説明

水処理装置および水処理方法

【課題】 前処理ろ過手段の透過水量の低下および逆浸透膜の透過水量の低下を抑制し得る水処理装置を提供することを課題としている。また、前処理ろ過手段の透過水量の低下および逆浸透膜の透過水量の低下を抑制し得る水処理方法を提供することを他の課題としている。
【解決手段】 有機性物質を含む被処理水をろ過する前処理ろ過手段と、前記前処理ろ過手段を透過した透過水をろ過する逆浸透膜とが備えられている水処理装置であって、前記被処理水のCODが20mg/l以下であり、pH調整されていない前記被処理水に凝集剤を添加する凝集剤添加手段が備えられており、前記逆浸透膜が非荷電膜であることを特徴とする水処理装置等を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水処理装置および水処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、たんぱく質などの有機性物質を含む被処理水を逆浸透膜によって処理する水処理装置として、被処理水に含まれる有機性物質をできるだけ除去すべく、被処理水を精密ろ過膜(MF膜)等の前処理ろ過手段により前処理するようになっているものが知られている。被処理水に有機性物質が比較的多く含まれている場合、その有機性物質に起因する逆浸透膜の目詰まりが発生しやすく、逆浸透膜の透過水量を低下させ得るため、この種の水処理装置では、被処理水に含まれる有機性物質の量を前処理ろ過手段により低減させてからその被処理水を逆浸透膜へ供給するようになっている。しかし、この種の水処理装置では、被処理水に含まれる有機性物質が前処理ろ過手段に担持され、前処理ろ過手段の目詰まり等が生じやすく、前処理ろ過手段での透過水量が低下しやすい。
【0003】
これに対して、被処理水に含まれる有機性物質を凝集させて、この凝集物を前処理ろ過手段である前処理ろ過膜で捕捉除去させるべく、例えば、被処理水のpHを調整して被処理水中に含まれるたんぱく質を凝集させる手段が備えられた水処理装置が提案されている(特許文献1)。しかし、特許文献1のごとく、被処理水のpHを4〜6に調整する水処理装置では、前処理ろ過膜の目詰まりが抑制されて前処理ろ過膜の透過水量の低下が抑制されやすくなるものの、たんぱく質以外の有機性物質を被処理水から除去することが比較的困難であるため、逆浸透膜の目詰まりを防いで逆浸透膜の透過水量の低下を抑制する性能が未だ満足できるものではない。また、被処理水のpHを薬剤の添加により調整するため、pH調整用の薬剤費によってさらに経費がかかることとなる。
【0004】
さらに、被処理水に含まれる有機性物質を凝集させるべく、被処理水に凝集剤を添加する凝集剤添加手段が備えられている水処理装置も知られている。この種の水処理装置では、被処理水に添加される凝集剤で有機性物質が凝集されることにより、前処理ろ過手段において凝集物が捕捉除去されやすくなり、前処理ろ過手段の透過水量が改善されるものの、例えば、正電荷を帯びた凝集剤が逆浸透膜に担持されることにより、逆浸透膜の目詰まりが生じやすくなり逆浸透膜の透過水量が低下し得るという問題がある。
【特許文献1】特開2004−267830号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで本発明は、上記問題点に鑑み、前処理ろ過手段の透過水量の低下および逆浸透膜の透過水量の低下を抑制し得る水処理装置を提供することを課題とする。また、前処理ろ過手段の透過水量および逆浸透膜の透過水量の低下を抑制し得る水処理方法を提供することを他の課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決すべく、本発明に係る水処理装置は、有機性物質を含む被処理水をろ過する前処理ろ過手段と、前記前処理ろ過手段を透過した透過水をろ過する逆浸透膜とが備えられている水処理装置であって、前記被処理水のCODが20mg/l以下であり、pH調整されていない被処理水に凝集剤を添加する凝集剤添加手段が備えられており、前記逆浸透膜が非荷電膜であることを特徴とする。
【0007】
上記構成からなる水処理装置によれば、前記被処理水のCODが20mg/l以下であり、被処理水に凝集剤を添加する凝集剤添加手段が備えられており、前記逆浸透膜が非荷電膜であるため、前記前処理ろ過手段の目詰まりおよび前記逆浸透膜の目詰まりが抑制され得る。
【0008】
また、本発明に係る水処理装置は、前記凝集剤が鉄塩またはポリ塩化アルミニウムであることが好ましい。前記凝集剤が鉄塩またはポリ塩化アルミニウムであることにより、前記前処理ろ過手段の目詰まりおよび前記逆浸透膜の目詰まりがより抑制され得るという利点がある。
【0009】
また、本発明に係る水処理装置は、前記ポリ塩化アルミニウムの前記被処理水中の濃度が、5〜50mg/lであることが好ましい。
前記ポリ塩化アルミニウムの前記被処理水中の濃度が5mg/l以上であることにより、前記前処理ろ過手段の差圧上昇がより抑制され、前記前処理ろ過手段の透過水量がより低下しにくいという利点があり、かつ、前記逆浸透膜1の透過水量がより低下しにくいという利点がある。また、50mg/l以下であることにより、前記逆浸透膜1の透過水量がより低下しにくいという利点がある。
【0010】
本発明に係る水処理方法は、有機性物質を含む被処理水を前処理ろ過手段でろ過し、前記前処理ろ過手段を透過した透過水を逆浸透膜でろ過する水処理方法であって、CODが20mg/l以下でありpH調整していない前記被処理水に凝集剤を添加し、前記逆浸透膜として非荷電膜を用いることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る水処理装置は、前記前処理ろ過手段の目詰まりおよび前記逆浸透膜の目詰まりが抑制され得る。従って、本発明の水処理装置は、前記前処理ろ過手段の透過水量の低下および前記逆浸透膜の透過水量の低下を抑制し得るという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明に係る水処理装置は、有機性物質を含む被処理水をろ過する前処理ろ過手段と、前記前処理ろ過手段を透過した透過水をろ過する逆浸透膜とが備えられている水処理装置であって、pH調整されていない前記被処理水に凝集剤を添加する凝集剤添加手段が備えられており、前記逆浸透膜が非荷電膜である水処理装置である。
【0013】
以下、本発明に係る水処理装置の一実施形態について図面を参照しつつ説明する。
【0014】
本実施形態の水処理装置には、図1に示すように、逆浸透膜(RO膜)1と、前記前処理ろ過手段としての前処理ろ過膜2とが備えられている。前記逆浸透膜1は、前記前処理ろ過膜2を透過する透過水を処理するように備えられており、しかも、前記逆浸透膜1は、非荷電膜を備えている。また、本実施形態の水処理装置には、前記被処理水が前記前処理ろ過手段でろ過処理される前に前記被処理水に凝集剤を添加する凝集剤添加装置3が備えられている。前記被処理水は、CODが20mg/l以下である。
【0015】
前記逆浸透膜1は、その表面が電気的に中性付近の非荷電膜である。
ここで、「非荷電」とは、流動電位方式によって測定するゼータ電位測定においてpH=7.4でのゼータ電位がマイナス5mV以上プラス35mV以下の荷電を有することである。具体的には、測定セルに適当な大きさの測定試料をセットして、その測定セルの両端に圧力差をつけて、pHが所定値とされた電解質溶液を流すことによって生じる電荷の偏位から電位差、即ち流動電位を測定し、測定セル両端の圧力差による流動電位の変化率から、測定試料の表面のゼータ電位を求めることができる。より具体的には、ゼータ電位の測定をアントンパール[Anton Paar]社製 ゼータ電位測定装置(商品名「EKA型」)を用いて下記のとおり行った。測定試料は、シリンドリカルセル中央部に4cm幅に充填する。25℃の0.001mol/l KCl水溶液を用意し、該KCl水溶液を測定回路内全体に満たした後、0.1mol/l KOH水溶液を添加してpHを11にする。その後、0.1mol/l HCl水溶液を滴定しながら、pHが0.8変化する毎の膜のゼータ電位をpH11〜3までのレンジで測定し、pH7.4のゼータ電位を求める。
非荷電の逆浸透膜1は、表面荷電が中性付近であるため、通常のマイナス荷電膜に比べて、アルミ、鉄などの陽イオンが付着しにくく、前記凝集剤が前記逆浸透膜1に担持されにくい。従って、前記逆浸透膜1が非荷電であることにより、前記逆浸透膜1の目詰まりが生じにくく、前記逆浸透膜1の透過水量の低下が抑制され得る。
【0016】
前記逆浸透膜1にある孔の孔径としては、通常、2nm以下が例示される。また、前記逆浸透膜1としては、例えば、非対称膜の緻密層と微細多孔層とで構成される複合膜が挙げられる。前記逆浸透膜1にある孔の孔径は、例えば、水銀圧入法により測定できる。
【0017】
前記逆浸透膜1としては、例えば、逆浸透膜ユニットとなっているものが用いられ得る。逆浸透膜ユニットとしては、中空糸膜、スパイラル膜、管状膜等の状態で設置されたろ過膜が、ベッセル内に保持され高い圧力に耐えられるようになったものが挙げられる。
【0018】
前記前処理ろ過膜2は、前記前処理ろ過手段の1つである。前記前処理ろ過手段としては、通常、前記逆浸透膜1にある孔の孔径より目の粗いものによってろ過を行う手段、具体的には、前記逆浸透膜1にある孔の孔径より大きい孔径の孔を有する前処理ろ過膜2や後述する他の実施形態で示す砂ろ過器4等が挙げられる。前記前処理ろ過膜2としては、精密ろ過膜(MF膜)、限外ろ過膜(UF膜)等が例示される。
なお、前記前処理ろ過手段としては、精密ろ過膜(MF膜)、限外ろ過膜(UF膜)、砂ろ過器4等が組み合わされて用いられ得る。
【0019】
前記前処理ろ過膜2としての前記精密ろ過膜は、通常、50nm〜10μm程度の孔径の孔を有している。また、前記精密ろ過膜としては、例えば、多孔質の膜が挙げられる。
【0020】
前記前処理ろ過膜2としての前記限外ろ過膜は、通常、2〜200μm程度の孔径の孔を有している。また、前記限外ろ過膜としては、例えば、多孔質の膜が挙げられる。
【0021】
前記前処理ろ過膜2としては、例えば、ろ過膜ユニットとなっているものが用いられ得る。ろ過膜ユニットとしては、例えば、中空糸膜、スパイラル膜、チューブラー膜がベッセル内に保持されたものが挙げられる。また、前処理ろ過膜としては、中空糸膜あるいは平膜をそのまま被処理水中に浸漬して用いるものも例示される。
【0022】
前記砂ろ過器4は、例えば、砂利の層の上に砂やアンスラサイト等ろ過メディアの層を敷きそこに水などを通すことで不純物を取るものであり、前記砂ろ過器4としては、一般的に用いられているものが挙げられる。
【0023】
前記前処理ろ過手段を透過する透過水は、前記逆浸透膜1により処理されるところ、前記逆浸透膜1の目詰まりを抑制できるという点で、透過水に含まれる有機性物質等の不純物の量はできるだけ少ないことが好ましい。前記透過水に含まれる不純物の量の指標としては、ファウリングインデックス値(FI値)を採用することができ、透過水の好ましいFI値としては、例えば、4以下が挙げられる。
【0024】
前記凝集剤添加装置3においては、前記凝集剤が、例えば、水などの溶媒によって希釈された状態で貯められ得る。前記凝集剤添加装置3としては、前記凝集剤が貯められ得るものであれば特に限定されず、貯めるため容器の材質としては、例えば、ステンレス、プラスチック等が挙げられる。前記凝集剤添加装置3は、前記凝集剤が適宜、適量、適当な時期に前記被処理水へ添加されるように備えられている。
【0025】
前記凝集剤は、本実施形態において、前記前処理ろ過膜2によりろ過処理される前に前記被処理水に添加される。前記前処理ろ過膜2によりろ過処理される前に添加されることにより、前記前処理ろ過膜2の透過水量の低下が抑制され得るという利点がある。また、前記前処理ろ過膜2で前記逆浸透膜1の透過性能を低下させる不純物を除去することにより、前記逆浸透膜1の透過性能の低下が抑制され得るという利点がある。
【0026】
前記逆浸透膜1により処理される被処理水に前記凝集剤添加装置3から前記凝集剤が添加される頻度は、特に限定されない。膜は目詰まりを起こすと回復させるために薬品で洗浄するなど多大な労力を要するため、例えば、被処理水中の凝集剤は、常に所望の濃度となるように添加され得る。一方で、凝集剤の使用量が多くなると運転費の高騰につながるため、被処理水の汚染度に合わせて凝集剤を添加する頻度を多くしたり少なくしたりすることもできる。
【0027】
前記凝集剤としては、特に限定されず、例えば、塩化第二鉄(FeCl3)、ポリ硫酸第二鉄などの鉄塩、ポリ塩化アルミニウム(PAC)、硫酸アルミニウム等のアルミ系凝集剤が挙げられる。なかでも、前記鉄塩は、安価であるという点で好ましい。また、前記ポリ塩化アルミニウムは、金属を腐食しにくく、凝集性および取り扱い性が良好であるという点で好ましい。
【0028】
前記鉄塩の前記被処理水中の濃度は、3〜50mg/lであることが好ましく、5〜20mg/lであることがより好ましい。
前記鉄塩の前記被処理水中の濃度が3mg/l以上であることにより、前記前処理ろ過手段の差圧上昇がより抑制され、前記前処理ろ過手段の透過水量がより低下しにくいという利点があり、5mg/l以上であることにより、前記前処理ろ過手段の差圧上昇がさらに抑制され、前記前処理ろ過手段の透過水量がさらに低下しにくいという利点がある。また、50mg/l以下であることにより、前記逆浸透膜1の透過水量がより低下しにくいという利点があり、20mg/l以下であることにより、前記逆浸透膜1の透過水量がさらに低下しにくいという利点がある。
【0029】
前記ポリ塩化アルミニウムの前記被処理水中の濃度は、5〜50mg/lであることが好ましく、5〜20mg/lであることがより好ましい。
前記ポリ塩化アルミニウムの前記被処理水中の濃度が5mg/l以上であることにより、前記前処理ろ過手段の差圧上昇がより抑制され、前記前処理ろ過手段の透過水量がより低下しにくいという利点がある。また、50mg/l以下であることにより、前記逆浸透膜1の透過水量がより低下しにくいという利点があり、20mg/l以下であることにより、前記逆浸透膜1の透過水量がさらに低下しにくいという利点がある。
【0030】
なお、前記添加剤の前記被処理水中の濃度は、変動し得るものである。即ち、前記水処理装置においては、通常、前記水処理装置のなかを流れている被処理水に前記凝集剤を添加するため、被処理水中における添加剤の濃度をあらゆる部位で一定にすることは困難であり、前記水処理装置の部位、前記凝集剤を添加した後の時間の経過等によって被処理水中における添加剤の濃度は変動し得る。
【0031】
本実施形態の水処理装置で用いられる前記被処理水は、pH調整されていない。即ち、本実施形態の水処理装置では、例えば、被処理水に含まれるたんぱく質を凝集させるため、該たんぱく質の等電点付近であるpH2〜4などに被処理水のpHを調整するような操作は不要であり、また、いったん酸性となった被処理水を再度中性付近のpHに調整するような操作も不要である。
【0032】
また、前記被処理水は、CODが20mg/l以下であり、好ましくは、15mg/l以下である。CODが20mg/lを超えると、前記前処理ろ過膜2の透過水量の低下を抑制するために、凝集剤を比較的多量に添加する必要がある。従って、前記逆浸透膜1が非荷電膜であっても、凝集のために用いられない凝集剤が前記逆浸透膜1の透過水量を低下させるおそれがある。CODが15mg/l以下であることにより、前記逆浸透膜1の透過水量が低下しにくくなるという利点がある。
前記被処理水は、濁度が10以下であることが好ましい。濁度が10以下であることによって、凝集のために用いられない凝集剤による前記逆浸透膜1の透過水量の低下がより抑制され得るという利点がある。
【0033】
前記CODは、いわゆる化学的酸素要求量のことを表し、JIS K0102:1998「17.100℃における過マンガン酸カリウムによる酸素消費量」により求められる。また、前記濁度は、「水質基準に関する省令の規定に基づき厚生労働大臣が定める方法(平成15年7月22日厚生労働省告示第261号)」に記載されている方法により求められる。
【0034】
本実施形態の水処理装置は、前記逆浸透膜1、前記前処理ろ過手段などを所望の形態で配置させることなどにより、適宜、一般的な方法で製造することができる。非荷電膜である前記逆浸透膜1、前記前処理ろ過手段としては、市販されているものを用いることができる。前記凝集剤添加装置3としては、一般的に用いられているものを用いることができる。また、前記凝集剤としては市販されているものを用いることができる。
【0035】
次に、本発明に係る水処理装置の他の実施形態について図面を参照しつつ説明する。
【0036】
他の実施形態の水処理装置には、図2に示すように、前処理ろ過膜2と、逆浸透膜1(以下、RO膜ともいう)とが備えられている。さらに、前処理ろ過膜2で処理される前に被処理水をろ過処理する砂ろ過器4が備えられている。すなわち、前処理ろ過手段として、前処理ろ過膜2と砂ろ過器4とが備えられている。
前記逆浸透膜1は、前記前処理ろ過膜2を透過する透過水を処理するように備えられており、しかも、前記逆浸透膜1は、非荷電膜を備えている。また、他の実施形態の水処理装置には、前記被処理水が前記砂ろ過器4でろ過処理される前の段階で、前記被処理水に凝集剤を添加する凝集剤添加装置3が備えられている。
【0037】
さらに、他の実施形態の水処理装置には、図2に示すように、被処理水をいったん貯め得る被処理水槽6が備えられている。加えて、前記被処理水槽6から流れてくる被処理水を採取してその被処理水のCOD値を測定するCOD測定装置7が備えられている。該COD測定装置7は、上述した一実施形態のところで示したCOD測定方法に準拠してCOD値を測定できる装置である。
【0038】
他の実施形態の水処理装置には、図2に示すように、被処理水を前処理ろ過膜2または砂ろ過器4へ導き得る、もしくは、被処理水を前処理ろ過膜2または砂ろ過器4へ導くことを防止し得る、バルブAとバルブBとが備えられている。
バルブAを開け、バルブBを閉めることにより、前記砂ろ過器4へ導かれる被処理水である第1被処理水は、前記砂ろ過器4でろ過され、ろ過された第2被処理水は、前処理ろ過膜2へ導かれる。バルブAを閉め、バルブBを開けることにより、被処理水は、前処理ろ過膜2へ導かれる。
【0039】
また、他の実施形態の水処理装置には、前処理ろ過膜濃縮水を砂ろ過器4に供給することができるようになっている前処理ろ過膜濃縮水経路5が設けられている。また、ろ過の場合とは逆の方向へ水を流して前処理ろ過膜2の目詰まりの原因物質を除去できる逆洗手段であって、逆洗をしている際に目詰まりの原因物質を含む濃縮水が、砂ろ過器4で処理される前の第1被処理水に戻されるようになっている逆洗手段、即ち逆洗装置(図示せず)が備えられている。さらに、砂ろ過器4にも逆洗装置(図示せず)が備えられている。
【0040】
他の実施形態の水処理装置では、被処理水のCOD値を前記COD測定装置7で測定し、被処理水のCOD値を指標として被処理水に含まれる有機性物質の量を把握することができる。また、被処理水に含まれる有機性物質が所定量以上であると判断された場合には、前記バルブAおよび前記バルブBを操作することにより、前記前処理ろ過膜2に供給される被処理水量を減らして前記砂ろ過に供給される第1被処理水量を増やし、前処理ろ過膜2で捕捉され得る有機性物質などの目詰まり原因物質の量を減らし、前処理ろ過膜2の目詰まりを抑制することができる。
【0041】
他の実施形態の水処理装置では、前処理ろ過膜2の目詰まりを抑制すべく、前記逆洗手段により比較的頻繁に前処理ろ過膜2を洗浄することができる。従って、前処理ろ過膜2をいったん取り出して薬液によって洗浄することがなくとも、または、薬液によって洗浄する回数が少なくとも、簡便に前処理ろ過膜2の目詰まりを抑制することができ、前処理ろ過膜2の透過水量の低下を抑制することができる。また、前記COD測定装置7で測定したCOD値があらかじめ設定したCOD値以上になった場合に、自動的に前記バルブAおよび前記バルブBを調整できるようにしておくことも可能であり、これにより、前記前処理ろ過膜2に直接供給される被処理水量および前記砂ろ過器4に供給される第1被処理水量を自動的に制御できるという利点がある。なお、前記あらかじめ設定したCOD値としては、8〜20(mg/l)の値が挙げられる。
【0042】
他の実施形態の前記被処理水槽6は、被処理水が貯められ得るものであれば特に制限されず、その材質としては、ステンレス、プラスチック等が挙げられる。
【0043】
他の実施形態では、逆浸透膜1、前処理ろ過膜2、凝集剤添加装置3、砂ろ過器4として上述した一実施形態と同様なものが用いられ得る。また、他の実施形態で用いられる凝集剤は、上述した一実施形態と同様なものが用いられ、その添加量も上述した一実施形態と同様に設定され得る。なお、他の実施形態で用いられる被処理水としては、上述した一実施形態で処理されるものと同様のものが挙げられる。
【0044】
他の実施形態の水処理装置は、上述した一実施形態の水処理装置と同様にして、適宜、一般的な方法で製造することができる。
【0045】
本発明に係る水処理方法の一実施態様は、上述した水処理装置の一実施形態または水処理装置の他の実施形態を用いて実施することができる。
【0046】
なお、本発明を上記例示の水処理装置、水処理方法に限定するものではない。
また、一般の水処理装置において用いられる種々の形態を、本発明の効果を損ねない範囲において、採用することができる。一般の水処理方法において用いられる種々の態様を、本発明の効果を損ねない範囲において、採用することができる。
【実施例】
【0047】
次に実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0048】
(試験例1)
前処理ろ過膜として、旭化成ケミカルズ株式会社製の精密ろ過膜(MF膜)(商品名 「UNA−620A」)を用い、荷電タイプの逆浸透膜として、日東電工株式会社製の逆浸透膜(RO膜)(商品名 「NTR−759HR」)を用いた。凝集剤として塩化第二鉄(以下、FeCl3ともいう)を用いた。COD値約9mg/lの被処理水1000mlに所定濃度となるように凝集剤を添加し、150rpmで3分間急速攪拌後、50rpmで10分間緩速撹拌し、60分間静置後の上澄み液900mlを試験に供した。凝集剤を含んだ被処理水を各ろ過膜でろ過処理した。MF膜ろ過は透過水量1.2m/dの定速ろ過、RO膜ろ過は処理圧力0.5MPaの定圧ろ過とし、凝集剤添加によるMF膜の差圧上昇への影響、および、凝集剤添加によるRO膜の透過水量への影響を調べた。凝集剤添加によるMF膜の差圧上昇への影響を表1および図3に示す。また、凝集剤添加によるRO膜の透過水量への影響を表2および図4に示す。
【0049】
(試験例2)
凝集剤としてポリ塩化アルミニウム(以下、PACともいう)を用いた点以外は、実施例1と同様にして、凝集剤添加によるMF膜の差圧上昇への影響、および、凝集剤添加によるRO膜の透過水量への影響を調べた。凝集剤添加によるMF膜の差圧上昇への影響を表1および図3に示す。また、凝集剤添加によるRO膜の透過水量への影響を表2および図4に示す。
【0050】
【表1】

【0051】
【表2】

【0052】
表1および図3から認識できるように、FeCl3を3mg/l以上の濃度となるように添加することによりMF膜の差圧上昇がほぼ抑制される。
また、ポリ塩化アルミニウム(PAC)を5mg/l以上の濃度となるように添加することによりMF膜の差圧上昇がほぼ抑制され、透過水量の低下が抑制される。
【0053】
表2および図4から認識できるように、荷電タイプのRO膜の透過水量は、FeCl3の添加量が3mg/l程度で比較的高くなり、5mg/l程度で最も高くなり、20mg/l程度までは比較的高いが、濃度がそれ以上になると濃度の上昇に伴って徐々に低下する。
また、荷電タイプのRO膜の透過水量は、ポリ塩化アルミニウムの添加量が5mg/l程度で比較的高くなり、10mg/l程度で最も高くなり、20mg/l程度までは比較的高いが、濃度がそれ以上になると濃度の上昇に伴って徐々に低下する。
【0054】
以上より、FeCl3を凝集剤として3mg/l以上の濃度となるように、被処理水に添加することにより、MF膜の差圧上昇が高度に抑制されるものの、5mg/l以上の濃度ではその濃度の上昇に伴い、荷電タイプのRO膜の透過水量が低下し、20mg/lを超えるとRO膜の透過水量が比較的低くなることが認識できる。
また、PACを凝集剤として5mg/l以上の濃度となるように、被処理水に添加することにより、MF膜の差圧上昇が高度に抑制されるものの、10mg/l以上の濃度ではその濃度の上昇に伴い、荷電タイプのRO膜の透過水量が低下し、20mg/lを超えるとRO膜の透過水量が比較的低くなることが認識できる。
【0055】
(試験例3)
試験例1で用いたRO膜およびMF膜を用いて、MF膜処理後の透過水をRO膜処理するフローとした。試験例1と同様の条件(MF膜は、透過水量1.2m/dの定流量、RO膜は0.5MPaの定圧運転)で50日間にわたってMF膜の差圧およびRO膜の透過水量を測定した。20〜27日目および34日以降に、MF膜における被処理水中の濃度が20mg/l程度となるように40秒あたり1回、ポリ塩化アルミニウムを添加した。結果を図5に示す。また、本試験に用いた被処理水の物性値を以下に示す。
pH: 6.6〜7.6(平均値7.12)
BOD: 5未満〜10(平均値5.13)[mg/l]
COD: 3.9〜13.3(平均値8)[mg/l]
濁度: 0.4〜8.9(平均値1.62)
浮遊物質量(SS):1未満〜6(平均値2未満)[mg/l]
溶解性蒸発残留物: 730〜2360(平均値1187)[mg/l]
【0056】
(試験例4)
RO膜として、非荷電RO膜(日東電工株式会社製(商品名「LF−10」)を用いた点以外は、試験例3と同様にして試験を行った。結果を図5に示す。なお、試験例3においてMF膜を透過した透過水を試験例4のRO膜に供給して試験を行ったため、MF膜の差圧については、試験例3と同じ値である。
【0057】
図5から認識できるように、試験例3のようにRO膜として荷電膜を用いた場合、凝集剤の添加によってRO膜の透過水量の低下が生じたが、試験例4のようにRO膜として非荷電膜を用いることにより、凝集剤の添加によってもRO膜の透過水量の低下が抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】一実施形態の水処理装置を表す模式図。
【図2】他の実施形態の水処理装置を表す模式図。
【図3】凝集剤添加量によるMF膜の差圧上昇への影響を表すグラフ。
【図4】凝集剤添加量によるRO膜の透過水量への影響を表すグラフ。
【図5】非荷電膜であるRO膜の透過水量、通常のRO膜の透過水量、および、MF膜の差圧を表すグラフ。
【符号の説明】
【0059】
1・・・逆浸透膜(RO膜)
2・・・前処理ろ過膜
3・・・凝集剤添加装置
4・・・砂ろ過器
5・・・MF膜濃縮水経路
6・・・被処理水槽
7・・・COD測定装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機性物質を含む被処理水をろ過する前処理ろ過手段と、前記前処理ろ過手段を透過した透過水をろ過する逆浸透膜とが備えられている水処理装置であって、
前記被処理水のCODが20mg/l以下であり、pH調整されていない前記被処理水に凝集剤を添加する凝集剤添加手段が備えられており、前記逆浸透膜が非荷電膜であることを特徴とする水処理装置。
【請求項2】
前記凝集剤が鉄塩またはポリ塩化アルミニウムである請求項1記載の水処理装置。
【請求項3】
前記ポリ塩化アルミニウムの前記被処理水中の濃度が5〜50mg/lである請求項2記載の水処理装置。
【請求項4】
有機性物質を含む被処理水を前処理ろ過手段でろ過し、前記前処理ろ過手段を透過した透過水を逆浸透膜でろ過する水処理方法であって、
CODが20mg/l以下でありpH調整していない前記被処理水に凝集剤を添加し、前記逆浸透膜として非荷電膜を用いることを特徴とする水処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−165928(P2009−165928A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−5266(P2008−5266)
【出願日】平成20年1月15日(2008.1.15)
【出願人】(000192590)株式会社神鋼環境ソリューション (534)
【Fターム(参考)】