説明

水処理用散気装置、水処理装置

【課題】 被処理水を処理する水処理装置に装着される従来の水処理用散気装置の構造を改良する。
【解決手段】 本発明に係る第2散気装置220は、空気供給源に接続され、水処理装置のうち被処理水が貯留される水貯留領域に配設される空気供給管221と、空気供給管221に設けられ、空気供給管221内を流れた空気を吐出する吐出開口222と、吐出開口222から吐出された空気と接触して当該空気を細分化する網状の接触部材223と、網状の接触部材223を空気供給管221に一体状に取り付ける取り付け部材229と、を含む構成とされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被処理水を処理する水処理装置に装着される水処理用散気装置の構築技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、一般家庭等から排出される生活排水や、産業廃水等の汚水などの被処理水を処理
する水処理装置において、水貯留領域に貯留された被処理水に対し散気処理を行なう場合があり、このような場合には、例えば下記特許文献1に記載のように、供給空気を散気孔を通じて気泡として吐出する散気装置を用いるのが一般的とされる。この場合、更に水貯留領域全体に空気を分散させるためには、散気装置の散気孔から吐出された気泡を、散気装置の上方に配置した接触ろ材によって分散させるのが有効とされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−342652号公報
【0004】
ところで、この種の水処理装置においては、散気孔に目詰まりが生じたような散気装置の閉塞状態になると、散気装置を水処理装置から取り出して洗浄することが必要とされる。しかしながら、上記特許文献1に記載のような散気装置を用いた場合には、散気装置の散気孔から吐出された気泡を分散させる接触ろ材が散気装置の上方に配置される構成ゆえ、当該接触ろ材が邪魔になって、散気装置を水処理装置から取り出すのが困難とされる。かといって、接触ろ材を設置しないと、散気装置の散気孔から吐出された気泡を貯留領域全体に空気を分散させるという本来の目的を全うできないという問題が生じる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、被処理水を処理する水処理装置に装着される従来の水処理用散気装置の構造を改良することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、本発明が構成される。なお、本発明は、一般家庭、集合住宅、商業施設、公共施設、工場等の設備から排出される生活排水や産業廃水等の原水の浄化処理を行う水処理装置に対し好適に用いられる。
【0007】
本発明にかかる水処理用散気装置は、被処理水を処理する水処理装置に装着される散気装置であり、空気供給管、吐出開口、網状の接触部材及び取り付け機構を含む。
空気供給管は、空気供給源に接続され、前記水処理装置のうち被処理水が貯留される水貯留領域に配設される管状部材として構成される。吐出開口は、空気供給管の管壁に形成され、空気供給管内を流れた空気を吐出する開口部として構成される。この吐出開口は、空気供給管の管壁に貫通状に設けられて、当該空気供給管の長手延在方向と交差する方向に空気を吐出する構成であってもよいし、或いは空気供給管の先端に設けられて、当該空気供給管の長手延在方向に沿って空気を吐出する構成であってもよい。網状の接触部材は、吐出開口から吐出された空気と接触して当該空気を細分化する接触部材として構成される。吐出開口を通じて水中に吐出された空気は、典型的には水中で気泡となって網状の接触部材に接触し、その際の接触作用によって気泡径が細かく細分化(微細化)される。この網状の接触部材は、全体として円筒形状(パイプ形状)、板片形状、ボール形状(球形状)などの形態を取り得る。取り付け機構は、網状の接触部材を空気供給管に一体状に取り付ける手段として構成される。この取り付け機構を用いることによって、網状の接触部材が空気供給管に一体状に取り付けられる。
【0008】
上記構成によれば、少なくとも空気供給管及び網状の接触部材を、取り付け機構を介して一体状に構成することによって、例えば散気装置に目詰まりが生じたような場合に、網状の接触部材を空気供給管と共に一緒に引き上げることが可能となる。また、このような構成は、空気の散気機能と空気の細分化機能を併せ持つ散気装置として、任意の水処理装置に手軽に設置することができ汎用性が高いというメリットがある。
【0009】
また本発明の水処理用散気装置にかかる更なる形態では、水処理用散気装置が水処理装置に装着された状態では、空気供給管が水貯留領域内を鉛直方向に長尺状に延在し、また網状の接触部材は、少なくとも吐出開口において空気供給管の全周を被覆する円筒形状として構成されるのが好ましい。これにより空気供給管の吐出開口から吐出された空気は、水中で気泡となって接触部材と接触しつつ上向きに流れ、この接触時に効率的に細分化される。このような構成によれば、空気供給管の周りに円筒形状の接触部材を配置する構造を採用することによって、散気装置の構造を簡素化することが可能となる。
【0010】
また、本発明の更なる形態の水処理用散気装置は、接触部材の底面を被覆する被覆部材を備える構成であるのが好ましい。このような構成によれば、空気供給管の吐出開口から空気が吐出される際に、接触部材と水貯留領域のうち被覆部材の下方領域とが被覆部材を介して遮蔽されることなり、被覆部材の下方領域から異物が吸入されるのを防止するのに有効である。
【0011】
また、本発明の更なる形態の水処理用散気装置は、接触部材の周面を被覆する円筒形状の第2の被覆部材を備える構成であるのが好ましい。このような構成によれば、吐出開口から空気が吐出される際に、接触部材と水貯留領域のうち被覆部材の側方領域とが第2の被覆部材を介して遮蔽されることとなり、被覆部材の側方領域から異物が吸入されるのを防止するのに有効である。また、接触部材に接触した空気を、第2の被覆部材の管壁を介して上方へと誘導することが可能となる。
【0012】
また本発明の水処理用散気装置にかかる更なる形態では、接触部材は、ヘチマ状の骨格部からなる網状骨格体として構成されるのが好ましい。このような構成の接触部材を用いることによって、酸素溶解効率を高めることができ、また散気装置からの散気エア風量を抑えることができるため、当該散気装置に係るエネルギーの省力化が図られる。
【0013】
本発明にかかる水処理装置は、処理槽本体に、水貯留領域、流入管、流出管及び散気装置を含む構成とされる。水貯留領域は、被処理水が貯留される領域として構成される。流入管は、原水が水貯留領域に流入するのを許容する開口部分として構成される。流出管は、水貯留領域にて処理された後の水が処理槽本体から流出するのを許容する開口部分として構成される。散気装置は、水貯留領域に空気を散気する機構を果たす。この水処理装置の散気装置は特に、前述の各水処理用散気装置を用いた構成とされる。
従って、上記構成の水処理装置によれば、少なくとも空気供給管及び接触部材を一体状に構成することによって、例えば散気装置に目詰まりが生じたような場合に、接触部材を空気供給管と共に一緒に引き上げることが可能となり、以ってメンテナンス作業が円滑化される。
【0014】
また本発明の水処理装置にかかる更なる形態では、水貯留領域は、被処理水に含まれる汚泥の好気消化を行なう好気消化部を含み、当該好気消化部に水処理用散気装置の空気供給管が配設された構成であるのが好ましい。このような構成によれば、散気装置を用いることによって、特に被処理水中の汚泥の好気消化に酸素を効率良く使用することが可能となる。
【発明の効果】
【0015】
以上のように、本発明によれば、被処理水を処理する水処理装置に装着される従来の水処理用散気装置の構造を改良することが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の「水処理装置」にかかる一実施の形態の水処理装置100の概要を示す図である。
【図2】図1中の第2散気装置220の側面図である。
【図3】図2中の第2散気装置220の断面図である。
【図4】図3中の第2散気装置220の接触部材223の部分拡大図である。
【図5】本実施例としてのCASE−1(□プロット)と、比較例としてのCASE−2(●プロット)とについて、被処理水に対する酸素溶解効率を示す図である。
【図6】別実施の形態の水処理装置300の概要を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明における一実施の形態の水処理装置の構成等を図面に基づいて説明する。なお、本実施の形態は、一般家庭、集合住宅、商業施設、公共施設、工場等の設備から排出される原水(「排水」ないし「被処理水」ともいう)を水処理領域に受け入れて処理する水処理装置について説明するものである。
【0018】
本発明の「水処理装置」にかかる一実施の形態の水処理装置100の概要が図1に示される。図1に示すように、本実施の形態の水処埋装置100は、当該水処埋装置100の躯体としての処理槽本体101を有する。この水処埋装置100は、屎尿と併せて雑排水(生活系の汚水)を処理する構成の水処理装置であり、「浄化槽」ないし「合併処理浄化槽」とも称呼される。
【0019】
処理槽本体101は、典型的には、いずれも半割れ状に成形された上槽及び下槽を互いに突き合わせることによって槽状とされる。この処理槽本体101は、流入管102、流出管103及びマンホール部104を備える。流入管102は、被処理水(原水)を処理槽本体101の内部空間に導入するための開口部分として構成される。流出管103は、処理後の水が処理槽本体101の内部空間から導出するための開口部分として構成される。マンホール部104は、入槽用、内部点検用、清掃用のマンホールが形成された部位として構成される。ここでいう処理槽本体101、流入管102及び流出管103がそれぞれ、本発明における「処理槽本体」、「流入管」及び「流出管」に相当する。
【0020】
なお、本明細書中では、処理槽本体101のうちのマンホール部104側が槽上方ないし槽上部として規定され、またその反対側が槽下方、槽下部ないし槽底部として規定される。また、処理槽本体101のうちの流入管102側が上流側として規定され、また流出管103側が下流側として規定される。また、マンホール部104の延在面と交差する方向(典型的には、直交する方向)が鉛直方向として規定される。
【0021】
処理槽本体101の内部収容空間は、流入管102を通じて受け入れた原水を貯留しつつ所定の水処理がなされる水貯留領域ないし水処理領域とされる。この水貯留領域には、水処理機構101aとして、嫌気濾床槽110、接触ばっ気槽130、第1沈殿槽150、消毒槽170、好気消化槽210、第2沈殿槽230が収容されている。この水処理機構101aによって、本発明における「水貯留領域」が構成される。本実施の形態では、この水処理機構101aは、嫌気濾床槽110、接触ばっ気槽130、第1沈殿槽150、消毒槽170を含む第1の処理経路と、好気消化槽210及び第2沈殿槽230を含む第2の処理経路とに分類される。
【0022】
(第1の処理経路)
嫌気濾床槽110は、被処理水中に含まれる夾雑物やSS(浮遊物質)成分等の分離・除去、及び被処理水中の有機汚濁物質を嫌気処理(還元)する機能を有する処理槽として構成される。この嫌気濾床槽110は、有機汚濁物質を嫌気処理(還元)する嫌気性微生物が付着する所定量の濾材112が濾床111に充填された構成を有する。この濾材112としては、例えば球状の濾材を好適に用いることができる。嫌気濾床槽110に流入した被処理水が、この濾床111を上向きに流れる際に被処理水中の有機汚濁物質が嫌気処理(還元)され、BODの低減と汚泥の減量化が図られる。また、濾床111に充填された濾材112によって、被処理水中に含まれる夾雑物やSS等の分離・除去が行われることとなる。この嫌気濾床槽110にて汚泥(図1中の汚泥S)が分離された後の水は、嫌気濾床槽110の槽上部に形成された移流開口114を通じて接触ばっ気槽130へ移流する。なお、嫌気濾床槽110の濾床111における水の流れについては、製品の仕様等に応じて適宜の選択が可能であり、濾床111を上向きに流れる構成にかえて、濾床111を下向きに流れる構成を採用することもできる。
【0023】
接触ばっ気槽130は、嫌気濾床槽110で固液分離されたあとの水の好気処理を行う機能を有する処理槽として構成される。この接触ばっ気槽130では、有機汚濁物質を好気処理(酸化)する好気性微生物が付着する所定量の接触材132が充填部131に充填されている。また、充填部131の下方には、好気処理に用いるエア散気用の第1散気装置134が配置されている。この接触ばっ気槽130において、第1散気装置134から散気された散気エアが、その第1散気装置134の上方に配置された充填部131に向けて上向きに流れた状態で、その流れとは反対の下向き流れの被処理水が接触材132に接触することによって、この被処理水中の有機汚濁物質が好気処理されることとなる。この接触ばっ気槽130で処理された後の水は、充填部131の底部に形成された開口部135を通じて第1沈殿槽150へと移流する。
【0024】
第1沈殿槽150は、接触ばっ気槽130で処理された後の水の沈降分離作用(「沈殿作用」ともいう)によって固液分離を行う処理槽として構成される。ここでいう沈降分離作用は、第1沈殿槽150において、汚泥を含む被処理水を滞留させたときの水と汚泥との間の比重差によって得られる。これにより、接触ばっ気槽130から第1沈殿槽150に移流した水は、この第1沈殿槽150において滞留する際に、汚泥等の固形分と上澄水とに固液分離されることとなる。この第1沈殿槽150にて固液分離されたあとの水(上澄水)は、当該第1沈殿槽150の上部から開口部151を通じて消毒槽170へ移流する。
【0025】
一方、この第1沈殿槽150における固液分離によって発生する汚泥(固形物)は、当該第1沈殿槽150の底部領域153に吸入口が配設され、また第2沈殿槽230に向けて吐出口が配設された第1エアリフト152によって、第2沈殿槽230へと返送(循環)される。第1エアリフト152によって返送されるこの汚泥には、接触ばっ気槽130における好気処理に由来の好気汚泥(活性汚泥や生物膜)が含まれる。この第1エアリフト152は、詳細な構成については説明を省略するが、配管内に供給されたエアのエア流れによって吸入口から移送物を吸入して吐出口で吐出する既知の構成のエアリフト式ポンプとして構成される。なお、必要に応じては、この第1エアリフト152に代えて水中ポンプを用いることもできる。
【0026】
消毒槽170は、第1沈殿槽150から流入した水を消毒処理する機能を有する処理槽として構成される。この消毒槽170は、消毒処理を行うための消毒剤(固形塩素剤)が充填された薬剤筒171を備えている。この消毒槽170において薬剤筒171からの消毒剤によって消毒処理された後の水は、処理槽本体101に設けられた流出管103を通じて処理槽本体101の外部へと放流される。
【0027】
(第2の処理経路)
好気消化槽210は、第2沈殿槽230から第2エアリフト232によって移送された被処理水中の汚泥を分解するための好気性消化を行う処理槽として構成される。第2エアリフト232は、前述の第1エアリフト152と同様の構成とされる。この好気消化槽210は、好気消化部211の下方にエア散気用の第2散気装置220が設置された構成を有する。なお、好気消化部(「好気処理部」ともいう)211に、前述の嫌気濾床槽110の濾材112と同様の球状の濾材や、円柱状、円筒状、板状、網状などの形状の濾材が充填された構成を採用することもできるが、図1に示す実施形態では、第2散気装置220の散気性能(詳細については、後述する)を高めることによって、当該濾材を省略することが好ましい。第2散気装置220からその上方に配置された好気消化部211に向けてエア散気がなされた好気雰囲気下(酸素存在下)において、被処理水が好気消化部211を下向きに流れることによって当該被処理水中の汚泥の好気性消化がなされることとなる。ここでいう「好気性消化」とは、汚泥中の有機物を微生物の働きによって分解する処理であって、特に好気雰囲気下において好気性微生物の働きによって汚泥中の有機物を分解する処理とされる。この好気消化槽210にて汚泥の好気性消化がなされた後の水は、好気消化槽210の槽底部に形成された開口部214を通じて第2沈殿槽230へと移流(循環)することとなる。ここでいう好気消化槽210が、本発明における「好気消化部」に相当する。
【0028】
第2沈殿槽230は、流入管102を通じて流入した原水、第1沈殿槽150の底部領域153から第1エアリフト152によって返送(循環)された水、更には、好気消化槽210において汚泥の好気性消化がなされたあとの水を共に受け入れ、沈降分離作用(沈殿作用)によって固液分離する処理槽である。ここでいう沈降分離作用は、第2沈殿槽230において、汚泥を含む被処理水を滞留させたときの水と汚泥との間の比重差によって得られる。被処理水がこの第2沈殿槽230において滞留する際に、汚泥等の固形分と上澄み水とに固液分離されることとなる。この第2沈殿槽230にて固液分離された後の水(上澄水)は、当該第2沈殿槽230の上部から移流開口231を通じて嫌気濾床槽110へ移流する。一方、この第2沈殿槽230における固液分離によって発生する汚泥(「固形物」ともいう)は、当該第2沈殿槽230の底部に配設された第2エアリフト232によって好気消化槽210へとポンプ移送(循環)される。
【0029】
特に、本実施の形態では、第1沈殿槽150の底部領域153に存在する好気汚泥(活性汚泥や生物膜)を含む水を循環水として第2沈殿槽230へと移送する構成であるため、この好気汚泥中に多く含まれる捕食性の高い原生動物や後生動物などの微生物は、第2沈殿槽230にて沈降濃縮されたのち、第2エアリフト232によって好気消化槽210へと移送されることとなる。これにより、汚泥の自己酸化作用に加えて、第1沈殿槽150から移送された微生物の捕食作用によって、好気消化槽210における汚泥消化速度(「汚泥消化効率」、「汚泥削減率」、「汚泥減量化率」とすることもできる)を高めることが可能となる。また、本構成に関しては、第1沈殿槽150からの循環水を直接的に好気消化槽210へ移送するのではなく、一旦第2沈殿槽230に移送してこの第2沈殿槽230にて微生物を沈降濃縮させたのち、好気消化槽210へと間接的に移送するため、この好気消化槽210のHRT(水理学的滞留時間)が短くなり汚泥消化速度が下がるのを抑えることが可能となる。
【0030】
ここで、上記の第2散気装置220の具体的な構成について、図2〜図4を参照しつつ説明する。図2には図1中の第2散気装置220の側面図が示されており、図3には図2中の第2散気装置220の断面図が示されている。また、図4には、図3中の第2散気装置220の接触部材223の構造を示す部分拡大図である。
【0031】
図2及び図3に示すように、本実施の形態の第2散気装置220は、空気供給管221と、網状の接触部材223、誘導部材225、キャップ部材227及び取り付け部材229に大別され、これらの各構成部材が一体状に構成されている。ここでいう第2散気装置220が、本発明における「水処理用散気装置」に相当する。
【0032】
空気供給管221は、処理槽本体101の外部に設けられた空気供給源に接続される長尺状の配管部材として構成される。この空気供給管221は、処理槽本体101に装着された装着状態では、処理槽本体101内の水貯留領域を構成する好気消化槽210に配設されるとともに、処理槽本体101の槽上下方向(鉛直方向)に延在しており、その下側の端部(「先端部分」ともいう)に一対の吐出開口222,222を備えている。従って、この空気供給管221は、空気供給源から供給された空気を、吐出開口222に向けて下向きに流通させる流通管としての機能を果たす。この空気流れが、例えば図3中の矢印Faによって示される。各吐出開口222は、空気供給管221に設けられ、空気供給管221内を流れた空気を気泡として吐出する吐出開口部分として構成される。この吐出開口222は、空気供給管221の管壁に貫通状に設けられて、当該空気供給管221の長手延在方向と交差する方向に空気を吐出する構成であってもよいし、或いは空気供給管221の先端に設けられて、当該空気供給管221の長手延在方向に沿って空気を吐出する構成であってもよい。また、この空気供給管221の先端側の領域は、第1の先端領域221aと、第1の先端領域221aのうちの更なる先端側の領域である第2の先端領域221bとして規定される。ここでいう空気供給管221及び吐出開口222がそれぞれ、本発明における「空気供給管」及び「吐出開口」に相当する。
【0033】
網状の接触部材223は、空気供給管221の吐出開口222,222から吐出された空気(「気泡」ともいう)との接触によって、当該空気を細分化(「微細化」ともいう)する機能を果たす。ここでいう網状の接触部材223が、本発明における「網状の接触部材」に相当する。この接触部材223は、空気供給管221の第1の先端領域221aの全周を覆うように設けられた長尺状の被覆部材として構成されており、骨格部223a及び空間部223bを含む(図4参照)。典型的には、この接触部材223は、円筒形状(パイプ形状)とされその中心部の中空部分に空気供給管221が挿設されるように構成される。
【0034】
接触部材223の骨格部223aは、接触部材223の骨格部分、いわゆる「ヘチマ状(ヘチマ様)」ないし「立体網状」の骨格部分を形成している。この骨格部223aが、本発明における「ヘチマ状の骨格部」に相当する。従って、本実施の形態の接触部材223は、ヘチマ状の骨格部からなる網状骨格体と云うこともできる。なお、本実施の形態の接触部材223では、骨格部223aは、一定の形状が複数組み合わせられて規則的に配設されることによって形成されてもよいし、或いは不規則な形状の組み合わせによって形成されてもよい。
【0035】
一方、接触部材223の空間部223bは、骨格部223aによって区画された中空空間とされ、水及び空気の流通を許容する空間部分を形成している。この場合、空気供給管221の吐出開口222が接触部材223によって被覆される構成であってもよいし、或いは空気供給管221の吐出開口222が接触部材223よりも下方に配置される構成であってもよい。本実施の形態では、空気供給管221の周りに円筒形状の接触部材223を配置する構造を採用することによって、散気装置の構造を簡素化することが可能となる。
【0036】
図3に示されるように、誘導部材225は、空気供給管221の吐出開口222から吐出された空気を、接触部材223の内部を槽上方へと所定高さまで誘導する機能を果たす。また、この誘導部材225は、空気供給管221の吐出開口222から吐出された空気を定められた領域内で接触部材223に確実に接触させる機能をも有する。これらの機能のための具体的な構成として、この誘導部材225は、空気供給管221の第2の先端領域221b(空気供給管221の吐出開口222から上方に向けて所定高さまでの範囲)において接触部材223の全周を覆うように設けられる円筒形状(パイプ形状)とされる。すなわち、接触部材223はその長尺方向に関し中央分よりも下側(概ね下半分)が誘導部材225によって被覆されている。この場合、接触部材223の外表面223cと誘導部材225の内壁面225aとが密着するように構成されてもよいし、或いは接触部材223の外表面223cと誘導部材225の内壁面225aとの間に微小のクリアランスが形成されてもよい。ここでいう誘導部材225が、本発明における「第2の被覆部材」に相当する。
【0037】
キャップ部材227は、この誘導部材225の両端部のうちの下側端部225bを閉鎖する機能を果たすべく、誘導部材225或いは空気供給管221に取り付け固定される。このキャップ部材227は、有底筒状の部材として構成され、その開口側から誘導部材225に被せられることによって、誘導部材225の下側端部225bが閉鎖されて、接触部材223の底面(下面)が被覆される。ここでいうキャップ部材227が、本発明における「被覆部材」に相当する。
【0038】
上記構成によれば、吐出開口222から吐出された空気は、誘導部材225の内壁面225aによって空気供給管221の延在方向と交差する方向の流れが規制された状態で、吐出開口222よりも上方へと誘導されつつ、この誘導の間は、接触部材223の内部を上向きに通過する。この空気流れが、例えば図3中の矢印Fbによって示される。このとき、空気は接触部材223の網状の骨格部223aとの接触作用によって細分化され、被処理水に対する空気中の酸素の溶解効率が高められつつ、接触部材223の空間部223bを通過しつつ上向きに流れる。
【0039】
その後、水中に溶存することなく誘導部材225の上側端部225cよりも上方に達した空気は、誘導部材225の内壁面225aによる空気供給管221の延在方向と交差する方向の流れ規制が解除されるため、その空気の一部がそのまま接触部材223の内部を上向きに流れる一方、残りの空気は接触部材223の外部を上向きに流れる。この空気流れが、例えば図3中の矢印Fcによって示される。かくして、図1に模式的に示すように、第2散気装置220から好気消化槽210の全体に気泡が概ね均一に供給されることとなる。
【0040】
第2散気装置220の一体化構造について、典型的には、空気供給管221の周りに円筒形状の接触部材223を配設し、更に接触部材223の周りに円筒形状の誘導部材225を配設した状態で、空気供給管221が貫設される開口部を有するキャップ部材227によって接触部材223及び誘導部材225を下方から支持し、当該キャップ部材227の下方から取り付け部材229を空気供給管221に接続する接続構造を用いることができる。この接続構造によって、少なくとも接触部材223を空気供給管221に一体状に取り付けられる。空気供給管221と取り付け部材229との接続構造に関しては、両者を螺合、溶接、接着等によって互いに接続する構成を採用することができる。従って、取り付け部材229を空気供給管221に接続するこの接続構造によって、本発明における「取り付け機構」が構成される。この場合、空気供給管221、接触部材223、誘導部材225及びキャップ部材227は、互いに同心状に構成されるのが好ましい。
【0041】
なお、空気供給管221に対しキャップ部材227を直接的に接続することが可能であれば、取り付け部材229を省略することもできる。このときの空気供給管221とキャップ部材227との接続については、前述の空気供給管221と取り付け部材229との接続構造と同様の接続構造を採用することができる。この場合には、キャップ部材227を空気供給管221に接続するこの接続構造によって、本発明における「取り付け機構」が構成される。
【0042】
上記構成の第2散気装置220を用いることによって得られる作用効果として、前述のような空気(気泡)の微細化によって、好気消化槽210の被処理水に対する空気中の酸素の溶解効率が高められる(散気エア中の酸素を被処理水により多く溶解させる)という第1の作用効果が挙げられる。この作用効果を確実に達成するための接触部材223の具体的な仕様に関し、好ましくは比表面積が45〜250[m/m](更に好ましくは、比表面積が100〜200[m/m])であって、空隙率が70[%]以上(更に好ましくは、空隙率が90[%]以上)の網状部材を用いることができる。
【0043】
また、上記構成の第2散気装置220によれば、誘導部材225及びキャップ部材227によって接触部材223の概ね下半分が被覆され、特にキャップ部材227によって誘導部材225の底面が被覆されるため、空気供給管221の吐出開口222から空気が吐出される際に、接触部材223と水貯留領域のうちキャップ部材227の下方領域とがキャップ部材227を介して遮蔽されることなり、キャップ部材227の下方領域から異物を吸入するのが防止されるという第2の作用効果が得られる。なお、第2散気装置220の下側の部位からの異物の吸入を考慮しない設計の場合には、必要に応じてキャップ部材227を省略することもできる。
【0044】
また、上記構成の第2散気装置220によれば、少なくとも空気供給管221及び接触部材223を一体状に構成することによって、例えば第2散気装置220に目詰まりが生じたような場合に、接触部材223を空気供給管221と共に一緒に引き上げることが可能となるという第3の作用効果が得られる。これにより、第2散気装置220及び水処理装置100のメンテナンス作業が円滑化される。また、このような構成は、空気の散気機能と空気の細分化機能を併せ持つ散気装置として、任意の水処理装置に手軽に設置することができ汎用性が高いというメリットがある。
【0045】
ここで、上記第1の作用効果に関して、具体的には図5が参照される。図5には、本実施例としてのCASE−1(□プロット)と、比較例としてのCASE−2(●プロット)とについて、被処理水に対する酸素溶解効率が示される。CASE−1は、本実施の形態の第2散気装置220を用いて散気する場合とされる一方、CASE−2は、接触部材223のような部材が設けられていない散気装置、すなわち空気供給管221のような部材のみからなる散気装置を用いて散気する場合とされる。この酸素溶解効率は、第2散気装置220から実際に供給された空気供給量(「送気量」ともいう)Q[L/min]と、そのときに水中に溶存した酸素供給量W[kg−O/m/d]との関係に基づいて評価される。このときの酸素供給量は、その具体的な記載は省略するが、公知の測定方法(例えば、財団法人日本建築センター、通水試験要領に記載の試験D:DO,KLaの測定)にしたがって導出することができる。本発明者は、容量800[L]、水深1400[mm]の実験槽の槽底部に評価対象の散気装置を設置し、実験水温15[℃]で測定を行なった。なお、図5中の酸素供給量Wは、測定値を既知の補正式によって20[℃]に換算した値として示している。
【0046】
図5に示されるように、本実施の形態の第2散気装置220を用いることにより、接触部材223での気泡細分化作用(「気泡微細化作用」ともいう)によって、被処理水に対する空気中の酸素の溶解効率が高められることが確認された。例えば、本実施の形態に係るCASE−1では、空気供給量Q[L/min]が20〜40の範囲では、酸素供給量W[kg−O/m/d]が1.2〜2.3の範囲で変化し、比較例に係るCASE−2に対して酸素供給量Wを概ね0.6〜0.8の範囲で増やすことが可能となる。これにより、汚泥の好気消化に酸素を効率良く使用することが可能となるとともに、酸素溶解効率を高めることで、第2散気装置220からの散気エア風量を抑えることができ、第2散気装置220に係るエネルギーの省力化が図られる。
【0047】
〔他の実施の形態〕
なお、本発明は上記の実施の形態のみに限定されるものではなく、種々の応用や変形が考えられる。例えば、上記実施の形態を応用した次の各形態を実施することもできる。
【0048】
上記実施の形態の好気消化槽210では、好気消化部211に濾材が充填されない場合について記載したが、第2散気装置220の散気性能等、必要に応じて好気消化部211に濾材が充填された構成を採用することができる。本構成については、別実施の形態の水処理装置300の概要を示す図6が参照される。なお、この図6において図1に示す構成要素と同一の構成要素には同一の符号を付しており、当該同一の構成要素についての説明は省略する。
【0049】
本発明の「水処理装置」にかかる水処理装置300では、好気消化部211に濾材212を充填した構成を採用している。この濾材212は、典型的には、前述の嫌気濾床槽110の濾材112と同様の球状の濾材として構成される。その他として、円筒状、板状、網状などの形状の濾材を用いて濾材212を構成してもよい。本構成によれば、嫌気濾床槽110から移送される汚泥に含まれる夾雑物がこの濾材212によって捕捉されることとなり、第2散気装置220や後述する第2エアリフト232における目詰まり防止や閉塞防止を図ることが可能となる。また、第2散気装置220と、この第2散気装置220の上方に配置された濾材212との協働によって、第2散気装置220で微細化された空気を、更に濾材212を通過させることによって微細化作用を高めることが可能となる。
【0050】
また、上記実施の形態では、処理槽本体101に装着された装着状態では、第2散気装置220の空気供給管221が鉛直方向に延在する場合について記載したが、本発明では、空気供給管の延在方向はこの方向に限定されるものではなく、鉛直方向と交差する方向に空気供給管が延在する構成を採用することもできる。
【0051】
また、上記実施の形態の第2散気装置220は、空気供給管221と、接触部材223、誘導部材225及びキャップ部材227を備える場合について記載したが、本発明では、少なくとも空気供給管221及び接触部材223を含む散気装置を用いることができ、必要に応じて誘導部材225及びキャップ部材227の少なくとも一方を省略することもできる。空気供給管221及び接触部材223のみからなる散気装置の場合、例えば空気供給管221に外表面に接着剤を介して接触部材223を直接的に、或いは別部材を介して間接的に接着する構成、空気供給管221及び接触部材223をボルト・ナット、リベットなどの固定手段によって互いに固定する構成等を用いることによって、散気装置の一体化構造を実現することができる。
【0052】
また、上記実施の形態の第2散気装置220では、空気供給管221の周りに円筒形状の接触部材223を配置する場合について記載したが、本発明では、接触部材は、全体として板片形状、ボール形状(球形状)などの形態であってもよく、例えば円筒状やボール状(球状)の担体ないしろ材が複数充填された充填容器を空気供給管に一体状に取り付けた構成を採用することもできる。
【0053】
また、上記実施の形態では、第2散気装置220が好気性消化を行う好気消化槽210に装着される場合について記載したが、本発明では、この第2散気装置220のような水処理用散気装置を、特にSS(浮遊物質)成分の多い処理槽に好適に装着することができる。
【0054】
また、上記実施の形態の水処理装置100では、水処理機構101aが、嫌気処理槽110、接触ばっ気槽130、第1沈殿槽150、消毒槽170、好気消化槽210及び第2沈殿槽230の処理要素によって構成される場合について記載したが、処理要素の数や種類に関しては必要に応じて種々選択が可能である。
【符号の説明】
【0055】
100…水処理装置
101…処理槽本体
102…流入管
103…流出管
104…マンホール部
110…嫌気濾床槽
111…濾床
112…濾材
114…移流開口
130…接触ばっ気槽
131…充填部
132…接触材
134…第1散気装置
135…開口部
150…第1沈殿槽
151…開口部
152…第1エアリフト
153…底部領域
170…消毒槽
171…薬剤筒
210…好気消化槽
211…好気消化部
212…濾材
214…開口部
220…第2散気装置
221…空気供給管
221a…第1の先端領域
221b…第2の先端領域
222…吐出開口
223…接触部材
223a…骨格部
223b…空間部
223c…外表面
225…誘導部材
225a…内壁面
225b…下側端部
225c…上側端部
227…キャップ部材
229…取り付け部材
230…第2沈殿槽
231…移流開口
232…第2エアリフト
300…水処理装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理水を処理する水処理装置に装着される水処理用散気装置であって、
空気供給源に接続され、前記水処理装置のうち被処理水が貯留される水貯留領域に配設される空気供給管と、
前記空気供給管に設けられ、前記空気供給管内を流れた空気を吐出する吐出開口と、
前記吐出開口から吐出された空気と接触して当該空気を細分化する網状の接触部材と、
前記網状の接触部材を前記空気供給管に一体状に取り付ける取り付け機構と、
を含む構成であることを特徴とする水処理用散気装置。
【請求項2】
請求項1に記載の水処理用散気装置であって、
前記水処理装置に装着された状態では、前記空気供給管が前記水貯留領域内を鉛直方向に長尺状に延在し、また前記接触部材は、少なくとも前記吐出開口において前記空気供給管の全周を被覆する円筒形状として構成されていることを特徴とする水処理用散気装置。
【請求項3】
請求項2に記載の水処理用散気装置であって、
前記接触部材の底面を被覆する被覆部材を備える構成であることを特徴とする水処理用散気装置。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の水処理用散気装置であって、
前記接触部材の周面を被覆する円筒形状の第2の被覆部材を備える構成であることを特徴とする水処理用散気装置。
【請求項5】
請求項1〜4のうちのいずれか一項に記載の水処理用散気装置であって、
前記接触部材は、ヘチマ状の骨格部からなる網状骨格体として構成されていることを特徴とする水処理用散気装置。
【請求項6】
処理槽本体に、被処理水が貯留される水貯留領域と、原水が前記水貯留領域に流入するのを許容する流入管と、前記水貯留領域にて処理された後の水が前記処理槽本体から流出するのを許容する流出管と、前記水貯留領域に空気を散気する散気装置と含む水処理装置であって、
前記散気装置として、請求項1〜5のうちのいずれか一項に記載の水処理用散気装置を用いた構成であることを特徴とする水処理装置。
【請求項7】
請求項6に記載の水処理装置であって、
前記水貯留領域は、被処理水に含まれる汚泥の好気消化を行なう好気消化部を含み、当該好気消化部に前記水処理用散気装置の前記空気供給管が配設された構成であることを特徴とする水処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−55801(P2012−55801A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−199048(P2010−199048)
【出願日】平成22年9月6日(2010.9.6)
【出願人】(390021348)フジクリーン工業株式会社 (71)
【Fターム(参考)】