説明

殺菌装置およびこれを用いて構成された食品製造システム

【課題】 コンベアなどの搬送路によって搬送される被殺菌物に対して、最適な量の殺菌剤を満遍なく効率的に適用することのできる殺菌装置、およびこれを用いて構成された食品製造システム、並びに食品の製造方法を提供する。
【解決手段】 食品その他の被殺菌物の殺菌を行う殺菌装置であって、被殺菌物に対して殺菌剤を噴射する噴射部と、当該噴射部に対して殺菌剤を供給する殺菌剤供給部とを具備し、前記噴射部は、(1)被殺菌物を搬送する搬送路上に存在する被殺菌物の上面及び下面に対して、殺菌剤を直接接触させる位置に形成されるか、或いは(2)被殺菌物を搬送する搬送路の上下方向に設けられて、搬送路の下方に存在する下側噴射部から噴射される殺菌剤が、当該搬送路を通過して被殺菌物に直接接触されるように設けられる殺菌装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は殺菌装置およびこれを用いて構成された食品製造システム、並びに殺菌処理工程を伴う食品の製造方法に関する。特に製造ラインを搬送されている食品などに対しても満遍なく殺菌処理を行い得るようにした殺菌装置およびこれを用いて構成された食品製造システム、並びに食品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、包装容器など工業製品、あるいは食品の殺菌処理については各種の方法が提供されており、例えばアルコールや次亜塩素酸などの化学品を使用して殺菌処理を行う方法、紫外線を照射する方法、あるいは加熱処理を行う方法などとして実際に行われている。
【0003】
しかしながら、紫外線を使用して殺菌処理を行う場合には、紫外線照射装置のランプを定期的に交換しなければならない等、そのランニングコストが嵩んでしまうといった問題が生じる。更に、加熱処理を行う場合には、非殺菌物の物性によっては、使用できないという問題も存在する。
【0004】
この点、アルコールや次亜塩素酸などの化学品を使用して殺菌処理を行う方法では、このようなランニングコストの増大の問題を解消することができ、かつ温度に関する物性変化の問題も解消することができる。
【0005】
そして従来、このようなアルコールなどの化学品を使用して殺菌処理を行う装置乃至は方法については、以下の特許文献が提案されている。
【0006】
特許文献1(特開2001−513号公報)では、マットレスに長期間の抗菌性を生じさせ、無菌状態とすることができるように、菌剤を配合した溶液をマットレス全面に噴霧し、マットレス表層に同溶液を含浸させた後、加熱殺菌処理を行うマットレスの抗菌処理方法が提案されている。
【0007】
特許文献2(特開2001−192008号公報)では、食品などの被包装物を収容して包装するためのトレイ形容器を、被包装物収容前にアルコール製剤でもって殺菌する装置であって、搬送手段でもって縦列状に運搬する各トレイ形容器の上面に、アルコール製剤を順次噴射したあと、前記搬送手段によるトレイ運搬方向に向け、前記噴射ポジションの後位で各トレイの上面に加熱ガスを噴射するように構成した、トレイ形包装容器の殺菌装置が提案されている。
【0008】
特許文献3(特開2001−252010号公報)では、流れ作業における搬送途中で雑菌が付着することのある「しらす」を効率よく滅菌するべく、「しらす」を連続的に移送するベルトコンベアの一部に、そのベルトコンベアへ向けてエタノールを噴射する噴射ノズルを設け、ベルトコンベアに乗って通過する「しらす」にエタノールの微粒子を接触させて滅菌する「しらす」の殺菌装置が提案されている。
【特許文献1】特開2001−513号公報
【特許文献2】特開2001−192008号公報
【特許文献3】特開2001−252010号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
前記特許文献1において提案されているマットレスの抗菌処理方法では、複数の噴霧ノズルを所要間隔で配設した噴霧配管が、搬送コンベア上を搬送されるマットレスを取り囲むようにループ状に配設され、溶液送給配管から抗菌剤を配合したアルコール溶液を加圧状態で送給することによって、噴霧配管に配設した噴霧ノズルよりアルコール溶液を噴霧し、噴霧配管中を通過するマットレスに噴霧可能としている。しかしながら、噴霧配管は搬送コンベアをも取り囲んで配置されていることから、搬送されるマットレスの下面に対してアルコール溶液を噴霧するのは事実上困難である。
【0010】
そこで本発明は、搬送路上を搬送される被殺菌物の下面に対しても確実に殺菌剤を接触できるように構成した殺菌装置を提供することを第一の課題とする。
【0011】
また前記特許文献2及び3では、食品に対してもアルコール製剤(エタノール)を噴射するように構成した殺菌装置が提案されているが、これら特許文献でも被殺菌物の下面に殺菌剤を適用することは困難である。特に食品においては、満遍なく殺菌剤と接触しなければ食品衛生上の問題や品質保証上の問題も生じる一方で、必要以上に殺菌剤を適用した場合には、風味に影響を与えてしまうことが危惧される。更に、大量生産を前提とする食品の製造においては、生産ラインにおいて効率的に殺菌処理を行うことが望ましい。
【0012】
そこで本発明は、特に食品に対して殺菌剤を適用するための殺菌装置であって、食品の風味を損なうことの無く、かつ食品衛生上の問題を生じさせることの無い様に、必要最小限で殺菌剤を満遍なく適用することができ、かつ生産ライン上を搬送される食品に対しても、その前面に殺菌剤を適用することのできる殺菌装置を提供することを第二の課題とする。
【0013】
更に、殺菌剤が気体乃至は液体など流動性を有する性状で供給される場合には、被殺菌物に対して効果的に殺菌剤を適用するために、当該殺菌剤が適用される空間内における殺菌剤の流れも考慮するべきであり、また被殺菌物の大きさや形状に基づいて、任意に殺菌剤の噴射位置や噴射方向を調整可能であることが望ましい。
【0014】
そこで本発明は、被殺菌物に対して殺菌剤を適用する空間内において、流動性を有する殺菌剤の噴射後の流れをコントロールした殺菌装置、及び/又は被殺菌物の大きさや形状に基づいて、任意に殺菌剤の噴射位置や噴射方向を調整することのできる殺菌装置を提供することを第三の課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題の少なくとも何れかを解決するべく、本発明ではコンベアなどの搬送路によって搬送される被殺菌物に対して、最適な量の殺菌剤を満遍なく効率的に適用することのできる殺菌装置、およびこれを用いて構成された食品製造システム、並びに食品の製造方法を提供する。
【0016】
即ち、本発明にかかる殺菌装置は、食品その他の被殺菌物の殺菌を行う殺菌装置であって、被殺菌物に対して殺菌剤を噴射する噴射部と、当該噴射部に対して殺菌剤を供給する殺菌剤供給部とを具備し、前記噴射部は、(1)被殺菌物を搬送する搬送路上に存在する被殺菌物の上面及び下面に対して、殺菌剤を直接接触させる位置に形成されるか、或いは(2)被殺菌物を搬送する搬送路の上下方向に設けられて、搬送路の下方に存在する下側噴射部から噴射される殺菌剤が、当該搬送路を通過して被殺菌物に直接接触されるように設けられる事を特徴とする。
【0017】
特に(1)被殺菌物を搬送する搬送路上に存在する被殺菌物の上面及び下面に対して、殺菌剤を直接接触させる位置に噴射部を形成するには、例えば被殺菌物が載置される前の搬送路の上面に対して、予め殺菌剤を噴射する噴射部と、搬送路上に載置した被殺菌物の上面に対して殺菌剤を噴射させる噴射部とを設けることが考えられる。一方、噴射部を(2)被殺菌物を搬送する搬送路の上下方向に設けると共に、当該搬送路の下方に存在する下側噴射部から噴射される殺菌剤が、当該搬送路を通過して被殺菌物に直接接触するように形成することができる。その為には、例えば搬送路がメッシュ状、或いは複数の開口部を具備するように形成されている領域に、この殺菌装置を設置することができる。また、この殺菌装置自体が被殺菌物を搬送する搬送路を具備するものとして構成されている場合には、当該搬送路を構成するベルト部材をメッシュ部材または多孔状部材で形成したり、被殺菌物の搬送方向に対して交差する向きのロッド部材を一定の間隔で配置して形成することができる。メッシュの開口径や孔部の開口径及び間隔、並びにロッド同士の間隔などは、搬送される被殺菌物の大きさや形状によって適宜調整することができる。特に、ロッド部材を円柱状に形成した場合には、被殺菌物の下面が平面であれば両者の接触面積を狭小化することができ、その結果、より多くの領域に殺菌剤を接触させることができるから、望ましい。
【0018】
なお、殺菌装置自体が被殺菌物を搬送する搬送路を具備するものとして構成されている場合であっても、当該搬送路上、より具体的には被殺菌物が載置される搬送面には、予め殺菌剤を噴霧又は塗布しておくことが望ましい。被殺菌物における搬送面との接触領域にも殺菌剤を適用するためである。また、本発明における殺菌剤供給部は、各噴射部に対して殺菌剤を供給するための部品であり、例えば殺菌剤が液状乃至は気体などのように流動性を具備するものであれば、パイプ乃至はチューブによって形成することができる。当然のことながら、当該パイプ乃至はチューブに対して、その流量を規制するためのバルブを形成することもできる。
【0019】
そして上記殺菌装置では、搬送路の下方に存在する下側噴射部と、搬送路の上方に存在する上側噴射部とを具備し、両噴射部は、搬送路を介して非対称位置に設ける事が望ましい。これにより下側噴射部から噴射される殺菌剤と、上側噴射部から噴射される殺菌剤とが相互に衝突し、流速が減じられることが無くなる。そればかりか両噴射部から噴射される殺菌剤が渦流などの流れを形成し、これが被殺菌物の周囲を取り囲むことで、当該被殺菌物の外周全体に殺菌剤を適用することが可能になる。よって、この様な作用効果を顕著なものとするためには、各噴出部は、そこから噴射される殺菌剤が、被殺菌物を取り囲む渦流を形成するように構成される事が望ましい。
【0020】
更に、本発明における好ましい実施の形態では、前記噴射部の内、搬送路の下方に存在する下側噴射部は、当該下側噴射部から噴射される殺菌剤の中心線が当該搬送路に対して直交する向きであり、一方搬送路の上方に存在する上側噴射部は、当該上側噴射部から噴射される殺菌剤の流れの中心線が、当該搬送路に対して5〜85°の入射角となる向きに形成される。
【0021】
それぞれの噴射部をこの様に形成すれば、下側噴射部では、被殺菌物の下面全体に対して満遍なく殺菌剤を噴射できるようになり、一方で上側噴射部では、搬送路上に載置された被殺菌物の上面だけでなく、前面、後面および/または側面に対しても殺菌剤を噴射できるようになる。また、上側噴射部と下側噴射部の設置位置や噴出方向を適宜調整することにより、様々な大きさ及び形状の被殺菌物に対しても殺菌処理を行う事ができ、かつ殺菌処理に使用する殺菌剤の量も最適な量に調整することができる。即ち、被殺菌物が食品である場合には、当該殺菌剤の使用量を大幅に減じることができる。この点、仮に被殺菌物を取り囲むように噴射部を設けた場合には、全ての噴射部の噴射量や向きの調整が複雑になり、少なくとも何れかの噴射部から噴射される殺菌剤は無駄になったり、必要以上の殺菌剤を適用してしまったりすることも考えられる。特に、被殺菌物が食品である場合には、食品の風味などを考慮すれば、使用する殺菌剤の量も可能な限り減じるべきであり、また外面全体に均一に接触させるべきである。この点、本発明のように各噴射部を形成して、それぞれの噴射方向や噴射料を調整できる様にすれば、この様な食品独自の問題も解決する事ができる。
【0022】
更に本発明では、前記課題の少なくとも何れかを解決する為に、固形の食品を製造する為の食品製造システムであって、少なくとも、製造した食品を搬送する搬送路と、当該食品を殺菌処理する食品殺菌装置とを具備し、当該食品殺菌装置として前述した本発明に係る殺菌装置が使用され、当該食品殺菌装置は、包装前の食品が搬送される位置に設けられている食品製造システムを提供する。
【0023】
このような食品製造システムに係る発明を実施する事により、確実且つ効率的に食品の殺菌処理を行う事のできる製造ラインが提供される。特に、食品を製造するシステムの場合には、その製造ラインを搬送される製品が食品であるという特質上、雑菌が付着しやすいという問題が生じる。そして殺菌処理後の製品が、更に長い間、製造ライン(即ち「搬送路」)を移動するとすれば、殺菌処理後において雑菌が付着してしまうといった問題も危惧される。そこで、生産ラインにおける最終段階である、袋詰め乃至は包装を行うステーション(乃至は作業領域)の直前に、前記した本発明に係る殺菌装置を設置すれば、最終的な製品に雑菌などが存在する虞をなくす事ができる。特に、上記本発明に係る殺菌装置は、搬送路上に載置された食品の下面にも殺菌剤を適用し得るものとして構成されていることから、製品における殺菌の効果は顕著なものとなる。なお、かかる食品製造システムにおいても、その他の作業領域に別途殺菌装置を設けることは自由である。
【0024】
更に本発明では、上記殺菌装置や食品製造システムに関連し、前記課題の少なくとも何れかを解決する為に、食品の新たな製造方法を提供する。
【0025】
即ち、殺菌処理行程を伴っている食品の製造方法であって、前記殺菌処理工程は、搬送路上を搬送される食品に対して、殺菌剤を直接接触させることにより行われ、搬送路上の被殺菌物の下面に対して、搬送路を通過させて殺菌剤を接触させるか、あるいは搬送路に殺菌剤を塗布又は噴射した後に被殺菌物を載置して、被殺菌剤の下面に殺菌剤を適用する下面殺菌処理工程と、搬送路に対する入射角が5〜85°となる向きで搬送路上の被殺菌物に対して殺菌剤を噴射し、当該搬送路上の被殺菌物の少なくとも上面に殺菌剤を適用する上面殺菌処理工程とを具備することを特徴とする食品の製造方法である。
【0026】
かかる製造方法によれば、搬送路上に載置されている食品の下面に対しても確実に殺菌処理を行う事ができる。加えて、下面殺菌処理工程と上面殺菌処理工程とを別の場所で行う事により、仮に同じタイミングで殺菌剤を噴射する場合であっても、何れかの殺菌処理工程で噴射される殺菌剤の流速が、他の殺菌処理工程で噴射される殺菌剤によって減じられる事は無くなる。なお、この下面殺菌処理工程と上面殺菌処理工程とは、何れが先に行われても良く、下面殺菌処理工程の後に上面殺菌処理工程を行っても、上面殺菌処理工程の後に下面殺菌処理工程を行ってもよい。また同時に進行しても良いが、この場合は各殺菌処理工程で噴射される殺菌剤が相互に対向することのない向きに調整されるべきである。更に、何れかの工程を2段階に分けて乃至は2箇所から行うこともでき、例えば上面殺菌工程を2段階に分けて乃至は2箇所から行うこともできる。
【0027】
上記食品の製造方法では、前記搬送路上を搬送される食品が、少なくとも殺菌剤が噴射される領域において、各食品同士の間に間隙を設ける為の間隙形成行程が実施される事が望ましい。食品の前面、後面および側面を含めて、外面全体に殺菌剤を適用するためである。このような食品同士の間に間隙を形成するには、パーツフィーダー等による供給時に、食品相互に間隙が生じるように配置したり、あるいはコンベアなどの搬送路上の食品を並べ替えたり、あるいは当該殺菌処理工程における搬送路の移動速度を、当該殺菌処理工程に至る搬送路の移動速度と異ならせて、この移動速度の違いにより、食品相互間に間隙を確保することもできる。
【0028】
殺菌剤としては、従来使用されている各種の殺菌剤を使用することができ、例えば次亜塩素酸、次亜塩素酸塩、アルコール、植物由来の殺菌剤などを使用することができる。特に被殺菌物が食品であれば、アルコールからなる殺菌剤や、植物から抽出した殺菌成分を含有する殺菌剤を使用することが望ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、本発明の実施の形態を添付図面を参照しながら説明する。特に本実施の形態では、餅製品50などのように食品であって、且つ定型性を有する被殺菌物に対して殺菌処理を施し、殺菌処理がなされた食品を製造する為の殺菌装置10およびこれを用いて形成された食品製造システムの具体例を示している。
【0030】
図1は本発明にかかる殺菌装置10を用いて構成された食品製造システムにおける殺菌処理部分(10)(殺菌処理ステーション)を示す要部側面略図であり、図2は当該食品製造システムにおける殺菌処理部分(10)を示す要部上面略図である。また図3は図1及び2に示す食品製造システムで使用している殺菌装置10の内部構成を示す側面略図であり、図4は同殺菌装置10の背面略図であり、図5は同殺菌装置10の平面略図である。
【0031】
先ず図1及び2を参照しながらこの実施の形態にかかる食品製造システムを説明すると、この図1及び2には、餅製品50を製造するための食品製造システムであって、形成された餅製品50に対して殺菌処理を行う殺菌処理ステーション部分が示されており、当該食品製造システムは、その他にも図示しない餅製品50を製造するための餅製品製造装置ステーションを伴って構成することができる。そしてこの図1及び2に示す殺菌処理ステーションには、この餅製品製造装置ステーションなどで製造された餅製品50などを継続的に供給し、これを殺菌処理することができる。特にこの図1及び2では、製造された餅製品50をパーツフィーダー20により殺菌処理ステーションに供給する様子を示している。
【0032】
パーツフィーダー20は、餅製品50を殺菌処理ステーションに供給するための第一のコンベア29を具備しており、殺菌処理ステーションが具備する第二のコンベア19は、この第一のコンベア29から製造された餅製品50を受領して、そして殺菌処理を行った後、その後の処理である包装ステーションに製品を搬送するための第三のコンベア39に供給している。これら第一、第二、第三のコンベア39は、製品を搬送するためのベルトBを具備しており、これらベルトBが本発明における搬送路を形成している。この図に示すように、殺菌処理ステーション内で製品である餅製品50を搬送するための第二のコンベア19を、前記第一のコンベア29と別にすることで、両者のラインスピードを変えることが可能になり、その結果、第一のコンベア29において、順次搬送される餅製品50同士の何れかが相互に近接している場合であっても、第二のコンベア19のラインスピードを第一のコンベア29よりも速めることで、第一のコンベア29上では近接していた餅製品50同士の間にも間隙を確保することができるようになる(間隙形成工程)。その結果、第三のコンベア39のラインスピード次第では、第二のコンベア19の終端側に製品である餅製品50が溜まることも考えられるが、これは各コンベアや製造装置の稼動を間欠的に停止させるなどによって解消することができる。なお、図2中の符号35は、ノズルから噴射された殺菌剤を集めるためのタンクを示している。
【0033】
次に、この殺菌処理ステーションを構成している殺菌装置10について、図3〜5を参照しながら説明する。
【0034】
図3に示す殺菌装置10は、複数のプーリー(乃至は「スプロケット」。以下同じ)で案内されるベルトBを具備しており、これは本実施の形態ではモータ40によって駆動されている。このベルトBの構成については後述するが、特に、本実施の形態にかかる殺菌装置10では、殺菌剤としてアルコールを主成分とするものが使用されていることから、モータ40としてはアルコール成分揮発時の安全性を考慮して、防爆性のモータ40が使用されている。また、この殺菌装置内で殺菌剤が噴射される領域は、アルコール殺菌剤の拡散乃至は飛散を阻止するためにカバー36(望ましくは透明なカバー)で覆われている。
【0035】
モータ40の動力は駆動ベルト41を介してヘッドプーリー17に伝えられ、このヘッドプーリー17によって当該殺菌装置10を構成するベルト19が駆動されている。特にこの図3において、ベルト19は反時計回りに回動するように構成され、よって、前記パーツフィーダー20が具備する第一コンベア29は、図面右側に存在することになる。また、この図3に示す殺菌装置10では、ベルト19の張り具合を調整するためのテンションプーリー16が設けられており、その左右方向(図面に向かった場合の左右方法)への移動により、ベルト19におけるテンションを調整している。図面中、符号14及び15はベルト19を案内するためのプーリーを示している。
【0036】
そしてこの殺菌装置10は、前記図1中に示される殺菌剤貯蔵部30から供給される殺菌剤を、第二コンベアのベルトBによって搬送される餅製品50(被殺菌物)に噴射するための、噴射部としてのノズル11,12を備えている。特に、本実施の形態では、このノズルとして、ベルト19の下方に設置された1つの下側噴射部12と、ベルト19の上方に設置された2つの上側噴射部11a、11bとが設けられている。下側噴射部12は、この殺菌装置10における略中央に設置され、下方から上方に向かって(即ちベルト19の下面に向かって)放射状に噴出するように形成されており、一方で2つの上側噴射部11a、11bは、ベルト19に対して対角線状に向かい合い、且つそれぞれの噴射部から噴射される殺菌剤の中心線の当該搬送路に対する入射角(α)が5〜85°、好ましくは10〜70°となるように形成されている。即ち、上側噴射部11a、11bは相互に対角線上に向かい合っているものの、それぞれの噴射方向が上から下に向かって(即ちベルト19の上面に向かって)いることから、各上側噴射部から噴射される殺菌剤同士の流れが、相互に干渉し合う事はない。そして下側噴射部12から噴射される殺菌剤は上方に向かって放射状に噴出され、一部において前記上側噴射部から噴射される殺菌剤と対向する事にはなるものの、全てのノズル11,12から噴出される殺菌剤が一定の流れを形成し、ベルト19上の餅製品50の一部又は全体を取り囲むようになる。これにより、餅製品50外面の全体に殺菌剤が接触し、確実に殺菌処理を行うことができる。また、この様に形成した殺菌装置10では、下側噴射部の噴射角やベルト19下面までの距離を調整したり、上側噴射部の噴射角やベルト下面までの距離、或いは噴射方向を調整することにより、様々な形状の製品に対しても迅速に対応することができる。
【0037】
なお、本実施の形態に示す殺菌装置10では、前記図1に示すように、全てのノズルに至る共通の供給ラインに対して、流量の調整を行うバルブ31を形成しているが、殺菌剤を供給する供給ラインにおける流量を調整するためのバルブ31は、それぞれのノズル毎に独立させて設けることが望ましい。これにより、各ノズル11(a、b),12における殺菌剤の噴射量を細やかに調整し、例えば食品であれば、殺菌効果を保証し得る範囲内で可能な限り少ない量の殺菌剤を噴霧するように形成することができるようになる。
【0038】
次に、図5を参照しながら、餅製品50の下面、即ちベルト19に載置された側の面に対する殺菌剤の適用方法と、これを実現するためのベルト19の構成について説明する。
【0039】
この図5は、上記した殺菌装置10を上面から見た時の内部構成を示しており、特にベルト19の構成を明らかにしている。この図5からも明らかなように、本実施の形態において、殺菌処理ステーション内で餅製品50を搬送するコンベアは、その長さ方向(即ち、ベルト19の移動方向)に並列配置されたロッド部材18を用いてベルト部分19が形成されており、これにより下側噴射部12から噴射された殺菌剤が、餅製品50の下面に直接接触できるようになっている。このとき、餅製品50の下面において、ロッド部材18と直接接触している領域には、下側噴射部12から噴射された殺菌剤は適用されないことになる。しかしながら、このロッド部材18の上面(即ち、餅製品50が載置される面)には上側噴射部11a,bから噴射された殺菌剤も接触し、その上に餅製品50が載置されるのであるから、間接的に当該ロッド部材18との直接接触領域に対しても殺菌剤を適用することができる。なお、これをより確実に行うためには、餅製品50を載置する前のロッド部材18の上面に対して、殺菌剤を適用する為の噴射部(ノズル)を別途設けることも望ましい。
【0040】
このロッド部材18のサイズや相互の間隔は、搬送する製品の大きさ及び形状等によって適宜調整する事が望ましい。このような調整の一例を挙げれば、例えば搬送される製品が縦62mm、横40mm、高さ18mmの立方体に形成された餅製品50である場合、ロッド部材18の外径は1.8〜2.0mmで、相互に8〜12mm、望ましくは約10mmの間隔で配列させるのが望ましい。かかるロッド部材18の材質は、耐久性や搬送する製品との摩擦係数等を考慮して適宜選択されるべきであり、搬送される製品が餅製品50である場合には、ステンレス製であることが望ましい。また各ロッド部材18は、それぞれが別個に取り外して交換できるように形成されていれば、何れかのロッド部材18が破損・変形したとしても、ベルト19全体の交換を行うことなく、当該ロッド部材を変更するだけで済むようになる。
【0041】
更に、本実施の形態に示す殺菌装置10において、搬送路(ベルト19)の両側には、搬送される餅製品50を、搬送方向に一列に整列させるためのガイド13が形成されている。但しこのガイド13は、搬送路上に存在する餅製品50が、前記上側噴射部11a,bから噴射された殺菌剤と接触する領域を除いて形成されている。これは、前記上側噴射部から噴射された殺菌剤を餅製品50の側面にも接触させるためである。
【0042】
尚、本発明にかかる殺菌装置10およびこれを用いて構成された食品製造システム、並びに食品の製造方法は、上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】殺菌装置を用いて構成された食品製造システムにおける殺菌処理部分を示す要部側面略図
【図2】食品製造システムにおける殺菌処理部分を示す要部上面略図
【図3】図1及び2に示す食品製造システムで使用している殺菌装置の内部構成を示す側面略図
【図4】図3に示す同殺菌装置の背面略図
【図5】図3に示す殺菌装置の平面略図
【符号の説明】
【0044】
10 殺菌装置
11 ノズル
11a,b 上側噴射部
12 下側噴射部
13 ガイド
16 テンションプーリー
17 ヘッドプーリー
18 ロッド部材
19 ベルト(第二コンベア)
20 パーツフィーダー
30 殺菌剤貯蔵部
40 モータ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
食品その他の被殺菌物の殺菌を行う殺菌装置であって、
被殺菌物に対して殺菌剤を噴射する噴射部と、当該噴射部に対して殺菌剤を供給する殺菌剤供給部とを具備し、
前記噴射部は、
(1)被殺菌物を搬送する搬送路上に存在する被殺菌物の上面及び下面に対して、殺菌剤を直接接触させる位置に形成されるか、或いは
(2)被殺菌物を搬送する搬送路の上下方向に設けられて、搬送路の下方に存在する下側噴射部から噴射される殺菌剤が、当該搬送路を通過して被殺菌物に直接接触されるように設けられる事を特徴とする殺菌装置。
【請求項2】
搬送路の下方に存在する下側噴射部と、搬送路の上方に存在する上側噴射部とを具備し、両噴射部は、搬送路を中心として非対称位置に設けられている請求項1に記載の殺菌装置。
【請求項3】
前記噴射部の内、搬送路の下方に存在する下側噴射部は、当該下側噴射部から噴射される殺菌剤の中心線が当該搬送路に対して直交する向きであり、一方搬送路の上方に存在する上側噴射部は、その噴射方向における中心線の当該搬送路に対する入射角が5〜85°となる向きである請求項1又は2に記載の殺菌装置。
【請求項4】
固形の食品を製造する為の食品製造システムであって、
少なくとも、製造した食品を搬送する搬送路と、当該食品を殺菌処理する食品殺菌装置とを具備し、
当該食品殺菌装置として請求項1〜3の何れか一項に記載の殺菌装置が使用され、当該食品殺菌装置は、包装前の食品が搬送される位置に設けられている食品製造システム。
【請求項5】
殺菌処理行程を伴っている食品の製造方法であって、
前記殺菌処理工程は、搬送路上を搬送される食品に対して、殺菌剤を直接接触させることにより行われ、
搬送路上の被殺菌物の下面に対して、搬送路を通過させて殺菌剤を接触させるか、あるいは搬送路に殺菌剤を塗布又は噴射した後に被殺菌物を載置して、被殺菌剤の下面に殺菌剤を適用する下面殺菌処理工程と、
搬送路に対する入射角が5〜85°となる向きで搬送路上の被殺菌物に対して殺菌剤を噴射し、当該搬送路上の被殺菌物の少なくとも上面に殺菌剤を適用する上面殺菌処理工程と
を具備することを特徴とする食品の製造方法。
【請求項6】
前記搬送路上を搬送される食品は、少なくとも殺菌剤が噴射される領域において、各食品同士の間に間隙を設ける間隙形成工程が実施される請求項5に記載の食品の製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−33992(P2009−33992A)
【公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−198797(P2007−198797)
【出願日】平成19年7月31日(2007.7.31)
【出願人】(595123575)株式会社丸善 (1)
【Fターム(参考)】