気象レーダの方位角と仰角補正手段
【課題】
気象レーダを運用するには、水平を保つためのアウトリガーや、正確な方角を知るための専用の装置が必要であった。
【解決手段】
傾斜角を取得する傾斜計および空中線の機械軸と電機軸のずれから仰角傾斜補正テーブルを作成する仰角傾斜補正テーブル作成手段と、磁気コンパスによる磁気方位および周辺装置からの磁気影響であるところの自差情報から真方位初期値を算出する真方位初期値算出手段と、GPS受信機から得られる位置と時刻情報から太陽の方位角と仰角を算出する太陽方位角算出手段および太陽仰角算出手段と、走査範囲を決められた空中線によって太陽ノイズを測定し真方位補正値を算出する真方位補正値算出手段と、前記真方位補正値算出手段から得られる真方位補正値と前記真方位初期値の差分を前記自差情報として更新する自差情報更新手段から成ることを特徴とする、気象レーダの方位角と仰角補正手段。
気象レーダを運用するには、水平を保つためのアウトリガーや、正確な方角を知るための専用の装置が必要であった。
【解決手段】
傾斜角を取得する傾斜計および空中線の機械軸と電機軸のずれから仰角傾斜補正テーブルを作成する仰角傾斜補正テーブル作成手段と、磁気コンパスによる磁気方位および周辺装置からの磁気影響であるところの自差情報から真方位初期値を算出する真方位初期値算出手段と、GPS受信機から得られる位置と時刻情報から太陽の方位角と仰角を算出する太陽方位角算出手段および太陽仰角算出手段と、走査範囲を決められた空中線によって太陽ノイズを測定し真方位補正値を算出する真方位補正値算出手段と、前記真方位補正値算出手段から得られる真方位補正値と前記真方位初期値の差分を前記自差情報として更新する自差情報更新手段から成ることを特徴とする、気象レーダの方位角と仰角補正手段。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、雲、雨、霧の様子等いわゆる気象現象の観測に利用される気象レーダ装置に属するものであり、特にレーダ装置を車に搭載する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、広域の気象状態を観測するために気象レーダが用いられる。気象レーダは、気象現象に起因して発生する空中の水滴などに対して電波を放射し、その受信エコーを解析して降水域の大きさ、形状あるいはその移動速度、降水量などの情報を得るというものである。
【0003】
ところで車載型気象レーダ装置を、水平ではない傾斜がある不整地などで利用する時には、従来は、車載装置を車両からおろし、該車載装置に取り付けたアウトリガーで4隅の高さを調整し、傾斜計を用いることで水平に設置していた。
【0004】
雨粒や氷塊などからのレーダ波の反射波に関して、その高度を計算する際に、水平面を仰角0度とするため、気象レーダ装置が出す空中線の仰角が水平面に対してどれだけ傾いているかを知らなければならず、こういった設置の際の傾きの扱いに工夫は必要である。
【0005】
図1は前記アウトリガーによる調整を示した図であり、気象レーダ装置101の4隅にアウトリガー103を接続し、該アウトリガーの高さを調節することで気象レーダ装置101の水平を保っていた。
【0006】
気象レーダの可搬性向上に関しては例えば特許文献1に記載されたような、アンテナの形状に着目した文献があるが、同文献においても水平方向の調整は手動でハンドルを回す手段によっている。
【0007】
また、方位角を真北に合わせる方法としては、古くは北極星に合わせる方法があり、また、コンパスでおおよその磁北を得て、予め作成した磁北と真北との変換表から真北を求め、空中線の角度検出器で示す真北方向との差を手入力で補正する方法が一般的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2006−308510号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかるに前記手段によると、気象レーダを運用するには、水平を保つためのアウトリガーや、正確な方角を知るための専用の装置が必要であった。
【0010】
そこで本発明は、アウトリガーを不要にすることによって装置の小型化や軽量化を実現すること、および、気象レーダが元々持っている機能を用いて方位角の調整をすることを可能にすることによって、角度調整のために特別な装置を持つ必要を無くすることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するために、本発明は、図11に示すように、
様々な地形上に設置しなければならない気象レーダ装置の方位角と仰角を補正する手段において、
傾斜角を取得する傾斜計および空中線の機械軸と電機軸のずれから仰角傾斜補正テーブルを作成する仰角傾斜補正テーブル作成手段と、
磁気コンパスによる磁気方位および周辺装置からの磁気影響であるところの自差情報から真方位初期値を算出する真方位初期値算出手段と、
GPS受信機から得られる位置および時刻情報から太陽の方位角を算出する太陽方位角算出手段と、
GPS受信機から得られる位置および時刻情報から太陽の仰角を算出する太陽仰角算出手段と、
前記太陽方位角算出手段から得られる太陽方位角を前記真方位初期値算出手段によって補正するオフセット太陽方位角算出手段と、
前記太陽仰角算出手段から得られる太陽仰角を前記仰角傾斜補正テーブルによって補正するオフセット太陽仰角算出手段と、
前記オフセット太陽方位角とオフセット太陽仰角から走査範囲を決められた空中線によって太陽ノイズを測定し前記オフセット太陽方位角算出手段から得られる方位角と受信値がピークになる方位角の差分を真方位補正値とする真方位補正値算出手段と、
前記真方位補正値算出手段から得られる真方位補正値と前記真方位初期値の差分を前記自差情報として更新する自差情報更新手段と、
から成ることを特徴とする、気象レーダの方位角と仰角補正手段とする。
【0012】
このように、本発明によれば、GPSと磁気コンパスの情報、および、太陽ノイズの方向によって、気象レーダが送出する空中線の正確な方位角と仰角を補正することが可能になる。
【0013】
また、本発明は、
装置のシェルタ周辺に前記磁気コンパスとGPS受信機用アンテナを設置し、
装置のシェルタ内部に前記傾斜計とGPS受信機本体を設置し、
気象レーダの受信アンテナで太陽ノイズを走査し、
方位角と仰角の補正を当該装置のみで行うことを特徴とする、気象レーダの方位角と仰角補正手段とする。
【0014】
このように、本発明によれば、気象レーダの方位角と仰角を補正するにあたり、特別な装置を必要とせず、装置が本来持つ機器のみで補正することが可能になる。
【0015】
また、本発明は、
太陽ノイズ受信値のピークを測定する際に、
受信信号強度レベルを平均および平滑化し、1回の走査において予め定めた規定レベル以上であり、なおかつピークであるレベル値と方位角と仰角を記録装置に記録し、
この走査を複数回数行い、孤立値を除去したうえで該回数の平均値を求め、該平均値を太陽ノイズのピークを示す方位角および仰角とすることを特徴とする、気象レーダの方位角と仰角補正手段とする。
【0016】
このように、本発明によれば、真方位補正値を平均化しているため、より正確な真方位補正値を算出することが可能になる。
【発明の効果】
【0017】
このように、本発明によれば、GPSと磁気コンパスの情報、および、太陽ノイズの方向によって、気象レーダが送出する空中線の正確な方位角と仰角を算出することが可能になる。
【0018】
また、気象レーダの方位角と仰角を補正するにあたり、特別な装置を必要とせず、装置が本来持つ機器のみで補正することが可能になる。
【0019】
また、真方位補正値を平均化しているため、より正確な真方位補正値を算出することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】従来の水平調節手段。
【図2】本発明にかかる構成図
【図3】太陽ノイズ受信の例
【図4】本発明にかかる処理フローチャート(1)
【図5】装置の傾きを示す図
【図6】仰角傾斜補正テーブルの例
【図7】本発明にかかる処理フローチャート(2)
【図8】本発明にかかる処理フローチャート(3)
【図9】本発明にかかる処理フローチャート(4)
【図10】真方位補正値(設定値)の求め方を示した図
【図11】処理フローの全体図
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0021】
本発明の実施例を図を参照して説明する。
【0022】
図4は電源投入直後の処理フローチャートである。まず、仰角傾斜補正テーブルを作成する(S401)。これは、前後を軸とした回転角であるところのロール角と、左右を軸とした回転角であるところのピッチ角を測定できる2軸傾斜計を用いて、装置を格納したシェルタの方位角に対する傾斜角を測定し(S403)、例えば方位角45度単位で三角関数的に傾斜角を補間する。
【0023】
図5はその一例であり、例えば方位角0度に対する傾きを5度とすると、方位角180度に対する傾きは−5度となる。例えば45度単位で傾斜角を補間するものとし、その結果を仰角補正出力とするならば、図6のような計算結果となる。
【0024】
なお、レーダ装置には、機械的な軸と電気的な軸に対して、その空中線固有の仰角ずれが存在するため、前記仰角傾斜補正テーブルは、該仰角ずれをオフセットした値を保持するものとする。
【0025】
次に真方位初期値の算出をする(S405)。これは、システムの動作開始時は値が0であるが、後に算出される自差情報によって更新される。つまり、磁気コンパスによる磁気方位(S407)から磁気情報の周辺装置からの影響などを示す自差情報を減算し、それを真方位初期値とし、動作の過程で更新されるものである。
【0026】
図7は図4に引き続き行われる処理を示したフローチャートである。まず、太陽の方位角と仰角を算出する(S701)。これは、接続したGPSから、位置情報と時刻情報を取得し(S703)、座標と時刻から理論的に太陽が見える位置が求まることを利用している。
【0027】
次に、オフセット太陽方位角を算出する(S705)。これはS701によって求まった太陽方位角から前記真方位初期値を減じ、あるいは予め定めた真方位初期値の符号によっては加算し、さらに空中線固有の機械軸と電気軸の方位角ずれをオフセットすることによって定まる。
【0028】
次に、同様にオフセット太陽仰角を算出する(S707)。これはS701によって求まった太陽仰角から前記仰角傾斜補正テーブルの該当する角度を減じ、あるいは予め定めた仰角傾斜補正テーブルの符号によっては加算することによって定まる。
【0029】
図8は図7に引き続き行われる処理を示したフローチャートである。まず、前記オフセット太陽方位角とオフセット太陽仰角を含む、予め定めた方位角と仰角の幅でセクターPPI走査を行う(S801)。これは、開始仰角に対して、開始方位角から終了方位角までを走査し、順次終了方位角までの走査を繰り返すものである。なお、走査における角度のステップは、本発明においては任意のものとする。
【0030】
次にある仰角に対する開始方位角から終了方位角までの走査による受信信号をA/D変換し、これを記録装置に記録する(S803)。なお、記録装置への記録は、走査のタイミングで逐次行ってもよいし、走査終了時にまとめて行ってもよい。本実施例では、ある仰角に対する走査終了時にA/D変換し、記録するものとして説明する。
【0031】
この間、なんらかの要因で走査からA/D変換までの処理が継続できなくなった場合は、後述するDにジャンプする(S805のyes)。ここでは遅滞なく処理が進んでいるとする(S805のno)。
【0032】
走査が終了仰角まで到達していなければ図4のAに戻り、再びある仰角のもとで開始方位角から終了方位角までの走査をする(S807のno)。
【0033】
方位角と仰角に関して1走査が完了したら(S807のyes)、任意のポイント幅で受信信号の平均を取ることによって波形を平滑化し(S809)、その結果を用いて、受信信号レベルがピークとなるポイントを取得し、そのポイントの方位角と仰角、および受信信号レベルを記録装置に記録する(S811)。
【0034】
図9は図8に引き続き行われる処理を示したフローチャートである。まず、真方位補正値(測定値)を取得する(S901)。これは、前記のように受信信号レベルがピークとなったポイントの方位角と前記オフセット太陽方位角の差分を求めることによって得られる。つまり、計算で得られる太陽の方位角と、実測で得られる太陽の方位角の差を取得するものであり、これを真方位補正値(測定値)と呼ぶ。
【0035】
前記のような、GPSから得られる情報によって太陽の方位角と仰角を得る手段から真方位補正値(測定値)を得る手段までを、より確度を高めるために、本発明では予め定めた回数(n回)行うものとし、これがまだ未完了であれば図4のAに戻り、再び処理を継続する(S903のno)。なお、nは任意のものとし、1であってもかまわない。
【0036】
前記のようにしてn個求められた真方位補正値(実測値)に対し(S903のyes)、図10に示すように、孤立値を除去して残った真方位補正値(実測値)を平均した値を真方位補正値(設定値)と呼ぶ(S905)。孤立値の求め方は本発明においては特定しない。なお、図8のDつまり、なんらかの影響でここまで説明したような処理が行えなかった場合は(S805のyes)、図4で求めた真方位初期値を真方位補正値(設定値)とする。
【0037】
次に、前記真方位補正値(設定値)と真方位初期値の差を自差情報として記録装置に記録する(S907)。この自差情報は次の観測の際に、図4のS405の処理を行うために用いられるものであり、このように、処理を継続していくと逐次更新されるものである。
【0038】
自差情報の物理的な意味は、磁気コンパスが周辺装置から受ける影響を示したものであり、このために磁気コンパスは真北を指し示さない。従って、ここまで説明したように、自差情報によって、磁気コンパスから得られる情報を補正するのである。
【0039】
以降、通常の気象レーダ装置としての観測動作を開始する。なお、その際の方位角は、アンテナ装置の角度検出器の方位角と真方位補正値(設定値)の和であり、また、仰角はアンテナ装置の角度検出器の仰角と仰角傾斜補正テーブルから角度検出器が示す方位角に対応する仰角補正値の和である。
【0040】
本発明は、以上説明したように、装置の傾き及び空中線固有の機械軸と電気軸の仰角ずれを仰角傾斜補正テーブルで補正し、磁気コンパスの自差情報によって方位角ずれを補正することによって、正確な真北を得るものであり、その際に、従来技術では必要であった角度補正に関する専用装置を必要とせず、気象レーダが本来持っている機能のみで実現可能であることを特徴とするものである。
【符号の説明】
【0041】
101…気象レーダ装置、 103…アウトリガー、
201…GPS受信機、 203…傾斜計、
205…磁気コンパス、 207…レーダ制御ユニット、
209…レーダ装置、 211…太陽。
【技術分野】
【0001】
この発明は、雲、雨、霧の様子等いわゆる気象現象の観測に利用される気象レーダ装置に属するものであり、特にレーダ装置を車に搭載する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、広域の気象状態を観測するために気象レーダが用いられる。気象レーダは、気象現象に起因して発生する空中の水滴などに対して電波を放射し、その受信エコーを解析して降水域の大きさ、形状あるいはその移動速度、降水量などの情報を得るというものである。
【0003】
ところで車載型気象レーダ装置を、水平ではない傾斜がある不整地などで利用する時には、従来は、車載装置を車両からおろし、該車載装置に取り付けたアウトリガーで4隅の高さを調整し、傾斜計を用いることで水平に設置していた。
【0004】
雨粒や氷塊などからのレーダ波の反射波に関して、その高度を計算する際に、水平面を仰角0度とするため、気象レーダ装置が出す空中線の仰角が水平面に対してどれだけ傾いているかを知らなければならず、こういった設置の際の傾きの扱いに工夫は必要である。
【0005】
図1は前記アウトリガーによる調整を示した図であり、気象レーダ装置101の4隅にアウトリガー103を接続し、該アウトリガーの高さを調節することで気象レーダ装置101の水平を保っていた。
【0006】
気象レーダの可搬性向上に関しては例えば特許文献1に記載されたような、アンテナの形状に着目した文献があるが、同文献においても水平方向の調整は手動でハンドルを回す手段によっている。
【0007】
また、方位角を真北に合わせる方法としては、古くは北極星に合わせる方法があり、また、コンパスでおおよその磁北を得て、予め作成した磁北と真北との変換表から真北を求め、空中線の角度検出器で示す真北方向との差を手入力で補正する方法が一般的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2006−308510号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかるに前記手段によると、気象レーダを運用するには、水平を保つためのアウトリガーや、正確な方角を知るための専用の装置が必要であった。
【0010】
そこで本発明は、アウトリガーを不要にすることによって装置の小型化や軽量化を実現すること、および、気象レーダが元々持っている機能を用いて方位角の調整をすることを可能にすることによって、角度調整のために特別な装置を持つ必要を無くすることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するために、本発明は、図11に示すように、
様々な地形上に設置しなければならない気象レーダ装置の方位角と仰角を補正する手段において、
傾斜角を取得する傾斜計および空中線の機械軸と電機軸のずれから仰角傾斜補正テーブルを作成する仰角傾斜補正テーブル作成手段と、
磁気コンパスによる磁気方位および周辺装置からの磁気影響であるところの自差情報から真方位初期値を算出する真方位初期値算出手段と、
GPS受信機から得られる位置および時刻情報から太陽の方位角を算出する太陽方位角算出手段と、
GPS受信機から得られる位置および時刻情報から太陽の仰角を算出する太陽仰角算出手段と、
前記太陽方位角算出手段から得られる太陽方位角を前記真方位初期値算出手段によって補正するオフセット太陽方位角算出手段と、
前記太陽仰角算出手段から得られる太陽仰角を前記仰角傾斜補正テーブルによって補正するオフセット太陽仰角算出手段と、
前記オフセット太陽方位角とオフセット太陽仰角から走査範囲を決められた空中線によって太陽ノイズを測定し前記オフセット太陽方位角算出手段から得られる方位角と受信値がピークになる方位角の差分を真方位補正値とする真方位補正値算出手段と、
前記真方位補正値算出手段から得られる真方位補正値と前記真方位初期値の差分を前記自差情報として更新する自差情報更新手段と、
から成ることを特徴とする、気象レーダの方位角と仰角補正手段とする。
【0012】
このように、本発明によれば、GPSと磁気コンパスの情報、および、太陽ノイズの方向によって、気象レーダが送出する空中線の正確な方位角と仰角を補正することが可能になる。
【0013】
また、本発明は、
装置のシェルタ周辺に前記磁気コンパスとGPS受信機用アンテナを設置し、
装置のシェルタ内部に前記傾斜計とGPS受信機本体を設置し、
気象レーダの受信アンテナで太陽ノイズを走査し、
方位角と仰角の補正を当該装置のみで行うことを特徴とする、気象レーダの方位角と仰角補正手段とする。
【0014】
このように、本発明によれば、気象レーダの方位角と仰角を補正するにあたり、特別な装置を必要とせず、装置が本来持つ機器のみで補正することが可能になる。
【0015】
また、本発明は、
太陽ノイズ受信値のピークを測定する際に、
受信信号強度レベルを平均および平滑化し、1回の走査において予め定めた規定レベル以上であり、なおかつピークであるレベル値と方位角と仰角を記録装置に記録し、
この走査を複数回数行い、孤立値を除去したうえで該回数の平均値を求め、該平均値を太陽ノイズのピークを示す方位角および仰角とすることを特徴とする、気象レーダの方位角と仰角補正手段とする。
【0016】
このように、本発明によれば、真方位補正値を平均化しているため、より正確な真方位補正値を算出することが可能になる。
【発明の効果】
【0017】
このように、本発明によれば、GPSと磁気コンパスの情報、および、太陽ノイズの方向によって、気象レーダが送出する空中線の正確な方位角と仰角を算出することが可能になる。
【0018】
また、気象レーダの方位角と仰角を補正するにあたり、特別な装置を必要とせず、装置が本来持つ機器のみで補正することが可能になる。
【0019】
また、真方位補正値を平均化しているため、より正確な真方位補正値を算出することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】従来の水平調節手段。
【図2】本発明にかかる構成図
【図3】太陽ノイズ受信の例
【図4】本発明にかかる処理フローチャート(1)
【図5】装置の傾きを示す図
【図6】仰角傾斜補正テーブルの例
【図7】本発明にかかる処理フローチャート(2)
【図8】本発明にかかる処理フローチャート(3)
【図9】本発明にかかる処理フローチャート(4)
【図10】真方位補正値(設定値)の求め方を示した図
【図11】処理フローの全体図
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0021】
本発明の実施例を図を参照して説明する。
【0022】
図4は電源投入直後の処理フローチャートである。まず、仰角傾斜補正テーブルを作成する(S401)。これは、前後を軸とした回転角であるところのロール角と、左右を軸とした回転角であるところのピッチ角を測定できる2軸傾斜計を用いて、装置を格納したシェルタの方位角に対する傾斜角を測定し(S403)、例えば方位角45度単位で三角関数的に傾斜角を補間する。
【0023】
図5はその一例であり、例えば方位角0度に対する傾きを5度とすると、方位角180度に対する傾きは−5度となる。例えば45度単位で傾斜角を補間するものとし、その結果を仰角補正出力とするならば、図6のような計算結果となる。
【0024】
なお、レーダ装置には、機械的な軸と電気的な軸に対して、その空中線固有の仰角ずれが存在するため、前記仰角傾斜補正テーブルは、該仰角ずれをオフセットした値を保持するものとする。
【0025】
次に真方位初期値の算出をする(S405)。これは、システムの動作開始時は値が0であるが、後に算出される自差情報によって更新される。つまり、磁気コンパスによる磁気方位(S407)から磁気情報の周辺装置からの影響などを示す自差情報を減算し、それを真方位初期値とし、動作の過程で更新されるものである。
【0026】
図7は図4に引き続き行われる処理を示したフローチャートである。まず、太陽の方位角と仰角を算出する(S701)。これは、接続したGPSから、位置情報と時刻情報を取得し(S703)、座標と時刻から理論的に太陽が見える位置が求まることを利用している。
【0027】
次に、オフセット太陽方位角を算出する(S705)。これはS701によって求まった太陽方位角から前記真方位初期値を減じ、あるいは予め定めた真方位初期値の符号によっては加算し、さらに空中線固有の機械軸と電気軸の方位角ずれをオフセットすることによって定まる。
【0028】
次に、同様にオフセット太陽仰角を算出する(S707)。これはS701によって求まった太陽仰角から前記仰角傾斜補正テーブルの該当する角度を減じ、あるいは予め定めた仰角傾斜補正テーブルの符号によっては加算することによって定まる。
【0029】
図8は図7に引き続き行われる処理を示したフローチャートである。まず、前記オフセット太陽方位角とオフセット太陽仰角を含む、予め定めた方位角と仰角の幅でセクターPPI走査を行う(S801)。これは、開始仰角に対して、開始方位角から終了方位角までを走査し、順次終了方位角までの走査を繰り返すものである。なお、走査における角度のステップは、本発明においては任意のものとする。
【0030】
次にある仰角に対する開始方位角から終了方位角までの走査による受信信号をA/D変換し、これを記録装置に記録する(S803)。なお、記録装置への記録は、走査のタイミングで逐次行ってもよいし、走査終了時にまとめて行ってもよい。本実施例では、ある仰角に対する走査終了時にA/D変換し、記録するものとして説明する。
【0031】
この間、なんらかの要因で走査からA/D変換までの処理が継続できなくなった場合は、後述するDにジャンプする(S805のyes)。ここでは遅滞なく処理が進んでいるとする(S805のno)。
【0032】
走査が終了仰角まで到達していなければ図4のAに戻り、再びある仰角のもとで開始方位角から終了方位角までの走査をする(S807のno)。
【0033】
方位角と仰角に関して1走査が完了したら(S807のyes)、任意のポイント幅で受信信号の平均を取ることによって波形を平滑化し(S809)、その結果を用いて、受信信号レベルがピークとなるポイントを取得し、そのポイントの方位角と仰角、および受信信号レベルを記録装置に記録する(S811)。
【0034】
図9は図8に引き続き行われる処理を示したフローチャートである。まず、真方位補正値(測定値)を取得する(S901)。これは、前記のように受信信号レベルがピークとなったポイントの方位角と前記オフセット太陽方位角の差分を求めることによって得られる。つまり、計算で得られる太陽の方位角と、実測で得られる太陽の方位角の差を取得するものであり、これを真方位補正値(測定値)と呼ぶ。
【0035】
前記のような、GPSから得られる情報によって太陽の方位角と仰角を得る手段から真方位補正値(測定値)を得る手段までを、より確度を高めるために、本発明では予め定めた回数(n回)行うものとし、これがまだ未完了であれば図4のAに戻り、再び処理を継続する(S903のno)。なお、nは任意のものとし、1であってもかまわない。
【0036】
前記のようにしてn個求められた真方位補正値(実測値)に対し(S903のyes)、図10に示すように、孤立値を除去して残った真方位補正値(実測値)を平均した値を真方位補正値(設定値)と呼ぶ(S905)。孤立値の求め方は本発明においては特定しない。なお、図8のDつまり、なんらかの影響でここまで説明したような処理が行えなかった場合は(S805のyes)、図4で求めた真方位初期値を真方位補正値(設定値)とする。
【0037】
次に、前記真方位補正値(設定値)と真方位初期値の差を自差情報として記録装置に記録する(S907)。この自差情報は次の観測の際に、図4のS405の処理を行うために用いられるものであり、このように、処理を継続していくと逐次更新されるものである。
【0038】
自差情報の物理的な意味は、磁気コンパスが周辺装置から受ける影響を示したものであり、このために磁気コンパスは真北を指し示さない。従って、ここまで説明したように、自差情報によって、磁気コンパスから得られる情報を補正するのである。
【0039】
以降、通常の気象レーダ装置としての観測動作を開始する。なお、その際の方位角は、アンテナ装置の角度検出器の方位角と真方位補正値(設定値)の和であり、また、仰角はアンテナ装置の角度検出器の仰角と仰角傾斜補正テーブルから角度検出器が示す方位角に対応する仰角補正値の和である。
【0040】
本発明は、以上説明したように、装置の傾き及び空中線固有の機械軸と電気軸の仰角ずれを仰角傾斜補正テーブルで補正し、磁気コンパスの自差情報によって方位角ずれを補正することによって、正確な真北を得るものであり、その際に、従来技術では必要であった角度補正に関する専用装置を必要とせず、気象レーダが本来持っている機能のみで実現可能であることを特徴とするものである。
【符号の説明】
【0041】
101…気象レーダ装置、 103…アウトリガー、
201…GPS受信機、 203…傾斜計、
205…磁気コンパス、 207…レーダ制御ユニット、
209…レーダ装置、 211…太陽。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
様々な地形上に設置しなければならない気象レーダ装置の方位角と仰角を補正する手段において、
傾斜角を取得する傾斜計および空中線の機械軸と電機軸のずれから仰角傾斜補正テーブルを作成する仰角傾斜補正テーブル作成手段と、
磁気コンパスによる磁気方位および周辺装置からの磁気影響であるところの自差情報から真方位初期値を算出する真方位初期値算出手段と、
GPS受信機から得られる位置および時刻情報から太陽の方位角を算出する太陽方位角算出手段と、
GPS受信機から得られる位置および時刻情報から太陽の仰角を算出する太陽仰角算出手段と、
前記太陽方位角算出手段から得られる太陽方位角を前記真方位初期値算出手段によって補正するオフセット太陽方位角算出手段と、
前記太陽仰角算出手段から得られる太陽仰角を前記仰角傾斜補正テーブルによって補正するオフセット太陽仰角算出手段と、
前記オフセット太陽方位角とオフセット太陽仰角から走査範囲を決められた空中線によって太陽ノイズを測定し前記オフセット太陽方位角算出手段から得られる方位角と受信値がピークになる方位角の差分を真方位補正値とする真方位補正値算出手段と、
前記真方位補正値算出手段から得られる真方位補正値と前記真方位初期値の差分を前記自差情報として更新する自差情報更新手段と、
から成ることを特徴とする、気象レーダの方位角と仰角補正手段。
【請求項2】
請求項1に記載の気象レーダの方位角と仰角補正手段は、
装置のシェルタ周辺に前記磁気コンパスとGPS受信機用アンテナを設置し、
装置のシェルタ内部に前記傾斜計とGPS受信機本体を設置し、
気象レーダの受信アンテナで太陽ノイズを走査し、
方位角と仰角の補正を当該装置のみで行うことを特徴とする、気象レーダの方位角と仰角補正手段。
【請求項3】
請求項1に記載の真方位補正値算出手段は、
太陽ノイズ受信値のピークを測定する際に、
受信信号強度レベルを平均および平滑化し、1回の走査において予め定めた規定レベル以上であり、なおかつピークであるレベル値と方位角と仰角を記録装置に記録し、
この走査を複数回数行い、孤立値を除去したうえで該回数の平均値を求め、該平均値を太陽ノイズのピークを示す方位角および仰角とすることを特徴とする、気象レーダの方位角と仰角補正手段。
【請求項1】
様々な地形上に設置しなければならない気象レーダ装置の方位角と仰角を補正する手段において、
傾斜角を取得する傾斜計および空中線の機械軸と電機軸のずれから仰角傾斜補正テーブルを作成する仰角傾斜補正テーブル作成手段と、
磁気コンパスによる磁気方位および周辺装置からの磁気影響であるところの自差情報から真方位初期値を算出する真方位初期値算出手段と、
GPS受信機から得られる位置および時刻情報から太陽の方位角を算出する太陽方位角算出手段と、
GPS受信機から得られる位置および時刻情報から太陽の仰角を算出する太陽仰角算出手段と、
前記太陽方位角算出手段から得られる太陽方位角を前記真方位初期値算出手段によって補正するオフセット太陽方位角算出手段と、
前記太陽仰角算出手段から得られる太陽仰角を前記仰角傾斜補正テーブルによって補正するオフセット太陽仰角算出手段と、
前記オフセット太陽方位角とオフセット太陽仰角から走査範囲を決められた空中線によって太陽ノイズを測定し前記オフセット太陽方位角算出手段から得られる方位角と受信値がピークになる方位角の差分を真方位補正値とする真方位補正値算出手段と、
前記真方位補正値算出手段から得られる真方位補正値と前記真方位初期値の差分を前記自差情報として更新する自差情報更新手段と、
から成ることを特徴とする、気象レーダの方位角と仰角補正手段。
【請求項2】
請求項1に記載の気象レーダの方位角と仰角補正手段は、
装置のシェルタ周辺に前記磁気コンパスとGPS受信機用アンテナを設置し、
装置のシェルタ内部に前記傾斜計とGPS受信機本体を設置し、
気象レーダの受信アンテナで太陽ノイズを走査し、
方位角と仰角の補正を当該装置のみで行うことを特徴とする、気象レーダの方位角と仰角補正手段。
【請求項3】
請求項1に記載の真方位補正値算出手段は、
太陽ノイズ受信値のピークを測定する際に、
受信信号強度レベルを平均および平滑化し、1回の走査において予め定めた規定レベル以上であり、なおかつピークであるレベル値と方位角と仰角を記録装置に記録し、
この走査を複数回数行い、孤立値を除去したうえで該回数の平均値を求め、該平均値を太陽ノイズのピークを示す方位角および仰角とすることを特徴とする、気象レーダの方位角と仰角補正手段。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−163975(P2011−163975A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−27888(P2010−27888)
【出願日】平成22年2月10日(2010.2.10)
【出願人】(000004330)日本無線株式会社 (1,186)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年2月10日(2010.2.10)
【出願人】(000004330)日本無線株式会社 (1,186)
【Fターム(参考)】
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