説明

水処理方法及び水処理装置

【課題】繊維状の濾過体を用い、被処理水中に含まれる濁質の捕捉性能が良好な水処理方
法及び水処理装置を提供する。
【解決手段】カチオン性モノマーユニット20〜80モル%と、アニオン性モノマーユニ
ット5〜40モル%と、ノニオン性モノマーユニット0〜75%とを有する両性電解質ポ
リマーを含有する凝集剤を、被処理水に添加して凝集処理した後、該凝集処理した被処理
水を、通水される被処理水中の濁質を捕捉する繊維状の濾過体を有する濾過処理手段に通
水して濾過処理する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工業用水、市水、井水、河川水、湖沼水、工場廃水などの被処理水の水処理
方法及び水処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
工業用水、市水、井水、河川水、湖沼水、工場廃水などの被処理水を処理する方法とし
て、例えば被処理水に無機凝集剤及びアニオン性等の高分子凝集剤を添加して被処理水に
含まれる濁質を吸着や凝結等する凝集処理をした後、砂濾過や加圧浮上処理により濁質を
除去する方法がある。しかしながら砂濾過や加圧浮上処理では、装置が大きくなってしま
うという問題がある。
【0003】
ここで、非常に高い濾過速度での濾過処理が可能なため省スペース化が可能な濾過装置
として、繊維状の濾過体(濾材)を用いた濾過装置が提案されている(特許文献1〜3参
照)。しかし、この繊維状の濾過体を用いた濾過装置は微細な粒子の捕捉性能が悪い。し
たがって、この濾過装置を用いて水処理する際には、無機凝集剤や高分子凝集剤などの凝
集剤を用いたり、この濾過装置で捕捉されなかった微細な粒子を捕捉するために、更に濾
過手段を設けているが、捕捉性能は不十分であり、清澄な処理水を得難いという問題があ
る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−265907号公報
【特許文献2】特開2004−89766号公報
【特許文献3】特開2007−229658公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上述した事情に鑑み、繊維状の濾過体を用い、被処理水中に含まれる濁質の捕
捉性能が良好な水処理方法及び水処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は上記目的を達成するために鋭意検討した結果、繊維状の濾過体を有する濾過
処理手段での濾過処理の前に、カチオン性モノマーユニット20〜80モル%と、アニオ
ン性モノマーユニット5〜40モル%と、ノニオン性モノマーユニット0〜75%とを有
する両性電解質ポリマーを凝集剤として添加することにより、上記目的が達成されること
を見いだし、本発明を完成した。
【0007】
即ち、本発明の水処理方法は、カチオン性モノマーユニット20〜80モル%と、アニ
オン性モノマーユニット5〜40モル%と、ノニオン性モノマーユニット0〜75%とを
有する両性電解質ポリマーを含有する凝集剤を、被処理水に添加して凝集処理した後、該
凝集処理した被処理水を、通水される被処理水中の濁質を捕捉する繊維状の濾過体を有す
る濾過処理手段に通水して濾過処理することを特徴とする。
【0008】
また、前記濾過処理手段は、紐状の濁質捕捉部を有する濾過体が通水時の濾過部の空隙
率が50〜95%になるように濾過槽に充填されていることが好ましい。
【0009】
そして、前記濾過処理の前に、被処理水に無機凝集剤を添加してもよい。
【0010】
本発明の他の態様は、被処理水が導入される反応槽と、カチオン性モノマーユニット2
0〜80モル%と、アニオン性モノマーユニット5〜40モル%と、ノニオン性モノマー
ユニット0〜75%とを有する両性電解質ポリマーを含有する凝集剤を前記反応槽又は反
応槽の前段で導入して、被処理水に前記凝集剤を添加する凝集剤導入手段と、前記反応槽
の後段に設けられ前記反応槽で凝集処理した被処理水を濾過処理する濾過処理手段であっ
て通水される被処理水中の濁質を捕捉する繊維状の濾過体を有する濾過処理手段とを具備
することを特徴とする水処理装置にある。
【発明の効果】
【0011】
カチオン性モノマーユニット20〜80モル%と、アニオン性モノマーユニット5〜4
0モル%と、ノニオン性モノマーユニット0〜75%とを有する両性電解質ポリマーを含
有する凝集剤を、被処理水に添加することにより、被処理水中に含まれる濁質と両性電解
質ポリマーとで非常に強固で大きなフロック(凝集物)を形成することができる。したが
って、繊維状の濾過体を用いた濾過処理手段で濾過処理しても、従来の高分子凝集剤や無
機凝集剤を用いた場合と比較して、形成されたフロックは非常に高い捕捉率で繊維状の濾
過体に捕捉されるので、清澄度の高い処理水を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】濾過装置の構成を示す断面図である。
【図2】濾過装置の要部拡大図である。
【図3】濾過装置の濁質捕捉部の一例を示す図である。
【図4】水処理装置例の概略系統図である。
【図5】水処理装置例の概略系統図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0014】
本発明の水処理方法は、カチオン性モノマーユニット20〜80モル%と、アニオン性
モノマーユニット5〜40モル%と、ノニオン性モノマーユニット0〜75%とを有する
両性電解質ポリマーを含有する凝集剤を、被処理水に添加して凝集処理した後、この凝集
処理した被処理水を、通水される被処理水中の濁質を捕捉する繊維状の濾過体を有する濾
過処理手段に通水して濾過処理するものである。
【0015】
被処理水としては、例えば、フミン酸・フルボ酸系有機物、藻類等が生産する糖などの
生物代謝物、又は、界面活性剤等の合成化学物質などを含む水、具体的には、工業用水、
市水、井水、河川水、湖沼水、工場廃水(特に、工場からの廃水を生物処理した生物処理
水)などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。なお、フミン質とは、植物
などが微生物に分解されることにより生じる腐食物質をいい、フミン酸等を含むものであ
り、フミン質を含有する水は、フミン質および/またはフミン質に由来する溶解性COD
成分、懸濁物質や色度成分を有する。
【0016】
そして、被処理水に添加する凝集剤は、本発明においては、カチオン性モノマーユニッ
ト20〜80モル%と、アニオン性モノマーユニット5〜40モル%と、ノニオン性モノ
マーユニット0〜75%とを有する両性電解質ポリマーを含有するものである。すなわち
、20〜80モル%のカチオン性モノマーユニットと、5〜40モル%のアニオン性モノ
マーユニットを必須とする両性電解質ポリマーであり、さらに、75モル%以下のノニオ
ン性モノマーユニットを有するものとしてもよい。なお、この共重合体は電解質なので、
水に溶解するものである。
【0017】
このように、所定の比率のカチオン性モノマーユニット及びアニオン性モノマーユニッ
トを有する両性の共重合体を凝集剤として添加することにより、被処理水の濁質と非常に
強固で大きなフロック(凝集物)を形成することができるため、後述する実施例に示すよ
うに、清澄な処理水を得ることができる。カチオン性モノマーユニットの比率が80モル
%よりも高い又はアニオン性モノマーユニットの比率が5モル%よりも低いと、両性の特
徴が薄れ、強固で大きなフロックを形成して清澄な処理水を得るという本発明の効果が得
られない。なお、カチオン性モノマーユニットが20〜50モル%、アニオン性モノマー
ユニットが5〜25モル%、ノニオン性モノマーユニット20〜75%である両性の共重
合体とすると、特に強固で大きなフロックを形成することができるため、好ましい。
【0018】
このような両性電解質ポリマーの製造方法は特に限定されず、例えば、ビニル基等の重
合性基を有するカチオン性モノマー、アニオン性モノマー、ノニオン性モノマーを共重合
させることにより合成することができる。勿論、このカチオン性モノマーから両性電解質
ポリマーのカチオン性モノマーユニットが構成され、アニオン性モノマーから両性電解質
ポリマーのアニオン性モノマーユニットが構成され、ノニオン性モノマーから両性電解質
ポリマーのノニオン性モノマーユニットが構成される。なお、ブロック共重合体でもラン
ダム共重合体でもよい。
【0019】
カチオン性モノマーは、例えば、一級アミン、二級アミン、三級アミンおよびそれらの
酸塩、四級アンモニウム基などの官能基を有するモノマーである。カチオン性モノマーの
具体例としては、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートの酸塩もしくはその4級ア
ンモニウム塩、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドの酸塩もしくはその4級
アンモニウム塩、ジアリルジメチルアンモニウムクロリド等が挙げられる。なお、(メタ
)アクリレートは、「アクリレート又はメタクリレート」を表し、(メタ)アクリルアミ
ド、(メタ)アクリル酸についても同様である。また、アニオン性モノマーとしては、例
えば、(メタ)アクリル酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸および
それらのアルカリ金属塩等が挙げられる。ノニオン性モノマーとしては、(メタ)アクリ
ルアミド、Nイソプロピルアクリルアミド、Nメチル(NNジメチル)アクリルアミド、
アクリロニトリル、スチレン、メチルもしくはエチル(メタ)アクリレート等が挙げられ
る。なお、各モノマーは1種でも複数種でもよい。
【0020】
また、両性電解質ポリマーは、カチオン性の水溶性ポリマー、アニオン性の水溶性ポリ
マーや、ノニオン性の水溶性ポリマーの高分子反応によって合成してもよい。
【0021】
両性電解質ポリマーの形態は、粉末状、逆相エマルション、水溶液状のいずれでもよい
。そして、両性電解質ポリマーを凝集剤として被処理水に添加する形態も特に限定されず
、被処理水と両性電解質ポリマーが接触して、被処理水中に含まれる濁質(SS)が両性
電解質ポリマーに吸着してフロックを形成する、すなわち凝集処理できるようにすればよ
い。例えば、両性電解質ポリマーの0.01〜0.5質量%水溶液を、被処理水に添加す
ることが好ましい。なお、2種以上の両性電解質ポリマーを被処理水に添加してもよい。
また、両性電解質ポリマーを被処理水に添加する量に特に制限は無いが、被処理水に対し
て、0.5〜100mg/L程度とすることが好ましい。なお、この添加量は、主に水中
の有機物濃度に依存し、処理対象である被処理水の水質によって変わるものである。
【0022】
また、凝集処理の際に、被処理水に無機凝集剤を添加してもよい。無機凝集剤を添加す
ることにより、微小な濁質や水溶性の濁質の除去が可能となり、得られる処理水をより清
澄にすることができる。また、無機凝集剤を添加することにより、上記両性電解質ポリマ
ーと無機凝集剤との相互作用により、両性電解質ポリマー単独で使用する場合よりも強固
なフロックを形成することができる。なお、無機凝集剤の添加は、後述する濾過処理の前
であればよく、両性電解質ポリマーを被処理水に添加する前でも後でもよく、また、両性
電解質ポリマーと同時に添加してもよいが、両性電解質ポリマーの添加前に添加すること
が好ましい。無機凝集剤の添加によってまず微細フロックを生成させ、その後両性電解質
ポリマーを添加してさらにフロックを大きくすることにより、凝集効率を大幅に向上でき
るためである。無機凝集剤に特に限定はなく、例えば、硫酸バンド、ポリ塩化アルミニウ
ム(PAC)等のアルミニウム塩、塩化第二鉄、硫酸第一鉄等の鉄塩などが挙げられる。
また、無機凝集剤の添加量にも特に限定はなく、処理する被処理水の性状に応じて調整す
ればよいが、被処理水に対して概ねアルミニウム又は鉄換算で0.5〜10mg/Lであ
る。また、被処理水の性状にもよるが、無機凝集剤としてポリ塩化アルミニウムを用いた
場合、被処理水のpHを5.0〜7.0程度とすると、凝集が最適になり、大きく強固な
フロックを形成することができる。
【0023】
このように、被処理水に両性電解質ポリマーや、無機凝集剤を添加して、必要に応じて
攪拌等する凝集処理をした後、この被処理水を濾過処理手段に通水して濾過処理する。そ
して、本発明においては、濾過処理手段は、通水される被処理水中の濁質を捕捉する繊維
状の濾過体を有するものである。
【0024】
ここで、繊維状の濾過体を用いた濾過処理手段は、非常に高い濾過速度での濾過処理が
可能なため省スペース化が図れるが、微細な粒子の捕捉性能が比較的悪い。しかしながら
、本発明においては、この濾過処理手段に通水する前に、上記所定の両性電解質ポリマー
で凝集処理しているため、濾過処理手段に通水される被処理水は、濁質と両性電解質ポリ
マーとで非常に大きく強固なフロックが形成されているものである。したがって、繊維状
の濾過体を用いた濾過処理手段であっても、良好に捕捉することができるため、清澄な処
理水を得ることができる。
【0025】
濾過処理手段に特に限定はないが、例えば、紐状(繊維状)の濁質捕捉部を有する濾過
体が通水時の濾過部の空隙率が50〜95%になるように濾過槽に充填されていることが
好ましい。このような濾過処理手段の具体例としては、図1に示す濾過装置が挙げられる
。なお、図1は、濾過装置の構成を示す断面図であり、図2は、図1の要部拡大図である

【0026】
図1に示すように、濾過装置10は、被処理水1が通水される筒状の濾過槽11と、通
水される被処理水中の濁質を捕捉する濾過体12とを有する。該濾過体12は、濾過槽1
1の通水方向の両端に接続される芯材13と、紐状の濁質捕捉部14とからなる。そして
、濾過槽11の通水方向両端には、濁質を含有する被処理水が自由に通水できる程度の穴
が複数設けられた樹脂製等の円形のプレート16が設けられ、各プレート16の中心に芯
材13の両端が固定されている。また、濁質捕捉部14は、芯材13に一部が編みこまれ
て固定されると共に固定されていないいわゆるループ状の部分は濾過槽11の内壁面に向
かって放射状に広がるように設けられており、濾過槽11全体に濾過体12が広がってい
る。このため、濁質捕捉部14は通水方向と交差するので、濁質捕捉部14によって被処
理水1に含まれる濁質が捕捉できる。なお、紐状の濁質捕捉部14は長い矩形(テープ)
をループ状にしたものであり、図2の紐状の濁質捕捉部14の拡大図に示すように、長手
方向の端部まで達しないスリット15が複数設けられている。このようにスリット15を
設けることにより、濁質の捕捉効果が向上する。
【0027】
ここで、濾過体12は、被処理水の通水時の濾過部の空隙率が50〜95%、好ましく
は60〜90%、さらに好ましくは、50〜80%になるように濾過槽11に充填されて
いる。空隙率は下記式から求められる値である。そして、濾過部とは、被処理水の濁質が
濾過体12に捕捉される領域、すなわち、濾過槽11の内壁面を側面とし通水時の濾過体
12の通水方向両端を厚さ方向の両端として濾過体12の濁質捕捉部14が充填されてい
る層の内、濾過に寄与しない部分(図1においては芯材13の部分)を排除した部分をい
う。なお、濾過に寄与しない部分が無い場合は、濾過部は、濾過槽11の内壁面を側面と
し通水時の濾過体12の通水方向両端を厚さ方向の両端として濾過体12の濁質捕捉部1
4が充填されている層をいう。「濾過部の体積−濁質捕捉部の体積」は、例えば図1のよ
うに、濾過操作時(被処理水通水時)に濾過体12が圧密せず、濾過槽11内に充填され
た状態のまま濾過操作時の濾過部が形成される例では、被処理水で満たした濾過槽11に
濾過体12を入れた際に溢れた被処理水の量から芯材13の体積を減ずることで容易に求
めることができる。なお、図1においては、濾過体12の両端がそれぞれ濾過槽11の通
水方向両端に固定されており、濾過体12は被処理水の通水時に濾過槽11全体に広がっ
ているため、濾過槽11の内部全体から芯材13の部分を減じた部分が濾過部である。
[式1]
空隙率(%)=[(濾過部の体積−濁質捕捉部の体積)/濾過部の体積]×100
【0028】
このような濾過装置10に被処理水を通水すると、被処理水は各紐状の濁質捕捉部14
の間や濁質捕捉部14に設けられたスリット15の間を通り、その際被処理水に含まれる
濁質が紐状の濁質捕捉部14やスリット15にトラップされ、濁質が除去された被処理水
が濾過槽11から排出される。そして、通水時の濾過部の空隙率が50〜95%になるよ
うに濾過体12が充填されているため、通水が妨げられず且つ濁質のトラップも良好であ
る。特に、本発明においては、濁質と両性電解質ポリマーで大きく強固なフロックが形成
された被処理水を通水するので、良好に濁質をトラップすることができる。
【0029】
このように、通水時の濾過部の空隙率が50〜95%になるように濾過体12を充填す
ることにより、通水が妨げられず且つ濁質のトラップが良好になるため、濾過装置10の
閉塞が抑制でき、また、例えば濁度2.5以下程度の清澄な処理水が得られるという効果
を奏する。空隙率が95%よりも高いと通水が良好になり高速で濾過し易くなるが処理水
の濁度が顕著に高くなってしまい、また、50%よりも低いと濁質のトラップは良好であ
るが通水が不十分で濾過装置や必要に応じて後段に設ける膜分離処理手段に閉塞が生じ、
差圧上昇速度が顕著に高くなってしまう。特に、例えば100m/h以上の高速で濾過運
転をしたり、濁度が高い(例えば20度以上)被処理水を処理すると、得られる処理水の
濁質が悪くなるという問題や、装置が閉塞してしまうという問題が生じやすいが、空隙率
が50〜95%になるように濾過体12を充填した濾過装置10とすることによって、高
速運転や濁度の高い被処理水であっても、閉塞が抑制できまた清澄な処理水が得られる。
勿論、低速で処理したり、濁度が低い被処理水を処理する場合であっても、閉塞が抑制で
きまた清澄な処理水が得られる。なお、空隙率は均一であることが好ましいため、濁質捕
捉部14が濾過槽11の通水方向両端の近傍まで充填されていることが好ましく、また、
濁質捕捉部14が濾過槽11の内壁面の近傍まで充填されていることが好ましい。また、
濾過部の体積は、被処理水の通水時と、後述する逆洗時や濾過停止時などのその他の状態
とで、体積変動しないことが好ましく、濾過部の体積変動率は30%以下、好ましくは1
0%以下であることが好ましい。このような範囲とすることで、濾過装置をコンパクトに
することができる。
【0030】
そして、図1の濾過装置においては、濾過槽11の大きさは、例えば筒状であれば、直
径100〜1000mm、高さ200〜1000mmとすることができる。なお、濾過槽
11の大きさが濾過体12に比べて大きい場合は、複数の濾過体12を濾過槽11に充填
したり、濾過体12の濁質捕捉部14を大きくする等して、通水時の濾過部の空隙率が5
0〜95%になるようにすればよい。
【0031】
また、芯材13や濁質捕捉部14の材質としては、ポリプロピレン、ポリエステル、ナ
イロンなどの合成樹脂が挙げられる。ここで、芯材13は、ポリプロピレン、ポリエステ
ル、ナイロンなどの合成繊維を製造過程で編み上げることで強度を持たせてもよい。また
、ねじりブラシの様に腐食されないSUSや樹脂で被覆された金属による針金を芯材13
とし、濁質捕捉部14を均等に並べた後、金属を捩ることで、放射状に広げた濾過体12
としてもよい。このように芯材13の強度を向上させることで、芯材13が屈曲すること
がなくなると共に、濾過体12端部の固定が容易となるので、濾過体12の交換作業が容
易になる。
【0032】
芯材13や濁質捕捉部14の大きさに特に限定はないが、例えば、厚さ0.05〜2m
m、幅1〜50mm、長さ(被処理水を通水した際の芯材からの距離)10〜500mm
程度、好ましくは、厚さ0.3〜2mm、幅1〜20mm、長さ50〜200mm程度と
することができる。
【0033】
なお、図1では、筒状の濾過槽11としたが、筒状でなくてもよく、通水できる形状、
すなわち、中空であればよく、例えば角柱に空洞を設けた形状でもよい。また、上述した
例では、プレート16に芯材13の両端を固定したが、これに限定されず、例えば芯材の
一端のみを固定するようにしてもよい。
【0034】
また、図1では、ループ状の濁質捕捉部14を芯材13に突設するようにしたが、これ
に限定されず、例えば、図3に示すように、短冊状の複数の濁質捕捉部とし各濁質捕捉部
の一端を芯材に固定するようにしてもよい。また、図1では、濁質捕捉部14の断面形状
を四角形になるようにしたが、特に限定はなく、例えば円形状でもよい。なお、各濁質捕
捉部の長さは同一でも異なっていてもよい。さらに、上述した例では、濁質捕捉部14の
材質は一種類としたが、二種以上としてもよい。また、濁質捕捉部に設けるスリットは、
複数でも単数でもよく、設けなくてもよい。そして、芯材13がなくてもよく、濁質捕捉
部のみで構成される濾過体12としてもよいが、濾過体12は濾過槽11に略均一に存在
していることが好ましいので、濁質捕捉部を濾過槽の所定位置に固定することが好ましい

【0035】
このような凝集処理及び濾過処理により、清澄な処理水が得られるが、濾過処理の後段
に、逆浸透膜(RO膜)等による膜分離処理や、イオン交換処理等の脱イオン処理をさら
に有していてもよい。これにより、純水や超純水を得ることができる。また、脱炭酸処理
や、活性炭処理等、被処理水の精製処理をさらに行ってもよい。
【0036】
また、濾過処理の前に、沈殿処理や加圧浮上処理により、両性電解質ポリマーによるフ
ロック(凝集物)を被処理水から除去する、固液分離処理を行ってもよい。沈殿処理や加
圧浮上処理は、両性電解質ポリマーや無機凝集剤を被処理水に添加する時に、カセイソー
ダ、消石灰や硫酸などでpH調整を行い、最後に有機系高分子凝集剤にて懸濁物をフロッ
ク化する。また必要に応じて有機凝結剤を併用することもできる。有機凝結剤は特に限定
はなく、例えば、ポリエチレンイミン、エチレンジアミンエピクロルヒドリン重縮合物、
ポリアルキレンポリアミン、ジアリルジメチルアンモニウムクロリドやジメチルアミノエ
チル(メタ)アクリレートの四級アンモニウム塩を構成モノマーとする重合体等、通常水
処理で使用されるカチオン性有機系ポリマーが挙げられる。また、有機凝結剤の添加量に
も特に限定はなく、被処理水の性状に応じて調整すればよいが、被処理水に対して概ね固
形分で0.01〜10mg/Lである。
【0037】
また、必要に応じて、凝結剤、殺菌剤、消臭剤、消泡剤、防食剤などを添加してもよい
。さらに、必要に応じて、紫外線照射、オゾン処理、生物処理などを併用してもよい。
【0038】
ここで、本発明の水処理方法を用いた水処理装置の一例を図4の概略系統図に示す。図
4に示すように、水処理装置30は、被処理水(原水)が導入される反応槽31と、無機
凝集剤が保持される無機凝集剤槽32から反応槽31に無機凝集剤を導入するポンプ等か
らなる無機凝集剤導入手段33と、上記所定の両性電解質ポリマーを含有する凝集剤が保
持される薬品槽34から反応槽31に薬品を導入するポンプ等からなる薬品導入手段35
と、反応槽31で吸着や凝結など凝集処理した被処理水が導入される図1の濾過装置10
とを具備する。
【0039】
このような水処理装置30では、まず、被処理水(原水)が、反応槽31に導入される
。そして、無機凝集剤槽32に保持された無機凝集剤や、薬品槽34に保持された両性電
解質ポリマーを含有する凝集剤が、無機凝集剤導入手段33や薬品導入手段35により反
応槽31に導入され被処理水に添加される。そして、両性電解質ポリマーを含有する凝集
剤や無機凝集剤が添加された被処理水は、攪拌機36で攪拌されて、凝集処理される。次
いで、凝集処理された被処理水は、反応槽31から排出され、濾過装置10に送られて、
フロックが捕捉され濁質が除去される。本発明の水処理装置30においては、所定の両性
電解質ポリマーを用いているため、反応槽31から排出される被処理水は、濁質と両性電
解質ポリマーとで大きく強固なフロックが形成されたものである。そして、このフロック
は濾過装置10で良好に捕捉されるため、濾過装置10から排出される処理水は、非常に
清澄なものである。さらに、図4の水処理装置30においては、上記所定の空隙率を有す
るように濾過体が充填された濾過装置10を用いているため、濾過装置10の閉塞が抑制
できまた清澄な処理水が得られるという効果を奏する。
【0040】
また、図5に示すように、上記水処理装置30の濾過装置10の後段に、逆浸透膜(R
O膜)等の膜分離処理手段41を設けた水処理装置40としてもよい。なお、図5におい
ては、濾過装置10及び膜分離処理手段41を横にならべたが、これに限定されず、濾過
装置10と膜分離処理手段41を縦に一体的に重ねるようにしてもよい。これにより、設
置面積を小さくすることができると共に、部品数を少なくすることができる。
【実施例】
【0041】
以下、実施例及び比較例に基づいてさらに詳述するが、本発明はこの実施例により何ら
限定されるものではない。
【0042】
(ポリマーの合成)
カチオン性モノマーとしてジメチルアミノエチルメタクリレートのメチルクロライド4
級化物(DAM)及びジメチルアミノエチルアクリレートのメチルクロライド4級化物(
DAA)を、ノニオン性モノマーとしてアクリルアミド(AAm)を、アニオン性モノマ
ーとしてアクリル酸を用い、重合開始剤(和光純薬工業株式会社製V−50、各モノマー
に対して0.001〜0.01モル%)を用いて、モノマー濃度10〜35質量%、開始
温度40℃とし、窒素ガス雰囲気下、水溶液重合を行って、共重合させて、表1に示す比
率のモノマーユニットを有するポリマーP−1〜P−4及びP−11〜P−14、P−1
6〜P−17を合成した。なお、1N−NaCl、30℃で測定した固有粘度を表1に示
す。
【0043】
【表1】

【0044】
(実施例1)
被処理水(原水)として、フミン質や生物代謝物を含有する工業用水(濁度35度、T
OC(全有機炭素)25mg/L、水温:18℃)をそれぞれ1000mL入れたビーカ
ー4個に、ポリ塩化アルミニウム(PAC:10重量%as Al23)を被処理水に対
して10mg/L添加し、5%NaOH水溶液でpHを6.5に調整した後、170rp
mで1分間撹拌した。続いて、両性電解質ポリマーであるP−1の0.1%水溶液を、被
処理水に対して両性電解質ポリマーとして0.5、1、2、4mg/Lになるように添加
し、170rpmで5分間、50rpmで10分間撹拌した。
【0045】
次いで、フロック(凝集物)が沈殿しないように、この被処理水をスパーテルでゆっく
り撹拌しながら、目開き500μm、内径75mm、深さ20mmのステンレスふるいに
あけ、透過液の濁度を測定した。なお、濁度はカオリン標準液を用いた透過光測定方法に
より求めた。結果を表2に示す。
【0046】
(実施例2〜4)
P−1の代わりに、表2に示す両性電解質ポリマーを用いた以外は、実施例1と同じ条
件及び操作にて試験を行った。結果を表2に示す。
【0047】
(実施例5)
両性電解質ポリマーであるP−1を添加し、170rpmで5分間、50rpmで10
分間撹拌した後、ステンレスふるいではなく、図1に示す濾過装置10に上から通水し、
透過液の濁度を測定した以外は、実施例1と同じ条件及び操作にて試験を行った。結果を
表2に示す。なお、濾過装置10は図1に示すように芯材及び紐状の濁質捕捉部からなる
濾過体を有し、濾過槽11は直径200mm、高さ500mmのアクリル製の筒状カラム
であり、芯材13は体積250mLで、各濁質捕捉部14の厚さは0.5mm、幅2mm
、長さ(被処理水を通水した際の芯材からの距離)100mmとなるようループ状に編み
こんだものであり、通水時の濾過部(濾過槽11内部の体積から芯材13の体積を引いた
もの)の空隙率は60%であった。そして、濾過体12の芯材13の両端が、上下に配置
されたプレート16によって固定されている。
【0048】
(実施例6)
P−1のかわりにP−4を用いた以外は、実施例5と同じ条件及び操作にて試験を行っ
た。結果を表2に示す。
【0049】
(比較例1)
P−1を用いずPACのみを添加した以外は、実施例1と同様の操作を行った。結果を
表3に示す。
【0050】
(比較例2〜8)
P−1の代わりに、表3に示す両性電解質ポリマーを用いた以外は、実施例1と同じ条
件及び操作にて試験を行った。結果を表3に示す。
【0051】
(比較例9〜10)
P−1のかわりに、表1に示すポリマーを用いた以外は、実施例5と同じ条件及び操作
にて試験を行った。結果を表3に示す。
【0052】
この結果、カチオン性モノマーユニット20〜80モル%と、アニオン性モノマーユニ
ット5〜40モル%と、ノニオン性モノマーユニット0〜75%とを有する両性電解質ポ
リマーを添加した実施例1〜6では、凝集処理において比較例1〜10と比較して大きく
強固なフロックが形成され、濾過装置やふるいを透過した処理水の濁度は比較例1〜10
と比較して顕著に低かった。
【0053】
【表2】

【0054】
【表3】

【0055】
以下に濾過装置10の効果を示す参考例を示す。
(濾過装置の空隙率と差圧上昇及び処理水濁度の関係)
被処理水(原水)として、濁度20度の工業用水を図4に示す装置を用いて、LV20
0m/hで1週間処理した。なお、濾過装置に用いた濾過体は、図1に示すように芯材1
3及び紐状の濁質捕捉部14からなり、濾過槽11の通水方向両端のプレート16にそれ
ぞれ両端が固定されている。そして、芯材13は体積250mLで、各濁質捕捉部14の
厚さは、0.5mm、幅2mm、長さ(被処理水を通水した際の芯材からの距離)100
mmとなるようループ状に芯材に編みこんだものであり、濁質捕捉部14の編込み密度を
変化させて、通水時の濾過部(濾過槽11内部の体積から芯材13の体積を引いたもの)
の空隙率が、30、40、50、60、70、80、90、95、98%の濾過体を作製
し、各濾過体を用いて水処理した。なお、芯材は両端で固定しているため、被処理水通水
時とその他の時とでは濾過部の体積変化率はほぼ0%であった。また、濾過槽11の大き
さは、直径200mm、高さ500mmである。また、凝集剤として、被処理水に対して
30mg/Lのポリ塩化アルミニウム(PAC:10重量% as Al23)及び被処理
水に対して0.7mg/Lの両性の高分子凝集剤クリベストE851(栗田工業製)を添
加した。濾過装置から排出された処理水の濁度(処理水濁度)及び濾過装置の差圧上昇速
度(差圧上昇速度)を測定した結果を表4に示す。なお、処理水の濁度はカオリン標準液
を用いた透過光測定方法により求め、濾過装置の差圧上昇速度は入口と出口の圧力差で求
めた。
【0056】
この結果、濾過体を通水時の濾過部の空隙率が50〜95%になるように充填した濾過
装置では、50〜95%の範囲外のものに比べて顕著に差圧上昇速度及び処理水濁度が低
く、清澄な処理水が得られまた閉塞が抑制できることが分かった。
【0057】
【表4】

【0058】
(参考例1)
被処理水(原水)として、濁度3.4〜22度、TOC(全有機炭素)0.3〜4.8
mg/L、水温:24.5〜26.0℃の工業用水を図5に示す装置(原水の供給水量:
50L/h)、具体的には、上流側から順に、凝集処理を行う反応槽31、濾過装置10
、膜分離処理手段41が設けられている水処理装置40を用いて、定期的に水質を変動さ
せながら、LV200m/hで処理した。なお、膜分離処理手段41の分離膜として、M
F膜を用いた。濾過装置から排出された処理水の濁度及び濾過装置の差圧上昇速度を測定
した結果を表5に示す。なお、濾過装置10は図1に示すように芯材13及び紐状の濁質
捕捉部からなる濾過体12を有し、各濁質捕捉部14の厚さは0.5mm、幅2mm、長
さ100mmで、通水時の濾過部(濾過槽11)の空隙率は85%である。そして、濾過
体12の芯材13の一端のみが、通水方向の上流側のプレート16に固定されている。な
お、芯材13の一端は固定されていないが、一端が上流側のプレート16に固定されてい
るため、処理水の通水時に濾過体12は濾過槽全体に略均一に広がっていた。また、凝集
剤としてポリ塩化アルミニウム(PAC:10重量%as Al23)を被処理水に対し
て、30mg/Lとなるように添加した。
【0059】
(参考例2)
ループ形状の各濁質捕捉部の芯材に固定された箇所以外に2〜5本のスリットを入れた
以外は、参考例1と同様の操作を行った。
【0060】
(参考例3)
濾過体12の芯材13の両端をそれぞれ通水方向の上流側及び下流側のプレート16に
固定するようにした以外は参考例2と同様の操作を行った。
【0061】
【表5】

【0062】
表5に示すように、参考例1〜3では、処理水濁度及び差圧上昇速度が低く、清澄な処
理水が得られ、また濾過装置の閉塞も生じなかったことが分かった。また、濾過体にスリ
ットを設けた参考例2では、参考例1よりも処理水濁度が下がり、差圧上昇速度が遅かっ
た。そして、濾過体の両端を濾過槽に固定した参考例3では、参考例2よりも被処理水が
高濁度時の処理水濁度が低下した。
【符号の説明】
【0063】
10 濾過装置、 11 濾過槽、 12 濾過体、 13 芯材、 14 濁質補捉
部、 16 プレート、 30、40 水処理装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カチオン性モノマーユニット20〜80モル%と、アニオン性モノマーユニット5〜4
0モル%と、ノニオン性モノマーユニット0〜75%とを有する両性電解質ポリマーを含
有する凝集剤を、被処理水に添加して凝集処理した後、該凝集処理した被処理水を、通水
される被処理水中の濁質を捕捉する繊維状の濾過体を有する濾過処理手段に通水して濾過
処理することを特徴とする水処理方法。
【請求項2】
前記濾過処理手段は、紐状の濁質捕捉部を有する濾過体が通水時の濾過部の空隙率が5
0〜95%になるように濾過槽に充填されていることを特徴とする請求項1に記載の水処
理方法。
【請求項3】
前記濾過処理の前に、被処理水に無機凝集剤を添加することを特徴とする請求項1また
は2に記載の水処理方法。
【請求項4】
被処理水が導入される反応槽と、
カチオン性モノマーユニット20〜80モル%と、アニオン性モノマーユニット5〜40
モル%と、ノニオン性モノマーユニット0〜75%とを有する両性電解質ポリマーを含有
する凝集剤を前記反応槽又は反応槽の前段で導入して、被処理水に前記凝集剤を添加する
凝集剤導入手段と、
前記反応槽の後段に設けられ前記反応槽で凝集処理した被処理水を濾過処理する濾過処
理手段であって通水される被処理水中の濁質を捕捉する繊維状の濾過体を有する濾過処理
手段とを具備することを特徴とする水処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−206750(P2011−206750A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−79590(P2010−79590)
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【出願人】(000001063)栗田工業株式会社 (1,536)
【Fターム(参考)】