説明

水分検出装置

【課題】部品点数を削減し、組立工数の低減、小型・低コスト化を促進すると共に、鏡面の温度を精度よくかつ応答性よく測定する。
【解決手段】熱電冷却素子2の冷却面2−1を鏡面とする。冷却面(鏡面)2−1に、半導体製造技術を用いて、薄膜温度センサ(温度検出素子)2−3を一体的に形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、一方の面が低温側、他方の面が高温側とされる熱電冷却素子を用いて鏡面を冷却し、この鏡面上に生じる被測定気体に含まれる水分を検出する水分検出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、湿度測定法として、被測定気体の温度を低下させ、その被測定気体に含まれる水蒸気の一部を結露させたときの温度を測定することにより露点を検出する露点検出法が知られている。例えば、非特許文献1には、寒剤、冷凍機、電子冷却器などを用いて鏡を冷却し、この冷却した鏡の鏡面上の反射光の強度の変化を検出し、この時の鏡面の温度を測定することによって、被測定気体中の水分の露点を検出する鏡面冷却式露点計について説明されている。
【0003】
この鏡面冷却式露点計には、利用する反射光の種類によって、2つのタイプがある。1つは、正反射光を利用する正反射光検出方式(例えば、特許文献1参照)、もう1つは、散乱光を利用する散乱光検出方式(例えば、特許文献2参照)である。
【0004】
〔正反射光検出方式〕
図9に正反射光検出方式を採用した従来の鏡面冷却式露点計の要部を示す。この鏡面冷却式露点計101は、被測定気体が流入されるチャンバ1と、このチャンバ1の内部に設けられた熱電冷却素子(ペルチェ素子)2を備えている。熱電冷却素子2の冷却面2−1には銅製ブロック3を介してボルト4が取り付けられており、熱電冷却素子2の加熱面2−2には放熱フィン5が取り付けられている。銅製ブロック3に取り付けられたボルト4の上面4−1は鏡面とされている。銅製ブロック3の側部には穴が明けられ、この穴に巻線式測温抵抗体(温度検出素子)6がシリコングリスを介して埋め込まれている(図11参照)。また、チャンバ1の上部には、ボルト4の上面(鏡面)4−1に対して斜めに光を照射する発光素子7と、この発光素子7から鏡面4−1に対して照射された光の正反射光を受光する受光素子8とが設けられている。
【0005】
この鏡面冷却式露点計101において、チャンバ1内の鏡面4−1は、チャンバ1内に流入される被測定気体に晒される。鏡面4−1に結露が生じていなければ、発光素子7から照射された光はそのほゞ全量が正反射し、受光素子8で受光される。したがって、鏡面4−1に結露が生じていない場合、受光素子8で受光される反射光の強度は大きい。
【0006】
熱電冷却素子2への電流を増大し、熱電冷却素子2の冷却面2−1の温度を下げて行くと、被測定気体に含まれる水蒸気が鏡面4−1に結露し、その水の分子に発光素子7から照射した光の一部が吸収されたり、乱反射したりする。これにより、受光素子8で受光される反射光(正反射光)の強度が減少する。この鏡面4−1における正反射光の変化を検出することにより、鏡面4−1上の状態の変化、すなわち鏡面4−1上に水分(水滴)が付着したことを知ることができる。さらに、この時の鏡面4−1の温度を温度検出素子6で間接的に測定することにより、被測定気体中の水分の露点を知ることができる。
【0007】
〔散乱光検出方式〕
図10に散乱光検出方式を採用した従来の鏡面冷却式露点計の要部を示す。この鏡面冷却式露点計102は、正反射光検出方式を採用した鏡面冷却式露点計101とほゞ同構成であるが、受光素子8の取り付け位置が異なっている。この鏡面冷却式露点計102において、受光素子8は、発光素子7から鏡面4−1に対して照射された光の正反射光を受光する位置ではなく、散乱光を受光する位置に設けられている。
【0008】
この鏡面冷却式露点計102において、鏡面4−1は、チャンバ1内に流入される被測定気体に晒される。鏡面4−1に結露が生じていなければ、発光素子7から照射された光はそのほゞ全量が正反射し、受光素子8での受光量は極微量である。したがって、鏡面4−1に結露が生じていない場合、受光素子8で受光される反射光の強度は小さい。
【0009】
熱電冷却素子2への電流を増大し、熱電冷却素子2の冷却面2−1の温度を下げて行くと、被測定気体に含まれる水蒸気が鏡面4−1に結露し、その水の分子に発光素子7から照射した光の一部が吸収されたり、乱反射したりする。これにより、受光素子8で受光される乱反射された光(散乱光)の強度が増大する。この鏡面4−1における散乱光の変化を検出することにより、鏡面4−1上の状態の変化、すなわち鏡面4−1上に水分(水滴)が付着したことを知ることができる。さらに、この時の鏡面4−1の温度を温度検出素子6で間接的に測定することにより、被測定気体中の水分の露点を知ることができる。
【0010】
なお、上述した露点計においては、鏡面4−1に生じる結露(水分)を検出する例で説明したが、同様の構成によって鏡面4−1に生じる結霜(水分)を検出することも可能である。
【0011】
【特許文献1】特開昭61−75235号公報
【特許文献2】特公平7−104304号公報
【特許文献3】特開平9−307030号公報
【非特許文献1】工業計測ハンドブック、昭和51.9.30、朝倉書店、P297。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、上述した従来の鏡面冷却式露点計101や102では、温度検出素子6を銅製ブロック3の側部に明けた穴にシリコングリスを介して埋め込んでいるため、組立性が悪かった。また、温度検出素子6がシリコングリスで覆われるため、このシリコングリスでの熱抵抗により、応答性が悪かった。また、鏡面4−1と熱電冷却素子2との間に銅製ブロック3が挟み込まれた形とされているので、温度勾配ができて測定精度が低下する可能性があり、また銅製ブロック3での熱容量が大きく、応答性が悪かった。また、銅製ブロック3を設けていたので、センサ部の外形サイズが大きくなってしまい、小型化が難しかった。また、部品点数が多くなり、高コストとなっていた。
【0013】
なお、特許文献3には、発熱する電子機器(例えば、CPUなど)を熱電冷却素子を利用して冷却する冷却装置が記載されている。この冷却装置では、熱電冷却素子の冷却面にCPUを取り付け、熱電冷却素子の半導体素子や冷却側導体の温度を測定するようにしている。すなわち、図12に示すように、熱電冷却素子2の冷却面2−1にCPU(被冷却部材)40を取り付け、熱電冷却素子2の柱(半導体素子)2aや冷却基板(冷却側導体)2bの底面に温度検出素子60を取り付け、CPU40の温度を間接的に測定するようにしている。
【0014】
この特許文献3に示された構成から、図13に示すように鏡9を熱電冷却素子2の冷却面2−1に取り付け、温度検出素子60によって熱電冷却素子2の柱2aや冷却基板2bの底面の温度を測定することが考えられる。しかしながら、このような構成では、熱電冷却素子2の冷却面2−1との間の接合部および冷却基板2b自身に熱抵抗が生じるため、精度よくかつ応答性よく鏡9の温度を検出しているとは言えない。また、鏡9や温度検出素子60を熱電冷却素子2に個別に取り付る必要があることから、その分余計に組立工数がかかる。
【0015】
本発明は、このような課題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、部品点数を削減し、組立工数の低減、小型・低コスト化を促進すると共に、鏡面の温度を精度よくかつ応答性よく測定することができる水分検出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
このような目的を達成するために、第1発明(請求項1に係る発明)は、電流の供給を受けて、一方の面が低温側、他方の面が高温側とされ、低温側の面が鏡面とされた熱電冷却素子と、熱電冷却素子の鏡面に形成された温度検出素子と、熱電冷却素子の鏡面に対して光を照射する発光手段と、発光手段から鏡面に対して照射された光の散乱光を受光する受光手段と、この受光手段が受光する散乱光に基づいて熱電冷却素子の鏡面上に生じる被測定気体に含まれる水分を検出する手段とを設けたものである。
この発明によれば、発光手段から熱電冷却素子の鏡面(低温側の面)に対して光が照射され、この照射された光の鏡面からの散乱光が受光手段で受光され、この受光手段が受光する散乱光に基づいて、熱電冷却素子の鏡面上に生じる被測定気体に含まれる水分(例えば、結露や結霜)が検出される。また、熱電冷却素子の鏡面に形成された温度検出素子によって、その鏡面の温度が直接測定される。
【0017】
第2発明(請求項2に係る発明)は、電流の供給を受けて、一方の面が低温側、他方の面が高温側とされ、低温側の面が鏡面とされた熱電冷却素子と、熱電冷却素子の鏡面に形成された温度検出素子と、熱電冷却素子の鏡面に対して光を照射する発光手段と、発光手段から鏡面に対して照射された光の正反射光を受光する受光手段と、受光手段が受光する正反射光に基づいて熱電冷却素子の鏡面上に生じる被測定気体に含まれる水分を検出する手段とを設けたものである。
この発明によれば、発光手段から熱電冷却素子の鏡面(低温側の面)に対して光が照射され、この照射された光の鏡面からの正反射光が受光手段で受光され、この受光手段が受光する正反射光に基づいて、熱電冷却素子の鏡面上に生じる被測定気体に含まれる水分(例えば、結露や結霜)が検出される。また、熱電冷却素子の鏡面に形成された温度検出素子によって、その鏡面の温度が直接測定される。
【0018】
なお、第1発明および第2発明において、「熱電冷却素子の鏡面に温度検出素子を形成する」という概念には、鏡面の一部に温度検出素子を露出させる構成、鏡面の背面側に温度検出素子を埋め込む構成(温度検出素子を露出させない構成)などを含むものとする。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、熱電冷却素子の低温側の面を鏡面とし、この鏡面に温度検出素子を形成するようにしたので、部品点数を削減し、組立工数の低減、小型・低コスト化を促進すると共に、鏡面の温度を精度よくかつ応答性よく測定することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明を図面に基づいて詳細に説明する。
〔実施の形態1:鏡面冷却式露点計(散乱光検出方式)〕
図1はこの発明に係る水分検出装置の一実施の形態を示す鏡面冷却式露点計の概略構成図である。この鏡面冷却式露点計201はセンサ部201Aとコントロール部201Bとを有している。
【0021】
センサ部201Aでは、熱電冷却素子(ペルチェ素子)2の冷却面2−1を鏡面としている。本実施の形態では、熱電冷却素子2の冷却基板2bを通常のアルミナ基板ではなく、鏡面加工されたシリコンとし、これによって冷却面2−1そのものを鏡面としている。また、冷却面(鏡面)2−1に、半導体製造技術を用いて、薄膜温度センサ(温度検出素子)2−3を一体的に形成している。
【0022】
図2に鏡面2−1に形成された薄膜温度センサ2−3の位置関係を示す。本実施の形態では、鏡面加工されたシリコンチップの上面の一部(端の方)に半導体製造技術で薄膜温度センサ2−3を形成し、またこのシリコンチップの下面に半導体素子2aと接合するための電気的なパターン((図示せず))を形成し、この薄膜温度センサ2−3および電気的なパターンを形成したシリコンチップを冷却基板2bとして、熱電冷却素子2を組み上げている。なお、この例では、鏡面2−1の一部に温度検出素子を露出させた構成としているが、鏡面2−1の背面側(冷却基板2bの内部)に温度検出素子を埋め込むような構成としてもよい。
【0023】
また、センサ部201Aでは、熱電冷却素子2の加熱面2−2に円柱状のヒートシンク18を取り付け、このヒートシンク18に沿って、その上端部をJ字型に湾曲させたステンレス製のチューブ17を設けている。チューブ17としては図3に示すような光ファイバを収容した種々のチューブPを使用することができる。
【0024】
図3(a)では、チューブP中に、発光側の光ファイバF1と受光側の光ファイバF2とを並設している。チューブP中において、発光側の光ファイバF1と受光側の光ファイバF2の周囲は、ポッテイング剤で満たされている。
【0025】
図3(b)では、チューブP中に、発光側(あるいは受光側)の光ファイバF1と受光側(あるいは発光側)の光ファイバF21〜F24を並行に設けている。図3(c)では、チューブP中の左半分を発光側の光ファイバF1、右半分を受光側の光ファイバF2としている。
【0026】
図3(d)では、チューブP中に、発光側の光ファイバF1と受光側の光ファイバF2とを混在させている。図3(e)では、チューブP中の中心部を発光側(あるいは受光側)の光ファイバF1、光ファイバF1の周囲を受光側(あるいは発光側)の光ファイバF2としている。
【0027】
図1に示した鏡面冷却式露点計201では、チューブ17として図3(a)に示されたタイプのチューブPを使用しており、その内部に発光側の光ファイバ17−1と受光側の光ファイバ17−2とを収容している。発光側の光ファイバ17−1と受光側の光ファイバ17−2のJ字型に湾曲された先端部(発光部、受光部)は、熱電冷却素子2の鏡面2−1に向けられ、この鏡面2−1に対して所定の傾斜角で傾けられている。この結果、光ファイバ17−1からの光の照射方向(光軸)と光ファイバ17−2での光の受光方向(光軸)とが平行とされ、また隣接して同一の傾斜角とされる。
【0028】
コントロール部201Bには、露点温度表示部12と、結露検知部13と、ペルチェ出力制御部14と、信号変換部15とが設けられている。露点温度表示部12には薄膜温度センサ2−3が検出する鏡面2−1の温度が表示される。結露検知部13は、光ファイバ17−1の先端部より熱電冷却素子2の鏡面2−1に対して斜めに所定の周期でパルス光を照射させるとともに、光ファイバ17−2を介して受光される反射パルス光(散乱光)の上限値と下限値との差を反射パルス光の強度として求め、反射パルス光の強度に応じた信号S1をペルチェ出力制御部14へ送る。
【0029】
ペルチェ出力制御部14は、結露検知部13からの信号S1を受けて、反射パルス光の強度と予め定められている閾値とを比較し、反射パルス光の強度が閾値に達していない場合には、熱電冷却素子2への電流を信号S1の値に応じて増大させる制御信号S2を、反射パルス光の強度が閾値を超えている場合には、熱電冷却素子2への電流を信号S1の値に応じて減少させる制御信号S2を信号変換部15へ出力する。信号変換部15は、ペルチェ出力制御部14からの制御信号S2で指示される電流S3を熱電冷却素子2へ供給する。
【0030】
この鏡面冷却式露点計201において、センサ部201Aは被測定気体中に置かれる。また、結露検知部13は、光ファイバ17−1の先端部より、熱電冷却素子2の鏡面2−1に対して斜めに所定の周期でパルス光を照射させる(図4(a)参照)。鏡面2−1は被測定気体に晒されており、鏡面2−1に結露が生じていなければ、光ファイバ17−1の先端部から照射されたパルス光はそのほゞ全量が正反射し、光ファイバ17−2を介して受光される鏡面2−1からの反射パルス光(散乱光)の量は極微量である。したがって、鏡面2−1に結露が生じていない場合、光ファイバ17−2を介して受光される反射パルス光の強度は小さい。
【0031】
結露検知部13では、光ファイバ17−2を介して受光される反射パルス光の上限値と下限値との差を反射パルス光の強度として求め、反射パルス光の強度に応じた信号S1をペルチェ出力制御部14へ送る。この場合、反射パルス光の強度はほゞ零であり、閾値に達していないので、ペルチェ出力制御部14は、熱電冷却素子2への電流を増大させる制御信号S2を信号変換部15へ送る。これにより、信号変換部15からの熱電冷却素子2への電流S3が増大し、熱電冷却素子2の鏡面2−1の温度が下げられて行く。
【0032】
熱電冷却素子2の鏡面2−1の温度を下げて行くと、被測定気体に含まれる水蒸気が熱電冷却素子2の鏡面2−1に結露し、その水の分子に光ファイバ17−1の先端部から照射されたパルス光の一部が吸収されたり、乱反射したりする。これにより、光ファイバ17−2を介して受光される鏡面2−1からの反射パルス光(散乱光)の強度が増大する。
【0033】
結露検知部13は、受光される反射パルス光の1パルス毎に、その1パルスの上限値と下限値との差を求め、これを反射パルス光の強度とする。すなわち、図4(b)に示すように、反射パルス光の1パルスの上限値Lmaxと下限値Lminとの差ΔLを求め、このΔLを反射パルス光の強度とする。この結露検知部13での処理により、反射パルス光に含まれる外乱光ΔXが除去され、外乱光による誤動作が防止される。この結露検知部13でのパルス光を用いた外乱光による誤動作防止の処理方式をパルス変調方式と呼ぶ。この処理によって、この鏡面冷却式露点計201では、センサ部201Aからチャンバをなくすことができている。
【0034】
ここで、光ファイバ17−2を介して受光される反射パルス光の強度が閾値を超えると、ペルチェ出力制御部14は、熱電冷却素子2への電流を減少させる制御信号S2を信号変換部15へ送る。これにより、熱電冷却素子2の鏡面2−1の温度の低下が抑えられ、結露の発生が抑制される。この結露の抑制により、光ファイバ17−2を介して受光される反射パルス光の強度が小さくなり、閾値を下回ると、ペルチェ出力制御部14から熱電冷却素子2への電流を増大させる制御信号S2が信号変換部15へ送られる。この動作の繰り返しによって、光ファイバ17−2を介して受光される反射パルス光の強度が閾値とほゞ等しくなるように、熱電冷却素子2の鏡面2−1の温度が調整される。この調整された温度、すなわち鏡面2−1に生じた結露が平衡状態に達した温度(露点温度)が、露点温度として露点温度表示部12に表示される。
【0035】
この鏡面冷却式露点計201では、熱電冷却素子2の冷却面を鏡面とし、この鏡面2−1に一体的に薄膜温度センサ2−3を形成しているので、熱抵抗が少なく、温度勾配がなくなり、精度よくかつ応答性よく鏡面2−1の温度を測定することができる。これにより、露点温度の測定精度が高まり、応答性も向上する。
【0036】
また、この鏡面冷却式露点計201では、従来の構成で必要としていた銅製ブロック3(図11)が不要であり、銅製ブロック3への温度検出素子6の取り付けの必要もない。また、図13に示したような構成のように鏡9や温度検出素子60を熱電冷却素子2に個別に取り付る必要もなく、熱電冷却素子2と鏡面2−1と薄膜温度センサ2−3とを一体形状として、部品点数を削減し、組立工数の低減、小型・低コスト化を促進することができるようになる。
【0037】
さらに、この鏡面冷却式露点計201では、発光側の光ファイバ17−1と受光側の光ファイバ17−2の取り付け部が1箇所にまとめられており、検出部201Aの小型化に貢献している。また、発光側の光ファイバ17−1と受光側の光ファイバ17−2とがチューブ17に収容されているので、発光側の光ファイバ17−1と受光側の光ファイバ17−2との間での位置決めは必要なく、組立時の作業性がよくなる。
【0038】
また、この鏡面冷却式露点計201では、センサ部201Aからチャンバをなくし、チャンバ内に被測定気体を引き込むための吸引ポンプや吸引用チューブ、排気用チューブ、流量計など省略することができているので、部品点数が削減され、センサ部201Aのさらなる小型化が図られ、組立性が向上し、コストもダウンする。また、吸引ポンプや吸引用チューブ、排気用チューブ、流量計などを装着しなくてもよいので、測定雰囲気中への設置も容易となる。また、センサ部201Aには吸引ポンプや吸引用チューブ、排気用チューブ、流量計などの装着が伴わず、センサ部201Aとコントロール部201Bとの2つの構成となるので、持ち運びが容易となる。
【0039】
なお、図1に示した鏡面冷却式露点計201では、センサ部201Aにおいて発光側の光ファイバ17−1と受光側の光ファイバ17−2とを収容したチューブ17を用いたが、図5に示すセンサ部201A’のように、発光側の光ファイバ17−1に代えて発光ダイオード19を、受光側の光ファイバ17−2に代えてフォトカプラ20を設けるようにしてもよい。
【0040】
〔実施の形態2:鏡面冷却式露点計(正反射光検出方式)〕
図6はこの発明に係る水分検出装置の他の実施の形態を示す鏡面冷却式露点計の概略構成図である。この鏡面冷却式露点計202では、発光側の光ファイバ17−1と受光側の光ファイバ17−2とを同方向ではなく、鏡面2−1を挾んでその左右に対称に設けている。発光側の光ファイバ17−1と受光側の光ファイバ17−2のJ字型に湾曲された先端部は、熱電冷却素子2の鏡面2−1に向けられ、この鏡面2−1に対して左右対称に所定の傾斜角で傾けられている。
【0041】
この鏡面冷却式露点計202において、センサ部202bは被測定気体中に置かれる。また、結露検知部13は、光ファイバ17−1の先端部より、熱電冷却素子2の鏡面2−1に対して斜めに所定の周期でパルス光を照射させる。鏡面2−1は被測定気体に晒されており、鏡面2−1に結露が生じていなければ、光ファイバ17−1の先端部から照射されたパルス光はそのほゞ全量が正反射し、光ファイバ17−2を介して受光される。したがって、鏡面2−1に結露が生じていない場合、光ファイバ17−2を介して受光される反射パルス光の強度は大きい。
【0042】
結露検知部13では、光ファイバ17−2を介して受光される反射パルス光の上限値と下限値との差を反射パルス光の強度として求め、反射パルス光の強度に応じた信号S1をペルチェ出力制御部14へ送る。この場合、反射パルス光の強度は大きく、閾値を超えているので、ペルチェ出力制御部14は、熱電冷却素子2への電流を増大させる制御信号S2を信号変換部15へ送る。これにより、信号変換部15からの熱電冷却素子2への電流S3が増大し、熱電冷却素子2の鏡面2−1の温度が下げられて行く。
【0043】
熱電冷却素子2の鏡面2−1の温度を下げて行くと、被測定気体に含まれる水蒸気が熱電冷却素子2の鏡面2−1に結露し、その水の分子に光ファイバ17−1の先端部から照射されたパルス光の一部が吸収されたり、乱反射したりする。これにより、光ファイバ17−2を介して受光される鏡面2−1からの反射パルス光(正反射光)の強度が減少する。
【0044】
ここで、光ファイバ17−2を介して受光される反射パルス光の強度が閾値を下回ると、ペルチェ出力制御部14は、熱電冷却素子2への電流を減少させる制御信号S2を信号変換部15へ送る。これにより、熱電冷却素子2の鏡面2−1の温度の低下が抑えられ、結露の発生が抑制される。この結露の抑制によって、光ファイバ17−2を介して受光される反射パルス光の強度が大きくなり、閾値を上回ると、ペルチェ出力制御部14から熱電冷却素子2への電流を増大させる制御信号S2が信号変換部15へ送られる。この動作の繰り返しによって、光ファイバ17−2を介して受光される反射パルス光の強度が閾値とほゞ等しくなるように、熱電冷却素子2の鏡面2−1の温度が調整される。この調整された温度、すなわち鏡面2−1に生じた結露が平衡状態に達した温度(露点温度)が、露点温度として露点温度表示部12に表示される。
【0045】
この鏡面冷却式露点計202においても、熱電冷却素子2の冷却面2−1を鏡面とし、この鏡面2−1に一体的に薄膜温度センサ2−3を形成しているので、熱抵抗が少なく、精度よくかつ応答性よく鏡面2−1の温度を測定することができ、露点温度の測定精度および応答性を向上させることができる。また、熱電冷却素子2と鏡面2−1と薄膜温度センサ2−3とを一体形状として、部品点数を削減し、組立工数の低減、小型・低コスト化を促進することができるようになる。
【0046】
なお、上述した実施の形態1や2において、図7や図8に示すように、熱電冷却素子2の加熱面2−2とヒートシンク18との間に温度検出素子21を設ければ、ヒートシンク18の温度を精度よくかつ応答性よく測定し、ヒートシンク18の温度がある温度に達したら熱電冷却素子2への電流を遮断したり制限するなどして、鏡面2−1の冷却効率を上げるようにすることも可能である。
【0047】
また、上述した実施の形態1や2では、鏡面2−1に生じる結露(水分)を検出するものとしたが、同様の構成によって鏡面2−1に生じる結霜(水分)を検出することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明に係る水分検出装置の一実施の形態を示す鏡面冷却式露点計の概略構成図(実施の形態1)である。
【図2】この鏡面冷却式露点計における熱電冷却素子の鏡面に形成された薄膜温度センサの位置関係を示す平面図である。
【図3】発光側の光ファイバと受光側の光ファイバとを1つのチューブ中に並行して設ける構成を例示する図である。
【図4】鏡面に対して照射されるパルス光および鏡面から受光される反射パルス光を示す図である。
【図5】実施の形態1の鏡面冷却式露点計のセンサ部の変形例を示す図である。
【図6】本発明に係る水分検出装置の他の実施の形態を示す鏡面冷却式露点計の概略構成図(実施の形態2)である。
【図7】熱電冷却素子の加熱面とヒートシンクとの間にも温度検出素子を設けた実施の形態1の鏡面冷却式露点計のセンサ部の変形例を示す図である。
【図8】熱電冷却素子の加熱面とヒートシンクとの間にも温度検出素子を設けた実施の形態2の鏡面冷却式露点計のセンサ部の変形例を示す図である。
【図9】正反射光検出方式を採用した従来の鏡面冷却式露点計の要部を示す図である。
【図10】散乱光検出方式を採用した従来の鏡面冷却式露点計の要部を示す図である。
【図11】従来の鏡面冷却式露点計における鏡や温度検出素子の取り付け構造を示す斜視図である。
【図12】熱電冷却素子の冷却面にCPUを取り付けた従来の冷却装置における温度測定構造を示す図である。
【図13】この冷却装置の構成から考えられる鏡面冷却式露点計における鏡面の温度の測定構造を示す図である。
【符号の説明】
【0049】
2…熱電冷却素子(ペルチェ素子)、2a…半導体素子、2b…冷却基板、2−1…冷却面(鏡面)、2−2…加熱面、2−3…薄膜温度センサ(温度検出素子)、12…露点温度表示部、13…結露検知部、14…ペルチェ出力制御部、15…信号変換部、17…チューブ、17−1…発光側の光ファイバ、17−2…受光側の光ファイバ、18…ヒートシンク、19…発光ダイオード、20…フォトカプラ、201,202…鏡面冷却式露点計、201A,202b…センサ部、201B,202B…コントロール部。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
電流の供給を受けて、一方の面が低温側、他方の面が高温側とされ、前記低温側の面が鏡面とされた熱電冷却素子と、
前記熱電冷却素子の鏡面に形成された温度検出素子と、
前記熱電冷却素子の鏡面に対して光を照射する発光手段と、
前記発光手段から前記鏡面に対して照射された光の散乱光を受光する受光手段と、
前記受光手段が受光する散乱光に基づいて前記熱電冷却素子の鏡面上に生じる被測定気体に含まれる水分を検出する手段と
を備えたことを特徴とする水分検出装置。
【請求項2】
電流の供給を受けて、一方の面が低温側、他方の面が高温側とされ、前記低温側の面が鏡面とされた熱電冷却素子と、
前記熱電冷却素子の鏡面に形成された温度検出素子と、
前記熱電冷却素子の鏡面に対して光を照射する発光手段と、
前記発光手段から前記鏡面に対して照射された光の正反射光を受光する受光手段と、
前記受光手段が受光する正反射光に基づいて前記熱電冷却素子の鏡面上に生じる被測定気体に含まれる水分を検出する手段と
を備えたことを特徴とする水分検出装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載された水分検出装置において、
前記温度検出素子は、前記熱電冷却素子の鏡面の背面側に埋め込まれていることを特徴とする水分検出装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2007−93269(P2007−93269A)
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−279827(P2005−279827)
【出願日】平成17年9月27日(2005.9.27)
【出願人】(000006666)株式会社山武 (1,808)
【Fターム(参考)】