説明

水と吸着剤との事前接触を含む、バラスト凝集および沈降によって水を処理する方法

本発明は、処理設備における不純物を含む原水を処理するための方法に関し、この方法は少なくとも、撹拌事前接触領域(2)において、水を粉末吸着剤と接触させるステップと、バラスト凝集のステップと、沈降のステップと、沈降領域(5)の底部から、スラッジと、バラストと、粉末吸着剤との混合物を抽出するステップと、混合物を液体サイクロン(11)に挿入するステップと、スラッジと粉末吸着性試薬との混合物からなるオーバーフローを、前記液体サイクロン(11)から移行領域(14)へと輸送するステップとを含む。この方法はまた、事前接触領域(2)において、移行領域(14)からのスラッジと粉末吸着剤との混合物を再利用するステップと、事前接触領域(2)において、粉末吸着剤の濃度を示す少なくとも1つのデータを連続的に測定するステップと、事前接触領域(2)における粉末吸着剤の濃度が所定のしきい値を下回る場合に、上流で新たな粉末吸着剤水性溶媒懸濁液を注入するステップと、ならびに前記吸着剤懸濁液を酸性化するステップとを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の分野は、造水を目的とした水処理の分野である。本発明はまた、吸着性材料を含有する工業用水の処理、および廃水の浄化を目的とした、特に、内分泌かく乱効果(endocrine disruptive effect)を有する薬品の廃水中の濃度の低下を目的とした廃水の三次処理に関する。
【0002】
より具体的には、本発明は、バラスト凝集(ballasted flocculation)および沈降による固液分離を含む水の物理化学的処理に関する。
【背景技術】
【0003】
水の物理化学的処理は、地表水、カルスト水等を造るために使用するにしても、または都市用水もしくは産業廃水を浄化するために使用するにしても、一連のステップを含む方法を用いることで得られる。
【0004】
この種の処理は一般に、凝固ステップを含む。この凝固は、水中に懸濁しているコロイド粒子の凝集を誘導する。これは一般に、凝固ゾーンに処理しようとする水を導入することによって得られ、この凝固ゾーンにおいては、たとえば三価金属塩で構成することができる凝固試薬が注入される。
【0005】
このようにして凝固させた水にその後、凝集ステップを施す。この凝集は、前もって凝固させたコロイド粒子の凝集による塊(flocks)の形成を誘導する。これは一般に、凝集ゾーンに凝固水を導入することによって得られ、この凝集ゾーンにおいては、通常有機ポリマーで構成される凝集試薬が凝固水に注入される。
【0006】
最後に、水から前記塊を分離するために、凝固および凝集した水に沈降ステップを施す。沈降は、形成されたスラッジをそこから抽出するアンダーフローを通じて沈降槽内の水を移行させることによって得られる一方、処理済み水はオーバーフローを通じて抽出される。その後の研磨ステップを経るために、処理済み水はその後、凝固、凝集および沈降を実施するために必要となる設備下流に位置するろ過装置に送ることができる。
【0007】
塊の形成速度およびその沈降速度を向上させるために、いわゆるバラスト凝集技術が開発されている。そのような技術は特に、本出願人を代表して出願された国際公開第03/053862A1号および国際公開第2008/083923A1号に記載されている。
【0008】
バラスト凝集は、一般に高密度微粒状材料からなるバラストの使用で構成され、この高密度微粒状材料は、凝集ゾーンまたはそこから上流に直接注入される。バラストの注入により、バラスト塊が比較的急速に形成され、従来の塊の沈降速度に対して沈降速度が増大する。
【0009】
基本的には水中の懸濁粒子の含有量を低下させることを目的とするバラスト凝集処理は、使用の結果、基本的に水中の溶解汚染物質含有量が削減される吸着処理と関連していることがある。
【0010】
吸着による水の処理は一般に、活性炭など、吸着特性を有する少なくとも1種の試薬を水に注入することによって得られる。
【0011】
たとえば、本出願人を代表して出願されたフランス特許出願公開第2868064A1号に明記されているように、凝集および/または凝固ゾーンに直接、あるいは凝固および凝集ゾーンから分離されている接触ゾーンにおいて、吸着性試薬の注入を行うことが知られている。
【0012】
これらの技術の使用は、水中の溶解または懸濁コロイド不純物含有量が結果的に大幅に削減される点で、特に興味深い。
【0013】
しかしながら、これらの技術にはいくつかの欠点がある。
【0014】
従来技術の欠点
特に、吸着処理は、制御されている場合にのみ有効となることがある。
【0015】
しかしながら、吸着性試薬の消費量の制御を欠いていると、これら水処理技術の使用につきものの大きな問題を示す。
【0016】
この問題は基本的に2つの形、吸着性試薬の供給が不十分または過剰であることに媒介される。
【0017】
吸着性試薬の供給が不十分であると、水中に含まれる不純物の吸着による削減が制限され、したがって処理済み水の製造が造水基準を満たさなくなる。
【0018】
過剰な吸着性試薬の供給は、水中に含まれる不純物の量を大幅に削減することを可能にするが、それにもかかわらず、水中に多くの粒子が存在することにより平均品質の水の生成が誘導される。実際には、吸着性試薬が過度に高い比率で供給されると、水が処理された後に吸着性試薬の一部が水中で見つかることが珍しくない。
【0019】
吸着性試薬供給の制御が不十分であると、生成される水の品質に関する問題が誘発されることの他にも、経済的な問題が誘発される。
【0020】
吸着性試薬の供給が不十分である結果、平均品質の水が生成され、品質レベルの向上には、追加費用を生む補助処理の使用が必要となる。
【0021】
過剰な吸着性試薬の供給は、それ自体が追加費用を生む過剰な消費を示す。
【0022】
加えて、過剰な吸着性試薬供給の場合に生成される水の品質が相対的に可もなく不可もないことを考えると、全体の水処理コストに悪影響を及ぼす補助処理を使用することも必要である。
【0023】
最後に、吸着性試薬供給の制御が不十分であると一般に、平均品質の水の生成および/または水処理コストの増大が生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0024】
【特許文献1】国際公開第03/053862A1号
【特許文献2】国際公開第2008/083923A1号
【特許文献3】フランス特許出願公開第2868064A1号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0025】
本発明の目的
したがって、本発明の目的は、特に従来技術の前記欠点を修復することである。
【0026】
より具体的には、本発明の目的は、本発明の少なくとも一実施形態において、特にバラスト凝集および吸着処理を含む水処理技術を提供し、この水処理技術により結果として、最低でも従来技術の技法と比較して質の高い水が製造されることである。
【0027】
本発明の別の目的は、本発明の少なくとも一実施形態において、そのような水処理技術を使用し、この水処理技術により結果として処理済み水製造コストが削減されることである。
【0028】
本発明のさらなる目的は、本発明の少なくとも一実施形態において、特に経済的、最低でも従来技術による技法よりも経済的であるような水処理技術をもたらすことである。
【0029】
本発明の目的はまた、本発明の少なくとも一実施形態において、確固たる、効果的で使いやすい、そのような水処理技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0030】
これらの目的は、以下に明らかとなる他の目的と共に、処理設備における溶解または懸濁コロイド不純物を含む未処理水の処理のための方法を用いることで実現される。前記方法は、少なくとも以下のステップ:
撹拌事前接触ゾーンにおいて、前記未処理水を少なくとも1種の粉末吸着剤と接触させるステップと、
前記事前接触ゾーンからの第1の混合物を、撹拌バラスト凝集ゾーンへと導入するステップと、
前記撹拌バラスト凝集ゾーンにおいて、前記第1の混合物を、少なくとも1種の凝集剤と、また水よりも重い少なくとも1種の不溶性粒状材料からなる少なくとも1種のバラストと接触させて、バラスト塊の形成を可能にするステップと、
前記バラスト凝集ゾーンからの第2の混合物を、沈降ゾーンへと導入するステップと、
前記沈降ゾーンの下部において、スラッジと、バラストと、粉末吸着剤との混合物を抽出するステップと、
前記沈降ゾーンの上部において、スラッジと、バラストと、粉末吸着剤との前記混合物から分離された処理済み水を抽出するステップと、
スラッジと、バラストと、粉末吸着剤との前記混合物を液体サイクロンに導入するステップと、
前記バラスト凝集ゾーンにおいて、本質的にバラストからなる前記液体サイクロンのアンダーフローを再利用するステップと、
スラッジと粉末吸着性試薬との混合物からなる前記液体サイクロンのオーバーフローを、移行ゾーンへと送るステップとを含む。
【0031】
本発明によれば、そのような方法は、
前記移行ゾーンからの、スラッジと粉末吸着剤との混合物の少なくとも一部の、前記事前接触ゾーンにおける再利用ステップと、
前記事前接触ゾーンにおける粉末吸着剤濃度の情報の少なくとも1つの代表的な項目の連続測定ステップと、
前記事前接触ゾーンにおける前記粉末吸着剤濃度が所定のしきい値未満である場合に、新たな粉末吸着剤水性溶媒懸濁液の、前記事前接触ゾーンより上流における注入ステップと、
前記吸着剤懸濁液の酸性化ステップも含む。
【0032】
このようにして、本発明は、全く新規で創意工夫に満ちた手法に基づく。この手法は、
処理しようとする水をそのような試薬と接触させる事前接触ゾーンにおける、沈降ゾーンのアンダーフローに接続されている液体サイクロンのオーバーフローからのスラッジと吸着性試薬との混合物の再利用することによって、および
水をそのような試薬と接触させる事前接触ゾーンにおける粉末吸着剤濃度の情報の代表的な項目を測定することによって、および
適切な品質の水を生成するために所定の吸着性試薬濃度を前記事前接触ゾーンで維持することが必要となる場合に、特定の量の新たな粉末吸着剤水性溶媒懸濁液を前記接触ゾーンから上流で注入することによって、
吸着による水処理の制御で構成される。
【0033】
したがって、そのような技術を使用すると、吸着性試薬の消費を制限し、また水の生成に必要となる処理工程数を制限しながらも上質の水を生成するために、既に使用済みの吸着性試薬の一部を再利用し、また新たな吸着性試薬水性溶媒懸濁液を必要で正確な量だけ、処理しようとする水に注入することが可能となる。
【0034】
したがって、本発明による技術を使用するとその結果、従来技術による技法と少なくとも同質であるがより低コストで水が生成される。
【0035】
好ましい態様によれば、本発明による方法は前記懸濁液の酸性化ステップを含む。
【0036】
そのようなステップを使用すると、吸着剤粒子径を縮小することが可能となり、同じ濃度において、処理しようとする水と接触している吸着剤粒子の全比表面積を増大させることが可能となる。この結果、本発明による方法の吸着容量が向上する。
【0037】
反対に、同じ性能では、前記酸性化ステップを使用すると、吸着剤消費をさらに削減することが可能となる。この結果、処理済み水中の残留吸着剤の量がより少なくなり、本発明による方法より下流で使用する処理にプラスの影響を及ぼす。
【0038】
懸濁液の粉末吸着性試薬濃度は、有利には5〜50mg/l、優先的には5〜15mg/lである。この濃度は特に、処理の目的、使用する吸着性試薬の質、および処理しようとする水のpHに応じて変化する。
【0039】
有利な一特徴によれば、前記事前接触ゾーン中の粉末吸着剤濃度の情報の少なくとも1つの代表的な項目の前記連続測定ステップは、
前記未処理水の紫外吸光度を測定し、
前記処理済み水の紫外吸光度を測定し、
吸光度測定値から、粉末吸着剤濃度を推定すること
からなるサブステップを含む。
【0040】
実際には、これらのサブステップを使用すると、事前接触ゾーンに存在する吸着剤の濃度に関する情報の代表的な項目を、簡単に、効率的に、かつ正確に得ることが可能となる。これにより、新たな吸着剤の適切な供給量と満足するようにしてこの濃度を再調整し、それに応じて前記(1種または複数種の)吸着剤の消費を可能な限り正確に制限することが可能となる。
【0041】
有利な特徴によれば、前記粉末吸着剤が粉末活性炭で構成されている。
【0042】
この場合、前記事前接触ゾーンにおける前記粉末活性炭の濃度しきい値は、優先的には0.5〜10g/lである。
【0043】
事前接触ゾーンにおける吸着剤濃度が0.5g/l未満であると、本発明による方法の吸着容量が不十分である点で、満足に水を処理することが不可能となる。しかしながら、この濃度が3g/lよりも高く維持されると、吸着剤の吸着容量が大幅に増大することが観測されている。
【0044】
事前接触ゾーンにおける粉末吸着剤濃度が5g/lよりも高い場合、本方法による処理済み水は、下流の処理に悪影響を及ぼすように前記(1種または複数種の)吸着剤を一定の割合だけ含有する。特に、これらの処理がろ過膜の直接使用を含む場合、過度に高い吸着剤濃度により、膜の目詰まりが生じ、したがってそのろ過時間が短縮されることがある。
【0045】
この欠点を防ぐために、凝集ゾーンにおける凝集剤(たとえば、ポリマー)の濃度を増大させることを想定することができる。しかしながら、この結果、水処理コストが増大する。
【0046】
有利には、前記事前接触ゾーンにおける前記粉末活性炭の前記濃度しきい値が1〜3g/lで変化する。
【0047】
事前接触ゾーンにおけるそのような吸着剤濃度により、満足な吸着レベルを維持することも、処理済み水中の残留吸着剤の割合を制限し、したがって下流の処理への悪影響の発生を制限することも可能となる。
【0048】
有利には、前記粉末活性炭素が、8〜60マイクロメートルの粒径分布を示す。
【0049】
優先的特徴によれば、前記粉末活性炭が、15〜35マイクロメートルの粒径分布を示す。
【0050】
従来の粉末活性炭の粒径分布と同等であって、事前接触ゾーンにおける0.5〜5g/lの吸着剤濃度値に関連しているそのような粒径分布により、満足できる吸着容量を本方法に与える全比表面積の発生が可能となる。
【0051】
別の優先的特徴によれば、前記粉末活性炭が、8〜15マイクロメートルの粒径分布を示す。較正済み粉末活性炭の粒径分布と同等であるそのような粒径分布により、等しい吸着剤濃度において、その比表面積を増大させ、またそれに応じて本発明による方法の吸着容量を増大させることが可能となる。
【0052】
別の優先的特徴によれば、前記粉末活性炭が、1マイクロメートル未満の粒径分布を示す。
【0053】
微粒粉末活性炭の粒径分布と同等であるそのような粒径分布により、等しい吸着剤濃度において、その比表面積をさらに増大させ、またそれに応じて本発明による方法の吸着容量を増大させることが可能となる。そのような粉末活性炭は一般に、エマルションの形で直接販売され、したがって、従来の、または較正済み粉末活性炭を使用する場合のように特定の装置の使用を必要とすることなく、使いやすいという利点を提供する。実際には、この種のPACを使用すると、その注入の前に非飲用水との混合が必要となり、この混合には、撹拌機を収容しているタンクなど、コストのかかる特定の手段が必要となる。
【0054】
吸着剤懸濁液の前記酸性化ステップが、pH値が2〜5となるまで、前記新たな粉末吸着剤水性溶媒懸濁液へ酸を注入することを含む。
【0055】
優先的には、pH3〜4が得られるまで、懸濁液に酸を注入することになる。
【0056】
特に優先的には、3に等しいpHが得られるまで、懸濁液に酸を注入することになる。
【0057】
好ましい態様によれば、本発明による方法は、前記未処理水の凝固ステップを含む。
【0058】
有利には、一方の作用が他方の作用を抑制しないように、凝固剤と凝集剤とを別々に注入する。
【0059】
この場合、前記凝固ステップが有利には、前記事前接触ゾーンから上流における少なくとも1種の凝固剤の前記未処理水への注入を含む。
【0060】
異なる手法によれば、前記凝固ステップが有利には、前記事前接触ゾーンと前記バラスト凝集ゾーンとの間に位置する前記凝固ゾーンにおける、少なくとも1種の凝固剤の前記未処理水への注入を含む。
【0061】
たとえば、吸着性樹脂、膨張粘土、または活性アルミナ粉末など、PAC以外の吸着剤を使用することもできる。
【0062】
本発明の他の特徴および利点が、単に例示的および非限定的な例として示す優先的実施形態についての、また本発明による方法の使用を意図した設備を示す添付の唯一の図1についての以下の説明を読むと、より明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明による方法の使用を意図した設備を示す。
【発明を実施するための形態】
【0064】
1.本発明の原理の概要
本発明の一般原理は、
処理しようとする水をそのような試薬と接触させる事前接触ゾーンにおける、沈降ゾーンのアンダーフローに接続されている液体サイクロン(hydrocyclone)のオーバーフローからのスラッジと吸着性試薬との混合物の再利用ステップと、
前記事前接触ゾーンにおける吸着性試薬濃度の代表的な情報の測定ステップと
の使用に基づいている。
【0065】
これにより、別のステップにおいて、新たな吸着性試薬水性溶媒懸濁液を事前接触ゾーンから上流で注入することが、適切な品質の水を生成するために所定の濃度の吸着性試薬を前記ゾーンで維持することが必要となる場合に可能となる。
【0066】
そのような技術を使用すると、水の吸着処理を制御し、したがって、最低でも従来技術による技法と比較して比較的低いコストで許容品質の水を生成することが可能となる。
2.本発明による水処理方法を使用するための設備の例
【0067】
図1を参照して、本発明による水処理方法の使用向けの設備の一実施形態について説明する。
【0068】
図1に示すように、そのような水処理設備は、処理しようとする未処理水1の供給管を備え、この供給管は事前接触ゾーン2に開口している。たとえば注入器9などの注入手段により、粉末吸着性試薬水性溶媒懸濁液の供給管1内を循環する処理しようとする水への注入が可能となる。
【0069】
事前接触ゾーン2は、タンク21の壁面によって区切られ、撹拌器22を収容する。この事前接触ゾーン2は、上部において凝固ゾーン3と連通している。
【0070】
前記凝固ゾーン3は、撹拌器32を収容するタンク31の輪郭によって区切られている。たとえば注入器33などの注入手段により、凝固ゾーン3への少なくとも1種の凝固試薬の注入が可能となる。この凝固ゾーン3は、下部においてバラスト凝集ゾーン4と連通している。
【0071】
前記バラスト凝集ゾーン4は、撹拌器42を収容するタンク41の輪郭によって区切られている。たとえば注入器43などの注入手段により、バラスト凝集ゾーン4への少なくとも1種の凝集試薬の注入が可能となる。また注入手段45により、砂など水よりも密度の高い不溶性粒状材料からなるバラストを、タンク41に導入することも可能となる。前記バラスト凝集ゾーン4もまた、基本的に管状の素子44を備える流れ誘導素子を収容し、素子44内部において撹拌機42を回転させる。このため、バラスト凝集ゾーン4は熟成ゾーンを形成する。バラスト凝集ゾーン4は上部において、沈降ゾーン5と連通している。
【0072】
沈降ゾーン5は、基本的に「U」字を画定するタンク51によって区切られている。この沈降ゾーン5は、スラッジと、バラストと、粉末吸着性試薬との混合物の抽出管7に接続されているアンダーフロー6を備える。沈降ゾーン5は、処理済み水を排出するためにオーバーフロー8も備える。
【0073】
管19およびポンプ10などの抽出手段により、スラッジと、バラストと、粉末吸着性試薬との前記混合物の、液体サイクロン11の入口へのルーティング(routing)が可能となる。
【0074】
液体サイクロン11はアンダーフローを備え、このアンダーフローにより、バラストと少量のスラッジとの混合物の、注入手段45へのルーティングが可能となる。前記アンダーフローは、非飲用(non−drinkable)水注入手段18に接続されている。これにより、バラストと希釈スラッジとの混合物の、バラスト凝集ゾーン4への注入が可能となる。液体サイクロン11は、管12に接続されているオーバーフローも備え、この管12を使用して、スラッジと粉末吸着性試薬との混合物を移行ゾーン14へと放出する。
【0075】
前記移行ゾーン14はオーバーフロー15を備え、このオーバーフロー15を使用して補助処理ゾーンへとスラッジを排出する。この移行ゾーン14は、スラッジと粉末吸着性試薬との混合物の排出管16も備え、この排出管16は、事前接触ゾーン2へと開口している。
【0076】
そのような設備は、事前接触ゾーン2に含まれている水の粉末吸着性試薬濃度の代表的な情報の測定手段を備える。前記測定手段17は、この実施形態においては、
管1内を循環する、処理しようとする未処理水の紫外線吸収測定手段と、
オーバーフロー8内を循環する処理済み水の紫外線吸収測定手段と、
事前接触ゾーン2に含まれている水の吸着性試薬濃度の情報の代表的な項目を、上記測定から推定するために使用する計算手段とを備える。
【0077】
前記測定手段17は制御手段(図示せず)に接続され、制御手段により、事前接触ゾーン2に含まれている水の吸着性試薬濃度の代表値を所定の基準値と比較することが可能となる。前記濃度の値が不十分と判明した場合には、前記制御手段により、前記濃度が一定となるよう新たな粉末吸着性試薬の非飲用水懸濁液が事前接触ゾーン2から上流で導入されるように、注入手段9の使用を制御することも可能となる。

3.本発明による水処理方法の例
【0078】
ここで、図1に示す設備を参照して、本発明による水処理方法について説明する。
【0079】
そのような方法は、事前接触ゾーン2に処理しようとする水を送ることで構成され、事前接触ゾーン2においては、たとえばPAC(粉末活性炭)など、少なくとも1種の粉末吸着性試薬と処理しようとする水を接触させる。
【0080】
10分に等しい接触時間の後、水とPACとの混合物を凝固ゾーン3へ導入し、凝固ゾーン3において注入手段33を用いて少なくとも1種の凝固試薬に接触させる。この実施形態の代替実施形態においては、前記接触時間は5〜15分でよい。凝固試薬は、凝固ゾーンにおける濃度が1.5mg/lに等しいアルミニウム塩で構成される。一代替実施形態においては、凝固試薬を鉄塩で構成することができる。凝固試薬が鉄塩であってもアルミニウム塩であっても、凝固ゾーン中の凝固試薬の濃度は、優先的には0.5〜3mg/lとなる。別の代替実施形態においては、Polyadamc(登録商標)などのポリマーで、凝固ゾーンにおける濃度が0.1〜1mg/lとなる凝固試薬を構成することができる。
【0081】
2分に等しい接触時間の後、水と粉末吸着性試薬と凝固試薬との混合物がバラスト凝集ゾーン4へと通過する。代替諸実施形態においては、前記接触時間は1〜3分でよい。
【0082】
そこでは前記混合物を、
注入手段43を用いて少なくとも1種の凝集試薬と、および
注入手段45を用いてバラストと接触させる。
【0083】
流れガイド44を使用すると、矢印Aで示す水の動きを誘発する動的現象の構築が可能となる。したがって、バラスト凝集ゾーンは熟成ゾーンを形成する。
【0084】
6分に等しい熟成時間の後、バラスト凝集ゾーン4からの混合物が沈降ゾーン5へと通過する。代替諸実施形態においては、前記接触時間は3〜8分でよい。
【0085】
スラッジとバラストと粉末吸着性試薬との混合物を、管7によって沈降ゾーン5のアンダーフロー6を通じて抽出する。処理済み水は、前記沈降ゾーンのオーバーフロー8を通じて回収する。
【0086】
スラッジとバラストと粉末吸着性試薬との前記混合物を、管19およびポンプ10によって、液体サイクロン11の入口へと再循環させる。
【0087】
バラストは、スラッジと粉末吸着性試薬との混合物から液体サイクロン11内部で分離される。バラストは、アンダーフローを通じて混合物から抽出され、バラスト凝集ゾーン4へと放出される。スラッジと粉末吸着性試薬との混合物は、液体サイクロン11のオーバーフローを通して抽出される。
【0088】
前記混合物は、管12を通って移行ゾーン14内へと送られる。前記混合物の一部は、事前接触ゾーン2において再利用される。
【0089】
事前接触ゾーン2に含まれている水の粉末吸着性試薬濃度の情報の代表的な項目を決定するために、測定手段17を連続的に使用する。
【0090】
この図において、管1内を循環する未処理水に関する紫外吸光度を、またオーバーフロー8を通じた処理済み水排出量を、これら2つの値を比較することによって、事前接触タンク2に含まれている水の粉末吸着性試薬濃度の情報の代表的な項目を決定するために測定する。
【0091】
この濃度の値をその後、前記濃度のレベルが十分に高いかどうかを検証するために、コンピュータなどの制御手段を用いて所定のしきい値と比較する。
【0092】
前記濃度のレベルが低すぎることが判明した場合には、事前接触ゾーン2内に存在する水の粉末吸着性試薬濃度が処理中に実質一定に保持されるような量の新たな粉末吸着性試薬水性溶媒懸濁液を、事前接触ゾーン2から上流で処理しようとする水に注入するために、注入手段9を使用する。
【0093】
この濃度は、0.5〜5g/lに、有利には1〜3g/lに維持されることが想定される。この実施形態においては、この濃度が、事前接触ゾーン2に含まれている水1リットル当たり粉末吸着性試薬2.5グラムで維持されることになる。
【0094】
本発明によれば、粉末吸着剤水性環境懸濁液を酸性化することが不可欠である。この酸性化は、たとえば、硫酸や、優先的にはクエン酸などの酸の、前記懸濁液への注入で構成することができる。懸濁液のpHの値が3に等しくなるまで、懸濁液に酸を注入することになる。他の代替実施形態においては、懸濁液のpHの値が2〜5、優先的には3〜4になるまで、懸濁液に酸を注入することになり、pHが5に等しくなると、改善が認められる。前記酸性化の結果、吸着剤の粒子径が減少し、等しい濃度では、前記吸着剤の、処理しようとする水との全接触比表面積が増大する。この結果、本発明による方法の吸着容量が向上する。
【0095】
その再利用ごとに、PAC吸着容量が減少することに留意されたい。しかしながら、事前接触ゾーンにおけるPAC濃度の増大は、本発明による方法の吸着容量にわずかなプラスの影響しか及ぼさない。一定のしきい値を上回ると、この増大が反対に、そのような方法の出口において処理済み水が示すべきPAC含有量により、この方法よりも下流に位置すべき処理に悪影響を及ぼすことがある。特に、事前接触ゾーン内の水5g/lを上回るPAC濃度の増大は、この方法から下流に位置するろ過膜の目詰まりのリスクを誘発することがある。
【0096】
4.代替実施形態
一代替実施形態においては、凝固ゾーン3を使用できないことがある。この場合、処理しようとする水を、事前接触ゾーン2への注入より前に、凝固させることになる。
【0097】
5.利点
本発明による水処理方法を使用すると、水への粉末吸着性試薬の供給を制御し、したがって吸着による水処理を制御することが可能となる。
【0098】
本発明の結果、粉末吸着性試薬の消費が、また水処理に必要となる工程数が制限される。したがって本発明を使用すると確実に、従来技術による技法で認められているよりも低コストで、適切な品質の水を製造することが可能となる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理設備における溶解または懸濁コロイド不純物を含む未処理水の処理のための方法であって、少なくとも以下のステップ:
撹拌事前接触ゾーン(2)において、前記未処理水を少なくとも1種の粉末吸着剤と接触させるステップと、
前記事前接触ゾーン(2)からの第1の混合物を、撹拌バラスト凝集ゾーン(4)へと導入するステップと、
前記撹拌バラスト凝集ゾーン(4)において、前記第1の混合物を、少なくとも1種の凝集試薬と、かつ水よりも重い少なくとも1種の不溶性粒状材料からなる少なくとも1種のバラストと接触させて、バラスト塊の形成を可能にするステップと、
前記バラスト凝集ゾーン(4)からの第2の混合物を、沈降ゾーン(5)へと導入するステップと、
前記沈降ゾーン(5)の下部において、スラッジと、バラストと、粉末吸着剤との混合物を抽出するステップと、
前記沈降ゾーン(5)の上部において、スラッジと、バラストと、粉末吸着剤との前記混合物から分離された処理済み水を抽出するステップと、
スラッジと、バラストと、粉末吸着剤との前記混合物を液体サイクロン(11)に導入するステップと、
前記バラスト凝集ゾーン(4)において、本質的にバラストからなる前記液体サイクロン(11)のアンダーフローを再利用するステップと、
スラッジと粉末吸着性試薬との混合物からなる前記液体サイクロン(11)のオーバーフローを、移行ゾーン(14)へと送るステップとを含み、
前記移行ゾーン(14)からの、スラッジと粉末吸着剤との前記混合物の少なくとも一部の、前記事前接触ゾーン(2)における再利用ステップと、
前記事前接触ゾーン(2)における粉末吸着剤濃度の情報の少なくとも1つの代表的な項目の連続測定ステップと、
前記事前接触ゾーン(2)における前記粉末吸着剤濃度が所定のしきい値未満である場合に、新たな粉末吸着剤水性溶媒懸濁液の、前記事前接触ゾーン(2)より上流における注入ステップを含み、かつ前記吸着剤懸濁液の酸性化ステップを含むことを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記事前接触ゾーン(2)における前記粉末吸着剤濃度の情報の少なくとも1つの代表的な項目の前記連続測定ステップが、
前記未処理水の紫外吸光度を測定し、
前記処理済み水の紫外吸光度を測定し、
前記吸光測定値から前記粉末吸着剤濃度を推定することからなるサブステップを含むことを特徴とする、請求項1に記載の処理方法。
【請求項3】
前記粉末吸着剤が粉末活性炭からなることを特徴とする、請求項1または2に記載の処理方法。
【請求項4】
前記事前接触ゾーン(2)中の前記粉末活性炭の濃度しきい値が0.5〜10g/lであることを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記事前接触ゾーン(2)中の前記粉末活性炭の前記濃度しきい値が1〜3g/lであることを特徴とする、請求項4に記載の処理方法。
【請求項6】
前記粉末活性炭が、8〜60マイクロメートルの粒径分布を示すことを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の処理方法。
【請求項7】
前記粉末活性炭が、15〜35マイクロメートルの粒径分布を示すことを特徴とする、請求項6に記載の処理方法。
【請求項8】
前記粉末活性炭が、8〜15マイクロメートルの粒径分布を示すことを特徴とする、請求項6に記載の処理方法。
【請求項9】
前記粉末活性炭が、1マイクロメートル未満の粒径分布を示すことを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の処理方法。
【請求項10】
前記酸性化ステップが、そのpH値が2〜5となるまで、前記新たな粉末吸着剤水性溶媒懸濁液へ酸を注入することを含むことを特徴とする、請求項1〜9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
前記酸性化ステップが、そのpH値が3に等しくなるまで、前記新たな粉末吸着剤水性溶媒懸濁液へ酸を注入することを含むことを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記未処理水の凝固ステップを含むことを特徴とする、請求項1〜11のいずれかに記載の処理方法。
【請求項13】
前記凝固ステップが、前記事前接触ゾーン(2)から上流における少なくとも1種の凝固剤の前記未処理水への注入を含むことを特徴とする、請求項12に記載の処理方法。
【請求項14】
前記凝固ステップが、前記事前接触ゾーン(2)と前記バラスト凝集ゾーン(4)との間に位置する前記凝固ゾーン(3)における少なくとも1種の凝固剤の前記未処理水への注入を含むことを特徴とする、請求項12に記載の処理方法。

【図1】
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【公表番号】特表2012−516229(P2012−516229A)
【公表日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−546767(P2011−546767)
【出願日】平成22年1月18日(2010.1.18)
【国際出願番号】PCT/EP2010/050533
【国際公開番号】WO2010/086249
【国際公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【出願人】(503289595)ヴェオリア・ウォーター・ソリューションズ・アンド・テクノロジーズ・サポート (25)
【Fターム(参考)】