説明

水切り構造及び当該水切り構造のメンテナンス方法

【課題】 十分な防水性を有するとともに容易にメンテナンスすることができる水切り構造1を提供する。
【解決手段】 水切り構造1は、建物の躯体に上下方向に配置された外壁パネル2間の横目地2cにおける水切り構造1であって、梁4に固定される取付部材5と、一端側が取付部材5に着脱自在に固定されるとともに上側外壁パネル2aの屋内側面に水密的に当接する弾性体で形成された止水ヘラ16を有し、他端側が外壁パネル2の屋外側に突出してその先端に係止爪6を具備する支持部材7と、横目地2cに沿って形成され、上側外壁パネル2aの屋内側面に水密的に当接する弾性体で形成された水切りヘラ18を有するとともに、外壁パネル2の屋外に突出して係止爪6に係止される被係止爪8を有する水切部材9と、上側外壁パネル2aと、水切部材9との間隙に屋外側から押し込まれる弾性止水材10と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、住宅等の建物の上下に配置された外壁パネル間の横目地への風雨の侵入を防止する水切り構造及びこの水切り構造のメンテナンス方法に関する。
【背景技術】
【0002】
住宅等の建物において、外部に露出する外壁パネル間の目地には建物内への風雨の侵入を防ぐため、種々の水切り構造が用いられている。特に、上下の外壁パネル間の横目地に用いられる水切り構造としては、例えば、図13に示すように、上側外壁パネル101の屋内側の面に当接する立上がり片102が設けられ、下側外壁パネル103の上端面に載置される水切板104と、この水切板104の中間部分に形成された係止突部105に係止されて、その中間に上側外壁パネル101の下面に接する止水片106を設け、外壁の屋外側に斜め下方に向けて突出するガスケット107と、水切り片104の屋外側の端部に当接するようにして、横目地を覆うように形成された化粧水切り108と、を備えた水切り構造100が挙げられる(例えば特許文献1)。
【0003】
このように構成すると、化粧水切り108、立上がり片102、及び止水片106等の複数箇所で風雨の侵入を阻止しているので、この外壁の横目地部分の防水性を高めることができる。
【特許文献1】特開2000−192563号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年の住宅においては、地球環境に対する関心の高まりから超長期にわたって循環利用できる質の高い住宅が求められている。そのため長期的に維持管理が容易な住宅が求められており、その構成部材においてもメンテナンスが容易であることが望ましい。
【0005】
上述の水切り構造100は、防水性を高めることはできるものの、水切り板104には立上がり片102が設けられており、この立上がり片102が引っ掛かって上側外壁パネル101を住宅に取付けたままでは、水きり板104を取り外すことは困難であり、水切り板104が劣化した場合のメンテナンス性が劣る。
【0006】
そこで、本発明は、十分な防水性を有するとともに容易にメンテナンスすることができる水切り構造及びこの水切り構造のメンテナンス方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の水切り構造は、建物躯体に上下方向に配置された外壁パネル間の横目地における水切り構造であって、一端側が前記建物躯体に固定されるとともに、他端が前記横目地の屋内側に配置される取付部材と、屋内側端部が該取付部材に着脱自在に固定される固定片を形成するとともに、該固定片の上端にはその上方が前記外壁パネルに水密的に当接する弾性体で形成された止水ヘラが固定され、前記固定片から延びる支持腕部が前記外壁パネル間の横目地を通って屋外側に突出し、該支持腕部の先端に係止部が形成された支持部材と、前記固定片に形成された保持部に一端側に形成された被保持部が保持されるとともに、前記外壁パネル間の横目地を通って屋外側に突出した他端に前記係止部に係合する被係止部が形成され、前記被保持部の手前側に上側の前記外壁パネルに水密的に当接する弾性体で形成された水切りヘラが固定された水切部材と、上側の前記外壁パネルの下面と、前記水切部材との間隙に設けられてこれらの上側の外壁パネルの下面と前記水切部材の間を密封する弾性止水材と、を備え、前記支持腕部は、その下側に当該支持腕部と下側の前記外壁パネルの上面との間隙を埋める下部水密材を具備するとともに、その上側には屋内外方向を向けて少なくとも前記支持腕部の中間部及び両側部を含む複数箇所に所定の流水間隔を開けて貼着される複数の水密支持材を具備し、前記水切部材は、前記外壁パネルの横目地に沿って、その端部を相互に突合わせて横方向に複数並設されるものであって、少なくとも前記水切部材の突合わせる端部の下方には、前記支持腕部の中間部に貼着される前記水密支持材が配置されることを特徴としている。
【0008】
請求項2に記載の水切り構造は、建物躯体に上下方向に配置された外壁パネル間の横目地における水切り構造であって、屋内側端部に固定片を形成するとともに、該固定片の上端にはその上方が前記外壁パネルに水密的に当接する弾性体で形成された止水ヘラが固定され、前記固定片から延びる支持腕部が前記外壁パネル間の横目地を通って屋外側に突出し、当該屋外側で下方に折曲する折曲片を形成し、該折曲片が下側の前記外壁パネルに着脱自在に固定されるとともに、該支持腕部の先端に係止部が形成された支持部材と、前記固定片に形成された保持部に一端側に形成された被保持部が保持されるとともに、前記外壁パネル間の横目地を通って屋外側に突出した他端に前記係止部に係合する被係止部が形成され、前記被保持部の手前側に上側の前記外壁パネルに水密的に当接する弾性体で形成された水切りヘラが固定された水切部材と、上側の前記外壁パネルの下面と、前記水切部材との間隙に設けられてこれらの上側の外壁パネルの下面と前記水切部材の間を密封する弾性止水材と、を備え、前記支持腕部は、その下側に当該支持腕部と下側の前記外壁パネルの上面との間隙を埋める下部水密材を具備するとともに、その上側には屋内外方向を向けて少なくとも前記支持腕部の中間部及び両側部を含む複数箇所に所定の流水間隔を開けて貼着される複数の水密支持材を具備し、前記水切部材は、前記外壁パネルの横目地に沿って、その端部を相互に突合わせて横方向に複数並設されるものであって、少なくとも前記水切部材の突合わせる端部の下方には、前記支持腕部の中間部に貼着される前記水密支持材が配置されることを特徴としている。
【0009】
請求項3に記載の水切り構造は、前記弾性止水材は、上側の前記外壁パネルの下側面に水密的に当接する上部と、前記水切部材に水密的に当接する下部と、を含み、少なくとも上部が管状であることを特徴としている。
【0010】
請求項4に記載の水切り構造は、前記水切部材は、前記弾性止水材の裏面に形成されている嵌合溝に嵌合する突出片を具備することを特徴としている。
【0011】
請求項5に記載の水切り構造は、前記支持部材の固定片と前記止水ヘラの基端とは、着脱自在に嵌合されることを特徴としている。
【0012】
請求項6に記載の水切り構造は、前記水切部材の屋内側の端部と前記水切りヘラの基端とは、着脱自在に嵌合されることを特徴としている。
【0013】
請求項7に記載の水切り構造のメンテナンス方法は、請求項1から請求項5のいずれかに記載の水切り構造のメンテナンス方法であって、前記弾性止水材を上側の前記外壁パネルと前記水切腕部との間隙から屋外方向に引き剥がし、次に、前記被係止部の前記係止部との係合を解除して前記被保持部を前記保持部から引き離しつつ前記水切部材を屋外方向に引き出し、更に、前記固定片の前記取付部材との固定を屋外側から前記横目地を通って挿入された工具により解除して、前記支持部材を前記支持腕部の上面に貼着された前記水密支持材とともに屋外方向に引き出し、前記弾性止水材を交換するとともに、前記水切り部材及び前記支持部材を交換又は補修して、前記支持部材をその上面に貼着された前記水密支持材とともに前記外壁パネルの横目地に屋外側から挿入して、前記固定片と前記取付部材とを固定し、次いで、前記水切部材を前記外壁パネルの横目地に屋外側から挿入して、前記保持部に前記被保持部を保持させつつ前記被係止部を前記係止部に係合させ、更に、交換した新たな弾性止水材を上側の前記外壁パネルの下端と前記水切腕部との間隙に屋外側から押し込むことを特徴としている。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に記載の水切り構造によると、建物躯体に固定される取付部材と、支持部材とは屋外側から着脱自在に固定されており、上側の外壁パネルに当接する止水ヘラ及び水切りヘラは弾性体で形成されているので、この水切り構造を構成する支持部材及び水切部材が経年劣化して、交換が必要となった場合には、まず弾性止水材を屋外側に引き剥がした後、水切部材の被係止爪を支持部材の係止爪から取外して、水切部材を屋外側に引き出して取り外す。上側の外壁の屋内側面に当接している水切りヘラは弾性体で形成されており、水切部材を屋外側に取り外す際には弾性変形するので、上側の外壁に引っ掛かって、水切部材が取り外せないという不具合は生じなく容易に取り外せる。
【0015】
そして、次に支持部材を取り外す時には、横目地を通じて、屋外側から取付部材と支持部材との固定を解除してから、屋外側に取り外す。上側の外壁の屋内側面に当接している止水ヘラは水切りヘラと同様に弾性体で形成されているので、上側の外壁に引っ掛かかることなしに、容易に取り出せる。
【0016】
以上のようにして、支持部材及び水切部材を横目地から取り外した後で、新たな劣化していない支持部材を横目地を通して取付部材に固定し、新たな劣化していない水切部材を支持部材に固定し、屋外側から横目地を通じて弾性止水材を水切部材と上側の外壁パネルの下面との間に押し込んで止水を図ることによって、極めて容易にこれらの部材を交換することができる。
【0017】
このように本発明の水切り構造によると、経年劣化などにより補修や交換が必要となる支持部材、水切部材、及び弾性止水材を極めて簡単に取り外すことができ、また、補修や交換した支持部材、水切部材、及び弾性止水材を極めて簡単に取付けることができる。以上のように、外壁よりも屋内側に設置され風雨に晒されることもないので劣化しにくく殆どメンテナンスの必要性が生じない取付部材を除き、風雨に晒され経年劣化によりメンテナンスの必要性が生じる支持部材、水切部材、及び弾性止水材を極めて簡単にメンテナンスすることができる。
【0018】
また、請求項1に記載の水切り構造によると、上側の外壁パネル屋内側面に水密的に当接する弾性体で形成された水切りヘラと、上側の外壁パネルと水切部材との間隙に沿って外壁パネルの外側から押し込まれる弾性止水材と、を備えるので、上下の外壁パネルの間の横目地は、これら水切りヘラと弾性止水材とで、2重に防水されており防水性に優れる。特に水切りヘラは、上側の外壁パネルの内側面に水密的に当接するので、例えば外壁パネルの縦目地を通って横目地へ雨水が侵入したような場合にも、建物内に雨水が侵入することを抑制できる。
【0019】
さらに、請求項1に記載の水切り構造によると、支持腕部の上面に屋内外方向を長手方向として少なくとも支持腕部の中間部及び両側部を含む複数箇所に所定の流水間隔を開けて貼着される複数の水密支持材が設けられており、少なくとも前記水切部材の突合わせる端部の下方には、前記支持腕部の中間部に貼着される前記水密支持材が配置されるので、水切部材の突合わせる端部同士の間隙から雨水等の水が流れ落ちた場合でも、中央部に貼着される水密支持材によって下方に流下することを防ぐことができる。更にこの中間部の水密支持材と水切腕部と間を通って、支持部材の支持腕部上に水が流れ出たとしても、支持腕部の両側部に水密支持材が設けられているので、水が支持腕部の両側部から下側の外壁パネルの上端面に落ちることがなく、水密支持材同士の間隙である流水間隔を通って屋外側に排出される。
【0020】
また支持腕部の下面と下側の外壁パネルの上端面との間には、それぞれに水密的に当接する下部水密材が設けられているので、例えば外部から吹き上げる風雨によって、支持腕部の下面に入り込んだか風雨が建物内に侵入することを防ぐことができる。
【0021】
請求項2に記載の水切り構造によると、請求項1と同様の効果を奏するとともに、支持部材の屋外側に形成される折曲片が外壁パネルに着脱自在に構成されているので、請求項1に記載の水切り構造のように、建物躯体に固定される取付部材が必要なくなる。したがって、部品点数を減らすことができ、安価に構成することができる。また、このように、屋外側で外壁パネルに着脱自在に構成されることで、屋内側の横目地の奥で固定しているような場合と異なり、横目地の間に工具などを差し込む必要もなく、より簡単に水切り構造の設置及びメンテナンス作業をすることができる。
【0022】
請求項3に記載の水切り構造によると、弾性止水材は、少なくともその上部が管状であるので、例えば上部が2枚の襞状に形成されてその間に溝ができているような場合に比べて、雨水等の水が溜まることがなく弾性止水材が劣化することを抑制できる。
【0023】
請求項4に記載の水切り構造によると、水切部材には、弾性止水材の裏面に形成している嵌合溝に嵌合する突出片が設けられているので、この突出片を嵌合溝に嵌合させることにより、弾性止水材が経年変化で横目地から外れることを防ぐことができる。
【0024】
請求項5に記載の水切り構造によると取付部材に固定されている支持部材の固定片と止水ヘラの基端とは、着脱自在に嵌合されるので、例えば止水ヘラが劣化したような場合に止水ヘラのみを交換することができる。
【0025】
請求項6に記載の水切り構造によると、水切部材の屋内側の端部と水切りヘラの基端とは、着脱自在に嵌合されるので、例えば水切りヘラが劣化したような場合に、水切りヘラのみを交換することができる。
【0026】
請求項7に記載の水切り構造のメンテナンス方法によると、外壁パネルを取り外すことなく、屋外側から簡単に、弾性止水材を交換するとともに、水切り部材及び支持部材を交換又は補修することができるので、水きり構造を簡単に適切にメンテナンスすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、この発明における水切り構造1について、各図を参照しつつ説明する。水切り構造1は、図1及び図2に示すように、上側外壁パネル2aと下側外壁パネル2bとの間の横目地2cにおける水切り構造1であって、住宅等の建物の躯体を構成する軸組3と梁4との間に一端が挿し込まれてボルト25及びナット26により固定された取付部材5と、外壁パネル2の屋内側で取付部材5に固定されつつ、屋外方向に突出してその先端に係止爪6を具備する支持部材7と、支持部材7の上面に貼着される水密支持材28と、この支持部材7と下側外壁パネル2bとの間に設けられる下部水密材29と、支持部材7の上側に配設され、一端側が係止爪6に係合される被係止爪8を有する水切部材9と、この水切部材9と上側外壁パネル2aの下面との間隙に沿って屋外側から押し込まれる弾性止水材10と、を備える。
【0028】
取付部材5は、図1、図2、及び図3に示すように、断面略L字状に形成されたアルミ材であり、一端側には、取付孔27が設けられており、H鋼で形成された梁4の下側のフランジと、梁4の下側に形成される軸組3との間に挿入されて、取付孔27に押入されたボルト25及びナット26で固定されている。この取付部材5の他端は、軸組3と外壁パネル2との間に垂れ下がって横目地2cに面している垂れ部13を形成しており、この垂れ部13には横目地2c方向からビス11を螺着可能な貫通孔12が設けられている。なお、本実施形態においては、取付部材5は梁4の下側のフランジと軸組3との間で固定されているが、梁4の上側のフランジとその上に設けられた軸組3との間に固定されるものであってもよく、そのほか建物の躯体に強固に固定できるその他の形状であっても良い。このように水切り構造1を建物に取付ける部材である取付部材5が建物の躯体に強固に固定されているので、水切り構造1は建物に強固に固定される。
【0029】
支持部材7は、取付部材5の垂れ部13に密接する固定片14と、この固定片14の中間位置から外壁パネル2の横目地2cを通って屋外方向に向かって下方に傾斜しつつ延出し、その屋外側の端部が下向きに折曲した折曲片15aを有する支持腕部15と、固定片14の上端に形成した嵌め込み溝14aにその基端部16aが嵌込み固定され、その先端が上側外壁パネル2aの屋内側面に当接する例えば弾性を有するゴム又は樹脂で形成された止水ヘラ16と、支持腕部15の折曲片15aから突出して設けられ、先端が斜め上方に折り返された形状の係止爪6と、を具備する。固定片14には、垂れ部13の貫通孔12に合致する固定孔17が設けられており、この固定孔17と貫通孔12とに横目地12c側からビス11を螺着させることにより、取付部材5に支持部材7は固定される。また、固定片14には、その中間部に屋外方向に開口した保持溝30が形成されており、水切部材9の一端を保持可能となっている。
【0030】
この支持部材7の横目地2cの横方向の長さは例えば10センチメートル程度であり、支持腕部15の上面には例えば幅2センチメートル程度の水密支持材28が屋内外方向を長手方向として、その中間部及び両側部に貼着されている。これにより中間部水密支持材28aと、両側の側部水密支持材28bとの間にはそれぞれ3センチメートル程度の流水間隔32が開いており、支持腕部15の上面にこのような流水間隔32を設けることで、支持腕部15に侵入した雨水等を屋外側に排出することができる。このように構成される支持部材7は外壁パネル2の横目地2cに沿って所定間隔で複数固定されており、この上方に設置される水切部材9を安定的且つ長期的に保持することができる。
【0031】
下部水密材29は、例えばゴムやシリコン等の弾性体で形成され、間隙に水密よく収まることができる部材であって、支持部材7の支持腕部15と下側外壁パネル2bの上端面との間に収まって、両部材15、2bに水密よく当接し、この間隙を封止している。
【0032】
水切部材9は、図1、図2、及び図4に示すように、横目地2cに沿って形成されるものであって、屋外側の端部に支持部材7の係止爪6に係止される被係止爪8と、屋内側の端部に形成され、支持部材7の固定片14に設けられた保持溝30に保持される被保持突条31と、この被保持突条31から横目地2cを通って屋外側に突出するとともに水密支持材28の上面に密着する水切腕部20と、被保持突条31の手前側に設けられ、その基端部18aが水切腕部20の上面に形成されたヘラ固定部20aに着脱自在に固定され、その先端側が上側外壁パネル2aに水密的に当接する弾性体で形成された水切りヘラ18と、ヘラ固定部20a付近から屋外方向に突出する先端がやや膨らんで形成された突出片19と、が設けられている。
【0033】
被係止爪8は、係止爪6に上側から噛み合う形状であって、この被係止爪8と係止爪6との係合、及び被保持突条31と保持溝30との嵌合により、水切部材9は支持部材7に支持される。この水切部材9の横目地2c方向の長さは例えば1メートルであり、横目地2cに沿って、複数の水切部材9がその端部同士を相互に突合わせて並設されている。そして、この水切部材9の突合わせた端部、及び水切部材9の中央の下方には水密支持材28を挟んで支持部材7が配置されている。このうち水切部材9の突合わせた端部の下側には中央部水密支持材28aが当該端部に沿って配置されており、水切部材9の突合わされる端部同士の間隙から雨水などが下方に漏れるような場合にも、この中央部水密支持材28aによって雨水が支持部材7に流れ出ることを防いでいる。また、たとえ雨水等が、支持部材7の支持腕部15にまで侵入したとしても、支持腕部15上面の両側部には側部水密支持材28bが設けられているので、中央部水密支持材28aと側部水密支持材28bとの間の流水間隔32を通って、支持腕部15の側方に雨水等が流れ落ちることはなく、雨水等を屋外側に排出することができる。
【0034】
弾性止水材10は、図1、図2、及び図5に示すように、例えば弾性体のゴムや樹脂で形成された長尺のシール材であって、上側外壁パネル2aの下端面と、水切部材9の水切腕部20と、の間に、横目地2cに沿って屋外側から押し込まれている。この弾性止水材10の屋外側となる面には、化粧材21が取付けられており、屋内側は、水切部材9の水切腕部20に水密良く当接する襞部22が2重に設けられており、上側外壁パネル2aの下端面に水密的に当接する上部は内部に空洞が形成された管状の凸部23が形成されている。そして、この襞部22と凸部23との間の屋内側となる面には、水切部材9の突出片19を嵌め合わせることができる形状の嵌合溝24が設けられている。この嵌合溝24と突出片19とを嵌め合わせることで、弾性止水材10が経年変化したような場合にも、横目地2cから外れることを防ぐことができる。
【0035】
なお、この弾性止水材10は内部に金属などの芯材が入ったものを用いることもできるが、好ましくは芯材が入っておらず輸送時に渦巻状に保持できるものがよい。渦巻状に保持できる弾性止水材10を用いると、相当長い形状のものであってもかさ張らずに輸送することができるので、横目地の全周に繋ぎ目の無い一本の弾性止水材10を押し込むことができ、これにより、弾性止水材10の繋ぎ目から雨水などが侵入することを防ぐことができる。
【0036】
このように弾性止水材10の屋内側の上部に、管状の凸部23が設けられることにより、弾性止水材10の上部に雨水などの水が溜まることが無い。したがって、弾性止水材10の劣化を抑制することができ、より長期的に止水性能を維持することができる。
【0037】
以上のように、水切り構造1は、弾性止水材10による一次防水と、水切部材9の水切りヘラ18による二次防水の2重の防水を施しているので、より防水性を高めることができる。また、水切りヘラ18は、上側外壁パネル2aの屋内側面に水密的に当接しているので、互いに隣接する上側外壁パネル2aの図示しない縦目地から雨水が侵入したような場合にも、縦目地と横目時2cとの交差部分で、水切りヘラ18により防水することができる。
【0038】
次に、以上のように構成される水切り構造1を補修又は交換する場合について説明する。この水切り構造1において、建物の梁4と軸組3との間に挿入されて固定される取付部材5は、外壁パネル2の屋内側に配設されるので風雨に晒されることがなく、殆どメンテナンスを必要としない。そこで、水切り構造1を補修又は交換する場合には、この取付部材5を除く部材を外壁パネル2の横目地2cから取り外して行う。まず、図6に示すように、弾性止水材10を上側外壁パネル2aの下端面と水切部材9の水切腕部20との間から引き剥がす。この時、例えばカッターなどを横目地2cの間から挿入して、弾性止水材10の化粧材21及び襞部22の一部を切断すると引き剥がし易くなる。
【0039】
そして、次に、図7に示すように、水切部材9の被係止爪8を支持部材7の係止爪6から取り外して、水切部材9を屋外方向に取り外す。このとき、保持溝30に保持されている被保持突条31も、水切部材9を屋外方向に引き出すことにより保持溝30から離脱する。そして、水切りヘラ18は弾性変形するので、上側外壁パネル2aに水切りヘラ18が引っ掛かって水切部材9が取り外せないといったことも無い。
【0040】
次に、図8に示すように、取付部材5の垂れ部13と支持部材7の固定片14とを接続しているビス11を、横目地2cから挿入したドライバーによって、貫通孔12及び固定孔17から取り外す。そして、図9に示すように、支持部材7を屋外方向に引っ張って取り外す。この時、止水ヘラ16は弾性変形するので、上側外壁パネル2aに止水ヘラ16が引っ掛かって支持部材7が取り外せないといったことも無い。
【0041】
上述のようにして、弾性止水材10、支持部材7、及び水切部材9を取り外した後、弾性止水材10を新しいものと交換し、支持部材7及び水切部材9を例えば止水ヘラ16及び水切りヘラ18を交換するなどのメンテナンスを行い、その後、支持部材7、水切部材9、及び弾性止水材10を横目地2cに取付けなおす。具体的には、支持部材7をその上面に貼着された水密支持材28とともに外壁パネルの横目地2cに屋外側から挿入して固定片14の固定孔17及び取付部材5の貫通孔12にビス11を挿入して固定し、次いで、水切部材9を横目地2cに屋外側から挿入して、保持溝30に被保持突条31を保持させつつ被係止爪8を係止爪6に係合させ、更に、交換した新たな弾性止水材10を上側外壁パネル2aの下端と水切腕部20との間隙に横目地2cの屋外側から押し込む。
【0042】
このように、本実施形態の水切り構造1は、修繕や交換等のメンテナンスが必要な支持部材7、水切部材9、及び弾性止水材10を、極めて簡単に取り外し及び取り付けするができる。したがって、外壁パネル2を取り外すような大掛かりな工事をすること無しに水切り構造1のメンテナンスをすることができる。
【0043】
なお、本発明の実施の形態は上述の形態に限ることなく、本発明の思想の範囲を逸脱しない範囲で適宜変更することができることは云うまでもない。
【0044】
本実施形態においては、止水ヘラ16及び水切りヘラ18は、それぞれ支持部材7及び水切部材9の端部で嵌込み固定されるものとしたが、これでなくても良い。例えば、図10に示すように止水ヘラ16及び水切りヘラ18が、それぞれ支持部材7及び水切部材9の端部で接着固定されるものであっても良い。
【0045】
また、本実施形態係る水切り構造1は、住宅等の建物の躯体を構成する軸組3と梁4との間に一端が挿し込まれてボルト25及びナット26により固定された取付部材5を有し、支持部材7がこの取付部材5に外壁パネル2の屋内側で固定されつつ、屋外方向に突出する構成としたが、これに限定されるものではない。例えば、図11及び図12に示すように、支持部材7は、その支持腕部15の折曲片15aが下側外壁パネル2bに固定されるものであっても良い。すなわち、例えば折曲片15aはネジ33を挿入することができる挿入孔34を有し、下側外壁パネル2bの屋外側面に形成されたネジ孔35にネジ固定することで、支持部材7が着脱自在に固定される構成であってもよい。
【0046】
このように構成すると、取付部材5が必要なくなるので部品点数を減らすことができるとともに、下側外壁パネル2bの屋外側に固定されているので、横目地2cの奥で固定される場合に比べて、作業がより容易なものとなる。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明に係る水切り構造1は、耐用年数が100年から200年にも及ぶ超長期にわたって利用できる住宅における水切り構造1として、好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】水切り構造の全体構成を示す断面図。
【図2】水切り構造の全体構成を示す一部省略斜視図。
【図3】取付部材及び支持部材の構成を示す一部省略斜視図。
【図4】水切部材の構成を示す一部省略斜視図。
【図5】弾性止水材の構成を示す一部省略斜視図。
【図6】水切り構造から弾性止水材を取り外す状態を示す図。
【図7】水切り構造から水切部材を取り外す状態を示す図。
【図8】支持部材を取付部材に固定するビスを取り外す状態を示す図。
【図9】水切り構造から支持部材を取り外す状態を示す図。
【図10】別の実施形態の水切り構造の全体構成を示す断面図。
【図11】取付部材を用いない実施形態の水切り構造の全体構成を示す断面図。
【図12】取付部材を用いない実施形態の水切り構造の外壁パネルへの取付状態を示す一部省略拡大断面図。
【図13】従来の水切り構造の一例を示す断面図。
【符号の説明】
【0049】
1 水切り構造
2 外壁パネル
2c 横目地
4 梁(躯体)
5 取付部材
6 係止爪
7 支持部材
8 被係止爪
9 水切部材
10 弾性止水材
15a 折曲片
16 止水ヘラ
18 水切りヘラ
19 突出片
24 嵌合溝
28 水密支持材
29 下部水密材
30 保持溝(保持部)
31 被保持突条(被保持部)
32 流水間隔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物躯体に上下方向に配置された外壁パネル間の横目地における水切り構造であって、
一端側が前記建物躯体に固定されるとともに、他端が前記横目地の屋内側に配置される取付部材と、
屋内側端部が該取付部材に着脱自在に固定される固定片を形成するとともに、該固定片の上端にはその上方が前記外壁パネルに水密的に当接する弾性体で形成された止水ヘラが固定され、前記固定片から延びる支持腕部が前記外壁パネル間の横目地を通って屋外側に突出し、該支持腕部の先端に係止部が形成された支持部材と、
前記固定片に形成された保持部に一端側に形成された被保持部が保持されるとともに、前記外壁パネル間の横目地を通って屋外側に突出した他端に前記係止部に係合する被係止部が形成され、前記被保持部の手前側に上側の前記外壁パネルに水密的に当接する弾性体で形成された水切りヘラが固定された水切部材と、
上側の前記外壁パネルの下面と、前記水切部材との間隙に設けられてこれらの上側の外壁パネルの下面と前記水切部材の間を密封する弾性止水材と、を備え、
前記支持腕部は、その下側に当該支持腕部と下側の前記外壁パネルの上面との間隙を埋める下部水密材を具備するとともに、その上側には屋内外方向を向けて少なくとも前記支持腕部の中間部及び両側部を含む複数箇所に所定の流水間隔を開けて貼着される複数の水密支持材を具備し、
前記水切部材は、前記外壁パネルの横目地に沿って、その端部を相互に突合わせて横方向に複数並設されるものであって、
少なくとも前記水切部材の突合わせる端部の下方には、前記支持腕部の中間部に貼着される前記水密支持材が配置されることを特徴とする水切り構造。
【請求項2】
建物躯体に上下方向に配置された外壁パネル間の横目地における水切り構造であって、
屋内側端部に固定片を形成するとともに、該固定片の上端にはその上方が前記外壁パネルに水密的に当接する弾性体で形成された止水ヘラが固定され、前記固定片から延びる支持腕部が前記外壁パネル間の横目地を通って屋外側に突出し、当該屋外側で下方に折曲する折曲片を形成し、該折曲片が下側の前記外壁パネルに着脱自在に固定されるとともに、該支持腕部の先端に係止部が形成された支持部材と、
前記固定片に形成された保持部に一端側に形成された被保持部が保持されるとともに、前記外壁パネル間の横目地を通って屋外側に突出した他端に前記係止部に係合する被係止部が形成され、前記被保持部の手前側に上側の前記外壁パネルに水密的に当接する弾性体で形成された水切りヘラが固定された水切部材と、
上側の前記外壁パネルの下面と、前記水切部材との間隙に設けられてこれらの上側の外壁パネルの下面と前記水切部材の間を密封する弾性止水材と、を備え、
前記支持腕部は、その下側に当該支持腕部と下側の前記外壁パネルの上面との間隙を埋める下部水密材を具備するとともに、その上側には屋内外方向を向けて少なくとも前記支持腕部の中間部及び両側部を含む複数箇所に所定の流水間隔を開けて貼着される複数の水密支持材を具備し、
前記水切部材は、前記外壁パネルの横目地に沿って、その端部を相互に突合わせて横方向に複数並設されるものであって、
少なくとも前記水切部材の突合わせる端部の下方には、前記支持腕部の中間部に貼着される前記水密支持材が配置されることを特徴とする水切り構造。
【請求項3】
前記弾性止水材は、上側の前記外壁パネルの下面に水密的に当接する上部と、前記水切部材に水密的に当接する下部と、を含み、
少なくとも上部が管状であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の水切り構造。
【請求項4】
前記水切部材は、前記弾性止水材の裏面に形成されている嵌合溝に嵌合する突出片を具備することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の水切り構造。
【請求項5】
前記支持部材の固定片と前記止水ヘラの基端とは、着脱自在に嵌合されることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の水切り構造。
【請求項6】
前記水切部材の屋内側の端部と前記水切りヘラの基端とは、着脱自在に嵌合されることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載の水切り構造。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれかに記載の水切り構造のメンテナンス方法であって、
前記弾性止水材を上側の前記外壁パネルと前記水切部材との間隙から屋外方向に引き剥がし、次に、前記被係止部の前記係止部との係合を解除して前記被保持部を前記保持部から引き離しつつ前記水切部材を屋外方向に引き出し、更に、前記固定片の前記取付部材との固定を屋外側から前記横目地を通って挿入された工具により解除して、前記支持部材を前記支持腕部の上面に貼着された前記水密支持材とともに屋外方向に引き出し、
前記弾性止水材を交換するとともに、前記水切り部材及び前記支持部材を交換又は補修して、
前記支持部材をその上面に貼着された前記水密支持材とともに前記外壁パネルの横目地に屋外側から挿入して、前記固定片と前記取付部材とを固定し、次いで、前記水切部材を前記外壁パネルの横目地に屋外側から挿入して、前記保持部に前記被保持部を保持させつつ前記被係止部を前記係止部に係合させ、更に、交換した新たな弾性止水材を上側の前記外壁パネルの下面と前記水切部材との間隙に屋外側から押し込むことを特徴とする水切り構造のメンテナンス方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2010−19006(P2010−19006A)
【公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−180903(P2008−180903)
【出願日】平成20年7月11日(2008.7.11)
【出願人】(000198787)積水ハウス株式会社 (748)
【Fターム(参考)】