説明

水冷式エンジンの冷却装置及びその製造方法

【課題】排気ガスの過冷却を抑制することのできるエンジンの冷却装置を提供することを目的とする。
【解決手段】主冷却ジャケット部100に、互いに連続する、吸気ポート部6周辺の吸気側空間14と、排気ポート部7周辺の排気側下部空間15とを設け、サブ冷却ジャケット部400に、排気側下部空間15の上方に位置する排気側上部空間27を設け、主冷却ジャケット部100とサブ冷却ジャケット部400とを、上下方向に延びる円筒孔で構成された連通路26を介して互いに連通させる一方、当該連通路26以外の部分において互いに上下方向に肉壁を介して離間させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、水冷式エンジンの冷却装置に関し、詳しくは、複数の気筒を列状に有し、吸排気をクロスフロー式としたエンジンのシリンダヘッドに、各燃焼室に連通する排気ポート部と各排気ポート部を集合させる排気集合部とが内蔵された水冷式のエンジンの冷却装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、排気マニホルドは、シリンダヘッドの外部において、該シリンダヘッド内の排気ポートと連通している。これに対して、近年、特許文献1に開示されるように、排気マニホルドを省略する目的で、シリンダヘッドの内部に、各燃焼室に連通する排気ポート部と、各排気ポート部を集合させる排気集合部とが形成された構造が提案されている。
【0003】
この特許文献1に開示された構造では、上述のように、排気ポート部および排気集合部が、シリンダヘッド内に形成されている。この場合、高温の排気ガスが、シリンダヘッドに対して大きい熱負荷を付与する。そのため、シリンダヘッドを冷却するためのウォータジャケットが必要となる。これに対して、上記特許文献1に開示された構造では、ウォータジャケットが、排気ポート部および排気集合部を取り囲むように形成されている。具体的には、シリンダヘッドに、排気ポート部および排気集合部の上下に位置するウォータジャケットと、これら上下のウォータジャケットを連通する上下に延びるウォータジャケットとが形成されている。この上下に延びるウォータジャケットは、各気筒に形成された2つの排気ポート部間に設けられており、これら排気ポート部に沿う形状を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−205043号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に開示されている構造では、ウォータジャケットが排気ポート部および排気集合部を取り囲んでいるので、排気ガスが過冷却されるという問題がある。
【0006】
つまり、シリンダヘッドの信頼性の面からは、排気ガス温度は過度に高温にならない方が望ましい。しかしながら、排気ガスの温度は、排気ガス処理上の観点から、高温の方が望ましい。そのため、ウォータジャケット内の冷却水が、排気ポート部等を過冷却しないことが望まれる。
【0007】
本発明は、かかる事情に鑑み、排気ガスの過冷却を抑制することのできるエンジンの冷却装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、複数の気筒を列状に有し、吸排気をクロスフロー式としたエンジンのシリンダヘッドに、各燃焼室に連通する排気ポート部と各排気ポート部を集合させる排気集合部とが内蔵された水冷式エンジンの冷却装置において、上記シリンダヘッド内の冷却ジャケットは、主冷却ジャケット部とサブ冷却ジャケット部とを有し、上記主冷却ジャケット部は、互いに連続する、上記吸気ポート部周辺の吸気側空間と、上記排気ポート部周辺の排気側下部空間とを有し、上記サブ冷却ジャケット部は、上記排気側下部空間の上方に位置する排気側上部空間を有し、上記主冷却ジャケット部とサブ冷却ジャケット部とは、上下方向に延びる円筒孔で構成された連通路を介して互いに連通する一方、当該連通路以外の部分において互いに上下方向に肉壁を介して離間していることを特徴とする水冷式エンジンの冷却装置を提供する(請求項1)。
【0009】
本発明によれば、排気ポート部周辺に形成される主冷却ジャケット部の排気側上部空間とサブ冷却ジャケット部の排気側下部空間とが、円筒状の連通路により上下に連通する一方、肉壁を介して離間しているので、排気側上部空間に冷却水を導入しつつ、この排気側上部空間を排気ポート部等から適度に離間させることができる。そのため、シリンダヘッドを適正に冷却しつつ排気ポート部等内の排気ガスの過冷却を抑制することができる。
【0010】
また、主冷却ジャケット部とサブ冷却ジャケット部とを連通する連通路は、円筒状を有している。そのため、主冷却ジャケット部とサブ冷却ジャケット部とを異なる中子により形成した際に、この連通路の生じる鋳バリをドリル等により容易に除去することができる。
【0011】
本発明において、上記連通路は、上記主冷却ジャケット部のうち上記気筒間に位置する部位とサブ冷却ジャケット部のうち上記気筒間に位置する部位とを連通するのが好ましい(請求項2)。
【0012】
上記構成によれば、上下方向に延びる連通路が、例えば各気筒の排気ポート部間に配置される場合に比べて、排気ポート部からより離間するため、この連通路を通過する冷却水による排気ポート内の排気ガスの過冷却が抑制される。
【0013】
また、本発明において、上記主冷却ジャケット部は、その排気側部分に設けられて、上記シリンダヘッドの下部に位置するシリンダブロックから当該主冷却ジャケット部の上記排気側下部空間内に冷却水を導入する冷却水導入部と、その吸気側部分に設けられて、上記吸気側空間と連通して当該主冷却ジャケット部内を流れる冷却水をシリンダヘッドの外部に導出する主冷却水導出部とを備え、上記連通路と上記冷却水導入部とは平面視で互いに位置が相違しており、上記サブ冷却ジャケット部は、その排気側部分に設けられて、上記排気側下部空間と連通して当該サブ冷却ジャケット部内を流れる冷却水をシリンダヘッドの外部に導出するサブ冷却水導出部を備えるのが好ましい(請求項3)。
【0014】
上記構成では、シリンダブロックから主冷却ジャケット部内に導入された冷却水は、主冷却ジャケット部の排気側部分から吸気側に設けられた主冷却水導出部に向かって流れる。一方、連通路を通ってサブ冷却ジャケット部内に導入された冷却水は、サブ冷却水導出部に向かって流れる。そして、上記連通路は、上記冷却水導入部と平面視で異なる位置に配置されている。そのため、一旦連通路を通ってサブ冷却ジャケット部内に流入した冷却水が、主冷却ジャケット部内に戻るのが抑制される。このことは、サブ冷却ジャケット部内の冷却水の流れを確保する。また、サブ冷却ジャケット部に流入した冷却水を、サブ冷却水導出部を介して、室内ヒータ(空調用のヒータコア)等に導入することができ、冷却水を効率よく利用することができる。
【0015】
また、本発明は、複数の気筒を列状に有し、吸排気をクロスフロー式としたエンジンのシリンダヘッドに、各燃焼室に連通する排気ポート部と各排気ポート部を集合させる排気集合部とが内蔵された水冷式エンジンの冷却装置を製造する方法であって、上記シリンダヘッドのうち吸気ポート部周辺に吸気側空間を形成するための吸気側空間形成部、および、当該吸気側空間形成部に連設されて、上記シリンダヘッドのうち上記排気ポート部周辺に排気側下部空間を形成するための排気側下部空間形成部を備えた主冷却ジャケット中子を用いるとともに、上記シリンダヘッドのうち上記排気側下部空間の上方に排気側上部空間を形成するための排気側上部空間形成部、および、上記排気側上部空間と上記排気側下部空間とを連通する連通路を形成するための上下方向に延びる連通路形成部を備えたサブ冷却ジャケット中子を用い、上記シリンダヘッドの金型内に上記主冷却ジャケット中子を配置するとともに、上記シリンダヘッドの金型に、上記サブ冷却ジャケット中子を、その排気側上部空間形成部が上記主冷却ジャケット中子の排気側下部空間形成部から上方に離間するように、かつ、上記連通路形成部の下面が上記排気側下部空間形成部の上面と接合するように、配置する中子配置工程と、上記金型と上記各中子との間に溶湯を注入して当該溶湯を冷却した後、上記各中子を除去することでシリンダヘッドを鋳造して、当該シリンダヘッド内に、上記冷却空間と排気側下部空間とからなる主冷却ジャケット部と、上記排気側上部空間と上記連通路とからなるサブ冷却ジャケット部とを、上記連通路によって互いに連通する一方、上記排気側下部空間と上記排気側上部空間とが互いに上下方向に肉壁を介して離間する位置に形成する鋳造工程とを含むことを特徴とする水冷式エンジンの冷却装置の製造方法を提供する(請求項4)。
【0016】
この方法によれば、主冷却ジャケット部を形成する中子とサブ冷却ジャケット部を形成する中子とが異なる中子で構成されているので、複雑な形状を有する各サブジャケット部を容易に形成することができる。しかも、これら中子が連通路形成部の下面において互いに接合されているので、主冷却ジャケット部とサブ冷却ジャケット部とを互いに連通させつつ、主冷却ジャケット部の排気側下部空間とサブ冷却ジャケット部の排気側上部空間との間に適正な厚みの肉壁を介在させることができる。そのため、排気側上部空間に冷却水を導入しつつ、この排気側上部空間を排気ポート部等から適度に離間させて、シリンダヘッドを適切に冷却しつつ排気ポート部等内の排気ガスの過冷却を抑制することができる。
【0017】
また、各ジャケット部が異なる中子で形成されるので、これらが1つの中子で形成される場合に比べて、中子の剛性を維持しつつ上記連通路形成部ひいては連通路の容積を容易に調整することができる。
【0018】
上記方法において、上記中子配置工程において、上記サブ冷却ジャケット中子の連通路形成部を、上記主冷却ジャケット中子の排気側下部空間形成部のうち上記気筒間に位置する部位に接合し、上記鋳造工程において、上記連通路を、上記主冷却ジャケット部のうち上記気筒間に位置する部位とサブ冷却ジャケット部のうち上記気筒間に位置する部位とを連通する位置に形成するのが好ましい(請求項5)。
【0019】
この方法によれば、上下方向に延びる連通路が、例えば各気筒の排気ポート部間に形成される場合に比べて、排気ポート部からより離間した位置に形成されるため、この連通路を通過する冷却水による排気ポート内の排気ガスの過冷却が抑制される。
【0020】
また、上記方法において、上記連通路形成部は、上下方向に延びる円柱状を有し、上記鋳造工程において、上記連通路を上下方向に延びる円筒孔に形成し、上記円筒孔の連通路にドリルを挿入して、当該連通路に形成された鋳バリをドリルによって除去する鋳バリ除去工程をさらに備えるのが好ましい(請求項6)。
【0021】
このようにすれば、主冷却ジャケット中子とサブ冷却ジャケット中子との合わせ面である連通路の下面に生じた鋳バリをドリルによって容易に除去することができ、鋳バリ除去を効率よく、また、精度よく行うことができる。このことは、作業効率の向上と、残存した鋳バリによるシリンダヘッドの損傷を抑制する。
【0022】
また、上記方法において、上記主冷却ジャケット中子は、上記シリンダヘッドの下部に位置するシリンダブロックから上記主冷却ジャケット部の上記排気側下部空間内に冷却水を導入するための冷却水導入部を形成する冷却水導入部形成部と、当該主冷却ジャケット部の上記吸気側空間と連通してこの主冷却ジャケット部内を流れる冷却水をシリンダヘッドの外部に導出する主冷却水導出部を、上記主冷却ジャケット部の吸気側部分に形成する主冷却水導出部形成部とを備え、上記サブ冷却ジャケット中子は、当該サブ冷却ジャケット部の排気側下部空間と連通してこのサブ冷却ジャケット部内部を流れる冷却水をシリンダヘッドの外部に導出するサブ冷却水導出部を、上記サブ冷却ジャケット部の排気側部分に、形成するサブ冷却水導出部形成部を備え、上記中子配置工程において、上記サブ冷却ジャケット中子の連通路形成部を、上記冷却水導入部形成部と平面視で相違する位置に配置し、上記鋳造工程において、上記主冷却ジャケット部の排気側部分に上記冷却水導入部を形成し、当該主冷却ジャケット部の吸気側部分に上記主冷却水導出部を形成し、上記サブ冷却ジャケット部の排気側部分に上記サブ冷却水導出部を形成するのが好ましい(請求項7)。
【0023】
この方法によれば、シリンダブロックから主冷却ジャケット部内に冷却水を導入する冷却水導入部が主冷却ジャケット部の排気側に形成され、主冷却ジャケット部内の冷却水をシリンダヘッド外部に導出する主冷却水導出部が主冷却ジャケット部の吸気側に形成される。そのため、主冷却ジャケット部に導入された冷却水は、主冷却ジャケット部の排気側部分から吸気側に向かって流れる。一方、サブ冷却ジャケット部には、その排気側部分に冷却水をシリンダヘッド外部に導出するためのサブ冷却水導出部が形成される。そのため、サブ冷却ジャケット部内に導入された冷却水は、主冷却水サブジャケット部とは異なる導出部に向かって流れる。そして、上記連通路は、上記冷却水導入部と平面視で異なる位置に形成される。そのため、一旦連通路を通ってサブ冷却ジャケット部内に流入した冷却水が、主冷却ジャケット部内に戻るのが抑制される。このことは、サブ冷却ジャケット部内の冷却水の流れを確保する。また、サブ冷却ジャケット部に流入した冷却水を、サブ冷却水導出部を介して、室内ヒータ(空調用のヒータコア)等に導入することができ、冷却水を効率よく利用することができる。
【発明の効果】
【0024】
この発明によれば、シリンダヘッド内に排気ポートおよび排気集合部を形成しつつ排気ガスの過冷却を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明に係る水冷式エンジンの冷却装置を備えたエンジン主要部の側面図。
【図2】シリンダヘッドの平面図。
【図3】吸排気ポートの構成を示す平面図。
【図4】ロア中子と排気通路中子とを組合せた状態で示す平面図。
【図5】ブロックジャケット中子とロア中子とアッパ中子との分解斜視図。
【図6】ブロックジャケット中子とロア中子とアッパ中子とを組合せた状態で示す斜視図。
【図7】ブロックジャケット中子の斜視図。
【図8】ロア中子とアッパ中子とを組合せた状態で示す背面図。
【図9】図2のX−X線矢視断面図。
【図10】図2のA−A線矢視断面図。
【図11】図2のB−B線矢視断面図。
【図12】図2のC−C線矢視断面図。
【図13】図2のD−D線矢視断面図。
【図14】図2のE−E線矢視断面図。
【図15】ヘッドガスケットの平面図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明に係るエンジンの冷却装置の実施形態例について、以下図面を参照して説明する。
【0027】
各図において、矢印Fはエンジン前方を示し、矢印Rはエンジン後方を示し、矢印INは吸気側を示し、矢印EXは排気側を示す。
【0028】
図1は、エンジン1の側面図である。エンジン1は、シリンダブロック2と、シリンダブロック2の上部に締結固定されたシリンダヘッド3と、シリンダブロック2の下部に取り付けられたオイルパン(図示せず)と、シリンダヘッド3の上部に取り付けられたシリンダヘッドカバー(図示せず)とを有する。
【0029】
図2は、シリンダヘッド3の平面図である。図3は、吸排気ポートの構成を示す平面図である。本実施形態に係るエンジン1は、直列4気筒ディーゼルエンジンである。エンジン1には、図3に示すように、前方から後方に向けてエンジン1の長手方向に、直列に並ぶ、第1気筒♯1、第2気筒♯2、第3気筒♯3、第4気筒♯4が形成されている。本実施形態に係るエンジン1は、吸気2弁、排気2弁タイプのエンジンである。シリンダヘッド3には、1気筒当り2つの吸気バルブ孔4,4と、1気筒当り2つの排気バルブ孔5,5とが形成されている。本実施形態では、シリンダヘッド3の一方側に排気バルブ孔5,5が形成されて、他方側に吸気バルブ孔4,4が形成されており、クロスフロー式の吸排気が実施される。
【0030】
各吸気バルブ孔4は、それぞれ独立した吸気ポート6と連通している。各気筒に形成された2つの排気バルブ孔5,5は、平面視Y字状の共通の排気ポート7と連通している。
【0031】
シリンダヘッド3のうち第3気筒♯3と第4気筒♯4との間の部分に対向する排気側部分には、排気集合部8が形成されている。この排気集合部8は、各Y字状の排気ポート7と連通している。なお、この排気集合部8の下流側には、シリンダヘッド3外において排気管(図示せず)が接続される。
【0032】
図2、図3に示すように、排気ポート7と排気集合部8との間には、これらを連通する気筒列方向に延びる連通路12が形成されている。
【0033】
シリンダヘッド3には、上記第4気筒♯4の排気ポート7から分岐する分岐通路9が形成されている。この分岐通路9は、排気ポート7から後方に延びて、シリンダヘッド3の後端面のうち排気側部分に開口する。すなわち、シリンダヘッド3の後端面の排気側部分には、開口部10(排気側の開口部)が形成されている。
【0034】
シリンダヘッド3には、上記分岐通路9から分岐するEGR用連通路13が形成されている。このEGR用連通路13は、上記排気側の開口部10付近から吸気側に向かって、エンジン幅方向に延びた後、シリンダヘッド3の後端面の吸気側部分に開口する。すなわち、シリンダヘッド3の後端面の吸気側部分には、開口部11(吸気側の開口部)が形成されている。
【0035】
このように、シリンダヘッド3には、連通路9、13の開口部として、エンジン幅方向に互いに離間する2つの開口部10、11が形成されている。一方の開口部10には、水冷却のEGRクーラが接続される。他方の開口部11には、EGRクーラをバイパスとするバイパス管が接続される。
【0036】
上記排気バルブ孔5,排気ポート7,排気集合部8,分岐通路9,開口部10,開口部11,連通路12,EGR用連通路13は、シリンダヘッド3内の排気通路を構成する。
【0037】
シリンダヘッド3には、シリンダヘッド3を冷却するために内側を冷却水が流通するロアジャケット100(主冷却ジャケット部、図9等参照)およびアッパジャケット400(サブ冷却ジャケット部、図9等参照)からなる冷却ジャケットが形成されている。
【0038】
次に、図4〜図8を参照して、シリンダヘッド3に、ロアジャケット100およびアッパジャケット400を鋳造で成形する際に用いる中子の構成について説明する。
【0039】
本実施形態では、中子として、ロア中子N100(主冷却ジャケット中子、図4参照)と、アッパ中子N400(サブ冷却ジャケット中子、図5参照)と、ブロックジャケット中子N300(図5参照)と、排気通路中子N200(図4参照)と、を用いる。
【0040】
ロア中子N100は、ロアジャケット100を形成する。ロアジャケット100は、内側を冷却水が通過する部分であり、シリンダブロック2の気筒列方向略全体およびシリンダブロック2の吸気側から排気側にわたって広がる。
【0041】
アッパ中子N400は、排気側の上部空間を含むアッパジャケット400を形成する。アッパジャケット400は、内側を冷却水が通過する部分であり、上記ロアジャケット100の排気側部分の上側において、シリンダブロック2の気筒列方向略全体に広がる。
【0042】
ブロックジャケット中子N300は、シリンダブロック2のシリンダボア外周部に、ウォータジャケットを形成する。排気通路中子N200は、上記シリンダヘッド3に排気通路を形成する。 図4は、ロア中子N100と、排気通路中子N200とを組み合わせた状態の平面図である。図5は、ブロックジャケット中子N300と、ロア中子N100と、アッパ中子N400との分解斜視図である。図6は、ブロックジャケットN300と、ロア中子N100と、アッパ中子N400とを組合せた状態の斜視図である。
【0043】
図4、図5、図6に示すように、ロアジャケット100を形成するロア中子N100は、各気筒にそれぞれ対応した吸気側空間形成部N14および排気側下部空間形成部N15と、主冷却水導出部形成部N16と、複数の冷却水導入部形成部(不図示)を有する。これら吸気側空間形成部N14と、排気側下部空間形成部N15と、主冷却水導出部形成部N16と、冷却水導入部形成部とは、互いに一体に形成されている。 吸気側空間形成部N14は、シリンダヘッド2内のうち各気筒の吸気ポート6周辺に、吸気側空間14(図9等参照)を形成する。排気側下部空間部N15は、各気筒の排気ポート7の周辺を含む排気通路の下方に広がる排気側下部空間15(図9等参照)を形成する。これら冷却空間形成部N14と排気側下部空間形成部N15とは、連設されており、これら形成部N14,N15により形成された吸気側空間14と排気側下部空間15とは互いに連通する。
【0044】
主冷却水導出部形成部N16は、シリンダヘッド3内に、上記吸気側空間14と連通して、ロアジャケット100内部の冷却水を、この内部からシリンダヘッド3の外部に導出する主冷却水導出部16(図1参照)を形成する。主冷却水導出部形成部N16は、ロア中子N100のうち第1気筒♯1付近の吸気側端部から吸気側に向かって突出しており、主冷却水導出部16は、ロアジャケット100の吸気側端部に形成される。
【0045】
各冷却水導入部形成部は、シリンダヘッド3内に、シリンダボア外周部のウォータジャケットからロアジャケット部100に冷却水を導入するための冷却水導入孔22(冷却水導入部、図10参照)を形成する。各冷却水導入孔22は、後述するヘッドガスケット30の冷却水上昇用の開口36(図15参照)にそれぞれ対応しており、ロア中子N100のうち各気筒の排気側部分に対応する部分にそれぞれ3つずつ設けられている。各開口36は、図7に示すように、シリンダボア外周部に形成されるウォータジャケットの排気側部分(後述するブロックジャケット中子N300の形成部N17,N18,N19,N20により形成される部分)と対応している。
【0046】
図5、図6に示すように、アッパジャケット400を形成するアッパ中子N400は、アッパ中子本体N401(排気側上部空間形成部)と、空調用冷却水導出部形成部(サブ冷却水導出部形成部)N23と、過給機冷却水導出部形成部N24(サブ冷却水導出部形成部)と、供給部形成部N25と、連通路形成部N26とを有する。これらアッパ中子本体N401と、空調用冷却水導出部N23と、過給機冷却水導出部N24と、供給部N25と、連通路形成部N26とは互いに一体に形成されている。
【0047】
アッパ中子本体N401は、各気筒の排気ポート7の周辺を含む排気通路の上側であって、上記排気側下部空間15の上方に広がる排気側上部空間27(図9等参照)を形成する。
【0048】
空調用冷却水導出部形成部N23と過給機冷却水導出部形成部N24とは、それぞれアッパ中子本体N401の排気側端部から排気側に突出している。空調用冷却水導出部形成部N23は、アッパジャケット400の排気側端部に、上記排気側上部空間27と連通してこの排気側上部空間27内の冷却水を空調用ヒータコアへ導く空調用冷却水導出部を形成する。過給機冷却水導出部形成部N24は、アッパジャケット400の排気側端部に、上記排気側上部空間27と連通してこの排気側上部空間27内の冷却水を過給機へ導く導出部を形成する。
【0049】
上記供給部形成部N25は、アッパ中子N400のリヤ側かつ吸気側の部分であって上記EGR用の連通路13と対応する部分に設けられている。この供給部形成部N25は、EGRバルブに冷却水を供給する供給部を形成する。
【0050】
図8に示すように、上記ロア中子N100は、アッパ中子N400と組合された状態において、アッパ中子N400の下側に位置する。この組み合わせ状態において、ロア中子N100と、アッパ中子N400のアッパ中子本体N401とは、間隔Lを隔てて、上下に離間する。
【0051】
各連通路形成部N26は、各気筒♯1〜♯4の間の部分に設けられている。詳しくは、各連通路形成部N26は、第1気筒♯1と第2気筒♯2との間、第2気筒♯2と第3気筒♯3との間、第3気筒♯3と第4気筒♯4との間に形成されている。これら連通路形成部N26は、それぞれ、ロアジャケット100とアッパジャケット400とを連通する連通路26(連通路、図9参照)を形成する。上記ロア中子N100と、アッパ中子N400とは、互いに組合された状態において、ロア中子N100とアッパ中子本体N401とが上下に離間する一方、これら連通路形成部N26において上下に連続する。
【0052】
各連通路形成部N26は、上下に延びる円柱状である。そのため、各連通路形成部N26により形成された上記連通路26は、それぞれ上下に延びる円筒孔となる。
【0053】
各連通路形成部N26ひいては連通路26の孔径は、この連通路26を通じてロアジャケット100からアッパジャケット400側に流入する冷却水の水量が、排気通路を通過する排気を過冷却せず、かつ、シリンダヘッド3を適度に冷却できる量となるような寸法に設定されている。具体的には、この孔径は、シリンダボア径の1/10以上1/5以下の寸法に設定されており、この孔の面積はアッパ中子N400およびロア中子N100の断面積(孔の軸と直交する方向の断面積)に対して十分に小さい。
【0054】
なお、図4においては、連通路形成部N26が気筒間に位置することを示すため、便宜上、ロア中子N100に○印で連通路形成部N26を図示している。
【0055】
図4に示すように、シリンダヘッド3内の排気通路を形成する排気通路中子N200は、この排気通路を構成する各要素、すなわち、排気バルブ孔5、排気ポート7、排気集合部8、分岐通路9、開口部10,開口部11、連通路12,EGR用連通路13をそれぞれ形成するための、形成部N5,N7,N8,N9,N10,N11,N12,N13を有する。これら各形成部は、互いに一体形成されている。 図5、図6、図7に示すように、シリンダブロック2のシリンダボア外周部にウォータジャケットを形成するブロックジャケット中子N300は、オープンデッキ構造のシリンダブロック2に、ウォータジャケットを形成する。ブロックジャケット中子N300は、形成部N17,N18,N19,N20と、シリンダブロック側冷却水導入部形成部N21とを有する。各形成部N17,N18,N19,N20は、シリンダブロック2のうち各気筒♯1〜♯4のシリンダボア外周に、ウォータジャケットを形成する。シリンダブロック側冷却水導入部形成部N21は、第1気筒♯1の形成部N17から吸気側に突出している。
【0056】
なお、ブロックジャケット中子N300は、他の中子の違い、各形成部N17〜N20とシリンダブロック側冷却水導入部形成部N21とが金型で形成される。
【0057】
以上のように構成された各中子N100,N200,N400を用いてシリンダヘッド3を鋳造する手順について説明する。
【0058】
ここで、各中子N100,N200,N400は、何れもガス硬化タイプのシェル中子にて形成されている。
(1)中子配置工程
まず、シリンダヘッド3の金型(いわゆる主型)にロア中子N100、吸気通路を形成するための吸気通路中子(図示せず)、排気通路中子N200、アッパ中子N400をセットする。このとき、アッパ中子本体N401を、ロア中子N100の排気側下部空間形成部N15の上方であって、このロア中子N100から上方に間隔L隔てるように配置するとともに、ロア中子N100の上面のうち気筒間に対応する部分にアッパ中子N400の連通路形成部N26の下面を接触させる。この配置により、ロア中子N100の気筒間に対応する部分の上面と、連通路形成部N26の下面とは、合わせ面を形成する。前述のように、冷却水連通形成部N26の断面積は小さく設定されており、この合わせ面の面積はアッパ中子N400およびロア中子N300の面積に比べて十分に小さい。
(2)鋳造工程
(2−1)溶湯工程
次に、低加圧鋳造(low pressure die casting)方法を用いて、低圧力のガスにより鉛直方向上方に溶湯を押し上げて、金型と各中子N100,N200,N400との間のキャビティに溶湯を注湯する。
(2−2)中子除去工程
溶湯が凝固した後、各中子N100,N200,N400を除去する。
【0059】
中子の除去に伴って各中子N100,N200,N400に対応した、ウォータジャケット、冷却水の出入口、排気通路および吸気ポートがそれぞれ形成されたシリンダヘッド3が鋳造される。
【0060】
具体的には、ロア中子N100は、鋳造後において、図9〜図14に示すように、シリンダブロック2の気筒列方向略全体およびシリンダブロック2の吸気側から排気側にわたって広がり、シリンダヘッド2を主に冷却するロアジャケット100となる。詳細には、ロア中子N100のうち吸気側空間形成部N14は吸気ポート7周囲の吸気側空間14となり、排気側下部空間形成部N15は、各気筒の排気ポートを含む排気通路の下方に広がる排気側下部空間15となる。中子形状からも明らかなように、このロアジャケット100のうち吸気側空間14と排気側下部空間15とは連通している。
【0061】
また、図1に示すように、ロア中子N100のうち主冷却水導出部形成部N16は、ロアジャケット100のうち吸気側部分に、主冷却水導出部16を形成する。
【0062】
また、図10等に示すように、冷却水導入部形成部は、ロアジャケット100の排気側部分に、冷却水導入孔22を形成する。この冷却水導入孔22の下端の開口位置は、平面視で、上記ブロックジャケット中子N300によってシリンダボア外周部に形成されたウォータジャケットの排気側部分に一致する。
【0063】
上記アッパ中子N400は、鋳造後において、図9〜図14に示すように、シリンダヘッド2を補助的に冷却するアッパジャケット400となる。
【0064】
具体的には、アッパ中子N400のアッパ中子本体N401は、各気筒の排気ポートを含む排気通路の上側であって、上記排気下部空間15の上方に広がる排気側上部空間27となる。上記アッパ中子N400の連通路形成部N26は、排気側下部空間15と排気側上部空間27とを連通する連通路26となる。各連通路26は、図2に示すように、各気筒♯1〜♯4間部位(詳しくは、第1気筒♯1と第2気筒♯2との間、第2気筒♯2と第3気筒♯3との間、第3気筒♯3と第4気筒♯4との間)に形成される。また、各連通路形成部26と冷却水導入孔22とは、図2に示すように、平面視で位置が相違する。具体的には、連通路26は、冷却水導入孔22よりも吸気側に形成される。 上記アッパ中子N400の排気側に設けられた空調用冷却水導出部形成部N23と過給機冷却水導出部形成部N24とは、それぞれ空調用ヒータコアへ冷却水を導く空調用冷却水導出部23および過給機へ冷却水を導く過給機冷却水導出部24となる。
【0065】
ここで、前述のように、上記ロア中子N100とアッパ中子本体N401とは、上下方向に間隔Lの隙間をあけて離間して配置される。そのためこの隙間に対応して、ロアジャケット100とアッパジャケット400との間には、図10、図14に示すように、肉壁28が形成され、これら両ジャケット100,400(より詳細には、ロアジャケット100と排気側上部空間27と)は、肉壁28を介して上下に離間する。この実施形態では、図10、図14に示すように、肉壁28は排気通路の上下方向略中央に位置する。
【0066】
そして、ロアジャケット100とアッパジャケット400とは、連通路26によってのみ上下に連通する。
(3)鋳バリ除去工程
前述のように、ロア中子N100の気筒間に対応する部分の上面と、連通路形成部N26の下面とは合わせ面となっている。そのため、この合わせ面、すなわち、連通路形成部N26により形成された連通路26の下端の開口端には、鋳バリが生じる。そこで、この工程では、この鋳バリを除去する。
【0067】
前述のように、連通路26は、丸孔(円筒孔)である。従って、この工程では、連通路26内にドリルを挿入して、この連通路26内でドリルを回転させることで、連通路26に発生した鋳バリを連通路26から分離、除去する。このように、本方法では、合わせ面を構成する連通路26が丸孔であるため、ドリルによって合わせ面に生じた鋳バリを簡単に除去することができる。
【0068】
ドリル加工の後は、図9に示すように、連通路26の上端部にプラグ29を挿入して、連通路26の上端開口を閉止する。
【0069】
以上のようにして、シリンダヘッド3の製造は終了する。
【0070】
シリンダブロック2は、シリンダヘッド3とは別に鋳造される。シリンダブロック2の鋳造工程では、上記ブロッグジャケット中子N300が、鋳造後においてオープンデッキ構造のシリンダブロック2におけるウォータジャケットとなる。また、各形成部N17〜N20が、シリンダボア外周のウォータジャケット17〜20になる。さらに、上記シリンダブロック側冷却水導入部形成部N21はシリンダブロック側冷却水導入部21(図1参照)となる。
【0071】
図15は、シリンダブロック2とシリンダヘッド3との間に介設されるヘッドガスケット30の平面視である。このヘッドガスケット30には、気筒数のシリンダボアに対応する複数の開口31,32,33,34と、複数のボルト挿通孔35と、1気筒当り3つの冷却水導入用の開口36が形成されている。各ボルト挿通孔35には、シリンダブロック2とシリンダヘッド3とを締結するためのボルトが挿通される。
【0072】
ヘッドガスケット30がシリンダブロック2とシリンダヘッド3との間に介設された状態において、各冷却水導入用の開口36は、上記中子N300の形成部N17,N18,N19,N20によりシリンダブロック2に形成されたウォータジャケット17〜20の排気側上部に位置するとともに、上記冷却水導入孔22とそれぞれ連通する。これら冷却水導入用の開口36は、冷却水がシリンダブロック2からシリンダヘッド3へ流れるのを許容する。すなわち、シリンダヘッド3に形成された上記ロアジャケット100には、シリンダブロック2のウォータジャケット17〜20から上記冷却水導入用の開口36および冷却水導入孔22を通って、冷却水が導入される。各冷却水導入用の開口36の開口面積は、シリンダヘッド3側に流入する冷却水の水量が適正な量となるように設定されている。
【0073】
なお、図2、図9に示すように、シリンダヘッド3には、シリンダヘッド3をシリンダブロック2に対して締結するためのボルトを挿通させるボルト挿通孔37が形成されている。また、シリンダヘッド3には、オイルレベルゲージ用の孔38が形成されている。
【0074】
次に、以上のようにして製造された冷却装置の冷却作用を説明する。
【0075】
図7の矢印aで示すように、冷却水は、シリンダブロック側冷却水導入部21からシリンダブロック2のうちシリンダボア外周に形成されたウォータジャケット17〜20に流入する。流入した冷却水は、ウォータジャケット17〜20の吸気側部分から排気側部分に向けて流れた後、図7の矢印bで示すように、排気側部分から上昇して、上記ヘッドガスケット30の冷却水導入用開口36および冷却水導入部22を通ってシリンダヘッド3内のロアジャケット100に流入する。
【0076】
上記冷却水導入部22は、ウォータジャケット17〜20の排気側部分に形成された上記冷却水導入用開口36と連通している。そのため、ウォータジャケット17〜20内の冷却水は、ロアジャケット100の排気側部分、すなわち、排気側下部空間15内に流入して、ロアジャケット100の排気側部分から吸気側部分に向けて流れる。この冷却水は、ロアジャケット100の通過途中に、排気バルブ孔5,5および吸気バルブ孔4,4の周囲ひいては排気バルブおよび吸気バルブおよび気筒に形成された燃焼室の周囲を冷却する。排気バルブ等を冷却した後の冷却水は、図6に矢印eで示すように、上記主冷却水導出部16からロアジャケット100ひいてはシリンダヘッド3の外部に流出する。 一方、上記ロアジャケット100内に流入した冷却水の一部は、上記連通路26を通って、アッパジャケット400内に流入する。前述のように、ロアジャケット100に冷却水が導入される冷却水導入部22と上記連通路26とは、平面視でその位置がずれている。また、アッパジャケット400には、その排気側部分に、冷却水を外部に排出するための空調用冷却水導出部23および過給機冷却水導出部24が形成されている。そのため、冷却水導入部22を通ってロアジャケット100内に流入した冷却水は、ロアジャケット100の通過途中に、アッパジャケット400内に流入し、アッパジャケット400に流入した冷却水はロアジャケット100側に戻ることなく、アッパジャケット400内を排気側に向かって流れる。特に、連通路26は、冷却水導入部22よりも吸気側に位置しており、ロアジャケット100内の水は排気側から吸気側に向かって流れる。そのため、ロアジャケット100内の冷却水は、吸気側に向かって流れる途中で、確実に、連通路26を通ってアッパジャケット400内に流入する。
【0077】
アッパジャケット400内に流入した冷却水は図6に矢印c、dで示すように、排気側に向かって流れて、サブ冷却水導出部23,24から流出する。これらサブ冷却水導出部23,24から流出した冷却水は、それぞれ、空調用ヒータコアおよび過給機側へ流れる。
【0078】
ここで、上記ロアジャケット100とアッパジャケット400とは、連通路29でのみ連通しており、その主な部分は肉壁28を介して上下方向に離間している。そのため、ロアジャケット100からアッパジャケット400に流入する冷却水量および排気ポート7に沿ってロアジャケット100からアッパジャケット400に向かって上方に流れる冷却水の量を少なく抑えることができるとともに、アッパジャケット400を排気通路から適正に離間させることができ、これら両ジャケット100,400によりシリンダヘッド3を適正に冷却させつつ、排気通路(図3の各要素7,8,12参照)の過冷却を抑制することができる。
【0079】
特に、上記冷却水連通孔22は、各気筒間に形成されており、各気筒の排気ポート7間に形成される場合等に比べて、排気ポート7からより離間している。そのため、この冷却水連通孔22を通る冷却水が排気ポート7内の排気を過冷却するのが抑制される。
【0080】
以上のように、本実施形態に係る装置によれば、シリンダヘッド3内に排気ポート部7および排気集合部8を内蔵させつつ、シリンダヘッド3を適正に冷却することができるとともに、排気ポート部7等内の排気の過冷却を抑制することができる。
【0081】
そして、本実施形態に係る製造方法によれば、ロアジャケット100を形成する中子N100とアッパジャケット400を形成する中子N400とが異なる中子で構成される一方、これら中子N100,N400が連通路形成部N26の下面において互いに接合されているので、これらジャケット100,400を互いに連通させつつ、ロアジャケット100の排気側下部空間15とアッパジャケット400の排気側上部空間27との間に適正な厚みの肉壁を介在させることができるとともに、複雑な形状を有する各サブジャケット100,400を実現することができる。
【0082】
また、各ジャケット100,400が異なる中子で形成されるため、これらが1つの中子で形成される場合に比べて、中子の剛性を維持しつつ上記連通路形成部N26ひいては連通路26の容積を小さく抑えることができる。
【0083】
さらに、鋳バリ除去工程では、連通路26にドリルを挿入、回転駆動するという簡単な手順で、各ジャケットの中子N100,N400の合わせ面に生じた鋳バリを除去することができ、鋳バリを効率よく、かつ、精度よく除去することができる。
【0084】
ここで、上記実施形態では、エンジンとして直列4気筒ディーゼルエンジンを例示したが、本発明に係るエンジンの冷却装置は他の直列多気筒エンジンに適用されてもよい。
【符号の説明】
【0085】
1 エンジン
2 シリンダブロック
3 シリンダヘッド
7 排気ポート
8 排気集合部
14 冷却空間
15 排気側下部空間
16 主冷却水導出部
22 第2冷却水導入部
23 サブ冷却水導出部
26 連通路
27 排気側上部空間
28 肉壁
100 ロアジャケット(主冷却ジャケット部)
400 アッパジャケット(サブ冷却ジャケット部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の気筒を列状に有し、吸排気をクロスフロー式としたエンジンのシリンダヘッドに、各燃焼室に連通する排気ポート部と各排気ポート部を集合させる排気集合部とが内蔵された水冷式エンジンの冷却装置において、
上記シリンダヘッド内の冷却ジャケットは、主冷却ジャケット部とサブ冷却ジャケット部とを有し、
上記主冷却ジャケット部は、互いに連続する、上記吸気ポート部周辺の吸気側空間と、上記排気ポート部周辺の排気側下部空間とを有し、
上記サブ冷却ジャケット部は、上記排気側下部空間の上方に位置する排気側上部空間を有し、
上記主冷却ジャケット部とサブ冷却ジャケット部とは、上下方向に延びる円筒孔で構成された連通路を介して互いに連通する一方、当該連通路以外の部分において互いに上下方向に肉壁を介して離間していることを特徴とする水冷式エンジンの冷却装置。
【請求項2】
請求項1記載の水冷式エンジンの冷却装置において、
上記連通路は、上記主冷却ジャケット部のうち上記気筒間に位置する部位とサブ冷却ジャケット部のうち上記気筒間に位置する部位とを連通することを特徴とする水冷式エンジンの冷却装置。
【請求項3】
請求項1または2記載の水冷式エンジンの冷却装置において、
上記主冷却ジャケット部は、その排気側部分に設けられて、上記シリンダヘッドの下部に位置するシリンダブロックから当該主冷却ジャケット部の上記排気側下部空間内に冷却水を導入する冷却水導入部と、その吸気側部分に設けられて、上記吸気側空間と連通して当該主冷却ジャケット部内を流れる冷却水をシリンダヘッドの外部に導出する主冷却水導出部とを備え、
上記連通路と上記冷却水導入部とは平面視で互いに位置が相違しており、
上記サブ冷却ジャケット部は、その排気側部分に設けられて、上記排気側下部空間と連通して当該サブ冷却ジャケット部内を流れる冷却水をシリンダヘッドの外部に導出するサブ冷却水導出部を備えることを特徴とする水冷式エンジンの冷却装置。
【請求項4】
複数の気筒を列状に有し、吸排気をクロスフロー式としたエンジンのシリンダヘッドに、各燃焼室に連通する排気ポート部と各排気ポート部を集合させる排気集合部とが内蔵された水冷式エンジンの冷却装置を製造する方法であって、
上記シリンダヘッドのうち吸気ポート部周辺に吸気側空間を形成するための吸気側空間形成部、および、当該吸気側空間形成部に連設されて、上記シリンダヘッドのうち上記排気ポート部周辺に排気側下部空間を形成するための排気側下部空間形成部を備えた主冷却ジャケット中子を用いるとともに、
上記シリンダヘッドのうち上記排気側下部空間の上方に排気側上部空間を形成するための排気側上部空間形成部、および、上記排気側上部空間と上記排気側下部空間とを連通する連通路を形成するための上下方向に延びる連通路形成部を備えたサブ冷却ジャケット中子を用い、
上記シリンダヘッドの金型内に上記主冷却ジャケット中子を配置するとともに、上記シリンダヘッドの金型に、上記サブ冷却ジャケット中子を、その排気側上部空間形成部が上記主冷却ジャケット中子の排気側下部空間形成部から上方に離間するように、かつ、上記連通路形成部の下面が上記排気側下部空間形成部の上面と接合するように、配置する中子配置工程と、 上記金型と上記各中子との間に溶湯を注入して当該溶湯を冷却した後、上記各中子を除去することでシリンダヘッドを鋳造して、当該シリンダヘッド内に、上記冷却空間と排気側下部空間とからなる主冷却ジャケット部と、上記排気側上部空間と上記連通路とからなるサブ冷却ジャケット部とを、上記連通路によって互いに連通する一方、上記排気側下部空間と上記排気側上部空間とが互いに上下方向に肉壁を介して離間する位置に形成する鋳造工程とを含むことを特徴とする水冷式エンジンの冷却装置の製造方法。
【請求項5】
請求項4に記載の水冷式エンジンの冷却装置の製造方法において、
上記中子配置工程において、上記サブ冷却ジャケット中子の連通路形成部を、上記主冷却ジャケット中子の排気側下部空間形成部のうち上記気筒間に位置する部位に接合し、
上記鋳造工程において、上記連通路を、上記主冷却ジャケット部のうち上記気筒間に位置する部位とサブ冷却ジャケット部のうち上記気筒間に位置する部位とを連通する位置に形成することを特徴とする水冷式エンジンの冷却装置の製造方法。
【請求項6】
請求項4または5に記載の水冷式エンジンの冷却装置の製造方法において、
上記連通路形成部は、上下方向に延びる円柱状を有し、
上記鋳造工程において、上記連通路を上下方向に延びる円筒孔に形成し、
上記円筒孔の連通路にドリルを挿入して、当該連通路に形成された鋳バリをドリルによって除去する鋳バリ除去工程をさらに備えることを特徴とする水冷式エンジンの冷却装置の製造方法。
【請求項7】
請求項4〜6のいずれかに記載の水冷式エンジンの冷却装置の製造方法において、
上記主冷却ジャケット中子は、上記シリンダヘッドの下部に位置するシリンダブロックから上記主冷却ジャケット部の上記排気側下部空間内に冷却水を導入するための冷却水導入部を形成する冷却水導入部形成部と、当該主冷却ジャケット部の上記吸気側空間と連通してこの主冷却ジャケット部内を流れる冷却水をシリンダヘッドの外部に導出する主冷却水導出部を、上記主冷却ジャケット部の吸気側部分に形成する主冷却水導出部形成部とを備え、
上記サブ冷却ジャケット中子は、当該サブ冷却ジャケット部の排気側下部空間と連通してこのサブ冷却ジャケット部内部を流れる冷却水をシリンダヘッドの外部に導出するサブ冷却水導出部を、上記サブ冷却ジャケット部の排気側部分に、形成するサブ冷却水導出部形成部を備え、
上記中子配置工程において、上記サブ冷却ジャケット中子の連通路形成部を、上記冷却水導入部形成部と平面視で相違する位置に配置し、
上記鋳造工程において、上記主冷却ジャケット部の排気側部分に上記冷却水導入部を形成し、当該主冷却ジャケット部の吸気側部分に上記主冷却水導出部を形成し、上記サブ冷却ジャケット部の排気側部分に上記サブ冷却水導出部を形成することを特徴とする水冷式エンジンの冷却装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2012−31846(P2012−31846A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−92359(P2011−92359)
【出願日】平成23年4月18日(2011.4.18)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】