説明

水処理剤

【課題】 カチオン捕捉性とアニオン捕捉性とを兼ね備え、ろ過により、カチオン及びアニオン成分を有効に取り除くことが可能な水処理剤を提供する。
【解決手段】 スメクタイト系粘土鉱物の熱処理物と、下記式(1):
RO・nM・mHO (1)
式中、Rは、アルカリ土類金属であり、
Mは、AlまたはFeであり、
nは、0.1 乃至1.2 の数であり、
mは、0 乃至 2 の数である、
で表される組成を有し、2θ=43°、62°付近に強いX線回折ピークを有する複合酸化物であるアニオン捕捉剤とからなることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カチオン捕捉性とアニオン捕捉性とに優れた水処理剤に関する。
【背景技術】
【0002】
各種工場排水などには、Pb2+、Cd2+等の重金属イオンやNHイオン等のカチオン成分や、CrO2−、AsO3−、PO3−、ハロゲンイオン等のアニオン成分を含む場合が多く、排水に際しては、これらの有害なイオン成分を取り除くことが要求される。一般に、このようなイオン成分は、沈殿やフロック等として取り除かれるが、このためには、排水を沈殿槽等に長時間保持しなければならない。従って、ろ過により、迅速に各種イオン成分を捕捉する水処理剤が求められている。
【0003】
一方、ベントナイトに代表されるジオクタヘドラル型スメクタイト系粘土(以下、単にスメクタイトと略称することがある)は、安価であり、しかもカチオン捕捉性を有していることが知られており、アンモニアなどを多く含むペットなどの尿処理剤として古くから使用されており(例えば特許文献1,2参照)、従って、このような粘土鉱物を、上記のようなイオン成分を含む水の処理剤として使用することが考えられる。
【特許文献1】特開平1−269440号公報
【特許文献2】特許2572208号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ベントナイト等のスメクタイト系粘土は、カチオン捕捉性は有しているものの、アニオン捕捉性はあまり有しておらず、また、水中での粒子強度が弱く、所定の粒子形状に成形してろ過剤として使用した場合、容易に粒子崩壊してしまうため、ろ過剤としての使用には難点がある。中でもベントナイトは水膨潤性を有しており、吸水によって粒子同士が固結してしまったり、水中ではコロイド状になるため、ろ過剤としての使用は困難である。
【0005】
従って、本発明の目的は、カチオン捕捉性とアニオン捕捉性とを兼ね備え、ろ過により、カチオン及びアニオン成分を有効に取り除くことが可能な水処理剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、スメクタイト系粘土の熱処理物とアニオン捕捉剤とを含有する粒状水処理剤が提供される。
【0007】
本発明の粒状水処理剤においては、
(1)前記熱処理物が10ミリイクイバレント/100g以上の陽イオン交換能(CEC)を有していること、
(2)ジオクタヘドラル型スメクタイト系粘土がベントナイトであること、
(3)前記熱処理物がベントナイトを300乃至800℃で熱処理したものであること、
(4)前記アニオン捕捉剤が、下記式(1):
RO・nM・mHO (1)
式中、Rは、アルカリ土類金属であり、
Mは、AlまたはFeであり、
nは、0.1乃至1.2の数であり、
mは、0 乃至 2の数である、
で表される組成を有し、2θ=43°、62°付近に強いX線回折ピークを有する複合酸化物であること、
(5)前記複合酸化物が10ミリイクイバレント/100g以上の陰イオン交換能(AEC)を有していること、
(6)前記熱処理物とアニオン捕捉剤とを10:90乃至90:10の重量比で含有していること、が好ましい。
【発明の効果】
【0008】
本発明の水処理剤では、スメクタイト系粘土の熱処理物をカチオン捕捉剤として使用し、これをアニオン捕捉剤と併用しているため、前述したカチオン成分とアニオン成分とを有効に捕捉し、除去することができる。また、スメクタイト系粘土を熱処理物として使用しているため、そのカチオン交換能を維持したままの状態で、粒子強度が高められ、粒子崩壊が有効に防止され、また水膨潤による粒子同士の固結も有効に防止されるため、粒子間に水を透過させてのろ過による上記イオン成分の除去を有効に行うことができる。即ち、本発明の水処理剤は、ろ過によりカチオン及びアニオン成分の除去による水の浄化を行うことができ、極めて効率よく、水処理を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
(スメクタイト系粘土の熱処理物)
本発明においては、スメクタイト系粘土の熱処理物をカチオン捕捉剤として使用するものであるが、この熱処理に供されるジオクタへドラル型スメクタイト系粘土は、SiO四面体層−AlO八面体層−SiO四面体層からなる層状構造を有し、四面体層、八面体層が異種金属(例えば、Al、MgまたはFe(II)など)で同型置換された基本骨格を有しており、これらの積層層間に水やカチオンが存在し、このような置換金属や層間元素の種類や量に応じた陽イオン交換能を示すものであり、この陽イオン交換能によってカチオン捕捉性を示す。このようなスメクタイト系粘土には、酸性白土、フラーズアース、ベントナイト、サブベントナイト、等を例示することができ、モンモリロナイト、バイデライト、ノントロナイト等を主要鉱物としている。本発明では、これらの何れも使用することができるが、特に、吸水性の点で、ベントナイト、例えば、酸化物基準でのモル比で表して、下記式:
Al/SiO=0.05乃至0.5
NaO/SiO=0.005乃至0.1
MO/SiO=0.05乃至1.0
(M:アルカリ土類金属)
で表される組成を有するものが好適に使用される。
【0010】
ところで、上記のようなスメクタイト系粘土は、優れたカチオン捕捉性を示すものの、粒子強度が低く、特に水中下では容易に粒子崩壊してしまうという欠点があり、それ自体ではろ過性が著しく損なわれる。特にベントナイトでは、基本層同士の層間に水が入り、膨潤すると、基本層がバラバラなコロイド状に分散し、流動状態となり、さらには基本層同士の吸引反発により、カード・ハウス構造が形成され、ゲル化を生じ、粒子同士が固結してしまう。このような固結を生じてしまうと、水の透過も遮断されてしまい、全くろ過性が損なわれてしまう。そこで、本発明では、このようなスメクタイト系粘土を熱処理して使用するわけである。
【0011】
このような熱処理は、スメクタイトの基本構造を維持させながら層間を収縮させるものであることが必要である。即ち、その基本構造が崩壊するまで熱処理を行うと、例えば層間への吸水性が完全に失われ、層間の金属イオンとの接触による陽イオン交換によるカチオン捕捉性が著しく低下してしまい、最終的にはカチオン捕捉性が完全に失われてしまうこととなる。従って、このような熱処理は、通常、10ミリイクイバレント/100g以上のCECが保持される程度に行われ、具体的には、300乃至800℃の温度で0.1乃至10時間程度、スメクタイト系粘土を加熱保持することにより行われる。また、熱処理による層間の収縮は、X線回折(Cu−Kα)測定で、回折角2θが8.5〜9.5度の領域にピークが発現することにより確認できる。
【0012】
尚、上記の熱処理は、それ自体公知の手段で行うことができる。例えば、静置式ガス炉、電気式マッフル炉、外部からの加熱を利用したロータリーキルン等を用いて行うことができる。造粒には、圧縮成形法、打錠成形法、転動造粒法、噴霧造粒法、押出造粒法等のそれ自体公知の造粒法が使用されるが、造粒時必要に応じてイオン吸着能を低下させない範囲でシリカゾル、アルミナゾル、シリカーマグネシア、珪酸アルミニウム塩、セピオライト等を添加して成型しても良い。
造粒された混練物は段階的に乾燥、焼成するのが好適である。
【0013】
このようにして得られるスメクタイト系粘土の熱処理物は、通常、最小方向における粒径が0.5乃至10mmであり、アスペクト比が1乃至10の範囲にあることが、ろ過性(透水性)や粒子強度などの点で好ましいが、粒子形状は、球状、立方体状、円柱状、角柱状、顆粒状、タブレット状、不定形状等の任意の形状であってよい。このような粒状成形物は、基本層層間が収縮しているため、粒子強度が高く、例えば後述する実施例からも明らかな通り、水中下においても極めて高い粒子強度(耐水強度)を示し、しかも、吸水性を残す程度の収縮であるため、依然として優れたカチオン捕捉性を示し、ろ過により、例えばPb2+に代表される種々の有害なカチオン成分を有効に取り除くことができる。
【0014】
(アニオン捕捉剤)
上述したスメクタイト系粘土の熱処理物は、カチオン捕捉性を有するものの、アニオン捕捉性はあまり有していない。従って、各種の有害なアニオンを除去するために、アニオン捕捉剤を使用することが必要である。
【0015】
このようなアニオン捕捉剤としては、例えば各種アニオンに対して反応性或いは吸着性を有し、これを捕捉し得る種々の金属酸化物または水酸化物等の粒状物などを使用することもできるが、種々のアニオンに対する吸着性に優れ、しかもその持続性に優れているという点で、下記式(1):
RO・nM・mHO (1)
式中、Rは、アルカリ土類金属、特に好ましくはMg、Ca,Znであり、
Mは、AlまたはFeであり、
nは、0.1乃至1.2の数であり、
mは、0乃至2の数である、
で表される組成を有し、2θ=43°、62°付近に強いX線回折ピークを有する複合酸化物であることが好ましい。
【0016】
このような複合酸化物は、例えばアルカリ土類金属の水酸化物或いは炭酸塩と、金属M(AlまたはFe)の水酸化物(例えばアルミナゾルなど)とを、酸化物換算でのモル比が上記式(1)の範囲内となるような量比で混合して造粒した後、密閉容器中で80乃至200℃の温度で反応後、加熱処理することにより得られ、かかる複合酸化物は、例えば10ミリイクイバレント/100g以上の陰イオン交換能を示し、優れたアニオン捕捉能を有している。
【0017】
上記のような複合酸化物は、後述する実施例に示されているように、X線回折(Cu−Kα)測定で、2θ=43°、62°(具体的には、43°±2°、62°±2°の領域)付近に強いX線回折ピークを有する複合酸化物である。
この複合酸化物は、2価金属(R2+)を中心とする八面体が二次元的にやや不規則に連なった層(例えばMgO・xHOの組成の層)を有しており、この層中の2価金属イオンの一部がAl3+或いはFe3+で置き換わった構造を有しており、このような電気的に正極性を帯びた層が積み重なった構造を有しており、丁度、ハイドロタルサイトの層間アニオン(例えば炭酸イオン)や構造水が除去された構造となっているものと考えられる。従って、この複合酸化物は、陰イオン交換性を示し、層間に種々のアニオンを水と共に取り込み、これらアニオンを吸着保持するものと推定される。
【0018】
このような複合酸化物の造粒は、前述したスメクタイト系粘土の熱処理物と同様の手段で行うことができ、例えば押出し造粒等により、上記スメクタイト系粘土と同様の粒子形態に造粒することがろ過性(透水性)等の見地から好ましく、また、必要により、熱処理による非晶質化を行った後、所望の粒子形態に成形することもできる。
【0019】
(水処理剤)
本発明の水処理剤は、上述したスメクタイト系粘土の熱処理物とアニオン捕捉剤とからなるが、その量比は、処理すべき水の水質に応じて適宜変化させることができるが、一般には、スメクタイト系粘土の熱処理物とアニオン捕捉剤との重量比が、10:90乃至90:10、特に30:70乃至70:30の範囲にあることが、各成分の優れたカチオン捕捉性やアニオン捕捉性を発現させる上で好ましい。
【0020】
また、スメクタイト系粘土の熱処理物の粒状成形物とアニオン捕捉剤の粒状成形物とを乾式混合することにより水処理剤として使用することもできるし、スメクタイト系粘土の熱処理に際して、前述した複合酸化物の熱処理や造粒を一括で行い、両成分が一体化された粒状成形物として水処理剤として使用することもできる。例えば、アルカリ土類金属の水酸化物或いは炭酸塩と、金属M(AlまたはFe)の水酸化物とを所定量比で含有するスラリーを、熱処理すべきスメクタイト系粘土と混合し、複合酸化物の合成と粘土鉱物の熱処理による層間収縮とを達成し得る条件で熱処理を行い、造粒成形品を熱処理することにより、両成分が一体化された粒状成形物を得ることができる。また。造粒時に必要に応じて他の陽イオン、陰イオン吸着能を有する合成ゼオライト、天然ゼオライト、非晶質アルミノケイ酸塩、珪酸マグネシウム、珪酸カルシウム、活性炭、ハイドロタルサイト及びその類似物、鉄系及び鉄−亜鉛系イオン吸着剤、イオン交換樹脂等を成型体が水中で崩壊しない程度に混合しまたはそれらを単独で混合して使用することもできる。
【0021】
例えば、両者を乾式混合して使用する場合には、使用直前に、処理すべき水の水質に応じて、両成分の混合比率を変動させることができ、除去すべきカチオン成分を多く含む排水の処理を行う場合には、スメクタイト系粘土の熱処理物の量を多くし、除去すべきアニオン成分を多く含む排水の処理に用いる場合には、アニオン捕捉剤の量を多くすればよい。
【0022】
一方、両成分を一体化した粒状成形物の形態で使用する場合には、運搬、保管等が容易であるという利点があり、しかも、この場合には、スメクタイト系粘土の熱処理物がバインダーとして機能するため、粒子強度を高め、粒子の崩壊を防止するという点で大きな利点を有する。特に、スメクタイト系粘土の熱処理物を 重量15%以上含有する粒状成形物は、耐水強度が著しく高く、極めて有用である。
【0023】
上述した本発明の水処理剤は、カチオン及びアニオンを問わず、種々の有害なイオン成分をろ過により取り除くことができ、例えば各種の工場排水をこの水処理剤を通すことにより、各粒子との接触により、Pb2+、Cd2+等の重金属イオンやNHイオン等のカチオン成分のみならず、CrO2−、AsO3−、PO3−、ハロゲンイオン等のアニオン成分が水中から捕捉除去され、粒子間を透水した水は、これらのイオン成分がないか、極めて微量の浄化された水となる。
【実施例】
【0024】
本発明を次の例で説明するが、本発明は以下の例に限定されるものではない。
尚、各試験方法は下記の方法に従って行った。
(1)
【0025】
(2)耐水強度
常温の水中に48時間浸漬した粒状物試料について、その20個をランダムにサンプリングし、湿ったまま、粒子強度計(アイコーエンジニアリング社製、Model−1310D型)を用いて強度を測定し、その平均値を耐水強度とした。
【0026】
(2)X線回折
X線回折装置(株)リガク製、MultiFlex、Cu−Kα)を使用し、以下の条件で測定した。
管電圧:40kV、管電流:30mA、発散スリット:0.15mm、散乱スリット:1°、受光スリット:0.3mm。
【0027】
(3)アスペクト比
各試料、20個の粒状物をランダムにサンプリングし、ノギスを用いて、その長さ及び径を測定してそれぞれ20ヶの平均値を求め、その平均長を平均径で除したものをアスペクト比とした。
【0028】
(4)化学組成
各試料について、フッ酸分解とアルカリ溶融の前処理をした後、重量法、原子吸光法、キレート滴定法により測定した。(110℃×3時間乾燥基準)
【0029】
(5)陽イオン交換能(CEC)
日本土壌肥料学会監修『土壌標準分析測定法』記載の陽イオン交換容量測定法(ショーレンベルガー法)による酢酸アンモニウム交換法により測定した。
【0030】
(6)陰イオン交換能(AEC)
(財)日本土壌協会『土壌・水質及び植物体分析法』(p.60)に準拠し、塩化バリウムでCl交換後、硫酸マグネシウムでSO置換する方法で測定した。
【0031】
(7)重金属吸着試験
陽イオン吸着量測定用として鉛(Pb)、カドミウム(Cd)、陰イオン吸着量測定用としてクロム酸(Cr)、ヒ酸(As)の各原子吸光測定標準液(1000ppm、和光純薬(株)製)を用い、それぞれを純水で10倍に希釈する。300mlのビーカーに上記希釈液を200g秤取し、上部液中にステンレス製のメッシュで作成した小ケージにサンプル1gを入れて固定し、ビーカー底部で回転するマグネッチックスターラーで24時間攪拌後、しばらく静置し、上部(上澄み)液をサンプリングする。次いでこの液を希釈しICP発光分析法により各金属の濃度を測定し、原液(標準液の10倍希釈液)との濃度差から重金属吸着量を求めた。
【0032】
参考例1〜3
スメクタイト系粘土(新潟県新発田市大字小戸N地区産)10kgを10mmの波目型を有する造粒板を装着したスクリュー式一軸押出成型機で成形後、造粒板の孔径を5mmφに変え、3回通過させて充分に混錬する。次いでデスクペレッターで2mmφに成形し、110℃の送風乾燥機で一夜(約10時間)乾燥する。次いで乾燥上がり品を5mmφのスクリーンを装着したスピードミルで粒度調整後、12メッシュのフルイで微粉部分を除去し焼成前原料を得た。
更にこの焼成前原料を電気炉で400℃(参考例1)、500℃(参考例2)、600℃(参考例3)で焼成し、粒状物(柱状成形物)を得た。
得られた粒状物試料について、耐水強度、陽イオン交換能(CEC)、陰イオン交換能(AEC)、Pbイオン吸着量等を測定した。
使用した原料スメクタイト系粘土の化学組成を表1に、参考例1〜3の各測定結果について表2にまとめて示した。
また、原料として使用したスメクタイト系粘土及び参考例2のX線回折パターンを図1に示した。
【0033】
参考例4
スメクタイト系粘土を新潟県新発田市大字小戸T地区産に代えた以外は参考例2と同様に調製し、2mmφ粒状物を得た。
参考例4の各測定結果について表2にまとめて示し、X線回折パターンを図1に示した。
【0034】
参考例5〜6
粉末ベントナイト(黒崎白土工業(株)製)10kgに全体の水分が32%になるように水を加え、参考例1で使用した一軸式押出成形機を使用し、5mmφの造粒板で1回、次いで2mmφの造粒板を3回通過させ粒状物を得た。
この粒状物について参考例1と同様に乾燥、粒度調整、篩別後、550℃(参考例5)、650℃(参考例6)で焼成した。
得られた粒状物について、耐水強度、陽イオン交換能、その他の物性を測定した。用いた粉末ベントナイトの化学組成を表1に、参考例5〜6の各測定結果を表2にまとめて示した。
【0035】
【表1】

【0036】
【表2】

【0037】
実施例1〜2
参考例1で使用したスメクタイト系粘土0.5kgに、塩基性炭酸マグネシウム(和光純薬(株)製)1.95kg、アルミナゾル#200(日産化学(株)製)1.74kg及び全体の水分が30%になる量の純水を加えた後、5mmφの造粒板を装着した一軸式押出成形機で5回混錬し、さらにデスクペレッターで2mmφに成形する。次いでこの粒状物をステンレス製の密閉容器に入れて110℃のオーブン中で8時間反応し、反応終了後、容器から取出し、110℃の送風乾燥機で一夜(約10時間)乾燥する。
次いで参考例1と同様に粒度調整、篩別後、550℃(実施例1)、650℃(実施例2)で焼成し、粒状物(柱状成形物)を得た。
得られた粒状物試料について、CEC、AEC、耐水強度、その他の試験を行い、各測定結果を表3に示した。
また実施例1で得られたサンプルのX線回折図を図1に示した。
【0038】
実施例3〜4
参考例1で使用したスメクタイト系粘土1kgに、塩基性炭酸マグネシウム(和光純薬(株)製)1.62kg、アルミナゾル#200(日産化学(株)製)1.44kg及び調整水を加えた以外は実施例1と同様に2mmφの成形物を得た。
これを参考例1と同様に乾燥、粒度調整、篩別後、550℃(実施例3)、650℃(実施例4)で焼成し、粒状物(柱状成形物)を得た。
得られた粒状物試料について、CEC,AEC、耐水強度、その他の測定を行い、結果を表3にまとめて示した。
また実施例3で得られたサンプルのX線回折図を図1に示した。
【0039】
比較例1
実施例1において、焼成前の粒状物を250℃で乾燥した。
これを水中に入れたところ、瞬時に崩壊し、懸濁液状態となり、濾過操作が極めて困難であって、本発明の目的は達せられないものであった。
【0040】
実施例5〜7
参考例1で使用したスメクタイト系粘土1kgに、乾燥物基準で50:50になるようにA型ゼオライト粉末(和光純薬(株)製)(実施例5)、天然ゼオライト(クリノプチロライト)粉末(実施例6)またはハイドロタルサイト(和光純薬(株)製)(実施例7)を混合し実施例1と同様に2mmφに成形した。
これを同様に乾燥、粒度調整、篩別後、550℃で焼成し、粒状物(柱状成形物)を得た。
このものの各測定試験結果について表3に示した。
【0041】
【表3】

【0042】
実施例8〜12
参考例2、4、5と実施例1、3、5、7で得られた粒状物試料を表4に示す割合で乾式ブレンドした。尚、試料のブレンドは、均一化を図るため、乳鉢で軽く粉砕し、粒径を10−14メッシュに調整後、合計で20gになる様にポリ袋に入れて、ふり混ぜてブレンドした。
得られた粒状物(ブレンド品)について重金属吸着試験等を行い、その結果を表4にまとめて示した。
【0043】
【表4】

【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】スメクタイト系粘土、参考例2、4で用いたベントナイト熱処理物及び実施例1、3で得られた試料のX線回折パターンを示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジオクタへドラル型スメクタイト系粘土の熱処理物とアニオン捕捉剤とを含有する粒状水処理剤。
【請求項2】
ジオクタへドラル型スメクタイト系粘土がベントナイトである請求項1に記載の粒状水処理剤。
【請求項3】
前記熱処理物がベントナイトを300乃至800℃で熱処理したものである請求項1に記載の粒状水処理物。
【請求項4】
前記アニオン捕捉剤が、下記式(1):
RO・nM・mHO (1)
式中、Rは、アルカリ土類金属であり、
Mは、AlまたはFeであり、
nは、0.1乃至1.2の数であり、
mは、0乃至2の数である、
で表される組成を有し、2θ=43°、62°付近に強いX線回折ピークを有する複合酸化物からなる請求項1乃至3の何れかに記載の粒状水処理物。
【請求項5】
前記熱処理物とアニオン捕捉剤とを10:90乃至90:10の重量比で含有している請求項1乃至4の何れかに記載の粒状水処理物。

【図1】
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【公開番号】特開2006−212597(P2006−212597A)
【公開日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−30376(P2005−30376)
【出願日】平成17年2月7日(2005.2.7)
【出願人】(000206211)大成建設株式会社 (1,602)
【出願人】(598167213)黒崎白土工業株式会社 (24)
【Fターム(参考)】