説明

水中油型睫用化粧料

【課題】従来にはない高いツヤと黒さ、ぬるま湯に対する劇的なクレンジング性を有し、さらに保存安定性が良好な水中油型睫用化粧料を提供する。
【解決手段】下記成分(A)〜(E)、
(A)アクリル酸アルキル・酢酸ビニル共重合体エマルジョン
(B)アクリル酸アルキル共重合体エマルジョン
(C)カーボンブラック
(D)多価アルコール
(E)ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコールから選択される少なくとも1の水溶性皮膜形成剤
を配合し、成分(A)と(B)の固形分換算での質量比率が、(A):(B)=3:1〜1:3であり、かつ成分(D)の合計が化粧料全量に対して0.1〜4.0質量%であることを特徴とする水中油型睫用化粧料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は秀でた特徴を有するマスカラ等の睫用化粧料に関するものであり、特にツヤや黒さ、クレンジング性、及び保存安定性に優れた水中油型睫用化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
マスカラ等の睫用化粧料に対するニーズは年々多様化し、近年ではロング、ボリューム、カール力等の基本的な化粧効果以外にも様々な機能が求められるようになっている。特に目元を艶やかな印象にするためのツヤや黒さ、また入浴時に簡便に除去するためのぬるま湯に対するクレンジング性についても高い性能が求められるようになってきている。
【0003】
これらのニーズに対してメーカー側は様々な努力を行ってきており、例えば、特定の皮膜形成剤を用いることにより光沢性を向上させたマスカラ(特許文献1参照)や25℃以下の水にて容易に除去することを目的とした睫用化粧料(特許文献2参照)等が開発されている。
【0004】
しかしながら、いずれの発明においても、ぬるま湯におけるクレンジング性の効果は十分ではなかった。また目元の印象度を左右するツヤや黒さにおいても、計測機器による数値上ではなく、消費者の実感としてその効果は十分ではなく、現在の高い消費者のニーズを満たせてはいなかった。またいずれの発明も特定の樹脂を使用することで光沢を出そうとするあまり、保存安定性が良好ではなかった。
【0005】
また、一般的にロング、ボリューム、カール力等の基本的な化粧効果を出すためにはワックスや脂肪酸を主とする油性成分を多く配合する必要があるが、その一方でこれら油性成分の配合量を増やすとお湯に対するクレンジング性や保存安定性が悪化するという課題もあった。
【特許文献1】特表2003−521489号公報
【特許文献2】特開2006−257052号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が目的とするところは、目元を印象付けるツヤや黒さ、またぬるま湯に対するクレンジング性において従来にない優れた効果を有し、更に保存安定性が良好な水中油型睫用化粧料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は上記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、特定の成分を特定の条件で配合した場合にのみ、従来にはない高いツヤと黒さ、ぬるま湯に対する劇的なクレンジング性を発揮し、更に保存安定性が良好な水中油型睫用化粧料が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち本発明は、下記成分(A)〜(E);
(A)アクリル酸アルキル・酢酸ビニル共重合体エマルジョン
(B)アクリル酸アルキル共重合体エマルジョン
(C)カーボンブラック
(D)多価アルコール
(E)ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコールから選択される少なくとも1種以上の水溶性皮膜形成剤
を含有し、成分(A)と成分(B)との固形分換算での質量比率が、(A):(B)=3:1〜1:3であり、且つ成分(D)の配合量が化粧料総量に対して0.1〜4.0質量%であることを特徴とする水中油型睫用化粧料である。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、従来にはない高いツヤと黒さ、ぬるま湯に対する劇的なクレンジング性を有し、更に保存安定性が良好な水中油型睫用化粧料が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下に、本発明の最良な実施形態について詳述する。
【0011】
本発明に用いる成分(A)のアクリル酸アルキル・酢酸ビニル共重合体エマルジョンは、メタクリル酸アルキルモノマー及び/又はアクリル酸アルキルモノマーと、酢酸ビニルモノマーとを含んでなる単量体混合物を主成分とし、通常これらが乳化重合されて得られた樹脂と水とを含むエマルジョンの形態を有するものであり、化粧品に一般的に用いられるものであれば特に制限されず使用できる。
【0012】
本発明においては、これらの中から1種又は2種以上を適時選択して用いることができ、またその配合量は、化粧料総量を基準として0.1〜40.0質量%(以下、単に%と略す)であると好ましく、より好ましくは1.0〜30.0%であり、更に好ましくは3.0〜25.0%である。0.1%以上の配合量で十分な効果が得られ、40.0%以下の配合量であると、化粧料自体が白っぽく濁らず、高いツヤと黒さを発揮することができ好ましい。
【0013】
本発明に用いる成分(B)のアクリル酸アルキル共重合体エマルジョンは、メタクリル酸及び/又はアクリル酸モノマーと、メタクリル酸アルキルモノマー及び/又はアクリル酸アルキルモノマーとを含んでなる単量体混合物を主成分とし、通常これらが乳化重合されて得られた樹脂と水とを含むエマルジョンの形態を有するものであり、化粧品に一般的に用いられるものであれば特に制限されず使用できる。
【0014】
本発明に用いる成分(B)のアクリル酸アルキル共重合体エマルジョンは、1種又は2種以上を適時選択して用いることができ、またその配合量は、化粧料総量を基準として0.1〜40.0%であると好ましく、より好ましくは1.0〜30.0%であり、更に好ましくは3.0〜25.0%である。0.1%以上の配合量で十分な効果が得られ、40.0%以下の配合量であると、化粧料自体が白っぽく濁らず、高いツヤと黒さを発揮することができ好ましい。
【0015】
本発明には、上記の樹脂エマルジョン以外にも本発明の効果を損なわない程度であれば、1種又は2種以上の樹脂エマルジョンを組み合わせて用いても良い。例えば、ポリ酢酸ビニルエマルジョン、ポリ塩化ビニルエマルジョン、(メタ)アクリル酸アルキル・スチレン共重合体エマルション、ビニルピロリドン・スチレン共重合体エマルション、シリコーン系ポリマーエマルション、アクリルアミド系ポリマーエマルション、ウレタン系ポリマーエマルション等が挙げられる。
【0016】
また本発明においては、成分(A)と(B)の固形分換算での質量比率は、(A):(B)=3:1〜1:3であり、好ましくは(A):(B)=3:2〜1:2である。これらの範囲内であれば、高いツヤと黒さ、ぬるま湯に対する優れたクレンジング性を発揮し、かつ良好な保存安定性を得ることができる。
【0017】
尚、本明細書において「ぬるま湯」とは、30℃〜45℃の水を意味する。
【0018】
更に本発明においては、成分(A)と(B)のいずれかのガラス転移温度(Tg)が0℃未満であり、もう一方が0℃以上であると、クレンジング性と保存安定性の面から望ましい。とりわけ成分(A)のTgが0℃未満であり、且つ成分(B)のTgが0℃以上であると好ましく、更に成分(A)のTgが−5℃未満であり、かつ成分(B)のTgが10℃以上であるとより好ましい。また、成分(A)の少なくとも1種と成分(B)の少なくとも1種のTgの差が20℃〜60℃の範囲内であると、前述の本発明の効果が最大化されるため、更に好ましい。
【0019】
なお、本明細書において「ガラス転移温度(Tg)」とは、ポリマーのガラス転移温度を意味し、当業者間で一般的に用いられる示差走査熱量計(例えば、セイコーインスツルメンツ社製のDSC6200等)によって計測された実測値を指す。
【0020】
本発明に用いる成分(C)のカーボンブラックとしては、化粧品に一般的に用いられるものであれば特に制限されず使用できる。本発明においては、最終生成物となった状態で、90vol%以上のカーボンブラック粒子の分散径が0.6μm以下に制御されているとツヤと黒さの面から好ましい。
【0021】
成分(C)のカーボンブラックは、1種又は2種以上を適時選択して用いることができ、またその配合量は、化粧料総量を基準として0.01〜10.0%であると好ましく、より好ましくは0.1〜5.0%であり、更に好ましくは1.0〜4.0%である。0.01%以上の配合量ではツヤと黒さの面で十分な効果が得られ、10.0%以下の配合量であると化粧料自体の保存安定性が良好なため好ましい。
【0022】
成分(D)の多価アルコールとしては、化粧品に一般的に用いられているものであれば、特に限定されず何れのものも使用できる。例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,4−ブチレングリコール(2価アルコール)、グリセリン、トリオキシイソブタン(3価アルコール)、エリトリット、ペンタエリトリット(4価アルコール)、キシリット、アドニット(5価アルコール)、アロズルシット、ソルビトール、ソルビット液、マンニトール(6価アルコール)等が挙げられる。
【0023】
本発明においては、これらの中から1種又は2種以上を適時選択して用いることができるが、ジプロピレングリコール、1,3−ブチレングリコールの中から選択されて用いられることが好ましく、1,3−ブチレングリコールであるとより好ましい。またその配合量は、化粧料総量を基準として0.1〜4.0%であり、好ましくは0.5〜3.0%である。これらの範囲内であれば、ぬるま湯に対する優れたクレンジング性と良好な保存安定性を得ることができる。
【0024】
成分(E)のポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコールから選択される少なくとも1種の水溶性皮膜形成剤としては、化粧品に一般的に用いられているものであれば、重合度に因らず、特に限定されずに何れのものも使用できる。
【0025】
成分(E)の水溶性皮膜形成剤としては、これらのうち、ポリビニルピロリドンを用いるのが好ましい。またその配合量は、化粧料総量を基準として0.01〜5.0%であるのが好ましく、より好ましくは0.1〜3.0%である。これらの範囲内であれば、ぬるま湯に対する優れたクレンジング性と良好な保存安定性を得ることができる。
【0026】
本発明の水中油型睫用化粧料は種々の形態で用いることができ、固形又は液状形態のマスカラやマスカラ下地、マスカラオーバーコート等、睫毛に塗付する剤型に適用し、常法
に従い製造することができる。
【0027】
また本発明においては、成分(C)のカーボンブラック以外の顔料についても本発明の効果を損なわない範囲で用いることができる。これらは、化粧品に通常使用されるものであれば何れでもよい。その形態についても、板状、紡錘状、針状等の形状、粒子径、多孔質、無孔質等の粒子構造等により特に限定されない。例えば、無機粉体類、光輝性粉体類、有機粉体類、色素粉体類、複合粉体類等が挙げられ、1種又は2種以上を組み合わせて用いることができ、油層と水層のどちらに配合されてもよい。具体的には、コンジョウ、群青、ベンガラ、黄酸化鉄、黒酸化鉄、酸化チタン、酸化亜鉛、チタン・酸化チタン焼結物、酸化セリウム、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、酸化アンチモン、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、酸化クロム、水酸化クロム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸バリウム、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、メタケイ酸アルミニウムマグネシウム、マイカ、合成マイカ、合成セリサイト、セリサイト、タルク、白雲母、金雲母、紅雲母、黒雲母、カオリン、硫酸バリウム、ベントナイト、スメクタイト、珪ソウ土、ヒドロキシアパタイト、窒化硼素等の無機粉体類、オキシ塩化ビスマス、雲母チタン、二酸化チタン被覆オキシ塩化ビスマス、酸化鉄被覆雲母、酸化鉄被覆雲母チタン、紺青被覆雲母チタン、カルミン被覆雲母チタン、有機顔料被覆雲母チタン、酸化鉄・酸化チタン被覆合成金雲母、魚燐箔、二酸化チタン被覆ガラスフレーク、銀被覆ガラスフレーク、金被覆ガラスフレーク、酸化鉄被覆ガラスフレークポリエチレンテレフタレート・アルミニウム・ポリウレタン積層末、ポリエチレンテレフタレート・ポリオレフィン積層フィルム末、ポリエチレンテレフタレート・ポリメチルメタクリレート積層フィルム末等の光輝性粉体類、ポリアミド系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリアクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、フッ素系樹脂、セルロース系樹脂、ポリスチレン系樹脂、スチレン−アクリル共重合体樹脂等のコポリマー樹脂、ポリプロピレン系樹脂、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂等の有機高分子樹脂粉体、N−アシルリジン等の有機粉体類、澱粉、シルク粉末、セルロース粉末等の天然有機粉体、有機タール系顔料、有機色素のレーキ顔料等の色素粉体類、アルミニウム粉、金粉、銀粉等の金属粉体、微粒子酸化チタン被覆雲母チタン、微粒子酸化亜鉛被覆雲母チタン、硫酸バリウム被覆雲母チタン、酸化チタン含有二酸化珪素、酸化亜鉛含有二酸化珪素等の複合粉体等が挙げられる。またこれらの色素及び顔料は、表面をシリコーン類、ラウロイルリジン、ステアロイルグルタミン酸塩、パーフルオロアルキルリン酸エステルジエタノールアミン塩、ポリエチレン、その他油剤等で被覆処理されていても良い。
【0028】
本発明の水中油型睫用化粧料は、前記の各成分に加えて必要に応じて、かつ本発明の効果を損なわない範囲において、化粧品において一般的に用いられる各種の成分、例えば、睫毛を長く見せるための繊維、固形、半固形又は液状の油性成分、保湿剤、増粘剤、水溶性高分子、香料、殺菌剤、防腐剤、酸化防止剤、pH調整剤、キレート剤、紫外線吸収剤、溶剤、抗炎症剤、抗アンドロゲン剤、育毛剤、抗酸化剤、清涼剤、生薬抽出物やビタミン類、キューティクル保護成分等を適時配合することができる。
【0029】
本発明で用いることのできる上記繊維としては、化粧品に一般的に用いられているものであれば、特に限定されず何れのものも使用できる。例えば、ナイロン、ポリエステル等の合成繊維、レーヨン等の人造繊維、セルロース等の天然繊維、アセテート人絹等の半合成繊維等が挙げられる。またこれらの繊維は一般油剤、シリコーン油、フッ素化合物、界面活性剤等で処理したものも使用することができる。
【0030】
本発明で用いることのできる上記油性成分としては、化粧品に一般的に用いられているものであれば、特に限定されず何れのものも使用できる。例えば、パラフィンワックス、セレシンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ポリエチレンワックス、エチレン・プロピレンコポリマー、α−オレフィンオリゴマー、モンタンワックス、フィッシャート
ロプシュワックス、モクロウ、ミツロウ、カルナウバワックス、キャンデリラワックス、ゲイロウ、コメヌカロウ等のワックス類や、アクリルシリコーン・グラフト共重合体、トリメチルシロキシケイ酸等の有機シリコーン樹脂、エイコセン・ビニルピロリドン共重合体、キャンデリラロウ樹脂、ロジン系樹脂等の油溶性樹脂、ステアリン酸、パルミチン酸、2−エチルヘキサン酸、ウンデシレン酸、パルミトオレイン酸、イソステアリン酸、リシノレイン酸、リノール酸、オレイン酸等の脂肪酸、マカデミアナッツ油、オリーブ油、ツバキ油、アボガド油、トウモロコシ油、ヒマシ油、ゴマ油、サフラワー油、綿実油、大豆油、ホホバ油、パーム油、ヤシ油、硬化ヤシ油、硬化油、硬化ヒマシ油、卵黄油、ナタネ油、コムギ胚芽油、落花生油、コメヌカ油等の油脂、イソノナン酸イソノニル、イソノナン酸イソトリデシル、オクタン酸セチル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸オクチル、パルミチン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル、リンゴ酸ジイソステアリル、トリオクタン酸グリセリル、トリ(カプリル/カプリン酸)グリセリル、(カプリル/カプリン/ミリスチン/ステアリン酸)トリグリセリル、オレイン酸フィトステリル、乳酸オクチルドデシル、イソステアリン酸イソプロピル、トリベヘン酸グリセリル、ロジン酸ペンタエリトリットエステル、ジオクタン酸ネオペンチルグリコール、コレステロール脂肪酸エステル、N−ラウロイル−L−グルタミン酸ジ(コレステリル・ベヘニル・オクチルドデシル)、マカデミアナッツ油脂肪酸コレステリル,マカデミアナッツ油脂肪酸フィトステリル等のエステル類、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ラウリルアルコール、イソステアリルアルコール、ラノリンアルコール、オクチルドデカノール、カプリルアルコール、オレイルアルコール等の高級アルコール、軽質流動イソパラフィン、流動パラフィン、スクワラン、ワセリン、ポリブテン、イソドデカン等の炭化水素、低重合度ジメチルポリシロキサン、高重合度ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン等のシリコーン系油、フッ素変性ポリシロキサン等、パーフルオロデカン、パーフルオロオクタン、パーフルオロポリエーテル等のフッ素油、パルミチン酸2−エチルヘキシル、2−エチルヘキサン酸セチル、イソノナン酸イソトリデシル等の脂肪酸と一価のアルコールのエステル、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、ジ−2−エチルヘキサン酸ネオペンチルグリコール、ステアリン酸ポリエチレングリコール等の脂肪酸とグリコールのエステル、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、テトラ2−エチルヘキサン酸ペンタエリスリトールなどの脂肪酸と多価アルコールのエステル、リンゴ酸ジイソステアリル等の水酸基を持つエステル、コハク酸ジ2−エチルヘキシル、炭酸ジアルキル等の二塩基酸のエステル、マカデミアナッツ油脂肪酸コレステリル、マカデミアナッツ油脂肪酸フィトステリル等の脂肪酸とステロールとのエステルや液状ラノリン、酢酸ラノリン、ラノリン脂肪酸イソプロピル、ラノリンアルコール等のラノリン誘導体等が挙げられる。これらは油槽成分として配合され、本発明においてはその合計配合量が化粧料総量を基準として17〜30%であることが好ましく、より好ましくは19〜25%である。
【実施例】
【0031】
以下、実施例によって本発明を更に詳細に説明するが、これらの実施例により本発明の技術範囲が限定されるものではない。尚、表中の数値は含有量(%)を表わす。実施例に先立ち、各実施例で採用した評価方法を説明する。
【0032】
(1)保存安定性評価試験方法
所定の方法で調製した睫用化粧料を5〜40℃の1サイクル/日の往復恒温槽内に放置して、1ヶ月後の保存安定性を下記の評価基準に従って評価した。
分離、凝集、固化なし ;◎
分離、凝集、固化ごくわずかに有り ;○
分離、凝集、固化あり ;△
完全に分離又は固化 ;×
【0033】
(2)官能評価試験方法
女性パネラー20名によって、睫毛に塗布後の目元の印象度(ツヤと黒さ)、ぬるま湯(38℃の水道水)に対するクレンジング性について下記の評価基準に従って評価した。なお、ぬるま湯に対するクレンジング性の評価については、市販のコットンに38℃に設定した水道水を2.0g浸し、塗布後の睫毛を挟み込んで15秒間馴染ませた後、睫毛上のマスカラの残り具合によって評価した。
(評価基準)
良いと答えた人数が17人以上 ;◎
良いと答えた人数が12〜16人;○
良いと答えた人数が8〜11人 ;△
良いと答えた人数が7人以下 ;×
(評価項目)
a.目元の印象度(ツヤ)
b.目元の印象度(黒さ)
c.ぬるま湯に対するクレンジング性
【0034】
水中油型睫用化粧料の調製方法
・製法:(1)〜(5)を混合し90℃に加熱して溶解、均一化し、これを「油槽」とする。
・次に(6)〜(12)の成分を90℃に加熱溶解した後、(19)〜(20)の顔料を添加し、あらかじめ溶解させておいた油槽成分をこれに添加してホモミキサーにより乳化させる。そして、室温まで撹拌をしながら冷却し、(13)〜(18)と(21)の成分を添加し、再度攪拌する。これを所定の気密容器に充填し、目的の水中油型睫用化粧料を得る。
【0035】
上記各組成物の成分組成、及び評価試験結果を表1に示す。
【0036】
【表1】

【0037】
表1に示すように、本発明の実施例1〜4のものは、目元を印象付けるツヤや黒さ、またぬるま湯に対するクレンジング性、及び保存安定性の全ての点において、比較例1〜7のものより明らかに優れている。
【0038】
以下の成分組成において常法に従い水中油型睫用化粧料を調製し、上記の評価試験を行ったところ、何れも目元を印象付けるツヤや黒さ、またぬるま湯に対するクレンジング性、及び保存安定性の全ての点において優れた結果を示した。
【0039】
実施例5 (%)
・ポリエチレンワックス 2.0
・カルナウバロウ 3.0
・ミツロウ 5.0
・パラフィンワックス 2.0
・ステアリン酸 3.0
・セトステアリルアルコール 3.0
・ポリステアリン酸スクロース 1.0
・トリエタノールアミン 1.0
・精製水 残 量
・1,3−ブチレングリコール 1.0
・ポリビニルピロリドン 1.0
(PVP K−30、BASF社製)
・ヒドロキシエチルセルロース 0.5
・アクリル酸アルキル・酢酸ビニル共重合体エマルジョン 5.0
(Tg=20℃:固形分50%)
・アクリル酸アルキル共重合体エマルジョン 10.0
(Tg=−14℃:固形分50%)
・ポリ酢酸ビニルエマルジョン(固形分40%) 10.0
(ビニブランGV−5651、日信化学工業社製)
・カーボンブラック 2.0
・ナイロン末(2mm、6デニール) 1.0
・メチルパラベン 適 量
【0040】
実施例6 (%)

・ポリエチレンワックス 1.0
・カルナウバロウ 5.0
・ミツロウ 8.0
・パラフィンワックス 3.0
・ステアリン酸 5.0
・セトステアリルアルコール 2.0
・エイコセン・ビニルピロリドン共重合体 0.5
(ANTARON V−220、ISP社製)
・トリエタノールアミン 0.5
・精製水 残 量
・ジプロピレングリコール 1.0
・1,3−ブチレングリコール 1.0
・グリセリン 1.0
・ポリビニルアルコール 2.0
(PVA−EG40、日本合成化学工業社製)
・ヒドロキシエチルセルロース 0.5
・アクリル酸アルキル・酢酸ビニル共重合体エマルジョン 10.0
(Tg=20℃:固形分50%)
・アクリル酸アルキル共重合体エマルジョン 15.0
(Tg=−14℃:固形分50%)
・カーボンブラック 1.0
・疎水化処理無水ケイ酸 0.1
(AEROSIL R972、日本アエロジル社製)
・エチルパラベン 適 量

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記成分(A)〜(E);
(A)アクリル酸アルキル・酢酸ビニル共重合体エマルジョン
(B)アクリル酸アルキル共重合体エマルジョン
(C)カーボンブラック
(D)多価アルコール
(E)ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコールから選択される少なくとも1種以上の水溶性皮膜形成剤
を含有し、成分(A)と成分(B)との固形分換算での質量比率が、(A):(B)=3:1〜1:3であり、且つ成分(D)の配合量が化粧料総量に対して0.1〜4.0質量%であることを特徴とする水中油型睫用化粧料。
【請求項2】
油性成分の配合量が化粧料総量に対して17〜30質量%であることを特徴とする請求項1記載の水中油型睫用化粧料。
【請求項3】
成分(A)及び成分(B)のいずれかのガラス転移温度(Tg)が0℃未満であり、もう一方のTgが0℃以上であることを特徴とする請求項1又は2記載の水中油型睫用化粧料。
【請求項4】
成分(A)の少なくとも1種と、成分(B)の少なくとも1種とのTgの差が、20〜60℃であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の水中油型睫用化粧料。

【公開番号】特開2010−77042(P2010−77042A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−245138(P2008−245138)
【出願日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】