説明

気泡発生装置および気泡発生方法

【課題】簡単に径が均一な微細気泡を水などの液体中に発生させる気泡発生装置および気泡発生方法を提供する。
【解決手段】液体80中には第1の電極20と第2の電極30とが設置されている。第2の電極30を接地し、第1の電極20を電源40に接続して交流電圧またはパルス電圧を印加すると、第1の電極20から微細な気泡が発生して液体80中に拡がっていく。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気泡発生装置及び気泡発生方法に関し、特に液体の中に微細な気泡を発生させる気泡発生装置および気泡発生方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液体中に分散させた微細な気泡は、直径が数百μm以上である通常目視されるの気泡に比べて、体積に対して比表面積が大きく液中の滞在時間が長いなどの特徴を有している。このような特徴を生かして、浄化・殺菌・消毒、液相化学反応器、溶液中の有害物質除去、ドラッグデリバリー、血液の造影剤、摩擦抵抗の低減など様々な分野において微細気泡は利用されている。例えば、気泡の直径が50μm以下の微細気泡はマイクロバブルと呼ばれ、気泡内の気体が周囲の液相に溶け込むことによって直径が減少するため、表面張力の効果により内部が高圧・高温になり、気泡の消滅時にOHラジカル等酸化力の高いフリーラジカルと圧力波を生じることが知られている(例えば非特許文献1参照)。さらに気泡直径が1μmよりも小さく数十〜数百nmのサイズの微細気泡は、ナノバブルと呼ばれている。
【0003】
このような微細気泡を作製する方法として、例えば特許文献1には、被処理水の導入管の加圧ポンプの吸い込み側にエゼクタを設けオゾンガスを吸引して混合する手段と、オゾン混合水を加圧ポンプで圧入してオリフィスアトマイザから溶解槽に噴射してオゾンガスを微細気泡とする手段と、噴射されたオゾン混合水が滞留する内槽を具備した溶解槽とからなる加圧式オゾン処理装置を用いる方法が開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、気体供給口を液体中に設けた微細管の該気体供給口から液中に供給される気体が完全な気泡を生成する前に、該気体と該液体の気液界面に超音波を付与することで、気液界面から連続的に複数の微小気泡を生成させる方法が開示されている。
【0005】
さらに特許文献3には、微小気泡発生装置により生成させたマイクロバブルに物理的刺激を加えることにより、このマイクロバブルを急激に縮小させてナノバブルを生成させる方法が開示されている。
【0006】
特許文献4には常圧下において発生時に略30μm以下の気泡径を有し、発生後は所定の寿命を持って徐々に微細化し、消滅・溶解する微細気泡の生成方法およびメカニズムや物理化学的性質・機能等が開示されている。
【特許文献1】特開平10−225696号公報
【特許文献2】特開2002−113340号公報
【特許文献3】特開2005−245817号公報
【特許文献4】特開2003−143885号公報
【特許文献5】特開2005−74369号公報
【特許文献6】特開2005−108600号公報
【特許文献7】再公表2004/094306号公報
【非特許文献1】「水の特性と新しい利用技術」、株式会社エヌ・ティー・エス、2004年
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述の特許文献1〜4に開示された方法により作製された微細気泡は気泡径にばらつきが生じ、径の大きさに分布が生じてしまうという問題があった(例えば特許文献4参照)。また、微細気泡を生成させる装置が大型であったり生成に手間がかかったりするという問題もあった。
【0008】
特許文献5に開示された方法では、微細気泡の径を均一にするために水の粘度の10倍以上の粘度を有する液体を用いているが、このような液体はある種のシリコンオイル等特殊な液体であり、微細気泡を分散させたい液体として特に需要の高い水にはこの方法は使えない。
【0009】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、簡単に径が均一な微細気泡を水などの液体中に発生させる気泡発生装置および気泡発生方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するため、本発明の気泡発生装置は、液体の中に微細な気泡を発生させる気泡発生装置であって、液体に接触する第1及び第2の電極と、前記第1及び第2の電極の間に交流電圧またはパルス電圧を印加する電源とを備えた構成とした。ここで微細気泡とは、気泡径が1μm以上50μm以下のマイクロバブルおよび気泡径が1μm未満のナノバブルのことをいう。また、交流電圧には電圧波形が三角波や鋸波、複合波である電圧も含まれる。
【0011】
上記構成によって、液体に接触する2つの電極間に交流電圧またはパルス電圧を印加することにより電極から液体中に気泡が発生し、気泡径は交流電圧の周波数またはパルス電圧のパルス幅に応じたものとなる。
【0012】
前記第1の電極は、絶縁被覆されている部分と導電体が露出している部分とを有しており、少なくとも前記導電体が露出している部分は、前記液体に接触している構成であってもよい。さらに、前記第1の電極は線状であって、先端以外は絶縁被覆されており、先端は導電体が露出していてもよい。
【0013】
前記第2の電極は接地電極であってもよい。
【0014】
前記第2の電極の少なくとも前記液体と接触している部分は絶縁被覆されていてもよい。
【0015】
前記交流電圧の周波数は10Hz以上500kHz以下または前記パルス電圧のパルス幅は5nsec以上50msec以下であることが好ましい。
【0016】
前記液体には極性基を有する分子が含まれていてもよい。
【0017】
前記気泡の径は、100nm以上50μm以下であってもよい。
【0018】
本発明の気泡発生方法は、液体の中に微細な気泡を発生させる気泡発生方法であって、液体に第2つの電極を接触させる工程と、前記2つの電極の間に交流電圧またはパルス電圧を印加する電圧印加工程とを含む構成とした。
【0019】
前記交流電圧の周波数は10Hz以上500kHz以下または前記パルス電圧のパルス幅は5nsec以上50msec以下であることが好ましい。
【0020】
前記液体には極性基を有する分子が含まれていてもよい。
【0021】
前記2つの電極のうち少なくとも一方から微細気泡が液体中に噴出し液体に流れを生成させてもよい。
【0022】
前記気泡の径は、100nm以上50μm以下であってもよい。
【0023】
前記液体は水であり、水素ガスを含む気泡が分散している水を生成させてもよい。この時、前記電圧印加工程では負電圧のピーク電圧を有するパルス電圧を印加することが好ましい。
【0024】
前記液体は水であり、酸素ガスを含む気泡が分散している水を生成させてもよい。この時、前記電圧印加工程では正電圧のピーク電圧を有するパルス電圧を印加することが好ましい。
【0025】
前記電圧印加工程では、少なくとも1つの前記電極からプラズマが発生していてもよい。
【発明の効果】
【0026】
液体に接触する2つの電極間に交流電圧またはパルス電圧を印加させるという簡単な装置構成により、微細であって径の均一な気泡を液体中に発生させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の図面においては、説明の簡潔化のため、実質的に同一の機能を有する構成要素を同一の参照符号で示す。
【0028】
(実施形態1)
実施形態1に係る気泡発生装置は、図1に示すように、液体80の中に第1の電極20と第2の電極30とを挿入したものである。液体80は容器10の中に入れられている。
【0029】
本実施形態の気泡発生装置1はさらに電源40を備えており、この電源40は第1の電極20に接続されているとともに接地線50により接地されている。また、第2の電極30も接地線50により接地されている。電源40から第1の電極20および第2の電極30の間に交流電圧あるいはパルス電圧を印加すると、第1の電極20から微細な気泡が発生するのが目視により観察される。
【0030】
第1の電極20および第2の電極30は、図2に示すように線状の導電性部材21の表面に絶縁体または誘電体からなる被覆22が施されている構成を有している。導電性部材21は金属やカーボン、有機導電性材料など導電性を有していればどのようなものであっても構わない。本実施形態では銅線としている。また、第1の電極20の液体80中に浸漬されている部分の先端は被覆22により覆われておらず、導電性部材21が露出している。このような構成により、電界が集中する第1の電極20の先端から気泡が発生する。
【0031】
被覆22を構成する絶縁体は、PFAやPTFE、FEPなどのフッ素樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂などの電気絶縁性のポリマー、あるいはダイヤモンドライクカーボン(DLC)のような電気絶縁性の無機物などを挙げることができる。また、被覆22を構成する誘電体としては、チタン酸バリウムなどの誘電率が高い物質を挙げることができる。被覆22を構成する絶縁体・誘電体は、電気絶縁性、耐熱性、耐衝撃性が大きい物質のほうが好ましい。本実施形態ではポリウレタン樹脂により被覆22を形成した。
【0032】
電源40は交流電圧あるいはパルス電圧を印加するものであるが、第1の電極20の形状や材質、長さなど、第1の電極20と第2の電極30との距離、液体80の種類や温度等々で気泡が発生するかしないかということ及び気泡発生の速度が大きく影響されるため、交流電圧あるいはパルス電圧の周波数や電圧の大きさは特に限定されない。パルス電圧は図3に示すように、極性の変わる(+から−、または−から+)パルス、あるいは0Vから+側あるいは−側のいずれかへ立ち上がるパルスが好ましく、パルス電圧が時間的に連続して供給されると気泡が連続して発生するので、好ましい。なお、このように極性が変わり連続して供給されるパルス電圧は、方形波の交流電圧とも言える。
【0033】
なお、電源40の周波数や電圧は特に限定されないと上で述べたが、発生する気泡径は周波数あるいはパルス幅に依存して変化する。即ち、周波数が高いあるいはパルス幅が小さいと気泡径が小さくなり、周波数が低いあるいはパルス幅が大きいと気泡径が大きくなる。従って、いわゆるマイクロバブルやナノバブルを発生させるには、周波数は10Hz〜100kHzであることが好ましい。電圧は、気泡の発生量の観点から1V〜500kVであることが好ましく、装置の扱いやすさの点で1V〜20kVが好ましい。また、電源40により交流電圧またはパルス電圧が第1の電極20に印加された際の第1の電極20近辺の電界強度は、10V/m以上1010V/m以下が好ましい。
【0034】
液体80は電気分解される物質を含んでいることが好ましい。電気分解される物質を含んでいると、本実施形態の気泡発生装置1では、2つの電極20,30間に交流電圧またはパルス電圧を印加することによって電気分解が行われ、電気分解により生じた気体が微細な気泡として液体80中に分散していく。本実施形態では交流電圧あるいはパルス電圧を印加して電気分解が行われているので、気体は交流の半周期またはパルス幅の時間に発生しこれが気泡となる(交流の次の半周期では別種の気体が発生することがある)。そして気泡が帯電しているので、第1の電極20周りの電界によって第1の電極20から離脱していく。あるいは電界により駆動された水の流れにより第1の電極20から離脱していく。このようなメカニズムにより微細な気泡を発生させることができると共に、その気泡径も周波数あるいはパルス幅によってコントロールすることができる。
【0035】
液体80に含まれる電気分解される物質は、極性基を有している物質であり、例えば水、アルコール、アミン、酸(無機酸、有機酸)などを例示できる。なお、液体80中に電気分解される物質が含まれていなくても第1の電極20の周囲に誘電体バリア放電などによってプラズマが発生するようにすると、液体80を構成する物質がそのプラズマによって物理的化学的変化を起こし、気泡が発生する。また、液体80中に電気分解される物質が含まれていてもプラズマによる気泡の発生は生じる。従って、本実施形態の気泡発生装置を用いれば、液体80を構成する分子の極性の有無や液体80の粘度などによらず液体80中で気泡を発生させることができる。プラズマによって気泡が発生するときも、交流電圧の周波数あるいはパルス電圧のパルス幅によって気泡の径が決まる。即ち、周波数が高いあるいはパルス幅が小さいと気泡径が小さくなり、周波数が低いあるいはパルス幅が大きいと気泡径が大きくなる。また、周波数が高いあるいはパルス幅が小さいと気泡径のばらつきは小さく、周波数が低いあるいはパルス幅が大きいと気泡径のばらつきが大きくなる。ここ発生するで気泡の径が均一であるかどうかの目安であるが、平均の気泡径をTとしたときに、個数にして80%以上の気泡の径が0.1T〜10Tの範囲内にあればほぼ均一であるとみなすことができる。90%以上が上記範囲内にあれば均一性が高く、好ましい。
【0036】
液体80を入れる容器10は電気絶縁性の物質により構成されていることが好ましい。
【0037】
次に本実施形態の気泡発生装置1を用いた気泡を発生させる方法を説明する。
【0038】
まず絶縁性の容器10を用意する。その容器10の中に第2の電極30を設置する。それから容器10の中に液体80を入れる。第2の電極30は接地しておく。
【0039】
次に液体80の中に第1の電極20を入れる。この時第2の電極30に第1の電極20が接触しないように第1の電極20の位置を調整する。
【0040】
それから第1の電極20に電源40を接続し、交流電圧またはパルス電圧を印加する。交流電圧またはパルス電圧が印加されることによって第1の電極20の先端から液体80中に気泡が発生する。気泡は電界の力を受けて第1の電極20から高速で離れていき、液体80中に流れを生成させる。交流電圧の周波数またはパルス電圧のパルス幅は所望する気泡径に応じて調節する。また、電圧条件を調節することにより第1の電極20から同時にプラズマを発生させることもできる。プラズマが発生するとパルス状の電流が流れ、また発光するため、プラズマの発生は容易に確認できる。なお、以上説明した現象は目視によるものであるので、微視的には第1の電極20の被覆22によって覆われている部分や第2の電極30から微細な気泡が発生している可能性もある。
【0041】
電圧印加を止めると気泡の発生も止まる。なお、電圧印加によって液体80に熱が加わるので、液体80を冷却することが好ましい。
【0042】
上記気泡発生方法において、容器10の中に第2の電極30,液体80,第1の電極20を入れる順番は上記記載の順番に限定されない。また、第1の電極20を液体80中に入れる前に電源40と接続しておいても構わない。
【0043】
本実施形態の気泡発生装置1および気泡発生方法は、容器10に入った液体80中に2つの電極20,30を入れて交流電圧またはパルス電圧を印加するという簡単な装置および方法であるので、気泡発生装置1を低コストで作製できるとともに気泡を発生させたい場所や広さなどによって装置構成を比較的自由に設計できる。また、種々の液体において気泡径を電源の周波数あるいはパルス幅によってコントロールでき、しかも径のばらつきは小さくできるので、種々の用途に応用できる。特に気泡径が小さいナノバブルを簡単な方法で均一径で発生させることは従来は困難であったが、本実施形態の気泡発生装置および気泡発生方法を用いれば容易に均一径のナノバブルを低コストで発生させることができる。これにより、ウイルス・細菌の吸着分離など医療分野への応用を広く行うことができる。また、発生した気泡は第1の電極20から液体80中に噴出して液体80に流れを生成させるので、気泡が速やかに液体80中に拡がっていく。
【0044】
さらに電源電圧、電流の調整を行うことで、プラズマで生成した化学種を気泡中に閉じ込めることが可能と考えられる。即ち、第1の電極20にプラズマを発生させて、気泡も同時に発生させれば、気泡中にプラズマを閉じ込められると考えられる。特許文献6、7には液体中の気泡にプラズマを発生させる装置が開示されているが、これらは超音波などを利用した従来の気泡発生装置を用いて気泡を発生させ、そこへマイクロ波を照射してプラズマを発生させるものであり、気泡径を任意の大きさにして均一に揃えることは現状では実現されていない。なお、気泡中にプラズマが発生すると、ラジカルなどが気泡の中に閉じ込められ、より高いエネルギー状態を保つ。さらに気泡が圧壊する際に大きなエネルギーが発生し、さらに高エネルギーのプラズマが発生すれば、この高エネルギープラズマを種々の用途に利用できる。
【0045】
−実施例−
<実施例1>
図1に示す装置と同様の装置を用い、水に微細な気泡を発生させた。具体的には、ポリスチレン製の円筒形の容器(内径3.5cm、高さ6cm)に高さ4cmほど水を入れ、第1および第2の電極としてエナメル線を用いて容器の中に入れた。エナメル線は直径0.6mmの銅線に電気絶縁性のポリウレタン樹脂を被覆したものである。第1の電極は直線状で、先端のみ被覆を除去しており(即ち、切断したエナメル線をそのまま使用)、第2の電極はコイル状(直径約6mm)とし、容器の底に設置した。なお、第2の電極の容器内に入っている部分は全て絶縁被覆されている。第1の電極と第2の電極とは接触しないように設置した。
【0046】
第2の電極を接地し、第1の電極はアースされている電源に接続した。この電源からパルス電圧(10kHz、20kVpp、矩形波、Duty比50%)を第1の電極に印加した。なお、第2の電極と電源とは共に接地されているので、電源は第1の電極及び第2の電極の間に電圧を印加したことになる。
【0047】
電圧を印加した直後から第1の電極先端から微細な気泡が吹き出し液体中に流れていった。1〜2秒後には微細気泡の混ざった流れが渦巻いて、容器中が濁ったような状態となった。このとき第1の電極の先端は発光しており、プラズマが発生していることが確認された。以上の状況は目視により観察したものである。
【0048】
次にパルス電圧の電圧条件を、10kHz、0Vから−10kVまで、矩形波、Duty比99%に変更し(パルス幅1μsec)、第1の電極に印加したところ、容器中の濁りは薄く気泡の径がより微小であると思われた。そこで、電圧の印加を停止してから11分17秒後に、Sympatec GmbH製レーザ回折式粒子径分布測定装置HELOSシステムという装置を用いてレーザ回折方式により、水中の気泡径を測定した。測定結果を図5に示す。約90%の気泡が、0.38μm(380nm)から1.3μmの径を有しており、780nmにピークを有する気泡径分布となった。なお、図5は同じサンプルを10に分けて、それらを測定した結果である。このように気泡径がほぼ均一なナノバブルが得られた。
【0049】
なお、本実施例では、ファンクションジェネレータで発生させたパルスを増幅器を用いて電圧を1000倍にしているが、増幅器は1μsecで0V→500Vの立ち上がり性能しか有していないため、上述の電圧は実際には数百V程度である可能性が大きい。
【0050】
ここでは、水の中には水素ガスが含まれた微細気泡が分散していると考えられる。一方、電圧を0Vからプラスのピーク電圧となるように設定すると、酸素ガスが含まれた微細気泡が水中に分散し、プラス側とマイナス側の双方にピーク電圧を設定すると、水素ガスが含まれた微細気泡と酸素ガスが含まれた微細気泡とが混在した水が得られる。
【0051】
また、条件を変えて気泡を発生させたところ、約400nm、あるいは約600nmのところにピークを備えた気泡径分布を有する微細気泡が発生した。
【0052】
<実施例2>
実施例2は、水の代わりにエタノールを液体として用いたこと以外は実施例1と同じである。
【0053】
エタノールを液体として用いても水と同様に微細な気泡が大量に発生し、プラズマも発生していた。
【0054】
本実施形態において、第2の電極30は第1の電極20と異なる構造の電極であっても構わない。被覆の種類や厚み、導電性部材の構成物質が第1の電極20と異なっていてもよいし、全体の形状が例えば板状であっても構わない。また、第2の電極30において被覆22は無くても気泡は発生するが、被覆22が無いと電気分解により生成した反応生成物によって導電性部材21が冒される場合がある。
【0055】
(実施形態2)
実施形態2に係る気泡発生装置は、図4に示すように、液体80の中に第1の電極20を入れて、その第1の電極20に電源40を接続している点は実施形態1と同じであるが、第2の電極35が実施形態1とは異なっているので、実施形態1と異なっている点を以下に説明する。
【0056】
本実施形態では容器11と第2の電極35とが一体化している。即ち、容器11の側壁面および底面が第2の電極35によって構成されており、液体80と接触する容器11内面においては第2の電極35は絶縁被覆されている。なお、第2の電極35の導電性部材および絶縁被覆については実施形態1と同じである。この第2の電極35は電源40に接続されており、これら両者を接続する線は接地されている。
【0057】
本実施形態の気泡発生装置2によっても実施形態1と同様に、容器11中の液体80に微細な気泡が発生する。本実施形態では、第2の電極35と一体となった容器11を準備しておきさえすれば実施形態1よりも第1の電極20の位置調節が容易である。それ以外の効果は実施形態1と同じである。
【0058】
(実施形態3)
実施形態3に係る気泡発生装置は、第2の電極が実施形態1とは異なっており、それ以外は実施形態1と同じであるので、実施形態1とは異なっているところを説明する。
【0059】
本実施形態では、第2の電極も第1の電極と同じ形状となっている。即ち、第2の電極は直線状で液体に浸漬されており、その先端では導電性部材が露出している。なお、実施形態1と同じく本実施形態では第2の電極は接地されている。
【0060】
本実施形態において実施形態1と同じように第1の電極に交流電圧あるいはパルス電圧を印加すると、実施形態1とは異なり、第2の電極の先端からも気泡が発生する。なお、第2の電極の導電性部材の露出部分は先端に限られず、また、露出部分の数は複数であっても構わない。
【0061】
(その他の実施形態)
上記の実施形態および実施例は本発明の例であり、本発明はこれらの例に限定されない。第1の電極の形状は線状以外の板状や球形等の立体形状であっても構わない。また、液体は水やエタノールだけではなく、電気分解される物質が含まれている液体やプラズマによって気体が発生する液体なども本発明に用いることができる。
【0062】
第1の電極の液体に浸漬している部分には、複数箇所の導電体露出部が存していても構わない。それらの導電体露出部に電流集中が生じ、それらの部分から気泡が発生する。また、第1の電極を剣山のような形状とし、複数の針形状の先端を導電体露出部としてもよい。
【0063】
第2の電極は液体を入れる容器の壁部全体ではなく一部としてもよい。例えば、容器の底面に絶縁被覆電極を敷いたり、容器の側壁に電極を埋め込み、液体とは絶縁被膜と隔てるような構成としたりしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0064】
以上説明したように、本発明に係る気泡発生装置は、径の揃った微細な気泡を簡単に液体中に発生させることができ、浄化・殺菌・消毒、液相化学反応器、溶液中の有害物質除去、ドラッグデリバリー、血液の造影剤等に利用できる微細気泡を発生させることができ有用である。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】実施形態1に係る気泡発生装置の模式図
【図2】実施形態1に係る電極の断面図
【図3】パルス電圧を示す図
【図4】実施形態2に係る気泡発生装置の模式図
【図5】実施例1に係る発生した気泡の径の分布図
【符号の説明】
【0066】
1,2 気泡発生装置
10,11 容器
20 第1の電極
21 導電性部材
22 被覆
30,35 第2の電極
40 電源
50 接地線
80 液体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体の中に微細な気泡を発生させる気泡発生装置であって、
液体に接触する第1及び第2の電極と、
前記第1及び第2の電極の間に交流電圧またはパルス電圧を印加する電源と
を備えた、気泡発生装置。
【請求項2】
前記第1の電極は、絶縁被覆されている部分と導電体が露出している部分とを有しており、
少なくとも前記導電体が露出している部分は、前記液体に接触している、請求項1に記載されている気泡発生装置。
【請求項3】
前記第1の電極は線状であって、先端以外は絶縁被覆されており、先端は導電体が露出している、請求項2に記載されている気泡発生装置。
【請求項4】
前記第2の電極は接地電極である、請求項1から3のいずれか一つに記載されている気泡発生装置。
【請求項5】
前記第2の電極の少なくとも前記液体と接触している部分は絶縁被覆されている、請求項1から4のいずれか一つに記載されている気泡発生装置。
【請求項6】
前記交流電圧の周波数は10Hz以上500kHz以下または前記パルス電圧のパルス幅は5nsec以上50msec以下である、請求項1から5のいずれか一つに記載されている気泡発生装置。
【請求項7】
前記液体には極性基を有する分子が含まれている、請求項1から6のいずれか一つに記載されている気泡発生装置。
【請求項8】
前記気泡の径は、100nm以上50μm以下である、請求項1から7のいずれか一つに記載されている気泡発生装置。
【請求項9】
液体の中に微細な気泡を発生させる気泡発生方法であって、
液体に第2つの電極を接触させる工程と、
前記2つの電極の間に交流電圧またはパルス電圧を印加する電圧印加工程と
を含む、気泡発生方法。
【請求項10】
前記交流電圧の周波数は10Hz以上500kHz以下または前記パルス電圧のパルス幅は5nsec以上50msec以下である、請求項9に記載されている気泡発生方法。
【請求項11】
前記液体には極性基を有する分子が含まれている、請求項9または10に記載されている気泡発生方法。
【請求項12】
前記2つの電極のうち少なくとも一方から微細気泡が液体中に噴出し液体に流れを生成させる、請求項9から11のいずれか一つに記載されている気泡発生方法。
【請求項13】
前記気泡の径は、100nm以上50μm以下である、請求項9から12のいずれか一つに記載されている気泡発生方法。
【請求項14】
前記液体は水であり、水素ガスを含む気泡が分散している水を生成させる、請求項9から13のいずれか一つに記載されている気泡発生方法。
【請求項15】
前記電圧印加工程では負電圧のピーク電圧を有するパルス電圧を印加する、請求項14に記載されている気泡発生装置。
【請求項16】
前記液体は水であり、酸素ガスを含む気泡が分散している水を生成させる、請求項9から13のいずれか一つに記載されている気泡発生方法。
【請求項17】
前記電圧印加工程では正電圧のピーク電圧を有するパルス電圧を印加する、請求項16に記載されている気泡発生装置。
【請求項18】
前記電圧印加工程では、少なくとも1つの前記電極からプラズマが発生している、請求項9から17のいずれか一つに記載されている気泡発生方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−240039(P2008−240039A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−80096(P2007−80096)
【出願日】平成19年3月26日(2007.3.26)
【出願人】(504157024)国立大学法人東北大学 (2,297)
【出願人】(391003668)トーヨーエイテック株式会社 (145)
【Fターム(参考)】