説明

毛髪化粧料

【課題】毛髪に適用後に洗い流す必要が認められない程度の頭皮・皮膚への安全性が認められ、毛髪塗布後の使用感が向上し、かつ、経時的に安定な、毛髪に対するコンディショニング効果を与えることが可能な毛髪化粧料を提供すること。
【解決手段】(A)一般式(1)で表されるジ長鎖型カチオン性活性剤、(B)一般式(2)で表される1,2-アルカンジオールのエチレンオキシド付加物、及び/又は、一般式(3)で表されるN-アシル-N-メチルモノエタノールアマイド、並びに、(C)水、を含有する毛髪化粧料であって、当該一般式(1)のジ長鎖型カチオン性活性剤のRCOを構成する炭素原子数α1と、当該一般式(2)の1,2-アルカンジオールのエチレンオキシド付加物のRCHCHないし当該一般式(3)のN-アシル-N-メチルモノエタノールアマイドのRCOを構成する炭素原子数α2が、α2−2≦α1≦α2+2である毛髪化粧料、を提供することにより、上記の課題を解決し得ることを見出した(化学式は省略)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、毛髪化粧料、特に、ヘアコンディショナー、ヘアリンス又はリンスインシャンプーとして用いるのに適した毛髪化粧料に関する発明である。
【背景技術】
【0002】
毛髪にコンディショニング効果を与えることを目的とする毛髪化粧料は、消費者の使い心地、利便性、安全性等をより向上させるために種々の形態が提供されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、ジ長鎖型カチオン性活性剤、疎水変性アルキルセルロース及び高級アルコールを含有する、リンス様のゲルの形成が認められる毛髪化粧料が開示されている。特許文献1の毛髪化粧料は、経時的に安定であり、ヘアコンディショナーやヘアトリートメントとして用いるのに適しているとされている。また、特許文献2には、カチオン性活性剤、アニオン又は両性ポリマー及び水性キャリアを含有する、希釈と同時に水不溶性錯体を形成し、透明又は半透明のコンディショニング組成物が記載されている。特許文献3には、カチオン性活性剤、アニオン又は両性ポリマー、高融点脂肪族化合物及び水性キャリアを含有する、ゲルマトリックスを形成するコンディショニング組成物が記載されている。特許文献4には、カチオン性活性剤、アニオン又は両性ポリマー、コンディショニング剤及び水性キャリアを含有し、界面活性剤系とポリマーが水不溶性錯体を形成するコンディショニング組成物が記載されている。
【0004】
特許文献5には、ジ長鎖型カチオン性活性剤(エステルクォート)、油成分及び低級アルコールを含有する、展延しやすく、残留物を残さずに速やかに吸収される製剤が記載されている。特許文献6には、異なる鎖長のアシル基を有するジ長鎖型カチオン性活性剤(エステルクォート)の混合物が記載されている。特許文献7には、特定量のステロール及び不飽和脂肪酸を含有する天然油を含有するヘアケア製剤が記載されている。
【0005】
特許文献8には、ショ糖脂肪酸エステル、カチオン性活性剤、シリコーン、エタノール及び水を含有する、塗布後の揮発性に優れ、揮発後においても毛髪がしっとりしている水性の毛髪化粧料が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−112787号公報
【特許文献2】特表2008−518490号公報
【特許文献3】特表2008−543952号公報
【特許文献4】特表2008−546806号公報
【特許文献5】特表2002−527373号公報
【特許文献6】特表2003−535108号公報
【特許文献7】特表2004−531565号公報
【特許文献8】特開2005−330124号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したように、毛髪のコンディショニング効果が期待される毛髪化粧料が種々提供されているが、よりよい製品の提供を目指して、さらなる改善が期待されている。本発明は、毛髪に適用後に洗い流す必要が認められない程度の頭皮・皮膚への安全性が認められ、毛髪塗布後の使用感が向上し、かつ、経時的に安定な、毛髪に対するコンディショニング効果を与えることが可能な毛髪化粧料を提供することを目的とする発明ある。
【0008】
例えば、上記の特許文献1に開示された毛髪化粧料は、経時的に安定で、かつ、リンス様のゲルを形成し得る毛髪化粧料であるが、安定性を向上させるために高級アルコールが必須成分として、確実に配合されている。高級アルコールを配合する条件での、安定性向上を図った技術であるが、製品開発上では、まだ安定性に課題が残されていた。つまり、高温や低温での安定性に課題があった。
【0009】
また、エステルクォートを用いた例が示されているが、上記に倣った高級アルコールを配合してクリーム状〜乳液状の組成物にしている以外は、極めて粘性の低い液状組成物、もしくは高分子増粘剤によってのみ粘度を向上させた組成物であった。粘性の低い組成物では、使用者の使用満足が得られず、また高分子増粘剤のみで増粘させた場合は、高分子によるベタツキを生じたり、カチオン活性剤の刺激を抑制できなかった。また、エステルクォートと組み合わせて、高級アルコールより安定性の良好な、コサーファクタントは見出されていなかった。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記の課題を受けて完成されたもので、具体的には、(A)一般式(1)で表されるジ長鎖型カチオン性活性剤、(B)一般式(2)で表される1,2−アルカンジオールのエチレンオキシド付加物、及び/又は、一般式(3)で表されるN−アシル−N−メチルモノエタノールアマイド、並びに、(C)水、を含有する毛髪化粧料であって、当該一般式(1)のジ長鎖型カチオン性活性剤のRCOを構成する炭素原子数α1と、当該一般式(2)の1,2−アルカンジオールのエチレンオキシド付加物のRCHCHないし当該一般式(3)のN−アシル−N−メチルモノエタノールアマイドのRCOを構成する炭素原子数α2が、α2−2≦α1≦α2+2である、毛髪化粧料(以下、本発明の毛髪化粧料ともいう)を提供する発明である。
【0011】
【化1】

【0012】
[式中、RCOは、それぞれが同一であっても異なってもよく、炭素原子数が10〜22で、二重結合を0〜3個有する脂肪族アシル基を表し、pは1〜3の整数を表す。Xは、ハロゲン原子、メトサルフェートもしくはメトホスフェートを表す。]
【0013】
【化2】

【0014】
[式中、Rは、炭素原子数が8〜20で、二重結合を0〜2個有する炭化水素基であって、エチレンオキシドの付加数を示すmとnは、それぞれ0〜2の整数であって、m+nの平均が0より大きく、2より小さい。]
【0015】
【化3】

【0016】
[式中、Rは、炭素原子数が9〜21で、二重結合を0〜2個有する炭化水素基である。]
【発明の効果】
【0017】
本発明の毛髪化粧料は、安全性に極めて優れ、安定性にも優れ、基剤成分の配合量が低濃度であってもラメラ液晶を形成させることが可能であり、驚くべきことに、洗い流しを行うことを省略しても支障がないほどの優れた使用性を有する、毛髪に対してコンディショニング効果を付与することができる毛髪化粧料であり、具体的には、ヘアリンス、ヘアコンディショナー、リンスインシャンプー等を例示することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の必須配合成分の相互関係を示した三成分相図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の毛髪化粧料は、上述したように、((A)成分)ジ長鎖型カチオン性活性剤(1)、((B)成分)1,2−アルカンジオールのエチレンオキシド付加物(2)、及び、((C)成分)水、を必須成分として含有する毛髪化粧料である。
【0020】
(A)成分について
(A)成分は、前記一般式(1)で表されるジ長鎖型カチオン性活性剤である。
【0021】
式(1)中、RCOは、炭素原子数が10〜22、好適には12〜16、最も好適には12で、二重結合を0〜3個有する脂肪族アシル基を表す。pは、1〜3の整数を表す。Xはハロゲン原子、メトサルフェート又はメトホスフェートを示す。
【0022】
(A)成分として、好ましくはヤシ油脂肪酸系エステルクワットのハロゲン化物又はメトサルフェートである。当該の好適な(A)成分(ジココイルエチルヒドロキシエチルモニウムメトサルフェート)の商品名としては、デヒコート(DEHYQUART)L80(コグニスジャパン)、等が挙げられる。(A)成分の配合量は、毛髪化粧料全量に対し0.1〜20質量%が好ましく、より好ましくは0.5〜10質量%である。毛髪化粧料全量に対し0.1質量%未満では、毛髪のコンディショニング効果に劣る、組成物の粘性に劣る、もしくは長期の、特に、低温領域における安定性に劣る傾向があり、一方、20質量%を超えて配合すると、毛髪に過度のコンディショニング効果を与えることでべたつき、頭皮・皮膚への安全性に劣り、また常温での粘性・弾性に欠ける傾向が認められる。
【0023】
(B)成分について
(B)成分は、前記一般式(2)で表される1,2−アルカンジオールのエチレンオキシド付加物、及び、前記一般式(3)で表されるN−アシル−N−メチルモノエタノールアマイドである。これらの(B)成分は、1種又は2種以上を、本発明の毛髪化粧料に配合することができる。
【0024】
上記の1,2−アルカンジオールのエチレンオキシド(EO)付加物を、以下、EO−アルカンジオール、又は、EO(EOの平均結合数)アルカンジオール、POE(EOの平均結合数)アルカンジオールともいう。ここで、EOの平均結合数とは、一般式(2)においてm+nの平均値である。
【0025】
一般式(2)において、Rは、炭素原子数が8〜20、好適には10〜14、最も好適には10の炭化水素基である。すなわち、RCHCHの炭素原子数は、10〜22、好適には12〜16、最も好適には12である。また、エチレンオキシドの付加数を示すmとnは、それぞれ0〜2の整数であって、m+nの平均が0より大きく、2より小さい。好適には、mとnの和の平均が0.5以上1.5以下である。
【0026】
一般式(3)において、Rは、炭素原子数が9〜21、好適には11〜15、最も好適には11の炭化水素基である。すなわち、RCOの炭素原子数は、10〜22、好適には12〜16、最も好適には12である。例えば、実施例に挙げられているヤシ油脂肪酸N−メチルモノエタノールアマイドは、RCOに相当するヤシ油脂肪酸基の炭素原子数が実質的に12であり、好適なN−アシル−N−メチルモノエタノールアマイドとして例示される。
【0027】
(B)成分の配合量は、本発明の毛髪化粧料の使用方法(すすぎ流しの有無)により好適な範囲は変動するが、毛髪化粧料全量に対し0.5〜50質量%が好ましく、より好ましくは0.5〜20質量%である。毛髪化粧料全量に対し0.5質量%未満では、組成物の常温での粘性・弾性に劣り、一方、50質量%を超えて配合すると、頭皮・皮膚への安全性(刺激性、アレルギー反応)に劣ることに加えて、低温での組成物の外観の安定性に劣る傾向が認められる。
【0028】
(C)成分について
(C)成分は、上述の通り、水である。水は、精製水、イオン交換水、水道水、自然水等を用いることが可能であり、配合量は、本発明の毛髪化粧料の必須配合成分である(A)成分と(B)成分、及び、必要に応じて配合された選択的配合成分の全てが、適切な濃度となる量であり、概ね毛髪化粧料全量に対して10〜95質量%の範囲であるが、これに限定されるものではない。水の配合量が過剰であれば、各配合成分の毛髪化粧料における濃度が薄くなり過ぎ、本発明の効果を発揮し難くなり、過少であれば各配合成分の毛髪化粧料における濃度が高くなり過ぎ、配合障害や原材料の無駄を招く傾向が強くなる。
【0029】
(A)〜(C)成分の相互の関係について
本発明の毛髪化粧料の必須配合成分である(A)〜(C)個々の配合量の範囲は、上記した通りであるが、さらに、いくつかの配合要素が認められる。
【0030】
(1) 上述した炭素原子数の範囲において、(A)ジ長鎖型カチオン性活性剤の一般式(1)においてRCOを構成する炭素原子数α1と、(B)1,2−アルカンジオールのエチレンオキシド付加物の一般式(2)においてRCHCHないしN−アシル−N−メチルモノエタノールアマイドのRCOの一般式(3)を構成する炭素原子数α2が、α2−2≦α1≦α2+2 であり、より好ましくはα1=α2 であることが、本発明の安定性を高いレベルに保つ上で好適である。
【0031】
ただし、ここで「等しい数」は、正確に等しい数である場合も認められるが、現実には、各配合成分は、数種類の炭素原子数を持つ化合物の混合物である場合も認められ、そのような場合は、各炭素原子数の分布として最も高頻度の化合物の炭素原子数を比較の対象とする。
【0032】
(A)〜(C)成分の配合比率は、系中でラメラ液晶が形成される比率とすることが好適である。具体的には、図1の三成分相図の「ラメラ液晶」として示している範囲の配合比率とすることが好適である。ラメラ液晶の形成の有無は、X線散乱測定(小角:SAXS,広角:WAXS)、偏光観察、FF−TEM観察などによって、判別できる。三成分相図における3成分の含有量は、通例に従い、読み取る。
【0033】
図1において、三成分相図10は、(A)成分(ジココイルエチルヒドロキシエチルモニウムメトサルフェート及びプロピレングリコールの合計の量(三成分全体に対する質量%、以下同様)[本図の系では、(A)成分の提供品としてデヒコートL80を用いている:当該市販品における(A)成分とプロピレングリコールの質量比率は、(A)成分76質量%、プロピレングリコール24質量%である]、を数字で示す軸11、(B)成分(POE(1.0)−1,2−ドデカンジオール:図1においては、POE(1)−1,2−ドデカンジオールと表示されている)の量を数字で示す軸12及び(C)成分(水)の量を数字で示す軸13からなる3本の軸にて構成されている正三角形の当該軸及びその内部からなるダイアグラムである。
【0034】
三成分相図10の内部の閉曲線14及びその内部は、系がラメラ結晶を形成する範囲を示しており、当該内部の多数の黒丸点は、ラメラ結晶を形成し得る具体的な系の構成を、個々別々に例示している。閉曲線14の外部の菱形又は四角形の点は、当該ラメラ結晶を形成しない系の構成を、個々別々に例示している。
【0035】
三成分相図10から、具体的な成分(A)〜(C)の配合比率の具体的な把握は、常法によって行うことができる。例えば、閉曲線14の内部の☆印15における配合比率は、まず、☆印15から軸12に対する平行線141を軸11に向けて引き、当該平行線と軸の交点111の位置から、(A)成分の比率である33.3質量%/三成分、を導き出すことができる。また、☆印15から軸13に対する平行線142を軸12に向けて引き、当該平行線と軸の交点121の位置から、(B)成分とプロピレングリコールの合計比率である33.3質量%/三成分((B)成分とプロピレングリコールの比率より、(B)成分は25.3質量%)、を導き出すことができる。さらに、同様に☆印15から軸11に対する平行線143を軸13に向けて引き、当該平行線と軸の交点131の位置から、(C)成分の比率である33.3質量%/三成分、を導き出すことができる。このように、☆印15は、(A)成分、(B)成分とプロピレングリコール及び(C)成分が、それぞれ33.3質量%/三成分の割合で配合された系を示すことを、三成分相図10から読み取ることができる。
【0036】
上述のように、成分(A)〜(C)を、本発明の毛髪化粧料において配合することにより、安全性に極めて優れ、安定性にも優れ、基剤成分の配合量が低濃度であってもラメラ液晶を形成させることが可能であり、使用後に洗い流しを行うことを省略しても支障がないほどの優れた使用性と安全性を有する。更に、トリートメントやヘアコンディショナーとしての応用に適した、広い温度範囲でラメラ液晶を有する基剤が形成される。なお、既存技術として活用してきたカチオン活性剤と、高級アルコール(セチルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコールやこれらの混合物)と水の組合せでは、80℃程度の高温ではラメラ液晶を形成するものの、室温での保管時や実使用時ではαゲルを形成することが広く知られており、構造体の種類そのものが、本発明とは異なっている。
【0037】
他の成分の配合と具体的な態様
本発明の毛髪化粧料には、本発明の効果を損なわない範囲において、他の添加成分を任意に配合し得る。このような成分としては、例えば、粉末成分(マイカ、タルク、カオリン、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、無水ケイ酸、酸化アルミニウム、硫酸バリウム、ベンガラ、黄酸化鉄、黒酸化鉄、酸化クロム、群青、紺青、カーボンブラック、二酸化チタン、酸化亜鉛、雲母チタン、魚鱗箔、オキシ塩化ビスマス、窒化ホウ素、フォトクロミック顔料、合成フッ素金雲母、鉄含有合成フッ素金雲母、微粒子複合粉体等)、液体油脂(オリーブ油、ツバキ油、マカデミアナッツ油、ひまし油等)、固体油脂、ロウ(カルナウバロウ、キャンデリラロウ、ホホバ油、ミツロウ、ラノリン等)、炭化水素油(流動パラフィン、パラフィン、ワセリン、セレシン、マイクロクリスタリンワックス、スクワラン等)、高級脂肪酸(ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸等)、エステル油(ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸2−オクチルドデシル、2−エチルヘキサン酸セチル、リンゴ酸ジイソステアリル等)、高級アルコール(セチルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール等)、シリコーン油(メチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、その他、アミノ変性やポリエーテル変性のシリコーン油なども含む)、各種界面活性剤((A)成分と(B)成分を除く)、保湿剤(グリセリン、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ポリエチレングリコール、ソルビトール、ソルビトール、2−ピロリドン−5−カルボン酸ナトリウム、ヒアルロン酸ナトリウム等)、水溶性高分子(カチオン化セルロース、カチオン化グアガム、カチオン化ローカストビーンガムなどのカチオン性多糖類、ポリクオタニウム−7などの合成系カチオン性高分子、ポリクオタニウム−39などの両性高分子等)、増粘剤(植物系増粘剤、微生物系増粘剤、動物系増粘剤、セルロース系増粘剤、デンプン系増粘剤、アルギン酸系増粘剤、ビニル系高分子、高分子量ポリエチレングリコール等)、紫外線吸収剤、金属イオン封鎖剤、低級アルコール、多価アルコール、糖、アミノ酸、有機アミン、高分子エマルジョン、pH調整剤、皮膚栄養剤、ビタミン、酸化防止剤、酸化防止助剤、各種抽出液、防腐剤(メチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベン、フェノキシエタノール、安息香酸ナトリウム、1,2−オクタンジオール、メチルイソチアゾリノン等)、色素(赤色106号、だいだい色205号、黄色4号、緑色3号、青色1号等)、香料、等を必要に応じて適宜配合し、目的とする剤型に応じて常法により製造することができる。
【0038】
本発明の毛髪化粧料は、例えば、ヘアリンス、ヘアコンディショナー、ヘアトリートメント、リンスインシャンプー等として好適に用いられる。また通常のヘアリンス、ヘアトリートメント、リンスインシャンプー等の毛髪化粧料は、試料を毛髪に塗布後、直ちに又は暫く毛髪上で保持した後、洗い流して用いるのが一般的な使用態様であるが、本発明の毛髪化粧料は、当該洗い流しを省略しても、使用者にとっての不快感が残らず、頭皮・皮膚への刺激がないばかりか、ヘアコンディショニング効果が実質的に向上することが可能である。更に洗い流しを省略した場合、洗い流し時のお湯使用による環境負荷(CO排出量)を大幅に削減すると共に、光熱費も節約することが可能である。
【実施例】
【0039】
以下に、本発明の実施例を記載するが、これにより本発明の範囲が限定されるものではない。また、特に断らない限り、配合量は、配合対象に対する質量%である。
【0040】
[試験内容]
本試験例における試験品の評価のために行った試験方法と結果を開示する。下記の試験の対象となる試験品(試験例1〜19)の処方と、各試験の結果は、表1にそれぞれ示す。なお、各試験品は、水以外の各配合成分を、各配合成分の融点より高い温度で、水の中において混合し、室温まで冷却させることにより調製した。
【0041】
(1)安定性試験
(a)経時での評価試験
調製した試験品をサンプル瓶に入れ、蓋を閉めた状態で、所定の温度で2週間静置し、試験品の外観を目視で観察し、粘度をブルックフィールド型粘度計で測定した。なお、この粘度の測定は、試験品を12rpmで1分間回転後の数値を読み取ることにより行った。このようにして得られた粘度を、下記の基準で評価した。
【0042】
<評価基準>
(i)30℃保管
◎:外観が均一で、粘度が1000mPa・s以上
○:外観が均一で、粘度が100mPa・s以上、1000mPa・s未満
△:外観が均一であるが、粘度が100mPa・s未満
×:外観が不均一
【0043】
(ii)30℃保管以外<55℃、10℃保管> ※(i)で×と判定されたサンプルは除く。
○:30℃保管品と外観が同じであり、粘度も30℃保管品の0.5倍以上2倍以下である。
△:30℃保管品と外観が異なる、又は粘度が30℃保管品の0.5倍未満・または2倍を超える。
×:30℃保管品と外観が異なり、粘度が30℃保管品の0.5倍未満・または2倍を超える。
【0044】
(2)実使用試験
専門パネル10名による、使用感触(髪への試験品のなじみの良さ)と乾燥後のサラサラ感に関する実使用試験を行った。以下に、各試験項目における試験手法と判断基準を記載する。
【0045】
<使用感触(髪へのなじみの良さ)>
専門パネル10名が、シャンプーのすすぎ後、試験例のサンプルを塗布した時の「髪へのなじみの良さ」を評価した。更に、以下の基準で試験例を比較した。
○:8名以上のパネルが、髪へのなじみが良いと回答した。
△:5名以上7名以下のパネルが、髪へのなじみが良いと回答した。
×:4名以下のパネルが、髪へのなじみが良いと回答した。
−:外観が均一でないため、実使用テストを実施できない。
【0046】
<乾燥後のサラサラ感>
専門パネル10名が、シャンプーのすすぎ後、試験例のサンプルを塗布後、すすぎ流さずに乾燥した後の「サラサラ感」を評価した。更に、以下の基準で試験例を比較した。
○:8名以上のパネルが、サラサラ感があると回答した。
△:5名以上7名以下のパネルが、サラサラ感があると回答した。
×:4名以下のパネルが、サラサラ感があると回答した。
−:配合成分の配合量に頭皮・皮膚への刺激が想定されるため、すすぎ流さなければならない。又は外観が均一でないため、実使用テストを実施できない。
【0047】
【表1】

【0048】
表中、市販品は下記の内容である。
・デヒコートL80:コグニスジャパン社(76%ジココイルエチルヒドロキシエチルモニウムメトサルフェート、24%プロピレングリコール)
・デヒコートAU56/G:コグニスジャパン社(91%ジパルミトイルエチルヒドロキシエチルモニウムメトサルフェート)
・アデカノールGT−700:旭電化社(100%(PEG−240/デシルテトラデセス−20/HDI)コポリマー)
・サンジェロース−90L:大同化成社(100%ステアロキシ変性ヒドロキシプロピルメチルセルロース
【0049】
表1の結果から、本発明の毛髪化粧料の基本的処方の試験例(試験例2、3、4、5、7)に関しては、安定性試験、実使用試験共に、妥当な結果を得ることができた。なお、これらの中で、EO−ドデカンジオールのEO結合数が規定最低数の試験例2では、低温における安定性に問題が認められたが、他の項目は良好であった。
【0050】
本発明の毛髪化粧料の範囲外の試験例(試験例1:EO−ドデカンジオール抜去、試験例6:EO−ドデカンジオールのEO結合数が本発明の規定範囲よりも大きい、試験例8〜10:EO−ドデカンジオールの代わりにセトステアリルアルコールを配合、試験例11:EO−ドデカンジオールの代わりにEO−セチルアルコールを配合、試験例12:EO−ドデカンジオールの代わりにラウリン酸プロピレングリコールを配合、試験例13:EO−ドデカンジオールの代わりにモノオレイン酸グリセリドを配合、試験例14:EO−ドデカンジオールの代わりにパルミチン酸セチルを配合、試験例15:ヤシ脂肪酸−N−メチルエタノールアミドの代わりにヤシ脂肪酸ジエタノールアマイドを配合、試験例16:ヤシ脂肪酸−N−メチルエタノールアミドの代わりにコカミドプロピルジメチルアミンを配合、試験例17:ジココイルエチルヒドロキシエチルモニウムメトサルフェートの代わりにジパルミトイルエチルヒドロキシエチルモニウムメトサルフェートを配合し、α1とα2との差が4である組合せの配合、試験例18:(A)成分としてモノ長鎖型カチオン性活性剤を用いた場合に、低温における安定性における問題と乾燥後のサラサラ感における若干の問題が認められたことを示す配合、試験例19:ジココイルエチルヒドロキシエチルモニウムメトサルフェートの代わりにステアロイルメチルタウリンナトリウムを配合)においては、通常の許容範囲を超えた問題が認められた。
【0051】
以下に、本発明の毛髪化粧料の処方例を開示する。各処方例において記載されている市販品名は、上記の表1について説明された内容に従う。さらに、日本化粧品表示名称を用いた開示も行っている。各処方例は、上記試験例に準じて、及び、常法に従い調製することができる。
【0052】
[処方例1] ヘアトリートメント
配合成分 配合量(質量%)
デヒコートL80 7.0
POE(0.9)−1,2−ドデカンジオール 20.0
ジメチコン(50cs) 3.0
ジメチコン(100万cs) 0.5
アミノプロピルメチコン 0.5
パルミチン酸オクチル 0.1
メチルパラベン 0.1
ジグリセリン 10.0
プロピレングリコール 0.5
ヒドロキシエチル尿素 0.1
PEG−90M 0.1
ヒドロキシエチルセルロース 0.2
フェノキシエタノール 0.4
香料 0.2
イオン交換水 残余
合計量 100.0
【0053】
[処方例2] ヘアコンディショナー
配合成分 配合量(質量%)
デヒコートL80 4.0
POE(1.2)−1,2−ドデカンジオール 15.0
ジメチコン(50cs) 3.0
アモジメチコン 0.5
(ビスイソブチルPEG−14/アモジメチコン)コポリマー 0.05
PCAジメチコン 0.1
ミネラルオイル 0.1
オレイン酸モノグリセリド 0.2
オクトキシグリセリン 0.1
ソルビトール 5.0
1,3−ブチレングリコール 0.5
カチオン化ローカストビーンガム 0.2
アデカノールGT−700 0.2
ベンジルアルコール 0.1
サリチル酸ナトリウム 0.1
バラ抽出液 0.1
タウリン 0.1
L−アルギニン塩酸塩 0.1
香料 0.2
イオン交換水 残余
合計量 100.0
【0054】
[処方例3] リンスインシャンプー
配合成分 配合量(質量%)
デヒコートL80 8.0
POE(0.9)−1,2−ドデカンジオール 30.0
カチオン化セルロース 0.3
カチオン化グアガム 0.2
ポリクオタニウム−7 0.1
アミノプロピルメチコン 0.2
ジメチコン(50cs) 0.5
メチルパラベン 0.1
プロピルパラベン 0.1
ジグリセリン 5.0
1,3−ブチレングリコール 0.5
クエン酸 0.05
クエン酸ナトリウム 0.05
加水分解小麦蛋白 0.05
大豆エキス 0.2
香料 0.2
イオン交換水 残余
合計量 100.0

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)一般式(1)で表されるジ長鎖型カチオン性活性剤、(B)一般式(2)で表される1,2−アルカンジオールのエチレンオキシド付加物、及び/又は、一般式(3)で表されるN−アシル−N−メチルモノエタノールアマイド、並びに、(C)水、を含有する毛髪化粧料であって、当該一般式(1)のジ長鎖型カチオン性活性剤のRCOを構成する炭素原子数α1と、当該一般式(2)の1,2−アルカンジオールのエチレンオキシド付加物のRCHCHないし当該一般式(3)のN−アシル−N−メチルモノエタノールアマイドのRCOを構成する炭素原子数α2が、α2−2≦α1≦α2+2である、毛髪化粧料。
【化1】

[式中、RCOは、それぞれが同一であっても異なってもよく、炭素原子数が10〜22で、二重結合を0〜3個有する脂肪族アシル基を表し、pは1〜3の整数を表す。Xは、ハロゲン原子、メトサルフェートもしくはメトホスフェートを表す。]
【化2】

[式中、Rは、炭素原子数が8〜20で、二重結合を0〜2個有する炭化水素基であって、エチレンオキシドの付加数を示すmとnは、それぞれ0〜2の整数であって、m+nの平均が0より大きく、2より小さい。]
【化3】

[式中、Rは、炭素原子数が9〜21で、二重結合を0〜2個有する炭化水素基である。]
【請求項2】
前記毛髪化粧料において、ジ長鎖型カチオン性活性剤(1)のRCOを構成する炭素原子数は、10〜14である、請求項1に記載の毛髪化粧料。
【請求項3】
前記毛髪化粧料において、1,2−アルカンジオールのエチレンオキシド付加物(2)のRCHCHを構成する炭素原子数、及び、N−アシル−N−メチルモノエタノールアマイド(3)のRCOを構成する炭素原子数は、それぞれ10〜14である、請求項1又は2に記載の毛髪化粧料。
【請求項4】
前記毛髪化粧料において、1,2−アルカンジオールのエチレンオキシド付加物(2)のエチレンオキシドの付加数を示すmとnの和の平均が0.5以上1.5以下である、請求項1〜3のいずれかに記載の毛髪化粧料。
【請求項5】
前記毛髪化粧料において、ジ長鎖型カチオン性活性剤(1)は、ジココイルエチルヒドロキシエチルモニウムメトサルフェートである、請求項1〜4のいずれかに記載の毛髪化粧料。
【請求項6】
前記毛髪化粧料において、30℃でラメラ液晶構造を有している、請求項1〜5のいずれかに記載の毛髪化粧料。
【請求項7】
前記毛髪化粧料は、ヘアコンディショナー、ヘアリンス又はリンスインシャンプーである、請求項1〜5のいずれかに記載の毛髪化粧料。
【請求項8】
前記毛髪化粧料が、洗い流さずに使用することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の毛髪化粧料。

【図1】
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【公開番号】特開2010−275231(P2010−275231A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−129450(P2009−129450)
【出願日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【出願人】(000001959)株式会社資生堂 (1,748)
【Fターム(参考)】