説明

気体除去方法、気体除去装置、コアの製造方法及び積層支持体

【課題】塑性流動材料と硬質充填材の混合物片を混練して混練物中の気体を除去することで、性能が安定した成型品を得ることが可能な気体除去方法を提供する。
【解決手段】シリンダ42内に塑性流動材料と硬質充填材の混合物片56Aを投入し、真空雰囲気下又は大気圧に対して減圧された減圧環境下で、シリンダ42内の混合物片56Aを加圧する。これにより、シリンダ42内に投入された塑性流動材料と硬質充填材の混合物片56Aの間の空気及び、混合物片56Aに含有している気体が、加圧されながらシリンダ42内から押し出されると同時に、シリンダ42の外へ吸引される。したがって、塑性流動材料と硬質充填材の混合物片56Aの混練物56から気体が除去される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塑性流動材料と硬質充填材の混合物片を混練して混練物中の気体を除去する気体除去方法及び気体除去装置と、積層弾性体の積層方向に形成された中空部に挿入されるコアの製造方法及び、この製造方法で製造されたコアを用いて構成された積層支持体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ゴムなどの弾性板と金属などの剛性板とを交互に積層した積層支持体が、免震装置の支承等として使用されている。このような積層支持体には、例えば、中心に中空部を形成し、この中空部内に鉛製のコアを圧入して構成されたものがある(特許文献1参照)。このような構成により、積層支持体がせん断変形するときに、コアが塑性変形することで、ダンパとして機能するようになっている。
【0003】
ところで、コアとしては、塑性変形の挙動が安定している鉛製のもの(鉛プラグ)が使用されることが多い。しかし、鉛プラグは、廃却時等に要するコストが大きい。このため、鉛プラグに替えて、塑性流動材料と硬質充填材の混練物が用いられている。
【0004】
塑性流動材料と硬質充填材の混練はニーダーを用いて行われる。ニーダーによって混練された塑性流動材料と硬質充填材の混合物片100Aは、図8(A)に示すような複数の塊状に形成され、これを成型機102に投入して必要に応じて加熱しながら加圧して(図8(B)及び図8(C))、コアの形状に成型する。
【0005】
複数の塊状の混合物片100Aを成型機102に投入するときに、混合物片100A同士の間に隙間ができてしまい、この状態で加圧し混練してコアを成型する際に、空気(気体)が混練物100内に取り込まれてしまう。また、混合物片100A内に含有されている気体も、混練物100内に含有されてしまい、混練物で成形されたコア内に気体が混入する。このコア内に混入した空気が多くなると、コアの塑性変形時の力学特性が不安定になり、安定した減衰性能が得られなくなる。
【特許文献1】特公平7−84815号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記事実を考慮し、塑性流動材料と硬質充填材の混合物片を混練して混練物中の気体を除去することで、性能が安定した成型品を得ることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明は、塑性流動材料と硬質充填材の混合物片を混練して混練物中の気体を除去する気体除去方法であって、加圧室に前記混合物片を投入する工程と、前記加圧室を真空雰囲気下又は大気圧に対して減圧された減圧環境下に置き、前記加圧室に投入された前記混合物片を加圧する工程と、を有していることを特徴としている。
【0008】
請求項1に記載の気体除去方法では、真空雰囲気下又は大気圧に対して減圧された減圧環境下で、加圧室に投入された塑性流動材料と硬質充填材の混合物片を加圧する。
【0009】
これにより、加圧室に投入された混合物片の間の空気及び、混合物片に含有している気体が、加圧されながら加圧室から押し出されると同時に、加圧室の外へ吸引される。したがって、混合物片の混練物から、気体が除去される。
【0010】
請求項2に記載の発明は、前記加圧室に投入された前記混合物片を、該加圧室に連通され加圧方向と直交する方向の該加圧室の断面積よりも小さい断面積を有する連通部を通過させ、前記連通部に連通され該連通部の断面積よりも大きい断面積を有する室へ送り出すことを特徴としている。
【0011】
請求項2に記載の気体除去方法では、加圧室に投入された混合物片は、加圧されることによって混練され連通部を通過する。このとき、連通部の加圧方向と直交する方向の断面積は、加圧室の断面積よりも小さくされているため、加圧室内の混合物片に単位面積当たりに働く力の大きさよりも、連通部内を通過する混練物の単位面積当たりに働く力の大きさの方が大きくなる。このため、混練物は連通路を通過する際に表面積が大きくされるので、混練物中の気体が混練物の表面から抜ける。
【0012】
そして、混練物が連通部から、連通部の断面積よりも大きい断面積の室へ送り出される際に、混練物から抜けた気体が室へ放出される。したがって、混合物片の混練物から気体が除去される。
【0013】
請求項3に記載の発明は、塑性流動材料と硬質充填材の混合物片を混練して混練物中の気体を除去する気体除去方法であって、前記混合物片が投入される加圧室と、前記加圧室に投入された前記混合物片を加圧する加圧部材と、前記加圧室を真空雰囲気下又は大気圧に対して減圧された減圧環境下に置く減圧室と、を有して構成されることを特徴としている。
【0014】
請求項3に記載の気体除去装置では、加圧室に塑性流動材料と硬質充填材の混合物片を投入し、真空雰囲気下又は大気圧に対して減圧された減圧環境下において、加圧部材で混合物片を加圧して混練する。
【0015】
これにより、加圧室に投入された混合物片の間の空気及び、混合物片に含有している気体が、加圧されながら押し出されると同時に、加圧室の外へ吸引される。したがって、混練物片の混練物から気体が除去される。
【0016】
請求項4に記載の発明は、前記加圧室は、加圧方向と直交する方向の該加圧室の断面積よりも小さい断面積を有し、該加圧室から流動性を持たされた混練物が通過する連通部を備え、前記加圧室と反対側に、前記連通部の断面積よりも大きい断面積を有し、該連通部を通過した混練物が送り出される室を有することを特徴としている。
【0017】
請求項4に記載の気体除去装置では、塑性流動材料と硬質充填材の混合物片が投入される加圧室は、連通部を備えている。この連通部の加圧方向と直交する方向の断面積は、加圧室の断面積よりも小さくされている。また、連通部の加圧室と反対側には、連通部の断面積よりも断面積が大きくされた室が設けられている。そして、加圧室に投入された混合物片を加圧部材で加圧すると、混合物片は混練されて連通部を通過し、室へ送り出される。
【0018】
このとき、加圧室の混合物片の単位面積当たりに働く力の大きさよりも、連通部を通過する混練物の単位面積当たりに働く力の大きさの方が大きくなる。このため、混練物は連通路を通過する際に表面積が大きくされるので、混練物中の気体が混練物の表面から抜ける。
【0019】
請求項5に記載の発明は、前記室は、要求される混練物の成形品の型であることを特徴としている。
【0020】
請求項5に記載の気体除去装置では、室は要求される混練物の成形品の型であり、連通部を通過した混練物は型に送り出され、成形品が得られる。このとき、連通部を通過する際に、加圧室に投入された混合物片の間の空気及び、混合物片に含有している気体が、混練物中から除去されるので、型に送り出されて得られる成形品には、気体が含有されにくい。
【0021】
このように、連通部から型としての室へ混練物を直接送り込むので、要求される混練物の成形品の型に混練物を投入する作業が不要となり、製造工程が簡略化される。
【0022】
請求項6に記載の発明は、シリンダ内に前記連通部として複数の孔が形成された隔壁を設け、前記隔壁と前記シリンダで形成された空間を前記加圧室とし、該加圧室には、投入された前記混合物片を該加圧室の内壁を摺動して加圧する加圧部材が設けられていることを特徴としている。
【0023】
請求項6に記載の気体除去装置では、シリンダ内には、複数の孔が形成された隔壁が設けられており、この隔壁とシリンダで形成される加圧室には、加圧部材が摺動可能に設けられている。
【0024】
この加圧部材の摺動によって、加圧室に投入された混合物片が加圧されると、隔壁に形成された複数の孔を混練物が通過する。
【0025】
このとき、隔壁に形成された孔の加圧方向と直交する方向の断面積(総面積)は、加圧室の断面積よりも小さいため、混練物が孔を通過する際に、加圧室に投入された混合物片の間の空気及び、混合物片に含有している気体が除去される。
【0026】
請求項7に記載の発明は、前記孔は、円形状とされていることを特徴としている。
【0027】
請求項7に記載の気体除去装置では、隔壁に形成された孔を円形状とすることで、孔を通過する混練物の流動抵抗が大きくならない。
【0028】
請求項8に記載の発明は、前記孔は、細長状とされていることを特徴としている。
【0029】
請求項8に記載の気体除去装置では、隔壁に形成された孔を細長状とすることで、混練物が孔を通過するとき、混練物は薄く伸ばされて表面積がさらに大きくなる。これにより、加圧室に投入された混合物片の間の空気及び、混合物片に含有している気体が除去されやすくなる。
【0030】
請求項9に記載の発明は、剛性を有する剛性板と弾性を有する弾性板とが交互に積層されて構成された積層弾性体の積層方向に形成された中空部に挿入される塑性流動材料と硬質充填材の混合物片の混練物であるコアの製造方法であって、加圧室に前記混合物片を投入する工程と、前記加圧室を真空雰囲気下又は大気圧に対して減圧された減圧環境下に置き、前記加圧室に投入された前記混合物片を加圧する工程と、前記加圧室から前記混合物片が混練されて成形されたコアを取り出す工程と、を有していることを特徴としている。
【0031】
請求項9に記載のコアの製造方法では、加圧室に塑性流動材料と硬質充填材の混合物片を投入し、真空雰囲気下又は大気圧に対して減圧された減圧環境下において、加圧部材で混合物片を加圧してコアを製造する。
【0032】
これにより、加圧室に投入された混合物片の間の空気及び、混合物片に含有している気体が、加圧されながら押し出されると同時に、加圧室の外へ吸引されるので、コアの気体が除去される。
【0033】
請求項10に記載の発明は、剛性を有する剛性板と弾性を有する弾性板とが交互に積層されて構成された積層弾性体の積層方向に形成された中空部に挿入される塑性流動材料と硬質充填材の混合物片の混練物であるコアの製造方法であって、加圧室に前記混合物片を投入する工程と、前記加圧室を真空雰囲気下又は大気圧に対して減圧された減圧環境下に置き、前記加圧室を加圧して、該加圧室に投入された前記混合物片を、該加圧室に連通され加圧方向と直交する方向の該加圧室の断面積よりも小さい断面積を有する連通部を通過させ、前記連通部に連通され該連通部の断面積よりも大きい断面積を有する室へ放出させる工程と、前記室から前記混合物片が混練されて成形されたコアを取り出す工程と、を有していることを特徴としている。
【0034】
請求項10に記載のコアの製造方法では、加圧室に塑性流動材料と硬質充填材の混合物片を投入し、真空雰囲気下又は大気圧に対して減圧された減圧環境下に置いて、加圧部材で混合物片を加圧する。これにより、加圧室の混合物片は、連通部を通過して室へ放出される。
【0035】
このとき、連通部の加圧方向と直交する方向の断面積は、加圧室の断面積よりも小さくされているため、加圧室内の混合物片に単位面積当たりに働く力の大きさよりも、連通部内を通過する混練物(コア)の単位面積当たりに働く力の大きさの方が大きくなる。このため、混練物は連通路を通過する際に表面積が大きくされるので、混練物中の気体が混練物の表面から抜ける。
【0036】
そして、混練物が連通部から室へ放出される際に、混練物から抜けた気体が室へ放出され、混練物中の気体が除去される。したがって、コアの気体が除去される。
【0037】
請求項11に記載の発明は、前記混合物片を、単位面積当たり10MPa〜200MPaの力で加圧することを特徴としている。
【0038】
請求項11に記載のコアの製造方法では、混合物片を単位面積当たり10MPaより小さい力で加圧すると、加圧力が不十分であることから、混練物に含有された気体が十分に除去できない。また、混合物片を単位面積当たり200MPaより大きい力で加圧すると、混合物片に対する加圧力が過剰となって、混練物の物性が変化してしまう。
【0039】
そこで、単位面積当たり10MPa〜200MPaの力で混合物片を加圧することで、混練物の物性を変化させることなく、混練物中の気体を除去できる。
【0040】
請求項12に記載の発明は、前記塑性流動材料は、せん断降伏応力が0.1MPa〜10MPaであることを特徴としている。
【0041】
請求項12に記載のコアの製造方法では、塑性流動材料のせん断降伏応力が0.1MPaよりも小さいと、塑性流動材料の流動抵抗が小さいため、大きな減衰力が得られず、塑性流動材料のせん断降伏応力が10MPaよりも大きいと、塑性流動材料を大きく塑性変形させることができない。
【0042】
そこで、せん断降伏応力が0.1MPa〜10MPaである塑性流動材料に硬質充填材を混練させることで、塑性変形の挙動が安定したコアが得られる。
【0043】
請求項13に記載の発明は、前記硬質充填材は、鉄を主成分としていることを特徴としている。
【0044】
請求項13に記載のコアの製造方法では、鉄を主成分とした硬質充填材と塑性流動材料の混合物片を混練した混練物でコアを形成することで、コアの塑性変形の挙動が安定する。
【0045】
請求項14に記載の発明は、剛性を有する剛性板と弾性を有する弾性板とが交互に積層されて構成された積層弾性体と、前記積層弾性体の積層方向に形成された中空部に挿入される請求項9〜請求項13のいずれか1項に記載のコアの製造方法で製造されたコアと、を有して構成されていることを特徴としている。
【0046】
請求項14に記載の積層支持体では、請求項9〜請求項13のいずれか1項に記載のコアの製造方法で製造された混練物で成型されたコアが、剛性を有する剛性板と弾性を有する弾性板とが所定の積層方向に交互に積層されて構成された積層弾性体の積層方向に形成された中空部に挿入され、積層支持体が形成される。
【0047】
これにより、積層支持体の中空部には、気体が除去された混練物で成型されたコアが挿入されているので、このコアは十分な強度を得ることができ、積層支持体は安定した減衰性能を発揮できる。
【発明の効果】
【0048】
本発明は上記構成としたので、塑性流動材料と硬質充填材の混合物片を混練して混練物中の気体を除去することで、性能が安定した成型品を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0049】
図1には、本発明の第1実施形態に係る製造装置40を用いて成型されたコア30が搭載された積層支持体12が示されている。
【0050】
積層支持体12は、複数枚の円盤状の金属板18と、同じく複数枚の円盤状のゴム板20とを厚み方向に交互に積層した(以下この積層方向を「X方向」という)積層弾性体16を備えている。
【0051】
積層弾性体16のX方向両端面には、フランジ板14が固定されている。フランジ板14は、積層弾性体16よりも側方に張り出すフランジ部14Fを備えており、このフランジ部14Fに形成された図示しないボルト孔にボルトを挿通して、積層支持体12が、支持部材(たとえば、建物基礎、土台、地盤等)及び被支持部材(たとえば、オフィスビル、病院、集合住宅、美術館、公会堂、学校、庁舎、神社仏閣、橋梁等)に取り付けられる。取付け状態では、被支持部材が積層支持体12を介して支持部材に支持される。
【0052】
積層弾性体16を構成する金属板18とゴム板20とは加硫接着により(あるいは接着剤により)強固に張り合わされており、これらが不用意に分離したり位置ズレしたりしないようになっている。そして、積層支持体12が水平方向のせん断力を受けると、積層弾性体16も弾性的にせん断変形する。
【0053】
したがって、支持部材と被支持部材とが水平方向に相対移動(振動)すると、積層弾性体16が全体として弾性的にせん断変形する。ここで、上記のように、金属板18とゴム板20とを交互に積層したことで、積層方向に荷重が作用しても、積層弾性体16の圧縮変形(すなわちゴム板20の圧縮)が抑制されている。
【0054】
積層弾性体16はさらに、金属板18とゴム板20の外側端面を周囲から被覆する被覆材22を有している。被覆材22によって金属板18及びゴム板20に外部から雨や光が作用しなくなり、酸素やオゾン、紫外線などによる劣化が防止される。また、被覆材22は、厚さが一定とされており、その強度にばらつきがでないようにされている。
【0055】
なお、被覆材22はゴム板20と同一の材料によって形成することができる。この場合、ゴム板20と被覆材22とを別体で形成しておき、後工程で加硫接着等によって一体化させることが可能である。あるいは、被覆材22とゴム板20を接着剤等で接着してもよい。
【0056】
積層弾性体16の中央部には、積層弾性体16をX方向に貫通する弾性体中空部28が形成されている。弾性体中空部28は、本実施形態では円柱状の空間とされているが、形状は円柱状に限定されない。
【0057】
弾性体中空部28には、塑性流動材料と硬質充填材が混練された混練物56(図4参照)から成型された円筒状のコア30が嵌め込まれている。
【0058】
また、弾性体中空部28の端部には閉塞板24が配置されている。閉塞板24は、弾性体中空部28のX方向の端部を閉塞できるように、弾性体中空部28よりも大径の円盤状に形成されている。閉塞板24をフランジ板14に固定することで、弾性体中空部28を密閉することができる。
【0059】
このような構成とされた第1実施形態の積層支持体12では、支持部材と被支持部材との水平方向への相対移動(振動)により、図2に示すように積層弾性体16が弾性的にせん断変形し、エネルギーを吸収する。
【0060】
ここで、弾性体中空部28に嵌め込まれるコア30を製造する製造装置40(気体除去装置)について説明する。
【0061】
図3に示すように、製造装置40は、真空装置50を備えており、この真空装置50内には、有底円筒状のシリンダ42が設けられている。また、真空装置50内には、油圧アクチュエータ45によって昇降する加圧部材44が、シリンダ42内を摺動可能に設けられている。
【0062】
真空装置50には、真空ポンプ52が設けられており、真空ポンプ52の駆動によって真空装置50内の空気が排気されて、真空装置50内は所定の圧力まで減圧されるようになっている。
【0063】
次に、上記構成の製造装置40を用いて、コア30を製造する工程について説明する。
【0064】
図4(A)に示すように、加圧部材44が挿入されていない状態のシリンダ42内に、ブロック状の塑性流動材料と硬質充填材の混合物片56Aを投入する。なお、この混合物片56Aは、予めニーダーを用いて塑性流動材料と硬質充填材を混練することで形成されている。
【0065】
次に、図4(B)に示すように、油圧アクチュエータ45を駆動して、加圧部材44を下降させてシリンダ42に挿入し、真空ポンプ52を駆動させて真空装置50内を、単位面積当たり0.01Pa〜0.1Paに減圧する。
【0066】
そして、図4(C)に示すように、油圧アクチュエータ45を駆動して、加圧部材44をさらに下降させ、シリンダ42内に投入された混合物片56Aを、単位面積当たり10MPa〜200MPaの力で加圧する。これにより、混合物片56Aが混練されて混練物56が成形される。
【0067】
このとき、シリンダ42に投入された塑性流動材料と硬質充填材の混合物片56Aの間の空気及び、混合物片56Aに含有している気体が、加圧部材44によって加圧されて押し出される。この押し出された空気は、シリンダ42と加圧部材44の間の微小な隙間からシリンダ42の外へ吸引される。
【0068】
したがって、塑性流動材料と硬質充填材の混合物片56Aの混練物56から気体が除去される。
【0069】
なお、混合物片56Aを単位面積当たり10MPaより小さい力で加圧すると、混合物片56Aに対する加圧力が不十分であることから混練物56に含有された気体の除去が不十分となってしまう。また、混合物片56Aを単位面積当たり200MPaより大きい力で加圧すると、混合物片56に対する加圧力が過剰となって、混練物56の物性が変化してしまう。したがって、単位面積当たり10MPa〜200MPaの力で混合物片56Aを加圧することで、混練物56の物性を変化させることなく、混練物56中の気体を除去できる。
【0070】
また、シリンダ42内の混合物片56Aを加圧する際の温度は、40℃〜120℃とする。なお、この温度を40℃よりも低くすると、混練物56の流動性が十分に得られず、120℃よりも高くすると、混練物56の物性が変化してしまう。
【0071】
そして、加圧部材44をシリンダ42から取り外し、シリンダ42を真空装置50の外へ出して、シリンダ42内から混練物56を取り出す。この取り出した混練物56を、コア30を成形する成形型58に投入し、コア30(図1参照)を成型する。
【0072】
なお、シリンダ42に投入される塑性流動材料としては、たとえば、せん断降伏応力が0.1MPa〜10MPaである未加硫ゴム、熱可塑性エラストマー等を挙げることができるが、これらに限定されない。未加硫ゴムの主成分(ポリマー)としては、天然ゴム(NR)、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)、スチレン・プロピレンゴム(EPM、EPDM)、シリコーンゴム(Q)等が挙げられる。さらに、未加硫ゴムや熱可塑性エラストマー等にカーボンブラック、炭酸カルシウム、オイル・樹脂等の配合剤を配合したものでもよい。
【0073】
また、硬質充填材は、塑性流動材料に対して剛体とみなせる程度の硬さを有する材料であればよい。たとえば、金属、セラミックやエンジニアリングプラスチック等を適用することができるが、これらに限定されない。金属の具体例としては、純鉄、あるいは炭素鋼やステンレス鋼などの鉄を主成分とした粉体を挙げることができる。
【0074】
なお、塑性流動材料のせん断降伏応力が0.1MPaよりも小さいと、塑性流動材料の流動抵抗力が小さいため、大きな減衰力が得られず、塑性流動材料のせん断降伏応力が10MPaよりも大きいと、塑性流動材料を大きく塑性変形させることができない。そこで、せん断降伏応力が0.1MPa〜10MPaである塑性流動材料に硬質充填材を混練させることで、塑性変形の挙動が安定した混練物56が得られる。
【0075】
なお、本実施形態では、真空装置50内に設置したシリンダ42に混合物片56Aを投入し、この混合物片56Aを加圧部材44で加圧するときに、真空装置50内を減圧して、シリンダ42と加圧部材44の隙間から、混合物片56Aの間の空気及び混合物片56Aに含有している気体を吸引する構成で説明したが、必ずしも真空装置50を用いる必要はない。例えば、シリンダ42に吸引装置を連結し、混合物片56Aを加圧する際に吸引装置を駆動して、シリンダ42の底面及び側壁と加圧部材44とで形成される加圧室内の空気を吸引する。これにより、混合物片56Aの間の空気がシリンダ42の外へ吸引されるので、混練物56の気体が除去される。
【0076】
次に、本発明の第2の実施形態に係る製造装置60について説明する。なお、第1の実施形態と同様の部分についての説明は割愛する。
【0077】
図5に示すように、製造装置60は、真空装置50を備えており、この真空装置50内には、長手方向の両端が開口された円筒状のシリンダ62が設けられている。このシリンダ62の一方(図の下側)の開口部62A近傍には、円形状の貫通孔64(図7(A)参照)が複数形成された隔壁66が設けられている。
【0078】
また、真空装置50内には、シリンダ62の他方(図の上側)の開口部62Bに、油圧アクチュエータ45によって昇降する加圧部材64が、シリンダ62内を摺動可能に設けられている。これにより、シリンダ62の内壁と隔壁66及び加圧部材64とで、塑性流動材料と硬質充填材の混練物56が投入される加圧室68が形成されている。
【0079】
また、シリンダ62の下方には、コア30を成形する成形型70が配設されている。隔壁66に形成された貫通孔64を通過した混練物56(図6参照)は、この成形型70に充填されるようになっている。
【0080】
次に、上記構成の製造装置60を用いて、コア30を製造する工程について説明する。
【0081】
まず、図6(A)に示すように、加圧部材64が挿入されていない状態のシリンダ62内(加圧室68内)に、ブロック状の塑性流動材料と硬質充填材の混合物片56Aを投入する。
【0082】
次に、図6(B)に示すように、油圧アクチュエータ45を駆動して、加圧部材64を下降させてシリンダ62に挿入し、真空ポンプ52を駆動させて真空装置50内を減圧する。
【0083】
そして、図6(C)に示すように、油圧アクチュエータ45を駆動して、加圧部材64をさらに下降させ、加圧室68内の混合物片56Aを、単位面積当たり10MPa〜200MPaの力で加圧する。また、シリンダ62内の混合物片56Aを加圧する際の温度は、40℃〜120℃とする。
【0084】
これにより、混合物片56Aは流動しながら、隔壁66に形成された貫通孔64を通過して、成形型70に充填される。このとき、隔壁66に設けられた貫通孔64の加圧方向と直交する方向の断面積は、加圧室68の断面積よりも小さくされているため、加圧室68内の混合物片56Aに単位面積当たりに働く力の大きさよりも、貫通孔64を通過する混練物56の単位面積当たりに働く力の大きさの方が大きくなる。つまり、貫通孔64を混練物56が通過するとき、加圧室68で加えられた圧力よりも、大きな圧力が混練物56に加えられるため、混練物56に含有された気体(混合物片56Aの間の気体や、混合物片56Aに含有している気体)が抜ける。
【0085】
また、混練物56は貫通孔64を通過する際に表面積が大きくされるので、混練物56中の気体が混練物56の表面から抜ける。
【0086】
そして、貫通孔64を通過した混練物56が、成形型70に充填される際に、混練物56から抜けた気体が、シリンダ62と加圧部材64の間から吸引される。したがって、塑性流動材料と硬質充填材の混練物56中の気体が除去される。
【0087】
なお、本実施形態では、図7(A)に示すように、隔壁66に形成された複数の貫通孔64を、円形状として説明したが、図7(B)に示すように、隔壁72に形成された貫通孔74は長孔でもよい。また、図7(C)に示すように、略長方形状の貫通孔78が形成された隔壁76を用いてもよい。このとき、貫通孔78の角部は、R形状とするか、C面78Aを形成することによって、貫通孔78を混練物56が通過する際に、混練物56の流動抵抗が大きくならない。
【0088】
このように、隔壁66に形成された貫通孔を長孔や略長方形状のような細長状とすることで、貫通孔を通過する混練物56は、薄く伸ばされて表面積がさらに大きくなる。これにより、混練物56に含有された気体が除去されやすくなる。
【0089】
また、本実施形態では、シリンダ62の下方に、コア30を成形する成形型70を配設しているが、隔壁66の貫通孔64を通過した混練物56を受ける受け部をシリンダ62の下方に配設し、この受け部で受けた混練物56を成形型に投入してもよい。
【0090】
さらに、この受け部で受けた混練物56を、再びシリンダ62(加圧室68)内に投入して、加圧部材64で加圧し、混練物56を再び隔壁66に形成された貫通孔64を通過させれば、混練物56内に残存している気泡がこの時点で除去される。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】本発明の実施形態の積層支持体を変形前において示す断面図である。
【図2】本発明の実施形態の積層支持体を変形後において示す断面図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係る製造装置を示す断面図である。
【図4】本発明の第1の実施形態に係る製造装置を示す断面図であり、(A)〜(D)は製造工程を示す図である。
【図5】本発明の第2の実施形態に係る製造装置を示す断面図である。
【図6】本発明の第2の実施形態に係る製造装置を示す断面図であり、(A)〜(D)は製造工程を示す図である。
【図7】本発明の第2の実施形態に係る製造装置に搭載される隔壁を示す正面図である。
【図8】従来の製造装置を示す断面図である。
【符号の説明】
【0092】
12 積層支持体
28 弾性体中空部(中空部)
30 コア
40 製造装置(気体除去装置)
42 シリンダ(加圧室)
44 加圧部材
50 真空装置(減圧手段)
56 混練物
56A 混合物片
60 製造装置(気体除去装置)
62 シリンダ(加圧室)
64 加圧部材
64 貫通孔(孔)
66 隔壁(連通部)
68 加圧室
70 成形型(型)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
塑性流動材料と硬質充填材の混合物片を混練して混練物中の気体を除去する気体除去方法であって、
加圧室に前記混合物片を投入する工程と、
前記加圧室を真空雰囲気下又は大気圧に対して減圧された減圧環境下に置き、前記加圧室に投入された前記混合物片を加圧する工程と、
を有していることを特徴とする気体除去方法。
【請求項2】
前記加圧室に投入された前記混合物片を、該加圧室に連通され加圧方向と直交する方向の該加圧室の断面積よりも小さい断面積を有する連通部を通過させ、前記連通部に連通され該連通部の断面積よりも大きい断面積を有する室へ送り出すことを特徴とする請求項1に記載の気体除去方法。
【請求項3】
塑性流動材料と硬質充填材の混合物片を混練して混練物中の気体を除去する気体除去方法であって、
前記混合物片が投入される加圧室と、
前記加圧室に投入された前記混合物片を加圧する加圧部材と、
前記加圧室を真空雰囲気下又は大気圧に対して減圧された減圧環境下に置く減圧室と、
を有して構成されることを特徴とする気体除去装置。
【請求項4】
前記加圧室は、加圧方向と直交する方向の該加圧室の断面積よりも小さい断面積を有し、該加圧室から流動性を持たされた混練物が通過する連通部を備え、前記加圧室と反対側に、前記連通部の断面積よりも大きい断面積を有し、該連通部を通過した混練物が送り出される室を有することを特徴とする請求項3に記載の気体除去装置。
【請求項5】
前記室は、要求される混練物の成形品の型であることを特徴とする請求項4に記載の気体除去装置。
【請求項6】
シリンダ内に前記連通部として複数の孔が形成された隔壁を設け、前記隔壁と前記シリンダで形成された空間を前記加圧室とし、該加圧室には、投入された前記混合物片を該加圧室の内壁を摺動して加圧する加圧部材が設けられていることを特徴とする請求項5に記載の気体除去装置。
【請求項7】
前記孔は、円形状とされていることを特徴とする請求項6に記載の気体除去装置。
【請求項8】
前記孔は、細長状とされていることを特徴とする請求項6に記載の気体除去装置。
【請求項9】
剛性を有する剛性板と弾性を有する弾性板とが交互に積層されて構成された積層弾性体の積層方向に形成された中空部に挿入される塑性流動材料と硬質充填材の混合物片の混練物であるコアの製造方法であって、
加圧室に前記混合物片を投入する工程と、
前記加圧室を真空雰囲気下又は大気圧に対して減圧された減圧環境下に置き、前記加圧室に投入された前記混合物片を加圧する工程と、
前記加圧室から前記混合物片が混練されて成形されたコアを取り出す工程と、
を有していることを特徴とするコアの製造方法。
【請求項10】
剛性を有する剛性板と弾性を有する弾性板とが交互に積層されて構成された積層弾性体の積層方向に形成された中空部に挿入される塑性流動材料と硬質充填材の混合物片の混練物であるコアの製造方法であって、
加圧室に前記混合物片を投入する工程と、
前記加圧室を真空雰囲気下又は大気圧に対して減圧された減圧環境下に置き、前記加圧室を加圧して、該加圧室に投入された前記混合物片を、該加圧室に連通され加圧方向と直交する方向の該加圧室の断面積よりも小さい断面積を有する連通部を通過させ、前記連通部に連通され該連通部の断面積よりも大きい断面積を有する室へ放出させる工程と、
前記室から前記混合物片が混練されて成形されたコアを取り出す工程と、
を有していることを特徴とするコアの製造方法。
【請求項11】
前記混合物片を、単位面積当たり10MPa〜200MPaの力で加圧することを特徴とする請求項9又は請求項10に記載のコアの製造方法。
【請求項12】
前記塑性流動材料は、せん断降伏応力が0.1MPa〜10MPaであることを特徴とする請求項9〜請求項11のいずれか1項に記載のコアの製造方法。
【請求項13】
前記硬質充填材は、鉄を主成分としていることを特徴とする請求項9〜請求項12のいずれか1項に記載のコアの製造方法。
【請求項14】
剛性を有する剛性板と弾性を有する弾性板とが交互に積層されて構成された積層弾性体と、
前記積層弾性体の積層方向に形成された中空部に挿入される請求項9〜請求項13のいずれか1項に記載のコアの製造方法で製造されたコアと、
を有して構成されていることを特徴とする積層支持体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−200889(P2008−200889A)
【公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−36661(P2007−36661)
【出願日】平成19年2月16日(2007.2.16)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】