説明

水中用線状ヒーター

【課題】従来品よりも目立たなくさせることができると共に、水槽等の大きさや設置位置の形状、構造等に合わせて所望の形状に自由自在に変形させることのできる水中用ヒーターを提供する。
【解決手段】この発明に係る水中用線状ヒーター1は、PTC特性を有するセラミックスの粉粒体がバインダー材に分散されてなる発熱組成物4が、互いに離間して配置された一対の電線2、3の間に、これら電線2、3と接触状態に配置されてなる線状ヒーター部7を備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば観賞魚用水槽等において、水中浸漬状態で使用される水中用線状ヒーターに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の水中用ヒーターとして、両端閉塞の筒状ヒーター管内にコイル状発熱線を収容し、発熱線へ通電加熱して、水温が設定値を越えた時に、サーモスタットにより発熱線への給電を停止することで、水槽内の水温を一定に制御するように構成されたものが公知である(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平10−98980号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記従来の水中用ヒーターは、嵩張った大きさを有するので、即ち設置占有体積が大きいので、この水中用ヒーターを例えば観賞魚用水槽内に設置すると水槽内において水中用ヒーターが目立ってしまいその観賞性を低下させることは避けられなかった。
【0004】
また、従来の水中用ヒーターでは、発熱線を収容したヒーター管は、ガラス等の硬質材料で製作されているから、水槽の大きさや設置位置の形状、構造等に合わせて水中用ヒーターの形状を変形させて目立たないように配置するというような対応は到底不可能であった。
【0005】
この発明は、かかる技術的背景に鑑みてなされたものであって、従来品よりも目立たなくさせることができると共に、水槽等の大きさや設置位置の形状、構造等に合わせて、所望の形状に自由自在に変形させることのできる水中用ヒーターを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提供する。
【0007】
[1]PTC特性を有するセラミックスの粉粒体がバインダー材に分散されてなる発熱組成物が、互いに離間して配置された一対の電線の間に、これら電線と接触状態に配置されてなる線状ヒーター部を備えることを特徴とする水中用線状ヒーター。
【0008】
[2]PTC特性を有するセラミックスの粉粒体がバインダー材に分散されてなる発熱組成物からなる発熱線材中に、互いに離間した一対の電線が該線材の長さ方向に沿って配置されてなる線状ヒーター部を備えることを特徴とする水中用線状ヒーター。
【0009】
[3]前記線状ヒーター部の少なくとも外周面が絶縁被覆材で被覆されている前項1または2に記載の水中用線状ヒーター。
【0010】
[4]前記線状ヒーター部は略螺旋状に成形されていることを特徴とする前項1〜3のいずれか1項に記載の水中用線状ヒーター。
【発明の効果】
【0011】
[1]の発明では、PTC特性を有するセラミックスの粉粒体がバインダー材に分散されてなる発熱組成物が、互いに離間して配置された一対の電線の間に、これら電線と接触状態に配置されてなる線状ヒーター部を備えるから、電線間に通電すると発熱組成物が発熱し、この熱によって水を温めることができる。また、ヒーター部は線状であるから、目立たなくさせることができるし、水槽等の大きさや設置位置の形状、構造等に合わせて所望の形状に自由自在に変形させて配置することができる。例えば、水槽のコーナー部に沿って直角状に曲げて配置することもできるし、或いは壁面に沿わせてU字状に曲げて配置することもできる。
【0012】
[2]の発明では、PTC特性を有するセラミックスの粉粒体がバインダー材に分散されてなる発熱組成物からなる発熱線材中に、互いに離間した一対の電線が前記線材の長さ方向に沿って配置されてなる線状ヒーター部を備えるから、電線間に通電すると発熱組成物が発熱し、この熱によって水を温めることができる。また、発熱線材中に一対の電線が配置されているから、発熱組成物と電線との接触状態を十分に確保することができて、より耐久性を向上させることができる。更に、ヒーター部は線状であるから、目立たなくさせることができるし、水槽等の大きさや設置位置の形状、構造等に合わせて所望の形状に自由自在に変形させて配置することができる。例えば、水槽のコーナー部に沿って直角状に曲げて配置することもできるし、或いは壁面に沿わせてU字状に曲げて配置することもできる。
【0013】
[3]の発明では、線状ヒーター部の少なくとも外周面が絶縁被覆材で被覆されているから、電線の断線を防止することができると共に、発熱組成物の脱落や欠損等を防止できるので、水中用ヒーターとしての耐久性を顕著に向上させることができる。
【0014】
[4]の発明では、線状ヒーター部が略螺旋状に成形されているから、少ない設置スペースでもより効率の良い発熱を行わしめることができる。また、この略螺旋状のまま使用した場合にはそのデザイン性により観賞魚用水槽等における観賞性を殆ど損なうことなく配置できる利点もある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
この発明に係る水中用線状ヒーター(1)の一実施形態を図1〜3に示す。この水中用線状ヒーター(1)は、プラグ(9)と、該プラグ(9)に接続された電源コード部(8)と、該電源コード部(8)に接続された線状ヒーター部(7)とを備えている。
【0016】
前記線状ヒーター部(7)は、PTC特性を有するセラミックス(正の抵抗温度係数を有するセラミックス)の粉粒体がバインダー材に分散されてなる発熱組成物(4)からなる発熱線材(5)と、該発熱線材(5)中に互いに離間して配置された一対の電線(2)(3)と、前記発熱線材(5)の外周面を被覆した絶縁被覆材(6)とを備えてなる(図1、2参照)。前記一対の電線(2)(3)は、前記発熱線材(5)中において該線材(5)の長さ方向に沿って配置されている。
【0017】
図3に示すように、前記線状ヒーター部(7)の一方の電線(2)は、一方の接続端子(20a)を介して前記電源コード部(8)の一方のリード部(21a)に電気的に接続され、前記線状ヒーター部(7)の他方の電線(3)は、他方の接続端子(20b)を介して前記電源コード部(8)の他方のリード部(21b)に電気的に接続されている。これら接続端子(20a)(20b)及び前記線状ヒーター部(7)の接続側の端部並びに前記電源コード部(8)の接続側の端部が絶縁接続部(31)によって一体的に被覆されている(図3参照)。前記絶縁接続部(31)は、合成樹脂の一体モールド成型によって形成されたものである。
【0018】
上記水中用線状ヒーター(1)では、線状ヒーター部(7)は、PTC特性を有するセラミックスの粉粒体がバインダー材に分散されてなる発熱組成物(4)からなる発熱線材(5)中に、互いに離間した一対の電線(2)(3)が配置された構成であるから、電線(2)(3)間に通電すると発熱組成物(4)が発熱し、その熱は絶縁被覆材(6)を介して水中へと放出されて、水が温められて水温が上昇する。即ち、一対の電線(2)(3)間の発熱組成物(4)は、図8の概念図に示すように、前記一対の電線(2)(3)に対して抵抗が並列に繋がったような状態を現出するものであり、通電時に該発熱組成物(4)の有する抵抗によって該発熱組成物(4)が発熱するものである。そして、外部サーモスタット(図示しない)により前記電線(2)(3)への通電が制御されて、水温が設定値に保持される。また、このようなPTC特性を有するセラミックスは、温度が上昇すると電気抵抗が増大するので、自己温度制御機能を有した発熱組成物(4)を構成できる。このような発熱組成物(4)の自己温度制御機能によって、ヒーター部(7)の温度が過度に上昇するのを防止することができる。
【0019】
なお、前記発熱組成物(4)の抵抗値は、前記PTC特性を有するセラミックスの種類や、該セラミックス粉粒体とバインダー材の混合比率等を適宜設計することにより、調整することができる。
【0020】
また、上記水中用線状ヒーター(1)のヒーター部(7)は線状であるから、目立たなくさせることができる他、該線状ヒーター部(7)は可撓性を有するので、水槽等の大きさや設置位置の形状、構造等に合わせて所望の形状に自由自在に変形させて配置することができる。例えば、水槽のコーナー部に沿って直角状に曲げて配置することもできるし、或いは水槽の壁面に沿わせてU字状に曲げて配置することもできる。
【0021】
更に、前記線状ヒーター部(7)は、その外側が絶縁被覆材(6)で被覆されているから、電線(2)(3)の断線を効果的に防止することができると共に、発熱組成物(4)の脱落や欠損等を十分に防止できるので、水中用ヒーター(1)としての耐久性を顕著に向上させることができる。
【0022】
次に、この発明に係る水中用線状ヒーター(1)の他の実施形態を図4、5に示す。この水中用線状ヒーター(1)では、図4に示すように、前記線状ヒーター部(7)が略螺旋状(略コイル状)に成形されている点が前記実施形態と異なる。なお、これら図4、5において、前記実施形態(図1〜3)と同一の構成部については同一の符号を付してその説明は省略する。
【0023】
この実施形態の水中用線状ヒーター(1)は、前記実施形態(図1〜3)と同様の効果を奏する上に、次のような効果も得られる。即ち、線状ヒーター部(7)が略螺旋状に成形されているから、少ない設置スペースでもより効率の良い発熱を行わしめることができる。また、この略螺旋状のまま使用した場合にはそのデザイン性により観賞魚用水槽等における観賞性を殆ど損なうことなく配置できる。更に、前記実施形態と同様に、例えば、水槽のコーナー部に沿って線状ヒーター部(7)を略螺旋状を維持しつつ全体として直角状に曲げて配置することもできるし、或いは水槽の壁面に沿わせて線状ヒーター部(7)を略螺旋状を維持しつつ全体としてU字状に曲げて配置することもできる。
【0024】
なお、前記実施形態では、いずれも、一対の電線(2)(3)は、発熱組成物(4)からなる発熱線材(5)中に埋設状態に配置されていたが(図2、5参照)、特にこのような構成に限定されるものではなく、例えば図6に示すように、発熱組成物(4)が、互いに離間して配置された一対の電線(2)(3)の間に、これら電線(2)(3)と接触状態に配置された構成を採用しても良い。この図6に示す構成では、これら電線(2)(3)及び発熱組成物(4)がさらに絶縁被覆材(6)で被覆されることによって線状ヒーター部(7)が構成されている。
【0025】
また、前記線状ヒーター部(7)と電源コード部(8)の接続構造は、前記実施形態の構造に特に限定されるものではない。例えば図7(a)や図7(b)に示すような接続構造を採用しても良い。
【0026】
図7(a)の接続構造では、接続端子(20a)(20b)及び線状ヒーター部(7)の接続側端部並びに電源コード部(8)の接続側端部が、絶縁接続部(32)によって一体的に被覆されると共に、該絶縁接続部(32)の外周面が樹脂ケース(33)で覆われた構成が採用されている。前記絶縁接続部(32)は、、互いに接続がなされた線状ヒーター部(7)の接続側端部及び電源コード部(8)の接続側端部が、前記樹脂ケース(33)で外覆された状態で該樹脂ケース(33)の内部空間内に合成樹脂等が外から注入されて充填されることによって形成されたものである。
【0027】
図7(b)の接続構造では、接続端子(20a)(20b)及び線状ヒーター部(7)の接続側端部並びに電源コード部(8)の接続側端部が、絶縁接続部(34)によって一体的に被覆されると共に、該絶縁接続部(34)の外周面が、上面が開放面の樹脂ケース(35)で覆われた構成が採用されている。前記絶縁接続部(34)は、、互いに接続がなされた線状ヒーター部(7)の接続側端部及び電源コード部(8)の接続側端部が、前記上面が開放された樹脂ケース(35)で覆われた状態で該樹脂ケース(35)の内部に合成樹脂等が上方側から注入されて充填されることによって形成されたものである。
【0028】
この発明において、前記PTC特性を有するセラミックスとしては、特に限定されるものではないが、例えばチタン酸バリウム系セラミックス、酸化バナジウム系セラミックス等が挙げられる。
【0029】
また、前記バインダー材としては、特に限定されるものではないが、例えばシリコーンゴム、ニトリルゴム、フッ素ゴム、弗化エチレンプロピレン樹脂等のゴムや樹脂などが挙げられる。
【0030】
また、前記電線(2)(3)としては、電気伝導性を有する線材(箔状の線材も含む)であれば特に限定されないが、例えば銅線、銅箔等が挙げられる。
【0031】
また、前記絶縁被覆材(6)としては、特に限定されるものではないが、例えばシリコーン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、塩化ビニル樹脂等の合成樹脂などが挙げられる。
【0032】
また、前記絶縁接続部(31)(32)(34)を構成する材料としては、特に限定されるものではないが、例えばシリコーン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、塩化ビニル樹脂等の合成樹脂などが挙げられ、中でも前記絶縁被覆材(6)と同一又は同種の合成樹脂を用いるのが好ましい。
【0033】
また、前記樹脂ケース(33)(35)を構成する材料としては、特に限定されるものではないが、例えばABS樹脂等の合成樹脂などが挙げられる。
【0034】
この発明に係るヒーター(1)は、線状に形成されるものであるので、製造時においてはその軸線方向に連続した長いものを一旦製造し、これを適宜所定長さに切断して必要に応じて切断部を封止処理や接続処理するだけで本発明の線状ヒーター(1)を製造することが可能であり、このように一旦連続状の長いものを製造する製法で対応することができ、この場合には生産効率に優れるという利点がある。なお、本発明の水中用線状ヒーター(1)は、このような製造方法で製造されるものに特に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】この発明に係る水中用線状ヒーターの一実施形態を示す斜視図である。
【図2】図1におけるX−X線の断面図である。
【図3】図1の水中用線状ヒーターにおける線状ヒーター部と電源コード部の接続構造を示す断面図である。
【図4】この発明に係る水中用線状ヒーターの他の実施形態を示す斜視図である。
【図5】図4におけるY−Y線の断面図である。
【図6】この発明に係る水中用線状ヒーターのさらに他の実施形態を示す断面図である。
【図7】(a)(b)いずれも線状ヒーター部と電源コード部の接続構造の他の例を示す断面図である。
【図8】発熱原理を示す概念図である。
【符号の説明】
【0036】
1…水中用ヒーター
2…電線
3…電線
4…発熱組成物
5…発熱線材
6…絶縁被覆材
7…線状ヒーター部
8…電源コード部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
PTC特性を有するセラミックスの粉粒体がバインダー材に分散されてなる発熱組成物が、互いに離間して配置された一対の電線の間に、これら電線と接触状態に配置されてなる線状ヒーター部を備えることを特徴とする水中用線状ヒーター。
【請求項2】
PTC特性を有するセラミックスの粉粒体がバインダー材に分散されてなる発熱組成物からなる発熱線材中に、互いに離間した一対の電線が該線材の長さ方向に沿って配置されてなる線状ヒーター部を備えることを特徴とする水中用線状ヒーター。
【請求項3】
前記線状ヒーター部の少なくとも外周面が絶縁被覆材で被覆されている請求項1または2に記載の水中用線状ヒーター。
【請求項4】
前記線状ヒーター部は略螺旋状に成形されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の水中用線状ヒーター。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−177069(P2008−177069A)
【公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−9756(P2007−9756)
【出願日】平成19年1月19日(2007.1.19)
【出願人】(393022746)ジェックス株式会社 (37)
【Fターム(参考)】