説明

気体溜まり解析装置

【課題】箱形の形状であって内部の底面に凸部が形成された被塗装ワークに、気体溜まりの発生の有無について正確な解析結果を得ることができる気体溜まり解析装置を提供する。
【解決手段】気体溜まり解析装置の演算手段は、被塗装ワークの画像データを複数の要素に分割する要素分割をした後に、分割した各要素に液体又は気体の属性情報を付与し、これらの要素の高さを比較して気体溜まりの発生の解析を行い、解析の結果検出された気体溜まりについて、方向基準による気体溜まりの修正及び高さ基準による気体溜まりの修正を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気体溜まり解析装置に係り、特に、箱形の形状であって内部の底面に凸部が形成された被塗装ワークに関して気体溜まりの発生の有無について正確な解析を行う気体溜まり解析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車車両の車体等を電着液で満たされた電着槽に浸漬させて行う電着塗装は、塗膜を略均一に形成することができ、被電着物の溶接部分にも塗装を行うことができる等の利点がある。この反面、車体のフード内面、ルーフ内面及びフロア下面等の凸部にエアーポケットと呼ばれる気体溜まりが生じ、気体溜まりが発生した部分に塗膜を形成することができないという欠点がある。
【0003】
そこで、被塗装物(被塗装ワーク)を電着槽に浸漬させた際に、気体溜まりが発生するか否かを判定する手法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
この手法では、まず、被塗装ワークの各表面をその頂点座標データに基づいて任意数の三角ポリゴン(三角形の要素)に分割し、各々の三角ポリゴン(三角形の要素)について、被塗装ワークを入槽角の姿勢にて浸漬槽に模擬浸漬した際に気体溜まりとなりうる表面部位であるか否かの判定をするものである。
【0005】
しかし、かかる手法によっては、複数に分割されたメッシュごとに気体と浸漬槽内の塗料との状態変化を時々刻々と計算する必要があり、演算が複雑となる。そのため、コンピュータにかかる負荷が大きくなり、演算に膨大な時間が必要となってしまい、パーソナルコンピュータ等の汎用コンピュータを用いて演算を行うには限界があり、実用性に欠ける問題がある。また、かかる手法は、解析対象である被塗装ワークの形状が単純である場合には有効であるが、被塗装ワークの死角となる部分の形状が複雑である場合には、正確な解析結果が得られない場合があるという問題点もある。
【0006】
そこで、被塗装ワーク及びその周辺の空間を複数の要素に分割し、要素の特徴点(例えば、重心点、頂点、内心点、外心点、垂心点)同士の高さを比較することにより、気体溜まりが発生するか否かの解析を行う手法や、被塗装ワークに複数の要素を形成した後に、それらの要素の頂点を節点として節点同士の高さを比較することにより、気体溜まりが発生するか否かの解析を行う手法が提案されている。
【0007】
かかる手法によれば、コンピュータの演算量を減少させて簡易かつ迅速に解析を行うことができる。
【特許文献1】特開2000−51750号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、かかる手法によっては、図2に示すような箱型形状であって、内部の底面に凸部が形成されている被塗装ワークαについて解析を行った場合、気体溜まりが本来発生しない場所に発生するとの解析結果を得てしまうこととなる。
【0009】
例えば、両端部に穴H1及び穴H2が設けられ、底面に凸部Mが形成されている被塗装ワークαについてかかる手法により解析を行うと、図4(a)に示すように、凹部X及び凹部Yの下方のみならず、凸部Mについても、凸部Mは塗装がなされず凸部Mの周囲には気体溜まりが発生するとの解析結果が出てしまう。
【0010】
しかし、実際に被塗装ワークαについて浸漬塗装を行った場合に気体溜まりが発生するのは、図11に示すように気体溜まりは凹部X及び凹部Mの下方の網掛けして表した部分のみであって、凸部Tの周辺には発生しない。
【0011】
本発明の課題は、箱形の形状であって内部の底面に凸部が形成された被塗装ワークに関して気体溜まりの発生の有無について正確な解析結果を得ることができる気体溜まり解析装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の気体溜まり解析装置は、液体塗料による浸漬塗装を行う被塗装ワークに対応する形状データの入力を行う為の入力手段と、前記被塗装ワークの画像データを複数の要素に分割する要素分割をした後に、前記分割した各要素に液体又は気体の属性情報を付与し、これらの要素の高さを比較して気体溜まりの発生の解析を行い、前記解析の結果検出された気体溜まりについて、所定の属性情報が気体の要素から所定の方向に属性情報が液体の要素がある場合には、前記所定の要素の属性情報を液体に変更する方向基準による前記気体溜まりの修正を行い、前記方向基準による気体溜まりの修正の結果、属性情報が液体に変更された要素と隣接する属性情報が気体の要素の高さを比較して、前記属性情報が気体の要素の属性情報が液体に変更する高さ基準による気体溜まりの修正を行う演算手段と、を備えることを特徴とする。
【0013】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の気体溜まり解析装置において、前記演算手段は、前記被塗装ワークのフリーエッジに隣接する要素の属性情報を液体と決定すると共に、それ以外の要素の属性情報を気体と設定し、前記属性情報が液体と決定された要素と隣接する属性情報を気体と設定された要素との重力方向と反対方向の高さを比較し、前記隣接する属性情報を気体と設定された要素の高さが属性情報を液体と決定された要素の高さより高い場合は、前記隣接する要素の属性情報を気体と決定し、属性情報が液体と決定された要素の高さより低い場合又は同じ場合は、前記隣接する要素の属性情報を液体と決定し、前記属性情報を液体と決定された要素に隣接する要素の属性情報が全て決定するまで前記属性情報を液体と決定された要素と前記属性情報を気体と決定された要素の高さを比較することで気体溜まりの検出を行うことを特徴とする。
【0014】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載気体溜まりの解析装置において、前記演算手段は、前記方向基準による気体溜まりの修正を前記気体溜まりと判定された範囲内に位置する属性情報が気体の要素を選択し、前記選択した要素から水平方向又は水平方向から上方を眺めた場合の視線方向に属性情報が液体である要素があるかの判断を行い、前記視線方向に属性情報が液体の要素があると判断した場合は、前記選択した要素の属性情報を液体に変更することにより行うことを特徴とする。
【0015】
請求項4に記載の発明は、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の気体溜まり解析装置において、前記演算手段は、前記高さ基準による気体溜まりの修正を前記属性情報が液体に変更された要素を選択し、前記選択した要素と前記選択した要素に隣接する属性情報が気体の要素と高さを比較し、前記属性情報が液体に変更された要素の高さが属性情報が気体の要素と比較して高い場合又は同じ場合は、属性情報が気体の要素の属性情報は液体に変更することにより行うことを特徴とする。
【0016】
請求項5に記載の気体溜まり解析装置は、液体塗料による浸漬塗装を行う被塗装ワークに対応する形状データの入力を行う為の入力手段と、前記被塗装ワークの画像データの表面に複数の節点を配置し、前配置した各節点に液体又は気体の属性情報を付与し、これらの節点の高さを比較して気体溜まりの発生の解析を行い、前記解析の結果検出された気体溜まりについて、所定の属性情報が気体の節点から所定の方向に属性情報が液体の節点がある場合には、前記所定の節点の属性情報を液体に変更する方向基準による前記気体溜まりの修正を行い、前記属性情報が液体に変更された節点と隣接する属性情報が気体の節点の高さを比較して、前記属性情報が気体の節点の属性情報が液体に変更する高さ基準による気体溜まりの修正を行う演算手段と、を備えることを特徴とする。
【0017】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の気体溜まり解析装置において、前記演算手段は、前記被塗装ワークのフリーエッジに隣接する節点の属性情報を液体と決定すると共に、それ以外の節点の属性情報を気体と設定し、前記属性情報が液体と決定された節点と隣接する属性情報を気体と設定された節点との重力方向と反対方向の高さを比較し、前記隣接する属性情報を気体と設定された節点の高さが属性情報を液体と決定された節点の高さより高い場合は、前記隣接する節点の属性情報を気体と決定し、属性情報が液体と決定された節点の高さより低い場合又は同じ場合は、前記隣接する節点の属性情報を液体と決定し、前記属性情報を液体と決定された節点に隣接する節点の属性情報が全て決定するまで前記属性情報を液体と決定された節点と前記属性情報を気体と決定された節点の高さを比較することで気体溜まりの検出を行うことを特徴とする。
【0018】
請求項7に記載の発明は、請求項5又は請求項6に記載の気体溜まり解析装置において、前記演算手段は、前記方向基準による前記気体溜まりの修正を前記気体溜まりと判定された範囲内に位置する属性情報が気体の節点を選択し、前記選択した節点から水平方向又は水平方向から上方を眺めた場合の視線方向に属性情報が液体である節点があるかの判断を行い、前記視線方向に属性情報が液体の節点があると判断した場合は、前記選択した節点の属性情報を液体に変更することにより行うことを特徴とする。
【0019】
請求項8に記載の発明は、請求項5から請求項6のいずれか一項に記載の気体溜まり解析装置において、前記演算手段は、前記高さ基準による気体溜まりの修正を前記属性情報が液体に変更された節点を選択し、前記選択した節点と前記選択した節点に隣接する属性情報が気体の節点と高さを比較し、前記属性情報が液体に変更された節点の高さが属性情報が気体の節点と比較して高い場合又は同じ場合は、属性情報が気体の節点の属性情報は液体に変更することにより行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
請求項1に記載の発明によれば、被塗装ワークを複数の要素に分割し、分割した要素同士の高さを比較することで容易に気体溜まりが発生するか否かの解析を行うことができると共に、方向基準による修正と高さ基準による修正を行うことで特に箱型の形状の被塗装ワークの内部に気体溜まりに気体溜まりが発生するか否かの解析を正確に行うことができる。
【0021】
即ち、被塗装ワークが箱型の形状であって、例えば、内部の底面に凸部がある場合、実際の浸漬と沿うにおいては、凸部付近には気体溜まりが発生しないが、被塗装ワークの画像データを複数の要素に分割して解析を行うと凸部の付近に気体溜まりが発生するとの解析結果が出てしまう。そこで、視線方向に属性情報が液体の要素があるか否かによる気体溜まりの修正及び要素の高低差を基準とした気体溜まりの修正を行うことで箱型の形状の被塗装ワークの気体溜まりの有無について正確な解析を行うことができる。
【0022】
請求項2に記載の発明によれば、フリーエッジに隣接する要素の属性を液体と決定し、その他要素の属性を気体として属性を液体と設定し、属性を液体と決定された要素と属性を気体設定された要素の高さの比較を行うことで、気体溜まりの発生の有無を容易に判断することができる。
【0023】
請求項3に記載の発明によれば、属性情報が気体の要素について所定の視線方向に属性情報が液体の要素がある場合に、その要素の属性情報を液体に変更することで気体溜まりの発生の有無について正確な解析を行うことができる。
【0024】
請求項4によれば、視線方向に属性情報が液体の要素があるか否かによる前記気体溜まりの修正を行われた際に属性情報を液体に変更された要素の高さを基準に、この要素に隣接する属性情報が気体の要素の属性情報を変更して気体溜まりの修正を行うことで、気体溜まりの発生の有無についてさらに正確な解析を行うことができる。
【0025】
請求項5に記載の発明によれば、被塗装ワークの表面に配置された複数の節点同士の高さを比較することで容易に気体溜まりが発生するか否かの解析を行うことができると共に、方向基準による修正と高さ基準による修正を行うことで特に箱型の形状の被塗装ワークの内部に気体溜まりが発生するか否かの解析を正確に行うことができる。
【0026】
請求項6に記載の発明によれば、フリーエッジに隣接する節点の属性を液体と決定し、その他節点の属性を気体として属性を液体と設定し、属性を液体と決定された節点と属性を気体設定された節点の高さの比較を行うことで、気体溜まりの発生の有無を容易に判断することができる。
【0027】
請求項7に記載の発明によれば、属性情報が気体と決定された節点について所定の視線方向に属性情報が液体の節点がある場合に、その節点の属性情報を液体に変更することで気体溜まりの発生の有無について正確な解析を行うことができる。
【0028】
請求項8によれば、視線方向に属性情報が液体の節点があるか否かによる前記気体溜まりの修正を行われた際に属性情報を液体に変更された節点の高さを基準に、この節点に隣接する属性情報が気体と決定されている節点の属性情報を変更して気体溜まりの修正を行うことで、気体溜まりの発生の有無についてさらに正確な解析を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下において、図面を参照しながら本実施の形態ついて説明する。なお、本実施の形態に係る発明は、図示例に限定されるものではない。図1はこの被塗装ワークについて浸漬塗装解析を実行するための気体溜まり解析装置1の実施形態を示すブロック図である。
【0030】
図1に示すように、本実施形態の気体溜まり解析装置1は、CPU2、記憶領域としてのROM3及びRAM4からなる演算手段としての制御部5と、キーボード6と、キーボード6を制御するキーボードコントローラ9と、表示部としてのディスプレイ10と、ディスプレイ10を制御するディスプレイコントローラ11と、ハードディスクドライブ(HDD)12と、フレキシブルディスクドライブ(FDD)13と、HDD12及びFDD13を制御するディスクコントローラ14と、ネットワーク15との接続のためのネットワークインターフェースコントローラ16とが、システムバス19を介して互いに通信可能に接続されて構成されている。
【0031】
CPU2は、ROM3或いはハードディスクドライブ12に記憶されたソフトウェア、或いはフレキシブルディスクドライブ13より供給されるソフトウェアを実行することで、システムバス19に接続された各構成部を総括的に制御する。すなわち、CPU2は、所定の処理シーケンスに従って処理プログラムを、ROM3、或いはハードディスクドライブ12、或いはフレキシブルディスクドライブ13から読み出して実行することで、本実施形態の被塗装物における気体溜まり発生予測方法の動作を実現するための制御を行う。
【0032】
記憶領域としてのROM3には、例えば、本実施の形態に係る発明を実行する為の各種プログラム及び解析対象のデータ等が記憶されている。
【0033】
RAM4は、CPU2の主メモリ或いはワークエリア等として機能する。キーボードコントローラ9は、キーボード6や図示しないポインティングデバイス等からの指示入力を制御する。ディスプレイコントローラ11は、ディスプレイ10の表示を制御する。ディスクコントローラ14は、ブートプログラム、種々のアプリケーション、編集ファイル、ユーザファイル、ネットワーク管理プログラム及び本実施形態における所定の処理プログラム等を記憶するハードディスクドライブ12及びフレキシブルディスクドライブ13とのアクセスを制御する。ネットワークインターフェースコントローラ16は、ネットワーク15上の装置或いはシステムと双方向にデータを送受信するようになっている。
【0034】
制御部5は、キーボード6からの入力信号に応じて気体溜まりの発生の解析を行うようになっている。
【0035】
制御部5は、解析対象である被塗装ワークのデータをハードディスクドライブ12から読み出して、被塗装ワークを複数の要素に分割して数値計算のための二次元の数値計算モデルを構築するようになっている。即ち、制御部5は、キーボード6からの指示信号に応じて設定された解析対象となる領域の設定を行うものであり、例えば被塗装ワークαを複数の要素に分割する。また、要素の形状は、頂点が三つ以上のものであれば、三角形状、四角形状等いかなる形状のものを用いることとしてもよい。
【0036】
また、制御部5は、被塗装ワークを解析するにあたっては、被塗装ワークを解析対象範囲として設定するようになっている。
【0037】
次いで、例えば図2に示す被塗装ワークαに気体溜まりが発生するか否かの解析を行うようになっている。
【0038】
具体的には、まず、数値計算モデルに分割した被塗装ワークαのフリーエッジに隣接する要素を初期境界要素に設定するようになっている。ここで、フリーエッジとは、被塗装ワークαの縁の部分、即ち、被塗装ワークαの端部及び被塗装ワークαに形成された穴の縁の部分を意味する。また、初期境界要素とは、被塗装ワークαのフリーエッジに隣接する要素であって属性情報を液体(塗料)と決定された要素をいう。また、要素同士が隣接するとは節点を共有することをいう。また、フリーエッジに隣接する要素とは、その要素を構成する辺がフリーエッジに接していることをいう。
【0039】
次いで、初期境界要素の属性情報を液体と決定された以外の要素の属性情報を気体(空気)と設定する。
【0040】
そして、初期境界要素と隣接関係にある属性情報を気体と設定された要素の高さの比較を行う。属性情報を気体と設定された要素の高さが属性情報が液体と決定された要素の高さより高い場合は、属性情報を気体と設定された要素の属性情報を気体に決定する。これに対して、属性情報が気体と設定された要素の高さが属性情報が液体と決定された要素の高さより低い場合又は同じ場合は隣接する要素の属性情報を液体と決定する。
【0041】
次いで、属性情報を気体から液体に変更された要素に隣接する属性情報が気体の要素がある場合は、属性情報を液体と決定された要素と属性情報を気体と設定された要素の高さの比較を行い、属性情報を気体と設定された要素の高さが属性情報が液体に決定された要素の高さより高い場合は、属性情報を気体と設定された要素の属性情報を気体に決定する。
【0042】
これに対して、属性情報が気体と設定された要素の高さが属性情報が液体と決定された要素の高さより低い場合又は同じ場合は隣接する要素の属性情報を液体と決定する。なお、このように判断を行うのは、液体の比重が気体の比重よりも大きいことによる。
【0043】
要素同士のZ方向の高さの比較を行うにあたっては、要素の特徴点の高さを比較することにより行う。ここで用いる要素の特徴点に特に制限はなく、例えば、重心点、各要素の有する頂点のうち最も高い頂点、内心点、外心点又は垂心点のいずれを用いることとしてもよい。
【0044】
ここで、初期境界要素と属性情報が決定されていない要素の比較方法を具体的に説明する。図3(a)(b)に示す要素Cを初期境界要素として節点αを共有する要素Aを属性情報が決定されていない要素とした場合、初期境界要素Cの重心点のZ方向の高さと属性情報が決定されていない要素Aの重心点のZ方向の高さを比較し、属性情報が決定されていない要素Aの重心点の高さが初期境界要素Cの重心点の高さよりも低い場合又は同じ場合は、属性情報が決定されていない要素Aの属性情報は液体と決定される。
【0045】
これに対して、属性情報が決定されていない要素Aの重心点の高さが初期境界要素Cの重心点の高さより高い場合は、要素Aの属性情報は、気体と決定される。
【0046】
また、属性情報を気体と設定された節点と隣接関係にある属性情報を液体と決定されている節点が複数ある場合、それら全ての節点と比較する。そして、それらの節点のうちに属性情報が気体とされた節点よりも1つでも高いと判断される属性情報が液体と決定されている節点がある場合は、属性情報を気体とされた節点の属性情報を液体に変更し、その属性情報を液体に決定する。
【0047】
そして、制御部5は、属性情報を液体と決定された要素に隣接する全ての要素の属性情報が決定されるまで、属性情報を液体と決定された要素とこれに隣接する属性情報を気体と設定された要素の高さの比較を行う。そして、制御部5は、属性情報を液体と決定された要素に隣接する全ての要素の属性情報が決定されたと判断した場合に気体溜まりの発生を有無の解析を終了するようになっている。
【0048】
図4(a)は、要素の重心点の高さを比較して解析を行った結果を表したものである。図4(b)は、各要素の有する頂点のうち最も高い頂点の高さを比較して解析を行った結果を表したものである。図4(a)(b)いずれの場合も凸部T付近に気体溜まり発生するとの解析結果がでる。なお、網掛けをした部分が、気体溜まりが発生したとの解析結果が得られた部分である。このことは、以下の図5及び図6においても同様である。
【0049】
また、制御部5は、検出された気体溜まりについて、属性情報が気体の要素から所定の方向を眺めた視線方向に属性情報が液体の要素があるかを判断することにより、気体溜まりの修正を行うことになっている。気体溜まりの修正は、方向基準による修正と高さ基準による修正を交互に行うことにより行う。
【0050】
方向基準による気体溜まりの修正を行うにあたり、制御部5は、まず、任意の一の属性情報が気体とされた要素を選択する。なお、要素を選択する方法に特に限定はないが、例えば、要素の重心点のZ方向の高さが高い順に選択するものとする。
【0051】
そして、選択された要素から水平方向及び水平方向より上方を眺めた視線方向に属性情報が液体と決定された要素があるかの判断を行う。水平方向又は上方を眺めた視線方向に属性情報を液体と決定された要素があると判断した場合は、制御部5は選択された属性情報を気体の要素の属性情報を液体に変更する。
【0052】
このように選択された属性情報を気体の要素の属性情報を液体に変更した場合、制御部5は高さ基準による修正を行う。高さ基準による修正は、方向基準による修正により属性情報を液体に変更された要素と隣接する属性情報が気体の要素の高さの比較をすることにより行う。
【0053】
比較の結果、属性情報が気体の要素の高さが、属性情報が液体と決定された要素の高さと同じ又は低いと判断した場合は、属性情報が気体の要素の属性情報を液体に変更する。そして、新たに属性情報が液体と決定された要素と隣接する属性情報が気体の要素の高さの比較を行っていく。
【0054】
具体的には、属性情報が気体の要素の高さが、属性情報が液体と決定された要素の高さよりも高いと判断した場合は、制御部5は、比較対象であった属性情報が気体の要素の属性情報の変更は行わない。これに対して、属性情報が気体の要素の高さが属性情報が液体と決定された要素の高さよりも低い又は同じと判断した場合は、制御部5は、比較対象であった属性情報が気体の要素の属性情報を液体に変更する。
【0055】
制御部5は、かかる高さ基準の修正を新たに属性情報が液体と決定された要素と隣接する属性情報が気体の要素の高さの比較について繰り返す。そして、この比較は、新たに属性情報を液体と決定された要素に隣接する要素との比較が終了するまで繰り返す。
【0056】
そして、制御部5は、高さ基準による気体溜まりの修正及び方向基準による気体溜まりの修正をそれぞれ行った後、属性情報を液体に変更された要素があるか否かの判断を行う。属性情報を液体に変更された要素があると判断した場合は、修正作業を続ける。これに対して、属性情報を液体に変更された要素がないと判断した場合は、修正作業を終了する。
【0057】
そして、方向基準及び高さ基準による気体溜まりの修正を行った結果、要素の重心点の高さを比較して解析を行ったものについては、図5(a)(b)に示すようにの重心点の高さを比較して解析を行っても、各要素の有する頂点のうち最も高い頂点の高さを基準に解析を行っても被塗装ワークαの底面の凸部Tの周辺部分は、気体溜まりが発生しないとの解析結果を得ることができる。
【0058】
なお、気体溜まりの修正を行うにあたり、選択された要素から水平方向のみならず、水平方向より上方を眺めた視線方向に属性情報が液体と決定された要素があるかの判断を行うのは、以下の理由による。
【0059】
図6は箱状の被塗装ワークβを長手方向と直行する方向に切断した状態を表す断面図である。被塗装ワークβは、外殻部Lの一方の側壁L1に穴部H3が設けられている。また、外殻部Lの底面部L2には外殻部Lの側壁L1の側に開口された穴部N2が設けられた内殻部L2が形成されている。そして、外殻部Lの底面であって、内殻部Oの内部には突出部Pが設けられている。なお、外殻部Lの内面側に形成された要素の属性情報は液体に決定されているものとする。一方、内殻部Oの内部及び外部に形成された要素、突出部Pの周囲の要素の属性情報は気体に決定されているものとする。
【0060】
このような被塗装ワークβについて解析を行った場合、突出部Pの上面部P1上の要素について、水平方向を眺めた視線方向のみに属性情報が液体と決定された要素があるかの判断を行った場合、正確な解析結果を得ることができない。即ち、突出部Pの上面部P1の高さは内殻部Oに設けられた穴部H4の下端部よりも低いため、比較の対象は内殻部Oの内面の要素のみである。そのため、突出部Pの上面の要素の属性情報は気体のままである。
【0061】
しかし、穴部H3の下端部は穴部H4の上端部よりも高い場所に位置するため、突出部Pの上面は本来液体塗料に浸された状態となるはずである。
【0062】
しかし、水平方向より上方を眺めた視線方向にも属性情報が液体と決定された要素があるかの判断を行うと、突出部Pの上面から穴部H4を通じて外殻部Lの側壁L1を見ると、側壁L1の表面には属性情報が液体の要素が設けられている。そのため、突出部Pの上面の要素の属性情報を液体に変更することができる。
【0063】
このように、気体溜まりの修正を行うにあたり、選択された要素から水平方向のみならず、水平方向より上方を眺めた視線方向に属性情報が液体と決定された要素があるかの判断を行うことが可能となる。
【0064】
本実施の形態において用いるデータは、キーボード6から入力されるようになっている。又、被塗装ワークαとしては、例えば自動車等の車両においては、ドアパネル、エンジンフードパネル、ホワイトボディー等、電着塗装を必要とする車体の各部品がある。これらの被塗装ワークαの形状データは、設計者自身が直接作成し、或いは予め作成されているCADデータ、STL(Stereo Lithography)データ等に基づいて自動的に作成されるものである。また、必要なデータの入力には、マウス、スキャナを用いてもよい。また、外部接続端子に図示しないLAN等の通信手段を介して接続された、他のコンピュータに備えられている記憶装置(図示せず)から必要なデータを読み込むようにしてもよい。
【0065】
ディスプレイ10には、被塗装ワークαについての解析過程が表示されるようになっている。
【0066】
ハードディスクドライブ12には、解析対象である被塗装ワークのデータが格納されている。
【0067】
なお、ハードディスクドライブ12は、DOMに格納されているものに限らず、気体溜まり解析装置1の外部に設けたハードディスク装置、光磁気ディスク装置又はフラッシュメモリ等の書き込み可能な不揮発性記録媒体をハードディスクドライブ12として用いることとしてもよい。
【0068】
(節点を用いた解析)
また、被塗装ワークに気体溜まりが発生するか否かの解析等は、被塗装ワークの表面に複数配置された節点の高さを比較して行ってもよい。
【0069】
この場合、制御部5は、まず被塗装ワークの表面に複数の節点を配置し、これらの各節点を用いて気体溜まりの発生の解析を行う。
【0070】
被塗装ワークの表面に節点を配置する方法に特に限定はなく、任意の方法により配置することができる。被塗装ワークの表面に節点を配置する方法としては、例えば、被塗装ワークの表面を要素に分割した後に、被塗装ワークの表面に形成された要素の頂点を節点とする方法がある。なお、ここで、分割する要素の形状に特に限定はなく、三角形や四角形であってもよい。
【0071】
節点を用いて気体溜まりの発生の解析を行うにあたっては、制御部5は、被塗装ワークのフリーエッジに隣接する属性情報を液体(塗料)と決定した節点を初期境界節点とし、それ以外の節点の属性情報を気体(空気)と設定するようになっている。
また、初期に属性を液体(塗料)として決定する節点としては、被塗装ワークを液面に対して垂直方向上方及び、水平方向から見て認識できる節点とすることができる。以下の実施の形態ではフリーエッジに隣接する節点の属性を初期境界節点とした場合について説明しているが、上記の場合も初期境界節点決定後の処理は同じである。
【0072】
また、制御部5は、被塗装ワークの表面に配置した節点同士の接続、即ち、節点同士の隣接関係の設定を行うようになっている。隣接関係とは、節点の属性情報を決定するにあたり比較対象となることになる関係をいい、隣接関係にない節点同士の比較対象を行うことはない。
【0073】
いかなる節点同士が隣接関係あるとするかについては特に限定はない。隣接関係を設定する方法としては、例えば、前述したように被塗装ワークの表面を要素に分割した後に被塗装ワークの表面に形成された要素の頂点を節点とする方法を用いて節点を配置した場合には、配置された節点同士のうち、要素を構成する辺によって結ばれている節点同士を隣接関係にあると設定する。
【0074】
そして、初期境界節点と隣接関係にある属性情報を気体と設定された節点の高さの比較を行う。属性情報を気体と設定された節点の高さが属性情報が液体と決定された節点の高さ同じ又は高い場合は、属性情報が気体と設定された節点の属性情報を気体に決定する。これに対して、属性情報が気体と設定された節点の高さが属性情報が液体と決定された節点の高さより低い場合は前記隣接する節点の属性情報を液体と決定する。なお、節点同士のZ方向の高さの比較を行うにあたっては、節点のZ座標のZ座標値を用いることとする。
【0075】
次いで、属性情報を気体から液体に変更された節点に隣接する属性情報が気体の節点がある場合は、属性情報を液体と決定された節点と属性情報を気体と設定された節点の高さの比較を行い、属性情報を気体と設定された節点の高さが属性情報が液体に決定された節点の高さより高い場合は、属性情報が気体と設定された節点の属性情報を気体に決定する。
【0076】
これに対して、属性情報が気体と設定された節点の高さが属性情報が液体と決定された節点の高さより低い場合又は同じ場合は隣接する節点の属性情報を液体と決定する。なお、このように判断を行うのは、液体の比重が気体の比重よりも大きいことによる。
【0077】
属性情報を気体と設定された節点に隣接する属性情報を気体と設定された節点が複数ある場合は、それらの節点のうちの一つでも高いものがあれば、属性情報を気体と設定された節点の属性情報を液体に変更し、その属性情報を液体に決定する。なお、このように判断を行うのは、液体の比重が気体の比重よりも大きいことによる。
【0078】
また、制御部5は属性情報が液体と決定された節点と属性情報が気体と設定された節点との比較を、属性情報が液体と決定された節点と隣接関係にある全ての節点の属性情報が決定するまで繰り返し行うようになっている。
【0079】
そして、制御部5は、属性情報が液体と決定された節点に隣接する節点の属性情報が全て決定されたと判断された場合には、属性情報を気体と決定された節点と隣接関係にある属性情報を液体と決定された節点のうち、隣接関係にある要素同士を結線し、結線で囲まれた範囲を気体溜まりが発生した範囲と認識するようになっている。
【0080】
そして、属性情報を液体と決定された節点と隣接関係にある属性情報が気体と決定された節点の間に設けられた中間点を結線して気体溜まりと液体塗料の境界線が定められる。
【0081】
具体的には、図4(c)に示すように、被塗装ワークαの凸部T付近に気体溜まりが発生するとの解析結果が出る。即ち、属性情報を気体とされた節点と隣接関係にある属性情報を液体と決定された節点の間に境界点を設けこれを結線し、これを気体溜まりと液体塗料の境界線。なお、図4(c)において網掛けされた領域が気体溜まりと判断された領域である。
【0082】
なお、境界点を配置する位置に特に制限はないが、例えば、属性情報を液体と決定された節点から境界点までの距離と境界点から属性情報を気体と判断された節点までの距離の比が5:5又は6:4になるように境界点を配置する。
【0083】
また、制御部5は、検出された気体溜まりについて、属性情報が気体の節点から所定の方向を眺めた視線方向に属性情報が液体の節点があるかを判断することにより、気体溜まりの修正を行うことになっている。気体溜まりの修正は、方向基準による修正と高さ基準による修正を交互に行うことにより行う。
【0084】
方向基準による気体溜まりの修正を行うにあたり、制御部5は、まず、属性情報が気体の節点を選択する。なお、節点を選択する方法に特に限定はないが、例えば、節点のZ方向の高さが高い順に選択するものとする。
【0085】
かかる修正を行うにあたり、制御部5は、まず、属性情報が気体の節点を選択する。なお、節点を選択する方法に特に限定はないが、例えば、節点のZ方向の高さが高い順に選択するものとする。
【0086】
そして、選択された節点から水平方向及び水平方向より上方を眺めた視線方向に属性情報が液体と決定された節点があるかの判断を行う。水平方向又は上方を眺めた視線方向に属性情報を液体と決定された節点があると判断した場合は、制御部5は選択された属性情報が気体の節点の属性情報を液体に変更する。
【0087】
このように選択された属性情報が気体の節点の属性情報を液体に変更した場合、制御部5は高さ基準による修正を行う。高さ基準による修正は、方向基準による修正により属性情報を液体に変更された節点と隣接する属性情報が気体の節点の高さの比較をすることにより行う。
【0088】
具体的には、属性情報が気体の節点の高さが、属性情報が液体と決定された節点の高さよりも高いと判断した場合は、制御部5は、比較対象であった属性情報が気体の節点の属性情報の変更は行わない。これに対して、属性情報が気体の節点の高さが属性情報が液体と決定された節点の高さよりも低い又は同じと判断した場合は、制御部5は、比較対象であった属性情報が気体の節点の属性情報を液体に変更する。
【0089】
制御部5は、かかる高さ基準の修正を新たに属性情報が液体と決定された節点と隣接する属性情報が気体の節点の高さの比較について繰り返す。そして、この比較は、新たに属性情報を液体と決定された節点に隣接する節点との比較が終了するまで繰り返す。
【0090】
そして、制御部5は、高さ基準による気体溜まりの修正及び方向基準による気体溜まりの修正をそれぞれ行った後、属性情報を液体に変更された節点があるか否かの判断を行う。属性情報を液体に変更された節点があると判断した場合は、修正作業を続ける。これに対して、属性情報を変更された節点がないと判断した場合は、修正作業を終了する。
【0091】
そして、方向基準及び高さ基準による気体溜まりの修正を行った結果、図5(c)に示すように被塗装ワークαの底面の凸部Tの周辺部分は、気体溜まりが発生しないとの解析結果を得ることができる。
【0092】
なお、気体溜まりの修正を行うにあたり、選択された節点から水平方向のみならず、水平方向より上方を眺めた視線方向に属性情報が液体と決定された節点があるかの判断を行うのは、要素を用いて気体溜まりを検出した場合と同様の理由による。
【0093】
以下において、図7〜図10のフローチャートを参照して本実施形態に係る気体溜まり解析装置1の作用について詳述する。なお、以下において、要素の重心点の高さを比較することにより解析を行う。
【0094】
図7に示すように、先ず、制御部5で対応付けが行われた被塗装ワークαの形状データをキーボード6より入力する(ステップS1)。次いで、被塗装ワークαを解析領域として選択し、要素に分割し(ステップS2)、さらに重力方向Gを設定する(ステップS3)。
【0095】
次いで、被塗装ワークαに気体溜まりが発生するか否かの解析を行う(ステップS4)。具体的には、図8のフローチャートに示すように、ステップ2において、数値計算モデルに分割した被塗装ワークαのフリーエッジに隣接する要素を初期境界要素とし(ステップS41)、更に、初期境界要素以外の要素の属性情報を気体に設定する(ステップS42)。
【0096】
次いで、初期境界要素と隣接関係にある属性情報が気体と設定された要素、即ち属性情報が決定されていない要素のそれぞれの重心点のZ方向における高さを比較する(ステップS43)。
【0097】
そして、属性情報が気体と設定された要素の高さが初期境界要素の高さより高いと判断した場合は、属性情報が気体と設定された要素の属性情報を気体に決定する。これに対して、属性情報が気体と設定された要素の高さが初期境界要素の高さより低い又は同じと判断した場合は、属性情報が気体と設定された要素の属性情報を液体に変更し、その後属性情報を液体に決定する(ステップS44)。
【0098】
次いで、属性情報を液体と決定された要素に隣接する属性情報を気体と設定されている要素があるかの判断を行う(ステップS45)。
【0099】
属性情報を液体と決定された要素に隣接する属性情報を気体と設定されている要素があると判断した場合には(YES)、属性情報を液体と決定された要素と隣接する属性情報を気体と設定されている要素のそれぞれの重心点の高さを比較する(ステップS46)。
【0100】
属性情報が気体と設定された要素の高さが属性情報が液体と決定された要素の高さよりも高い場合は、属性情報が気体と設定された要素の属性情報を気体と決定し、属性情報が気体と設定された要素の高さが属性情報が液体と決定された要素の高さより低い場合又は同じ場合は属性情報が気体と設定された要素の属性情報を液体と決定する(ステップS47)。
【0101】
次いで、属性情報が液体と決定された要素に隣接する属性情報が気体と設定されている要素があるかの判断を行う(ステップS45)。属性情報が液体と決定された要素に隣接する属性情報が気体と設定されている要素が無いと判断した場合には(NO)、被塗装ワークαに気体溜まりが発生するか否かの解析を終了する。
【0102】
次いで、高さ基準による気体溜まりの修正を行う(ステップS5)。具体的には、図9のフローチャートに示すように、まず、気体溜まりと判定された範囲内に位置する属性情報が気体の要素を選択する(ステップS51)。そして、選択した要素から水平方向又は水平方向から情報を眺めた場合の視線方向をみる(ステップS52)。
【0103】
そして、水平方向又は水平方向から上方に属性情報が液体である要素があるかの判断を行う(ステップS53)。
【0104】
即ち、視線方向に属性情報が液体の要素があると判断した場合は、選択した要素の属性情報を液体に変更する。これに対して、かかる視線方向に属性情報が液体の要素がないと判断した場合は、選択した要素の属性情報の変更は行わない。
【0105】
次いで、ステップS5において、属性情報が液体に変更された要素があるかの判断を行う(ステップS6)。属性情報が液体に変更された要素があると判断した場合には、高さ基準による気体溜まりの修正を行う(ステップS7)。
【0106】
具体的には、図10のフローチャートに示すように、まず、ステップS5において属性情報を液体に変更された要素を選択する(ステップS71)。そして、選択した要素に隣接する属性情報が気体の要素と高さを比較する(ステップS72)。
【0107】
そして、属性情報が気体と設定された要素の高さが属性情報が液体と決定された要素の高さよりも高い場合は、属性情報が気体の要素の属性情報を気体と決定し、属性情報が気体の要素の高さが属性情報が液体と決定された要素の高さより低い場合又は同じ場合は、属性情報が気体の要素の属性情報を液体に変更する。
【0108】
次いで、ステップS73において、属性情報が液体に変更された要素があるかの判断を行う(ステップS74)。属性情報が液体に変更された要素があると判断した場合には(YES)、属性情報が液体に変更された要素を選択する(ステップS71)。これに対して、属性情報が液体に変更された要素がないと判断した場合には(NO)、ステップS7において属性情報が液体に変更された要素があるかの判断を行う(ステップS8)。ステップS7において、属性情報を液体に変更された要素があると判断した場合は(YES)、属性情報が気体の要素から所定の方向を眺めた視線方向に属性情報が液体の要素があるかの判断による気体溜まりの修正を行う(ステップS5)。
【0109】
そして、ステップS6において、属性情報を液体に変更された要素がないと判断されたバ場合(NO)及びステップS8において属性情報を液体に変更された要素がないと判断されたバ場合(NO)は、解析を終了する。
【0110】
以上のように、本実施の形態にかかる発明によれば、被塗装ワークαを複数の要素に分割し、分割した要素同士の高さを比較することで容易に気体溜まりが発生するか否かの解析を行うことができると共に、方向基準による修正と高さ基準による修正を行うことで特に箱型の形状の被塗装ワークαの内部に気体溜まりに気体溜まりが発生するかいなかの解析を正確に行うことができる。
【0111】
即ち、被塗装ワークα内部の底面に凸部付近は、実際の浸漬塗装の際においては気体溜まりが発生しない部位であるが、本実施の形態にかかる発明によっても、かかる部位には気体溜まりが発生しないとの解析結果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0112】
【図1】気体溜まり解析装置の概略構成ブロック図である。
【図2】被塗装ワークαの側面断面図である。
【図3】(a)は部材Xの要素の一部を抜き出した図であり、(b)は、(a)の要素の上面図である。
【図4】(a)は、要素の重心点の高さを比較して解析を行った結果を表したものであり、(b)は、各要素の有する頂点のうち最も高い頂点の高さを比較して解析を行った結果を表したものであり、(c)は、節点の高さを比較して解析を行った結果を表したものであり、属性情報を液体とされた節点の属性情報が気体である節点の中間点を結んだものを気体溜まりと液体塗料の境界線とした図である。
【図5】(a)は、要素の重心点を用いた解析で導き出した境界線を修正した結果を表したものであり、(b)は、要素の有する頂点のうち最も高い頂点を用いた解析で導き出した境界線を修正した結果を表したものであり、(c)は節点を用いた解析で導き出した境界線を修正した結果を表したものである。
【図6】被塗装ワークβの概略断面図である。
【図7】本実施形態に係る浸漬塗装の解析のフローチャートである。
【図8】本実施形態に係る浸漬塗装の解析のフローチャートである。
【図9】本実施形態に係る浸漬塗装の解析のフローチャートである。
【図10】本実施形態に係る浸漬塗装の解析のフローチャートである。
【図11】被塗装ワークαについて実際に浸漬塗装を行った結果を表す概略断面図である。
【符号の説明】
【0113】
1 気体溜まり解析装置
2 ステップ
5 制御部
6 キーボード
9 キーボードコントローラ
10 ディスプレイ
11 ディスプレイコントローラ
12 ハードディスクドライブ
13 フレキシブルディスクドライブ
14 ディスクコントローラ
15 ネットワーク
16 ネットワークインターフェースコントローラ
19 システムバス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体塗料による浸漬塗装を行う被塗装ワークに対応する形状データの入力を行う為の入力手段と、
前記被塗装ワークの画像データを複数の要素に分割する要素分割をした後に、前記分割した各要素に液体又は気体の属性情報を付与し、これらの要素の高さを比較して気体溜まりの発生の解析を行い、
前記解析の結果検出された気体溜まりについて、所定の属性情報が気体の要素から所定の方向に属性情報が液体の要素がある場合には、前記所定の要素の属性情報を液体に変更する方向基準による前記気体溜まりの修正を行い、
前記方向基準による気体溜まりの修正の結果、属性情報が液体に変更された要素と隣接する属性情報が気体の要素の高さを比較して、前記属性情報が気体の要素の属性情報が液体に変更する高さ基準による気体溜まりの修正を行う演算手段と、
を備えることを特徴とする気体溜まり解析装置。
【請求項2】
前記演算手段は、前記被塗装ワークのフリーエッジに隣接する要素の属性情報を液体と決定すると共に、それ以外の要素の属性情報を気体と設定し、前記属性情報が液体と決定された要素と隣接する属性情報を気体と設定された要素との重力方向と反対方向の高さを比較し、
前記隣接する属性情報を気体と設定された要素の高さが属性情報を液体と決定された要素の高さより高い場合は、前記隣接する要素の属性情報を気体と決定し、
属性情報が液体と決定された要素の高さより低い場合又は同じ場合は、前記隣接する要素の属性情報を液体と決定し、
前記属性情報を液体と決定された要素に隣接する要素の属性情報が全て決定するまで前記属性情報を液体と決定された要素と前記属性情報を気体と決定された要素の高さを比較することで気体溜まりの検出を行うこと
を特徴とする請求項1に記載の気体溜まり解析装置。
【請求項3】
前記演算手段は、前記方向基準による気体溜まりの修正を
前記気体溜まりと判定された範囲内に位置する属性情報が気体の要素を選択し、前記選択した要素から水平方向又は水平方向から上方を眺めた場合の視線方向に属性情報が液体である要素があるかの判断を行い、
前記視線方向に属性情報が液体の要素があると判断した場合は、前記選択した要素の属性情報を液体に変更することにより行うことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の気体溜まり解析装置。
【請求項4】
前記演算手段は、前記高さ基準による気体溜まりの修正を前記属性情報が液体に変更された要素を選択し、前記選択した要素と前記選択した要素に隣接する属性情報が気体の要素と高さを比較し、
前記属性情報が液体に変更された要素の高さが属性情報が気体の要素と比較して高い場合又は同じ場合は、属性情報が気体の要素の属性情報は液体に変更することにより行うことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の気体溜まり解析装置。
【請求項5】
液体塗料による浸漬塗装を行う被塗装ワークに対応する形状データの入力を行う為の入力手段と、
前記被塗装ワークの画像データの表面に複数の節点を配置し、前配置した各節点に液体又は気体の属性情報を付与し、これらの節点の高さを比較して気体溜まりの発生の解析を行い、
前記解析の結果検出された気体溜まりについて、所定の属性情報が気体の節点から所定の方向に属性情報が液体の節点がある場合には、前記所定の節点の属性情報を液体に変更する方向基準による前記気体溜まりの修正を行い、
前記属性情報が液体に変更された節点と隣接する属性情報が気体の節点の高さを比較して、前記属性情報が気体の節点の属性情報が液体に変更する高さ基準による気体溜まりの修正を行う演算手段と、
を備えることを特徴とする気体溜まり解析装置。
【請求項6】
前記演算手段は、前記被塗装ワークのフリーエッジに隣接する節点の属性情報を液体と決定すると共に、それ以外の節点の属性情報を気体と設定し、前記属性情報が液体と決定された節点と隣接する属性情報を気体と設定された節点との重力方向と反対方向の高さを比較し、
前記隣接する属性情報を気体と設定された節点の高さが属性情報を液体と決定された節点の高さより高い場合は、前記隣接する節点の属性情報を気体と決定し、
属性情報が液体と決定された節点の高さより低い場合又は同じは、前記隣接する節点の属性情報を液体と決定し、
前記属性情報を液体と決定された節点に隣接する節点の属性情報が全て決定するまで前記属性情報を液体と決定された節点と前記属性情報を気体と決定された節点の高さを比較することで気体溜まりの検出を行うこと
を特徴とする請求項5に記載の気体溜まり解析装置。
【請求項7】
前記演算手段は、前記方向基準による前記気体溜まりの修正を
前記気体溜まりと判定された範囲内に位置する属性情報が気体の節点を選択し、前記選択した節点から水平方向又は水平方向から上方を眺めた場合の視線方向に属性情報が液体である節点があるかの判断を行い、
前記視線方向に属性情報が液体の節点があると判断した場合は、前記選択した節点の属性情報を液体に変更することにより行うことを特徴とする請求項5又は請求項6に記載の気体溜まり解析装置。
【請求項8】
前記演算手段は、前記高さ基準による気体溜まりの修正を
前記属性情報が液体に変更された節点を選択し、前記選択した節点と前記選択した節点に隣接する属性情報が気体の節点と高さを比較し、
前記属性情報が液体に変更された節点の高さが属性情報が気体の節点と比較して高い場合又は同じ場合は、属性情報が気体の節点の属性情報は液体に変更することにより行うことを特徴とする請求項5から請求項7のいずれか一項に記載の気体溜まり解析装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2007−196166(P2007−196166A)
【公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−19493(P2006−19493)
【出願日】平成18年1月27日(2006.1.27)
【出願人】(000005348)富士重工業株式会社 (3,010)
【Fターム(参考)】