光操作部が、前記光源から前記光分割部へ照射される光、前記参照光、前記計測光または前記干渉光の少なくとも1つの偏光状態を操作するので、被計測体の偏光特性または複屈折特性を反映した画像が得られる。その結果、例えば、初期う蝕・象牙質・エナメル質・歯肉・歯槽骨等、特有の偏光特性または複屈折特性に富む口腔組織の観察が可能となる。
【0040】
本発明にかかる歯科用光コヒーレンストモグラフィー装置は、前記計測光の断面を、前記計測光の照射方向に垂直な面内の1軸方向に沿う線状にするシリンドリカルレンズまたはシリンドリカルミラーを更に備えることが好ましい。
【0041】
シリンドリカルレンズとは、光軸に対して直角な2方向のうち、片方にだけレンズとして作用するレンズのことであり、レンズとして作用する方向の断面の形状のみがその輪郭に曲線を含むレンズ特有の形状となり、レンズとして作用しない方向の断面の形状は、例えば、長方形になる。
【0042】
シリンドリカルミラーとは、光軸に対して直角な2方向のうち、片方にだけレンズとして作用するミラーのことであり、レンズとして作用する方向の断面の形状のみがその輪郭に曲線を含むレンズ特有の形状となり、レンズとして作用しない方向の断面の形状は、例えば、長方形になる。
【0043】
前記シリンドリカルレンズまたはシリンドリカルミラーは、光軸に垂直な面における前記計測光の断面形状を、前記計測光の照射方向に垂直な面内の1軸方向に沿う線状にする。そのため、前記計測光は、被計測体の前記1軸方向に分布照射される。すなわち、前記計測光は、前記被計測体において前記1軸方向のライン上に集光される。そのため、前記1軸方向に機械的走査をしなくても、前記被計測体の前記1軸方向の断面を計測することができる。
【0044】
本発明にかかる歯科用光コヒーレンストモグラフィー装置において、前記光源光、計測光、参照光、干渉光、スペクトルに分光された光のうち、少なくとも1つは、光ファイバで導光されることが好ましい。光ファイバにより、光の進む向きを柔軟に変化させることができる。その場合、複数の光ファイバを1列に平行に並べた光ファイバや、光軸に垂直な断面が略円状になるように束ねた光ファイバが用いられてもよい。
【0045】
本発明にかかる歯科用光コヒーレンストモグラフィー装置は、被計測物体表面上に該計測光または可視光パターンを投影し、2次元撮像装置によって計測部位の表面画像をモニタするか、またはさらに断層計測画像と同期記録する態様とすることが好ましい。これにより、操作者は、計測時に計測部位を確認することができる。
【0046】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
【0047】
(実施の形態1)
図1は、実施の形態1におけるフーリエドメイン光コヒーレンストモグラフィー装置(
以下、FD−OCT装置と称する)の構成の一例を表す図である。なお、FD−OCTは、Fourier−domain OCTの略である。
【0048】
FD―OCT装置は、低コヒーレントな光源から出射して被計測体で反射した計測光と、前記光源から出射して参照ミラーで反射した参照光との干渉光を測定し、その干渉光の情報からフーリエ変換またはフーリエ逆変換を用いて被計測体の深さ方向、すなわち計測光の光軸方向の光学特性を求めるOCT装置である。FD−OCT装置では、計測光の光軸方向の機械的走査が不要となる。FD−OCT装置の種類には、少なくとも、スウェプトソース型(Swept Source型)と、スペクトルドメイン型との2種類がある。本実施形態では、スウェプトソース型のFD−OCTについて説明する。
【0049】
なお、スペクトルドメイン型のFD−OCT装置は、干渉光を回折格子により分光して得られたスペクトルを検出し、このスペクトルから被計測体の計測光の光軸方向における情報を、フーリエ変換またはフーリエ逆変換を用いて求めることを特徴とするOCT装置である。
【0050】
(本実施形態におけるFD−OCT(スウェプトソース型)の構造の例)
図1に示すように、スウェプトソース型のFD−OCT装置は、OCTユニット100、プローブユニット200および計算機27で構成されている。OCTユニット100には、光源15、ファイバカップラ19、参照ミラー24、光検出器41が設けられている。プローブユニット200には、ガルバノミラー20a、20b、レンズ21a、21bが設けられている。計算機27は、光源15、光検出器41、ガルバノミラー20と接続されている。計算機27は、例えば、パーソナルコンピュータ等のコンピュータであり、CPU等の演算部27b、ハードディスク等の記録部27cを少なくとも備えている。また、計算機27は、例えば、液晶パネル、CRT、PDP等の表示部27aを備えてもよい。
【0051】
なお、OCTユニット100、プローブユニット200、計算機27の構成は、図1に示す構成に限られない。例えば、計算機27の機能をOCTユニット100内に組み込むことができる。
【0052】
光源15は、時間的および空間的に低コヒーレントな光源である。すなわち、中心波長を中心として狭い範囲に波長が分布した光を出射する光源である。また、光源15が照射する光は、時間とともにその中心波長が変化する。光源15が照射する光の波長は、例えば、一定時間ごとに装置固有の波長範囲内で変化する。すなわち、光源15から照射される光は、一定時間ごとに前記範囲の波長を走査する。
【0053】
光源15として、例えば、チューナブルLD(Laser Diode)のような可変波長の狭帯域レーザ光源が用いられる。光源15は例えば、830nm、1100nm、1300nm、1500nmまたは1600nmの中心波長に対して、±110nm、または±55nmの変化幅で中心波長が変化する光を照射する光源とすることができる。また、光源15は、例えば、17ナノ秒(17nsec)間に0.064nmずつ変化する光を出射してもよい。すなわち、光源15は、例えば、110nmの波長の変化幅を1700ポイントに分割して、60MHzの周期で1ポイントずつ波長を変化させて光を出射することができる。
【0054】
ファイバカップラ19は、光分割部および干渉部の機能を果たす光学干渉器の一例である。光学干渉器とは、2つの入力光を干渉させて2方向に出力する入出力可換な光学部品である。光学干渉器の例として、ファイバカップラ19の他にビームスプリッタ、ハーフミラー等が挙げられる。
【0055】
光検出器41は、光検出部の一例である。光検出器41は、例えば、フォトダイオードが用いられる。特に赤外フォトダイオードが光検出器41として適切である。スウェプトソース型のFD−OCT装置において、光検出器41が検出する光は0次元、つまり光線である。
【0056】
なお、スペクトルドメイン型のFD−OCT装置では、光検出器41が検出する光は、回折格子によって分光された光なので、1次元の広がりを持つ。そのため、光検出器41として、1次元以上の高解像度光検出アレイが必要となる。1次元以上の高解像度光検出アレイは、例えば、CCDイメージセンサがある。しかし、CCDイメージセンサで、特に1.3μの赤外帯域のものは、複雑、大型かつ高価である。これに比べて、スウェプトソース型のFD−OCT装置の光検出器41に用いられるフォトダイオードは、簡単、小型かつ安価である。この点は、スウェプトソース型のFD−OCT装置を歯科に適用することの非常に有利な効果となる。
【0057】
プローブユニット200は、レンズ21a、21bおよびガルバノミラー20a、20bを備える。OCTユニット100のファイバカップラ19で出力された計測光28を、被計測体22へ導いて照射し、被計測体22で反射した計測光28の反射成分を受光してファイバカップラ19へ導く。プローブユニット200の詳細な構成については後述する。
【0058】
プローブユニット200と、OCTユニット100とは光ファイバ18で接続されており、プローブユニット200と、OCTユニット100と間の光の伝達は、光ファイバ18によって行われる。これにより、プローブユニット200は、OCTユニット100と異なる筐体として構成することができる。すなわち、プローブユニット200の位置および向きは、OCTユニット100の位置および向きに制約を受けず、被計測体22の状態に応じて柔軟に変化することができる。また、プローブユニット200の可動範囲が広くなる。
【0059】
プローブユニット200は、操作者が手持ちで操作できる構成であることが好ましい。これにより、歯科診療において、操作者がチェアサイドで手軽に利用できる。患者とプローブユニット200の位置関係がフリーな状態で、操作者がOCT装置を使用できる。
【0060】
OCT装置を歯科用に適用する場合、患者が通常診療の際に座っている椅子のチェアサイドでOCT装置が使用されることが想定される。この場合、プローブユニット200を位置付けするのに、空中光学系(プローブユニットへの光路を光ファイバではなく空中とする)では、OCTユニット全体を患者の口腔に精密に位置付けしなければならない。また、比較的重いOCTユニットを、操作者が持って操作するのは、非現実的である。
【0061】
(FD−OCT装置の動作の例)
次に、図1に示すFD−OCT装置の動作について説明する。本実施形態では、被計測体22が、生体の顎口腔領域組織または、顎口腔領域の人工組成物である場合について説明する。また、以下の説明において、座標系を次のように定義する。図1に示すように、被計測体22においては計測光28の光軸方向すなわち被計測体22の深さ方向をz、z方向に垂直な平面をxy平面とする。ガルバノミラー20bのスキャン方向をy方向に、y方向に垂直な方向であって、ガルバノミラー20aのスキャン方向をx方向にとる。被計測体22以外の場所では被計測体22のx、y、zのそれぞれに光学的に対応する方向をx、y、zとする。光学的に対応するとは、ミラーやレンズ・光ファイバ等で空間的な方向が変化しても、光の進行方向をz、ガルバノミラー等で走査される方向をy、zとyの両方に垂直な方向をxとするということである。
【0062】
光源15から射出された光はレンズ17a、17bでコリメートされた後に、ファイバカップラ19により、参照光29と計測光28に分けられる。計測光28は、光ファイバ18、レンズ21a、ガルバノミラー20a、20bを経てレンズ21bによって被計測体22に集光される。計測光28は、被計測体22で反射、散乱および透過する。被計測体22で反射、散乱、透過した計測光のうち、反射または後方散乱した光(以下、単に反射光と称する)は、再びレンズ21b、ガルバノミラー20a、20b、レンズ21a、光ファイバ18、ファイバカップラ19を通ってレンズ30によって光検出器41に導かれる。
【0063】
一方、参照光29は、光ファイバ18、レンズ23a、23bを通って参照ミラー24で反射し、再び、レンズ23a、23bを通ってファイバカップラ19で計測光28の反射成分と干渉させられて、計測光28の反射生成分と重なりあってレンズ30に入射し光検出器41に導かれる。
【0064】
この計測光28と参照光29は、時間とともに波長が変化する光なので、ファイバカップラ19で干渉しあって光検出器41へ導かれる光も時間とともに波長が変化する。すなわち、光検出器41は、計測光28の反射成分と参照光29との干渉光を複数の波長について検出する。この光検出器41によって計測される各波長の干渉光を計算機27内の演算部27bがフーリエ変換またはフーリエ逆変換することによって、計測光28と参照光29の相関が得られる。この相関より、被計測体22の深さ方向(z軸方向)の位置とその位置での反射光の強度とを表すデータが得られる。すなわち、被計測体22の反射率特性が得られる。この反射率特性により、被計測体22の構造、組成または光学特性に関する情報が得られる。例えば、計算機27の演算部27bが、計測した干渉光に基づいて被計測体22の断面画像を生成する。計算機27の演算部27bが、断面画像を生成する処理の例については後述する。
【0065】
上記のFD−OCT装置においては、参照ミラー24を動かして、計測光28の光路長と参照光29の光路長を調節し、z軸方向の走査を行う必要がない。すなわち、z軸方向の機械的操作を行うことなく、被計測体22の深さ方向(z軸方向)の構造に関する情報を得ることができる。FD−OCT装置により、従来よりもS/N比が向上した断層情報が得られる。これにより、解像度の高い断層画像が得られる。また、従来に比べて、ぺネトレーション(到達度)が高くなるので、被計測体の内部の、より深い位置を観察することが可能となる。
【0066】
以上のように、計測光28と参照光29との各波長における干渉光に基づいて、被計測体z軸方向の内部情報を得るOCT装置がスウェプトソース型のFD−OCT装置である。
【0067】
被計測体22の3次元断面画像を得るためには、z軸方向に加えて、y軸方向およびx軸方向の走査を行うこと必要がある。本実施の形態において、y軸方向の走査は、ガルバノミラー20bを駆動することにより、x軸方向の走査は、ガルバノミラー20aを駆動することにより行われている。
【0068】
上述のように、スウェプトソース型のFD−OCT装置においては、被計測体22のz軸方向の構造は、時間とともに変化する波長についての干渉光から求められるので、被計測体22の断層像を得るための機械的走査が不要となる。その結果、装置の構造が簡単になり、高速で撮像が可能となる。ひいては、OCT装置の持つ被計測体の3次元的内部情報を定量的に取得できるという基本的特性や、非侵襲性、高分解能等の優れた特性が歯科分野で生かされることになる。
【0069】
すなわち、歯科分野では、被計測体が、例えば、歯牙や歯槽骨等の硬組織であることが多い。歯牙や歯槽骨のような硬組織は散乱が強いため、従来のOCT装置では、観察するのが困難であった。従来のOCT装置に比べてぺネトレーションが高いFD−OCT装置を歯科に適用することによって、歯牙や歯槽骨のような硬組織の内部のより深い部分を観察することが可能となる。
【0070】
(計算機27の演算部27bが断面画像を生成する処理の例)
図2は、計算機27の演算部27bが、計測した干渉光に基づいて、断面画像を生成する処理の例を示すフローチャートである。図2に示す例では、ステップS1〜3の処理が、各xy座標について繰り返される。ステップS1〜3において、演算部27bは、例えば、座標(xi、yi)で表される1つの計測点におけるz軸方向の反射強度の分布を求める。演算部27bは、まず、光検出器41が検出した干渉光の波長ごとの強度を取得する(ステップS1)。演算部27bは、例えば、座標(xi、yi)で反射した計測光28の反射成分と、参照光29との干渉光の強度を電流に変換した値を、光検出器41から取得する。ここで、光検出器41が出力する波数k(=2π/波長)の干渉光の強度を表す電流idet(k)は、例えば、下記(数1)で表される。
【0071】
【数1】
【0072】
η : フォトダイオードの感度
q : 電子の素電荷 (=1.6×10-19 クーロン)
hν : 光子エネルギー(νは振動数)
Pr : 参照光強度
P0 : 検出光強度
r(z) : 被写体のz方向の光反射係数の強度プロファイル
φ(z): 被写体のz方向の光反射係数の位相プロファイル
Γ(z): 光源光のコヒーレンス関数
k(t) : = 2π/λ(t) 光源光の波数(光源15により走査される)
上記(数1)において、第3項は、参照光29と計測光28の反射成分との干渉による光強度を表している。第1項および第2項は干渉によらないバックグラウンドの光強度を表している。なお、第1項および第2項は、次に述べるフーリエ逆変換でキャンセルされるが、検出系のダイナミックレンジやノイズには影響する。
【0073】
上記(数1)において、光源光の波数k(t)は、時間tによって変化する。すなわち、光源15は、光源光の波数kを時間tとともに変化させることによって、波数kを走査する。光検出器41は、光源15の波数kの走査に同期して、干渉光の強度を表す電流idet(k)の時系列データを出力することができる。
【0074】
演算部27bは、光検出器41の出力データを基に、計測光28の被計測体22における反射強度のz軸方向の分布F(z)を求める(ステップS2)。例えば、演算部27bは、光検出器41が出力した、idet(k)の時系列データをフーリエ逆変換することにより、深さzでの計測光28の反射成分の信号、すなわち、反射強度F(z)を求めることができる。F(z)は、例えば、下記(数2)によるフーリエ逆変換により求められる。
【0075】
【数2】
【0076】
idet(k)は、時間とともに変化する各波数km(m=0、1、2・・・)について、離散値idet(km)として光検出器41で検出される。そのため、演算部27bは、例えば、下記(数3)によるディスクリートフーリエ逆変換(離散フーリエ逆変換)により、深さzl(l=0、1、2・・・)における反射強度を表す値F(zl)を求めることもできる。
【0077】
【数3】
【0078】
m : 波数kのDFT(discrete Fourier transform)離散化番号
l : 深さzのDFT(discrete Fourier transform)離散化番号
Δk : 光源の波数の走査幅
なお、上記(数1)〜(数3)による演算は、スウェプトソース型のFD−OCT装置だけでなく、スペクトルドメイン型のFD−OCT装置でも用いられる。また、演算部27bは、光検出器41から得られたデータをディスクリートフーリエ逆変換する際に、周知の高速フーリエ変換の手法を用いることが好ましい。
【0079】
次に、演算部27bは、深さzにおける信号、すなわち反射強度を表す値F(z)を、深さzに応じて補正する(ステップS3)。演算部27bは、例えば、深さzpにおける反射強度F(zp)に下記(数4)、(数5)、(数6)または(数7)のいずれか1つで表される補正係数C(zp)を掛けることでF(zp)を補正してもよい。
【0080】
【数4】
【0081】
【数5】
【0082】
【数6】
【0083】
【数7】
ここで補正係数C(zp)がゼロになる場合があるが、これは補正後のデータをもとに画像を表現する際にその場所の輝度が基準の値になることであり、輝度がゼロになる(真っ黒になる)ことを必ずしも意味しない。上記式(数4)〜(数7)はあくまで、深さ方向の計測光の減衰を補正するものでよく、最終的な画像の輝度を意味するものである必要はない。また、補正のための数式は上記式(数4)〜(数7)に限らないし、必ずしも数式で与えられた値で補正する必要もない。深さ方向の強度の補正を行うことそのものに意味がある。
【0084】
OCT装置の被計測体の深さzに到達する計測光28の大きさは、深さ0〜zまでの光の反射強度が強ければ強いほど小さくなる。被計測体の深さzに到達した計測光28は、その部分特有の反射率Rで後方散乱または反射し、再び深さ0〜zpの間で減衰しながら被計測体の表面に戻ってきて、深さzにおける計測光29の反射成分として検出される。したがって、例えば、上記(数4)〜(数7)に示す式のいずれかによって、深さ0〜zpにおける反射光強度を表す値を用いて求められた補正係数C(zp)を、深さzpにおける反射強度F(zp)に掛けることで、深さzpに応じた補正ができる。
【0085】
演算部27bは、上記ステップS1〜3の処理を、各xy座標について繰返し行う。例えば、ガルバノミラー20bがy軸方向に、y=0〜10000(μm)で走査し、光検出器41が1μm間隔で干渉光を計測した場合、yi=0、10、20・・・10000(μm)の各y座標について上記ステップS1〜3の処理を繰り返すことが好ましい。また、ガルバノミラー20aがx軸方向に、x=0〜10000(μm)で走査し、光検出器41が10μm間隔で干渉光を計測した場合も同様に、xi=0、10、20・・・10000(μm)の各x座標について上記ステップS1〜3の処理を繰り返すことが好ましい。
【0086】
このように、演算部27bは、走査範囲における各xy座標において、z方向の反射強度分布を求めることで、被計測体の3次元画像を得ることができる。演算部27bは、例えば、Bモードと言われる2次元断面の断層を表す画像を生成することができる。さらに演算部27bは、Bモードで表される複数の断層から、いわゆるCモードと言われる3次元的被写体情報を得ることができる。
【0087】
OCT装置は基本的にある深さの反射光を抽出して計測情報とする原理のため、深くなればなるほど診断に使用される計測光の強度そのものが減衰するだけでなく、反射光の強度も減衰する。つまり、光の透過率の積分値の2乗に反比例して計測情報の強度が低下する。その結果、OCT装置の計測情報をそのまま画像化すると、同一の組織が異なる深さにあった場合、これらは同一の輝度で描像されないことになる。これは、従来のX線画像を見慣れてきた術者や診断者にとって非常に判断しにくい診断情報である。
【0088】
このように、観察組織の部位が深くなればなるほど、計測光・反射光の双方が減衰するという基本的な原理の下でOCT装置は動作する。そのために、なるべく深い部位を計測しようとすればするほど、ノイズの影響が大きくなる。
【0089】
演算部27bが、上記ステップS3において、反射強度を補正することによって、上記のような深さに応じて減衰する反射強度によって生じる不具合を緩和させることができる。なお、反射強度を補正する方法は、上記の例に限られない。
【0090】
(補正処理の変形例)
上記の補正処理の例では、深さzpまたは深さzpに関する積分関数を用いた補正の例を示したが、例えば、演算部27bは、深さ方向の反射強度の分布を複数の層に分割し、各層の光の透過率(=減衰率)を表す透過係数を用いて、層ごとに反射強度を補正することもできる。図3は、層ごとに反射強度を補正する処理の流れを示すフローチャートである。
【0091】
図3に示すように、演算部27bは、深さ方向の反射強度の分布を複数の層に分割する(ステップS31)。図4は、深さ方向の反射強度の分布を複数の層に分割する例を示す図である。図4に示す例では、被計測体22の計測光28が入射する表面22aから深さ方向に、順に層H1、層H2、層H3、層H4が存在する。
【0092】
被計測体22が歯の場合、演算部27bは、例えば、歯のエナメル質層、象牙質層、セメント層、歯槽骨層に対応する位置を、それぞれ層H1、層H2、層H3、層H4として、分割することができる。すなわち、同一の性質をもつ領域を1つの層として分割することができる。演算部27bは、例えば、深さ方向において、反射強度が急変している箇所を境界として、反射強度の分布を複数の層に分割することによって、同一の性質をもつ領域を1つの層として分割することができる。
【0093】
演算部27bは、表面22a直下の1番目の層H1について、透過係数を求める(ステ
ップS32)。層H1において、表面22aから入射する計測光28の強度をIH1とすると、層H1へ入射した光のうち、層H1を透過する透過光の強度I´H1は、下記(数8)で表される。
【0094】
【数8】
【0095】
そこで、演算部27bは、1番目の層H1の透過係数μH1を、表面22aでの反射強度
を表す輝度bH1と層H1の最深部での反射強度を表す輝度b'H1および層H1の深さzH1を用いて、例えば、下記(数9)で算出することができる。
【0096】
【数9】
【0097】
なお、透過係数μH1を求める方法は、上記(数9)を用いる方法に限られない。例えば、上記(数9)の最深部での反射強度を表す輝度b'H1の替わりに、層H1内の複数の位置での輝度を用いて、層H1内の深さが異なる複数の位置でにおける透過係数を算出し、これらの平均値を層H1における透過係数とすることもできる。また、深さ方向と垂直な面内に隣り合う適切な領域の透過係数を求め、それらの平均値を透過係数としてもよい。これはアーティファクトを除去するのに有効な方法である。例えば、深さ方向と垂直な方向における透過係数の平均値を用いて後述の補正処理を行うことで、OCT装置による計測画像で、計測光方向に線状あるいは帯状に現れるアーティファクトを除去することができる。
【0098】
層H1を透過する透過光の強度I´H1は、層H2に入る入射光の強度IH2と等しいので、IH2は、下記(数10)で表される。
【0099】
【数10】
【0100】
次に、演算部27bは、1番目の層H1における透過係数を用いて、2番目の層H2の反射強度を補正する(ステップS33)。演算部27bは、例えば、層H2内の最表面における反射強度を表す輝度bH2を用いて、上記(数10)に基づいて、下記(数11)でBH2を算出し、層H2の輝度をBH2に補正することができる。
【0101】
【数11】
【0102】
同様に、演算部27bは、層H2および層H3について、ステップS32、S33の処理を繰り返す。すなわち、演算部27bは、層H2の透過係数を求める処理(ステップS32)と、層H3の反射強度を補正する処理(ステップS33の)とを繰り返す。これにより、2番目以降の層について、反射強度が補正される。なお、最初の層H1の輝度BH1
は上記に基づき、層H1の最表面の輝度bH1を用いてBH1=bH1に補正される。
【0103】
なお、ステップS33の補正処理に用いられる透過係数は、必ずしも計算によって求める必要はない。例えば、層ごとの透過係数の値を予め記録部27cに記録しておき、その値を用いて補正処理を行うこともできる。
【0104】
なお、各層の厚さは必ずしも被計測体の特徴的な厚みにする必要は無い。例えばエナメル質の厚みは約0.5〜2mmであるが、これを5〜20分割して0.1mmの層に分割しても良い。この場合、各層の輝度は実物と異なって段階的に変化するアーティファクトが生じるのでこれを1次直線的にまたは2次曲線的にスムージングしても良い。
【0105】
(画像表示の例)
次に、演算部27bが、光検出器41で検出されたデータに基づいて生成した被計測体22の画像を表示する場合の処理の例を説明する。図5は、演算部27bが、被計測体22の画像を表示する処理の一例を示すフローチャートである。図5に示すように、演算部27bは、被計測体22の形状を表す3次元データを記録部27cから取得する(ステップS41)。3次元データは、例えば、各座標における反射強度を表す値で表される。
【0106】
演算部27bは、取得した3次元データから反射強度が急変している曲面を抽出する(ステップS42)。演算部27bは、抽出した曲面をつなげて閉曲面を構成する(ステップS43)。閉曲面が構成できない場合(ステップS44でNOの場合)は、演算部27bは、記録部27cに予め記録されている歯科形状データを参照して、閉曲面を補完する(ステップS45)。歯科形状データは、例えば、歯科形状ルール集や、歯科形状ライブラリ等である。図6は、歯科形状ルール集のデータ構造の一例を示す図である。図6に示す例では、エナメル質層、象牙質層、セメント質層、歯槽骨のそれぞれについて、部位、厚さ、形状、反射率(相対値)を表すデータが記録されている。
【0107】
図7は、歯科形状ライブラリに含まれるデータが表す形状の一例を示す図である。図7では、エナメル質層、象牙質層、セメント質層、歯槽骨のデータが、それぞれ表す形状が示されている。
【0108】
演算部27bは、一例として、被計測体22の画像を表す3次元データからある閉曲面の断層像を切り出して、この断層像と、ライブラリに含まれるデータが示す形状との相互相関を算出し、一定の水準に達しているか否かで、その閉曲面が歯牙のどの部位かを特定することができる。前記相互相関は、例えば、双方の形状データの平均値をゼロとした関数の積を含む積分とすることができる。
【0109】
なお、歯科形状データで表される歯科形状は、図6および図7に示す例に限られない。例えば、補綴物、病変部、充填物等の形状を表す歯科形状データが記録部27cに記録されていてもよい。
【0110】
演算部27bは、構成した閉曲面の位置・配置・形状・寸法等が、歯科形状ルール集および歯科形状ライブラリに合致しているか否かを判断する(ステップS46)。これにより、構成した閉曲面に合致する部位が抽出される。その結果、例えば、ある閉曲面は、エナメル質層の歯茎上部である等と特定される。演算部27bは、歯科形状データと、閉曲面とでパターンマッチングすることで、閉曲面が歯牙のどの部位かを特定することができる。同様にして、歯科形状データに、補綴物、病変部、充填物等の形状を表すデータが含まれる場合には、病変部、補綴物または充填物を表す部分を表す閉曲面を抽出することができる。
【0111】
閉曲面がいずれの部位にも合致しない場合(ステップS46でNOの場合)には、演算部27bは、再度、閉曲面の構成(ステップS43)を行う。閉曲面の部位が特定されれば(ステップS46でYES)、演算部27bは、被計測体22中の全部位についての閉曲面が抽出されたか否かを判断する(ステップS47)。
【0112】
全部位について、閉曲面が抽出されていれば(ステップS47でYES)、演算部27bは、各部位を他の部分と視覚的に区別可能な態様で、表示部27aへ表示する(ステップS48)。例えば、各部位を区分けして被計測体22の画像を表示することができる。例えば、各部位ごとに色を変えて表示することによって、区分け表示される。また、区分け表示の他に、特定の部位のみを強調して表示したり、抽出して表示したりしてもよい。このような、被計測体22の区分け、強調または抽出表示により、その表示を見た操作者は、診断がしやすくなる。
【0113】
(プローブユニット200の構造の例)
次に、プローブユニット200の構造について説明する。図8(a)は、図1に示すプローブユニット200の内部構造を表す断面図である。プローブユニット200は、ハウジング47内に備えられたレンズ21a、21b、レンズホルダ210a、210b、ガルバノミラー20a、20b、ガルバノミラー駆動用モータ43a、43bおよびハウジング47外に設けられたマウスピース73およびマウスピースホルダ73aで構成される。
【0114】
レンズホルダ210a、201bは、レンズ21a、21bをプローブユニット200内のハウジング47に固定する。ガルバノミラー駆動用モータ43aは、ガルバノミラー20aを、y軸方向を軸にして回転させ、ガルバノミラー駆動用モータ43bは、ガルバノミラー20bを、xz平面に平行な方向を軸にして回転させる。ガルバノミラー駆動用モータ43bは、スペーサ45によってハウジング47に固定されており、ガルバノミラー駆動用モータ43aは、スペーサ(図示せず)によってハウジング47に固定されている。
【0115】
ガルバノミラー駆動用モータ43a、43bの動作は、例えば、図1に示す計算機27からの信号によって制御される。計算機27は、例えば、ガルバノミラー20a、20bが、あらかじめ決められた角度範囲を回転するように、ガルバノミラー駆動用モータ43a、43bを動作させることができる。
【0116】
また、プローブユニット200は、OCTユニット100と光ファイバ18で繋がっている。光ファイバ18からプローブユニット200内へ入る計測光28は、レンズ21aを通り、ガルバノミラー20a、20bで反射し、レンズ21bを通って被計測体22へ集光される。被計測体22で反射した計測光28の反射成分は、再び、レンズ21bを通り、ガルバノミラー20b、20aで反射し、レンズ21aを通って光ファイバ18へ導かれる。
【0117】
計算機27は、例えば、ガルバノミラー20aを停止させて、ガルバノミラー20bをzy平面に平行な方向を軸に一定の角度ずつ回転させることで、ガルバノミラー20bで反射して被計測体22上へ向かう計測光28を、被計測体22上のy軸方向に走査することができる。また、計算機27は、例えば、ガルバノミラー20bを停止させて、ガルバノミラー20aを、y軸方向を軸に一定の角度ずつ回転させることで、ガルバノミラー20aで反射した後、ガルバノミラー20bで反射して被計測体22上へ向かう計測光28を、被計測体22上のx軸方向に走査することができる。
【0118】
本実施形態においては、プローブユニット200と、ファイバカップラ19等の干渉計を含むOCTユニット100との間が1本の光ファイバ18で結ばれた構造であるため、プローブユニット200は、被計測体22の位置および形状に合わせて柔軟に移動することができる。さらに、プローブユニット200は、x軸方向およびy軸方向の走査手段を内蔵する。そのため、被計測体22の深さ方向(z軸方向)を含む3次元情報取得が可能となる。3次元情報のうち、1次元の情報は電気的・光学的光源波長の走査により、残り2次元の情報はプローブユニット200での機械的走査によって得られる。これにより、OCTユニット100の位置に拘束されない計測が可能になるとともに、被計測体の3次元情報の取得も可能となる。これは、歯科領域においては、格別のアドバンテージを得る。
【0119】
なお、y軸方向およびx軸方向の走査方法として、ガルバノミラー20a、20bを駆動する方法の他に、後述するシリンドリカルレンズを用いる方法や、レンズを駆動する方法、光ファイバを駆動する方法、被計測体22を駆動する方法、または、操作者がプローブユニット200を動かす方法等を用いることができる。また、ガルバノミラー20a、20bを駆動する方法は、上記のガルバノミラー駆動用モータ43a、43bを用いる場合に限られない。
【0120】
ここで、y軸方向の走査方法の変形例として、レンズを駆動する方法を説明する。
【0121】
図9は、レンズを駆動する方法の一例を説明するための概念図である。レンズ30の一方の端部にリニアアクチュエータ31が接続され、レンズ30の他方の端部は装置に固定されている。リニアアクチュエータ31が、z方向に駆動する結果、レンズ30は回転軸32を中心に円弧状の往復運動を行う。レンズ30の円弧状往復運動の結果、レンズ30の光軸がzy平面内で運動し、被計測体をy方向に走査する。
【0122】
被計測体22の3次元構造を得るには、光源15の波長走査によるz軸方向の走査と、y軸方向の機械的走査とに加えて、x軸方向の走査を行う必要がある。x軸方向の走査は、y軸方向の走査同様にガルバノミラー20をx軸方向にも駆動させることによって、x軸方向の走査を行うことができる。また、x軸方向の走査においても、y軸方向の走査方法の例と同様の方法を用いることができる。上記のy軸方向の走査方法の例の中から適切なものを組み合わせて、y軸およびx軸方向の走査を行うことができる。
【0123】
なお、図8(a)に示す例のように、プローブユニット200内に2方向の走査手段を設ける構成は、FD−OCT装置に限らず、従来のOCT装置にも適用することができる。
【0124】
(マウスピースの構成の例)
次に、図8(a)に示すプローブユニット200の外側に設けられているマウスピース73およびマウスピースホルダ73aについて説明する。図8(b)は、プローブユニット200をx軸方向から見た場合の平面図である。図8(a)および(b)に示すように、マウスピースホルダ73aは、プローブユニット200のハウジング47に固定されている。マウスピースホルダ73aの先には、マウスピース73が設けられている。マウスピース73のx軸方向から見た平面形状は、例えば、人間の歯列の形状に合うような、馬蹄形をしている。すなわち、マウスピース73は、歯列の形状に合わせて湾曲した形状を有する。また、マウスピースは特定の患者の歯列の印象(型)によって作成されたものが好適である。
【0125】
被計測体22が生体の歯である場合、被計測者が、マウスピース73の形状に歯列を沿わせてマウスピース73を噛むことにより、被計測体22である被計測者の歯と、プローブユニット200との相対位置が固定される。このように、プローブユニット200と被計測者の歯との3次元的な位置関係が固定された状態で、プローブユニット200から計測光28が被計測体22である歯に照射される。これにより、計測光28に対して被計測体22が正確に位置付けされる。
【0126】
したがって、プローブユニット200を動かすことにより、計測光28の照射位置を被計測体22の形状に合わせて柔軟に変化させることができるとともに、被計測者が、被計測体22である歯で、マウスピース73を噛むことで、プローブユニット200と被計測体22との相対位置を固定することができる。
【0127】
マウスピース73は、弾力性のある材料で形成されることも好ましい。これにより。マウスピース73が歯で噛まれた際に、歯がマウスピース73に食い込むので、被計測体22である被計測者の歯と、プローブユニット200との相対位置が安定して固定される。
【0128】
なお、マウスピース73およびマウスピースホルダ73aの構成は、図8(a)および(b)に示す形状に限られない。図10は、マウスピース73およびマウスピースホルダ73aの他の構成例である。図10に示す例では、マウスピース74とマウスピースホルダ74aとが接する箇所が、図8(b)に示す例と異なっている。図8(b)に示すマウスピース73は、湾曲部の頂点がマウスピースホルダ73aに固定され、前歯部が被計測体22となる構成になっているが、図10ではマウスピース74の湾曲部の横側がマウスピースホルダ74aに固定され、犬歯や臼歯部が被計測体22となる構成になっている。
【0129】
また、プローブユニット200と被計測体22とを固定する手段として、マウスピースの他に例えば、シーネおよびシーネホルダを用いることができる。図11(a)は、マウスピースの代わりにシーネを用いた場合のプローブユニット200の断面図である。図11(b)は、図11(a)に示すプローブユニット200をx軸方向から見た平面図である。
【0130】
図11(a)および(b)に示す例では、ハウジング47にシーネホルダ75aが固定されている。シーネホルダ75aの先端には、シーネコア75bが設けられている。シーネコア75bと歯の間には、接着部材75cが設けられる。接着部材75cは、歯の形状に適合する形状であることが好ましい。接着部材75cとして、例えば、市販の即時重合レジンを用いることができる。なお、接着部材75cは、プローブユニット200の構成要素ではない。
【0131】
このように、接着部材75cを、被計測体22を含む歯列の形状に合うような形状に形成することによって、歯列に対するプローブユニット200の位置・方向を安定させることが可能である。また、一端、プローブユニット200を、被計測体22から遠ざけた後に再び近づけて、接着部材75cを、被計測体22を含む歯列にはめることで、被計測体22に対して、前回と同じ位置および同じ向きにプローブユニット200を配置することができる。
【0132】
例えば、被計測者である患者の再来院した場合等に、前回の計測時の、被計測体22に対するプローブユニット200の向きおよび位置を再現することができる。再計測および経過観察において、過去の計測に対して再現性のある計測が可能となる。つまり、例えば治療前と治療後、治療完了後の1週間後・1ヶ月後・1年後での計測においての治療部位の変化を診断する場合に、同じ位置・方向での計測が可能となる。これは、治療後に疾患が生じたことを把握できることだけでなく、治療ミスが無い(あるいはある)ことを客観的に証明するための証拠としても有効である。なお、マウスピースについても、歯列に合う形状に形成することもできる。
【0133】
例えば、被計測体22が、咬合状態の歯である場合などは、図8(a)に示すように、被計測者がマウスピース73を噛むことによってプローブユニット200と被計測体22と位置を固定することができない。そのような場合に、例えば、図11に示すようなシーネホルダ75aおよびシーネコア75bを固定手段に用いることができる。
【0134】
なお、マウスピースホルダ73aおよびシーネホルダ75aは、プローブユニット200から取り外し可能で、互いに取り替えることができる構成にしてもよい。また、マウスピースホルダ73aおよびシーネホルダ75aを取り外し可能とすることで、マウスピースホルダ73aおよびシーネホルダ75aを取り外して滅菌処理を行うことができる。また、マウスピースホルダ73aおよびシーネホルダ75aを取り外し可能で、ディスポーサブル(使い捨て)であってもよい。マウスピースにディスポーサブルのカバーを装着して使用することもできる。
【0135】
(口角鉤を備えるマウスピースの例)
マウスピースまたはシーネに、プローブユニット200の計測光28の出射口と被計測体22との間に、例えば、唇などの障害物が位置するのを防ぐための口角鉤を設けることができる。図12(a)は、口角鉤76が設けられたマウスピース73およびマウスピースホルダ73aのyz平面における断面図である。図12(b)は、図12(a)に示すマウスピースホルダ73aおよび口角鉤76のB−B線に沿う断面を示す図である。図12(a)および(b)に示すように、口角鉤76は、マウスピースホルダ73aを中心とするリングである。口角鉤76は、リングの内側とマウスピースホルダ73aとを接続する接続部76aによって、マウスピースホルダ73aに固定されている。
【0136】
図12に示す構成により、例えば、被計測体22である歯を有する被計測者がマウスピース73を噛んだ状態で、被計測者の唇が口角鉤76のリングの外側で止まり、口角鉤76のリングの内側に侵入しない。すなわち、被計測者の口が口角鉤76によって強制的に開けられた状態となる。そのため、リングの内側にある計測光28の光路に、被計測者の唇が侵入することが防止される。図12(b)において、点線の丸印28aは、z方向に進む計測光28の断面を表している。
【0137】
なお、上記例のように、プローブユニット200内にマウスピースやシーネ等の固定手段を設ける構成は、FD−OCT装置に限らず、従来のOCT装置にも適用することができる。
【0138】
(マウスピースの変形例)
図13は、マウスピースの変形例を示す断面図である。図13に示すマウスピース78は、内部に空洞を有するように、筒状に形成されている。マウスピース78は、プローブユニット200からの計測光28がマウスピース78内部の空洞に照射されるように、プローブユニット200のハウジング47に固定されている。マウスピース78の側面には、計測光28が通るための穴78aが設けられている。また、マウスピース78の内部には、計測光28を穴78aへ導くための対物ミラー82eが設けられている。
【0139】
例えば、被計測体22が歯である場合、被計測者が穴78aを被計測体22である歯で覆うように噛むことで、被計測体22とプローブユニット200との相対位置が固定される。
【0140】
また、プローブユニット200から出た計測光28は、対物ミラー82eで反射し、穴78aからマウスピース78の外部にある被計測体22へ照射される。被計測体22で反射した計測光28の反射成分は、穴78aからマウスピース78内の空洞に入り、対物ミラー82eで反射してプローブユニット200内へ導かれる。
【0141】
図8に示すマウスピース73は、歯または歯茎の唇側面に計測光28を照射するのに適しているのに対して、図13に示すマウスピース78は、歯または歯茎の咬合面に計測光28を照射するのに適している。
【0142】
(プローブユニットの変形例)
図14は、本実施形態におけるプローブユニットの変形例を示す断面図である。図14に示すプローブユニット203は、ハウジング47から突出したガイド48をさらに備える。ガイド48の先端には、計測光28が出入りするための窓を有する光照射部48aが設けられている。計測光28が出入りするための窓は、光照射部48aのプローブユニット203側の面に設けられている。ガイド48および光照射部48aは、計測光28の進む向きを変更するための中間ミラー81aおよび対物ミラー82aを備える。
【0143】
レンズ21bを通ってハウジング47から出た計測光28は、中間ミラー81aおよび対物ミラー82aで反射することにより、進む向きを180度変えて、光照射部48aの窓から出射する。図14に示すプローブユニット203の構成により、例えば、歯の舌側面等の入り組んだ位置にある被計測体22を測定することができる。
【0144】
また、ガイド48の上面および下面には、マウスピース77およびマウスピースホルダ77aが設けられており、例えば、被計測体22である歯を有する被計測者が、上下の歯で、ガイド48を挟むようにして、噛むことができる。これにより、プローブユニット203と、被計測体22である歯との相対位置が固定される。
【0145】
(マウスピースの他の変形例)
また、プローブユニットが、マウスピース73またはシーネコア75bに固定され、歯列に沿うべく形成されたガイドに沿って移動可能な構成にすることができる。例えば、図8(b)において、マウスピースホルダ73aおよびプローブユニット200がマウスピース73の形状に沿ってスライドする構造も好適である。
【0146】
図15(a)は、マウスピースホルダ73aおよびプローブユニット200がマウスピース73の形状に沿ってスライドする構造の例を示す図である。図15(b)は、図15(a)に示すマウスピースホルダ73aおよびマウスピース73のxz平面における断面図である。
【0147】
図15(a)、(b)に示すマウスピース73には、ガイド溝73cが形成されている。ガイド溝73cは、マウスピース73を噛む歯の歯列に沿うようにU字形に形成されている。プローブユニット200には、マウスピースホルダ73aが固定されている。マウスピースホルダ73aの先端は、上部と下部に分かれており、マウスピース73を上下に挟むことができる形状となっている。マウスピースホルダ73aの先端の上部と下部のそれぞれにツメ73bが設けられている。ツメ73bは、マウスピース73のガイド溝73cにはまる大きさである。そのため、マウスピース73は、ツメ73bによってマウスピースホルダ73aに固定される。
【0148】
マウスピースホルダ73aは、その先端でマウスピース73を挟んだ状態において、その内側に空洞73dができる構造となっている。マウスピースホルダ73aの空洞73d部分に向かって、上下から力が加わると、ツメ73bがマウスピース73を挟む力が緩む。例えば、操作者が、指でマウスピース73の空洞73d部分を押すことによって、マウスピース73のマウスピースホルダ73aに対する固定が緩和される。固定が緩和されると、操作者は、ガイド溝73cに沿ってマウスピースホルダ73aを動かすことができるようになる。操作者が指を離すと、ツメ73bはガイド溝73cに深く嵌まるので、マウスピース73は、マウスピースホルダ73aに固定される。
【0149】
上記構成により、マウスピースホルダ73aおよびプローブユニット200がマウスピース73のガイド溝73cに沿ってスライドすることができる。その結果、マウスピース73を噛む歯列において複数の歯の計測が可能となる。
【0150】
また、図16に示すように、マウスピースホルダ73aを、直角に曲げた形状にすることもできる。この場合、図示しないが、プローブユニット200に、図14に示したような、ミラー81aを有するガイド48が設けられることが好ましい。これにより、プローブユニット200から出た計測光の光軸を90度曲げることができる。その結果、例えば、口腔の開口部からプローブユニット200を侵入させ、計測光を臼歯部に斜めにあてることができる。
【0151】
(スペーサを固定部材に用いる例)
プローブユニット200と被計測体を固定する固定部材として、マウスピースやシーネの他に、例えば、スペーサを用いることができる。図17(a)は、スペーサを固定部材に用いた場合のプローブユニット200の断面図である。図17(a)に示す例では、スペーサ211がプローブユニット200に固定されている。スペーサ211の先端は、被計測体22に接するための面が形成されている。スペーサ211の長さは、レンズ21bの焦点距離に応じて決定される。すなわち、スペーサ211が被計測体22に接した状態で、レンズ21bによって集光される計測光28の焦点が被計測体22の表面または内部にくるように、前記スペーサ211の長さが決められる。
【0152】
上記のマウスピースを固定部材とした場合、被計測体22である上下の歯でマウスピースを噛んだ状態で固定されるので、より安定して固定できる反面、一旦固定するとプローブユニット200の計測位置を変えるのに手間がかかる。これに対して、スペーサ211を固定部材として用いる場合は、スペーサ211が被計測体22に接することでプローブユニット200の位置が固定されるので、プローブユニット200の計測位置を変えやすくなる。すなわち、操作者は、プローブユニット200の計測位置を自由に操作でき、かつ、計測時にはその計測位置を固定することができる。
【0153】
図17(b)は、スペーサを備えるプローブユニットの変形例を示す断面図である。図
17(b)に示すプローブユニット203は、図14に示したプローブユニット203と同じである。図17(b)に示すプローブユニット203には、マウスピースホルダ77aおよびマウスピース77の替わりに、スペーサ211が設けられている。被計測体22をスペーサ211の一部に当てることにより、プローブユニット203の被計測体22に対する位置と方向を固定することができる。
【0154】
図18(a)および(b)は、スペーサを備えるプローブユニットの変形例を示す図である。図18(a)に示すプローブユニット206は、光ファイバ18からの計測光を被計測体22へ導くためのレンズ21a、21bを備える。また、プローブユニット206には、計測光28を出射するための窓206aが設けられている。窓206aが設けられた面には、スペーサ211が固定されている。
【0155】
図18(a)に示すプローブユニット206において、ファイバ18から出た計測光28は、レンズ21aでコリメートされ、レンズ21bで集光され、被計測体22へ導かれる。スペーサ211の計測光28の光軸方向における長さは、レンズ21bの焦点距離に応じて決められる。すなわち、スペーサ211が被計測体22に接した状態で、被計測体22の内部にレンズ21bの焦点が来るように、スペーサ211の長さが決められる。
【0156】
図18(a)に示すプローブユニット206は、計測光を、x軸方向またはy軸方向の走査する手段を有していない。操作者は、プローブユニット206を手で持った状態でx軸方向またはy軸方向に移動させることで走査することができる。この場合、操作者は、スペーサ211が被計測体22に接した状態でプローブユニット206を移動させることにより、被計測体22とプローブユニット206との距離を一定に保ったまま走査することができる。これにより、操作者が手に持って被計測体22に対してフリーにかざすタイプのプローブユニットにおいて、高解像度・高到達度(計測光を到達させ反射光を捕らえられる最大深さ)の測定が可能になる。
【0157】
図18(b)に示すプローブユニット207は、レンズ21a、21bおよび計測光28の光軸の方向を90度変更するミラー83を備える。プローブユニット207には、ミラー83によって光軸が変更された計測光28を出射するための窓207aが設けられている。窓207aが設けられた面には、スペーサ211が固定されている。
【0158】
図18(b)に示すプローブユニット207において、ファイバ18から出た計測光28は、レンズ21aでコリメートされ、ミラー83で反射した後、レンズ21bで集光され、被計測体22へ導かれる。スペーサ211が被計測体22に接した状態で、被計測体22の内部にレンズ21bの焦点が来るように、スペーサ211の長さが決められる。
【0159】
(回転体を備えるプローブユニットの例)
図19は、本実施形態におけるプローブユニットの他の変形例を示すxz平面における断面図である。図19に示すプローブユニット204のハウジング471は、yz平面における断面が円形である円筒形に形成されている。プローブユニット204には、回転体131が取り付けられている。
【0160】
回転体131も、yz平面における断面が円形である円筒形である。回転体131の先端部は、ドーム形状で塞がれている。回転体131のハウジング側端部の内径に沿って、円筒形の回転体保持具154が設けられている。回転体保持具154の一部は、回転体131の内部から突出しており、この突出している部分とハウジング471との間にベアリング153が設けられている。これにより、回転体131は、円筒の中心軸の方向を回転軸として回転可能となっている。
【0161】
回転体131のハウジング側端部の外径に沿ってモータ回転子151が設けられている。ハウジング471の内径であって、このモータ回転子151に対応する部分には、モータ固定子152が埋込まれている。これらのモータ回転子151およびモータ固定子152が、回転体131を回転させる駆動部である。
【0162】
ハウジング471の光ファイバ保持部471aで保持された光ファイバ18は、回転体131の内部に、回転体の回転軸方向に導かれている。光ファイバ18の先端部には、光ファイバ18から出る計測光28を平行光にコリメートするレンズ21cが設けられている。レンズ21cは、レンズホルダ210cによって回転体131内部に固定されている。
【0163】
また、回転体131の内部には、対物ミラー82bが設けられている。対物ミラー82は、光ファイバ18から出射した計測光28の光路を、回転体131の回転軸方向から、回転軸と一定の角度を有する方向へ変える。
【0164】
回転体131の側面には、対物ミラー82bで光路の方向が変えられた計測光28を回転体131の内部から外部へ照射するための照射口131aが設けられている。照射口131aには、レンズ21dが設けられている。
【0165】
上記の構成により、光ファイバ18から出射し、回転体131の回転軸方向へ進む計測光28は、対物ミラー82bで反射して、回転軸方向と一定の角度を有する方向へ進む向きを変える。進む向きを変えた計測光28は、照射口131aのレンズ21dを通って、回転体131の外へ出て、被計測体22に集光される。
【0166】
また、被計測体22で反射した計測光28の反射成分は、照射口131aからレンズ21dを通って回転体131内部へ入る。照射口131aから回転体131へ入った計測光28の反射成分は、対物ミラー82bで反射して、進む向きを回転体131の回転軸方向へ変える。進む向きを変えた計測光28の反射成分は、レンズ21cで集光され光ファイバ18へ入射し、OCTユニット100へ導かれる。
【0167】
回転体131が、モータ回転子151およびモータ固定子152によって、回転させられると、照射口131aから照射される計測光28は、その回転方向へ移動する。その結果、計測光28は、被計測体22のy軸方向へ走査される。
【0168】
なお、回転体131内に、例えば、対物ミラー82bを、y軸方向を回転軸として回転させるアクチュエータが設けられてもよい。対物ミラー82bを回転させることで、対物ミラー82bから被計測体22へ向かう計測光28の光軸と、回転体131の回転軸との角度を変化させることができる。前記アクチュエータが対物ミラー82bを、y軸方向を回転軸として回転させることにより、被計測体22において、計測光28をx軸方向へ走査することができる。
【0169】
なお、x軸方向への走査手段は上記の方法に限られない。例えば、回転体131は、対物ミラー82bまたはレンズ21cを回転体131の回転軸方向へ平行移動させるアクチュエータを備えてもよい。
【0170】
図19に示すプローブユニット204によれば、被計測体22が、例えば、顎口腔領域の組織ように、狭い場所に存在する場合でも、回転体131を使って被計測体22を測定することができる。
【0171】
(回転体の変形例)
図20は、回転体の変形例を示す断面図である。図20に示す回転体132は、可撓性のある材料で形成されている。そのため、回転体132の回転軸を曲げて、計測光28を照射する方向を調節できるようになっている。また、回転体132の回転軸方向の長さは、図19に示す回転体131に比べて長いことが好ましい。
【0172】
回転体132の照射口132a付近には、回転体132の外周を覆う円筒状のスリーブ161が設けられている。スリーブ161と回転体132との間にはベアリング162が設けられている。これにより、回転体132が回転しても、その回転運動はスリープ161に伝わらない。したがって、スリーブ161を固定することによって、回転体132は、その曲がり具合および位置が保たれた状態で回転することが可能になる。その結果、回転体132と被計測体22との相対位置を固定した状態で、被計測体22を計測することが可能となる。
【0173】
例えば、操作者がスリーブ161を手に持って回転体132を適切な位置に保持した状態で、被計測体22を計測することができる。また、スリーブ161を据え置きの台やポール、または診療台に固定された多関節アームの先端に固定された状態で、被計測体22を計測することができる。
【0174】
図20に示す回転体132によれば、被計測体22の計測対象部分に合わせて、計測光28を照射する向きおよび位置を柔軟に変えることができるとともに、計測時には、回転体132と被計測体22との相対位置を固定することが可能となる。したがって、被計測体22が、例えば、顎口腔領域の組織ような複雑な形状をした物である場合に、本変形にかかる回転体132を備えるプローブユニット205は有効に活用されうる。
【0175】
(スリーブの変形例)
図21は、スリーブの変形例を示す断面図である。図21に示すスリーブ163は、回転体132の照射口132aおよび先端部を全て覆うように回転体132の外周に設けられている。スリーブ163は回転体132の外周を覆う円筒であって、その先端部は、ドーム形状で塞がれている。スリーブ163と回転体132との間には、ベアリング162が設けられている。そのため、スリーブ163は、回転体132が回転しても、それに連動して回転しない。
【0176】
また、スリーブ163の側面であって、回転体132の照射口132aに対応する部分には、計測光28が通るための2つの窓163a、163bが互いに対向する位置に形成されている。被計測体22が窓163aまたは窓163bを覆うようにスリーブ163に接することにより、被計測体22と回転体132との相対位置関係が固定される。
【0177】
例えば、被計測体22が被計測者の口腔内の歯または顎提(歯が抜けた状態での歯茎部分)である場合、被計測者が、スリーブ163を、被計測体22である上下顎歯列または顎堤で、窓163aおよび窓163bを覆うように噛むことで、回転体132と被計測体22との相対位置を固定することができる。その際、回転体132は、被計測体22との相対位置が固定された状態で回転することができるので、計測光28を被計測体22上でy方向について安定して走査させることができる。
【0178】
なお、スリーブ163は、回転体132の全体を覆うように設けられても良い。その場合、スリーブ163の根元は、ハウジング471に固定されることが好ましい。また、その場合、スリーブ163は、回転体132と同様に、可撓性を有する材料で形成されることが好ましい。
【0179】
また、上記の回転体131、132およびスリーブ161、163は、円筒形である場合について例示したが、これらの形状は円筒形これに限定されない。例えば、これらの形状を角柱等にすることができる。
【0180】
本実施形態ではプローブユニット200、203、204、205は、可撓性の光ファイバ18を通してOCTユニット100と接続されており、ハンズフリーな構成としている。この構成に替えて、例えば、プローブユニット200が、据え置きの台やポールもしくは診療台に固定される構成であってもよい。この場合、被計測者(患者)が固定されたプローブユニット200のマウスピース73を噛むことにより、プローブユニット200と被計測体22である歯との相対位置が固定される。また、この場合には計測光28は必ずしも光ファイバ18でOCTユニット100とプローブユニット200間を導光される必要はなく、空中を導光されても良い。すなわち、実施の形態2で後述するように、ファイバカップラ19の代わりにビームスプリッタが用いられてもよい。この場合は、シリンドリカルレンズを用いて、X軸方向またはY軸方向の機械的操作を省略することが好ましい。
【0181】
また、プローブユニット200は据え置きの台、ポールもしくは診療台に固定された多関節アームの先端に固定されていても良い。この場合には計測光は光ファイバ18でOCTユニット100とプローブユニット200間を導光される。
【0182】
(実施の形態2)
図22は、実施の形態2におけるFD−OCT装置の構成の一例を表す図である。図22において、図1に示すFD−OCT装置と同じ部分には、同じ番号を付し、その説明を省略する。
【0183】
図22に示すFD−OCT装置が図1に示すFD−OCT装置と異なる点は、シリンドリカルレンズ33が設けられている点と、ファイバカップラ19の代わりにビームスプリッタ34が用いられている点と、y軸方向の走査を行うガルバノミラーが設けられていない点と、光検出器42が2次元の光検出器である点である。
【0184】
実施の形態1においては、y軸方向の走査方法として、ガルバノミラー20bを駆動させる方法を用いていたが、本実施の形態においては、ガルバノミラー20bによるy軸方向の走査に替えて、シリンドリカルレンズ33によるy軸方向への光拡張を採用している。
【0185】
シリンドリカルレンズ33は、レンズとして機能する方向と光軸を含む平面内での断面は通常のレンズであり、この断面形状はレンズとして機能しない方向における位置によらず同一である。シリンドリカルレンズ33は、レンズとして機能する方向が、y方向となる様に配置する。つまり、シリンドリカルレンズ33によってy方向に広げられた光が被計測体22のy方向に分布照射される(シリンドリカルレンズ33上のy方向と被計測体22のy方向は、光学的に同一な方向であり、必ずしも空間的に同一の方向ではない)。シリンドリカルレンズ33がy方向光拡張手段になっている。計測光の断面は、y軸方向に沿う線状となる。
【0186】
なお、シリンドリカルレンズ33と同様の機能を、シリンドリカルミラーを用いて実現することもできる。
【0187】
計測光はy軸方向に空間的に拡張された光であるために、この光を光ファイバで導光する場合には、この光ファイバ18は、断面を1次元線上に束ねた光ファイバ、または断面を2次元円形に束ねた光ファイバであることが必要となる。なお、図22に示すFD−OCT装置では、計測光28および参照光29を光ファイバで導いかれているが、必ずしも光ファイバを用いる必要はない。すなわち、FD−OCT装置は、計測光28および参照光29を、光ファイバを用いずに空間伝播させる構造であってもよい。
【0188】
前記計測光28は、被計測体22のy軸方向に分布照射されるので、y軸方向に機械的走査をしなくても、被計測体22のy軸方向の断面を2次元の光検出器42で得ることができる。そのため、ガルバノミラー20aがx軸方向に走査を行うだけで、被計測体22の3次元的立体構造を得ることができる。
【0189】
その結果、装置が、簡単かつ安価になり、歯科測定に適用できるFD−OCT装置が得られる。
【0190】
なお、本実施に形態にかかるFD−OCT装置は、歯科用に好ましく用いられるが、歯科測定に限られず、他の分野の測定に用いることもできる。また、本実施の形態においては、FD−OCT装置について説明を行ったが、必ずしもFD−OCT装置である必要はなく、従来のOCT装置でもよい。
【0191】
(実施の形態3)
図23は、実施の形態3におけるFD−OCT装置の構成の一例を表す図である。図23において、図1に示すFD−OCT装置と同じ部分には、同じ番号を付し、その説明を省略する。
【0192】
図23に示すFD−OCT装置が図1に示すFD−OCT装置と異なる点は、光源光偏光操作器35、参照光偏光操作器36、干渉光偏光操作器37が設けられている点である。
【0193】
図24(a)は、光源光偏光操作器35の構成を示す概略図である。図24(a)において、偏光子67は、特定の偏光成分のみを通過させる部材であり、1/2波長板68は、通過光の波長を1/2波長だけずらす部材であり、1/4波長板69は通過光の波長を1/4波長だけずらす部材である。偏光子67によりまず、光源光または計測光28に基本偏光特性が与えられる。さらに1/2波長板68、1/4波長板69を光軸まわりに適切な角度で回転させることにより、偏光の方向を操作することができる。これらの波長板68、69を使うことで、光源光または計測光の偏光状態を任意に設定することができる。
【0194】
図24(b)は、参照光偏光操作器36または、干渉光偏光操作器37の構成を示す概略図である。これらは、1/2波長板70および1/4波長板71により構成され、これらの角度を調整することにより、反射光の偏光状態を調べることが出来る。
【0195】
一般に光の偏光状態は4成分のベクトル(4次元ベクトル)Siで表すことが出来る。ある偏光状態にある光が物体に入射した場合にその透過光、反射光はその物体との相互作用により偏光状態が変化する。つまり、反射光の偏光状態を表す4次元ベクトルS0は、入射光の偏光状態を表す4次元ベクトルSiとは異なるものとなる。従って、物体の「偏光状態を変化させる特性(例えば、複屈折特性)」は4×4のマトリクスM(ミュラー行列)で表現することが出来る。つまり、ベクトルSiで表される偏光状態を持つ光をマトリクスMで表される複屈折特性を持つ物質に入射したとき、その物質から出てくる光の偏光状態を表すベクトルS0は、S0=M×Siによって求められる。
【0196】
そこで、ある物質の複屈折特性を表すマトリクスMを測定するためには、任意の4つのベクトルで表される偏光状態を持つ光に物質を通過させ、通過後の光の4つのベクトル成分を検出すればよい。物体の各計測点でこのミュラーマトリクスが計測できる。
【0197】
本実施の形態においては、計測光が少なくとも4種類の独立した偏光状態になる様に計測光路にある光源光偏光操作器35を操作し、参照光偏光操作器36または干渉光偏光操作器37を操作して、これらの偏光状態である4つのベクトル成分による干渉光を観測する様にすれば、これらの関係から16種類のミュラー行列画像が得られる。これは被写体の断層画像各部の「偏光状態を変化させる特性=被写体固有の特性」を表す画像となる。
【0198】
なお、参照光偏光操作器36、干渉光偏光操作器37は、必要に応じていずれか一つだけ設けてもよい。
【0199】
口腔組織を含む生体組織はそれぞれ特有の偏光特性や複屈折特性を持っているので、本実施の形態によれば、歯芽や歯周組織の複屈折特性を検出できる。特にコラーゲンは大きな複屈折特性を持ち、例えばコラーゲンを含まないエナメル質と、コラーゲンを多量に含む象牙質の弁別観察が可能となる。また、口腔組織各部の固有の偏光特性や複屈折特性を反映した16種類の画像を取得可能であり、正常組織の弁別のみならず、う蝕やうっ血等の病変組織の可視化も可能となる。
【0200】
なお、本実施の形態は、図1に示すFD−COT装置に偏光操作器を設ける場合の例について説明したが、本発明は、これに限られない。例えば、図22に示す実施の形態2におけるFD−OCT装置にも適用することができる。
【0201】
(実施の形態4)
図25は、本実施の形態における光源の構成を示す図である。本実施の形態における光源は、OCT装置に用いられる。例えば、図1に示すFD−OCT装置の光源15は、1台の単一波長光源である。これに対し、本実施の形態においては、光源15の代わりに、2以上の互いに異なる波長の光源56a、56b、56cを備える。光源56aは、例えば、830nmを中心波長とする光源、光源56bは、例えば、1300nmを中心とする光源、56cは、例えば、1600nmを中心とする光源である。光源56a、56b、56cは、例えば、チューナブルLD(Laser Diode)であってもよい。光源56a、56b、56cのうちOCT装置によって計測に使用される光源は、回転ミラー57の駆動によって、切り替えられる。すなわち、回転ミラー57の特定の角度に対応する位置に光源56a、56b、56cが配置される。回転ミラー57としてガルバノミラーを用いることができる。
【0202】
ところで、口腔組織、口腔病変組織または口腔補綴物においては、光の吸収係数、透過係数、反射係数の波長依存性が様々である。例えば、800nmの付近の波長の光においては、セメント質や歯槽骨の透過係数が高く、エナメル質や象牙質の反射係数が比較的大きい。また、歯肉等の軟組織は、波長が1300nm付近や1500nm付近の光の透過性が高いので、このような光を光源に使用することは、歯肉下の歯槽骨やさらにその深部の歯芽光組織の観察に最適である。また、う蝕組織においては可視光領域での蛍光特性が正常組織と異なるので、該蛍光の波長に合わせた光源を使用する必要がある。したがって、従来の単一波長の光源を用いたOCT装置では、口腔組織の全ての構造を可視化することは困難であった。
【0203】
本実施の形態におけるOCT装置は、2以上の互いに異なる波長の光源56a、56b、56cを備えるので、光源の波長を適切に選択することにより、例えば、口腔組織・口腔病変組織等のように様々な光の吸収係数、透過係数、反射係数を持つ物質の微細構造を可視化できる。例えば、1300nm〜1500nm付近の長波長の光は、800nm付近短波長の光に比べて散乱しにくい反面、水に吸収されやすい。したがって、1300nm〜1500nm付近の長波長の光は、歯牙、歯槽骨等の硬い組織の計測に好適に用いられる。
【0204】
実施の形態4におけるOCT装置において、以上に説明した部分以外の部分は、実施の形態1〜3にかかるOCT装置または従来のOCT装置を適用することができる。また、光源56a、56b、56cは、上記例の例えば、チューナブルLD(Laser Diode)に限られない。例えば、光源56a、56b、56cは、波長800nm〜16000nmの範囲にあるスーパールミネッセントダイオードであってもよい。
【0205】
(実施の形態5)
図26は、実施の形態5におけるFD−OCT装置の構成の一例を表す図である。図26において、図22に示すFD−OCT装置と同じ部分には、同じ番号を付し、その説明を省略する。なお、本実施の形態は、図22に示すFD−OCT装置だけでなく、実施の形態1〜3にかかるFD−OCT装置、または従来のOCT装置に適用することができる。
【0206】
図26に示すFD−OCT装置が図22に示すFD−OCT装置と異なる点は、パイロット光源59およびハーフミラー58、60が設けられている点と、光検出器42の替わりにCCDカメラ26が設けられている点である。
【0207】
パイロット光源59は、被計測体22に投影するパイロット光を照射するために設けられている。パイロット光とは、OCT装置を使用して計測を行う操作者が、撮影部位、撮影範囲を撮影中または撮影前後に確認するために撮影範囲に照射される光である。パイロット光源59から照射されるパイロット光は、可視光であることが好ましい。
【0208】
パイロット光源59から出たパイロット光は、ハーフミラー58によって、光源15から出た光源光と同一光軸上に導かれる。パイロット光は、光源光、計測光とともに被計測体22に投影される。この投影は目視観測可能であり、計測光と同じ場所が照射されるので、操作者は計測範囲を認識することができる。
【0209】
パイロット光の光軸に垂直な面における断面は点状であっても線状であってもよい。断面が点状のパイロット光であれば、パイロット光は、その光軸を計測光の中心光軸上に配置されることが好ましい。断面が線状のパイロット光であれば、パイロット光の前記断面は、計測光28のy軸方向に沿うように配置されることが好ましい。図26に示すOCT装置は、シリンドリカルレンズ33を採用した形態であるので、パイロット光は、シリンドリカルレンズ33を通ることにより断面線状となって被計測体22に照射される。
【0210】
被計測体22で反射したパイロット光は、計測光28の反射成分とともに再びビームスプリッタ34を経て、干渉光とともにCCDカメラ26へ照射される。干渉光およびパイロット光はCCDカメラ26で検出される。
【0211】
CCDカメラ26は、2次元撮像装置としての可視光に感度帯域のある2D−CCDカメラと、シリンドリカルレンズを採用したFD−OCTに使用する2次元光検出器としての2D−CCDカメラとを兼用することが好ましい。これにより、CCDカメラ26によりFD−OCTによる干渉分光画像とともに歯の可視光画像が得られる。
【0212】
また、2次元撮像装置として可視光に感度帯域のある2D−CCDカメラをCCDカメラ26とは別に設けて、計測光軸上からハーフミラー60等を使って、可視光に感度帯域のある2D−CCDカメラにパイロット光を導くことによって、被計測体22の可視光像を得ることもできる。なお、可視光に感度帯域のある2D−CCDカメラは、300nm〜3000nmに感度帯域のある2次元撮像装置を用いることができる。
【0213】
なお、光ファイバ18は画像を伝送可能なイメージファイバで構成することが好ましい。
【0214】
また、計算機27において、パイロット光による計測部位の画像をモニターすることができる。また、さらにパイロット光による計測部位の可視光像を断層計測画像と同期記録することをもできる。
【0215】
(実施の形態6)
図27は、本実施の形態におけるOCT装置の参照ミラー付近の構成を示す図である。本実施の形態におけるOCT装置においては、参照光路上に位相変調素子を挿入すること、または参照ミラーを光軸方向に移動させることにより、参照光の位相が変化する。図27(a)は、参照光路上に位相変調素子を挿入する場合の装置の構成例を示す図である。図27(a)においては、参照ミラー24の前に位相変調素子62が挿入されている。位相変調素子62は、電気的な駆動信号により駆動する。位相変調素子62として、例えばラピッドスキャニングオプティカルディレイライン(RSOD)、音響光学素子、電気光学素子等が好ましく用いられる。
【0216】
図27(b)は、参照ミラーを光軸方向に移動させることにより、参照光の位相を変化させる場合の装置の構成例を示す図である。図27(b)においては、参照ミラー24に圧電素子63が設けられている。圧電素子63は、電気的な駆動信号により駆動する。圧電素子63が参照光の光軸方向に振動することにより、参照ミラー24が参照光の光軸方向と同じ方向に振動させられる。その結果、参照光の位相が変化させられる。
【0217】
本実施形態によれば、位相変調素子62もしくは圧電素子63により、参照光の位相を変化させることができるので、参照光の位相を、例えば90度ずつずらした5セットの回折分光干渉光強度分布を得ることができる。この回折分光干渉光強度分布を用いて、被計測体の奥行き方向(z軸方向)の形状を計測すると、奥行き方向の計測レンジを2倍に広げることができる。以下にその原理を詳細に説明する。
【0218】
一般に、FD−OCTの計測範囲は原理的には回折素子と対物レンズおよびCCDカメラの分解能により決定され、その結果奥行き方向の計測範囲が決定される。FD−OCTではCCDにより得られた回折素子のξ軸上の光強度分布(1次元または2次元)をコンピュータによりフーリエ変換またはフーリエ逆変換して時間t軸上の分布に変換(つまり、被計測体の奥行きz軸上の反射特性分布に変換)する。この場合、光強度分布はパワースペクトルなので、フーリエ逆変換の結果は、参照光の自己相関と、参照光およびz方向物体反射光の相互相関の複素共役信号が、奥行きz軸方向の分布に基本的な被写体に無関係に装置の欠陥により生じた像(アーティファクト)として重畳してしまう。このため、回折素子上の回折分光干渉像の計測が光強度分布だけではなく光の位相の分布をも計測できたと仮定して、完全な複素フーリエ逆変換を行った場合に比べて奥行き方向の計測レンジが半分になってしまう。
【0219】
回折分光干渉光の位相を直接計測することは、現象があまりにも高速(光の波長を光の速度で割った数フェムト秒以下の現象)であるためにこれを検出できる高速の光検出器は存在しない。そこで、時間的位相現象の代わりに空間的位相に変調を与えて、等価的に回折分光干渉光の位相を間接計測する。すなわち、位相変調素子62もしくは圧電素子63により、参照光の位相を例えば90度ずつずらした5セットの回折分光干渉光強度分布を得ることができる。この回折分光干渉光強度分布を、計算機27において、複素フーリエ逆変換することで、参照光の自己相関と、参照光およびz方向被計測体反射光(計測光の反射成分)の相互相関の複素共役信号によるアーティファクトを除去し、FD−OCT本来の奥行き方向の計測範囲が実現される。
【0220】
また、位相変調の周波数を適切に選んで、CCDの検出信号を同期検波することで、ノイズを除去して分解能を向上し、さらに計測範囲を広げることもできる。
【0221】
本実施形態におけるOCT装置は、以上に説明した部分以外の部分は、実施の形態1〜3にかかるFD−OCT装置または従来のOCT装置を適用することができる。
【0222】
(実施の形態7)
図28は、実施の形態7におけるFD−OCT装置の構成の一例を表す図である。図28において、図1に示すFD−OCT装置と同じ部分には、同じ番号を付し、その説明を省略する。なお、本実施の形態は、図1に示すFD−OCT装置だけでなく、実施の形態1〜3にかかるFD−OCT装置、または従来のOCT装置に適用することができる。
【0223】
図28に示すFD−OCT装置が図1に示すFD−OCT装置と異なる点は、計算機27と光源15との間に電気的変調器64が設けられている点である。
【0224】
計算機27は、電気的変調器64へON/OFF信号と共に光量変調信号を送る。電気的変調器64は、光源15に対して、光量変調信号に基づく光量制御信号を送る。光源15の出力光量は、電気的変調器64から出力される光量制御信号によって制御される。
【0225】
光検出器41で検出されたデータは、光量変調信号に従って計算機27において復調される。この変調・復調により、検出されたデータのS/N比が向上する。
【0226】
変調および復調の方式は、例えば、AM変調、FM変調とすることができる。また、電気的変調器64の代わりに光源15から照射される光の光路上に、光変調器を設けても良い。また、計測光28の反射成分(物体反射光)の光路上または参照光29の光路上に、光変調器を設けても良い。また、被計測体22および参照ミラー24の位置に同期した変調を掛ける変調器を設けてもよい。
【0227】
一般に、OCT装置の計測範囲は、ノイズの影響により狭められる。つまり、計測光は被計測体22に入るに従って減衰するので、z方向物体反射光は被計測体深部になればなるほどノイズに埋もれてしまう。このことによって、奥行き方向の計測範囲は狭まる。
【0228】
本実施の形態によれば、光源光、計測光または参照光に変調が掛けられ、検出信号が検波されるので、S/N比が改善し、計測可能範囲が広がる。
【0229】
(実施の形態8)
図29は、実施の形態8におけるFD−OCT装置の構成の一例を表す図である。図29において、図1に示すFD−OCT装置と同じ部分には、同じ番号を付し、その説明を省略する。なお、本実施の形態は、図1に示すFD−OCT装置だけでなく、実施の形態1〜3にかかるFD−OCT装置、または従来のOCT装置に適用することができる。
【0230】
図29に示すFD−OCT装置が図1に示すFD−OCT装置と異なる点は、参照光29の光路上に非線形光学素子65が設けられている点およびフィルタ66が設けられている点である。非線形光学素子65は、光の振動波形に高調波を生じさせる光学素子であり、例えば、ベータバリウムボーレイトであることが好ましい。
【0231】
また、ファイバカップラ19通過後の干渉光の光路上に光源光の波長成分をカットし、光源光の2分の1波長の波長成分を通過させるフィルタ66が設けられている。
【0232】
一般に、生体は多かれ少なかれ蛍光を発生し、その多くが2次高調波蛍光である。特に歯芽組織においては、う蝕等の病変により、この蛍光特性が変化するものが多い。
【0233】
本実施の形態によれば、非線形光学素子65を参照光上に設けることにより、参照光29の振動波形に高調波が生じる。この参照高調波の中の2次高調波成分と計測光28の反射成分(z方向物体反射光)の2次高調波成分をファイバカップラ19で干渉させる。その結果、被計測体22の蛍光特性をより鮮明に検出することができる。その結果、例えば、う蝕等の病変の断層画像弁別性が向上する。
【0234】
以下のその原理を詳しく説明する。
【0235】
生体は2光子吸収による2次高調波蛍光特性が顕著である。これは、生体構成原子に束縛された電子が計測光の光子2個分に相当するエネルギーを受けて高いポテンシャルエネルギー準位に跳躍し、そこからまた、元の準位に戻るときに発光する蛍光のことである。2次高調波蛍光のポテンシャルエネルギー準位は生体の場合、ほぼ連続的なバンドに近く、ほとんどの波長帯域に準位が存在する。さらにこの2次高調波蛍光に特徴的なのは、入射した計測光と同期した蛍光を発生する、つまりOCT装置としてのコヒーレント性が保持されているということである。この2次高調波蛍光が被計測体22内部から発光し、その一部がz方向物体反射光(計測光28の反射成分)となって戻ってくる。一方で、参照光29の経路上に非線形光学素子65が設けられているので、参照光29の振動波形に高調波が生じる。この参照光29とz方向物体反射光(計測光28の反射成分)との干渉光を計測することで、被計測体22内部の蛍光特性を検出することができる。したがって、例えば、蛍光特性の変化を伴うう蝕等の病変に診断に有効である。
【0236】
(実施の形態9)
実施の形態9におけるOCT装置は、以下に説明する部分以外の部分は、実施の形態1〜3にかかるFD−OCT装置または従来のOCT装置を適用することができるので、その説明を省略する。
【0237】
OCT装置においては、計測により得られた画像が、例えば、計算機27に備えられた表示部27a等により表示される。しかしながら、OCTのOCTの断層画像はそのまま表示したのではいくつかの違和感のある画像となる。本実施の形態におけるOCT装置では、以下のような表示を行うことによって、見やすい画像が提供される。
【0238】
被計測体の画像を表示する際に、計測光が被計測体に入射し到達した部分である光透過部と被計測体深部の計測光非到達部を弁別可能なように表示することが好ましい。
【0239】
また、OCT装置におけるワンショットでの計測範囲は、歯の大きさに比べて小さく、1枚の画像だけではどこをどの方角から撮影したものかの判別が困難である。そのため、複数の画像を合成したものを表示することが好ましい。
【0240】
また、OCTの画像における被計測体の奥行き方向(z軸方向)の距離は光学的距離であり、実際の距離ではない。そのため、光学距離を空間距離に補正したものを表示することが好ましい。
【0241】
また、z方向的に被写体表面から深くなればなるほど、計測光量が減じるのでz方向物体反射光量も減じる結果、画像表示上「暗い」=「反射の少ない」画像部分となる。そのため、奥行き方向を光学的距離または反射量積分値に基づいて濃淡補正をしたものを表示することが好ましい。
【0242】
また、通常のPCのモニタ画面上に表示した場合、特に拡大表示を行った場合には、PCモニタの画面上の解像度にくらべ、計測解像度の方が荒く、点表示または点密度表示または荒い階調表示になってしまう。そのため、点密度による濃淡表示をべた表示に修正したものを表示することが好ましい。
【0243】
また、あくまで計測で得られる画像は、物体の断層画像なので、空間的な位置・方向が把握しにくい。そのため、パイロットモニタ画像上に断層像を立体表示することが好ましい。また、操作者が任意に表示断面を選択できるユーザインターフェースを備えることが好ましい。
【0244】
また、撮影画像には、ノイズが含まれている場合がある。そのため、複数の断層画像をまたは複数の画像を積分平均して時間的なノイズ除去を行うことによって、空間的分解能を向上させたものを表示することが好ましい。また、縦方向(x方向)走査による複数の断層画像を積分平均してx方向の空間的なノイズ除去を行ったものを表示してもよい。さらに、複数の断層画像を積分平均してxおよび/またはy方向のノイズを除去したものを表示してもよい。
【0245】
また、口腔内カメラの画像と組み合わせてOCT装置で撮影、表示することもできる。
【0246】
なお、上記実施の形態を説明するために参照した図1〜16において、図中に表したものや焦点距離の大きさおよび長さの比率は、実物の比率を厳密に表しているものではない。
【0247】
以上述べてきたように、本発明にかかる歯科用OCT装置は、歯牙組織または歯周組織または歯科補綴物である被計測体の表面のみならず、内部の情報を、光を用いて取得し、表示しようとするものである。すなわち、本発明は、被計測体各部における測定分解能スケールの微小部位の歯科学的特性データを取得し、解析し、表示する歯科用光コヒーレンストモグラフィー装置に関するものである。
【0248】
本発明にかかる歯科用OCT装置は、2次元の走査を行うためのアクチュエータをプローブユニット内に備える。また、プローブユニットと被計測体との相対位置の固定にマウスピースまたはシーネが用いられることが好ましい。
【0249】
また、歯科用OCT装置における演算部は、視認性の良い計測画像の表示のために深さ方向の輝度補正を行うことが好ましい。さらに、演算部は、時間的に異なる波長の計測光による計測結果を演算することにより、被計測体の深さ方向の走査を不要にしたり、感度や計測レンジを拡大したりすることができる。すなわち、本発明にかかる歯科用OCT装置は、いわゆるスウェプトソース型OCT装置が歯科へ適用されたものである。
【産業上の利用可能性】
【0250】
本発明は、高速計測が可能であり、かつ簡単な構造で安価な光コヒーレンストモグラフィー装置として、特に歯科の分野で利用可能である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体の顎口腔領域における組織または顎口腔領域の人工組成物を被計測体とする歯科用光コヒーレンストモグラフィー装置であって、
光源と、
前記光源から出射した光源光を、参照ミラーに照射する参照光と被計測体に照射する計測光とに分ける光分割部と、
前記被計測体で反射した前記計測光と、前記参照ミラーで反射した参照光とを干渉させて干渉光とする干渉部と、
前記干渉光を計測する光検出部と、
前記光検出部が計測した干渉光に基づいて、前記被計測体で前記計測光が反射した位置および反射強度を表す反射特性データを生成し、前記被計測体の画像を生成する演算部と、
前記計測光を、前記被計測体へ導いて照射し、前記被計測体で反射した前記計測光を受光して前記干渉部へ導くプローブと、
前記プローブに、少なくとも1つの方向を回転軸として回転可能に取り付けられた回転体であって、前記回転軸と一定または可変の角度を有する方向へ前記計測光を照射する照射口を有する回転体と、
前記回転体を回転させる駆動部とを備える歯科用光コヒーレンストモグラフィー装置。
【請求項2】
前記回転体に、ベアリングを介して覆うように設けられたスリーブであって、前記照射口から照射される計測光を通す窓を有するスリーブをさらに備える請求項1に記載の歯科用光コヒーレンストモグラフィー装置。
【請求項1】
生体の顎口腔領域における組織または顎口腔領域の人工組成物を被計測体とする歯科用光コヒーレンストモグラフィー装置であって、
光源と、
前記光源から出射した光源光を、参照ミラーに照射する参照光と被計測体に照射する計測光とに分ける光分割部と、
前記被計測体で反射した前記計測光と、前記参照ミラーで反射した参照光とを干渉させて干渉光とする干渉部と、
前記干渉光を計測する光検出部と、
前記光検出部が計測した干渉光に基づいて、前記被計測体で前記計測光が反射した位置および反射強度を表す反射特性データを生成し、前記被計測体の画像を生成する演算部と、
前記計測光を、前記被計測体へ導いて照射し、前記被計測体で反射した前記計測光を受光して前記干渉部へ導くプローブと、
前記プローブに、少なくとも1つの方向を回転軸として回転可能に取り付けられた回転体であって、前記回転軸と一定または可変の角度を有する方向へ前記計測光を照射する照射口を有する回転体と、
前記回転体を回転させる駆動部とを備える歯科用光コヒーレンストモグラフィー装置。
【請求項2】
前記回転体に、ベアリングを介して覆うように設けられたスリーブであって、前記照射口から照射される計測光を通す窓を有するスリーブをさらに備える請求項1に記載の歯科用光コヒーレンストモグラフィー装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【公開番号】特開2011−240155(P2011−240155A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−168685(P2011−168685)
【出願日】平成23年8月1日(2011.8.1)
【分割の表示】特願2007−546457(P2007−546457)の分割
【原出願日】平成18年11月22日(2006.11.22)
【出願人】(390011143)株式会社松風 (125)
【出願人】(504171134)国立大学法人 筑波大学 (510)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年8月1日(2011.8.1)
【分割の表示】特願2007−546457(P2007−546457)の分割
【原出願日】平成18年11月22日(2006.11.22)
【出願人】(390011143)株式会社松風 (125)
【出願人】(504171134)国立大学法人 筑波大学 (510)
【Fターム(参考)】
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