説明

水域浄化装置、水性汚染生物回収船及び水性汚染生物の処理方法

【課題】処理コストの低減を図った水域浄化装置及び水性汚染生物回収船を提供する。
【解決手段】水域浄化装置10Aは、水性汚染生物を含む湖水11等を流入する流入通路12と、流入された湖水11等に対し、微細気泡13を供給する微細気泡発生装置14と、発生した微細気泡13が付着された水性汚染生物群15からなる濃縮水16を収集する堰17を有する浮上槽18と、堰17で収集された水性汚染生物群15を処理する水性汚染生物処理装置であるオリフィス31とを具備してなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばアオコ等の水性汚染生物を浄化する水域浄化装置、水性汚染生物回収船及び水性汚染生物の処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
湖水等を汚染する例えばアオコ等の水性汚染生物は、細胞内にガス胞を持つこと、群体を形成することから水域内で浮上、沈降を繰り返す。そして、浮上したアオコが死滅し腐敗することにより、湖沼の汚濁、悪臭の発生等の公害が発生し、環境保全の観点から問題となっている。
【0003】
このような環境汚染の要因であるアオコ等の水性汚染生物の処理方法として、殺菌法及びろ過回収法、種々の処理方法が提案されている。
【0004】
しかしながら、殺菌法は薬品等を用いてアオコを殺す方法であり、大量の薬品が必要であること、また薬品を用いるので環境の安全性等を考慮する必要がある。
また、ろ過回収法はろ布等を用いて物理的にアオコを回収する方法であり、大量のアオコを処理するためには大規模な装置が必要になるという問題がある。
いずれの処理方式も開放型水域の大規模処理には不向きである、という問題がある。
【0005】
そこで、本出願人は、キャビテーション処理装置を用いて、浮上したアオコを沈降させ、上記公害の発生を抑制する処理方法の一つを提案した(特許文献1)。
【0006】
【特許文献1】特開平11−47785号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、キャビテーション処理装置は、アオコの沈降性能は非常に高いが、数気圧程度のポンプ圧力が必要であり、例えば大量のアオコを処理しなければならない場合や、霞ヶ浦や琵琶湖等の大規模処理においては処理コストの増大が課題である。
【0008】
本発明は、前記問題に鑑み、処理コストの低減を図った水域浄化装置、水性汚染生物回収船及び水性汚染生物の処理方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決するための本発明の第1の発明は、水性汚染生物を含む湖水等を流入する流入通路と、流入された湖水等に対し、微細気泡を供給する微細気泡発生装置と、発生した微細気泡が付着された水性汚染生物群からなる濃縮水を収集する堰を有する浮上槽と、前記堰で収集された水性汚染生物群を処理する水性汚染生物処理装置とを具備してなることを特徴とする水域浄化装置にある。
【0010】
第2の発明は、第1の発明において、前記微細気泡が付着された水性汚染生物群からなる濃縮水を収集する堰を有する浮上槽を具備してなることを特徴とする水域浄化装置にあする。
【0011】
第3の発明は、第1又は2の発明において、前記微細気泡発生装置が、空気を供給してなる散気管、サイクロン式気泡発生装置、加圧式気泡発生装置又はエゼクター式気泡発生装置のいずれか一つであることを特徴とする水域浄化装置にある。
【0012】
第4の発明は、第1乃至3のいずれか一つの発明において、前記水性汚染生物処理装置が、オリフィス、ベンチュリ又はジェットノズルを有する浄化装置であることを特徴とする水域浄化装置にある。
【0013】
第5の発明は、第1乃至4のいずれか一つの発明において、前記水性汚染生物処理装置が、オリフィス、ベンチュリ又はジェットノズルを有する浄化装置であり、キャビテーションを発生させると同時に、前記水性汚染生物処理装置に導入する水に空気を混入してなると共に、その排出液を微細気泡として、浮上槽内に供給してなることを特徴とする水域浄化装置にある。
【0014】
第6の発明は、第1乃至5のいずれか一つの発明において、前記水性汚染生物がアオコであることを特徴とする水域浄化装置にある。
【0015】
第7の発明は、第1乃至6のいずれか一つの水域浄化装置を船本体に備えてなることを特徴とする水性汚染生物回収船にある。
【0016】
第8の発明は、第7の発明において、水性汚染生物群を水域から捕集する捕集装置を有することを特徴とする水性汚染生物回収船にある。
【0017】
第9の発明は、水性汚染生物に微細気泡発生装置から供給された微細気泡を付着させることにより浮上させ、水面域にて該水性汚染生物含有液を回収し、この水性汚染生物が濃縮された含有液を、キャビテーションを生ぜしめるオリフィス、ベンチュリ又はジェットノズルに供することにより水性汚染生物の増殖能力を失活させることを特徴とする水性汚染生物の処理方法にある。
【0018】
第10の発明は、第9の発明において、キャビテーション発生装置であるオリフィス、ベンチュリ又はジェットノズルの排出液を前記微細気泡とすることを特徴とする水性汚染生物の処理方法にある。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、例えばアオコ等の水性汚染生物を濃縮して処理することができ、大規模な環境汚染対策に有効である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、この発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この実施例によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施例における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
【実施例1】
【0021】
本発明による実施例1に係る水域浄化装置について、図面を参照して説明する。
図1は、実施例1に係る水域浄化装置を示す概略図である。
図1に示すように、本実施例に係る水域浄化装置10Aは、水性汚染生物を含む湖水11等を流入する流入通路12と、流入された湖水11等に対し、微細気泡13を供給する微細気泡発生装置14と、発生した微細気泡13が付着された水性汚染生物群15からなる濃縮水16を収集する堰17を有する浮上槽18と、堰17で収集された水性汚染生物群15を処理する水性汚染生物処理装置であるオリフィス31とを具備してなるものである。
【0022】
なお、本実施例における図面においては、湖水等11は、浮上槽18の上部近傍から浮上槽18に流入しているが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば浮上槽18の下部から流入するようにしてもよい。この浮上槽18の下部から流入する場合には、微細気泡と接触する時間が稼げるのでより好ましいものとなる。
【0023】
ここで、本発明で水性汚染生物とは、例えばアオコ等の植物プランクトンを挙げることができる。前記アオコは、水泡を有しており、湖水等の水面又は水面下0〜1m程度を浮遊しており、水の滞留や大量に流入するリンや窒素等が要因となって富栄養化となった場合の異常繁殖で水質の汚濁等の汚染生物であり、例えば藍藻(らんそう)のミクロキスティスやアナベナなどの多くの種類がある。
【0024】
前記アオコの構成体は植物プランクトンであり、その1個の大きさは10μm程度であるが、これが集合して数100μm程度の群体を形成し、水性汚染生物群15となり、汚濁等の要因がさらに進むこととなる。
特に、アオコが大量発生した場合には、湖面が緑色となり、腐ると悪臭を放つので環境汚染の問題となる。
【0025】
本発明では、微細気泡発生装置14で発生させた微細気泡13を微細気泡供給管14aから浮上槽18に供給するようにしている。そして、ここで供給された微細気泡13は、浮上槽18内を浮上する際に、水性汚染生物群15に付着して水面近傍に水性汚染生物群15を積極的に浮上させるようにしている。
本実施例では、浮上層18の湖水11の流入口の下端側近傍から微細気泡13を発生する微細気泡供給管14aを設置するようにしている。
【0026】
そして、微細気泡13が付着して浮上した水性汚染生物群15は、湖水11がポンプP1を介して浮上槽18内に流入する流れに従って、流れの下流側に設けた堰17の方に導かれ、濃縮水排出口18aを通過して、微細気泡13が付着して浮上した水性汚染生物群15や集まった水性汚染生物群15が濃縮された濃縮水16となる。そして、この濃縮水16をポンプP2でオリフィス31に供給するようにしている。そして、供給された濃縮水16はオリフィスのキャビテーション作用により、濃縮水16に含まれる水性汚染生物群15の増殖能力を効果的に死活化させることとなる。すなわち、オフィス31を通過する際に、高流速化によって発生する泡キャビテーションの作用により、水性汚染生物群のガス胞が崩壊され、増殖能力が死活化することになる。
【0027】
前記水性汚染生物処理装置としては、キャビテーションを発生させるオリフィス31に限定されるものではなく、例えばベンチュリやジェットノズルとしてもよい。またこれらを複数台設置するようにしてもよい。
前記水性汚染生物群15が死活化された処理水33は湖沼、池等10に戻すようにしている。また、浮上槽18で水性汚染生物群15を濃縮除去した浄化水34も同様に湖沼、池等10に放流するようにしている。
【0028】
この結果、湖沼、池等10が浄化され、水質汚濁が軽減されることとなる。
特に、従来においては、大面積の湖沼10において、単にオリフィス31のみで水性汚染生物群15の細胞を崩壊させる場合には、大量の湖水11をそのまま処理する必要があったが、本発明によれば、湖水11の約0.5〜2割程度が堰17を越えてオリフィス331に供給することとなり、処理量の軽減を図ることができる。この結果、キャビテーション処理効率が向上し、大規模処理の処理コストの軽減化を図ることができる。
【0029】
前記微細気泡発生装置14の一例を図2及び図3−1〜図3−3に示す。
【0030】
図2に示すような水域浄化装置10Bでは、空気20を積極的に散気管21に供給して微細気泡13を発生させるようにしてもよい。
【0031】
また、図3−1に示すような空気20と水22とを供給して微細気泡13を発生してなるサイクロン式気泡発生装置25や、図3−2に示すような空気20と水22とを供給して微細気泡13を発生してなる加圧式気泡発生装置26又は、図3−3に示すような空気20を供給して微細気泡13を発生してなるエゼクター式気泡発生装置27等を例示することができるが、本発明はこれらに限定されるものではなく、微細気泡13を効率良く発生することができる装置であれば、いずれのものを用いてもよい。
【0032】
また、図4に示すように、オリフィス31によるキャビテーション作動で発生した微細気泡13を含む処理水33を浮上槽18の下部近傍から導入するようにしている。
このキャビテーションによりダメージを受けた水性汚染生物群は浮上しにくく、浄化水34にて放流される。
これにより、図2及び図3−1〜図3−3の微細気泡発生装置を別途設置することがなくなり、装置のコンパクト化を図ることができる。
【0033】
このような水域浄化装置は装置単独で設置してもよいが、さらには湖沼の一部に仕切り部を設け、水性汚染生物の濃縮を一体化させるようにしてもよい。
また流入する湖水11の流入流速が小さい場合には、浮上槽18の堰17の濃縮水排出口18aに向かうような強制的な流れを生じさせるようにしてもよい。
【0034】
なお、本実施例では堰を設けているが、堰を設けることなく浮上槽18の水面域或いは水面域近傍にて濃縮水を収集するようにしてもよい。
【実施例2】
【0035】
次に、前記水域浄化装置を備えた水性汚染生物回収船の実施例について図面を参照して説明する。
図5は水性汚染生物回収船の概略図である。
図5に示すように、本実施例に係る水性汚染生物回収船40は、浮上槽18とオリフィス31とからなる水域浄化装置を船本体41に設置してなるものである。前記水性汚染生物回収船40は岸からの無線により誘導することができるものであってもよい。
【0036】
そして、船本体の船尾に設けた水生汚染生物群15を捕集する捕集装置42により水性汚染生物群を含む湖水11を採取し、ポンプP1にて浮上槽18内に供給している。そして、浮上槽18に備えた微細気泡発生装置14から微細気泡を発生させ、前述したように濃縮水16をポンプP2でオリフィスに供給して細胞を死活化させるようにして大量の湖水を連続的に処理するようにしている。
【0037】
水性汚染生物回収船40で処理された処理水33と浄化水34は湖沼10に戻すことで、湖沼の浄化を図ることができる。
【0038】
以上説明したように、本発明の水域浄化装置を用いることにより、水性汚染生物に微細気泡発生装置から供給された微細気泡を付着させることにより浮上させ、水面域にて該水性汚染生物含有液を回収し、この水性汚染生物が濃縮された含有液を、キャビテーションを生ぜしめるオリフィス、ベンチュリ又はジェットノズルに供することにより水性汚染生物の増殖能力を失活させることができ、例えばアオコ等の水性汚染生物の処理を効率的に行うことができる。
【0039】
この際、キャビテーション発生装置であるオリフィス、ベンチュリ又はジェットノズルの排出液を前記微細気泡とすることで効率的によりするようにしてもよい。
【0040】
本発明によれば、大量のアオコ等の水性汚染生物を処理しなければならない場合(例えば霞ヶ浦や琵琶湖等の大規模処理)における処理コストの増大を大幅に低減することができることは勿論、小規模な水域における水性汚染生物の処理に用いるようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0041】
以上のように、本発明に係る水域浄化装置は、湖水等の大量に発生する例えばアオコ等の水性汚染生物を濃縮処理して大規模処理の処理コストを低減させることができ、例えば大面積の閉鎖水域の環境浄化に寄与する。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】実施例1に係る水域浄化装置の概略図である。
【図2】実施例1に係る他の水域浄化装置の概略図である。
【図3−1】実施例1に係る水域浄化装置の微細気泡発生装置の概略図である。
【図3−2】実施例1に係る水域浄化装置の他の微細気泡発生装置の概略図である。
【図3−3】実施例1に係る水域浄化装置の他の微細気泡発生装置の概略図である。
【図4】実施例1に係る他の水域浄化装置の概略図である。
【図5】実施例2に係る他の水性汚染生物回収船の概略図である。
【符号の説明】
【0043】
10A〜10C 水域浄化装置
10 湖沼、池等
11 湖水
12 流入通路
13 微細気泡
14 微細気泡発生装置
15 水性汚染生物群
16 濃縮水
17 堰
18 浮上槽
31 オリフィス
33 処理水
34 浄化水

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水性汚染生物を含む湖水等を流入する流入通路と、
流入された湖水等に対し、微細気泡を供給する微細気泡発生装置と、
発生した微細気泡が付着された水性汚染生物群からなる濃縮水を水面域にて収集する浮上槽と、
前記収集された水性汚染生物群を処理する水性汚染生物処理装置とを具備してなることを特徴とする水域浄化装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記微細気泡が付着された水性汚染生物群からなる濃縮水を収集する堰を有する浮上槽を具備してなることを特徴とする水域浄化装置。
【請求項3】
請求項1又は2において、
前記微細気泡発生装置が、空気を供給してなる散気管、サイクロン式気泡発生装置、加圧式気泡発生装置又はエゼクター式気泡発生装置のいずれか一つであることを特徴とする水域浄化装置。
【請求項4】
請求項1乃至3いずれか一つのにおいて、
前記水性汚染生物処理装置が、オリフィス、ベンチュリ又はジェットノズルを有する浄化装置であることを特徴とする水域浄化装置。
【請求項5】
請求項1乃至4いずれか一つにおいて、
前記水性汚染生物処理装置が、オリフィス、ベンチュリ又はジェットノズルを有する浄化装置であり、キャビテーションを発生させると同時に、前記水性汚染生物処理装置に導入する水に空気を混入してなると共に、その排出液を微細気泡として、浮上槽内に供給してなることを特徴とする水域浄化装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか一つにおいて、
前記水性汚染生物がアオコであることを特徴とする水域浄化装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか一つの水域浄化装置を船本体に備えてなることを特徴とする水性汚染生物回収船。
【請求項8】
請求項7において、
水性汚染生物群を水域から捕集する捕集装置を有することを特徴とする水性汚染生物回収船。
【請求項9】
水性汚染生物に微細気泡発生装置から供給された微細気泡を付着させることにより浮上させ、水面域にて該水性汚染生物含有液を回収し、この水性汚染生物が濃縮された含有液を、キャビテーションを生ぜしめるオリフィス、ベンチュリ又はジェットノズルに供することにより水性汚染生物の増殖能力を失活させることを特徴とする水性汚染生物の処理方法。
【請求項10】
請求項9において、
キャビテーション発生装置であるオリフィス、ベンチュリ又はジェットノズルの排出液を前記微細気泡とすることを特徴とする水性汚染生物の処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3−1】
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【図3−2】
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【図3−3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−160178(P2007−160178A)
【公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−357815(P2005−357815)
【出願日】平成17年12月12日(2005.12.12)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】