説明

水分吸着体の製造法ならびに水分吸着体

【課題】 本発明が、従来の水分吸着体における問題点を解決しようとする課題は下記にある。
1.環境に対し低アルカリ性が確保されていること。
2.フッ素を含む重金属類が固定化されていること。
3.水分吸着率が30%以上に確保されていること。
4.処理対象素材の水分と接して再泥化しないこと。
5.製品が取り扱いやすい無水粉顆粒体であること。
6.自然界放置にも有害硫化水素を発生しないこと。
【解決手段】 本発明の解決手段は、粉末状二水石膏ないしは粉末状二水石膏と無公害型吸着補助剤を主原料にして、被覆・凝結剤を付加させたプレ粉末体を含水粉顆粒状処理物に調製し、次いで加熱脱水処理を施して、半水石膏を主原料として低価格で安全な無公害型の無水粉顆粒体からなる水分吸着体に改質する工程からなる製造法;ならびに該製造法で調製された無公害型の無水粉顆粒体からなる水分吸着体において、水分吸着率が30%以上であり、水と接触したとき非再泥化状態が確保されており、pH値が6ないしは8.6の範囲にあり、共存する有害水溶出性重金属類が環境基準値以下の範囲内に固定化されている性状特性が同時に確保されている半水石膏を主成分とする水分吸着体に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は基本的に、粉末状二水石膏ないしは粉末状二水石膏と無公害型吸着補助剤を主原料にして、被覆・凝結剤を付加させたプレ粉末体を含水粉顆粒状処理物に調製して、次いで加熱脱水処理を施して、半水石膏を主原料として低価格で安全な無公害型の無水粉顆粒体からなる水分吸着体に改質する工程からなる製造法;ならびに該製造法で調製された無公害型の無水粉顆粒体からなる水分吸着体において、水分吸着率が30%以上であり、水と接触したとき非再泥化状態が確保されており、pH値が6ないしは8.6の範囲にあり、共存する有害水溶出性重金属類が環境基準値以下の範囲内に固定化されている性状特性が同時に確保されている半水石膏を主成分とする水分吸着体に関する。
【背景技術】
【0002】
本明細書では、本発明における「粉顆粒体」とは、「0.05ないしは7mmφからなる粉粒体ないしは顆粒体の混合体を」と定義して記載する。
また本明細書では、本発明における「二水石膏」とは、化学命名で硫酸カルシウム・2水和物とする化合物を定義しており、一般に二水石膏、軟石膏、または単に石膏と呼ばれている化合物を総称していう。また「半水石膏」とは、化学命名で硫酸カルシウム・1/2水和物とする化合物を定義しており、二水石膏を160ないしは170℃に加熱したとき水分を部分的に失い変化し、水分吸着性を有する石膏を半水石膏と称する。
【0003】
本発明の水分吸着体の主原料となる二水石膏は、排煙脱硫により回収された硫酸カルシウム・2水和物、リン鉱石を硫酸処理してリン酸を製造する際に副生する硫酸カルシウム・2水和物、イルメナイト鉱石を硫酸処理して酸化チタンを製造する際に副生する硫酸カルシウム・2水和物、廃石膏ボード等を粉砕して紙を除去して分離回収される硫酸カルシウム・2水和物等からなる副生石膏類ないしは廃石膏類、さらに天然産の石膏等のいずれの石膏も本発明の水分吸着体の対象主原料として扱うことができる。
【0004】
本発明における技術背景は、硫酸カルシウム・2水和物である二水石膏を160ないしは170℃で脱水処理して製造される硫酸カルシウム・1/2水和物である半水石膏に係わる技術にある。特に産業廃棄物類を無公害型の再資源化資材としてり再生利用しようとする社会ニーズに応えて、廃石膏ボードより回収されて紙等の除去処理の施されている粉末状の半水石膏を無公害型の再資源化資材に改質して、土木分野等で採択されている中性固化処理材等に提供して、従来から同分野で汎用されてきたセメント類や石灰等のアルカリ性の固化処理材の代替えとして応用・利用しようとしている実績が背景技術としてある。
【0005】
特に近年、建築物等においては、石膏ボードは汎用建材として広く使用されてきた。しかし、石膏ボードが広く多様に使用されてきた建築物等の建て替え時期を迎え、今多量の石膏ボードが廃石膏ボードとして発生して廃棄・投棄されている。したがって、この廃石膏ボードから紙を除去するリサイクル処理により回収した粉末状の廃二水石膏を再資源化資材として再利用する活動が強く求められてきた。しかるに平成18年6月1日付けで環境省大臣官房廃棄物・リサイクル対策部長から通知として「廃石膏ボードから付着している紙を除去したものの取扱いについて」に関する通知が提示され、その後の新たな科学的知見として、廃石膏ボードにおける紙を除去した後でも安定型最終処分場へ埋立処分を行った場合、高濃度の硫化水素が発生するおそれがあることが明らかになったため、廃石膏ボードから紙を除去したものについても管理型最終処分場に埋め立てることが必要とされて制限が厳格化されている。
【0006】
さらに、廃石膏ボードに採択されている二水石膏は、各種の工場から副生される副生石膏を原材料として採択されていることから、生活環境に有害なフッ素を環境基準値より高い濃度で共存しており、この二水石膏に共存する有害なフッ素の除去ないしは固定化して不溶化する技術は、廃二水石膏を再資源化資材に改質してリサイクルするときの必須技術として強く求められている重要な無公害型構築の技術である。
【0007】
こうした状況から、廃石膏ボードを無公害型の再資源化処理して有効再利用する技術がさらに強く求められ出した。例えば(社)石膏ボード工業会では、今後もさらに廃石膏ボードの発生量の増加が見込まれることから、廃石膏ボードのリサイクル・ルートの確立および利用用途の拡大等に関し積極的リサイクルの促進が急務と報告している。したがって、現在廃石膏ボードから回収される粉末状の廃石膏を再資源化資材としての活用がさらに強く求められている。特に、セメントや石灰等のアルカリ性の固化処理材の代替えとして、半水石膏を中性固化処理材等として活用する技術が多く公開されている。
【0008】
しかるに一方、従来から汎用されてきたセメント類ならびに生石灰系固化剤等を接触処理対象とする含水の素材類である土壌・地盤・汚泥等に対して、このセメント類ならびに生石灰系固化剤等を作用せしめるとき、安価にして水硬性固化機能は十分に発揮して、固化剤としての目的は十分に達せられるが、下記に示す問題点が残されている。
1.接触処理対象の含水素材類が処理された処理物が、高アルカリ性を示すことから、環境に対して二次公害を起こす傾向にある。
2.セメント類を採択する時は、セメント類に六価クロムが共存していることから、処理環境に有害な六価クロムの汚染を伝播させる心配が避けられない。
3.セメント類ならびに生石灰系固化剤は、いずれも粉末体であり、現場での作業時に粉塵飛散を伴い、作業環境を悪化させている。
【0009】
さらに本発明において、二水石膏、特に廃石膏ボードより回収されたフッ素を共存している二水石膏を低価格で安全で無公害型の再資源化資材として提供するためには、さらに特に大量消費が可能な土木分野等で汎用されている土壌・地盤改良材等としては、多くの技術的な問題点が残されている。ここに存在するこの技術的な問題点が、本発明における背景技術として存在する。本発明者等は、廃石膏ボードより回収された二水石膏を主原料として、低価格で安全な土壌・地盤改良材等に提供しようとする場合、従来から汎用されてきたセメント類や生石灰系固化剤からなる土壌・地盤改良材、また既存の半水石膏を主成分とする中性の土壌・地盤改良材に係わる技術と対比して検討し、そこに示される技術的な問題点を解決する必要があると判断した。
【0010】
さらに本発明においては、本発明の水分吸着体の主原料に二水石膏を選んでいるが、後述するが、同時に吸着性を発揮する比表面積の大きくて、安価に入手可能なシリケート類からなる灰類や炭類、特に廃棄物である焼却灰類が有する吸着性を活用して、本発明における吸着補助剤としての併配合したプレ粉末体に採択することは、廃棄物類の再利用を兼ねて好適であると判断した。
【0011】
以上、従来技術を精査するとき、本発明で解決せねばならない技術的な問題点は、次の五つにあると判断される。
1.セメント類や生石灰が示す高いアルカリ性を低アルカリ性に改質できるか。
2.半水石膏主成分の中性固化剤が水と接触したときの再泥化を防止できるか。
3.粉状半水石膏からなる中性固化剤を取り扱いやすい顆粒体で提供できるか。
4.水分吸着材としての吸水効果が半水石膏の20%を超えることができるか。
5.廃石膏ボードに共存していた有害なフッ素を固定化して不溶化できるのか。
【0012】
したがって本発明者等は、本発明においては、主として廃石膏ボードより回収したフッ素を共存する二水石膏を主原料として、以上に示した五つの技術的問題点が解決されている低価格で安全な無公害型の再資源化資材を提供できる技術構築の開発研究にあると判断した。したがって、本発明においては、上記の五つの技術的問題点を解消するための技術的工夫を誘導する技術が、本発明の背景技術として存在すると判断した。
【0013】
1項のセメント類や生石灰が示す高アルカリ性を低アルカリ性に改質できるかに対しては、土壌・地盤の改良材等の固化剤に採択された従来技術であるセメント類や生石灰では、処理物に対して高いアルカリ性を示すことから、その処理環境にアルカリ性成分の汚染を発生させている欠点が指摘されている。それだけに、二水石膏単品を主原料として調製される水分吸着体を土壌・地盤改良材等に採択するときは、高アルカリ性を示さない中性の土壌・地盤改良材としての製品の調製が可能となると判断される。
【0014】
また、2項の半水石膏主成分の中性固化剤が水と接触したときの再泥化を防止できるかに対しては、半水石膏を主成分とする中性固化剤は水と接触したとき、この半水石膏は再泥化を起こす傾向があり、土壌・地盤に対する土壌・地盤改良材として半水石膏を選ぶときは、半水石膏の再泥化が問題点として残されている。したがって、半水石膏単品からなる半水石膏の粉末体単品を土壌・地盤改良材として採択は、再泥化の防止が施されていらず、さらに半水石膏単品では、作業環境での粉塵飛散が防止された固化剤からなる中性土壌・地盤改良材の提供は困難である。
【0015】
また一般に半水石膏は、水と接すると二水石膏となり硬化する傾向にある。さらに半水石膏が多量の水と接すると、ここに生成する二水石膏は0.21g/100mlの溶解度により溶ける方向にある。したがって、二水石膏を改質した半水石膏からなる土壌・地盤改良材は、中性の商品として仕上げることの可能性を有している材料であるが、半水石膏からなる土壌・地盤改良材は、再泥化を起こす傾向にある。したがって、半水石膏からなる水分吸着材を中性固化剤として採択するときには、中性であると共に、水との接触に際して再泥化が防止されている固化剤であることが重要である。
【0016】
さらにまた、3項の粉状半水石膏からなる中性固化剤を取り扱いやすい顆粒体で提供できるかに対しては、汎用されている固化剤であるセメント類でも、生石灰系固化剤でも粉状体である。これらの粉状体からなる土壌・地盤改良材では、作業現場での粉塵飛散を伴うことから作業環境として決して良好な状況を作り出すことはできない。2項で示したように、本来半水石膏からなる中性固化剤も粉末体である。したがって、半水石膏を十分な水分吸着機能を発揮できる粉顆粒体として仕上げられていることは、良好な作業環境を確保する上からも大変好ましい。
【0017】
しかるに、半水石膏を主原料とする中性固化処理材は、一般に粉粒体である。また半水石膏を顆粒化するために、被覆材ないしはバインダーで被覆ないしは凝結しようとする時、一般的な被覆材ないしはバインダーは、機能性を発揮するため水を伴っている。したがって被覆材ないしはバインダーに伴われる水が、被覆ないしは凝結しようとする半水石膏に採択しようとすると、この被覆材ないしはバインダーに必要な水が、半水石膏を二水石膏に二水化させてしまい、半水石膏を水分の十分な吸着機能を残した半水石膏のままで被覆ないしは凝結を実行することは到底実行できない。
【0018】
したがって本発明において再泥化を防止せしめる工夫として、本発明の水分吸着材では、本発明の半水石膏からなる水分吸着材の原材料である二水石膏のプレ粉末体の段階で、二水石膏粒子を予め被覆・凝結せしめて0.05ないしは7mmφにある粉顆粒体に調製しておく工夫が大切であると考えた。その工夫として本発明では、二水石膏粒子の凝固・凝結を可能ならしめるため、水の介在を介して被覆・バインダー効果を発揮する被覆・凝結剤を採択して、本発明の主原料である二水石膏を予め被覆・造粒して凝固・凝結せしめた含水の粉顆粒状処理物を調製しておき、次いでこの被覆・造粒されて凝固・凝結されている含水の粉顆粒状処理物に調製されている二水石膏を加熱処理して脱水された半水石膏からなる無水粉顆粒体に改質する技術を提案している。
【0019】
しかし、二水石膏粒子を予め被覆・凝結しようとする被覆材ないしはバインダーは、一般に水を介したアルカリ性の物質、例えばセメント類や水ガラスであることから、これらの被覆材ないしはバインダーで被覆・凝結された二水石膏は、アルカリ性を示し、本発明の問題点の一つである中性ないしは低アルカリの固化剤を調製するとする問題点を解消していない。したがって本発明では、二水石膏粒子に予め被覆・凝結を施し、養生を行い粉顆粒体に調製した二水石膏からなるアルカリ性サイドにある含水粉顆粒状処理物に対して、pH調整剤を含侵・浸透せしめて、粉顆粒体状態にある含水粉顆粒状処理物におけるpH値を予め6ないしは8.6の範囲に調製しておくことを試みた。
【0020】
したがって本発明においては、予め調製された含水の粉顆粒状処理体に対して、予め選択されたアンモニア、ナトリウム、カリウム、アルミニウムないしは鉄の硫酸塩の群よりより選ばれる単独ないし2種の組み合わせの化合物からなるpH調整剤を採択して、含水粉顆粒状尾処理物に混和接触せしめてpH値を少なくとも6ないしは8.6に調整しておいてから、二水石膏を半水石膏に改質する加熱脱水処理の施しを試みている。
【0021】
さらに、本発明の無機質の被覆材ないしはバインダーにより被覆・凝結された二水石膏を半水石膏に加熱脱水処理を行った水分吸着材は、少なくとも半水石膏単品の吸水率は確保していることは当然である。さらには、本発明の水分吸着体は、この半水石膏単品の吸水率より高率の吸水率を示すことが好ましい。そのためにも、石膏を主原料とする水分吸着材に対して、半水石膏自身の吸水率約18%を確保して、さらに半水石膏が粉顆粒化されたことによる、その形成された粉顆粒体の隙間で形成される細孔も水の吸着隙間面として活用することにより、本発明の吸着体の吸水率をさらに向上せしめることに期待される、
【0022】
本発明では、水分等の吸着機能を有する材料・素材類、特に安価に入手可能な材料・素材類を併配合することにより生じる効果に期待している。そのため本発明では、本発明に好適な吸着材を吸着補助剤として採択した。この吸着補助剤としては、可燃性ゴミ・廃棄物類、下水汚泥もしくは可燃燃料である石炭を焼却して有害な水溶出性重金属類を共存している焼却灰類、高炉スラグないしはセメント類からなるカルシヤシリケート類、木質・竹類・石炭を乾留処理した炭・灰類、または表面積100m/g以上にある炭、活性炭類、非晶質シリカ、珪藻土、粘土類、活性ケイ酸塩、活性ケイ酸、活性アルミナもしくはゼオライトからなる吸着性担持体の群より選ばれる単独ないし2種以上の組み合わせからなるシリケート類ないしは炭類を吸着補助剤として選ぶことができる。
【0023】
当然であるが、有害な水溶出性重金属類を共存しているシリケート類等からなる吸着補助剤を無公害型の吸着補助剤に改質してから、本発明の二水石膏と併配合して無公害型のシリケート類からなる吸着補助剤によりプレ粉末体を調製する必要がある。したがって本発明では、シリケート類等に共存している有害な水溶出性重金属類をまず無公害型に開始するために、後述する本発明者等により開示されている有害な水溶出性重金属類を不溶化して固定化する技術を駆使して、無公害型吸着補助剤によるプレ粉末体を調製して、本発明の水分吸着材を廃棄物類の再利用技術として活用することは好ましい。
【0024】
水分の吸着性を保有する吸着剤としては、吸着面である比表面積の大きいシリケート類ないしは炭類も本来一般に粉末体であることから、その取扱いには問題がある。したがって、吸着補助剤においても、取り扱いやすい粉顆粒体に仕上げられていることが好ましい。したがって、二水石膏と併配合された吸着補助剤からなるプレ粉末体を予め調製しておいて、このプレ粉末体に対して、二水石膏単品の場合と同様にして、予め無機質の被覆材ないしはバインダーにより被覆・凝結されていることが好ましい。
【0025】
勿論、ここの選ばれた吸着補助剤であるシリケート類には、無機質の被覆材ないしはバインダー効果を発揮する比表面積の大きいシリケート類もあることから、ここの選ばれた吸着補助剤は、無機質の被覆材ないしはバインダー効果を発揮する本発明の被覆・凝結剤として、再泥化を防止する防止剤としての役割を兼務することもできる。
【0026】
しかるに、本発明で採択した吸着補助剤には、可燃性ゴミ・廃棄物類、下水汚泥もしくは可燃燃料である石炭を焼却して有害な水溶出性重金属類を共存している焼却灰類が含まれている。即ち、本発明の水分吸着体の系内に有害な水溶出性重金属類を持ち込むことにある。当然、有害な水溶出性重金属類としては廃石膏ボードに共存していて、廃石膏ボードより回収された二水石膏には、フッ素が共存している。いずれにしても系内に有害な水溶出性重金属類を持ち込まれる条件がある以上、ここに共存する有害な水溶出性重金属類を不溶化して固定化された無公害型吸着補助剤に予め改質しておく処理技術が併用されて重要である。
【0027】
ここに共存する有害な水溶出性重金属類を不溶化して固定化しておく技術としては、本発明者等が既に開示している下記に示す出願特許等に開示されており、その開示技術を本発明の背景技術として利用することができる。
【特許文献1】 特開平11−263661号公報
【特許文献2】 特開2005−097069号公報
【特許文献3】 特開2006−247645号公報
【0028】
本発明者等は、既に開示している出願特許[特許文献1][特許文献2]ならびに[特許文献3]等においては、廃棄物類の汚泥・底質、汚染土壌、さらには熱根歴を受けているシリケート等を主成分とする灰類等の素材類には、フッ素を含む有害な重金属類を共存していることから、これらの廃棄物類を有効に再資源化資材として活用するためには、予めこれらの素材類に共存する有害な重金属類を固定化して不溶化せしめておく必要がある。この有害な重金属類を固定化して不溶化せしめる固定化技術は、上記の本発明者等の出願特許に既に開示されている。したがって、今回の二水石膏ならびに吸着補助剤に共存する有害な重金属類を固定化して不溶化せしめる固定化技術は、以上の本発明者等の出願特許に開示されている技術の線上で応用することができる。
【0029】
本発明で採択する素材類である二水石膏ならびに吸着補助剤においても、共存する水可溶性重金属類の有害元素群は同一である。したがって、本発明においても、水溶出性重金属類の有害元素群を下記に示す4グループに分類した。そして、それぞれのグループに分類される元素群毎に対応して、それぞれの元素群を水不溶性に固定化して不溶化せしめる作用機能を発揮する技術を求め、これらの作用機能を一つの固定化剤に併せて配合されていることが重要である。
【0030】
したがって本発明において本発明の半水石膏を主成分とする無水粉顆粒体からなる水分吸着体を安全で安定した製品として、各用途先に提供するも場合においても、本発明者等は、以上の有害な水溶出性のクロム、カドミニウム、砒素、水銀、鉛、セレン、ホウ素およびフッ素、さらにナトリウムを加えた元素群(以下、これらの元素群を「有害元素群」と略記して示す)を一種類の固定化剤に複合化せしめておく単一の固定化剤による単一の固定化処理を可能とする固定化剤の開発は重要であると判断した。
【0031】
しかるに、ここで処理対象となるクロム、カドミニウム、砒素、水銀、鉛、セレン、ホウ素およびフッ素、さらにナトリウムを加えた有害元素群を同一のカテゴリーの中で一括して処理することは、これまでの科学の知識・経験等では不可能である。したがって本発明者等は、これらの有害元素群を性状別にグループ分類し、分類されたグループ別の有害元素群に対応する個々の作用機構からなる処理技術を検討し、ここに示された個々の処理技術を同一の固定化剤中に複合化せしめて機能させるよう開発を行った。
【0032】
その結果、本発明者等は、まず固定化処理対象の素材に共存している水溶出性重金属類の有害元素群を下記に示す四つのグループに分類して、これらの有害元素群を水不溶性に固定化する技術を課題とした。
1.塩基性イオン成分であるカドミニウム、砒素、水銀、鉛、セレン、ナトリウム。
2.オキソ酸を形成するクロム、ヒ素。
3.半金属元素に属するホウ素。
4.ハロゲン酸として活動するフッ素。
【0033】
各グループに分類される元素群に対応する固定化反応機構としては、下記に示す常温における各固定化反応により各元素群における水不溶性鉱物ないしは化合物の形成を可能にしている。
1.塩基性イオン成分であるカドミニウム、砒素、水銀、鉛、セレン、ナトリウムのグループ元素群に対しては、ゼオライトまたはオライオト前駆体鉱物の形成。
2.オキソ酸を形成するクロムのグループ元素群に対しては、鉄塩鉱物の形成。
3.半金属元素に属するホウ素のグループ元素群に対しては、ホウケイ酸のカルシウム塩の形成。
4.ハロゲン酸として活動するフッ素グループ元素群に対しては、活性ケイ酸を伴うフッ素燐灰石であるアパタイト鉱物の形成。
【0034】
その一の固定化機能は、ゼオライトないしはオライオト前駆鉱物の形成が必要であり、この鉱物の形成には易反応性のケイ酸アルミニウムとナトリウムイオンの存在が必須である。易反応性のケイ酸アルミニウムは、本発明で採択する無機系バインダーとなるセメント類ならびに吸着補助剤となる灰類や粘土類に求めることができる。また、ナトリウムイオン群は、硫酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム等に求めることができる。ここでゼオライトないしはゼオライオト前駆鉱物を形成するに必要な成分に水が介在して、その周辺に共存している塩基性イオン成分であるカドミニウム、砒素、水銀、鉛、セレン等を取り込んだ反応により、水不溶性鉱物であるゼオライトないしはオライオト前駆体を形成して前記の塩基性成分を固定化することができる。
【0035】
その二の固定化機能であるクロム鉄鉱石の形成には、鉄イオン、必要に応じてアルミニウムイオンの存在が必須である。鉄ならびにアルミニウムイオンは、セメント改質組成物に配合される硫酸鉄やリン酸鉄等で補うことが充分に可能である。勿論、鉄イオンの存在は、砒素等の塩基性成分の不溶・固定化に有効であることは知られている。本発明の素材類にクロムとヒ素がともに共存するときは、鉄イオンの存在は特に有効である。
【0036】
その三の作用機能であるホウケイ酸のカルシウム塩の形成には、セメントに含まれている易反応性のケイ酸塩ならびにカルシヤを選ぶことができる。また、積極的には、セメント改質組成物として構成配合せしめるナトリウム化合物として選らばれるケイ酸ナトリウム等を対象構成成分とすることができる。特に、系内でホウ素成分の共存が多い時には、積極的にケイ酸ナトリウムを配合しておくことが有効である。
【0037】
また、その四の作用お機能であるフッ素燐灰石(フッ素リン酸カルシウム)のアパタイト鉱物の形成には、その構成成分であるカルシウム塩ならびに活性ケイ酸塩に関しては、基本的にセメント類にその存在を求めることができる。またリン酸成分に関しては、本発明によれば、セメント改質組成物として構成配合せしめる酸性塩類であるリン酸鉄、リン酸アルミニウムないしはリン酸亜鉛等の群より選ぶことができる。ただ、活性ケイ酸としては、水ガラス等の活性ケイ酸ナトリウムを選ぶこともできる。
【0038】
本発明においては、粉末二水石膏単品、ないしは粉末二水石膏に粉末吸着素材類を吸着補助剤として併配合した粉末体に対して、水硬性機能ならびに結着機能を発揮する水硬性組成物からなる被覆・凝結剤を加えて、予め含水の粉顆粒体を形成せしめる。この時併配合する吸着補助剤は、一般に有害な水可溶性重金属類を共存している。したがって有害な水可溶性重金属類を共存している吸着補助剤を併配合するときは、共存する水可溶性重金属類を不溶化せしめるために固定化できる固定剤を加えて、予め共存する水可溶性重金属類を不溶化せしめた無公害型吸着補助剤に調製しておくこと必要がある。
【0039】
さらに本発明において重要なことは、本発明の水分吸着体の水分吸着機構が中性で発揮される必要がある。したがって本発明では、粉末状二水石膏の単品、ないしは粉末状二水石膏に対して予め吸着補助剤に共存する有害な水溶出性重金属類を不溶化せしめる固定化剤を所定量加えて混和されている二水石膏と吸着補助剤と固定化剤からなる無公害型吸着補助剤に対して、所定量の被覆・凝結剤を加えて、三者が併配合されて均質に混和調製されている三者プレ粉末体を予め調製し、水を加えて均質に混和し、粉末状の二水石膏と無公害型吸着補助剤を被覆・凝結剤で被覆・凝結せしめた含水の無公害型粉顆粒体を予め調製しておくことが重要である。
【0040】
本発明において重要な処理工程は、原材料である二水石膏を主成分として調製された含水粉顆粒体を100ないしは240℃の範囲の脱水温度雰囲気中に10分間以上暴露して、二水石膏が半水石膏に改質して無水の粉顆粒体を調製する工程にある。しかし、以上で示した素材類に共存する水可溶性重金属類の固定化反応機構は、本発明の含水粉顆粒状処理物において、少なくとも常温で予め進行せしめて完結しておいてから、上記の脱水温度雰囲気中での二水石膏の半水石膏への改質を実行することが重要である。
【0041】
さらに、本発明では廃石膏ボードより回収した二水石膏にはフッ素を共存していることから、この共存しているフッ素を除去ないしは水不溶性に固定化することが必須である。先にも示した通り、本発明者等が既に開示している出願特許に開示の技術により、常温にて水を介して固定化剤を作用せしめて、共存しているフッ素の固定化が可能である技術を示している。
【0042】
しかし、二水石膏を半水石膏に加熱脱水して開始する条件下で、共存しているフッ素を除去できる条件を見出している。即ち、本発明の処理方法により調製された、含水粉顆粒状処理物をpH値で7以下の弱い酸性サイドを確保して、少なくとも100℃以上に加熱するおきは、二水石膏に共存していたフッ素は揮散除去され、同時に二水石膏は半水石膏に改質する条件を把握した。したがって本発明においては、微であるが酸性サイドにある含水粉顆粒状処理物において、二水石膏を半水石膏に脱水処理する加熱処理する条件で、同時に共存しているフッ素を揮散除去することが可能となる。
【0043】
本発明の水分吸着体を中性固化処理材として採用するとき、接触処理対象とする含水の素材類である土壌・地盤・汚泥等に対して、本発明の水分吸着体が有する水分吸着機能と水硬性機能が発揮されて、それぞれ汚染土壌・地盤の修復材、土壌・地盤の改良材、汚泥類の改質・水分調整材、建設発生含水土の再資源化資材ならびに路床・堤類の基盤造成材等として活用されることから、従来からこの分野で広く汎用されてきたセメント類ならびに生石灰系固化剤等に変わり、しかも中性での水分吸着機能ならびに水硬性機能を発揮して、しかも廃棄物類の再利用による効果により、価格の面でも十分に評価される固化処理材として挙げることができる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0044】
本発明において、本発明が解決の対象としている課題は、廃棄物類でもある二水石膏ないしは二水石膏に併配合されている吸着補助剤からなるプレ粉末体、特に有害な重金属類を共存する廃棄物類である可燃性ゴミ・廃棄物類、下水汚泥もしくは可燃燃料である石炭を焼却して発生する焼却灰類からなる粉末体を吸着補助剤として、本発明における技術を駆使して、低価格で安全で無公害型の再資源化資材に改質して、汚染土壌・地盤の修復材、土壌・地盤の改良材、汚泥類の改質・水分調整材、建設発生含水土の再資源化材ならびに路床・堤類の基盤造成材が活用される分野に向けて、再資源化資材を提供して、環境問題である資源のリサイクルを可能にして、社会に貢献することにある。
【0045】
したがって本発明の水分吸着体における課題を、本発明の水分吸着体と比較対象となる従来技術であるセメント類や生石灰系固化剤、また従来の半水石膏からなる中性固化剤等と比較して求められる課題を示すと、下記に示す六つの課題となる。
1.環境に対し低アルカリ性が確保されていること。
2.フッ素を含む重金属類が固定化されていること。
3.水分吸収率が30%以上に確保されていること。
4.処理対象素材の水分と接して再泥化しないこと。
5.製品が取り扱いやすい無水粉顆粒体であること。
6.自然界放置にも有害硫化水素を発生しないこと。
【0046】
本発明においては、廃棄物類である廃石膏ボードから回収されたフッ素を共存する粉末状二水石膏、ならびに焼却灰等の産業廃棄物からなる有害重金属類を共存するシリケート類からなるプレ粉末体を主原料として、アルカリ性の被覆・凝結剤により含水の粉顆粒体を調製し、この含水の粉顆粒体の状態で、pH値を6ないしは8.6の中性に予め調製した後、所定の加熱脱水処理により二水石膏を半水石膏に改質する製造法を採択することにより、以上の六つの課題を同時に解消する水分吸着体の提供を可能にした。
【0047】
1の課題である「環境に対し低アルカリ性が確保されていること」としては、本発明の水分吸着体に対応する従来技術して対象となるセメント類や石灰系固化剤が、いずれもpH値で10以上の高いアルカリ性を示すことから、生活環境の中でこれらの高アルカリ性のセメント類や石灰系固化剤が使用されると、その環境に高アルカリ性成分が汚染し、環境における生態系を悪化させる弊害等が生じる。こうした状況から、生活環境に弊害を及ぼさないpH値が10未満の固化剤が求められている。
【0048】
2の課題である「フッ素を含む重金属類が固定化されていること」としては、本発明の主原料である廃石膏より回収した二水石膏は、水可溶性フッ素を共存しており、また本発明で採択する吸着補助剤である廃棄物類も有害な重金属類を共存しており、さらに本発明の被覆・凝結剤であるセメント類は、六価クロムを共存しており、これら有害な重金属類共存の材料を生活環境の中で採択することは、環境法である廃掃法の立場からも許されることではない。したがって、本発明の水分吸着体においては、これらの有害な重金属類は、環境基準値の範囲内に固定化されて不溶化されていることが必須である。
【0049】
3の課題である「水分吸収率が20%以上に確保されていること」としては、半水石膏を固化剤に採択する基本作用機能として、処理対象素材に共存する水分を吸着してくれることが重要な役目である。一般に半水石膏は、理論料として18.6%の水分を吸収して二水石膏を形成する。したがって本発明の水分吸着体は、半水石膏が二水石膏を形成するために必要な水の量と本発明の水分吸着体が吸着できる水の量との合計で少なくとも20%以上の水分吸収率が確保できる機能を有していること望ましい。
【0050】
4の課題である「処理対象素材の水分と接して再泥化しないこと」としては、半水石膏を中性固化剤として採択しようとするとき、商品となっている半水石膏を処理対象の含水の素材類と接触すると、確かにこの商品の半水石膏は、水を吸収して二水石膏を形成して、処理対象の含水素材類の水分を吸収するが、このとき生成した二水石膏は、水中で再泥化して、固化剤としての機能を半減させてしまう傾向がある。したがって、本発明の水分吸着体は、水と接しても再泥化しない工夫が施されていることが、中性固化剤として機能を発揮させる上で重要である。
【0051】
5の課題である「製品が取り扱いやすい無水粉顆粒体であること」としては、有害な水溶出性重金属類を固定化し、低アルカリ性を確保する処理と相まって二水石膏を、水硬性機能を発揮する水硬性組成物からなる被覆・凝結剤で処理して、加熱脱水を行って調製される水分吸着体は、取り扱いやすい無水粉顆粒体として調製することができる。
【0052】
6の課題である「自然界放置にも有害硫化水素を発生しないこと」としては、これまで廃石膏ボードが自然界に放置されてきた中で、自然界における微生物類により、石膏の硫酸根が還元分化して硫化水素を発生して、社会問題を起こしてきた実績があり、先にも示したように、環境省では、その取扱いに注意を促している。そのためには、石膏の基で微生物の活度が活性化されないように、中性領域を外したアルカリサイドが確保されていることが重要である。したがって本発明の水分吸着体は、低アルカリであることとともに、水分吸着体のpH値は8ないしは10の範囲にあることが好ましい。いずれにしても、本発明の水分吸着体が、少なくとも以上で示した五つの課題を同時に解消して、利用分野に低価格で安全に提供できる技術として構築されることが重要である。
【課題を解決するための手段】
【0053】
本発明によれば、粉末状二水石膏ならびに被覆・凝結剤からなる二者プレ粉末体に水を加えて機能させて含水粉顆粒体を調製する反応工程、該含水粉顆粒体を養生し、次いでpH調整剤を作用させて含水粉顆粒状処理物を調製する養生・pH調整工程、該含水粉顆粒状処理物を脱水温度雰囲気中に暴露して二水石膏を半水石膏に改質して無水粉顆粒体を調製する半水改質工程の3工程で構成される水分吸着体の製造法において;
上記の反応工程が、粉末状二水石膏100質量部に対して、水硬性機能を発揮する水硬性組成物からなる被覆・凝結剤を5ないしは40質量部の量割合で二者が併配合されて均質に混和調製されている二者プレ粉末体100質量部に対して、水を20ないしは50質量部の量割合で加えて均質に混和し、粉末状二水石膏を被覆・凝結剤で被覆・凝結せしめて0.05ないしは7mmφにある含水粉顆粒体に調製する工程であり;
次いで上記の養生・pH調整工程が、上記で調製した含水粉顆粒状体を常温ないしは100℃の温度雰囲気内において、少なくとも10分以上放置養生して、二水石膏を主成分とする含水粉顆粒状処理物に一旦調製し、該含水粉顆粒状処理物100質量部に対して、pH調整剤を1ないしは20質量部の量割合で混和接触せしめて、pH値が6ないしは8.6の範囲が確保されている含水粉顆粒状処理物に調製する工程であり;
次いで上記の半水改質工程が、上記の含水粉顆粒状処理物を100ないしは240℃、好適には150ないしは180℃の範囲の脱水温度雰囲気中に少なくとも30分間暴露して、被覆・凝結剤で被覆・凝結されて粉顆粒体化している二水石膏を半水石膏に改質して無水の粉顆粒体に調製し、必要に応じて該無水粉顆粒体に粉砕・分級を施して、被覆・凝結剤で被覆・凝結されて粉顆粒体化されている半水石膏を主成分とする無水粉顆粒体で構成されている水分吸着体に調製する工程であり;
上記の3工程で調製される無水粉顆粒体からなる水分吸着体が、吸水率が30%以上にあり、水と接触したとき非再泥化状態にあり、pH値が6ないしは8.6の範囲にあり、共存する有害水溶出性重金属類が環境基準値以下の範囲内に固定化されて無公害型にある四つの性状特性を同時に兼ね備えている水分吸着体の製造法が提供される。
【0054】
本発明によれば、前記の粉末状二水石膏が、廃石膏ボードよりリサイクル処理により回収された有害なフッ素を共存している粉末状二水石膏である水分吸着体の製造法が提供される。
【0055】
本発明によれば、前記の被覆・凝結剤が、水硬性機能を発揮するセメント類、高炉スラグ、アルミノケイ酸カルシウムないしケイ酸ナトリウムの群より選ばれる単独ないし2種の組み合わせの化合物ないし組成物である水分吸着体の製造法が提供される。
【0056】
本発明によれば、前記のpH調整剤が、アンモニア、ナトリウム、カリウム、アルミニウムないしは鉄の硫酸塩の群よりより選ばれる単独ないし2種の組み合わせの化合物ないしは該化合物の25ないしは55%濃度の水溶液からなるpH調整剤である水分吸着体の製造法が提供される。
【0057】
本発明によれば、前記の反応工程が、粉末状二水石膏100質量部に対して、予め吸着補助剤の100質量部に対して吸着補助剤に共存する有害な水溶出性重金属類を不溶化せしめる固定化剤を5ないしは25質量部の量割合で混和されている吸着補助剤と固定化剤からなる無公害型吸着補助剤を5ないしは100質量部、ならびに水硬性機能を発揮する水硬性組成物からなる被覆・凝結剤を5ないしは40質量部の量割合で三者が併配合されて均質に混和調製されている三者プレ粉末体100質量部に対して、水を20ないしは50質量部の量割合で加えて均質に混和し、粉末状の二水石膏と無公害型吸着補助剤を被覆・凝結剤で被覆・凝結せしめて0.05ないしは7mmφにある含水粉顆粒体に調製する工程である水分吸着体の製造法が提供される。
【0058】
本発明によれば、前記の吸着補助剤が、可燃性ゴミ・廃棄物類、下水汚泥もしくは可燃燃料である石炭を焼却して有害な水溶出性重金属類を共存している焼却灰類からなるシリケート類、高炉スラグないしはセメント類からなるシリケート類、木質・竹類・石炭を乾留処理した炭・灰類からなる炭類、または表面積100m/g以上にある炭、活性炭類、非晶質シリカ、珪藻土、粘土類、活性ケイ酸塩、活性ケイ酸、活性アルミナもしくはゼオライトからなる吸着性担持類の群より選ばれる単独ないし2種以上の組み合わせからなる吸着性を発揮できる素材類からなる吸着補助剤である水分吸着体の製造法が提供される。
【0059】
本発明によれば、前記の固定化剤が、酸化物基準で表して酸化ナトリウム、カルシヤ、マグネシヤ、アルミナ、酸化鉄、シリカ、硫酸根ないしはリン酸根の群よりより選ばれる単独ないしは2種の組み合わせからなる化合物もしくは組成物により構成されており、該固定化剤における構成成分の配合割合が、アルミナ、酸化鉄ならびにシリカで構成されるケイ酸塩100質量部に対して、硫黄、ケイ素、リン、アルミニウムないしは鉄のオキシ酸のナトリウム塩を1ないしは20質量部、カルシヤまたはカルシヤの水酸化物ないしはマグネシヤまたはマグネシヤの水酸化物を100ないしは200質量部で構成されている固定化剤である水分吸着体の製造法が提供される。
【0060】
本発明によれば、前記製造方法により調製された二水石膏を半水石膏に改質せしめて無水粉顆粒体に調製される水分吸着体が、吸水率が30%以上にあり、水と接触した時非再泥化状態にあり、pH値が6ないしは8.6の範囲にあり、共存する有害水溶出性重金属類が環境基準値以下の範囲内に固定化されて無公害型にある四つの性状特性を同時に兼ね備えており、該無水粉顆粒体を処理接触対象となる含水素材類に処理・接触せしめる時、上記の性状特性と共に水硬性機能が発揮されて、汚染土壌・地盤の修復・改良材、土壌・地盤の改良材、汚泥類の改質・水分調整材、建設発生含水土の再資源化資材ならびに路床・堤類の基盤造成材としての活用が可能である水分吸着体が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0061】
本発明者等は、本発明が技術構築しようとしている水分吸着体が抱えている六つの課題に着目して、この六つの課題を同時に解消・改善する新規で低価格で安全な無公害型の水分吸着体の技術開発を行った。特に本発明者等は、廃石膏ボードより回収された粉状の二水石膏を主原料粉末にして、さらに必要に応じて原材料等に共存する重金属類を固定化して不溶化せしめた無公害型吸着補助剤を二水石膏に併配合した混合粉末を主原料粉末にして、該主原料粉末に被覆・凝結剤を加えて調製されるプレ粉末体に対して水を加えてプレ粉末体の粒子表面を予め被覆・凝結剤で被覆・凝結せしめた含水の粉顆粒体を調製し、次いで含水の粉顆粒体を所定の温度雰囲気内で養生した含水の粉顆粒状処理物のpH値を予め6ないしは8.6の範囲に調製して、次いで該二水石膏を主成分とする含水の粉顆粒状処理物を100ないしは240℃の範囲の脱水温度雰囲気中に暴露して、二水石膏を半水石膏に改質せしめて調製される無公害型で無水の粉顆粒体水からなる水分吸着体に関して、本発明の六つの課題を同時に解消・改善するために鋭意技術開発を行って、本発明に至った。
【0062】
その結果本発明者等は、粉末状二水石膏ならびに被覆・凝結剤からなる二者プレ粉末体、ないしは二者プレ粉末体にさらに無公害型吸着補助剤を加えた三者プレ粉末体に水を加えて機能させて含水粉顆粒体を調製する反応工程、該含水粉顆粒体を養生した後pH調整剤を作用させて含水粉顆粒状処理物を調製する養生・pH調整工程、該含水粉顆粒状処理物を脱水温度雰囲気中に暴露して二水石膏を半水石膏に改質して無水の粉顆粒体を調製する半水改質工程の3工程で構成される水分吸着体の製造法;さらにここに製造された無水粉顆粒体からなる水分吸着体において、水分吸着率が30%以上であり、無水粉顆粒体が水と接触したとき非再泥化状態が確保されており、pH値が6ないしは8.6の範囲にあり、共存する有害な水溶出性重金属類が環境基準値以下の範囲内に固定化されて無公害型にある四つの特性を同時に兼ね備えている水分吸着体を開発した。
以下に、本発明を実施するための最良の形態に関して説明する。
【0063】
[反応工程]
本発明の水分吸着体の製造法における反応工程は、粉末状二水石膏ならびに被覆・凝結剤からなる二者プレ粉末体、ないしは二者プレ粉末体にさらに採択する吸着補助剤に共存する有害な水溶出性重金属類を不溶化せしめる固定化剤の機能により処理される無公害型吸着補助剤を加えた三者プレ粉末体に水を加えて機能・反応させて含水粉顆粒体を予め調製する工程である。
【0064】
本発明の水分吸着体は、粉末状二水石膏ないしは粉末状二水石膏に吸着補助剤、および被覆・凝結剤か併配合されたプレ粉末体を原料としている。このプレ粉末体を構成している本発明の主原料となる二水石膏は、天然産の硫酸カルシウム・2水和物である天然石膏、また排煙脱硫により回収された硫酸カルシウム・2水和物、リン鉱石を硫酸処理してリン酸を製造する際に副生する硫酸カルシウム・2水和物、イルメナイト鉱石を硫酸処理して酸化チタンを製造する際に副生する硫酸カルシウム・2水和物である副生石膏、さらに廃石膏ボード等を粉砕して紙を除去するリサイクル処理の施されている硫酸カルシウム・2水和物等からなる廃石膏類のいずれの二水石膏、さらに天然産の石膏も本発明の原材料となる二水石膏として採択することができる。
【0065】
本発明のプレ粉末体においては、本発明のプレ粉末体を構成して二水石膏に併配合されて吸着機能を有して水分吸着性を補助する立場から、各種の吸着性素材類を吸着補助剤として選ぶことができる。本発明のプレ粉末体を構成する吸着補助剤としては、一般に可燃性ゴミ・廃棄物類、下水汚泥もしくは可燃燃料である石炭を焼却して有害な水溶出性重金属類を共存している焼却灰類からなるシリケート類、高炉スラグないしはセメント類からなるシリケート類、木質・竹類・石炭を乾留処理した炭・灰類からなる炭類、または表面積100m/g以上にある炭、活性炭類、非晶質シリカ、珪藻土、粘土類、活性ケイ酸塩、活性ケイ酸、活性アルミナもしくはゼオライトからなる吸着性担持類の群より選ばれる単独ないし2種以上の組み合わせからなる吸着性を発揮できる素材類を吸着補助剤として好適に挙げることができる。
【0066】
しかし、可燃性ゴミ・廃棄物類、下水汚泥もしくは可燃燃料である石炭等を焼却して回収される焼却灰類は、一般に有害な水溶出性重金属類を共存している。したがって、これらの有害な水溶出性重金属類を共存している焼却灰類を再資源化資材として活用しようとするときは、予め共存する有害な水溶出性重金属類を生活環境に対して不溶性状態に固定化しておく必要がある。したがって本発明では、有害な水溶出性重金属類を共存している素材類を吸着補助剤を選ぶときは、特定される固定化剤を採択して、予め熱履歴を受けているシリケート類の焼却灰類に共存する有害な水溶出性重金属類を水不溶性に固定化する処理条件を与えて、本発明の水分吸着体を調製している。
【0067】
これらの有害な水溶出性重金属類を共存している吸着補助剤を、本発明のプレ粉末体として採択するには、共存している有害な水溶出性重金属類を不溶化して固定化し、無公害型に改質されている無公害型吸着補助剤である必要がある。したがって本発明では、本発明者等の発明技術である出願特許[特許文献1][特許文献2]および[特許文献3]等にて既に開示されている水溶出性重金属類を不溶化せしめる固定化技術を活用することができる。本発明者等の出願特許においては、常温において水を介して水溶出性重金属類を不溶化せしめる技術として、[特許文献1]においては「水硬性シリカバインダー」として、[特許文献2]においては「アルカリ系硬化剤」として、また[特許文献3]においては「改質処理剤」として、本発明の固定化剤に係わる技術を支持する基本的な固定化技術ならびに反応機構が、実施例とともに開示されている。
【0068】
いずれの本発明者等の出願特許における固定化剤(バインダー、硬化剤、改質処理剤)は、表現されている具体的な化合物ないしは組成物の表現方法は異なるが、基本的にここに示されている固定化剤は、酸化物基準であらわして、酸化ナトリウム、カルシヤ、マグネシヤ、アルミナ、酸化鉄、シリカ、硫酸根ないしはリン酸根の群よりより選ばれる単独ないし2種の組み合わせからなる化合物ないしは組成物の所定割合により構成されている固定化剤である。以上の本発明者らによる出願特許である[特許文献1][特許文献2]ならびに[特許文献3]において開示されている固定化剤(バインダー、硬化剤、改質処理剤)は、本発明の固定化剤としていずれも同様に採択することができる。
【0069】
本発明の固定化剤における水を介して水溶出性重金属類を不溶化せしめる固定化機構(反応機構)は、それぞれの水溶出性重金属類に対応して、所定の素材類(本発明ではプレ粉末体)に対して所定量の固定化剤とともに水を介して配合混和し、次いで少なくとも常温で養生して、それぞれの水溶出性重金属類に対応した水不溶性鉱物を形成せしめ、素材類に共存する水溶出性重金属類を不溶化して固定化が完成される固定化技術が開示されている。したがって、本発明においても水溶出性重金属類を不溶化して固定化せしめる技術は、本発明者等の既存の出願特許における固定化剤(バインダー、硬化剤、改質処理剤)と同一であって構わない。
【0070】
本発明のプレ粉末体に対して加えられる固定化剤の所定量は、プレ粉末体を構成している二水石膏ならびに吸着補助剤に共存する水溶出性重金属類の種類や量により異なるが、一般には、プレ粉末体100質量部に対して、固定化剤25質量部を上限とする範囲内で加えて、さらに水を25ないしは40質量部を加えて混和し、常温で少なくとも3時間放置養生して、プレ粉末体に共存している水溶出性重金属類を水不溶性鉱物を形成せしめて固定化することができる。
【0071】
但し、本発明においては、従来の本発明者らの出願特許に開示されている水溶出性重金属類の不溶化による固定化技術と異なる点は、上記の予め被覆・凝結剤と水を介して調製された含水粉顆粒体において、主原料である二水石膏を半水石膏に改質調製するために100ないしは240℃の範囲の脱水温度雰囲気中に暴露する条件に曝される点にある。本発明においては、100ないしは240℃の範囲の脱水温度雰囲気中に10分間以上暴露されても、ここで回収された半水石膏を主成分とする無水粉顆粒体からなる水分吸着体においても、共存していた水溶出性重金属類が、好適に環境基準値以下の範囲に不溶化され固定化されている点にある。即ち本発明において、二水石膏を主成分とする粉顆粒体を調製する工程において、共存する水溶出性重金属類を不溶化して固定化され、次いで100ないしは240℃の範囲の脱水温度雰囲気中に暴露されても、ここに共存する水溶出性重金属類が不溶化して固定化されている状態に変化なく、水溶出性重金属類は所定温度に暴露されても水溶出性重金属類の固定化状態は確保されている。
【0072】
本発明の水分吸着体を調製するに際して予め調製される含水粉顆粒体は、粉末状二水石膏ならびに被覆・凝結剤からなる二者プレ粉末体、ないしは二者プレ粉末体にさらに無公害型吸着補助剤を加えた三者プレ粉末体に水を加えて機能させて予め調製することができる。この含水粉顆粒体の調製に際して、被覆・凝結剤がプレ粉末体に対して水を介して被覆・バインダー効果を発揮する役割は重要である。
【0073】
本発明で採択される被覆・凝結剤は、水硬性機能を発揮するセメント類、高炉スラグ、アルミノケイ酸カルシウムないしはケイ酸ナトリウムの群より選ばれる単独ないし2種の組み合わせの化合物ないしは水硬性組成物であることが好ましい。
【0074】
本発明の被覆・凝結剤に好適なセメント類は、一般に各種のカルシヤ含有鉱物からなる水硬性の組成物として構成される粉状体を総称することができる。代表的には古くから製造されてきたポルトランドセメントを挙げることができる。ポルトランドセメントは、JIS化(R5210)されて汎用されており、安価な無機質のセメンティング材、硬化剤、無機質処理剤として古くより広く市販され、多くの用途に提供されている。
【0075】
一般にセメントは、カルシヤ、シリカ、アルミナ、鉄成分等を主成分とする原材料を高温(最高温度1400℃)において焼結せしめて、主として水硬性のケイ酸三カルシウム、ケイ酸二カルシウム、カルシウムアルミネート、カルシウムアルミノフェライトおよび硫酸カルシウムからなるクリンカー鉱物を製造して、この焼結クリンカー鉱物を粉砕して、粉末体として製造されて市販されている。
【0076】
なお最近は、廃棄物類や都市ゴミを焼却したときに発生するシリケート系焼却灰を原料として製造されている「エコセメント」と呼ばれているセメント類も製造され、市販されている。本発明で処理対象となる粉状セメントには、このエコセメントを包含して扱うことができる。さらに一般にカルシヤ含有鉱物による水硬性の組成物である粉状セメントとしては、ポルトランドセメントの他に、高炉セメント、フライアッシュセメント、シリカセメント等の他に、混合セメント、特殊セメント(アルミナセメント、超速硬性セメント、コロイド状セメント、油井セメント、地熱セメント、膨潤セメント)、アルミン酸カルシウム等を好適に挙げることができる。勿論、セメントは一般に粉末製品として市販されているが、大型の土木、建設工事現場等で使用されるセメント類は、施工現場での水とセメント粉末との混和による煩雑な工程を省略することから、予め必要な水、ならびに必要に応じて骨材等を混和せしめたモルタル状のセメントを予め調整して施工現場に供給する場合もある。
【0077】
また粉状セメント製品は、アルカリ性のカルシヤ成分を原料として高温において焼結して製造していることから、このアルカリ成分からなる原材料を焼結せしめる焼成キルン炉のレンガとしては、高温におけるアルカリ性原材料の焼結に耐える耐火材であるレンガは、マグネシヤと酸化クロムを主成分とするマグクロレンガを採用している。したがって、マグクロレンガを耐火材として構築されているセメントの焼成キルン炉により製造されるセメントは、焼成キルン炉のマグクロレンガからなる耐火レンガとの接触摩耗により、セメント製品に有害なクロム元素の混入は避けられず、現在市販されているセメント製品には、有害な水可溶性の六価のクロムが混入している事実実態を避けることはできない。
【0078】
さらにまた、セメント製品は、カルシヤを60ないしは66質量%と多量に含有していることから、粉状セメント製品自身がアルカリ性であると共に、粉状セメント製品に水を加えて水硬させた所謂コンクリートの固化・結着体製品もpH値で11以上と高いアルカリ性を呈しており、水と接触するとアルカリ成分が溶出することから、生活環境に対する二次公害は避けられない。したがってセメント製品は、有害クロムの溶出問題と製品が高いアルカリ性を呈する点で二つの環境に対する大きな課題を抱えている。しかし、本発明の水分吸着体の製造法では、材料に共存する水溶出性重金属類に対応して、固定化剤を配合して、共存する水溶出性重金属類を不溶化せしめることができることから、共存するクロムは不溶化され問題はない。また実際に水分吸着材に配合される被覆・凝結剤に量割合は、二水石膏100質量部に対して、5ないし10質量部でありもmm代とならない。
【0079】
本発明の他の水硬性を発揮する被覆・凝結剤である高炉スラグは、鉄鋼業界の高炉製鋼より排出される水砕スラグの粉砕品であり、カルシヤとシリカとアルミナを主成分とする水硬性を発揮することができ、セメント類に併配合されることもある。またアルミノケイ酸カルシウムは、天然の粘土や合成品として製造される粉末体で、水硬性を発揮することができる、さらにまたケイ酸ナトリウムは、水ガラスとしてJIS化されており、シリカと酸化ナトリウムのモル割から代表的に、1号。2号、3号とあり、また液状態と粉状態とがあるが、本発明の被覆・凝結剤としては、いずれの形態・種類のケイ酸ナトリウムも採択することができる。
【0080】
なお本発明においては、本発明で採択される吸着補助剤、固定化剤ならびに被覆・凝結剤に選ばれる化合物ないしは組成物においては、同類の化合物ないしは組成物がそれぞれの吸着補助剤、固定化剤ならびに被覆・凝結剤に選ばれる場合がある。この時は、本発明の水分吸着材に求められる目的、性状、機能、作用等を勘案して、吸着補助剤、固定化剤もしくは被覆・凝結剤の機能特性を兼ね備えた化合物ないしは組成物を選択して採択することができる。
【0081】
本発明においては、二水石膏ないしは二水石膏に無公害型の吸着補助剤を併配合し、さらに被覆・凝結剤を加えた二者ないしは三者からなるプレ粉末体を原材料として水を加えて、0.05ないしは7mmφにある含水粉顆粒体を調製する条件は、それぞれ下記の通りである。即ち、二者からなるプレ粉末体を原材料とする場合、予め粉末状の二水石膏100質量部に対して、水硬性機能を発揮する水硬性組成物からなる被覆・凝結剤を5ないしは40質量部の量割合で二者が併配合されて均質に混和調製されている二者からなるプレ粉末体を調製する。次いで、該二者からなるプレ粉末体100質量部に対して、水を20ないしは50質量部の量割合で加えて均質に混和し、粉末状の二水石膏を被覆・凝結剤で被覆・凝結せしめて0.05ないしは7mmφにある含水粉顆粒体を調製することができる。
【0082】
二者からなるプレ粉末体を0.05ないしは7mmφにある含水粉顆粒体に調製するに際して、被覆・凝結剤の配合量が5質量部より少ないときは、水を介した被覆・バインダー効果を充分に発揮することができない。また被覆・凝結剤の配合量が40質量部より多くなっても、特別に粉顆粒体を形成せしめる被覆・バインダー効果の向上を期待することはできない。さらに二者からなるプレ粉末体100質量部に対して、水を20質量部より少ないときは、被覆・凝結剤の被覆・バインダー効果を充分に期待することはできない。また水を50質量部より多く加えるときは、一般に系内全体が流動性のあるペースト状的になり、粉顆粒体を形成しにくい。
【0083】
次いで、ここに調製された含水粉顆粒状体を常温ないしは100℃の温度雰囲気内において、少なくとも10分以上放置養生して、二水石膏を主成分とする含水の粉顆粒状処理物に一旦調製する。該含水粉顆粒状体を常温に暴露して養生する場合は、少なくとも24時間放置することが好ましい。しかし、100℃に近い温度雰囲気内で養生するときは、10分間程度の放置養生で十分含水粉顆粒状体を調製することができる。さらに100℃以上の温度雰囲気で養生することは、脱水作用が激しくなり、十分な養生を期待することはできない。
【0084】
また即ち、粉末状二水石膏に無公害型の吸着補助剤を併配合し、被覆・凝結剤を加えた三者からなるプレ粉末体を原材料とする場合、予め粉末状二水石膏100質量部に対して、吸着補助剤の100質量部に対して吸着補助剤に共存する有害な水溶出性重金属類を不溶化せしめる固定化剤を5ないしは40質量部の量割合で混和されている吸着補助剤と固定化剤からなる無公害型吸着補助剤を5ないしは100質量部の量割合で三者が併配合されて均質に混和調製されている三者からなるプレ粉末体を調製する。次いで、該三者からなるプレ粉末体100質量部に対して、水を20ないしは50質量部の量割合で加えて均質に混和し、粉末状二水石膏と無公害型吸着補助剤を被覆・凝結剤で被覆・凝結せしめて0.05ないしは7mmφにある含水粉顆粒体を調製することができる。
【0085】
粉末状二水石膏に対して無公害型の吸着補助剤を併配合した三者からなるプレ粉末体を0.05ないしは7mmφにある含水粉顆粒体に調製するに際して、有害な重金属類を共存する灰類等を吸着補助剤に選ぶときは、予め該有害な重金属類を共存する灰類等を吸着補助剤100質量部に対して、固定化剤を5質量部以下の量割合で加えるときは、共存する有害な重金属類の充分な不溶・固定化効率を期待することはできない。また、固定化剤を40質量部の量割合より多くの量で混和しても、特段に不溶・固定化効率の向上への寄与を期待することはできない。さらに三者からなるプレ粉末体100質量部に対して、水を20質量部より少ないときは、被覆・凝結剤の被覆・バインダー効果を充分に期待することはできない。また水を50質量部より多く加えるときは、一般に系内全体が流動性のあるペースト状的になり、含水の粉顆粒体を形成しにくい。
【0086】
本発明における反応工程を実行する具体的な装置としては、一般に公知・公用されている粉体と液体との混和・混合機や所謂ミキサーを採択することができる。この時形成される粉顆粒体の粒径寸法は、粉体量と液体量の割合、また粉体に対する液体の添加条件・方法、原料となる粉状態の形状、大きさ、吸水性の強弱、扱う量、混和・混合機の仕組み、混合攪拌の強度等により異なことから、予め行う予備実験により、混和・混合条件・方法等を決定することが好ましい。また、一旦調製された各粒径にある粉顆粒体を粉砕ないしは所定の粒径に分級してて、各工程を実施することもできる。
【0087】
[養生・pH調整工程]
本発明の水分吸着体の製造法における養生・pH調整工程は、先の反応工程で予め調製された含水の粉顆粒体を常温ないしは100℃の温度雰囲気内において、少なくとも10分以上放置養生して、二水石膏を主成分とする含水の粉顆粒状処理物に一旦調製すために、必要に応じて共存する有害な重金属類を不溶化せしめる機能により固定化し、同時に被覆・凝結剤による被覆・バインダー効果を充分に発揮させて、含水粉顆粒体からなる処理物に調製し、次いでここの回収した含水粉顆粒体からなる処理物に対して特定されるpH調整剤により含水粉顆粒体のpH値を6ないしは8.6の範囲に調整して含水粉顆粒状処理物を予め調製する工程である。
【0088】
反応工程で予め調製された含水粉顆粒体を養生せしめる条件は、常温に少なくとも3時間放置することによっても達成されるが、必要に応じて常温以上の積極的な100℃の温度範囲内で、これまた必要に応じて充分な水分湿気が確保されている条件下での蒸気養生により、反応・養生を達成させて含水粉顆粒状処理物を回収することができる。
【0089】
本発明では、ここに調製された含水粉顆粒体のpH値を少なくとも6ないしは8.6に調整しておくために、該含水の粉顆粒体に対してpH調整剤を混和接触せしめてpH値を調整しておくことが好ましい。本発明のpH調整剤としては、アンモニア、ナトリウム、カリウム、アルミニウムないしは鉄の硫酸塩の群よりより選ばれる単独ないし2種の組み合わせの化合物ないしは該化合物の水溶液からなるpH調整剤であることが好ましい。本また発明の含水の粉顆粒体のpH値を調製するために採択されるpH調整剤としては、化学工場等からの副生産物ないしは処理廃棄物類の中ら、アンモニア、ナトリウム、カリウム、アルミニウムないしは鉄の硫酸塩を主成分とする化合物、組成物ならびに溶液等を好適に採択することができる。具体的には、先の調製した含水の粉顆粒体に対して、本発明のpH調整剤から選ばれた化合物ないしはその水溶液を、pHの調整に見合う量割合で加えて、もしくは振りかけて、含水の粉顆粒体のpH値を6ないしは8.6の間に調製された含水粉顆粒状処理物を回収することができる。
【0090】
本発明においては、pH調整対象の含水粉顆粒体に対して、pH調整剤を化合物の固体のままの粉状体で、ないしはpH調整剤化合物を一旦水に溶解させた液状体で混和接触せしめることができる。pH調整対象の含水粉顆粒体に対して、粉状体ないしは液状体にあるpH調整剤を混和接触せしめる具体的な方法としては、pH調整対象の含水粉顆粒体の材料を回転等により移動させながら、その材料上部よるpH調整剤を噴霧ないしは散布して、材料を混ぜながらpH調整剤を材料に均質に満遍なく混和接触させることが好ましい。
【0091】
[半水改質工程]
本発明の水分吸着体の製造法における半水改質工程は、先に示した反応工程ならびに養生・pH調整工程を経手により予め調製回収された含水粉顆粒状処理物を構成している二水石膏を半水石膏に改質する工程である。二水石膏を半水石膏に改質する条件としては、少なくとも100ないしは240℃、好適には150ないしは180℃の範囲の脱水温度雰囲気中に10分間以上暴露して、半水石膏を主成分として無水の粉顆粒体で構成される水分吸着体に調製することができる。
【0092】
本発明の半水改質工程において、二水石膏を半水石膏に改質せしめる条件としては、含水粉顆粒状処理物を100ないしは240℃の温度範囲に少なくとも30分間暴露すると二水石膏を半水石膏に改質することができる。この時の温度が低温の100℃付近では、半水改質への暴露時間に時間を要する。しかし、温度が上昇するとともに短時間での半水改質が可能となる。したがって、二水石膏を半水石膏に改質する好適な条件は、150ないしは180℃の温度範囲に約10から15分間暴露することが好ましい。
【0093】
本発明の半水改質工程において、予め調製された含水粉顆粒状処理物を100ないしは240℃の温度範囲に暴露することのできる装置としては、一般に公知・公用されている加熱炉・乾燥炉・焼成炉等の装置を好適に採択することができる。勿論、燃焼ガスないしは電気により供給される熱によりコントロールされている加熱焼成炉・装置であり、連続的作業の可能な回転キルン等が好ましい。
【0094】
本発明において水分吸着体の好適な製造法の一例として、例えば、廃石膏ボードより回収したフッ素を共存する二水石膏100質量部に対して、有害な水溶出性重金属類を共存していない高炉セメントからなる無公害型の吸着補助剤10質量部を加えて均質に混和調製されているプレ粉末体を調製し、次いで固定化剤の配合されていない該プレ粉末体100質量部に対して、水35質量部を加えて均質に混和・被覆・造粒することにより、0.5ないしは2mmφにある含水の粉顆粒体を調製し、常温において24時間放置養生して含水粉顆粒状処理物を調製し、さらに含水粉顆粒状処理物を100質量部に対して、18水塩硫酸アルミニウムを水に溶解せしめた25%濃度溶液からなるpH調整剤12質量部を均質に混和して浸透させてpH値を酸性サイドの6.5に調整した含水粉顆粒状処理物を調製する。次いで、該含水粉顆粒状処理物を160℃に15分間暴露して無水の粉顆粒体を調製して、半水石膏を主成分とする無水の粉顆粒体で構成されている水分吸着体を調製することができる。
【0095】
以上の二水石膏に吸着補助剤として高炉セメントを併配合せしめて調製した含水の粉顆粒体のpH値を6.5で調製した含水粉顆粒状処理物を160℃で脱水処理した無水の粉顆粒体で構成されている水分吸着体における物性試験を行った結果、水分の吸着率が29%あり、水と接触したとき非再泥化状態が確保されており、pH値が7であり、フッ素の溶出量は0.1mg/L以下であった。即ち、pH値を6.5で調製した含水粉顆粒状処理物を160℃において脱水処理することにより、共存していたフッ素成分を揮散除去されている無水粉顆粒体が回収されている実績を示している。
【0096】
本発明の二水石膏を主原料とし、必要に応じて無公害型吸着補助剤を併配合して、被覆・凝結剤の水を介した被覆・バインダー効果により予め含水の粉顆粒体を予め調製し、予めpH値の調製された含水粉顆粒状処理物を調製して、次いで該含水粉顆粒状処理物を脱水の加熱雰囲気中に暴露して、回収された無水粉顆粒体からなる水分吸着体は、水分の吸着率が30%以上にあり、水と接触したとき非再泥化状態にあり、pH値が6ないしは8.6の範囲にあり、共存する有害水溶出性重金属類が環境基準値以下の範囲内に固定化されて無公害型にある四つの特性を同時に兼ね備えている性状が確認される。
【0097】
[水分吸着体]
以上で詳細説明した二水石膏を主原料として調製される無水粉顆粒体の製造法により回収された水分吸着体は、pH値が調製されて粉顆粒体であって多孔質体であることから、本発明の水分吸着体の吸水率は高く、半水石膏が二水石膏に改質するに必要な吸水率18%以上の量で水を吸着することが可能であり、実際には30%以上の吸水率が化のである。また、本発明の水分吸着体は、予め本発明の被覆・凝結剤で各粒子が被覆。凝結していることから、水と接触したとき再泥化状態を起こすことなく、水中で粉顆粒体状態を維持して、必要な水を本発明の水分吸着体の中に吸着することが可能となる。
【0098】
さらに本発明の水分吸着体は、pH値が6ないしは8.6の範囲に調製されており、しかも共存する有害な水溶出性重金属類が環境基準値以下の範囲内に固定化されて無公害型されていることから、処理作業した環境を悪化させることはなく、環境にやさしい材料、水分吸着体として提供することができる。
【0099】
したがって、本発明の水分吸着体は、四つの性状特性を同時に発揮できる材料であることから、本発明の無水粉顆粒体からなる水分吸着体を処理接触対象とする含水の素材類に処理・接触せしめる時は、上記の特性が発揮されると共に、水硬性機能が発揮されて、汚染土壌・地盤の修復・改良材、土壌・地盤の改良材、汚泥類の改質・水分調整材、建設発生含水土の再資源化資材ならびに路床・堤類の基盤造成材等としての活用を可能とすることができる。
【0100】
[物性評価試験方法]
本発明においては、本発明の実施例で調製される含水粉顆粒体、無水粉顆粒体ならびに水分吸着体にかかわる性状、物性等を評価するための試験方法は、特記しない限り、基本的にはJIS記載の方法に準拠した試験・分析方法を採択して、本発明に係わる諸物性・性能を評価した。
なお、本明細書においては「部」および「%」の記載は、特記しない限り「質量」を以って示し、容量リッターの表示記載を「L」を以って表示することがある。
【0101】
1.吸水率:
吸水率は、底部に真鍮製300メッシュの金網が張られている内径20cmφ×長さ150cmのガラス製円筒管を縦型でセット固定して、このガラス製円筒管内に対象供試料20gを充填し、供試料の充填された上部より水を注ぎ、下部より注いだ水が流出するまで注ぎ、次いでガラス製円筒管下部より水が垂れなくなった時点を供試料が、水を吸着した終点とし、この時の供試料の増量から吸着した水分量を求め、供試料に対する増量%をこの供試料の吸水率とした。
【0102】
2.水溶出pH値:
本実施例における粉顆粒体ならびに水分吸着体のpH値は、pH7の純水50gの入った容器に供試料10gを採り、約20℃で30分間攪拌し、次いで3時間放置した溶出検液における固・液分離を行って回収した供試料液をpHメーターによりpH測定し、供試料の5質量倍水に対するサスペンジョン溶出検液におけるpH値として測定した。
【0103】
3.重金属類の溶出試験:
本発明においては、各供試料における含有微量元素群および主たる組成分の分析は、土壌分析法における底質調査方法II並びに各溶出試験法に準拠して測定した。また、重金属類の溶出試験は、環境庁告示46号溶出試験方法に準拠して行った。
3−1.環境庁告示46号溶出試験[略記:中性域溶出試験]
3−1−1 試料の作成
供試料を風乾し、中小礫、木片等を取り除き、土塊、団粒を粗砕した後、非金属製2mm目篩を通過させた供試料を十分に均質化して溶出試験用試験体とした。
3−1−2 試料液の調製
溶出試験用試験体(g)を溶媒(純水に必要に応じて塩酸を加え、水素イオン濃度指数が5.8以上6.3以下となるように調製した)に重量比10%の割合で混合し、且つ、その混合液が500ml以上となるようにして調製試料液とする。
3−1−3 元素群の溶出
調製試料液を常温(おおむね20℃)常圧(おおむね1気圧)で振とう機(あらかじめ振とう回数を毎分約200回に、振とう幅を4cm以上5cm以下に調整したもの)を用いて、6時間連続して振とうする。
3−1−4 検液の作成
以上の操作による試料液を10分〜30分静置後、毎分約3,000回転で20分間遠心分離し、上澄液を孔径0.45μmのメンブランスフィルターでろ過してろ液を採り、定量に必要な正確な量を検液とする。
3−2−5 各検液の分析測定方法
各検液における元素群の分析測定方法は、下記に記載される方法に準拠して行った。
Cd;JIS K0102・ 55.4
Pb:JIS K0102・ 54.4
Cr:JIS K0102・ 65.1.5
As:JIS K0102・ 61.2
Se:JIS K0102・ 67.2
Hg:昭和46年12月環境庁告示第59号付表1
F :JIS K0102・ 34.1
B :昭和46年12月環境庁告示第59号付表7
Na:JIS K0102・ 48.1
【0104】
本実施例における分析結果の表示単位は、環境庁告示46号の溶出試験方法に示されている(mg/L)で表示し、酸性域溶出試験においてオランダNEN7341溶出試験方法に示されている(mg/kg)で表示した。
なお、参考までに重金属類に係る環境基準値を下記表1に示す。
【表1】

【0105】
4.硫化水素の発生確認:
供試料におけるにおいをかいで、硫化水素をにおいで感知して、硫化水素の発生の勇無を確認した。
【実施例】
【0106】
本実施例において、本発明の無水の粉顆粒体からなる水分吸着体の製造法ならびに水分吸着体に関して、その具体的な実施条件等に関し例示を以って以下に説明する。
なお、以下本実施例で採択される各素材・材料・薬剤類の配合数量等は、本発明の請求項等で示す有効成分の乾燥物基準での換算数量でなく、特記しない限り材料等の有姿数量を以って示す。また本発明は、本実施例に限定されるものでない。
【0107】
[参考例1]
本参考例において、本実施例で採択する主原料となる二水石膏に関して説明する。採択する粉末状二水石膏の主成分とフッ素の溶出量を表2に示す。
【0108】
【表2】

【0109】
[参考例2]
本参考例において、本実施例で採択する吸着補助剤に関して説明する。採択する吸着補助剤の主成分を表3に、また共存する代表的重金属類の種類と溶出量を表4に示す。
【表3】

【0110】
【表4】

【0111】
[参考例3]
本参考例において、本実施例で採択する被覆・凝結剤に関して説明する。採択する被覆・凝結剤の主成分を表5に示す。
【表5】

【0112】
[参考例4]
本参考例において、本実施例で採択するpH調整剤に関して説明する。採択するpH調整剤の化合物名と溶液にしたときの濃度を表6に示す。
【表6】

【0113】
[参考例5]
本参考例において、本実施例で採択する固定化剤に関して説明する。採択する固定化剤を構成する材料名とその量割合を表7に示す。
【表7】

【0114】
[実施例1]
本実施例において、粉末状二水石膏ならびに被覆・凝結剤からなる二者プレ粉末体に水を加えて機能させて含水粉顆粒体を調製する反応工程、該含水粉顆粒体を養生した後pH調整剤を作用させて含水粉顆粒状処理物を調製する養生・pH調整工程、該含水粉顆粒状処理物を脱水温度雰囲気中に暴露して二水石膏を半水石膏に改質して無水の粉顆粒体を調製する半水改質工程の3工程で構成される水分吸着体の製造法ならびにここで製造された水分吸着体について説明する。
【0115】
本実施例の反応工程において、粉末状二水石膏には参考例1で示した4種類の粉末状二水石膏を選んだ。また被覆・凝結剤には参考例3に示した高炉セメントを選び、その量割合を表8に示した。反応工程の具体的な作業は、セメントモルタル試験用ミキサー(容量:5L)に調製された二者のプレ粉末体を採り、攪拌・混和しながら所定量の水を散布しながら加えたて、0.1ないしは3mmφにある含水粉顆粒体を調製した。
【0116】
なお、本発明の比較例として本実施例においては、本発明における被覆・凝結剤を併配合しない粉末状二水石膏単品に対して、本実施例と同様に表8ならびに表9に示し他条件により、反応工程、養生・pH調整工程ならびに半水改質工程を施して調製された半水石膏を主成分とする比較例水分吸着体に(試料番号:H−1)に関しても、本実施例と同様に性状特性の評価結果を行い、その結果を表10に併せ表示する。
【0117】
【表8】

【0118】
次いで、本実施例では養生・pH調整工程において、反応工程で調製された含水水粉顆粒体に対して、表9に示した養生・pH調整条件を与えて養生・pH調整を行って、pH値が6から7の間に調整されている含水粉顆粒状処理物を調製した。
【表9】

【0119】
次いで、本実施例では半水改質工程において、養生・pH調整工程で調製された含水粉顆粒状処理物に対して、表10に示した二水石膏を半水石膏に改質する加熱条件下で暴露して、半水石膏を主成分とする無水の粉顆粒体からなる水分吸着体を調製した。なおここに調製された各水分吸着体の性状特性の評価結果を表10に併せ表示する。
【表10】

【0120】
以上の結果、比較例として、本発明の被覆・凝結剤を併配合させずに処理した半水石膏は、形状が水中で再取り扱い難い粉体であり、水に入れると泥状化してしまい、吸水率も低く、しかも有害な水溶出性フッ素を環境基準値を超えて共存している。しかるに、本実施例による、二水石膏を主原料として、反応工程、養生・pH調整工程ならびに半水改質工程により調製された半水石膏を主成分とする無水の粉顆粒体に調製された水分吸着体は、フッ素を共存している二水石膏を主原料とした場合も、取り扱いやすい粉顆粒体で、高い吸水率が確保されて、水と接触しても再泥化せず、pH値が中性に確保されて、フッ素の溶出はなく無公害型の水分吸着体に調製されている状態がよく理解される。
【0121】
[実施例2]
本実施例において、粉末状二水石膏ならびに被覆・凝結剤、さらに公害型吸着補助剤からなる三者プレ粉末体に水を加えて機能させて含水粉顆粒体を調製する反応工程、該含水粉顆粒体を養生した後pH調整剤を作用させて含水粉顆粒状処理物を調製する養生・pH調整工程、該含水粉顆粒状処理物を脱水温度雰囲気中に暴露して二水石膏を半水石膏に改質して無水の粉顆粒体を調製する半水改質工程の3工程で構成される水分吸着体の製造法ならびにここで製造された水分吸着体について説明する。
【0122】
本実施例の反応工程において、本実施例で三者プレ粉末体を構成する粉末状二水石膏には参考例1に示した廃石膏ボードから回収した二水石膏を選び、吸着補助剤には参考例2に示した吸着補助剤の中から紙PS焼却灰、フライアッシュ、高炉スラグ、炭−ケイ酸塩灰、ゼオライト、活性炭ならびに酸性白土を選び、固定化剤には参考例5に示した固定化剤から選び、被覆・凝結剤には、参考例3に示した被覆・凝結剤の中からポルトランドセメントを選んだ。三者プレ粉末体としての配合割合は、表11に示す。
【0123】
【表11】

【0124】
次いで、本実施例では養生・pH調整工程において、反応工程で調製された含水水粉顆粒体に対して、表12に示した養生・pH調整条件を与えて養生・pH調整を行って、pH値が6から8の間に調整されている含水粉顆粒状処理物を調製した。
【表12】

【0125】
次いで、本実施例では半水改質工程において、養生・pH調整工程で調製された含水粉顆粒状処理物に対して、表13に示した二水石膏を半水石膏に改質する加熱条件下で暴露して、半水石膏を主成分とする無水の粉顆粒体からなる水分吸着体を調製した。なおここに調製された各水分吸着体の性状特性の評価結果を表10に併せ表示する。
【表13】

【0126】
以上の結果、本実施例による、二水石膏を主原料として、吸着補助剤を併配合せしめて被覆・凝結処理からなる反応工程、養生・pH調整工程ならびに半水改質工程により調製された半水石膏を主成分とする無水の粉顆粒体にされた調製水分吸着体は、フッ素、ヒ素。クロム等の有害重金属が不溶化されて無公害化されており、しかも取り扱いやすい粉顆粒体で、半水石膏を主原料とする場合よりも高い吸水率が確保されており、水と接触しても再泥化せず、pH値が中性に確保されている水分吸着体に調製されている状態がよく理解される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉末状二水石膏ならびに被覆・凝結剤からなる二者プレ粉末体に水を加えて機能させて含水粉顆粒体を調製する反応工程、該含水粉顆粒体を養生し、次いでpH調整剤を作用させて含水粉顆粒状処理物を調製する養生・pH調整工程、該含水粉顆粒状処理物を脱水温度雰囲気中に暴露して二水石膏を半水石膏に改質して無水粉顆粒体を調製する半水改質工程の3工程で構成される水分吸着体の製造法において;
上記の反応工程が、粉末状二水石膏100質量部に対して、水硬性機能を発揮する水硬性組成物からなる被覆・凝結剤を5ないしは40質量部の量割合で二者が併配合されて均質に混和調製されている二者プレ粉末体100質量部に対して、水を20ないしは50質量部の量割合で加えて均質に混和し、粉末状二水石膏を被覆・凝結剤で被覆・凝結せしめて0.05ないしは7mmφにある含水粉顆粒体に調製する工程であり;
次いで上記の養生・pH調整工程が、上記で調製した含水粉顆粒状体を常温ないしは100℃の温度雰囲気内において、少なくとも10分以上放置養生して、二水石膏を主成分とする含水粉顆粒状処理物に一旦調製し、該含水粉顆粒状処理物100質量部に対して、pH調整剤を1ないしは20質量部の量割合で混和接触せしめて、pH値が6ないしは8.6の範囲が確保されている含水粉顆粒状処理物に調製する工程であり;
次いで上記の半水改質工程が、上記の含水粉顆粒状処理物を100ないしは240℃、好適には150ないしは180℃の範囲の脱水温度雰囲気中に少なくとも30分間暴露して、被覆・凝結剤で被覆・凝結されて粉顆粒体化している二水石膏を半水石膏に改質して無水粉顆粒体に調製し、必要に応じて該無水粉顆粒体に粉砕・分級を施して、被覆・凝結剤で被覆・凝結されて粉顆粒体化されている半水石膏を主成分とする無水粉顆粒体で構成されている水分吸着体に調製する工程であり;
上記の3工程で調製される無水粉顆粒体からなる水分吸着体が、吸水率が30%以上にあり、水と接触したとき非再泥化状態にあり、pH値が6ないしは8.6の範囲にあり、共存する有害水溶出性重金属類が環境基準値以下の範囲内に固定化されて無公害型にある四つの性状特性を同時に兼ね備えていることを特徴とする水分吸着体の製造法。
【請求項2】
前記の粉末状二水石膏が、廃石膏ボードよりリサイクル処理により回収された有害なフッ素を共存している粉末状二水石膏である請求項1記載の水分吸着体の製造法。
【請求項3】
前記の被覆・凝結剤が、水硬性機能を発揮するセメント類、高炉スラグ、アルミノケイ酸カルシウムないしはケイ酸ナトリウムの群より選ばれる単独ないし2種の組み合わせの化合物ないしは組成物である請求項1記載の水分吸着体の製造法。
【請求項4】
前記のpH調整剤が、アンモニア、ナトリウム、カリウム、アルミニウムないしは鉄の硫酸塩の群よりより選ばれる単独ないし2種の組み合わせの化合物ないしは該化合物の25ないしは55%濃度の水溶液からなるpH調整剤である請求項1記載の水分吸着体の製造法。
【請求項5】
前記の反応工程が、粉末状二水石膏100質量部に対して、予め吸着補助剤の100質量部に対して吸着補助剤に共存する有害な水溶出性重金属類を不溶化せしめる固定化剤を5ないしは25質量部の量割合で混和されている吸着補助剤と固定化剤からなる無公害型吸着補助剤を5ないしは100質量部、ならびに水硬性機能を発揮する水硬性組成物からなる被覆・凝結剤を5ないしは40質量部の量割合で三者が併配合されて均質に混和調製されている三者プレ粉末体100質量部に対して、水を20ないしは50質量部の量割合で加えて均質に混和し、粉末状の二水石膏と無公害型吸着補助剤を被覆・凝結剤で被覆・凝結せしめて0.05ないしは7mmφにある含水粉顆粒体に調製する工程である請求項1ないし4記載の水分吸着体の製造法。
【請求項6】
前記の吸着補助剤が、可燃性ゴミ・廃棄物類、下水汚泥もしくは可燃燃料である石炭を焼却して有害な水溶出性重金属類を共存している焼却灰類からなるシリケート類、高炉スラグないしはセメント類からなるシリケート類、木質・竹類・石炭を乾留処理した炭・灰類からなる炭類、または表面積100m/g以上にある炭、活性炭類、非晶質シリカ、珪藻土、粘土類、活性ケイ酸塩、活性ケイ酸、活性アルミナもしくはゼオライトからなる吸着性担持類の群より選ばれる単独ないし2種以上の組み合わせからなる吸着性を発揮できる素材類からなる吸着補助剤である請求項5記載の水分吸着体の製造法。
【請求項7】
前記の固定化剤が、酸化物基準で表して酸化ナトリウム、カルシヤ、マグネシヤ、アルミナ、酸化鉄、シリカ、硫酸根ないしはリン酸根の群よりより選ばれる単独ないしは2種の組み合わせからなる化合物もしくは組成物により構成されており、該固定化剤における構成成分の配合割合が、アルミナ、酸化鉄ならびにシリカで構成されるケイ酸塩100質量部に対して、硫黄、ケイ素、リン、アルミニウムないしは鉄のオキシ酸のナトリウム塩を1ないしは20質量部、カルシヤまたはカルシヤの水酸化物ないしはマグネシヤまたはマグネシヤの水酸化物を100ないしは200質量部で構成されている固定化剤である請求項5記載の水分吸着体の製造法。
【請求項8】
請求項1ないしは7のいずれか1項記載の製造方法により調製された二水石膏を半水石膏に改質せしめて無水粉顆粒体に調製されている水分吸着体が、吸水率が30%以上にあり、水と接触したとき非再泥化状態にあり、pH値が6ないしは8.6の範囲にあり、共存する有害な水溶出性重金属類が環境基準値以下の範囲内に固定化されて無公害型にある四つの性状特性を同時に兼ね備えており、該無水粉顆粒体を処理接触対象となる含水の素材類に処理・接触せしめる時は、上記の性状特性と共に水硬性機能が発揮されて、汚染土壌・地盤の修復・改良材、土壌・地盤の改良材、汚泥類の改質・水分調整材、建設発生含水土の再資源化資材ならびに路床・堤類の基盤造成材としての活用が可能であることを特徴とする水分吸着体。

【公開番号】特開2011−36846(P2011−36846A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−205258(P2009−205258)
【出願日】平成21年8月17日(2009.8.17)
【出願人】(501046947)株式会社ナトー研究所 (7)
【Fターム(参考)】