説明

歯車形状修整入力描画装置及び歯車形状修整入力描画方法

【課題】歯形、歯すじデータの簡易入力による歯形、歯すじ形状の表示及びが確認できる歯車形状修整入力描画方法を提供するにある。
【解決手段】ワーク51に砥石31を接触させてワーク51を歯車として研削する歯車加工における歯車の歯形、歯すじ修整を行う際の入力方法として、典型的な3つのパターンであるクラウニング、テーパ及びクラウニングレリービングの各修整データ(Cr,Ctop,Tp,Lu,Ls,Rv1,Rv2,R1,R2及びR3)を入力手段から入力する一方、入力手段から入力された修整データ(Cr〜R3)に基づいて演算手段221によりクラウニング、テーパ及びクラウニングレリービングを組み合わせた修整形状(図8〜図12)を演算し、演算手段221から表示手段400,500に対して出力手段223にて修整形状(図8〜図12)を出力し、表示手段400,500にて修整形状(図8〜図12)を描画することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯車形状修整入力描画装置及び歯車形状修整入力描画方法に関する。詳しくは、歯車加工における歯形、歯すじ修整を行なう際の入力及び、入力した結果の描画(可視化)に関する装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
歯車加工おいて、歯形、歯すじ修整を行なう方法としては、下記に示す特許文献1及び2に記載される方法が知られている。
【0003】
(1)特許文献1
特許文献1は、クラウニングに関してポイントを入力し、クラウニング形状をCRTへ表示する方法である。
即ち、特許文献1の段落[0011]には、「次に、作業者は、CRT24に表示された歯車研削面形状36を参照しながら、マウス12bまたはキーボード12aのカーソルキーを用いてクラウニングポイント38をCRT24上に設定する(S4)。CPU20は、前記クラウニングポイント38を線分で連結し、クラウニング形状42を歯車研削面形状36に重ねてCRT24に表示する(S5、図3参照)。なお、CRT24には、マウス12bから指示したクラウニングポイント38に対応する(Z、X)座標も併せて表示する。さらに、このクラウニングデータ作成装置10では、表示されたクラウニング形状42の移動、拡大、縮小を行うことで、作成作業の効率を向上させることができる。」と記載されている。
【0004】
(2)特許文献2
特許文献2は、データ入力に関して、分割線の交点の各座標位置について修正研削量データを入力する方法である。
即ち、特許文献2の段落[0030]には、「Z軸の座標ポイントを設定した後は図5のステップ103に進み、歯形コーナ設定を行う。このステップは、被研削歯面たるA面、B面におけるインボリュート曲面に対する修正研削量を設定するものであり、CRTモニタ81には図8に示すような画面が表示される。図は、A面をZ軸方向へ7分割、Y軸方向へ5分割(抜け位置を含めて6分割)したもので、分割線の42の交点「11」〜「67」の各座標位置について、各データ入力エリア93aにキーボード82から修正研削量データを例えばサブミクロン単位で入力できる。図から明らかなように、各データ入力エリア93aは画面上の各座標位置「11」〜「67」に近い位置に設定されているから、歯面のどの部分をどの程度修正研削するのかを視覚的に容易に確認しつつ修正研削量データを入力することができる。この分割画面はB面についても準備されており、また、分割数を変えた(例えば抜け位置を含めてY軸方向へ15分割)画面がA面、B面について複数対準備されて、必要に応じて適当な分割数の画面を選択できるようになっている。」と記載されている。
【0005】
特許文献2では、入力値が補間されて、研削補正量が作成される。この研削補正量はトポロジカル研削用であり、トポロジカル研削では、歯面上の歯形、歯すじ方向に計算用のメッシュに切り、その一点ずつの修整量を与え、そのメッシュに沿って、少しずつ歯すじ方向に位置をずらしながら片歯面ずつ加工していく方法となる。
また、特許文献2は、CRTへの修整形状の表示に関して、座標の各点郡を連ねた修正研削断面をグラフ表示する。
【0006】
即ち、特許文献2の段落[0036]では、「次に図5のステップ107に進んで、CRTモニタ81の画面上へ研削歯面のグラフ表示を行う。グラフ表示の一例を図12に示す。図はY軸を上下方向とし、A軸を左右方向として、A面上の「11」〜「61」、「12」〜「62」、……、「17」〜「67」(図8参照)の各点群を連ねた修正研削断面を、所定の倍率でそれぞれ異なる色で表示したものである。Y軸方向の各データ表示エリア96a〜96dにはそれぞれ、グラフ目盛に対応した歯元からの距離がmm単位で表示され、一方、A軸方向の各データ表示エリア96e〜96hにはそれぞれ、グラフ目盛に対応した修正研削量がサブミクロン単位の正負の値で表示されている。また、データ表示エリア96iには1目盛当たりの修正研削量がサブミクロン単位で表示されている。これにより、歯たけ方向の修正研削面全体の形状を視覚的に確認することができる。なお、データ表示エリア96j,96kには修正研削量の最大数値と最低数値が表示され、データ表示エリア96mには各点群を連ねた修正研削断面の修正研削量の最大数値と最低数値が表示される。同様のグラフ表示をA面上の「11」〜「17」、「21」〜「27」、……、「61」〜「67」の各点群を連ねた、歯すじ方向の修正研削断面についても行うことができ、その一例を図13に示す。研削歯面のグラフ表示をB面について行うことも、もちろん可能である。なお、直線補間や円弧補間等によってグラフ表示をより滑らかにすることもできる。」と記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平6−143030号公報
【特許文献2】特開平10−6136号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1では、CRT24に表示された歯車研削面形状36を参照しながら、マウス12bまたはキーボード12aのカーソルキーを用いてクラウニングポイント38をCRT24上に設定しなければならず、また、特許文献2では、分割線の42の交点「11」〜「67」の各座標位置について、各データ入力エリア93aにキーボード82から修正研削量データを入力しなければならないなど、歯車形状修正のために煩雑な入力が必要であり、しかも、入力された結果がどのような修正形状となるのか分かりにくかった。
本発明は、上記従来技術に鑑みてなされたものであり、歯形、歯すじデータの簡易入力による歯形、歯すじ形状の表示及びが確認できる装置及び方法を提供するにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決する本発明の請求項1に係る歯車形状修整入力描画装置は、ワークに砥石を接触させて前記ワークを歯車として研削する歯車加工における前記歯車の歯形、歯すじ修整を行う際の入力方法における典型的な3つのパターンであるクラウニング、テーパ及びクラウニングレリービングの各修整データを入力するための入力手段と、前記入力手段から入力された前記修整データに基づいて前記クラウニング、テーパ及びクラウニングレリービングを組み合わせた修整形状を演算する演算手段と、前記演算手段から表示手段に対して前記修整形状を出力する出力手段と、前記出力手段にて出力された前記修整形状を描画する表示手段とを備えることを特徴とする。
【0010】
上記課題を解決する本発明の請求項2に係る歯車形状修整入力描画装置は、請求項1において、前記表示手段には、前記修整データと共に前記修整形状とが同一画面にて表示されることを特徴とする。
【0011】
上記課題を解決する本発明の請求項3に係る歯車形状修整入力描画装置は、請求項1において、前記修整データとして、歯形修整に関する修整データを入力したときには、前記表示手段には前記修整形状として、法線長さ又は径方向長さに対する修整量を示す歯形修整画面が描画されることを特徴とする。
【0012】
上記課題を解決する本発明の請求項4に係る歯車形状修整入力描画装置は、請求項1において、前記修整データとして、歯すじ修整に関する修整データを入力したときには、前記表示手段には前記修整形状として、歯すじ方向長さに対する修整量を示す歯すじ修整画面が描画されることを特徴とする。
【0013】
上記課題を解決する本発明の請求項5に係る歯車形状修整入力描画装置は、請求項1において、前記表示手段には、前記砥石と前記歯車の接触ラインを示す接触線が表示されることを特徴とする。
【0014】
上記課題を解決する本発明の請求項6に係る歯車形状修整入力描画装置は、請求項1において、前記表示手段には、歯形形状誤差シミュレーション画面又は歯すじ形状誤差シミュレーション画面が表示されることを特徴とする。
【0015】
上記課題を解決する本発明の請求項7に係る歯車形状修整入力描画方法は、ワークに砥石を接触させて前記ワークを歯車として研削する歯車加工における前記歯車の歯形、歯すじ修整を行う際の入力方法として、典型的な3つのパターンであるクラウニング、テーパ及びクラウニングレリービングの各修整データを入力手段から入力する一方、前記入力手段から入力された前記修整データに基づいて演算手段により前記クラウニング、テーパ及びクラウニングレリービングを組み合わせた修整形状を演算し、前記演算手段から表示手段に対して前記修整形状を出力し、前記表示手段にて前記修整形状を描画することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明の請求項1に係る歯車形状修整入力描画装置は、ワークに砥石を接触させてワークを歯車として研削する歯車加工における歯車の歯形、歯すじ修整を行う際の入力方法として、典型的な3つのパターンであるクラウニング、テーパ及びクラウニングレリービングの各修整データを入力手段から入力する一方、入力手段から入力された修整データに基づいて演算手段によりクラウニング、テーパ及びクラウニングレリービングを組み合わせた修整形状を演算し、演算手段から表示手段に対して出力手段にて修整形状を出力し、表示手段にて修整形状を描画するので、以下の効果i)〜iii)を奏する。
i)典型的な3つのパターンを組合せることで、現実的に必要なほとんど全ての修整形状
に対応できる。
ii)入力した直後にその修整形状イメージが確認できるため、視覚的に形状が分かる。
iii)必要のない修整パターンは入力する必要がないので、入力を単純化でき、従って、3次元的な入力は不要となる。
【0017】
本発明の請求項2に係る歯車形状修整入力描画装置は、表示手段には、修整データと共に修整形状とが同一画面にて表示されるので、修整データに対する修整形状が視覚的に容易に確認できる。
【0018】
本発明の請求項3に係る歯車形状修整入力描画装置は、修整データとして、歯形修整に関する修整データを入力したときには、表示手段には修整形状として、法線長さ又は径方向長さに対する修整量を示す歯形修整画面が描画されるので、歯形修整に関しても、上記効果i)〜iii)を奏する。
【0019】
本発明の請求項4に係る歯車形状修整入力描画装置は、修整データとして、歯すじ修整に関する修整データを入力したときには、表示手段には修整形状として、歯すじ方向長さに対する修整量を示す歯すじ修整画面が描画されるので、歯すじ修整に関しても、上記効果i)〜iii)を奏する。
【0020】
本発明の請求項5に係る歯車形状修整入力描画装置は、表示手段には、砥石と歯車の接触ラインを示す接触線が表示されるので、砥石と歯車の接触ラインを視覚的に確認できる。
【0021】
本発明の請求項6に係る歯車形状修整入力描画装置は、請求項1記載の歯車形状修整入力描画方法において、表示手段には、歯形形状誤差シミュレーション画面又は歯すじ形状誤差画面が表示されるので、法線方向又は径方向に対する誤差、歯すじ方向長さに対する誤差を視覚的に確認できる。
【0022】
本発明の請求項7に係る歯車形状修整入力描画方法は、ワークに砥石を接触させてワークを歯車として研削する歯車加工における歯車の歯形、歯すじ修整を行う際の入力方法として、典型的な3つのパターンであるクラウニング、テーパ及びクラウニングレリービングの各修整データを入力手段から入力する一方、入力手段から入力された修整データに基づいて演算手段によりクラウニング、テーパ及びクラウニングレリービングを組み合わせた修整形状を演算し、演算手段から表示手段に対して出力手段にて修整形状を出力し、表示手段にて修整形状を描画するので、以下の効果i)〜iii)を奏する。
i)典型的な3つのパターンを組合せることで、現実的に必要なほとんど全ての修整形状
に対応できる。
ii)入力した直後にその修整形状イメージが確認できるため、視覚的に形状が分かる。
iii)必要のない修整パターンは入力する必要がないので、入力を単純化でき、従って、3次元的な入力は不要となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】図1(a)は歯車研削盤の斜視図、図1(b)は歯車研削盤のドレッシングを示す説明図、図1(c)は歯車研削盤における歯車加工の説明図である。
【図2】歯車研削盤の制御装置のブロック図である。
【図3】歯形修整の入力説明図である。
【図4】歯すじ修整の入力説明図である。
【図5】基礎円、歯面及び法線長さの関係を示す説明図である。
【図6】図6(a)は直径と法線長さ関係を示す説明図、図6(b)は法線長さを直線的に表した説明図である。
【図7】図7(a)は歯すじ修整におけるLu,LsとRv1,Rv2との関係を示す説明図、図7(b)はRv(+)とRv2(-)との関係を示す説明図である。
【図8】図8(a)は左歯面における歯形修整画面、図8(b)は右歯面にける歯形修整画面である。
【図9】図9(a)は左歯面における歯すじ修整画面、図9(b)は右歯面にける歯すじ修整画面である。
【図10】図10(a)は左歯面における接触ラインを示す接触線画面、図10(b)は右歯面にける接触ラインを示す接触線画面である。
【図11】図11(a)は左歯面における歯形形状誤差シミュレーション画面、図11(b)は右歯面にける歯形形状誤差シミュレーション画面である。
【図12】図12(a)は左歯面における歯すじ形状誤差シミュレーション画面、図12(b)は右歯面にける歯すじ形状誤差シミュレーション画面である。
【図13】本実施例における歯車加工における歯形、歯すじ修整の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明について、図面に示す実施例と共に具体的に説明する。
【実施例1】
【0025】
本発明の一実施例に係る歯車形状修整入力描画装置及び歯車形状修整入力描画方法について、図1〜図13を参照して説明する。
図1は、本実施例の適用される歯車研削盤の概要図である。
図1(a)に示す通り、ベッド10上には、コラム20が立設されると共にコラム20には砥石ヘッド30が設けられ、砥石ヘッド30には砥石31が、3軸(X軸−Y軸−Z軸)方向に移動可能に取り付けられている。
【0026】
コラム20には、砥石ヘッド30の上方において、ドレス装置40が設けられ、このドレス装置40には二つのドレッサ41,42がU方向(図中上下方向)に移動自在に取り付けられている。
従って、図1(b)に示す通り、砥石31に対してドレッサ41,42を図中矢印方向に移動させて接触させることにより、砥石31の刃面をドレッシングすることができる。
一方、ベッド10上にはテーブル50が設置されると共にテーブル50上には、図1(c)に示す通り、鉛直方向Cを中心として回転自在(回転方向を矢印Cで示す)にワーク51が載置されている。
また、図1(c)に示す通り、矢印C方向に回転するワーク60に対して、砥石31をZ軸方向乃至X軸方向に移動に移動させて接触させることによりワーク51を歯車として研削することができる。
【0027】
図2は、図1に示す歯車研削盤に対する制御装置を示すものである。
即ち、パソコンシステム200は、制御言語変換ソフト211を介してNC制御装置100に指令を与える実行マクロ210と、演算機能221、入力ポート222及び出力ポート223を備える対話ソフト220とをシステムバス230にて結合したものであり、更に、システムバス230にはCPU240、RAM/RO250が接続されている。入力ポート222には、INPUTキー300が接続され、出力ポート223には、表示画面400、プリンタ500、外部記憶装置600が接続されている。
従って、INPUTキー300から入力された値に基づいて、演算機能221により所定の演算が行われ、制御言語ソフト221を通じてNC制御装置100に対して指令を与えることにより、図1に示す歯車研削盤を制御することが可能となっている。
【0028】
本実施例における歯車加工おいて、歯形、歯すじ修整を行なう際の入力方法としては、図3及び図4に示すように、歯形、歯すじについて典型的な3種類の形状のデータを入力する。
図3は、歯形修整の入力説明図であり、左側がクラウニングを示し、中央がクラウニングレリービングを示し、右側がテーパを示すものである。
図4は、歯すじ修整の入力説明図であり、左側がテーパを示し、中央がクラウニングレリービングを示し、右側がクラウニングを示すものである。
各形状についての修整データについての入力画面を表1に示す。
表1においては、いずれも、左歯面と右歯面のそれぞれに修整値を入力する。
【0029】
【表1】

【0030】
表1における3種類の形状についての修整データは、以下の通りである。
(1)クラウニングについての修整データとしては、図3の左側及び図4の右側に示す通り、歯形又は歯すじ修整を行うエリア内おける最大高さCr及び最大高さの位置Ctopを用いる。
(2)テーパについての修整データとしては、図3の右側及び図4の左側に示す通り、歯形又は歯すじ修整を行うエリア内おける傾斜量Tpを用いる。
(3)クラウニングレリービングについての修整データとしては、図3の中央及び図4の中央に示す通り、歯先側修整幅Lu、歯元側修整幅Ls、歯先側修整高さRv1、歯元側修整高さRv2、歯先側曲率半径R1、歯元側曲率半径R2及び中央部側曲率半径R3を用いる。
【0031】
<歯形・歯すじ修整画面のLu,Lsの違い>
歯形、歯すじ修整画面のLu,Lsの違いは下記の通りである。
[歯形修整画面のLu,Lsの説明]
先ず、法線長さとは、図5に示す通り、右歯面上の点aと基礎円Bを繋ぐ法線の長さLを指すものである。
次に、表1に示すLu,Lsについて、例えば、図3に示す歯形修整を行うエリアは、図6(a)に示す通り、直径で言えば、daからdnfの範囲になるが、法線長さで言えば、LnfからLaとなる。
Luとは、da(La)を起点とした修整の折れ点までの長さである。
Lsとは、dnf(Ln)を起点とした修整の折れ点までの長さである。
また、法線長さについて直線的に表すと、図6(b)に示す通りとなる。
このように、テーパ修整(傾斜が付く)やレリービング修整(修整領域の端部が折れ下がったり、上がったりする)等において、どこを起点とするかを示すために、Lu,Lsが必要となるのである。
【0032】
[歯すじ修整画面のLu,Lsの説明]
歯すじ修整は、歯形と異なり、Lu,Lsについて、図7(a)に示すように、歯幅(歯すじ方向の長さ)の位置で指定する。その目的は、歯形と同じくテーパやレリービング修整を行う時に、歯幅のどこを起点とするかを示すために用いるためである。
図7(a)は、レリービングの場合を示しており、Lu,Lsに対してRv1,Rv2が直交する方向であることを示している。
図7(b)は、Rv(+)とRv2(-)との関係を示すものである。
【0033】
<入力画面での「目標値」と「修整値」の違いについて>
砥石は弾性体なので、ワークに対する剛性はかなり低く、接触状態によっては砥石が負けて変形してしまったり、クーラントのかかり具合で変形するため、狙いの形状には一発で到達しずらく、このような調整が必要になる。
即ち、表1中の目標値とは、製作図面等で指示のあった歯形形状、歯すじ形状(狙いの数値)である。つまり、目標値には、その狙いの値を記録しておくものである。この狙いに対して敢えて、歯形や歯すじを修整することがある。この狙いに対しての修整について、入力画面における修整値へ入力するのである。
ここで、表1の入力画面は、図3の歯形修整の入力説明図又は図4の歯すじ修整の入力説明図と同一画面に表示されるものとする。
表2は、表1に示す入力画面と同一画面に表示される参照値を示すものである。
【0034】
【表2】

【0035】
歯形修整画面の一例を図8(a)(b)に、歯すじ修整画面の一例を図9(a)(b)に示す。図8(a)(b)は表1に与えられた修整データに基づくものでる。
図8(a)は左歯面を、図8(b)は右歯面を示すものであり、いずれも、歯形形状は歯先からの法線長さが歯形修整画面におけるLuに示す5.93mmの間は、歯先に向かって修整量がマイナス方向に直線的に増加し、歯先部では修整量が歯形修整画面におけるRv1に示す45μmとなる。また、歯元からの法線長さが歯形修整画面におけるLuに示す5.93mmの間は、歯元部に向かって修整量がマイナス方向に直線的に増加し、歯元部では修整量が歯形修整画面におけるRv2に示す45μmとなる。歯形修整画面におけるLu、Ls以外については修整量は0である。
図9(a)は左歯面を、図9(b)は右歯面を示すものであり、いずれも、歯すじ形状は、一方の端部から歯すじ修整画面におけるLuに示す18mmの間は、一方の端部に向かって修整量が直線的に増加し、一方の端部では修整量が歯すじ修整画面におけるRv1に示す50μmとなる。また、他端部から歯すじ修整画面におけるLsに示す18mmの間は、一方の端部に向かって修整量が直線的に増加し、一方の端部では修整量が歯すじ修整画面におけるRv1に示す50μmとなる。歯すじ修整画面におけるLu、Ls以外については修整量は0である。
【0036】
図10は、図8の歯形修整画面を砥石と歯車の接触ラインを示す接触線画面にして表示させたものである。
図10(a)は左歯面を、図10(b)は右歯面を示し、歯すじが法線長さに対して曲線的に変化することを示している。
図10に示すように、画面上で砥石とワークの接触線も表示することができるため、砥石をZ軸方向のどの位置まで動かしたときに、砥石でのワーク研削が有効であるかが分かる。
即ち、接触線表示の目的は、砥石と歯車の接触ラインを視覚的に確認するものであり、図10では砥石と歯車の接触線の上下左右への広がりの様子を示しているので、加工動作をさせたときにZ方向にどれだけ動かせば、砥石が抜けきることができるか確認することができる。
【0037】
図11は、歯形形状誤差シミュレーションを示すものである。歯形形状誤差シミュレーションとは、法線方向長さ又は径方向長さに対する誤差を示すものである。
図11(a)は左歯面を、図11(b)は右歯面を示し、いずれも、歯形の場合は、上、中、下の3か所が示される。図11(a)においては、歯形(中)は法線長さが歯元から歯先までの誤差がほぼ0であり、歯形(上)は、法線長さが歯元から歯先まで誤差がほぼ直線的に増加して約12μmとなり、また、歯形(下)は、法線長さが歯元から歯先まで誤差がほぼ直線的に増加して約92μmとなる。図11(b)においては、歯形(中)は同様であるが、歯形(上)と歯形(下)とが逆の形状となる。
なお、上記画面中では、法線長さで示したが、法線方向に代えて、径方向長さを用いても良い。
図12は、歯すじ形状誤差シミュレーションである。歯すじ形状誤差シミュレーションとは、歯すじ方向長さに対する誤差を示すものである。
図12(a)は左歯面を、図12(b)は右歯面を示し、いずれも、歯たけの中央部の歯すじ形状誤差(歯すじ(中))を表しており、この図では歯すじ方向中央部における誤差がほぼ0であり、歯すじ方向上部及び下部における誤差がほぼ直線的に発生していることを示している。
なお、歯形誤差が、歯車の上下で異なる量となることを、一般に、「バイアスが付く」と呼び、このバイアス形状は、ギア同士をかみ合わせたときの、騒音の原因になると言われており、ユーザーから嫌がられている。そのため、このバイアス形状をなくすための補正動作としてバイアス修正が行われるが、本実施例における誤差シミュレーションも同様に誤差との関係を示すものである。
【0038】
図13は、本実施例の歯車加工における歯形、歯すじ修整の手順を示すフローチャートである。
先ず、歯数、歯幅等の歯車緒元を入力する(ステップS1)。
次に、表1に示す歯形修整データを入力する(ステップS2)。
即ち、歯車研削盤に対する制御装置における入力手段であるINPUTキー300から表1に示す歯形修整データを入力すると、入力された修整データは入力ポート222を経て演算手段である演算機能221に送られ、演算機能221は、入力された修整データに基づいて歯形修整形状を演算する。
ここで、入力される修整データは、3種類の典型的なクラウニング、クラウニングレリービング及びテーパについてのものであるから、演算機能221によって演算される歯形修整形状は、クラウニング、クラウニングレリービング及びテーパを組み合わせたものとなる。
そして、演算機能221によって演算された歯形修整形状は、出力ポート223を経て、表示手段である画面400又はプリンタ500に出力され、画面400又はプリンタ500は、演算機能221によって演算された歯形修整形状を表示(描画)する(ステップS3)。
ここで、歯形修整形状は、表1に示す歯形修整データと同一画面にて表示される。
【0039】
同様に、表1に示す歯すじ修整データを入力する(ステップS4)。
即ち、歯車研削盤に対する制御装置における入力手段であるINPUTキー300から表1に示す歯すじ修整データを入力すると、入力された修整データは入力ポート222を経て演算手段である演算機能221に送られ、演算機能221は、入力された修整データに基づいて歯すじ修整形状を演算する。
ここで、入力される修整データは、3種類の典型的なクラウニング、クラウニングレリービング及びテーパについてのものであるから、演算機能221によって演算される歯すじ修整形状は、クラウニング、クラウニングレリービング及びテーパを組み合わせたものとなる。
そして、演算機能221によって演算された歯すじ修整形状は、出力ポート223を経て、表示手段である画面400又はプリンタ500に出力され、画面400又はプリンタ500は、演算機能221によって演算された歯すじ修整形状を表示(描画)する(ステップS5)。
ここで、歯すじ修整形状は、表1に示す歯形修整データと同一画面にて表示される。
その後、検索条件の入力(ステップS6)、オプションデータの入力の後(ステップS7)、歯車加工がスタートする(ステップS8)。
【0040】
以上、実施例に基づいて具体的に説明した通り、本発明によれば、3つの主要な修整パターン(クラウニング、テーパ、クラウニングレリービング)の重ね合わせで、想定されるほとんどの修整形状を表現することができる。
また、歯形修整、歯すじ修整ともに表1に示すように同じフォーマットで入力し、入力した結果をすぐに計算して、図8、図9に示す通り、どのような形状になるか判別できる。
更には、入力した直後に修整形状が描画されることで、すぐに視覚的に形状が確認できる。
更に、歯形修整は、歯直角(法線方向)の修整形状を描画することで、曲面である歯車歯形形状を簡便にかつ視覚的に確認することができる。
また、図3及び図4に示すように、歯形修整、歯すじ修整入力説明図が用意されており、これらの入力説明図を見ながら簡単に入力できる利点もある。
尚、上記実施例では、成形研削加工に適用したものであったが、本発明は、成形研削加工だけでなく、創成研削加工にも適用できる。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明の歯車形状修整入力描画方法は、歯車加工における歯形、歯すじ修整を行なう際の入力方法及び入力した結果の描画方法(可視化)として広く産業上利用可能なものである。
【符号の説明】
【0042】
10 ベッド
20 コラム
30 砥石ヘッド
40 ドレス装置
50 テーブル
100 NC制御装置
200 パソコンシステム
210 実行マクロ
220 対話ソフト
300 INPUTキー
400 画面
500 プリンタ
600 外部記憶装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークに砥石を接触させて前記ワークを歯車として研削する歯車加工における前記歯車の歯形、歯すじ修整を行う際の入力方法における典型的な3つのパターンであるクラウニング、テーパ及びクラウニングレリービングの各修整データを入力するための入力手段と、前記入力手段から入力された前記修整データに基づいて前記クラウニング、テーパ及びクラウニングレリービングを組み合わせた修整形状を演算する演算手段と、前記演算手段から表示手段に対して前記修整形状を出力する出力手段と、前記出力手段にて出力された前記修整形状を描画する表示手段とを備えることを特徴とする歯車形状修整入力描画装置。
【請求項2】
前記表示手段には、前記修整データと共に前記修整形状とが同一画面にて表示されることを特徴とする請求項1記載の歯車形状修整入力描画装置。
【請求項3】
前記修整データとして、歯形修整に関する修整データを入力したときには、前記表示手段には前記修整形状として、法線長さ又は径方向長さに対する修整量を示す歯形修整画面が描画されることを特徴とする請求項1記載の歯車形状修整入力描画装置。
【請求項4】
前記修整データとして、歯すじ修整に関する修整データを入力したときには、前記表示手段には前記修整形状として、歯すじ方向長さに対する修整量を示す歯すじ修整画面が描画されることを特徴とする請求項1記載の歯車形状修整入力描画装置。
【請求項5】
前記表示手段には、前記砥石と前記歯車の接触ラインを示す接触線が表示されることを特徴とする請求項1記載の歯車形状修整入力描画装置。
【請求項6】
前記表示手段には、歯形形状誤差シミュレーション画面又は歯すじ形状誤差シミュレーション画面が表示されることを特徴とする請求項1記載の歯車形状修整入力描画装置。
【請求項7】
ワークに砥石を接触させて前記ワークを歯車として研削する歯車加工における前記歯車の歯形、歯すじ修整を行う際の入力方法として、典型的な3つのパターンであるクラウニング、テーパ及びクラウニングレリービングの各修整データを入力手段から入力する一方、前記入力手段から入力された前記修整データに基づいて演算手段により前記クラウニング、テーパ及びクラウニングレリービングを組み合わせた修整形状を演算し、前記演算手段から表示手段に対して前記修整形状を出力し、前記表示手段にて前記修整形状を描画することを特徴とする歯車形状修整入力描画方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−152837(P2012−152837A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−12519(P2011−12519)
【出願日】平成23年1月25日(2011.1.25)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】