説明

気中終端接続部用套管ユニット及び気中終端接続部

【課題】高電圧の電力ケーブルの気中終端接続部に用いて、扱い易く、好適に気中終端接続部を組み立てること。
【解決手段】套管110は、筒状をなし、一端部側から電力ケーブル端末310が挿入されるとともに、外周面が、襞部114aを有する樹脂製のポリマー被覆材114で被覆されている。このポリマー套管110内には、ポリマー套管110と同心上に導体引出棒120が配置され、受容部130を介して、一端部110a側から挿入される電力ケーブルの端末310と接続される。導体引出棒120及び受容部130の周囲には、筒状をなし、外周を套管110で被覆された絶縁筒部140が配置され、この絶縁筒部140は、ポリマー被覆材114と同種の樹脂により形成されてなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発電所、変電所などに配置される電力機器や架空送電線と電力ケーブルとを接続する電力ケーブルの終端接続部に関し、特に、気中終端接続部及び気中終端接続部用套管ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、CV(架橋ポリエチレン絶縁)ケーブル等の電力ケーブルには、絶縁体内の電界ストレスを緩和するため、絶縁体上に遮蔽層(外部半導電層)が設けられている。このような電力ケーブルの終端接続部を組み立てる場合、ただ単に遮蔽層を取り除くのみでは、遮蔽層端部に電界が集中し、絶縁体である架橋ポリエチレンの破壊を引き起こすおそれがある。そのため、特に高電圧用の電力ケーブルの終端接続部では、電界ストレスが集中しないよう、様々な工夫が施されている。
【0003】
例えば、大気中で使用される終端接続部としての気中終端接続部は、プレモールドのゴム製のストレスコーン(電界緩和絶縁補強層)を用いたプレハブ式(特許文献1参照)のものや、油浸絶縁紙内に配置された薄い金属箔電極間の静電容量を適当に分布させてなるコンデンサコーンを用いた油浸式(特許文献2参照)のものなどがある。
【0004】
例えば、プレハブ式の気中終端接続部では、筒状の碍管内において、電力ケーブルの導体の端部に導体引出棒が圧縮接続され、段剥ぎして露出した絶縁体上に紡錘状のストレスコーンを被嵌している。
【0005】
このストレスコーンは、圧縮装置を介して、碍管内の下方に挿入固定されたエポキシ座に押圧固定されている。なお、この圧縮装置のスプリング力によりエポキシ座とストレスコーンとの界面及びストレスコーンとケーブル絶縁体との界面に適切な圧力を与え絶縁耐力を確保する。また、碍管の上部には導体引出棒および碍管を固定するための上部金具が固定され、これらを覆うように上部覆いが被されている。また、電力ケーブルは、碍管内において外部遮蔽層の接地がつけられた状態となっている。
【0006】
そして、この碍管内には、絶縁コンパウンドとして、絶縁油等の絶縁流体やSFガス(六フッ化硫黄)等の絶縁ガスが充填される。
【0007】
また、油浸式の気中終端接続部では、碍管内に挿入される電力ケーブルの導体端部にコンデンサコーンを主絶縁要素として用い、碍管内に、絶縁コンパウンドとして、絶縁油等の絶縁流体が充填される。
【0008】
このようなプレハブ式や油浸式の気中終端接続部においては、電力ケーブルの端末のケーブル導体と導体引出棒との接続部分を収容する碍管は、一般的に、磁器製であり、高電圧になるにつれ、太く長尺となるとともに重量が重くなり扱いにくく作業効率が悪くなるという問題がある。
【0009】
また、上記構成の気中終端接続部では、碍管内には、液体や気体の絶縁コンパウンドが充填されている。このため、地震などの外的な負荷や経年によって絶縁コンパウンドの外部への流出防止のためのメンテナンスが必要となり面倒であった。
【0010】
これに対して、近年では、磁器製の碍管に代えてポリマー製の套管(碍管)を使用し、このポリマー碍管内に絶縁油や絶縁ガスを充填してなる複合碍管が知られている。
【特許文献1】特開2000−261948号公報
【特許文献2】特開2003−189454号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、従来の気中終端接続部において磁器碍管に代えて、ポリマー製の套管を使用した場合、套管が高分子材料のポリマーで形成されているため、ポリマー製の套管内に外部から水分が透過して、套管内の絶縁油や絶縁ガスに混入して、絶縁油や絶縁ガスの性能を劣化させる可能性がある。
【0012】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、高電圧の電力ケーブルの気中終端接続部に用いて、扱い易く、好適に気中終端接続部を組み立てることができる気中終端接続部用套管ユニット及び気中終端接続部を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の気中終端接続部用套管ユニットは、筒状をなし、一端部側から電力ケーブル端末が挿入されるとともに、外周面が、襞部を有する樹脂製の絶縁外被部で被覆されたポリマー套管と、前記ポリマー套管内に当該ポリマー套管と同心上に配置され、前記一端部側から挿入される前記電力ケーブル端末に導通される導体引出棒と、前記ポリマー套管内に配置され、前記一端部側から挿入される前記電力ケーブル端末を受容して前記導体引出棒と接続する受容部と、前記導体引出棒及び受容部の周囲を被覆する筒状をなし、外周面で前記ポリマー套管に被覆される絶縁筒部と有し、前記絶縁筒部は、前記絶縁外被部と同種の樹脂により形成されてなる構成を採る。
【発明の効果】
【0014】
以上説明したように、本発明によれば、高電圧の電力ケーブルの気中終端接続部に用いて、扱い易く、好適に気中終端接続部を組み立てることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、ここで、気中終端接続部は、電力ケーブルの終端部を、例えば、トランス、架空線、変電所の母線等に接続するものである。
【0016】
図1は、本発明の一実施の形態に係る気中終端接続部用套管ユニット100の構成を示す断面図である。
【0017】
図1に示す気中終端接続部用套管ユニット100は、テーパが付けられた套管110と、套管110内に当該套管110と同心に配置された導体引出棒120と、套管110内に挿入されるケーブル導体を受容して導体引出棒120と接続する受容部130と、套管110内に配置され、導体引出棒120及び受容部130を被覆する絶縁筒部140とを有する。
【0018】
套管110は、筒状をなす本体部112を、ポリマー被覆材114で被覆することにより構成されている。套管110は、外周面に、基端側から先端側に向かってテーパが付けられて入れているため、基端部110a側の開口部が先端部110b側の開口部より径が大きくなっている。なお、本実施の形態の套管110は、外周面にテーパが付けられているものとしたが、これに限らずテーパが無く、基端部側及び先端部側の開口は同径の筒体であってもよい。
【0019】
基端部110a側から電力ケーブルの端部が挿入され、先端部110b側の開口部は、架空線や機器に接続される上部被覆部116により閉塞されている。
【0020】
套管110内に、挿入された電力ケーブルの端部は、絶縁処理が施された状態で、導体引出棒120を介して、先端部110b側の上部被覆部側に接続される架空線や機器などに電気的に接続される。
【0021】
本体部112は、機械的強度の高い材料、例えば、エポキシ樹脂やFRP(Fiber Reinforced Plastics)などの硬質プラスチック樹脂で形成されている。ここでは、FRPが用いられ、このFRP製の筒状の本体部112をポリマー被覆材114が被覆することにより、套管110の外被を形成している。
【0022】
ポリマー被覆材(絶縁外被部)114は、電気絶縁性能に優れる材料、ここでは、シリコンポリマーなどの高分子材料により形成され、本体部112に一体的に設けられている。
【0023】
また、ポリマー被覆材114は、本体部112の外周部分に長手方向に所定間隔を空けて配置された複数の襞部114aを有しており、この襞部114aにより套管110の一端部110a側と他端部110b側とが雨水などにより電気的に短絡することを防止する。
【0024】
導体引出棒120は、導電性を有する筒状体であり、一端部122で上部被覆部116に電気的に接続され、他端部124で受容部130に可撓通電部150を介して導通した状態で接続されている。なお、本実施の形態では、導体引出棒120は導電性を有する筒状体としたが、これに限らず、中実の棒状体で構成してもよい。
【0025】
導体引出棒120は導電性を有するものであれば、どの様に構成されてもよく、撚り線などにより構成されてもよいが、ここでは、アルミ管を用いている。導体引出棒120は筒状であるため、その通電容量をケーブル導体より大きくした状態で径を大きくすることができる。
【0026】
受容部130は、套管110内において、基端部110a側に配置されており、套管110の基端部110aの開口縁部110cに取り付けられた平板環状の底部金具118に固定され、底部金具118の開口部から外方に開口する受容口130aで、電力ケーブルの端部を受容する。
【0027】
具体的に受容部130は、絶縁性を有する筒状の受容部本体132と、受容部本体132内に配置された有底筒状の筒内導通部134とを有し、電力ケーブルを受容して筒内導通部134に接続させることによって導体引出棒120と導通させる。
【0028】
受容部本体132では、エポキシ樹脂などの絶縁性を有する部材から形成され、一端部側の開口で受容口130aを形成している。この受容口130aを底部金具118の開口部118aに連通させた状態で、受容部130は、底部金具118に固定されている。
【0029】
これら底部金具118の開口部118a及び受容口130aを介して、套管110の基端部110a側から電力ケーブルの端部が挿入され、挿入された電力ケーブルの端部は、筒内導通部134の接続部134aに電気的に接続される。
【0030】
受容部本体132では、他端部側端面から、受容部本体132内の筒内導通部134の底面に設けられた凸部134bが外方に突出している。この凸部134bは、気中終端接続部用套管ユニット100と同軸上に位置しており、可撓通電部150に導通した状態で接続されている。この凸部134bの外径は、導体引出棒120の外径と略同様の径である。
【0031】
図2は、本発明の一実施の形態に係る気中終端接続部用套管ユニット100の可撓通電部150の一例を示す模式図であり、図2(a)は、同可撓通電部150の一例を示す要部断面図、図2(b)は、同可撓通電部150の導通筒状接続部の正面図である。
【0032】
図2に示すように、可撓通電部150は、導体引出棒120と受容部130とを、套管110の編曲に追従した状態で通電させるものであり、可撓性を有した状態で両者を接続するものである。
【0033】
ここでは、可撓通電部150は、同軸上で突き合わせた状態で配置された導体引出棒120の他端部124と受容部130の凸部134bとを接続している。なお、図2(a)に示すように、導体引出棒120の他端部124には、端面が湾曲するフランジ126が設けられ、凸部134bの先端面にも同様のフランジ136が設けられている。
【0034】
つまり、導体引出棒120と受容部130とは、導体引出棒120の他端部124の端面のフランジ126と、筒内導通部134の凸部134bにおける先端のフランジ136とが対向して接触した状態で配置されている。
【0035】
可撓通電部150は、同軸上に配置された導体引出棒120の他端部124と凸部134bとの外周を被覆する導通筒状接続部152を有し、この導通筒状接続部152の内周面をそれぞれの外周面と面接触させることによって両者を導通させている。
【0036】
この導通筒状接続部152は、図2(b)に示すように、筒状体を軸方向に沿って複数分割してなる断面円弧状の複数の分割体152aからなる。
【0037】
これら分割体152aのそれぞれの内面には、構成する筒状体の軸方向に離間する両端部分から突出する突部152bが形成され、断面コ字状をなしている。
【0038】
このように構成された複数の分割体152aが、導体引出棒120の他端部124と凸部134bとの接続部分に、両者のフランジ部126,136に跨って配置されており、両者のフランジ126,136がコ字状内に配置された状態となっている。これにより、分割体152aからなる筒状の導通筒状接続部152の軸方向への移動は規制されている。なお、複数の分割体152aからなる筒状体の内径は、接続される他端部124と凸部134bの外径よりも小さいものとなっている。
【0039】
このように配置された導通筒状接続部152は、外周側に配置された押圧部材154によって、導体引出棒120の他端部124と凸部134bの外周面に押圧され、当該外周面と面接触している。
【0040】
押圧部材154は、導通筒状接続部152の内周面を導体引出棒120の他端部124及び凸部134bの外周面に押圧して接触させることによって、両者を導通させるとともに、両者の接続部分から導通筒状接続部152が位置ずれすることを防止している。
【0041】
ここでは、押圧部材154は、導通筒状接続部152の外周に沿って複数配設された環状のコイルスプリングにより構成されている。ここでは、コイルスプリングは、導通筒状接続部152の外周面から脱落しないように、導通筒状接続部152の外周面に、外周に沿って形成された溝部152cに内嵌させた状態で配置されている。詳細には、溝部152cは、複数の分割体152aのぞれぞれの外周面の同位置に形成される。
【0042】
さらに、可撓通電部150では、同軸上に配置された導体引出棒120の他端部124と凸部134bとの外周を被覆する導通筒状接続部152及び押圧部材154を熱収縮チューブ156により被覆している。この熱収縮チューブ156によって、套管110内に樹脂を充填させて絶縁筒部140を形成する際に、可撓通電部150へ樹脂が侵入することを防止できる。
【0043】
熱収縮チューブ156の上下の開口部の内周には、導体引出棒120と凸部134bとにそれぞれ外嵌されたOリング158が配設されている。ここでは、Oリング158は熱収縮チューブ156に埋設されており、これら熱収縮チューブ156及びOリング158によって、導体引出棒120の他端部124と受容部130の凸部134bとの接続部分は密閉された状態となっている。なお、このOリング158を有しない可撓通電部150の構成としてもよい。この場合、熱収縮チューブ156によって、導体引出棒120の他端部124と受容部130の凸部134bとの接続部分は密閉される。
【0044】
なお、可撓通電部150は、上記の構成に限らず、ポリマー套管110を用いた場合も編曲に導体引出棒120、ケーブル端末が接続された受容部130が追従できれば、どのような構成でもよい。例えば、導体引出棒120と受容部130の接続部分や導体引出棒120の途中にフレキシブル導体(可撓より線)や短尺ケーブルなどを配設したりしてもよい。
【0045】
このように構成された可撓通電部150によって、導体引出棒120と受容部130とは導通した状態で屈曲自在に接続されている。
【0046】
このような導体引出棒120及び受容部130の外周面と、套管110の内周面との間には、套管110の外被であるポリマー被覆材114と同種の絶縁材料を充填し固化してなる絶縁筒部140が配設されている。
【0047】
絶縁筒部140は、套管110の絶縁外被部を構成するポリマー被覆材114と同様の絶縁性を有する樹脂で形成されてなり、内周面は導体引出棒120及び受容部130の外周面に密着され、外周面は套管110の内周面に密着している。
【0048】
絶縁筒部140は、ここでは、套管110の絶縁外被部を構成するポリマー被覆材114と同じ絶縁性を有する樹脂であるシリコーンで形成している。なお、絶縁筒部140は、套管110の絶縁外被部(ポリマー被覆材114)で用いられる材料と同種の材料であれば、どのような材料でもよい。また、絶縁筒部140を形成する樹脂は、固化してなるゲル状の樹脂も含む。
【0049】
具体的には、絶縁筒部140は、シリコーンゴム等の低温硬化形や常温硬化形のゴムで形成することが望ましいが、軟質エポキシ樹脂などを用いて形成してもよい。なお、低温硬化形のゴムにおける低温硬化とは、例えば90℃〜160℃程度で硬化するものである。また、常温硬化形は25℃〜50℃程度で硬化するもの、高温硬化形とは140℃〜250℃程度で硬化するものとする。
【0050】
このように絶縁筒部140は、ポリマー被覆材114と同様のシリコーンで形成されているため、套管110との親和性もよく強固に接合されている。例えば、絶縁筒部140が、套管110の本体部112と接着性が良いポリマー被覆材114と同様のシリコーンであるため、絶縁筒部140自体も套管110におけるFRP製の本体部112との接着性が良い。
【0051】
気中終端接続部用套管ユニット100によれば、套管110内において、従来、油やガスを用いて行っていた内部絶縁を、ゲル状を含む固体の絶縁筒部140で行う構成としたため、内部絶縁自体が外部に流出することがないとともに、気中終端接続部用套管ユニット100自体の設置を、設置方向が限定されることなく自由に行える。
【0052】
また、気中終端接続部用套管ユニット100によれば、絶縁筒部140は、工場において、導体引出棒120、可撓通電部150及び受容部130を配設した套管110内に、注型し固化して形成することができるため、ユニット状態のまま検査出荷して、現場での組み立て工程を省略でき、現場作業の工数を削減できる。
【0053】
次に、気中終端接続部用套管ユニット100を用いた気中終端接続部200について説明する。
【0054】
図3は、本発明に係る気中終端接続部用套管ユニット100を用いた気中終端接続部200の部分断面図であり、図4は、本発明に係る気中終端接続部用套管ユニット100を用いた気中終端接続部200の接続方法を示す図である。
【0055】
図3に示す気中終端接続部用套管ユニット100は、底部金具118のフランジ部分を
支持碍子202を介して支持架台204に取り付けられており、受容口に、電力ケーブルの端末(以下、「ケーブル端末」という)310が挿入されることにより形成されている。なお、ケーブル端末310は、図3では断面図で示され、図4では側面図として示されている。
【0056】
この気中終端接続部用套管ユニット100を用いた気中終端接続部200の組み立て方法としては、先ず、気中終端接続部用套管ユニット100を、底部金具118の下面に配設した支持碍子202を介して支持架台204に取り付ける(図3参照)。
【0057】
また、電力ケーブル300のケーブルの端部を段剥処理して露出させたケーブル絶縁体312の外周に、ストレスコーン320を装着するとともに、ケーブル導体の先端部に導体端子322を取り付ける(図4参照)。
【0058】
ストレスコーン320は、エチレンプロピレンゴム(EPゴム)等のゴム状弾性を有するプレモールド絶縁体などから成り、このストレスコーン320の先端部には受容部130の受容口の内壁面に装着される先細り状のコーン状部324が設けられている(図4参照)。
【0059】
そして、このような構成のケーブル端末310を受容部の受容口に装着して、ケーブル端末310側に配設した押圧装置(図示省略)を受容口側に向けて圧縮する。これにより、導体端子322が受容部130における筒内導通部134(図1参照)の接続部134a(図1参照)に内嵌して、受容部130及び可撓通電部150を介して導体引出棒120に導通した状態で接続されるとともに、ストレスコーン320のコーン状部324が受容部130の受容口の内壁面に押し付けられて、受容部の内壁面とコーン状部324の外周面間における界面の絶縁性能が確保される。
【0060】
本実施の形態によれば、套管110内の内部絶縁体として、固体である絶縁筒部140を有するため、気中終端接続部用套管ユニット100として工場などにおいて電気試験後に出荷でき、信頼性の向上を図ることができる。
【0061】
また、気中終端接続部200を作製する場合、現地組み立て作業としては、ケーブル処理のみとなる。さらに、気中終端接続部用套管ユニット100の受容部130の受容口にケーブルの端末310を挿入するだけで、気中終端接続部200を組み立てることができる。つまり、従来の複合碍管適用油絶縁式の気中終端接続部の構造と異なり、ケーブル端末自体を碍管内に貫通、または深く挿入させることなく、終端接続部を組み立てることができる。よって、碍管長に関わらず、従来と比較して、電力ケーブルの端部における処理長を短くすることができる。
【0062】
すなわち、本実施の形態の気中終端接続部用套管ユニット100は、従来の気中終端接続部に見られるように、接続される電力ケーブルの端末は、一端部側から挿入して他端部側近傍まで至る構成とは異なる。
【0063】
つまり、従来の気中終端接続部は、磁器碍管を用いて内部に絶縁油やSF等の絶縁ガスを充填した気中終端接続部や、磁器碍管に代えてポリマー碍管を用いて内部に絶縁油や絶縁ガスを充填した複合碍管等に見られるように、電力ケーブルは、碍管内を略貫通する構成、つまり、碍管内深くに挿入された構成となっている。
【0064】
これに対して、気中終端接続部用套管ユニット100は、套管110の一端部110a側に配設された受容部130の受容口にケーブル端末310を挿入するだけで、他端部110b側の他のケーブルや機器などに絶縁処理が施された状態で導通して接続させることができ、従来と異なり、碍管内に挿入される電力ケーブル部分に施される段剥ぎ等の端末部分の処理長が短くなっている。
【0065】
また、本発明の気中終端接続部用套管ユニット100は、内部絶縁体として套管110の絶縁外被部であるポリマー被覆材114と同種の材料からなる固体の絶縁筒部140を備える。このため、碍管内の上部に空層が存在し、かつ、油絶縁式の気中終端接続部と異なり、碍管を設置する際の傾きが規制されることなく、自由な方向で設置することができる。
【0066】
また、絶縁筒部140は、従来、用いられていた油やガスと異なり、固体化されているため、地絡時の飛散物として、絶縁筒部140自体が飛散することがなく、飛散物の噴出箇所近傍の材料の最小限に抑制できる。
【0067】
また、套管110がシリコーン製のポリマー被覆材114で被覆されたポリマー套管110であり、且つ、この套管110内部に絶縁油又は絶縁ガスなどを用いず固体の絶縁筒部140が設けられている。このため、従来の磁器製のものと異なり、高電圧(例えば、154kV)の電力ケーブルであっても、太く長尺となることがなく、重量も重くなることがない。また、高電圧ケーブルの気中終端接続部を組み立てる際にも、絶縁油又は絶縁ガスを現場で充填する作業を必要としない。このため、気中終端接続部用套管ユニットは扱いやすくなり、気中終端接続部を組み立てる際の作業効率の向上を図ることができる。
【0068】
また、導体引出棒120は、筒状であるため、中実の導体引出棒と比較して、軽量化を図ることができる。また、接続するケーブル導体より断面積を大きくした状態で、外径を大きくできる。これにより、導体引出棒120自体の導体表面ストレスを緩和させることができる。套管110内において絶縁筒部140を構成するシリコーンなどの材料の量を少なくさせることができる。
【0069】
また、本実施の形態の気中終端接続部用套管ユニット100では、ポリマーを用いた套管110内の導体引出棒と受容部130とを可撓通電部150により導通した状態で接続している。このため、横荷重を受けた場合に大きく変形するポリマー製の套管110及び絶縁筒部140の変形に追従でき、導体引出棒120、受容部130等に曲げ力が伝達されることを防止できる。
【0070】
なお、気中終端接続部は、塩が付着し易い海岸付近、埃が多い地域等に配設された場合の現地の汚損環境に対応した套管の長さを必要とすることが知られている。この点において、本実施の形態の気中終端接続部用套管ユニット100は、套管110内に樹脂を注入して固化させることで絶縁筒部140を形成するだけで形成できるため、その配設を行い易い。
【0071】
本発明の第1の態様に係る気中終端接続部用套管ユニットは、筒状をなし、一端部側から電力ケーブル端末が挿入されるとともに、外周面が、襞部を有する樹脂製の絶縁外被部で被覆されたポリマー套管と、前記ポリマー套管内に当該ポリマー套管と同心上に配置され、前記一端部側から挿入される前記電力ケーブル端末に導通される導体引出棒と、前記ポリマー套管内に配置され、前記一端部側から挿入される前記電力ケーブル端末を受容して前記導体引出棒と接続する受容部と、前記導体引出棒及び受容部の周囲を被覆する筒状をなし、外周面で前記ポリマー套管に被覆される絶縁筒部と有し、前記絶縁筒部は、前記絶縁外被部と同種の樹脂により形成されてなる構成を採る。
【0072】
この構成によれば、套管がポリマー套管であり、従来の磁器製のものと異なり、高電圧の電力ケーブルであっても、太く長尺となることがなく、重量も重くなることがない。よって、高電圧ケーブルの気中終端接続部を組み立てる際にも、扱いやすく作業効率の向上を図ることができる。
【0073】
また、ポリマー套管内の内部絶縁体として、ポリマー套管で用いられる絶縁外被部と同様の樹脂により形成されてなる絶縁筒部を有するため、碍管内に充填される絶縁油又は絶縁ガス等を絶縁コンパウンドとして用いた従来の気中終端接続部と異なり、地震などの外的な負荷や経年によって絶縁コンパウンドの外部への流出防止のためのメンテナンスを必要としない。さらに、套管内に、ポリマー製の套管内に外部から水分が透過して、套管内の絶縁油や絶縁ガス等が混入することがない。
【0074】
したがって、扱い易く、絶縁処理を確実に施された気中終端接続部を好適に組み立てることができる。
【0075】
本発明の第2の態様に係る気中終端接続部用套管ユニットは、上記構成において、前記ポリマー套管内の前記導体引出棒と前記受容部とは可撓性を有する接続部により互いを導通した状態で接続されている構成を採る。
【0076】
この構成によれば、外部から荷重がかかる場合でも、導体引出棒とケーブル導体が接続される受容部に、曲げ荷重がかかることを防止して、その接続状態を好適に維持することができる。
【0077】
本発明の第3の態様に係る気中終端接続部用套管ユニットは、上記構成において、前記受容部は、前記ポリマー套管の一端部側に配置されている構成を採る。
【0078】
この構成によれば、套管内を貫通するように電力ケーブルを挿入する必要がないため、電力ケーブル端末において、気中終端接続部として気中終端接続部用套管ユニットに接続する際に必要な套管内に挿入される部位におけるケーブル絶縁体に対して行う段剥ぎ等の処理長を短くすることができる。
【0079】
本発明の第4の態様に係る気中終端接続部用套管ユニットは、上記構成において、前記導体引出棒は筒状である構成を採る。
【0080】
この構成によれば、ポリマー套管内の導体引出棒が筒状であるため、接続されるケーブルのケーブル導体の断面より大きな断面を有した状態で、導体引出棒の外径を大きくすることができる。
【0081】
これにより、絶縁筒部に被覆されることで面接触する導体引出棒の外周面積を広くすることができ、導体引出棒自体の表面における電界ストレスを緩和することができる。また、ポリマー套管内で導体引出棒の径が大きくなることから、導体引出棒とポリマー套管の間の空間に設けられる絶縁筒部の体積を減少させることができる。つまり、絶縁筒部を形成する樹脂の量を低減することできる。さらに、中実の導体引出棒と比較して、中空部分を有することで、その分の軽量化を図ることができる。
【0082】
本発明の第5の態様に係る気中終端接続部は、上記構成の気中終端接続部用套管ユニットの前記受容部に、電力ケーブル端末が装着されてなる構成を採る。
【0083】
この構成によれば、套管がポリマー套管であり、従来の磁器製のものと異なり、高電圧の電力ケーブルであっても、太く長尺となることがなく、重量も重くなることがない。よって、高電圧ケーブルの気中終端接続部を組み立てる際にも、扱いやすく作業効率の工場を図ることができる。また、ポリマー套管内の内部絶縁体として、ポリマー套管で用いられる絶縁外被部と同様の樹脂により形成されてなる絶縁筒部を有するため、碍管内に充填される絶縁油又は絶縁ガス等を絶縁コンパウンドとして用いた従来の気中終端接続部と異なり、地震などの外的な負荷や経年によって絶縁コンパウンドの外部への流出防止のためのメンテナンスを必要としない。さらに、套管内に、ポリマー製の套管内に外部から水分が透過して、套管内の絶縁油や絶縁ガス等が混入することがない。
【0084】
したがって、扱い易く、絶縁処理を確実に施した状態で好適に組み立てることができる。
【0085】
本発明に係る気中終端接続部用套管ユニット及び気中終端接続部は上記各実施の形態に限定されず、種々変更して実施することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0086】
本発明に係る気中終端接続部用套管ユニット及び気中終端接続部は、高電圧の電力ケーブルの気中終端接続部に用いて、扱い易く、好適に気中終端接続部を組み立てることができる効果を有し、高電圧の電力ケーブルの気中終端接続部に用いられるものとして有用である。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】本発明の一実施の形態に係る気中終端接続部用套管ユニットの構成を示す断面図
【図2】本発明の一実施の形態に係る気中終端接続部用套管ユニットにおける可撓通電部の一例を示す模式図
【図3】本発明に係る気中終端接続部用套管ユニットを用いた気中終端接続部の部分断面図
【図4】本発明に係る気中終端接続部用套管ユニットを用いた気中終端接続部の接続方法を示す図
【符号の説明】
【0088】
100 気中終端接続部用套管ユニット
110 套管(ポリマー套管)
112 本体部
114 ポリマー被覆材(絶縁外被部)
120 導体引出棒
122 導体引出棒の一端部
124 導体引出棒の他端部
130 受容部
132 受容部本体
134 筒内導通部
140 絶縁筒部
150 可撓通電部
200 気中終端接続部
300 電力ケーブル
310 電力ケーブル端末
110a 套管の基端部
114a 襞部
118a 開口部
134a 接続部
134b 凸部
152a 分割体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状をなし、一端部側から電力ケーブル端末が挿入されるとともに、外周面を、襞部を有する樹脂製の絶縁外被部で被覆されたポリマー套管と、
前記ポリマー套管内に当該ポリマー套管と同心上に配置され、前記一端部側から挿入される前記電力ケーブル端末に導通される導体引出棒と、
前記ポリマー套管内に配置され、前記一端部側から挿入される前記電力ケーブル端末を受容して前記導体引出棒と接続する受容部と、
前記導体引出棒及び受容部の周囲を被覆する筒状をなし、外周面で前記ポリマー套管に被覆される絶縁筒部と有し、
前記絶縁筒部は、前記絶縁外被部と同種の樹脂により形成されてなることを特徴とする気中終端接続部用套管ユニット。
【請求項2】
前記ポリマー套管内の前記導体引出棒と前記受容部とは可撓性を有する接続部により互いを導通した状態で接続されている請求項1記載の気中終端接続部用套管ユニット。
【請求項3】
前記受容部は、前記ポリマー套管の一端部側に配置されていることを特徴とする請求項1記載の気中終端接続部用套管ユニット。
【請求項4】
前記導体引出棒は筒状であることを特徴とする請求項1記載の気中終端接続部用套管ユニット。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の気中終端接続部用套管ユニットの前記受容部に、電力ケーブル端末が装着されてなることを特徴とする気中終端接続部。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−92783(P2008−92783A)
【公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−346589(P2006−346589)
【出願日】平成18年12月22日(2006.12.22)
【出願人】(502122521)株式会社エクシム (25)
【Fターム(参考)】