説明

段ボール

【課題】
従来技術の段ボールは、中芯の使用量を減らすために、段繰率を低下させると、そのシート厚さが減少し、自動製函機にて、ラップアラウンド形式の段ボールを梱包する場合に、Bフルートと段繰率低下のフルートを交互運転することが、きわめて困難であった。
【解決手段】
ノーフィンガ方式のシングルフェーサ装置にて、従来技術のBフルートと同じ厚さで、かつ段繰率を低下させた本発明の段ボールを作成する。
段ボールシートの厚さが同じであるため、自動製函機での交互運転が可能となり、同時に段ボールの軽量化・省資源となった。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、段ボールの軽量化・省資源に関するものであり、詳しくは、自動製函機を使用して内容物を挿入・梱包するラップアラウンド形式の段ボールであり、かつその波形中芯の形状は、いわゆるBフルートの段高(2.5mm±0.2mm)の段ボールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、段ボールには、その箱圧縮強度を主要特性とするいわゆるA式形式(JIS Z 1507のコード番号0201等)と梱包のし易さ等の梱包適性等を主要特性とするいわゆるラップアラウンド形式(JIS Z 1507のコード番号0410等)とがある。
また、段ボールでは、JISにて、その波形中芯の段山数については規定(JIS Z 1516)されているが、段高と段繰率は規定されていない。
しかしながら、ラップアラウンド形式の段ボールにおいては、波形中芯の段高は、シート厚さに直接影響する特性であり、自動製函機を運転する場合に、シート厚さに合わせて自動製函機の厚さ間隙等を設定する必要等があるため、きわめて重要な特性である。
【0003】
また、従来技術の段山数(ピッチ長さ)と段高と段繰率の関係は、表1のようであり、Bフルートの場合は、段山数=50±2山/30cm、段高=2.5±0.2mm、段繰率=1.35±0.05の範囲であり、この範囲を外れると、段ボールの製造に障害があり、生産性が劣るとか、シート特性のバランスがくずれ、段ボール箱として使用できないとの観念があり、Bフルートの段高の段ボールにて、上記範囲外のものは実際上使用されていないのが現状である。
【0004】
また実際に、その段高を上記Bフルートの範囲とし、段繰率を1.24に低下させた段ボールについて、従来技術のフィンガ方式のシングルフェーサ装置で製造すると、ハイロー等の製造障害が発生するものであった(例えば非特許文献1、非特許文献2)。
このため、従来技術の段ボールでは、箱圧縮強度等の特性を低下させてもかまわない対象及び用途において、中芯の使用量を減少させるために、段繰率を低下させようとすると、その段高が自動的に低下してしまい、Bフルートの段高のままで、段繰率を上記範囲より大幅に低下させることはできないものであった(例えば特許文献1)。
【0005】
また、ウォルフの式に基づき段高を高くして、段山数を下げた高強度段ボールが特許文献2に提案されているが、段高がBフルートより高いため汎用性に問題がある。さらに、段ボールの軽量化のために表裏のライナーと中芯の坪量を同じくするという特許文献3が提案されているが、単に原紙坪量減に替わり段繰率までに踏み込んだ更なる省資源が望まれている。
このように従来技術においては、段繰率をBフルートより低下させる場合は、段高がBフルートより低いEフルート等にするしかなかった。
このため、従来技術では、BフルートとBフルートより段繰率の低い段ボールを、自動製函機にて、交互運転する場合は、自動製函機の間隙の設定をBフルート用とEフルート用等に別々に設定する必要があり、この作業が非常に面倒であり、実際上交互運転できないものであった。
【0006】
【特許文献1】特開2004−168026号公報
【特許文献2】特開平09−156002号公報
【特許文献3】特開2000−109049号公報
【非特許文献1】「段ボール2002」紙業タイムス社、2002年7月1日、P.112〜127
【非特許文献2】「段ボール2002」紙業タイムス社、2002年7月1日、P.261〜265
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、Bフルートのシート厚さ(段高)にて、中芯の使用量を従来技術のEフルート並に減少させた段ボールであり、かつ自動製函機にてBフルートと本発明品との交互運転を可能とするものである。
従来技術では、箱圧縮強度等の特性を低下させてもかまわない対象及び用途においても、中芯の使用量を減少させるには、段高を低下させたEフルート等にするしかなく、シート厚さが低下し、自動製函機においては、その間隙等の調整をBフルート用とEフルート用等に別々に設定する必要があった。
【0008】
本発明においては、中芯の使用量は減少させるが、自動製函機の間隙設定をBフルート用から変更しなくても良い様にするものである。
また、本発明においては、段山数が従来技術のBフルートより、約20%減少するが、
その減少に伴い、発生するコラムクラッシュ(注*6)とフラットクラッシュ(注*7)の低下には、内容物の対象と用途を限定して対応し、段ボール製造時のいわゆるハイロー(波形中芯の厚さが数山ごとに僅かに高低になる状態)(非特許文献2)には、シングルフェーサ装置の機構をノーフィンガ方式(図2)に限定して解消するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明は以下の(1)〜(4)の構成を採る。
(1)波形中芯の段高が2.4〜2.6mmの段ボールにおいて、その段山数は40±2山/30cmであることを特徴とする段ボール。
(2)段ボール箱の形式が、ラップアラウンド形式であり、かつ自動製函機用であることを特徴とする(1)項に記載の段ボール。
(3)飲料缶、食品缶詰または飲用ボトル包装用であることを特徴とする(1)項または(2)項に記載の段ボール。
(4)段ボールの段(フルート)を製造するシングルフェーサの機構において、成形された波形中芯が遠心力により段ロールから分離するのを、フィンガ方式で押さえるのでなく、段ロールの孔からの吸引で段ロールに密着させるノーフィンガ方式で製造することを特徴とする(1)〜(3)項のいずれか1項に記載の段ボールの製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、従来技術のBフルートと同様のシート厚さであるが、中芯の使用量は従来技術のEフルート並に減少し、段ボールシートの軽量化、コストダウンと省資源に役立つものである。
また、従来技術のBフルートと同様のシート厚さであるため、自動製函機にて、従来技術のBフルートと交互使用しても、交互使用の度に、厚さ間隙を調整する必要がなくなるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明が対象及び用途とする段ボールとは、従来技術のBフルート厚さの段ボールであり、かつ、ビール缶、飲料缶、ペットボトル、スナック食品等の外装箱であるラップアラウンド形式の段ボールである。
梱包後の開封性を良くするために、テアテープを添付したり、内側ライナーを2本のミシン目状のカットをした段ボールも含まれる。
ビール缶、飲料缶等は、その総圧縮強度が、外装箱である段ボールの圧縮強度より高いために、段ボールの圧縮強度が少し低下しても、内容物が潰れることはない。
スナック食品等は、内容物が軽く、外装箱の圧縮強度およびフラットクラッシュをあまり必要としないため、本発明品の内容物になる。
【0012】
本発明は、波形中芯の段高が従来技術のBフルートと同様のため、そのシート厚さは当然従来技術のBフルート同様である。
【0013】
そして、本発明では、その段山数が従来技術のBフルートの50±2山/30cmから40±2山/30cmになり、約20%少なくなる。
【0014】
このことで、本発明は、その段繰率を従来技術のBフルートの1.35±0.05から従来技術のEフルート並の1.24±0.05に低下させることができ、中芯の使用量は7〜8%低下し、段ボールの軽量化、コストダウンと省資源に役立つものである。
そして更に、テアテープを添付したり、内側ライナーを2本のミシン目状のカットをした段ボールにおいては、中芯の使用量が、従来技術のBフルートより少なくなるため、その開封性において、中芯の開封に対する抵抗が少なくなり、易開封性になるものである。
【0015】
また、本発明では、段山数と段繰率の低下に伴い、下記の特性の低下がある。
箱圧縮強度(注*5)とコラムクラッシュ(注*6)は、ライナーと中芯の総和に比例するため、2〜3%低下する。
フラットクラッシュ(注*7)は、段山数が直接影響するため、約20%低下する。
【0016】
しかしながら、本発明は、その対象および用途が、箱圧縮強度を最重要特性しないラップアラウンド形式の段ボールであり、かつ内容物の総圧縮強度が段ボールの圧縮強度を上回るものであるため、箱圧縮強度とコラムクラッシュが2〜3%低下することはほとんど問題にならないものである。
【0017】
更に、フラットクラッシュの低下に関しては、従来技術のBフルートよりは低下するが、その段山数は従来技術のCフルートとは同等であり、段山数が本発明より少ない従来のAフルートよりは高いことから、従来技術のCフルート並のフラットクラッシュで使用できる箱に使用できるものである。
【0018】
つまり、本発明は、従来技術のBフルートよりは、中芯の使用量が減少でき、かつ従来技術のBフルートと同様のシート厚さにした段ボールであり、自動製函機で自動製函および自動包装する場合に、Bフルートと交互使用しても、厚さ間隙を調整しなくても良いことが、最大の特徴である。
【0019】
従来技術においては、中芯の使用量を減少させる場合は、そのシート厚さも減少させる必要があったため、自動製函機での厚さ間隙調整はどうしても必要であり、Bフルートと交互使用する場合は、厚さ間隙調整とその後の製函条件設定に長時間の作業を要し、実際上交互使用ができない問題があった。
本発明は、これらの問題を解消したものである。
【0020】
次に、本発明の製造方法について説明する。
本発明において、その製造方法は重要である。
本発明は、段山数(ピッチ長さ)と段高の関係において、従来技術の段ボールに比較して、図1のように外れた位置にある。
【0021】
図1は、縦軸をピッチ長さ(段山数)とし、横軸を段高にしたグラフである。
本発明は、従来技術の関係範囲から外れて、同位置の段高にたいして、そのピッチ長さが大である。
つまり、本発明品は、従来技術の段高に対して、その段山数が少ないものである。
このことは、段ボール製造において、非常にハイローが起き易いことを示している。
本発明は、このハイロー対策のために、その製造方法をいわゆるノーフィンガ方式(図2)に限定するものである。
【0022】
ノーフィンガ方式は、下段ロールの溝から吸引し、波形中芯を下段ロールに密着させているため、ハイローは従来技術のフィンガ方式より少なくなるものである。
フィンガ方式は、遠心力で波形中芯が下段ロールから外れるのをフィンガで押さえているが、下段ロールと波形中芯の密着が完全でないため、ハイローが起き易く、従来技術の段ボールでもハイローが発生し易い問題があった。
本発明では、このハイローの発生を解消するために、そのシングルフェーサでの片段の製造をノーフィンガ方式に限定するものである。
【0023】
更に、本発明のシングルフェーサにおいては、プレスロールをベルトにしたベルトプレス方式(図3)が望ましい。
ベルトプレス方式は、波形中芯とライナーとを澱粉糊で接着する機構において、ロールプレス方式より、接着時間と接着距離が長くなるため、接着時の加圧は少なくすることができ、段高に対して段山数が少ないところの本発明品でも、ハイロー等を発生させずに製造できるものである。
【0024】
そして更に、本発明品は、シングルフェーサ機構において、従来技術のBフルートより、段山数が少なく、段ロールと中芯との摩擦抵抗が少なくなるため、中芯の段割れ等が少なくなり、その貼合速度は向上するものである。
【実施例】
【0025】
以下、本発明を実施例に従って説明する。
<実施例1>
シングルフェーサライナーに王子板紙OFK160g/m、中芯板紙にODN120g/m中芯を使用し、シングルフェーサ装置には、三菱重工60G(ノーフィンガ方式でベルトプレス型)使用し、接着剤に澱粉糊を使用して、本発明構造の片面段ボール(段高=2.50mm、段山数=40山/30cm、段繰率=1.24)を作成した。
次に、この片面段ボールと王子板紙OFK160g/mとを澱粉糊で接着して、本発明の段ボールシートを作成した。
次に、この段ボールシートを段ボール用打ち抜き機(オートプラテン)で打ち抜き、内寸法(長さ=325mm、幅=270mm、高さ=110mm)のラップラウンドケースを得た。
【0026】
<実施例2>
シングルフェーサ装置が、フィンガ方式(王子製紙研究所所有)であること以外は、実施例1と同様に段ボールシートを作成し、さらにラップラウンドケースを得た。
【0027】
<比較例1>
片面段ボールの構造が、従来技術のBフルート(段高=2.50mm、段山数=50山/30cm、段繰率=1.35)であること以外は、実施例1と同様に段ボールシートを作成し、さらにラップラウンドケースを得た。
【0028】
<比較例2>
片面段ボールの構造が、従来技術のEフルート(段高=1.13mm、段山数=89山/30cm、段繰率=1.24)であること以外は、実施例1と同様に段ボールシートを作成し、さらにラップラウンドケースを得た。
【0029】
<結果>
実施例および比較例の結果を表2に示す。
また、実施例および比較例の段ボールシート特性を表3に示す。
【0030】
【表1】

【0031】
【表2】

(注*1)自動製函機適性:内容物を挿入・梱包する自動製函機において、従来技術のBフルートと交互運転する場合に、自動製函機の間隙調整時間が必要ないものを○、間隙調整時間が必要なものを×とする。
(注*2)省資源性:従来技術のBフルートより、中芯の使用量が減少するものを○、減少しないものを×とする。
(注*3)ハイロー適性:従来技術のBフルートに比較して、ハイローの発生が変わらないのもを○、ハイローの発生が増えるものを×とする。
(注*4)片段生産性:波形中芯と段ロールの摩擦抵抗が、従来技術のBフルートに比較して低下するものを○、変わらないものを△、増加するものを×とする。
【0032】
【表3】

(注*5)箱圧縮強度:JIS Z 0212に準じて測定。
(注*6)コラムクラッシュ:JIS Z 0403−2による垂直圧縮強さ。
(注*7)フラットクラッシュ:JIS Z 0403−1による平面圧縮強さ。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明は、内容物を挿入・梱包する自動製函機において、従来技術のBフルートの段ボールと交互運転することができ、かつ従来技術のBフルートより、中芯の使用量を減少させることができる。さらに、段ボールの軽量化に対して、原紙坪量の低減に替わり段繰率の低減にまで踏み込んだ新たな段ボールの可能性を有する。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】段高とピッチ長さの関係を示す図である。
【図2】ノーフィンガ方式のシングルフェーサ装置を示す図である。
【図3】ベルトプレス式のシングルフェーサを示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
波形中芯の段高が2.4〜2.6mmの段ボールにおいて、その段山数が40±2山/30cmであることを特徴とする段ボール。
【請求項2】
段ボール包装体の形式が、ラップアラウンド形式であり、かつ自動製函機用であることを特徴とする請求項1に記載の段ボール。
【請求項3】
飲料缶、食品缶詰または飲用ボトル包装用であることを特徴とする請求項1または2に記載の段ボール。
【請求項4】
段ボールの段(フルート)を製造するシングルフェーサの機構において、ノーフィンガ方式で製造することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の段ボールの製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−136758(P2007−136758A)
【公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−330980(P2005−330980)
【出願日】平成17年11月16日(2005.11.16)
【出願人】(502356517)王子チヨダコンテナー株式会社 (66)
【出願人】(000122298)王子製紙株式会社 (2,055)
【Fターム(参考)】