説明

水冷式電気機器

【課題】冷却水の過度な温度低下を防ぎ、ヒータのエネルギーロスを低減することを目的とする。
【解決手段】屋内に配置された電気機器2と、電気機器を冷却する冷却水を循環させるポンプ3と、屋外に配置され、冷却水を冷却する冷却器5と、冷却水を加熱するヒータ6と、電気機器、ポンプ、冷却器及びヒータの間を前記冷却水が循環する閉ループを形成する主配管4とを備えている。
さらに、冷却器の入口側と出口側に設けられて前記冷却水を分流する分岐部9、10の間をバイパスするバイパス配管11と、主配管における前記両分岐部の間に設けられた第1の流量調整弁7又はバイパス配管に設けられた第2の流量調整弁12のうち少なくとも一方を備えたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、冷却水によって冷却される水冷式電機機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の水冷式電機機器においては、冷却対象となる電気機器(インバータ装置等)と、この電気機器を冷却する冷却水を循環させるポンプと、電気機器の発生する熱により加熱された冷却水を冷却するための冷却装置とが、配管によって閉ループを形成するように接続されて構成されている。(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−199648(2−3頁、図1−2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような従来の水冷式電気機器において冷却装置は屋外に配置されることも多いが、冷却水の全量がこの冷却装置を循環する構成となっているため、外気温が低くなった場合には冷却水の温度が過度に低下することもあった。この場合には循環する冷却水の水温と屋内の室温との温度差が大きくなり、屋内の空気が冷却水の温度まで下げられて水蒸気が飽和し、電気機器表面に結露を引き起こすため絶縁性能を確保する上での問題となることがあった。このような結露を防ぐために、上記冷却水の閉ループの1箇所にヒータを設けて冷却水の加熱が行えるようになっているが、結露を生じない程度まで冷却水を加熱する場合には、冷却水の温度低下が大きいためにヒータにおいて多大なエネルギーロスが発生するという問題があった。
【0005】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、冷却水の過度な温度低下を防ぎ、ヒータのエネルギーロスを低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係る水冷式電気機器は、屋内に配置された電気機器と、電気機器を冷却する冷却水を循環させるポンプと、屋外に配置され、冷却水を冷却する冷却器と、冷却水を加熱するヒータと、電気機器、ポンプ、冷却器及びヒータの間を前記冷却水が循環する閉ループを形成する主配管とを備えている。
さらに、冷却器の入口側と出口側に設けられて前記冷却水を分流する分岐部の間をバイパスするバイパス配管と、主配管における前記両分岐部の間に設けられた第1の流量調整弁又はバイパス配管に設けられた第2の流量調整弁のうち少なくとも一方を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
この発明に係る水冷式電気機器によると、バイパス配管と、主配管における前記両分岐部の間に設けられた第1の流量調整弁又はバイパス配管に設けられた第2の流量調整弁のうち少なくとも一方を備えているため、冷却器を通って主配管より電気機器に還流する比較的冷たい冷却水と、バイパス配管より電気機器に還流する比較的温かい冷却水との混合割合を変えることにより水温を調節することが可能となる。従って、冷却水全量を冷却装置に循環させる従来と比較して冷却水温度を高く調整できるため、冷却水の過度な温度低下を防ぎ、ヒータのエネルギーロスを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施の形態1に係る水冷式電気機器の構成を示す図である。
【図2】本発明の実施の形態1に係る水冷式電気機器において、第1の流量調整弁と第2の流量調整弁との開度の関係を示すグラフである。
【図3】本発明の実施の形態1に係る水冷式電気機器において、流量調整弁の開度と冷却水流量との関係を示すグラフである。
【図4】本発明の実施の形態1に係る水冷式電気機器において、流量調整弁の開度と冷却水流量との関係を示すグラフである。
【図5】本発明の実施の形態1に係る水冷式電気機器において、流量調整弁の開度と冷却水流量との関係を示すグラフである。
【図6】本発明の実施の形態1に係る水冷式電気機器の運転形態を示す図である。
【図7】本発明の実施の形態2に係る水冷式電気機器の運転形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施の形態1.
図1は本発明の実施の形態1に係る水冷式電気機器1の構成を示す図である。本図において、電気機器2から排出される冷却水は、ポンプ3により主配管4内を循環する。主配管4には上記以外に冷却器5、ヒータ6、第1の流量調整弁7、水温計8が接続されており、主配管4は冷却水がこれら機器の間を循環する閉回路を形成している。また、冷却器5の入口側と出口側には冷却水を分流する分岐部9、10を有する。両分岐部9、10の間はバイパス配管11によりバイパスされており、このバイパス配管11には第2の流量調整弁12が設けられている。ここで13は電気機器2が配置される屋内と屋外との境界を模式的に示すが、本実施の形態においては、冷却器5と水温計8のみが屋外設置であり、それ以外の機器は屋内設置となっている。
【0010】
電気機器2によって加熱された冷却水はポンプ3により加圧され主配管4中を図中矢印の方向に流れ冷却器5に流入し、屋外に設置された冷却器5によって冷却される。冷却された冷却水は再び屋内に戻り、主配管4内の循環を繰り返す。また、電気機器2以外に冷却水の温度を上昇させるために加熱するヒータ6を備えており、冷却器5の出口部に設けられた水温計8により冷却器5より流出する冷却水の水温を測定している。更に本実施の形態に係る水冷式電機器1においては、水温計8から水温に関する信号が入力され、この信号に基づいて第1の流量調整弁7又は第2の流量調整弁12の開度を制御する制御装置14が備えられている。
【0011】
本実施の形態では冷却水のバイパス回路11が設けられており、主配管4の両分岐部9、10の間に設けられた第1の流量調整弁7と、バイパス配管11に設けられた第2の流量調整弁12の開度調整により、主配管4側を流れる冷却水量とバイパス配管11側を流れる冷却水量の調整を行うことができる。また、第1の流量調整弁7が100%開いているときは第2の流量調整弁12を閉じており、第2の流量調整弁12が100%開いているときは第1の流量調整弁7を閉じるというように、図2に示すイメージに従って流量調整弁7の開度(O)と流量調整弁12の開度(O)は各々が相反する動作を行うこととしている。この場合の主配管4を流れる冷却水の流量(F)とバイパス配管11を流れる冷却水の流量(F)との関係は例えば図3に示すようなものとなる。
【0012】
このように主配管4に第1の流量調整弁7を、バイパス配管11に第2の流量調整弁12を両方とも備える場合には、O=100%、O=0%として最大流量(FMAX)を冷却器5に流すことにより、ポンプ3、冷却器5を含めた本冷却システムの最大能力を活用することができる。更に、逆にO=0%、O=100%として主配管4側を封じきってバイパス配管11側のみに冷却水を流すことにより、冷却器5のメンテナンスを行うことも可能である。
【0013】
しかし、本願発明の効果を奏するためには、各流量調整弁7、11の開度の動作は図2に示されるようなものに限られず、また第1の流量調整弁7と第2の流量調整弁12の両方を備える必要もない。例えば、第1の流量調整弁7のみ設けた場合であっても図4に示すように開度Oを調節することによりFとFとの関係を調整できる。この場合にはO=0%とすることにより主配管4側を封じきって、冷却器5のメンテナンスを行うことができる。また、第2の流量調整弁12のみを設けた場合であっても図5に示すように開度Oを調節することによりFとFとの関係を調整できる。この場合にはO=0%とすることにより最大流量(FMAX)を冷却器5に流すことができる。
【0014】
以上のように主配管4における両分岐部9、10の間に設けられた第1の流量調整弁7又はバイパス配管11に設けられた第2の流量調整弁12のうち少なくとも一方を備えていれば、主配管4を流れる冷却水の流量(F)とバイパス配管11を流れる冷却水の流量(F)の両者の関係を調整できる。このことにより冷却器5を通って主配管4より電気機器2に還流する比較的冷たい冷却水と、バイパス配管11より電気機器2に還流する比較的温かい冷却水との混合割合を変えることにより水温を調節することが可能となる。
【0015】
なお、本実施の形態では、バイパス配管11を設けて主配管4を流れる冷却水が分流するような構成を採用しているが、このような分流回路を設けずに主配管4の途中1箇所に第1の流量調整弁7のみを設け、冷却水温が低下した場合には冷却水流量を絞ることにより冷却水の過度の低下を防止できるとも考えられる。
【0016】
しかし、電気機器2は高電圧機器である場合も多く、この電気機器2が配置された主配管4の前後は絶縁材料(ポリテトラフルオロエチレン等)により構成されており、この部分は機械的強度が弱い部分となっている。上記のように主配管4の途中1箇所に第1の流量調整弁7のみを設ければ確かに流量の調整はできるが、一般的にはポンプ3の吐出圧の調整は困難であるため、第1の流量調整弁7の開度Oを絞れば水圧が上昇する。そうすると前述のような機械的強度の弱い部分が上昇した水圧に耐えられるかどうかが問題となる。
【0017】
これに対して本実施の形態に係る水冷式電気機器1によると、分流回路であるバイパス配管11を設けているため、第1の流量調整弁7により主配管4を流れる冷却水量を絞った場合であっても、バイパス配管11を通じてある程度の冷却水量を流すことが可能であるため、圧力上昇を緩和することができる。従って、上記のような機械的強度の弱い部分に対する耐水圧の問題を解消することができる。
【0018】
次に図1に示された本実施の形態に係る水冷式電気機器1の運転方法について説明する。まず、水温計8により測定された冷却水温Tが比較的高く、冷却器5による冷却水の冷却が必要となる通常の運転状況においては、図6に示す運転領域Rにて運転を行うように制御装置14は第1の流量調整弁7と第2の流量調整弁12の開度の制御を行う。すなわち、この運転領域Rでは、第1の流量調整弁7の開度O=100%、第2の流量調整弁12の開度O=0%となるように制御し、冷却器5に全ての冷却水を循環させ、冷却効率を最大とする。
【0019】
外気温が低下し、それに伴って水温計8により測定された冷却水温Tが下がった場合、このまま第1の流量調整弁7の開度Oを100%に保つと、冷え過ぎた冷却水が室内に入ったときにそのときの室内湿度によっては結露を引き起こすことが懸念される。この場合には制御装置14は図6に示す運転領域Rに切り替える。この運転領域Rにおいて、冷却水温Tの低下に伴い、制御装置14は第1の流量調整弁7の開度Oは100%から0%へと減少させるのと同時に、図2に従って開度Oを0%から100%へと増加させるように制御する。このように冷却器5へ循環させる冷却水の流量を徐々に減らすと同時に、バイパス配管11を流れる比較的温かい冷却水流量を増やしてゆくことにより、ヒータ6の電源を入れなくても冷却水の不要な温度降下を防ぐことができる。
【0020】
更に冷却水温Tが下がった場合には、図6に示す運転領域Rの状態とし、制御装置14は第1の流量調整弁7の開度Oは0%、第2の流量調整弁12の開度Oは100%を保つように制御し、屋外に配置された冷却器5への循環は完全に停止する。これは屋外の気温の低下に伴い屋内の気温も低下し、屋内に配置された主配管4又はバイパス配管11からの放熱のみで電気機器2からの発熱とバランスさせることができることを意味している。このことにより、屋内を循環する冷却水の温度低下を防ぎ、設置しているヒータ7の動作を最小限とすることができ、従来の方式よりもエネルギーロスを抑制することができる。
【0021】
また、外気温が更に下がり、冷却水が凍結する温度Tに近づいてきた場合は、図6に示す運転領域Rの状態とし、制御装置14は第1の流量調整弁7に対しては凍結を防止できる程度の最低限の流量(FMIN)を流しうるだけの開度Oを確保するように制御するのと同時に、第2の流量調整弁12の開度Oはわずかだけ絞り気味にする。これにより外気温が下がった場合であっても、冷却水の凍結、及びこれによる機器の破損を防止することができる。
【0022】
なお、上記において各運転領域R、R、R、Rの境界水温T、T、Tについては、電気機器2からの発熱、外気温、室内温度及び室内湿度、及び下記の熱バランスの関係式に基づき、室内機器における結露を防止しつつ、ヒータからの発生熱量を最小化することを目標に適宜定めればよい。
+Q=Q(T、T)+QP1(T、T)+QP2(T、T
ここで、
:電気機器2からの発熱、Q:ヒータ6からの発熱、
(T、T):冷却器5からの放熱、QP1(T、T):屋外配管からの放熱、
P2(T、T):屋内配管等からの放熱
:冷却水温、T:外気温、T:室内温度
また、冷却水の凍結温度Tについては公知の不凍液(エチレングリコール等)を用いることにより、0℃以下(例えば−30℃程度)とすることも可能である。
【0023】
以上のとおり本実施の形態に係る水冷式電気機器1によると、バイパス配管11と、主配管4における両分岐部9、10の間に設けられた第1の流量調整弁7又はバイパス配管11に設けられた第2の流量調整弁12のうち少なくとも一方を備えているため、冷却器5を通って主配管4より電気機器2に還流する比較的冷たい冷却水と、バイパス配管11より電気機器2に還流する比較的温かい冷却水との混合割合を変えることにより水温を調節することが可能となる。従って、冷却水全量を冷却装置に循環させる従来と比較して冷却水温度を高く調整できるため、冷却水の過度な温度低下を防ぎ、ヒータのエネルギーロスを低減することができる。
【0024】
また、図1に示すように第1の流量調整弁7と第2の流量調整弁12の両方を備えている場合には、上記の効果に加えて冷却水の全流量を冷却器5に流すことができ、本冷却システムの最大能力を活用することができると同時に、主配管4側を封じきって冷却器5のメンテナンスを行うことができるという効果も併せて奏する。
【0025】
更に、冷却器5より流出する冷却水の水温を測定する水温計8と、水温計8から水温に関する信号が入力され、この信号に基づいて第1の流量調整弁7又は前記第2の流量調整弁12の開度を制御する制御装置14とを備えたため、測定された冷却水温に応じて主配管4とバイパス配管11の冷却水量及び冷却水温を最適に調整でき、ヒータのエネルギーロスを更に低減することができる。
【0026】
実施の形態2.
実施の形態1では、冷却水が凍結する温度Tに近づいてきた場合に、閉め切っていた第1の流量調整弁7を開放して冷却器5を循環する冷却水量を階段状にFMINまで変化させる例を示した。本実施の形態ではこのように階段状に変化させるのではなく、第1の流量調整弁7の開度Oを大きくするのと第2の流量調整弁12の開度Oを小さくするのを徐々に行い、主配管4における流量をFMINまで緩やかに変化させることを特徴とする。
【0027】
実施の形態1では所定の冷却水温(T)まで下がった時点で階段状にバルブを第1の流量調整弁7を開放するので、このときに一気に室内に流入した冷水による水温低下に対して、ヒータ6を加熱することによる水温上昇が追いつかず、一時電気機器2が冷却されるため結露する恐れがある。これに対し、実施の形態2では冷却水温がTに下がる前の段階から時間をかけて冷水が混入してくるため、ヒータ6の加熱による水温上昇と相殺させることができて、室内の水温がそれほど低下しないため結露しないで済むという効果も奏する。
【符号の説明】
【0028】
1 水冷式電気機器
2 電気機器
3 ポンプ
4 主配管
5 冷却器
6 ヒータ
7 第1の流量調整弁
8 水温計
9 分岐部
10 分岐部
11 バイパス配管
12 第2の流量調整弁
14 制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
屋内に配置された電気機器と、
前記電気機器を冷却する冷却水を循環させるポンプと、
屋外に配置され、前記冷却水を冷却する冷却器と、
前記冷却水を加熱するヒータと、
前記電気機器、前記ポンプ、前記冷却器及び前記ヒータの間を前記冷却水が循環する閉ループを形成する主配管と、
前記冷却器の入口側と出口側に設けられて前記冷却水を分流する分岐部の間をバイパスするバイパス配管と、
前記主配管における前記両分岐部の間に設けられた第1の流量調整弁又は前記バイパス配管に設けられた第2の流量調整弁のうち少なくとも一方
を備えた水冷式電気機器。
【請求項2】
前記冷却器より流出する前記冷却水の水温を測定する水温計と、
前記水温計から前記水温に関する信号が入力され、この信号に基づいて前記第1の流量調整弁又は前記第2の流量調整弁の開度を制御する制御装置とを備えたことを特徴とする
請求項1に記載の水冷式電気機器。
【請求項3】
前記制御装置は、前記水温が高いほど前記第1の流量調整弁の開度を大きくするか、前記第2の流量調整弁の開度を小さくするように制御することを特徴とする
請求項2に記載の水冷式電気機器。
【請求項4】
前記第1の流量調整弁と前記第2の流量調整弁の両方を備えたことを特徴とする
請求項1に記載の水冷式電気機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−216587(P2012−216587A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−79311(P2011−79311)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】