説明

気泡含有熱伝導性樹脂組成物層およびその製造方法、それを用いた感圧性接着テープ又はシート

【課題】熱伝導性に優れ、かつ曲面や凹凸面に対して良好な追従性や接着性を有する気泡含有熱伝導性樹脂組成物層を提供する。
【解決手段】少なくとも、(a)(メタ)アクリル酸アルキルエステルを単量体主成分とするアクリル系ポリマー、(b)熱伝導性粒子、(c)気泡、を含有する気泡含有熱伝導性樹脂組成物層。またこれからなる感圧性接着剤層2または基材3、さらにこれらを用いた感圧性接着テープ又はシート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気泡含有熱伝導性樹脂組成物層およびその製造方法、それを用いた感圧性接着テープ又はシートに関し、より詳細には、熱伝導性と凹凸追従性を併せ持つ感圧性接着テープ又はシートに適用可能な気泡含有熱伝導性樹脂組成物層およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、樹脂組成物にフィラーを含有させることにより、ベースとなる樹脂単体に比べて強度を向上させたり、熱伝導性を向上させたりすることが行われている。特に、エポキシ樹脂が用いられたベース樹脂に、熱伝導性を向上させるための熱伝導性粒子を分散させた熱伝導性接着剤樹脂組成物は、チップ部品の封止や、発熱部品の搭載された回路と放熱板との間の絶縁層の形成などといった電子部品用途において広く用いられている。
【0003】
例えば、特許文献1には、熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂などのポリマー成分と熱伝導性粒子とを含む熱伝導性接剤組成物によりシート状に形成された高熱伝導性樹脂層が、金属箔が用いられて形成された金属箔層上に積層された金属箔付の熱伝導性接着シート(以下「金属箔付高熱伝導接着シート」ともいう)が記載されており、この金属箔付高熱伝導接着シートが半導体チップの接着に用いられることが記載されている。
【0004】
シートタイプの熱伝導材は取り扱い性が良いものの、グリースに比べ硬いため、接触界面でのなじみが悪く、空気層などによる熱抵抗(接触熱抵抗)が大きいという課題があった。 また、被着体となるヒートシンクなどの冷却部材や回路基板などは、表面に凹凸があったり、曲面構造となっている場合があり、さらに被着体自身が反っていたりする場合もある。その場合、熱伝導シートを被着体との密着性が劣る課題がある。また基板などには、別の部品が搭載されている場合もあり、この場合、複数の段差がある構造となっている場合もある。このように凹凸形状、曲面構造や段差形状のある被着体に熱伝導シートを貼り合わせる場合、熱伝導シートと被着体の間の密着性が低下しすきまが発生し、これも熱伝導性の低下原因となる課題もあった。
【0005】
そこで、気泡構造を有する感圧性接着剤層を有する感圧性接着テープ又はシートは、曲面や凹凸面に対する接着の際に凝集強さ、加工性、耐反発性が必要とされる用途などで、しばしば用いられる。このような感圧性接着テープ又はシートとしては、感圧性接着剤層全体にガラスのミクロバブルを分散させたものが提案されている( 特許文献2 、特許文献3)。このような気泡含有樹脂組成物は、被着体の密着性や凹凸追従性には優れるが、樹脂組成物中に気泡があるため、熱伝導性が劣ることが課題であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−186473号公報
【特許文献2】特公昭57−17030号公報
【特許文献3】特開平7−48549号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、熱伝導性に優れ、かつ被着体への密着性や凹凸追従性、接着性に優れた、気泡含有熱伝導性樹脂組成物層を提供することである。本発明は又、該気泡含有熱伝導樹脂組成物層を感圧性接着剤層または基材として用いた、熱伝導性、着体への密着性や凹凸追従性、接着性に優れた感圧性接着テープ又はシートを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、前記目的を達成するために鋭意検討した結果、ベースポリマーとして、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを単量体主成分とするアクリル系ポリマーからなり、気泡と熱伝導性粒子を含有する気泡含有熱伝導性樹脂組成物層を用いることにより、熱伝導シートの熱伝導性と被着体との間の凹凸面に対する良好な追従性が同時に実現し、熱伝導性、接着性に優れた感圧性接着剤層や基材を形成することが可能であることを見出し、本発明を完成した。
【0009】
すなわち、本発明は、少なくとも、(a)(メタ)アクリル酸アルキルエステルを単量体主成分とするアクリル系ポリマー、(b)熱伝導性粒子、(c)気泡、を含有する気泡含有熱伝導性樹脂組成物層を提供する。
【0010】
上記気泡含有熱伝導性樹脂組成物層は、熱伝導率が0.30W/mK以上であることが好ましく、またアスカーC硬度が50以下であることが好ましい。
【0011】
また上記気泡含有熱伝導性樹脂組成物層は、気泡の含有量が5〜50体積%であることが好ましく、また熱伝導性粒子として、1次平均粒子径が10μm以上の粒子と10μm未満の粒子とが1:10〜10:1(重量比)の割合で含有することが好ましい。
【0012】
また本発明請は、上記気泡含有熱伝導性樹脂組成物層の製造方法であって、
少なくとも、(a´)(メタ)アクリル酸アルキルエステルを単量体主成分とするモノマー混合物又はその部分重合物、(b)熱伝導性粒子、(c)気泡、を含有する気泡含有熱伝導性樹脂組成物に、活性エネルギー光線を照射して気泡含有熱伝導性樹脂組成物層を形成することを特徴とする、気泡含有熱伝導性樹脂組成物層の製造方法を提供する。
【0013】
本発明の気泡含有熱伝導性樹脂組成物層は、感圧性接着剤層や基材として利用可能である。
【0014】
また本発明は、感圧性接着剤層を有している感圧性接着テープ又はシートであって、感圧性接着剤層が、前記気泡含有熱伝導性樹脂組成物層により形成されている感圧性接着テープ又はシートを提供する。
【0015】
また本発明は、基材の少なくとも一方の面に感圧性接着剤層を有している感圧性接着テープ又はシートであって、基材が、前記気泡含有熱伝導性樹脂組成物により形成されている感圧性接着テープ又はシートを提供する。
【発明の効果】
【0016】
本発明の気泡含有熱伝導性樹脂組成物層によれば、熱伝導シートの熱伝導性と被着体との間の凹凸面に対する良好な追従性が同時に実現し、熱伝導性、接着力に優れた感圧性接着剤層や基材を有する感圧性接着テープ又はシートを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、本発明の感圧性接着テープ又はシートの例を部分的に示す概略断面図である。
【図2】図2は、本発明の感圧性接着テープ又はシートの例を部分的に示す概略断面図である。
【図3】図3は、実施例において熱伝導率および熱抵抗を測定する熱特性評価装置の説明図である。
【図4】図4は、実施例において密着性を評価する密着性試験冶具の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の気泡含有熱伝導性樹脂組成物層は、少なくとも(a)(メタ)アクリル酸アルキルエステルを単量体主成分とするアクリル系ポリマー、(b)熱伝導性粒子、(c)気泡を含有する。熱伝導性粒子と気泡を含有することにより、熱伝導性と被着体との間の凹凸面に対する良好な追従性が同時に実現できる。
【0019】
本発明の気泡含有熱伝導性樹脂組成物層は、好適には、少なくとも、(a´)(メタ)アクリル酸アルキルエステルを単量体主成分とするモノマー混合物又はその部分重合物、(b)熱伝導性粒子、(c)気泡、を含有する気泡含有熱伝導性樹脂組成物に、活性エネルギー光線を照射し、(a´)(メタ)アクリル酸アルキルエステルを単量体主成分とするモノマー混合物又はその部分重合物を、(c)気泡を混入した状態で(a)アクリル系ポリマーに重合して、気泡含有熱伝導性樹脂組成物層を形成することが望ましい。
【0020】
(アクリル系ポリマー)
気泡含有熱伝導性樹脂組成物層を構成する(a)アクリル系ポリマーとしては、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを単量体主成分とするモノマー混合物又はその部分重合物(a´)の重合により得られるアクリル系ポリマーを用いる。アクリル系ポリマーは、単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0021】
アクリル系ポリマーを構成する(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸s−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ) アクリル酸イソペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ) アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル、(メタ)アクリル酸ペンタデシル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル、(メタ)アクリル酸ヘプタデシル、(メタ) アクリル酸オクタデシル、(メタ)アクリル酸ノナデシル、(メタ)アクリル酸エイコシル、などの(メタ)アクリル酸C1-20アルキルエステルを挙げることができる。
【0022】
特に気泡含有熱伝導性樹脂組成物層を感圧性接着剤層として利用する場合、アクリル系ポリマーを構成する(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、好ましくは(メタ)アクリル酸C2-12 アルキルエステル、さらに好ましくは(メタ)アクリル酸C4-9アルキルエステルを用いることができる。
【0023】
また気泡含有熱伝導性樹脂組成物層を基材として利用する場合、アクリル系ポリマーを構成する(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、好ましくは(メタ)アクリル酸C1-14アルキルエステル、さらに好ましくは(メタ)アクリル酸C2-12アルキルエステルを用いることができる。
【0024】
上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、アクリル系ポリマーを構成する単量体において主成分として用いられているのであって、(メタ)アクリル酸アルキルエステルの割合は、例えば、アクリル系ポリマーを調整するためのモノマー成分全量に対して60重量%以上(例えば60〜99重量%)、好ましくは80重量%以上(例えば80〜98重量%)であることが重要である。
【0025】
本発明における(a)アクリル系ポリマーは、モノマー成分として、極性基含有単量体や多官能性単量体などの各種共重合性単量体が用いられてもよい。モノマー成分として共重合性単量体を用いることにより、例えば、被着体への接着力を向上させたり、 気泡含有熱伝導性樹脂組成物層の凝集力を高めたりすることができる。共重合性単量体は単独で、又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0026】
前記極性基含有単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イソクロトン酸などのカルボキシル基含有単量体又はその無水物( 無水マレイン酸など);(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシブチル等の(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルなどの水酸基含有単量体; アクリルアミド、メタアクリルアミド、N ,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシエチルアクリルアミドなどのアミド基含有単量体;(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸t−ブチルアミノエチル、などのアミノ基含有単量体;(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸メチルグリシジルなどのグリシジル基含有単量体; アクリロニトリルやメタアクリロニトリルなどのシアノ基含有単量体;N−ビニル−2−ピロリドン、(メタ)アクリロイルモルホリンの他、N−ビニルピリジン、N−ビニルピペリドン、N−ビニルピリミジン、N−ビニルピペラジン、N−ビニルピロール、N−ビニルイミダゾール、N−ビニルオキサゾール等の複素環含有ビニル系単量体などが挙げられる。極性基含有単量体としては、用いる熱伝導性粒子との反応性の観点を考慮し、相互作用が小さいもの、例えば、酸塩基反応による熱伝導性粒子とアクリル系ポリマーとの反応が小さいものを用いることが望ましい。好ましい極性基含有単量体としては、例えば、熱伝導性粒子に水和金属系粒子(水酸化アルミニウムや水酸化マグネシウムなど)を用いる場合は、該粒子が塩基性の官能基を有するため、酸性の官能基を有するカルボキシル基含有単量体以外の極性基含有単量体を用いることが望ましく、例えばアミド基含有単量体やアミノ基含有単量体を挙げることができる。
【0027】
極性基含有単量体の使用量としては、アクリル系ポリマーを調整するためのモノマー成分全量に対して30重量%以下、 例えば1〜30重量%であり、好ましくは3〜20重量%である。極性基含有単量体の使用量が30重量%を超えると、例えば、アクリル系感圧性接着剤の凝集力が高くなりすぎ、感圧接着性が低下するおそれがある。また、極性基含有単量体の使用量が少なすぎると(例えばアクリル系ポリマーを調整するためのモノマー成分全量に対して1重量%未満であると)アクリル系感圧接着剤の凝集力が低下し、高いせん断力が得られなくなる。
【0028】
前記多官能性単量体としては、例えば、ヘキサンジオール(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、ビニル(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼン、エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレート、ウレタンアクリレート、ジブチル(メタ)アクリレート、ヘキシジル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0029】
多官能性単量体の使用量としては、アクリル系ポリマーを調整するためのモノマー成分全量に対して2重量%以下、例えば、0.01〜2重量%であることが好ましく、さらに好ましくは0.02〜1重量%である。多官能性単量体の使用量がアクリル系ポリマーを調整するためのモノマー成分全量に対して2重量%を超えると、例えばアクリル系感圧性接着剤の凝集力が高くなりすぎ、感圧接着性が低下する場合がある。また、多官能性単量体の使用量が少なすぎると、例えばアクリル系ポリマーを調整を調整するためのモノマー成分全量に対して0.01重量%未満であると、例えば、アクリル系感圧接着剤の凝集力が低下する場合がある。
【0030】
また、極性基含有単量体や多官能性単量体以外の共重合性単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸シクロペンチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸イソボロニル、(メタ)アクリル酸メチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸トリメチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ノルボルニル、(メタ)アクリル酸ノルボルニルメチル、(メタ)アクリル酸シアノノルボルニル、(メタ)メタクリル酸フェニルノルボルニル、(メタ)アクリル酸ボルニル、(メタ)アクリル酸メンチル、(メタ)アクリル酸フェンチル、(メタ)アクリル酸アダマンチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアダマンチル、(メタ)アクリル酸トリシクロ[5.2.1.02,6]デカ−8−イル、(メタ)アクリル酸トリシクロ[5.2.1.02,6]デカ−4−メチル、(メタ)アクリル酸シクロデシルなどの脂環式炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステル;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどのビニルエステル類、スチレンビニルトルエンなどの芳香族ビニル化合物、エチレン、ブタジエン、イソプレン、イソブチレンなどのオレフィン又はジエン類; ビニルアルキルエーテルなどのビニルエーテル類; 塩化ビニル、(メタ) アクリル酸メトキシエチル、(メタ) アクリル酸エトキシエチルなどの(メタ) アクリル酸アルコキシアルキル系モノマー; ビニルスルホン酸ナトリウムなどのスルホン酸基含有単量体; 2 − ヒドロキシエチルアクリロイルフォスフェートなどのリン酸基含有単量体; シクロヘキシルマレイミド、イソプロピルマレイミドなどのイミド基含有単量体; 2 −メタクリロイルオキシエチルイソシアネートなどのイソシアネート基含有単量体; フッ素原子含有(メタ) アクリレート、ケイ素原子含有( メタ) アクリレートなどが挙げられる。
【0031】
本発明では、前記ベースポリマーとしてアクリル系ポリマーの調整に際して(すなわち、気泡含有感圧性接着剤層や気泡含有基材等の気泡含有熱伝導性樹脂組成物層の形成に際して)、熱重合開始剤や光重合開始剤(光開始剤)などの重合開始剤を用いた、熱や活性エネルギー光線による硬化反応を利用することができる。すなわち、気泡含有熱伝導性樹脂組成物層を形成する気泡含有熱伝導性樹脂組成物には熱重合開始剤や光重合開始剤などの重合開始剤が含まれてもよい。従って、気泡含有熱伝導性樹脂組成物は、熱やエネルギー光線により硬化が可能である。このように重合開始剤(熱重合開始剤や光重合開始剤など)が含まれていると熱や活性エネルギー光線による硬化が可能となり、そのため、気泡が混合された状態で硬化させて気泡含有熱伝導性樹脂組成物層を形成させることにより、気泡が安定して含有された構造を有する気泡含有熱伝導性樹脂層を容易に形成することができる。
【0032】
このような重合開始剤としては、重合時間を短くすることができる利点などから、光重合開始剤を好適に用いることができる。すなわち、活性エネルギー光線を用いた重合を利用して、安定した気泡構造を有する気泡含有感圧性接着剤層を形成することが好ましい。なお、重合開始剤は、単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0033】
前記重合開始剤としては、特に限定されず、例えば、ベンゾインエーテル系光重合開始剤、アセトフェノン系光重合開始剤、α−ケトール系光重合開始剤、芳香族スルホニルクロリド系光重合開始剤、光活性オキシム系光重合開始剤、ベンゾイン系光重合開始剤、ベンジル系光重合開始剤、ベンゾフェノン系光重合開始剤、ケタール系光重合開始剤、チオキサントン系光重合開始剤などを用いることができる。
【0034】
具体的には、ベンゾインエーテル系光重合開始剤としては、例えば、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、2 ,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、アニソールメチルエーテルなどが挙げられる。アセトフェノン系光重合開始剤としては、例えば、2 ,2−ジエトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、4−フェノキシジクロロアセトフェノン、4−(t−ブチル)ジクロロアセトフェノンなどが挙げられる。α−ケトール系光重合開始剤としては、例えば、2−メチル−2−ヒドロキシプロピオフェノン、1−[4−( 2−ヒドロキシエチル)フェニル]−2−メチルプロパン−1−オンなどが挙げられる。芳香族スルホニルクロリド系光重合開始剤としては、例えば、2−ナフタレンスルホニルクロライドなどが挙げられる。光活性オキシム系光重合開始剤としては、例えば、1−フェニル−1,1−プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)−オキシムなどが挙げられる。
【0035】
また、ベンゾイン系光重合開始剤には、例えば、ベンゾインなどが含まれる。ベンジル系光重合開始剤には、例えば、ベンジルなどが含まれる。ベンゾフェノン系光重合開始剤は、例えば、ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、3 、3′−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン、ポリビニルベンゾフェノン、α−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンなどが含まれる。ケタール系光重合開始剤には、例えば、チオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−メチルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン、デシルチオキサントンなどが含まれる。
【0036】
光重合開始剤の使用量としては、特に限定されないが、例えば、気泡含有熱伝導性樹脂組成物中のベースポリマーを形成するための全モノマー成分[特に(メタ)アクリル酸エステルを単量体の主成分とするアクリル系ポリマーを形成するための全モノマー成分] 100重量部に対して0.01〜5重量部、好ましくは0.05〜3重量部の範囲から選択することができる。
【0037】
光重合開始剤の活性化に際しては、活性エネルギー光線を気泡含有粘弾性組成物に照射することが重要である。このような活性エネルギー光線としては、例えば、α線、β線、γ線、中性子線、電子線などの電離性放射線や、紫外線などが挙げられ、特に紫外線が好適である。また、活性エネルギー光線の照射エネルギーや、その照射時間などは特に限定されず、光重合開始剤を活性させて、モノマー成分の反応を生じさせることができればよい。
【0038】
なお、前記熱重合開始剤としては、例えば、アゾ系重合開始剤[例えば、2,2′−アゾビスイソブチロニトリル、2,2′−アゾビス−2−メチルブチロニトリル、2,2′− アゾビス(2−メチルプロピオン酸)ジメチル、4,4′−アゾビス−4−シアノバレリアン酸、アゾビスイソバレロニトリル、2,2′−アゾビス(2−アミジノプロパン)ジヒドロクロライド、2,2′−アゾビス[2−(5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジヒドロクロライド、2,2′−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二硫酸塩、2,2′−アゾビス(N,N′−ジメチレンイソブチルアミジン)ヒドロクロライドなど]、過酸化物系重合開始剤(例えば、ジベンゾイルペルオキシド、t−ブチルペルマレエートなど)、レドックス系重合開始剤などが挙げられる。熱重合開始剤の使用量としては特に限定されず、従来、重合開始剤として利用可能な範囲であればよい。
【0039】
(熱伝導性粒子)
本発明の気泡含有熱伝導性樹脂組成物層を構成する(b)熱伝導性粒子は、熱伝導性の高いセラミック粒子や金属粒子を指し、充填材として樹脂組成物層中に充填させることで、樹脂組成物層の熱伝導性を向上させる粒子であり、例えば、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、窒化ガリウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭化ケイ素、二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化銅、酸化ニッケル、アンチモン酸ドープ酸化スズ、炭酸カルシウム、チタン酸バリウム、チタン酸カリウム、銅、銀、金、ニッケル、アルミニウム、白金、カーボンブラック、カーボンチューブ(カーボンナノチューブ)、カーボンファイバー、ダイヤモンドなどの粒子を用いることができる。これらの熱伝導粒子の中でも、熱伝導性が高く、電気絶縁性を有するという理由から、窒化ホウ素、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウムを用いることが好ましく、水酸化アルミニウムが特に好ましい。これらの熱伝導粒子は、単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0040】
本発明において用いる熱伝導性粒子の形状は特に限定されず、バルク状、針形状、板形状、層状であってもよい。バルク形状には、例えば球形状、直方体形状、破砕状またはそれらの異形形状が含まれる。
【0041】
本発明において熱伝導性粒子のサイズは、バルク形状(球状)の熱伝導粒子の場合には、1次平均粒子径として0.1〜1000μm、好ましくは1〜100μm、さらに好ましくは5〜45μmである。1次平均粒子径が1000μmを超えると熱伝導性粒子が樹脂組成物層の厚みを超えて厚みバラツキの原因となるという不具合がある。なお、1次平均粒子径は、レーザー散乱法における粒度分布測定法によって求められる体積基準の値である。具体的には、レーザー散乱式粒度分布系により、D50値を測定することによって求められるものである。
【0042】
熱伝導性粒子が針形状または板形状の熱伝導粒子の場合には、最大長さが0.1〜1000μm、好ましくは1〜100μm、さらに好ましくは5〜45μmである。最大長さが1000μmを超えると熱伝導粒子同士が凝集しやすくなり、取り扱いが難しくなるという不具合がある。さらにこれらのアスペクト比(針状結晶の場合には、長軸長さ/短軸長さ、または長軸長さ/厚みで表現される。また板状結晶の場合には、対角長さ/厚み、または長辺長さ/厚みで表現される)が1〜10000、好ましくは10〜1000である。
【0043】
本発明において、熱伝導性粒子は粒子サイズの異なる2種以上の熱伝導粒子を併用することが好ましい。2種以上のサイズの異なる熱伝導粒子を併用する場合、粒子サイズは特に限定されないが、例えば、熱伝導粒子サイズが10μm以上の大きな粒子と10μm未満の小さな粒子とを組み合わせて用いることが好ましい。このように粒子サイズの大きさの異なる熱伝導粒子を併用することで、熱伝導性粒子が気泡含有熱伝導性樹脂組成物層内により最密に充填されるようになり、熱伝導性粒子による熱伝導パスが構築されやすくなり、熱伝導性が向上するという効果がある。このような効果を得るためには、例えば、前記1次平均粒子径または前記最大長さが10μm以上の大きな粒子と10μmより小さな粒子との配合比(重量比)が1:10〜10:1、好ましくは1:5〜5:1、より好ましくは1:2〜2:1であることが望ましい。
【0044】
本発明において、このような熱伝導性粒子は、一般の市販品を用いることができ、例えば、窒化ホウ素としては水島合金鉄社製「HP−40」、モメンティブ社製「PT620」等を、水酸化アルミニウムとしては、昭和電工社製「ハイジライトH−10」「ハイジライトH−32」「ハイジライトH−42」等を、酸化アルミとしては、昭和電工社製「AS−50」等を、水酸化マグネシウムとしては、協和化学工業社製「KISUMA 5A」等を、アンチモン酸ドープスズとしては、石原産業社製の「SN−100S」「SN−100P」「SN−100D(水分散品)」等を、酸化チタンとしては、石原産業社製の「TTOシリーズ」等を、酸化亜鉛としては、住友大阪セメント社製の「SnO−310」「SnO−350」「SnO−410」等を挙げることができる。
【0045】
本発明の気泡含有熱伝導性樹脂組成物層を構成する(b)熱伝導性粒子の割合(固形分)は、特に限定されないが、熱伝導率を0.25W/mK以上とし、また十分な接着性や凹凸追従性を得るためには、気泡含有熱伝導性樹脂組成物中のアクリル系ポリマー100重量部に対して、 好ましくは10〜1000重量部、より好ましくは50〜500重量部、更に好ましくは100〜400重量部であることが好適である。熱伝導性粒子の割合が、10重量部未満であると十分な熱伝導性を付与することができず、また1000重量部よりも多いと可とう性が低くなり、粘着力や被着体への密着性が低下する恐れがある。
【0046】
また、本発明の気泡含有熱伝導性樹脂組成物層には、熱伝導性粒子を凝集させることなく安定して分散させるために、分散剤を用いることが好ましい。分散剤としては、特に限定されないが、リン酸エステルが好適に用いられる。リン酸エステルとしては、ポリオキシエチレンアルキル(またはアルキルアリル)エーテル又はポリオキシエチレンアルキルアリールエーテルのリン酸モノエステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル又はポリオキシエチレンアルキルアリールエーテルのリン酸ジエステル、リン酸トリエステル、或いはその誘導体等がある。これらのリン酸エステル系分散剤は、単独又は2種以上混合して使用してもよい。その中でも熱伝導性粒子の経時安定性を考慮すれば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル又はポリオキシエチレンアルキルアリールエーテルのリン酸モノエステル、リン酸ジエステルを用いることが好ましい。たとえば、第一工業製薬社製の「プライサーフシリーズ」A212E、A210G、A212C,A215C、東邦化学社製の「フォスファノール」RE610,RS710,RS610等である。又、分散剤の配合量は特に限定されないが、アクリル系ポリマー100重量部に対して、0.01〜10重量部、好ましくは0.05重量部〜5重量部、より好ましくは0.1重量部〜3重量部である。
【0047】
(気泡)
本発明の気泡含有熱伝導性樹脂組成物層は、(c)気泡を含有する。気泡の含有量は気泡含有熱伝導性樹脂組成物層の熱伝導特性等を損なわない範囲で適宜選択できるが、泡含有熱伝導性樹脂組成物層の全体積に対して通常5〜50体積%、好ましくは10〜40体積% 、更に好ましくは12〜30体積%である。気泡量が5体積%未満であると、被着体への密着性や凹凸追従性に劣る場合が多い。また50体積%を超えると気泡による断熱効果が大きくなりすぎて熱伝導性が低下したり、シートを貫通する気泡が形成し、接着性が劣ったり、気泡含有熱伝導性樹脂組成物層が柔らかくなりすぎ、せん断力が劣るなどの恐れがある。
【0048】
気泡含有熱伝導性樹脂組成物層に混合される気泡は、基本的には、独立気泡タイプの気泡であることが望ましいが、独立気泡タイプの気泡と連続気泡タイプの気泡とが混在していてもよい。
【0049】
また、このような気泡としては、通常、球状の形状を有しているが、いびつな形状の球状を有していてもよい。前記気泡において、その平均気泡径(直径)としては、特に限定されず、例えば、1〜1000μm、好ましくは10〜500μm、さらに好ましくは30〜300μmの範囲から選択することができる。
【0050】
なお、気泡に含まれる気体成分(気泡を形成するガス成分;「気泡形成ガス」と称する場合がある)としては、特に限定されず、窒素、二酸化炭素、アルゴンなどの不活性ガスの他、空気などの各種気体成分を用いることができる。気泡形成ガスとしては、気泡形成ガスを混合した後に、重合反応等の反応を行う場合は、その反応を阻害しないものを用いることが重要である。気泡形成ガスとしては、反応を阻害しないことや、コスト的観点などから窒素が好適である。
【0051】
気泡を混合する方法としては特に限定されないが、好適には、少なくとも、(a´)(メタ)アクリル酸アルキルエステルを単量体主成分とするモノマー混合物又はその部分重合物、および(b)熱伝導性粒子、を含有する気泡含有熱伝導性樹脂組成物の前駆体組成物(以下、「前駆体組成物」と称する場合がある)に(c)気泡を混合することで気泡含有熱伝導性樹脂組成物を作成し、これに活性エネルギー光線を照射して気泡含有熱伝導性樹脂組成物層を形成することが望ましい。気泡を混合する方法としては、公知の気泡混合方法を利用することができる。例えば、装置の例としては、中央部に貫通孔を持った円盤上に、細かい歯が多数ついたステータと、歯のついているステータとを対向しており、円盤上にステータと同様の細かい歯がついているローターとを備えた装置などが挙げられる。この装置におけるステータ上の歯とローター上の歯との間に前駆体組成物を導入し、ローターを高速回転させながら、貫通孔を通して気泡を形成させるためのガス成分(気泡形成ガス) を前駆体組成物中に導入させることにより、気泡形成ガスが前駆体組成物中に細かく分散され混合された気泡含有熱伝導性樹脂組成物を得ることができる。
【0052】
なお、気泡の合一を抑制又は防止するためには、気泡の混合から、気泡含有熱伝導性樹脂組成物層の形成までの行程を一連の工程として連続的に行うことが好ましい。すなわち、前述のようにして気泡を混合させて気泡含有熱伝導性樹脂組成物を調製した後、続いて、該気泡含有熱伝導性樹脂組成物を用いて、適宜な形成方法を利用して気泡含有熱伝導性樹脂組成物層を形成することが好ましい。
【0053】
(フッ素系界面活性剤)
本発明の気泡含有熱伝導性樹脂組成物には、フッ素系界面活性剤を用いることができる。フッ素系界面活性剤を用いることにより、熱伝導性粒子と気泡含有熱伝導層中のベースポリマーとの密着度や摩擦抵抗が低減され、応力分散性が発現する。そのため、本発明の気泡含有熱伝導性樹脂組成物を用いて感圧性接着剤層を形成した場合は、高い接着性が得られる。フッ素化炭化水素基を有することにより上記摩擦抵抗等の低減効果に加えて、気泡混合性及び気泡安定性を高める効果も得られる。
【0054】
フッ素系界面活性剤としては分子中にオキシC2-3アルキレン基及びフッ素化炭化水素基を有するフッ素系界面活性剤が用いられる。オキシC2-3アルキレン基は式:−R−O−(Rは炭素数2又は3の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基)で表される。フッ素系界面活性剤はオキシC2-3アルキレン基及びフッ素化炭化水素基を有していれば特に限定されないが、ベースポリマーに対する分散性の観点から非イオン型界面活性剤が好ましい。また、分子中にオキシエチレン基(−CH2CH2O−)、オキシプロピレン基[−CH2CH(CH3)O−] 等の何れか1 種を有していてもよく、2 種以上を有していてもよい。なお、フッ素系界面活性剤は、単独で、又は2 種以上組み合わせて使用することができる。
【0055】
フッ素化炭化水素基としては、特に制限されないがパーフルオロ基が好適であり、該パーフルオロ基は、1価であってもよく、2価以上の多価であっても良い。また、フッ素化炭化水素基は二重結合や三重結合を有していても良く、直鎖でも枝分かれ構造や環式構造を有していても良い。フッ素化炭化水素基の炭素数としては特に限定されず、1又は2以上、好ましくは3〜30、さらに好ましくは4〜20である。これらのフッ素化炭化水素基が界面活性剤分子中に1種又は2 種以上導入されている。オキシC2-3アルキレン基としては、末端の酸素原子に水素原子が結合したアルコール、他の炭化水素基と結合したエーテル、カルボニル基を介して他の炭化水素基と結合したエステル等、何れの形態でも良い。また、環式エーテル類やラクトン類等、環状構造の一部に該構造を有する形態でもよい。
【0056】
フッ素系界面活性剤の構造としては特に制限されないが、例えば、オキシC2-3アルキレン基を有する単量体及びフッ素化炭化水素基を有する単量体をモノマー成分として含む共重合体を好適に用いることができる。このような共重合体としては、ブロック共重合体、グラフト共重合体など、様々な構造が考えられるが、何れも好適に用いられる。
【0057】
ブロック共重合体(主鎖にオキシC2-3アルキレン基及びフッ素化炭化水素基を有する共重合体)としては、例えば、ポリオキシエチレンパーフルオロアルキルエーテル、ポリオキシエチレンパーフルオロアルキレート、ポリオキシプロピレンパーフルオロアルキルエーテル、ポリオキシイソプロピレンパーフルオロアルキルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタンパーフルオロアルキレート、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマーパーフルオロアルキレート、ポリオキシエチレングリコールパーフルオロアルキレート等である。
【0058】
グラフト共重合体(側鎖にオキシC2-3アルキレン基及びフッ素化炭化水素基を有する共重合体)としては、モノマー成分として少なくとも、ポリオキシアルキレン基を有するビニル系化合物及びフッ素化炭化水素基を有するビニル系化合物を含む共重合体、特に、アクリル系共重合体が好適に用いられる。ポリオキシアルキレン基を有するビニル系化合物としては、例えば、ポリオキシエチレン(メタ)アクリレート、ポリオキシプロピレン(メタ)アクリレート、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン(メタ)アクリレートなどのポリオキシアルキレン(メタ)アクリレートが挙げられる。フッ素化炭化水素基を有するビニル系化合物としては、例えば、パーフルオロブチル(メタ)アクリレート、パーフルオロイソブチル(メタ)アクリレート、パーフルオロペンチル(メタ)アクリレートなどのパーフルオロアルキル(メタ)アクリレート等、フッ素化炭化水素を含有する(メタ)アクリル酸エステルが挙げられる。
【0059】
フッ素系界面活性剤は、分子中に上記構造の他に脂環式炭化水素基や芳香族炭化水素基などの構造を有していてもよく、ベースポリマーへの分散性を阻害しない範囲内でカルボキシル基、スルホン酸基、シアノ基、アミド基、アミノ基等様々な官能基を有していてもよい。例えばフッ素系界面活性剤がビニル系共重合体である場合は、モノマー成分として、ポリオキシアルキレン基を有するビニル系化合物及びフッ素化炭化水素基を有するビニル系化合物と共重合可能なモノマー成分が用いられてもよい。このようなモノマーは単独で又は2 種以上組み合わせて使用することができる。
【0060】
上記共重合可能なモノマー成分としては、例えば、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ドデシルなどの(メタ)アクリル酸C1-20アルキルエステル;シクロペンチル(メタ)アクリレートなどの脂環式炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステル;フェニル(メタ)アクリレートなどの芳香族炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステルが好適に用いられる。その他、マレイン酸、クロトン酸等のカルボキシル基含有単量体;ビニルスルホン酸ナトリウムなどのスルホン酸基含有単量体;スチレン、ビニルトルエンなどの芳香族ビニル化合物;エチレン、ブタジエンなどのオレフィン又はジエン類;ビニルアルキルエーテルなどのビニルエーテル類;アクリルアミド等のアミド基含有単量体;(メタ)アクリロイルモルホリンなどのアミノ基含有単量体;(メタ)アクリル酸メチルグリシジルなどのグリシジル基含有単量体;2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネートなどのイソシアネート基含有単量体などが挙げられる。さらにまた、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼンなどの多官能性共重合性単量体(多官能モノマー) が用いられてもよい。
【0061】
フッ素系界面活性剤の分子量は特に制限されないが、重量平均分子量が20000未満(例えば500以上、20000未満)であると粘弾性組成物中のベースポリマーと熱伝導性粒子との間の密着性や摩擦抵抗を低減する効果が高い。さらに重量平均分子量20000以上( 例えば20000〜100000、好ましくは22000〜80000、さらに好ましくは24000〜60000)のフッ素系界面活性剤を併用すると、気泡の混合性や、混合された気泡の安定性が高まる。
【0062】
オキシC2-3アルキレン基及びフッ素化炭化水素基を有し、且つ重量平均分子量20000未満のフッ素系界面活性剤の具体例としては、商品名「フタージェント251」( 株式会社ネオス製)、商品名「FTX−218」(株式会社ネオス製)、商品名「メガファックF−477」(大日本インキ化学工業株式会社製)、商品名「メガファックF−470」( 大日本インキ化学工業株式会社製) 、商品名「サーフロンS−381」( セイケミカル株式会社製)、商品名「サーフロンS−383」( セイケミカル株式会社製)、商品名「サーフロンS−393」( セイケミカル株式会社製)、商品名「サーフロンKH−20」(セイケミカル株式会社製)、商品名「サーフロンKH−40」(セイケミカル株式会社製)などが挙げられる。オキシC 2-3アルキレン基及びフッ素化炭化水素基を有し、且つ重量平均分子量20000以上であるフッ素系界面活性剤の具体例としては、商品名「エフトップEF−352」(株式会社ジェムコ製) 、商品名「エフトップEF−801」(株式会社ジェムコ製)、商品名「ユニダインTG−656」(ダイキン工業株式会社製) などが挙げられ、何れも本発明に好適に用いることができる。
【0063】
フッ素系界面活性剤の使用量(固形分)としては、特に制限されないが、例えば、気泡含有熱伝導性樹脂組成物層のベースポリマーを形成するための全モノマー成分100 重量部に対して0.01〜5重量部、 好ましくは0.02〜3重量部、さらに好ましくは0.03重量部〜1重量部の範囲で選択することができる。0.01重量 部未満であると接着性能に対する効果が得られず、5重量部を超えると、接着性能が低下する。
【0064】
本発明においては、前記した熱伝導性粒子を安定して分散させる分散剤と、熱伝導性粒子と気泡含有熱伝導層中のベースポリマーとの密着度や摩擦抵抗を低減し応力分散性を発現させるフッ素系界面活性剤を併用して用いることができる。これら分散剤とフッ素系界面活性剤を併用して用いることで、単独で用いる場合よりも少ない量で熱伝導粒子が気泡含有熱伝導樹脂層中で凝集することなく安定して存在し、熱伝導性の向上に寄与できる。また、気泡含有熱伝導層の応力分散性も向上し、より高い接着性が期待できる。これら2種の添加剤を併用して用いる場合、その配合量は特に限定されないが、分散剤とフッ素系界面活性剤の比(重量比)が1:20〜20:1、好ましくは1:10〜10:1、より好ましくは1:5〜5:1で用いることが望ましい。
【0065】
本発明では、気泡含有熱伝導性樹脂組成物中に気泡を安定的に混合して存在させるために、気泡は気泡含有熱伝導性樹脂組成物中に最後の成分として配合し混合させることが好ましく、特に、気泡を混合する前の気泡含有熱伝導性樹脂組成物である前駆体組成物の粘度を高くすることが好ましい。前駆体組成物の粘度としては、混合された気泡を安定的に保持することが可能な粘度であれば特に限定されないが、例えば、粘度計としてBH粘度計を用いて、ローター:No.5ローター、回転数:10rpm、測定温度:30℃の条件で測定された粘度としては、5〜50Pa・s(好ましくは10〜40Pa・s)であることが望ましい。気泡含有熱伝導前駆体の粘度(BH粘度計、No.5ローター、10rpm、30℃)が、5Pa・s未満であると、粘度が低すぎて、混合した気泡がすぐに合一して系外に抜けてしまう場合があり、一方、50Pa・sを超えていると、気泡含有熱伝導層を形成する際に粘度が高すぎて困難となる。
【0066】
なお、前駆体組成物の粘度は、例えば、アクリルゴム、増粘性添加剤などの各種ポリマー成分を配合する方法、ベースポリマーを形成するためのモノマー成分[ 例えば、アクリル系ポリマーを形成させるための(メタ)アクリル酸エステルなどのモノマー成分など]を一部重合させ部分重合物とする方法などにより、調整することができる。具体的には、例えば、ベースポリマーを形成するためのモノマー成分[例えば、アクリル系ポリマーを形成させるための(メタ)アクリル酸エステルなどのモノマー成分など]と、重合開始剤(例えば、光重合開始剤など)とを混合してモノマー混合物を調整し、該モノマー混合物に対して重合開始剤の種類に応じた重合反応を行って、一部のモノマー成分のみが重合した部分重合物を含む組成物(シロップ)を調製した後、該シロップに熱伝導性粒子と、必要に応じて分散剤やフッ素系界面活性剤および後述する各種添加剤とを配合して、気泡を安定的に含有することが可能な適度な粘度を有する前駆体組成物を調製することができる。そして、この前駆体組成物に、気泡を導入して混合させることにより、気泡を安定的に含有している気泡含有熱伝導性樹脂組成物を得ることができる。なお、前記シロップの調製に際しては、モノマー混合中に、予め、フッ素系界面活性剤や熱伝導性粒子が適宜配合されてもよい。
【0067】
(他の成分)
本発明の気泡含有熱伝導性樹脂組成物層には、前記成分(アクリル系ポリマー、熱伝導性粒子、気泡など)の他に、気泡含有熱伝導性樹脂組成物層の用途に応じて、適宜な添加剤が含まれていてもよい。例えば、気泡含有熱伝導性樹脂組成物層が、感圧性接着剤層である場合、架橋剤(例えば、ポリイソシアネート系架橋剤、シリコーン系架橋剤、エポキシ系架橋剤、アルキルエーテル化メラミン系架橋剤など)、粘着付与樹脂(例えば、ロジン誘導体樹脂、ポリテルペン樹脂、石油樹脂、油溶性フェノール樹脂などからなる常温で固体、半固体、あるいは液状のもの)、可塑剤、充填剤、老化防止剤、着色剤( 顔料や染料など)などの適宜な添加剤を含んでもよい。
【0068】
また本発明の気泡含有熱伝導性樹脂組成物層には接着力、耐久力、熱伝導性粒子とアクリル系ポリマーとの親和性をより向上させる目的でシランカップリング剤を用いることができる。シランカップリング剤としては、公知のものを特に制限なく適宜用いることができる。
【0069】
具体的には、例えば、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランなどのエポキシ基含有シランカップリング剤;3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチルブチリデン)プロピルアミンなどのアミノ基含有シランカップリング剤;3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシランなどの(メタ)アクリル基含有シランカップリング剤;3−イソシアネートプロピルトリエトキシシランなどのインシアネート基含有シランカップリング剤などがあげられる。これらシランカップリング剤は、単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。
【0070】
上記シランカップリング剤の含有量は、前記アクリル系ポリマー100重量部に対し、シランカップリング剤0.01〜10重量部含有することが好ましく、0.02〜5重量部含有することがより好ましく、0.05〜2重量部含有することがさらに好ましい。上記シランカップリング剤を上記範囲で用いることにより、より確実に凝集力や耐久性の向上したものとすることができるが、一方、0.01重量部未満では、気泡含有熱伝導性樹脂組成物層に含有される熱伝導性粒子の表面を被覆できず、親和性が向上しない場合があり、一方、10重量部を超えると、熱伝導性を低下させる場合がある。
【0071】
また光重合開始剤を用いて気泡含有熱伝導性樹脂組成物層を形成する場合、該気泡含有熱伝導性樹脂組成物層を着色するために、光重合を阻害されない程度の顔料(着色顔料)を使用することができる。気泡含有熱伝導性樹脂組成物層の着色として黒色が望まれる場合は、例えば、カーボンブラックを用いることができる。着色顔料としてのカーボンブラックの使用量としては、着色度合いや、光重合反応を阻害しない観点から、例えば、気泡含有熱伝導性樹脂組成物中のベースポリマー100重量部に対して0.15重量部以下、 例えば0.001〜0.15重量部、 好ましくは0.02〜0.1重量部の範囲から選択することが望ましい。
【0072】
(感圧性接着テープ又はシート)
本発明の感圧性接着テープ又はシートは、前記気泡含有熱伝導性樹脂組成物により形成された気泡含有熱伝導性感圧性接着剤層および/または気泡含有熱伝導性基材を有している。このような感圧性接着テープ又はシートとしては、両面が接着面(粘着面) となっている両面感圧性接着テープ又はシートの形態を有していてもよく、片面のみが接着面となっている感圧性接着テープ又はシートの形態を有していてもよい。具体的には感圧性接着テープ又はシートとしては、気泡含有熱伝導性樹脂組成物により形成された気泡含有熱伝導性樹脂組成物層が気泡含有熱伝導性感圧性接着剤層である場合、例えば、図1(a)又は(b)で示されるように、(1)基材の少なくとも一方の面に気泡含有熱伝導性感圧性接着剤層が形成され且つ基材の両面側に粘着面が形成された構成の気泡含有熱伝導性感圧性接着剤層を有する基材付き両面感圧性接着テープ又はシート(気泡含有熱伝導性感圧性接着剤層を有する基材付き両面粘着テープ又はシート) 、図1(c)で示されるように、(2)基材の一方の面に気泡含有熱伝導性感圧性接着剤層が形成された構成の気泡含有熱伝導性感圧性接着剤層を有する基材付き感圧性接着テープ又はシート( 気泡含有熱伝導性感圧性接着剤層を有する基材付き片面粘着テープ又はシート) 、図1 (d)で示されるように、(3)気泡含有熱伝導性感圧性接着剤層のみから形成された構成の気泡含有熱伝導性感圧性接着剤層を有する基材レス両面感圧性接着テープ又はシート( 気泡含有熱伝導性感圧性接着剤層を有する基材レス両面感圧性接着テープ又はシート) などが挙げられる。
【0073】
図1は本発明の感圧性接着テープ又はシートの例を部分的に示す概略断面図である。図1 において、1、11、12、13は、それぞれ、気泡含有熱伝導性感圧性接着剤層を有する感圧性接着テープ又はシート、2は気泡含有熱伝導性感圧性接着剤層、3は基材(非気泡含有熱伝導性基材)、4は感圧性接着剤層(非気泡含有熱伝導性感圧性接着剤層)である。図1(a)で示される気泡含有熱伝導性感圧性接着剤層を有する感圧性接着テープ又はシートは、基材3の両面に気泡含有熱伝導性感圧性接着剤層2が形成された構成を有している。図1(b)で示される気泡含有熱伝導性感圧性接着剤層を有する感圧性接着テープ又はシート11は、基材3 の一方の面に気泡含有熱伝導性感圧性接着剤層2が形成され且つ他方の面に感圧性接着剤層4が形成された構成を有している。図1(c)で示される気泡含有熱伝導性感圧性接着剤層を有する感圧性接着テープ又はシート12は、基材3の片面に気泡含有熱伝導性感圧性接着剤層2が形成された構成を有している。図1(d)で示される気泡含有熱伝導性感圧性接着剤層を有する感圧性接着テープ又はシート13は、気泡含有熱伝導性感圧性接着剤層2のみにより形成された構成を有している。
【0074】
なお、図1(c)で示される基材3の片面に気泡含有熱伝導性感圧性接着剤層2が形成された構成の場合、気泡含有熱伝導性感圧性接着剤層2が形成されていない基材3の他面については、汚れや傷防止のための処理層が形成されていてもいい。たとえば汚れ防止用の処理層としては、汚れを付きにくくするために表面張力の低いシリコーンやフッ素などで基材の表面を処理したものを利用することができる。表面張力としては特に限定されないが、好ましくは50dyne/cm以下、より好ましく40dyne/cm以下、さらに好ましくは30dyne/cm以下である。また、傷防止のための処理層としては、たとえば、えんぴつ硬度の高いハードコート層を形成することができ、たとえばエンピツ硬度H以上、よりこのましくは2H以上、さらに好ましくは3H以上である。
【0075】
図2は、本発明の感圧性接着テープ又はシートの例を部分的に示す概略断面図である。図2において、14、15は、それぞれ、気泡含有熱伝導性基材を有する感圧性接着テープ又はシート、5は気泡含有熱伝導性基材、6は感圧接着剤層である。図2(a)で示される気泡含有熱伝導性基材5を有する感圧性接着テープ又はシート14は、気泡含有熱伝導性基材5の両面に感圧性接着剤層6が形成された構成を有している。図2(b)で示される気泡含有熱伝導性基材5を有する感圧性接着テープ又はシート15は、気泡含有熱伝導性基材5の片面に感圧性接着剤層6が形成された構成を有している。
【0076】
なお、図2(a)や(b)で示される気泡含有熱伝導性基材5を有する感圧性接着テープ又はシートにおいて、感圧性接着剤層6は、気泡含有熱伝導性樹脂組成物により形成された気泡含有熱伝導性感圧性接着剤層であってもよく、その他の感圧性接着剤層であってもよい。また、気泡含有熱伝導性基材を有する基材付き両面粘着テープ又はシート14において、2つの感圧性接着剤層は、同一の感圧性接着剤層であってもよく、異なる感圧性接着剤層であってもよい。すなわち、気泡含有熱伝導性基材を有する基材付き両面粘着テープ又はシート14は、両面側の感圧性接着剤層が、気泡含有熱伝導性感圧性接着剤層である構成、一方の側の感圧性接着剤層が気泡含有熱伝導性感圧性接着剤層であり、且つ、他方の側の感圧性接着剤層が気泡非含有感圧性接着剤層である構成、両面側の感圧性接着剤層が気泡非含有感圧性接着剤層である構成のいずれかの構成を有していてもよい。
【0077】
また、感圧性接着テープ又はシートは、ロール状に巻回された形態で形成されていてもよく、シートが積層された形態で形成されていてもよい。すなわち、本発明の感圧性接着テープ又はシートは、シート状、テープ状などの形態を有することができる。なお、感圧性接着テープ又はシートがロール状に巻回された形態を有している場合、例えば、気泡含有熱伝導性感圧性接着剤層などの感圧性接着剤層を剥離ライナーや基材の背面側に形成された剥離処理層により保護した状態でロール状に巻回することにより作製することができる。
【0078】
(気泡含有熱伝導性樹脂層)
気泡含有熱伝導性樹脂組成物により形成された気泡含有熱伝導性樹脂組成物層 は、前述のように、気泡含有熱伝導性樹脂組成物を用いて、公知の形成方法を利用して形成することができる。例えば、気泡含有熱伝導性樹脂組成物を、所定の面上に塗布し、必要に応じて乾燥や硬化等を行うことにより、気泡含有熱伝導性樹脂組成物層を形成することができる。なお、気泡含有熱伝導性樹脂組成物層の形成に際しては、前述のように、加熱や活性エネルギー光線の照射により、硬化させることが好ましい。すなわち、熱重合開始剤や光重合開始剤などの重合開始剤を含有する気泡含有熱伝導性樹脂組成物を用い、該気泡含有熱伝導性樹脂組成物を、所定の面上に塗布した後、加熱や、活性エネルギー光線の照射を行って、気泡を安定的に保持した状態で硬化させることにより、気泡含有熱伝導性感圧性接着剤層や気泡含有熱伝導性基材等の気泡含有熱伝導性樹脂組成物層を好適に形成することができる。
【0079】
次いで、このような気泡含有熱伝導性樹脂組成物を用いて気泡含有熱伝導性樹脂組成物層を作製する方法について、液状の気泡含有熱伝導性樹脂組成物を用いてコーティングする方法を例に説明する。熱伝導性熱伝導性樹脂組成物層を作製する方法としては、従来広く用いられているコーティング方法を採用することができる。例えば、剥離ライナー上にコーティング液をコーティングし、乾燥した後に別の剥離ライナーを貼り合せして気泡含有熱伝導性樹脂組成物層を作製することができる。
【0080】
本発明における気泡含有熱伝導性樹脂組成物層の形成方法としては、たとえば、ロールコート、キスロールコート、グラビアコート、リバースコート、ロールブラッシュ、スプレーコート、ディップロールコート、バーコート、ナイフコート、エアーナイフコート、カーテンコート、リップコート、ダイコーターなどによる押出しコート法などの方法があげられる。
【0081】
気泡含有熱伝導性樹脂組成物層の厚みとしては、特に制限されず、例えば、100〜5000 μm、 好ましくは200〜4000μm、さらに好ましくは300〜3000μmの範囲から選択することができる。気泡含有熱伝導性樹脂組成物層の厚みが100μmよりも小さいと、クッション性が低下して、曲面や凹凸面に対する接着性が低下し、5000μmよりも大きいと、均一な厚みの層又はシートが得られにくくなる。
【0082】
特に気泡含有熱伝導性樹脂組成物層を感圧性接着剤層として利用する場合、気泡含有熱伝導性感圧性接着剤層の厚みは、例えば100〜3000μm、好ましくは200〜2000μm、さらに好ましくは300〜1000μmの範囲から選択することができる。気泡含有熱伝導性感圧性接着剤層の厚みが100μmよりも小さいと、気泡径が厚みより大きくなる場合があり、接着面積の減少により接着性が低下し、また気泡含有熱伝導性感圧性接着剤層の厚みが3000μmよりも大きいと、接着力が大きくなり、再剥離する場合に粘着剤の凝集破壊が起こりやすくなる恐れがある。
【0083】
また気泡含有熱伝導性樹脂組成物層を基材として利用する場合、気泡含有熱伝導性基材の厚みは、例えば300〜5000μm、好ましくは400〜4000μm、さらに好ましくは500〜3000μmの範囲から選択することができる。気泡含有熱伝導性基材の厚みが300μmよりも小さいと、曲面や凹凸面に対するクッション性が低下し、5000μmよりも大きいと基材の剛性が強くなり、シートを曲げたり湾曲させたりすることが難しくなったり、シートを加工したりする際の切断作業性が低下する恐れがある。
【0084】
なお、気泡含有熱伝導性樹脂層は、単層、複層のいずれの形態を有していてもよい。
【0085】
(基材)
気泡含有熱伝導性感圧性接着剤層を有する感圧性接着テープ又はシートにおいて、基材が本発明の気泡含有熱伝導性基材以外の基材である場合、基材としては、例えば、紙などの紙系基材;布、不職布、ネットなどの繊維系基材;金属箔、金属板などの金属系基材;プラスチックのフィルムやシートなどのプラスチック系基材;ゴムシートなどのゴム系基材;発泡シートなどの発泡体やこれらの積層体(特に、プラスチック系基材と他の基材との積層体や、プラスチックフィルム(又はシート)同士の積層体など)等の適宜な薄葉体を用いることができる。このようなプラスチックのフィルムやシートにおける素材としては、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)等のα−オレフィンをモノマー成分とするオレフィン系樹脂; ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等のポリエステル系樹脂; ポリ塩化ビニル(PVC);酢酸ビニル系樹脂;ポリフェニレンスルフィド(PPS);ポリアミド( ナイロン)、全芳香族ポリアミド(アラミド)等のアミド系樹脂;ポリイミド系樹脂;ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)などが挙げられる。これらの素材は単独で又は2 種以上組み合わせて使用することができる。
【0086】
なお、基材として、プラスチック系基材が用いられる場合は、延伸処理等により伸び率などの変形性を制御してもよい。また、基材としては、気泡含有熱伝導性感圧性接着剤層が活性エネルギー光線による硬化により形成される場合は、活性エネルギー光線の透過を阻害しないものを使用することが好ましい。
【0087】
基材の厚さは、強度や柔軟性、使用目的などに応じて適宜に選択でき、例えば、一般的には1000μm以下であり、例えば1〜1000μm、好ましくは1〜500μm 、さらに好ましくは3〜300μm程度であるが、これらに限定されない。なお、基材は単層の形態を有していてもよく、積層された形態を有していてもよい。
【0088】
基材の表面は、気泡含有熱伝導性感圧性接着剤層等との密着性を高めるため、慣用の表面処理、例えば、コロナ処理、クロム酸処理、オゾン暴露、火炎暴露、高圧電撃暴露、イオン化放射線処理等の化学的又は物理的方法による酸化処理等が施されていてもよく、下塗り剤や剥離剤等によるコーティング処理等が施されていてもよい。
【0089】
(感圧性接着剤層)
気泡含有熱伝導性感圧性接着剤層及び/ 又は気泡含有熱伝導性基材を有する感圧性接着テープ又はシートにおいて、感圧性接着剤層として本発明の気泡含有熱伝導性感圧性接着剤層以外の感圧性接着剤層(非気泡含有熱伝導性感圧性接着剤層)を有する場合(例えば、基材の一方の面に気泡含有熱伝導性感圧性接着剤層が形成され、且つ基材の他方の面に非気泡含有熱伝導性感圧性接着剤層が形成されている、基材付き両面粘着テープ又はシートである場合)、前記非気泡含有熱伝導性感圧性接着剤層は、公知の感圧性接着剤(例えば、アクリル系感圧性接着剤、ゴム系感圧性接着剤、ビニルアルキルエーテル系感圧性接着剤、シリコーン系感圧性接着剤、ポリエステル系感圧性接着剤、ポリアミド系感圧性接着剤、ウレタン系感圧性接着剤、フッ素系感圧性接着剤、エポキシ系感圧性接着剤など)を用いて、公知の感圧性接着剤層の形成方法を利用して形成することができる、また、非気泡含有熱伝導性感圧性接着剤層の厚みは、特に限定されず、目的や使用方法などに応じて適宜選択することができる。
【0090】
(剥離ライナー)
本発明では、気泡含有熱伝導性感圧性接着剤層や非気泡含有熱伝導性感圧性接着剤層等の感圧性接着剤層の接着面(粘着面) を保護するために、剥離ライナーが用いられていてもよい。すなわち、剥離ライナーは必ずしも設けられていなくてもよい。なお、剥離ライナーは、該剥離ライナーにより保護されている接着面を利用する際に(すなわち、剥離ライナーにより保護されている感圧性接着剤層に被着体を貼着する際に) 剥がされる。
【0091】
このような剥離ライナーとしては、慣用の剥離紙などを利用できる。具体的には、剥離ライナーとしては、例えば、剥離処理剤による剥離処理層を少なくとも一方の表面に有する基材の他、フッ素系ポリマー( 例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン− ヘキサフルオロプロピレン共重合体、クロロフルオロエチレン− フッ化ビニリデン共重合体等) からなる低接着性基材や、無極性ポリマー( 例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン系樹脂など) からなる低接着性基材などを用いることができる。なお、剥離ライナーは、気泡含有熱伝導性感圧性接着剤層を支持するための基材として用いることも可能である。
【0092】
剥離ライナーとしては、例えば、剥離ライナー用基材の少なくとも一方の面に剥離処理層が形成されている剥離ライナーを好適に用いることができる。このような剥離ライナー用基材としては、ポリエステルフィルム(ポリエチレンテレフタレートフィルム等)、オレフィン系樹脂フィルム(ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム等) 、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリイミドフィルム、ポリアミドフィルム(ナイロンフィルム)、レーヨンフィルムなどのプラスチック系基材フィルム(合成樹脂フィルム)や紙類(上質紙、和紙、クラフト紙、グラシン紙、合成紙、トップコート紙など)の他、これらを、ラミネートや共押し出しなどにより、複層化したもの(2〜3層の複合体) 等が挙げられる。
【0093】
一方、剥離処理層を構成する剥離処理剤としては、特に制限されず、例えば、シリコーン系剥離処理剤、フッ素系剥離処理剤、長鎖アルキル系剥離処理剤などを用いることができる。剥離処理剤は単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0094】
なお、剥離ライナーの厚さや、形成方法などは、特に制限されない。
【0095】
本発明において、気泡含有熱伝導性樹脂組成物層の熱伝導率は、0.25W/mK以上、好ましくは0.30W以上、さらに好ましくは0.50W/mK以上であることが望ましい(通常、20W/mK以下)。気泡含有熱伝導性樹脂組成物層の熱伝導率が0.25W/mK未満であると、熱伝導性が小さいため、熱伝導シートとしての機能が十分に発揮できない場合がある。
【0096】
本発明において、気泡含有熱伝導性樹脂組成物層は、アスカーC硬度が50以下、好ましくは45以下、より好ましくは40以下(通常は0以上)であることが望ましい。アスカーC硬度が50よりも大きいと、凹凸面や曲面への追従性が低下し、被着体との密着性が悪くなり、熱伝導性が低下する。
【0097】
本発明において、気泡含有熱伝導性樹脂組成物層は、初期厚みの50%に圧縮する時の応力(以下、50%圧縮応力)が200N/cm2以下、好ましくは150N/cm2以下、より好ましくは100N/cm2以下(通常は10N/cm2以上)であることが望ましい。50%圧縮応力を100N/cm2以下とすることで、実際に回路基板とヒートシンクなどの冷却板との間に挿入しネジ止めなどで圧縮固定される際に、気泡含有熱伝導性樹脂組成物層が容易に圧縮変形し、凹凸追従性に優れる。さらに気泡含有熱伝導性樹脂組成物層内の熱伝導性粒子同士が通常よりも接近することにより熱伝導性の向上も期待できる。一方、50%圧縮応力が200N/cm2よりも大きいと、実際に回路基板とヒートシンクなどの冷却板との間に挿入しネジ止めなどで圧縮固定される際に、気泡含有熱伝導性樹脂層の圧縮性が悪く、反発応力が残った状態で使用されるため不安定となりやすい。
【0098】
本発明において、気泡含有熱伝導性樹脂組成物層は、体積抵抗率(ASTM D-257)が1×1010Ωcm以上、好ましくは5×1010Ωcm以上、さらに好ましくは1×1011Ωcm以上(通常1×1020Ωcm以下)であることが望ましい。電気絶縁性が1×1010Ωcm以上であれば、十分な電気絶縁性を有する熱伝導性樹脂組成物を構成することができる。
【0099】
また本発明において、気泡含有熱伝導性樹脂組成物層を気泡含有熱伝導性感圧性接着剤層として用いた場合、感圧性接着テープ又はシートにおける気泡含有熱伝導性感圧性接着剤層面の、SUS板に対する粘着力(180°ピール、引っ張り速度300mm/分)は、0.5N/20mm以上、好ましくは1.0N/20mm以上、より好ましくは3.0N/20mm以上であることが望ましい(通常は20N/20mm以下)。気泡含有熱伝導性感圧性接着剤層面の粘着力が0.5N/20mm以上であれば、被着体と十分に密着し、接触界面でのなじみが良く、接触熱抵抗が抑えられるため、熱伝導性が向上する。また感圧性接着テープ又はシートをヒートシンクや回路基板などに貼り付けて仮接着させることもできる。一方、粘着力が20N/20mmより大きくなると、貼り合せミス(位置ズレ)した場合の貼りなおし(リワーク性)や使用済みの製品を廃棄する際に被着体から熱伝導部材を剥離する(リペア性)が難しくなる場合がある。
【実施例】
【0100】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に
より何ら限定されるものではない。
【0101】
(実施例1)
モノマー成分として、2−エチルヘキシルアクリレート90重量部及びアクリル酸10重量部が混合されたモノマー混合物に、光重合開始剤として、商品名「イルガキュアー651」( チバ・ジャパン社製)0.05重量部、商品名「イルガキュアー184」(チバ・ジャパン社製)0.05重量部を配合した後、粘度(BH粘度計No.5ローター、10rpm、測定温度30℃)が約15Pa・sになるまで紫外線を照射して、一部が重合した組成物(シロップ)を作製した。
【0102】
このシロップに多官能モノマーとして、1,6−ヘキサンジオールジアクリレートを0.1重量部、分散剤として、商品名「プライサーフA212E」(第一工業製薬社製)1重量部、フッ素系界面活性剤として、商品名「サーフロンS−393」(側鎖にポリオキシエチレン基及びフッ素化炭化水素基を有するアクリル系共重合体、Mw=8300)(セイケミカル社製)0.3重量部、酸化防止剤として、商品名「イルガノックス1010」(BASFジャパン社製)0.5重量部と添加した。さらに、熱伝導性粒子として、酸化アルミ粉末である商品名「アルナビーズCB−A50S」(形状:球状、粒径:50μm)(昭和電工社製)150重量部、熱伝導性粒子として、熱伝導酸化アルミ粉末である商品名「アルミナAS−50」(形状:粒子状、粒径:9μm)(昭和電工社製)150重量部を添加し、前駆体組成物を作製した。前記前駆体組成物を、中央部に貫通孔をもった円盤上に、細かい歯が多数ついたステータと、歯のついているステータとを対向しており、円盤上にステータと同様の細かい歯がついているローターとを備えた装置を用いて窒素を導入し気泡を混合した。気泡の混合量は吐出してきた液全体積に対して、約20体積%となるように導入し、気泡混合熱伝導性樹脂組成物を得た。
【0103】
該気泡混合熱伝導性樹脂組成物を径が19mm、長さ約1.5mのチューブにてロールコーターへ導き、片面に剥離処理が施されているポリエチレンテレフタレート製基材の剥離処理面の間に、前記気泡混合熱伝導性樹脂組成物を、乾燥及び硬化後の厚さが1.0mmとなるように塗布した。つまりポリエチレンテレフタレート製基材の間に気泡混合熱伝導性樹脂組成物を挟み込んでいる。ついで照度約5mW/cm2の紫外線を両面から3分間照射し、気泡混合熱伝導性樹脂組成物を硬化させて、気泡混合熱伝導性樹脂組成物による感圧性接着剤層を有する感圧性接着シートを作製した。
【0104】
(実施例2)
熱伝導性粒子として、水酸化アルミ粉末である商品名「ハイジライトH−32」(形状:破砕状、粒径:8μm)(昭和電工社製)150重量部添加した以外は実施例1と同様の処方で感圧性接着シートを作製した。
【0105】
(実施例3)
モノマー成分として、アクリル酸2−エチルヘキシル80重量部、ヒドロキシエチルアクリルアミド1.5重量部、N−ビニルピロリドン7重量部およびアクリル酸2−メトキシエチル11.5重量部が混合されたモノマー混合物に、光重合開始剤として、商品名「イルガキュアー651」(チバ・ジャパン社製)0.05重量部、商品名「イルガキュアー184」(チバ・ジャパン社製)0.05重量部を配合した後、粘度(BH粘度計No.5ローター、10rpm、測定温度3 0℃)が約15Pa・sになるまで紫外線を照射して、一部が重合した組成物(シロップ)を作製した。
【0106】
このシロップに架橋剤として、ジペンタエリストロールヘキサアクリレートを0.05重量部、分散剤として、商品名「プライサーフA212E」(第一工業製薬社製)1.5重量部、フッ素系界面活性剤として、商品名「サーフロンS−393」(側鎖にポリオキシエチレン基及びフッ素化炭化水素基を有するアクリル系共重合体、Mw=8300)( セイケミカル社製)1.0重量部を添加した。さらに、熱伝導性粒子として、水酸化アルミ粉末である商品名「ハイジライトH−32」(形状:破砕状、粒径:8μm)(昭和電工社製)175重量部、熱伝導性粒子として、水酸化アルミ粉末である商品名「ハイジライトH−10」(形状:破砕状、粒径:55μm)(昭和電工社製)175重量部を添加し、前駆体組成物を作製した。前記前駆体組成物を、中央部に貫通孔をもった円盤上に、細かい歯が多数ついたステータと、歯のついているステータとを対向しており、円盤上にステータと同様の細かい歯がついているローターとを備えた装置を用いて窒素を導入し気泡を混合した。気泡の混合量は吐出してきた液全体積に対して、約20体積%となるように導入し、気泡混合熱伝導性樹脂組成物を得た。
【0107】
上記気泡混合熱伝導性樹脂組成物を用いた以外は実施例1と同様の処方で感圧性接着シートを作製した。
【0108】
(比較例1)
熱伝導性粒子を添加せずに作製した気泡混合熱伝導性樹脂組成物を用いた以外は実施例1と同様の処方で感圧性接着シートを作製した。
【0109】
(比較例2)
気泡を混合せずに前駆体組成物をそのまま用いた以外は実施例1と同様の処方で感圧性接着シートを作製した。
【0110】
(比較例3)
(アクリルポリマー溶液の調整)
冷却管、窒素導入管、温度計および攪拌機を備えた反応容器を用い、アクリル酸ブチル70重量部、2−エチルヘキシルアクリレート30重量部、アクリル酸3重量部、4−ヒドロキシブチルアクリレート0.05重量部、2,2′−アゾビスイソブチロニトリル(開始剤)0.1重量部、トルエン(溶媒)155重量部を加え、系内を十分窒素ガスで置換した後、80℃で3時間加熱して固形分が40.0重量%のアクリルポリマー溶液を得た。
【0111】
(熱伝導性樹脂組成物の調整)
上記アクリルポリマー溶液100重量部(固形分)に、粘着付与樹脂としてロジン系樹脂である商品名「ペンセルD−125」(荒川化学社製)30重量部、熱伝導性粒子として、水酸化アルミ粉末である商品名「ハイジライトH−32」(形状:破砕状、粒径:8μm)(昭和電工社製)100重量部、分散剤として、商品名「プライサーフA212E」(第一工業製薬社製)1重量部と、架橋剤として、多官能イソシアネート化合物である商品名「コロネートL」(日本ポリウレタン工業社製)2重量部を配合し、ディスパーにて15分間攪拌し、熱伝導性樹脂組成物を調整した。
【0112】
(熱伝導性シートの作製)
得られた熱伝導性樹脂組成物をポリエチレンテレフタレートの片面をシリコーン剥離剤で処理した剥離ライナーの剥離処理面に乾燥後の厚みが45μmとなるよう塗布し、70℃で15分間乾燥して熱伝導性層を得た。基材としてのポリエチレンテレフタレートフィルムである商品名「ルミラーS10」(12μm厚さ)(東レ社製)の両面に当該熱伝導性層を貼りあわせ、総厚が102μmからなる熱伝導性両面接着シートを作製した。
【0113】
(試験評価)
実施例、比較例で得た感圧性接着シートについて以下の試験を行った。試験結果を表1に示す。
【0114】
(熱伝導率・熱抵抗)
熱伝導率の測定は、図3に示す熱特性評価装置を用いて行った。
具体的には、1辺が20mmの立方体となるように形成されたアルミニウム製(A5052、熱伝導率:140W/m・K)の一対のロッドL間に、各実施例及び比較例の感圧性接着シートS(20mm×20mm)を挟み込み、一対のロッドLを接着シートではり合わせた。
そして、一対のロッド上が上下となるように発熱体(ヒーターブロック)Hと放熱体(冷却水が内部を循環するように構成された冷却ベース板)Cとの間に配置した。具体的には、上側のロッドL上に発熱体Hを配置し、下側にロッドLの下に放熱体Cを配置した。
この際、接着シートSで貼りあわされた一対のロッドLは、発熱体および放熱体を貫通する一対の圧力調整用ネジTの間に位置している。なお、圧力調整用ネジTと発熱体Hとの間にはロードセルRが配置されており、圧力調整用ネジTを締めこんだ際の圧力が測定されるように構成されており、斯かる圧力を接着シートSに加わる圧力として用いた。
また、下側のロッドLおよび接着シートSを放熱体C側から貫通するように接触式変位計の3本のプローブP(直径1mm)を設置した。この際、プローブPの上端部は、上側のロッドLのした面に接触した状態になっており、上下のロッドL間の間隔(接着シートSの厚み)を測定可能に構成されている。
発熱体Hおよび上下のロッドLには温度センサーDを取り付けた。具体的には、発熱体Hの1箇所、各ロッドLの上下方向に5mm間隔で5箇所、温度センサーDを取り付けた。
【0115】
測定はまず初めに、圧力調整用ネジTを締めこんで、接着シートSに圧力を加え、発熱体Hの温度を80℃に設定するともに、放熱体Cに20℃の冷却水を循環させた。
そして、発熱体Hおよび上下のロッドLの温度が安定した後、上下のロッドLの温度を各温度センサーDで測定し、上下のロッドLの熱伝導率(W/m・K)と温度勾配から接着シートSを通過する熱流束を算出するとともに、上下のロッドLの接着シートSとの界面の温度を算出した。そして、これらを用いて当該圧力における熱伝導率(W/m・K)および熱抵抗(cm2・K/W)を熱伝導率方程式(フーリエの法則)を用いて算出した。
Q=−λgradT
R=L/λ

Q:単位面積あたりの熱流速
gradT:温度勾配
L:シートの厚み
λ:熱伝導率
R:熱抵抗
今回、接着シートSに加える圧力25N/cm2(250kPa)における熱伝導率と熱抵抗を用いた。
【0116】
(接着力)
各実施例、比較例で作製した感圧性接着シートの片面の剥離ライナーを剥がして、厚さ25μmのPETフィルムを貼り合わせ、これを幅20mm、長さ150mmに切断し評価用サンプルとした。評価用サンプルから残りの剥離フィルムを剥がし、23℃、50%RH雰囲気下、SUS304鋼板に2kgローラー1往復により貼り付けた。23℃で30分間養生した後、万能引張試験機『TCM−1kNB』(ミネベア社製)を用い、剥離角度180°、引っ張り速度300mm/分で剥離試験を行い、接着力を測定した。
【0117】
(アスカーC硬度)
各実施例、比較例で作製した感圧性接着シートを幅20mm、長さ20mmに切断し、厚さが4mmになるように積層させたものを評価用サンプルとした。アスカーC硬度計(高分子計器社製)にて、23℃、50%RH雰囲気下におけるアスカーC硬度を測定した。
【0118】
(50%圧縮応力)
各実施例、比較例で作製した感圧接着性シートを幅20mm、長さ20mmに切断し、厚さが3mmになるように積層させたものを評価用サンプルとした。引張圧縮万能試験機(ミネベア社製)を用いて10mm/minの速度で、初期値の厚みを50%圧縮した際におけるピーク圧力を、圧縮応力として測定した。
【0119】
(密着性評価)
各実施例、比較例で作製した感圧性接着シートの片面の剥離ライナーを剥がして、厚さ2mmのガラスエポキシ板を貼り合わせ、これを幅20mm、長さ140mmに切断し評価用サンプルとした。アクリル板上に上部と底部の差が110μmある段差(幅20mm)を20mm間隔で4つ設置したものを密着性試験冶具とした(図4参照)。110μm段差の間を橋渡しするようにしてサンプルの感圧性接着剤層面を軽く貼り付けた後、ガラスエポキシ板側から5kgローラで片道圧着した。その後、感圧性接着シート(2面側)がアクリル板へ密着した面積をアクリル板側より画像データとして観察し、画像処理ソフト 商品名「Scion Image」(Scion社製)により密着率を算出した。
【0120】
【表1】

【0121】
実施例1〜3の感圧性接着シートは、アクリル系ポリマーをベースポリマーとし、熱伝導性粒子と気泡を有する気泡含有熱伝導性樹脂組成物層を感圧性接着剤層として有する構成であるので、高い接着性と低い圧縮応力、硬度を達成しており、その結果、高い熱伝導性と凹凸面への追従性に優れる感圧性接着テープが得られることが分かる。
一方、比較例1は熱伝導性粒子が含まれていないため、熱伝導性に劣り、比較例2、比較例3は、気泡を混入していないため50%圧縮応力が高く、アスカーC硬度も高く硬いため、凹凸面への追従性に劣る。
【符号の説明】
【0122】
1 気泡含有熱伝導性感圧性接着剤層を有する感圧性接着テープ又はシート
1 1 気泡含有熱伝導性感圧性接着剤層を有する感圧性接着テープ又はシート
1 2 気泡含有熱伝導性感圧性接着剤層を有する感圧性接着テープ又はシート
1 3 気泡含有熱伝導性感圧性接着剤層を有する感圧性接着テープ又はシート
1 4 気泡含有熱伝導性基材層を有する感圧性接着テープ又はシート
1 5 気泡含有熱伝導性基材層を有する感圧性接着テープ又はシート
2 気泡含有熱伝導性感圧性接着剤層
3 基材(非気泡含有熱伝導性基材)
4 感圧性接着剤層(非気泡含有熱伝導性感圧性接着剤層)
5 気泡含有熱伝導性基材層
6 感圧性接着剤層


【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、(a)(メタ)アクリル酸アルキルエステルを単量体主成分とするアクリル系ポリマー、(b)熱伝導性粒子、(c)気泡、を含有する気泡含有熱伝導性樹脂組成物層。
【請求項2】
熱伝導率が0.30W/mK以上であることを特徴とする、請求項1記載の気泡含有熱伝導性樹脂組成物層。
【請求項3】
アスカーC硬度が50以下であることを特徴とする、請求項1または2に記載の気泡含有熱伝導性樹脂組成物層。
【請求項4】
気泡の含有量が5〜50体積%であることを特徴とする、請求項1〜3の何れか1項に記載の気泡含有熱伝導性樹脂組成物層。
【請求項5】
前記(b)熱伝導性粒子として、1次平均粒子径が10μm以上の粒子と10μm未満の粒子とを1:10〜10:1(重量比)の割合で含有することを特徴とする、請求項1〜4の何れか1項に記載の気泡含有熱伝導性樹脂組成物層。
【請求項6】
請求項1〜5の何れか1項に記載の気泡含有熱伝導性樹脂組成物層の製造方法であって、
少なくとも、(a´)(メタ)アクリル酸アルキルエステルを単量体主成分とするモノマー混合物又はその部分重合物、(b)熱伝導性粒子、(c)気泡、を含有する気泡含有熱伝導性樹脂組成物に、活性エネルギー光線を照射して気泡含有熱伝導性樹脂組成物層を形成することを特徴とする、気泡含有熱伝導性樹脂組成物層の製造方法。
【請求項7】
感圧性接着剤層として利用可能である、請求項1〜5の何れか1項に記載の気泡含有熱伝導性樹脂組成物層。
【請求項8】
基材として利用可能である、請求項1〜5の何れか1項に記載の気泡含有熱伝導性樹脂組成物層。
【請求項9】
感圧性接着剤層を有している感圧性接着テープ又はシートであって、感圧性接着剤層が、請求項7に記載の気泡含有熱伝導性樹脂組成物層により形成されている感圧性接着テープ又はシート。
【請求項10】
基材の少なくとも一方の面に感圧性接着剤層を有している感圧性接着テープ又はシートであって、基材が、請求項8記載の気泡含有熱伝導性樹脂組成物により形成されている感圧性接着テープ又はシート。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−102301(P2012−102301A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−254341(P2010−254341)
【出願日】平成22年11月13日(2010.11.13)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】