水底三次元画像作成システムおよび水底三次元画像作成方法
【課題】 緯度、経度の位置と水深の深度を同時に正確に測量する水底測量を行い、また、水底の地物をきめ細かく立体的に表現できる水底三次元画像を作成すること。
【解決手段】GPS電波受信装置8を有する位置検出装置2にて位置情報データを獲得し、水深検出装置3にて水面下の深度情報データを獲得し、位置情報データと深度情報データから位置深度データを作成すること、及び、該位置深度データに基づき、位置情報データを平面上にプロットしてポイントを表示し、該ポイントを結ぶ三角形を形成し、前記ポイントの有する深度情報データに基づいて該三角形内に創出ポイントを形成し、該ポイントと該創出ポイントの少なくとも何れか一方を頂点とする新規三角形を前記三角形に代えて形成し、該新規三角形に着色して水底三次元画像作を作成することとした。
【解決手段】GPS電波受信装置8を有する位置検出装置2にて位置情報データを獲得し、水深検出装置3にて水面下の深度情報データを獲得し、位置情報データと深度情報データから位置深度データを作成すること、及び、該位置深度データに基づき、位置情報データを平面上にプロットしてポイントを表示し、該ポイントを結ぶ三角形を形成し、前記ポイントの有する深度情報データに基づいて該三角形内に創出ポイントを形成し、該ポイントと該創出ポイントの少なくとも何れか一方を頂点とする新規三角形を前記三角形に代えて形成し、該新規三角形に着色して水底三次元画像作を作成することとした。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水底に存する地形や構築物の形状を捉えるための水底三次元測量システムと、該システムを用いて測量したデータから水底地物を鳥瞰図で表出する水底三次元画像作成システム、および水底三次元画像作成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
水底における測量は、ダムにおける堆積土の調査や、海洋における洗掘の調査などにおいて極めて重要である。従来、こうした水底測量を行うには、船上から探索棒やワイヤを水底に垂らして水深を調査するか、探索棒に変えて魚群探知機を用いて水深を調査する方法が行われている。魚群探知機による水底測量に関する技術は例えば特開平8−29530号公報(特許文献1)に記載されている。
【特許文献1】特開平8−29530号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、探索棒等で測量する方法では、水深が深い場合における測量が困難であり、また、測深時には船の運航を止め探索棒等を上げ下げするという手間のかかる方法であった。また、魚群探知機で測量するにしても、例えば図20で示すような断面的な水深図を得るのがせいぜいであり、地形の三次元的な把握が困難で、堆積土の計量なども不可能であった。そのため、こうした水深データでは、水底の漠然とした状況は把握できるものの、位置情報データの正確性に乏しく、また、立体的な把握が困難であった。
【0004】
そこで本発明は、位置情報データを含めた正確な水底測量を可能とするとともに、水底の地物を立体的に表す水底三次元画像を作成することを目的としてなされたものであり、「等高線相乗細分法」と呼ぶ手法を完成させたものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
すなわち本発明は、GPS電波受信装置を有する位置検出装置と水深検出装置とを備え、水上を移動して位置と深度を観測する測量手段と、GPS電波に基づく位置情報データと水面下の深度情報データから位置深度データを作成する三次元データ作成手段とを備える水底三次元測量システムを提供する。
【0006】
GPS電波受信装置を有する位置検出装置と水深検出装置とを備え、水上を移動して位置と深度を観測する測量手段と、GPS電波に基づく位置情報データと水面下の深度情報データから位置深度データを作成する三次元データ作成手段とを備えたため、GPS電波の届かない水中にまで、GPSシステムを利用した精度の高い位置情報データをもたらすことができ、深度情報データと融合させることで水底における精密な三次元測量を行うことができる。そして、この位置深度データに基づき、水中鳥瞰図である水底三次元画像を作成することができる。ここで「鳥瞰図」とは、空中から地上を見おろしたように描いた図を言い、水中の地物を描いた図には厳密には当てはまらず鯨瞰図と言うべきものであるが、ここでは水中の地物を三次元的に表す場合も「鳥瞰図」と呼ぶものとする。
【0007】
位置深度データは、位置情報と深度情報とを同期させて作成することができる。位置情報と深度情報とを同期させることで、緯度、経度が正確に捉えられた場所の水深を検出することができる。
【0008】
また、三次元データ作成手段は、水深検出装置に基づく深度情報データに観測時における水面水位データによる補正を加えて位置深度データを作成することができる。水深検出装置に基づく深度情報データに観測時における水面水位データによる補正を加えて位置深度データを作成するため、得られる位置深度データが観測時刻や観測点の標高の相違の影響を受けない正確なデータとすることができる。
【0009】
前記位置情報データは、前記測量手段が水上をらせん状に航行することで検出した位置情報データであるものとすることができる。前記位置情報データを前記測量手段が水上をらせん状に航行することで検出した位置情報データとしたため、観測領域を大概的に網羅して観測することができ、また船の航行もし易いため、位置情報データ及び深度情報データを正確にかつ簡単に得ることができる。
【0010】
前記測量手段は、前記位置情報データと前記深度情報データを三次元データ作成手段に送信する無線通信手段を備えることができる。前記測量手段が前記位置情報データと前記深度情報データを三次元データ作成手段に送信する無線通信手段を備えることとしたため、測量手段とは遠隔地にある三次元データ作成手段であっても三次元データ作成を行うことができる。
【0011】
また、本発明は、位置情報データと深度情報データとを有する位置深度データに基づき、位置情報データを平面上にプロットしポイントを表示するポイント表示手段と、該ポイントを頂点とする原始三角形を形成する原始三角形形成手段と、前記位置深度データの有する深度情報データから前記原始三角形内に新たな創出ポイントを設け、原始三角形を消去して、前記ポイントと該創出ポイントの少なくとも何れか一方を頂点とする新規三角形を形成する再三角形形成手段と、前記平面上に形成された新規三角形に着色する着色表示手段と、を備え、着色された新規三角形の集合体を水底三次元画像とする水底三次元画像作成システムを提供する。
【0012】
位置情報データと深度情報データとを有する位置深度データに基づき、位置情報データを平面上にプロットしポイントを表示するポイント表示手段と、該ポイントを頂点とする原始三角形を形成する原始三角形形成手段と、前記位置深度データの有する深度情報データから前記原始三角形内に新たな創出ポイントを設け、原始三角形を消去して、前記ポイントと該創出ポイントの少なくとも何れか一方を頂点とする新規三角形を形成する再三角形形成手段と、前記平面上に形成された新規三角形に着色する着色表示手段と、を備え、着色された新規三角形の集合体を水底三次元画像とするものとしたため、きめ細かくリアリティ豊かな水底三次元画像を得ることができる。なお、ここでいう「着色」には、白黒の濃淡を変える場合も含むものとする。本発明者は、このシステムを実行することにより水底三次元画像を得るための方法を「等高線相乗細分法」と命名する。
【0013】
水底三次元画像作成システムにおいて、位置深度データの有する深度情報データから原始三角形内に等高線を作成する等高線形成手段を有し、再三角形形成手段が、該等高線上に新たな創出ポイントを設けるものとすることができる。等高線の間隔は任意に設定できるため、創出ポイントの数を任意に定めることで、所望のきめ細かさを有する水底三次元画像を作成することができる。
【0014】
位置情報データに基づく前記プロットが、らせん状に繋がって視認される位置深度データであるものとすることができる。位置情報データに基づく前記プロットをらせん状に繋がって視認される位置深度データとしたため、らせんの交差点付近の立体形状を正確に捉えることができる。
【0015】
また、地上三次元画像を付加するレイヤー積層手段を有するものとすることができる。地上三次元画像を付加するレイヤー積層手段を有するため、水底三次元画像と地上三次元画像を組み合わせることができ、地上三次元画像をも有する水底三次元画像を作成することができる。
【0016】
この水底三次元画像作成システムにおいては、前記水底三次元測量システムを備えるものとすることができる。前記水底三次元測量システムを備えるものとしたため、地球上の正確な水平位置における正確な深度情報データを備えた水底三次元画像を得ることができる。
【0017】
本発明はさらに、GPS電波受信装置を有する位置検出装置にて位置情報データを獲得し、水深検出装置にて水面下の深度情報データを獲得し、位置情報データと深度情報データから位置深度データを作成する三次元データ作成手順を実行し、かつ該位置深度データに基づき、位置情報データを平面上にプロットしてポイントを表示し、該ポイントを結ぶ三角形を形成し、前記ポイントの有する深度情報データに基づいて該三角形内に創出ポイントを形成し、該ポイントと該創出ポイントの少なくとも何れか一方を頂点とする新規三角形を前記三角形に代えて形成し、該新規三角形に着色する水底三次元画像作成手順を実行する水底三次元画像作成方法を提供する。
【0018】
GPS電波受信装置を有する位置検出装置にて位置情報データを獲得し、水深検出装置にて水面下の深度情報データを獲得し、位置情報データと深度情報データから位置深度データを作成する三次元データ作成手順を実行し、かつ該位置深度データに基づき、位置情報データを平面上にプロットしてポイントを表示し、該ポイントを結ぶ三角形を形成し、前記ポイントの有する深度情報データに基づいて該三角形内に創出ポイントを形成し、該ポイントと該創出ポイントの少なくとも何れか一方を頂点とする新規三角形を前記三角形に代えて形成し、該新規三角形に着色する水底三次元画像作成手順を実行するものとしたため、きめ細かく正確な水底三次元画像を得ることができる。
【0019】
この水底三次元画像作成方法は、新たに形成された新規三角形に基づいて、さらに創出ポイントを形成し、この創出ポイントをも含めてさらに新たな新規三角形を形成する手順を含むものとすることができる。
【0020】
新たに形成された新規三角形に基づいて、さらに創出ポイントを形成し、この創出ポイントをも含めてさらに新たな新規三角形を形成する手順を含むものとすれば、さらにきめ細かい水底三次元画像を得ることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の水底三次元測量システムによれば、水底の測量を簡単にかつ正確に行うことができ、その水平位置もまた正確に捉えることができる。また、本発明の水底三次元画像作成システムおよび水底三次元画像作成方法によれば、水底の形状がきめ細かく高精度に再現されて立体的に見える水底三次元画像を平面上に形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
水底三次元測量システム: 水底三次元測量をダムにおける水底測量を例にして具体的に説明する。図1で示すように、ダムの水上を航行する測量船1は、測量船1の水平位置をGPS電波に基づいて検出する位置検出装置2と、ダムの水深を検出する水深検出装置3、及び位置検出装置2から得られた位置情報データ(水平座標データ;X−Y値)と、水深検出装置3から得られた水面下の深度情報データ(水深座標データ;Z値)を入力し記憶させるコンピュータ装置4とを備え、測量手段を形成している。また、このコンピュータ装置4は、位置検出装置2から得られた位置情報データと、水深検出装置3から得られた深度情報データを統合し、処理して観測点(測地点)における位置深度データを作成する三次元データ作成手段としても機能している。
【0023】
位置検出装置2: 位置検出装置2は、測量船1の観測点における水平位置、即ち、地球上における緯度、経度で表される正確な位置情報データを検出する。この位置情報データは、GPS(Global Positioning System/汎地球測位システム)を利用した正確なものである。GPSとは、アメリカ合衆国で航空機、船舶等の航法支援のために開発されたシステムであり、地上約2万kmを集回する6軌道上に合計30個配置されるGPS衛星7と、このGPS衛星7の追跡と管制を行う管制局、測位を行うGPS電波受信機8で構成されるシステムである。GPS衛星7の周期は12時間であり、毎日同じ時刻に同じ衛星がやってくるようになっていて、通常、5〜7個の衛星が観測点から見える上空に位置している。GPS衛星7からは、GPS衛星7の軌道情報、原子時計の正確な時間情報などが含まれる電波が送信されており、この電波を受信することでGPS衛星7からGPS電波受信機8までの距離を測定する。GPS電波受信機8の位置はGPS衛星7から得られた距離を半径とする球面上のどこかにあるから、3つGPS衛星7からの距離がわかれば、3つの球面が交わる2点の何れかであると決定できる。但し、GPS電波受信機8の時計の精度の悪さが、GPS衛星7の速度が速いことに起因して無視できない誤差となってしまうため、この誤差分をもう一つのGPS衛星7からの距離で修正することで正確な位置情報データが得られる。こうしたGPSシステムを利用する位置検出装置2は、GPS電波受信に必要なGPS電波受信機8と、アンテナ、モデムなどで構成される。
【0024】
位置検出装置2は、1台のGPS電波受信機8だけで検出するいわゆる単独測位方式の他、観測点とは別の基地局でもGPS衛星7からの電波を受信して、このデータをもとに実際の測定値を補正する相対測位という方法を採ることもできる。また、海上を航行する測量船1の場合は、電波航法局からの電波も利用できるので、これに基づく位置情報データを利用することもできる。こうした場合には、基地局に置かれたGPS電波受信機8や、電波航法局からの電波受信機も位置検出装置2に含まれる。
【0025】
水深検出装置3: 水深検出装置3は、水面にある測量船1から水底までの水深を正確に測定し、深度情報データを得る装置であり、魚群探知機や超音波測深機などの測深機9を利用することができる。これらの測深機9は超音波や音波(以下まとめて「音波」という)を発信し受信する発信機と受信機とを有し、発信機から発せられた音波が、水底に反射して受信機がその音波を受信するまでの時間を計測することで水深を測定するものである。測深機9には、原則として一束の音波を発するモノビーム方式と複数束の音波を発するマルチビーム方式とがあるが、モノビーム方式を用いることが好ましい。一度に複数束の音波を発することにより同時に多くの測深データが得られるマルチビーム方式は、音波の干渉の影響があり正確な測量が難しいからである。しかしながら、この音波の干渉を防ぐことができれば、一度に多くの観測点を得ることができるマルチビーム方式は有効であり、水深検出装置3として利用できるものである。
【0026】
コンピュータ装置4: コンピュータ装置4は、位置検出装置2から得られた位置情報データを入力、記憶させ、水深検出装置3から得られた深度情報データを入力、記憶させるものであるが、この位置情報データと深度情報データとを統合し、処理して観測点における位置深度データを作成、記憶させることもできる。通常、CPUなどの中央処理装置やハードディスクやメモリなどの補助記憶装置などを備え、必要な処理を実行するコンピュータプログラムを備えて構成されている。
【0027】
測量船1: 測量船1は、位置検出装置2や水深検出装置3、コンピュータ装置4を装備することができ、水上に配置されるものであれば良く、推進力がある通常の船舶の他、他の船に牽引される推進力のない浮遊体のようなものであっても良い。また、自走式でも遠隔操作によって航行可能なものであっても良い。但し、装備される位置検出装置2の水面からの高さや、水深検出装置3の音波の発射角度の変動を抑える必要から、波や風の影響を受けにくい船を用いることが好ましい。
【0028】
測量船1に装備される各種装置は、測量船1が航行する過程においてバランスが取れる位置に装備されることが好ましく、船舶であれば中央部分が好ましい。
【0029】
水底三次元測量方法: 次に、水底三次元測量システムを用いて水底三次元測量を行う方法について説明する。まず、GPS電波受信機8、測深機9、コンピュータ装置4などを測量船1に装備する。測深機9は、測量船1から真下に向かって音波を発するように船底に設置する。GPS電波受信機8のアンテナは、測深機3との位置合わせのため測深機3の直上、換言すれば同一水平位置に設置することが好ましい。しかしながら、測深機3の直上に装備できない場合は、GPS電波受信機8のアンテナと測深機3との位置を予め測定しておき、補正値として入力する。
【0030】
測量船1の航行は、陸地に隣接する部分を陸地に沿って航行する第1の航行法、蛇腹状に航行する第2の航行法、半径5m〜20m程度の渦巻きが徐々に移行してらせん状の航跡を描く第3の航行法などがあり、どのような航行法を採用しても良く、通常は第1の航行法と第2の航行法とを組み合わせて航行させるが、第1の航行法と第3の航行法とを組み合わせて航行する航行法を採用することが好ましい。第1の航行法に基づく観測点は、陸との間隔が短い部分であり、水際から遠くない位置におけるデータを取得する必要性から第1の航行法を採用する。第1の航行法の採用により水際と水底を高精度で繋ぐ水底三次元画像を得ることができる。また、第2の航行法を行うのは、なるべく重複測量をすることなく、測量領域を網羅的に観測する場合に適当だからである。そして、第3の航行法を行うのは、測量領域内を効果的に測量するとともに、モザイク的にならない現実的な水底三次元画像を得るためである。この第3の航行法は航跡が重なる地点を有するため、重複測量を行う可能性を有するが、航跡が重なる箇所の近傍ではデータ量が多くなりより緻密な測量が可能であって、かかる緻密に測量されたデータを有するため、水底三次元画像の作成において緻密な画像を作成することができる。
【0031】
測量船1の速度は、遅ければ遅いだけ測地間隔を密にすることができ、また、水中を伝わる音波の速度が約1500m/秒であり測量船1の速度に比べて速いため、測量船1の速度を50ノットを超える速度とすることもできる。しかしながら、要求される水底三次元画像の緻密さにもよるが、通常は1ノット〜30ノット、好ましくは2ノット〜20ノット程度で航行する。1ノットよりも遅いと測地領域を網羅する時間がかかりすぎたり、データ量が多くなりすぎてデータ処理が困難になるからであり、30ノットを超えると測深点とGPS電波受信点との誤差が大きくなりすぎるからである。
【0032】
測量船1を航行しながら、GPS電波の受信と測深機9からの音波(以下「測深機音波」ともいう)の受信を行う。GPS電波の受信は通常10回/秒程度とすることができ、測深機音波の受信は通常1回/秒〜10回/秒程度とすることができる。すなわち、所定時刻tnごとにGPS電波受信機8でGPS電波を受信して位置情報データをコンピュータ装置4に記憶する。また、所定時刻Tnごとに測深機9で音波を受信して深度情報データをコンピュータ装置4に記憶する。場合によっては、基地局で得られたGPS電波や、電波航法局からの電波も利用して位置情報データの補正用データとしてコンピュータ装置4に記憶する。こうして、測定時間範囲における所定の時間間隔での連続的な位置情報データおよび深度情報データを得る。
【0033】
GPS電波の受信と測深機音波の受信に際し、例えば時刻Tにおける観測点Pにおいて、GPS電波を受信するとともに測深機音波を受信することができれば、GPS電波と測深機音波の同期の問題が発生せずに位置深度データを得ることができる。しかしながら、GPS電波と測深機音波の受信頻度が異なる場合が多く、また、水底の深度が未知であることから測深機音波の受信時刻は予測できないため、測深機音波の受信時刻ちょうどにGPS電波を受信するように予め設定することができない。そこで、GPS電波と測深機音波を同期させる必要がある。
【0034】
GPS電波と測深機音波の同期は次のようにして行う。まず第1の方法としては、GPS電波の受信時刻と測深機音波の発信時刻を同期させる方法である。これは、コンピュータ装置4に内蔵される制御装置からGPS電波受信機8に対し、受信時刻を決定する信号を送出する一方、測深機9に対し、音波の発信時刻を決定する信号を送出し、同時刻においてGPS電波の受信と測深機音波の発信を行うものである。
【0035】
第2の方法もまた、GPS電波の受信時刻と測深機音波の発信時刻を同期させる方法である。この方法は、GPS電波受信機8で受信するGPS電波の受信周期と受信時刻を、コンピュータ装置4に内蔵する制御装置で検出し、次のGPS電波の受信時刻を予測し、その時刻に合わせて測深機9から音波を発するよう制御装置から測深機9に信号を送信する方法である。
【0036】
第3の方法は、これまでの方法が測深機音波の発信時刻と同期させていたのに対し、測深機音波の受信時刻をGPS電波の受信時刻と同期させる方法である。この方法は、例えば図2で示すように、GPS電波の受信時刻が7時00分00.10秒、7時00分00.20秒、7時00分00.30秒・・・・である一方、その時間内における測深機音波の受信時刻が7時00分23秒の1回だけであれば、測深機音波の受信時刻である7時00分23秒における深度情報データ(図2では、Z深度=−1500m)を採用するとともに、7時00分23秒に直近の7時00分00.20秒におけるGPS電波からの位置情報データ(図2では、X緯度=33−30−35.72と、Y経度=133−36−34.71)を採用する。そして、一組の位置深度データ(X緯度=33−30−35.72,Y経度=133−36−34.71,Z深度=−1500m)を作成することでGPS電波と測深機音波の同期を完成する。この手法は、受信頻度の少ない測深機音波を基準として、その受信時刻に直近の時刻におけるGPS電波のデータを採用するものである。こうした手法を採用しても、現状においてはGPS電波の受信頻度が10回/秒を確保できるため、測量船1の速度が30ノット(約55.5km/h)であったとしても次のGPS電波受信までの間に約1.5mしか進まないため、誤差はこれより小さいことから実用上許容できる範囲にあるからである。なお、測量船1の速度がこれより遅ければ誤差はさらに小さくなることは明らかである。
【0037】
測深機音波の受信を基準に同期させる第3の方法の場合は、測深機音波から得られた深度情報データと、その測深機音波の受信時刻とから、深度情報データと受信時刻相互の関係を補正することが好ましい。例えば前記の例で測深機音波の受信時刻が7時00分23秒の際の深度情報データは、Z深度=−1500mであるが、深度=−1500mを測定するためには音波の水中の速度が1500m/秒とすると音波の発信から受信まで2.0秒かかることになる。そのため、Z深度=−1500mの観測点は、測量船1が時刻7時00分23秒にあった時ではなく、それより1.0秒遅い7時00分22秒にあった時である。このように、得られた深度情報データから測深機音波の受信時刻をフィードバックして深度情報データを得た時間を予め補正しておくことが好ましい。
【0038】
深度情報データには別の観点からの修正を加えることも好ましい。水深検出装置3で得られる深度情報データは水面からの距離を表わすものである。そのため、この深度情報データには、観測点がどれだけの標高にあるか、あるいは、海上での観測による場合にはどれだけの干満があるかによって、測量の基準点からの深度とは異なるものになる。そこで、観測点の標高と、観測時刻に基づく干満の状況等などに基づく水面水位データを補足して深度情報データとすることが好ましいのである。
【0039】
こうして、位置検出装置2から得られた位置情報データと、水深検出装置3から得られた深度情報データを融合させて観測点における位置深度データを作成する。図1のコンピュータ装置4では、位置情報と深度情報を同期させ、融合する三次元データ作成手段としての機能を備えるものであり、このコンピュータ装置4に読み込まれたコンピュータプログラムにより、コンピュータ装置4内のCPUなどの中央処理装置がプログラムに基づく演算処理を行う。しかしながら、コンピュータ装置4に無線装置等を接続し無線通信手段として機能させ、位置情報データと深度情報データとを送信可能とすれば、遠隔地に備えた受信機にてこれらのデータを受信し、測量船1内に装備するコンピュータ装置4とは別のコンピュータ装置を三次元データ作成手段として機能させることができる。
【0040】
水底三次元画像作成システム: 次に、位置深度データから水底三次元画像を作成する水底三次元画像作成システムについて説明する。
【0041】
本システムでは、水底における地物の形状を精細に再現することができるように前述の位置深度データを用いることが好ましい。地上における位置情報データはGPS電波に基づく測量が最も正確な手法の一つであるが、電波は水中には届かないため、水面を基準にして位置情報データはGPS電波に基づき取得し、水中における測深機における深度情報データと融合させた前記位置深度データが、水底における位置座標を最も正確に表したものの一つと考えられるからである。しかしながら、別の手法によって得られた水底における位置座標を表すデータの利用を否定するものではなく、そうしたデータの利用も本発明の範囲に含まれるものである。以下では前記位置深度データを用いた例について説明する。
【0042】
水底三次元画像の作成過程を図3のフローチャートに示す。まず、水底三次元画像を作成するコンピュータ装置に、位置深度データを入力する(ST10)。このコンピュータ装置は、測量船1に搭載したコンピュータ装置4を利用するものであっても良いし、陸上に別途準備して設けてあるコンピュータ装置であっても良い。そして、観測点における位置情報データと深度情報データを有する位置深度データから、深度情報データは無視して位置情報データに基づき、平面上に(X,Y)座標をプロットする(ST20)。平面のX方向には位置情報データのうちの経度が示され、Y方向には位置情報データのうちの緯度が示される。これらのプロットは、測量船1からの観測に基づくデータを使用しているため、測量船1の航跡上に表れる。図4には、陸地に隣接する部分を陸地に沿って航行する第1の航行法と、渦巻きが徐々に移行してらせん状の航跡を描く第3の航行法により観測した観測点から得たプロットが連続した点として描かれた図を示す。このプロットの連続は航跡を表わしている。なお、図4において、一つの方眼は10m×10mである。
【0043】
次に、できるだけ小さく正三角形に近い三角形を描くようにこれらのプロットされた点どうしを結び三角形網を形成する(ST30)。得られた三角網を図5(一方眼は10m×10m)に示す。ここで形成する三角形を原始三角形とする。この原始三角形ができた様子を図6に示す。三角形網を形成する各原始三角形はそれぞれの頂点が観測点に対応するため、平面上には隠れているがZ方向に向かう深度情報データを有している。この深度情報データは水面から、あるいは一定の海面(東京湾の平均海面)などからの水深を示す。
【0044】
次に、この原始三角形をもとに、観測点に基づくポイントとは別の新たなポイントを導入する(ST40)。このポイントを創出ポイントとする。創出ポイントの形成にはいくつかの方法がある。まず、第1の方法は、原始三角形の頂点の有する深度情報データに基づき、各原始三角形内に、予め定めた所定の間隔に基づく等高線(等深線)を描く。予め定めた所定の間隔とは、等高線の大きさは通常は地図の縮尺に応じて一定の高度間隔で描かれることが決まっているので、通常はこれにならい例えば5万分の一程度に縮尺されて描かれる程度の大きさの観測領域であれば20m間隔で主曲線、100m間隔で計曲線を描くようにする。但し、これは一例にすぎず任意に設定することが可能である。
【0045】
20m間隔で主曲線を形成する場合、ある一つの三角形△ABCの各頂点の深度情報データが、A=−118m、B=−130m、C=−135mとすれば、この△ABC内に辺ABと辺ACに交差する−120mの主曲線が一本描かれる。このとき、辺ABとこの等高線が交差する位置は、点Aおよび点Bの深度情報データから線形に一義的に導かれる。辺ACとこの等高線の交差する位置も同様にして導かれる。こうした等高線の形成処理を各原始三角形に対して行うのである。等高線が得られれば、その等高線上の任意のポイントは、全て同じ深度情報データ(Z値)を有しているため、等高線上の任意の点を創出ポイントとして形成することができるのである。創出ポイントの選定の際は、等高線の間隔が密な急峻なところでは多く、等高線の間隔が疎ななだらかなところでは少なく選定することが好ましい。等高線の間隔が密で急峻な場所ほど高低差が激しいからである。図7には、観測点に基づくポイントをもとに原始三角形を形成し、原始三角形から等高線を引いた状態で(創出ポイントを導入せずに)原始三角形と等高線に基づいて着色した図を示す。
【0046】
創出ポイント形成のための第2の方法は、原始三角形の各辺を二等分割した中点と頂点とを結ぶ線分(中線)を引き、その交点を創出ポイントとするものである。すなわち、原始三角形の重心を創出ポイントとする。こうして得られた創出ポイントも座標(X,Y,Z)が確定している。
【0047】
創出ポイントを形成した後、観測点に基づくポイントと、この創出ポイントをもとにして、先に原始三角形を形成したのと同じ方法で新たな三角形を形成する(ST50)。得られた三角形網を図8(一方眼は10m×10m)に示す。この新たに形成された三角形を新規三角形とする。この新規三角形ができた様子を図9に示す。図9では図6で示す三角形網がより小さな三角形網に変化していることがわかる。新規三角形形成の際には、原始三角形は消去する。新規三角形が形成されれば原始三角形は不要となり、平面上に残されていると却って新規三角形がわかりにくくなるからである。
【0048】
新規三角形は、観測点に基づくポイントに創出ポイントが加えられているため、新規三角形は原始三角形に比べてさらに小さく形成され、よりきめ細かな水底三次元画像を形成することができるのである。
【0049】
この新規三角形の形成は、必要により何度も繰り返し行うことができる。すなわち、最初に形成された新規三角形をもとにして改めて創出ポイントを形成し、この創出ポイントを含めてさらに新規三角形を形成することができるからである。こうしてさらに小さな新規三角形を得ることができる。
【0050】
最後に、太陽を想定した任意の位置と各新規三角形との交差角度等を計算し、それに基づいて各三角形を色付けする。すなわち、各新規三角形に濃淡や色調を変化させた着色を施す(ST60)この際、ある所定の深さ以上の箇所を目立たせるなどの理由から、等高線を境界として一つの三角形内を色分けすることも可能である。こうして、平面上に色づけされた三角形の集合は、立体的に見ることができる水底三次元画像として得られる。得られた水底三次元画像を図10(一方眼は10m×10m)に、そしてその拡大図を図11に示す。また、参考のため、再三角形形成手段を用いずに仕上げた水底三次元画像を図12(一方眼は10m×10m)に、その拡大図を図13に示す。再三角形形成手段を用いないと、モザイク状に粗い画像となることがわかる。
【0051】
水底三次元画像は、種々の方法で得られた陸上の三次元画像と融合させることができる。陸上の三次元画像は少なくとも任意の二点の位置情報データが明確であれば、水底三次元画像との位置合わせができる。
【0052】
以上のST10〜ST60の処理を行う水底三次元画像作成システム11の構成を図14に示す。水底三次元画像作成システム11は、位置情報データを平面上にプロットしポイントを表示するポイント表示手段12や新規三角形に着色する着色表示手段13として機能するCRTやプリンタなどの三次元表示装置14、ポイントを頂点とする原始三角形を形成する原始三角形形成手段15や新たな創出ポイントを設けて新規三角形を形成する再三角形形成手段16として機能し、CPUやROM、RAMなどを有する中央処理装置17、各種指示を入力するキーボードなどの入力装置18を備えたコンピュータ装置19で構成される。このコンピュータ装置19は、メモリなどに位置深度データを読み込み、内蔵されたコンピュータプログラムにて中央処理装置17に各種処理を実行させ、表示装置14に処理結果を出力する。
【0053】
以下に、いくつかの本発明により得られた水底三次元画像の実例を示す。まず、図15に示すのは、高知県南国市十市前の浜1000m沖の水底三次元画像である。昔より土佐湾沖沿に黒田郷があったとする仮説があるが、この図から白鳳時代の地震(白鳳地震津波;684年(M8.4))により陥没してしまったのではないかと推定できる。また、別の例として図16に示すのは、土佐湾大山礁における漁場を表す水底三次元画像である。
【0054】
さらに、図17および図18に示すのは、高知県安芸郡北川村にある平鍋ダムの水底三次元画像である。この図は、平鍋ダムの地上部分と、ダムの水面下にある水底形状をともに立体的に示している。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明の水底三次元測量システムや水底三次元画像作成システムは、水底の深浅測量への応用に期待できる。例えば、ダムの水底の深浅測量を行うことで、ダム底に堆積した土砂量を測定し、どれだけの土砂を浚渫しなければならないかを計算したり、定期的に測量を行うことで土砂の堆積量の変化を管理したりすることができる。また、海や川などの埋め立てを行う際には、埋め立てに必要な土砂量を計算することができるし、工事の過程で、実際にどれだけ確実に作業を行うことができているかの確認をすることができる。さらに、海峡などの陸地と海の間が狭い場所などの水底測量を簡単に行うことができ、船舶の安全な運行に寄与することができる。
【0056】
本発明はさらに、GIS(Geographical Information Systems/地理情報システム)として活用することができ、水底三次元画像に種々の情報を付加した図を作成することができる。例えば、図19で示すように、水底三次元画像に魚の種類、漁獲高を示したグラフを付加することができる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の水底三次元測量システムに用いられる測量船を示す外観模式図である。
【図2】GPS電波と測深機音波の同調を説明する説明図である。
【図3】本発明の水底三次元画像作成システムの実行過程を示すフローチャートである。
【図4】測量船の航跡を平面上に描いた図である。
【図5】原始三角形を描いた図である。
【図6】原始三角形を示す図5の部分拡大図である。
【図7】観測点から原始三角形と等高線とを示し原始三角形に着色した図である。
【図8】新規三角形を描いた図である。
【図9】新規三角形を示す図8の部分拡大図である。
【図10】本発明の水底三次元画像作成システムにより描いた水底三次元画像である。
【図11】図10の部分拡大図である。
【図12】再三角形形成を行わずに描いた水底三次元画像である。
【図13】図12の部分拡大図である。
【図14】本発明の水底三次元画像作成システムの一実施形態を示すブロック図である。
【図15】本発明の水底三次元画像作成システムにより描いた別の水底三次元画像である。
【図16】本発明の水底三次元画像作成システムにより描いたまた別の水底三次元画像である。
【図17】本発明の水底三次元画像作成システムにより描いたさらに別の水底三次元画像である。
【図18】本発明の水底三次元画像作成システムにより描いたさらにまた別の水底三次元画像である。
【図19】付加情報を付した水底三次元画像である。
【図20】従来の測深方法により得られる水深情報を示したグラフを模式的に表した図である。
【符号の説明】
【0058】
1 観測船
2 位置検出装置
3 水深検出装置
4 コンピュータ装置
7 GPS衛星
8 GPS電波受信装置
9 測深機
11 水底三次元画像作成システム
12 ポイント表示手段
13 着色表示手段
14 三次元表示装置
15 原始三角形形成手段
16 再三角形形成手段
17 中央処理装置
18 入力装置
19 コンピュータ装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、水底に存する地形や構築物の形状を捉えるための水底三次元測量システムと、該システムを用いて測量したデータから水底地物を鳥瞰図で表出する水底三次元画像作成システム、および水底三次元画像作成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
水底における測量は、ダムにおける堆積土の調査や、海洋における洗掘の調査などにおいて極めて重要である。従来、こうした水底測量を行うには、船上から探索棒やワイヤを水底に垂らして水深を調査するか、探索棒に変えて魚群探知機を用いて水深を調査する方法が行われている。魚群探知機による水底測量に関する技術は例えば特開平8−29530号公報(特許文献1)に記載されている。
【特許文献1】特開平8−29530号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、探索棒等で測量する方法では、水深が深い場合における測量が困難であり、また、測深時には船の運航を止め探索棒等を上げ下げするという手間のかかる方法であった。また、魚群探知機で測量するにしても、例えば図20で示すような断面的な水深図を得るのがせいぜいであり、地形の三次元的な把握が困難で、堆積土の計量なども不可能であった。そのため、こうした水深データでは、水底の漠然とした状況は把握できるものの、位置情報データの正確性に乏しく、また、立体的な把握が困難であった。
【0004】
そこで本発明は、位置情報データを含めた正確な水底測量を可能とするとともに、水底の地物を立体的に表す水底三次元画像を作成することを目的としてなされたものであり、「等高線相乗細分法」と呼ぶ手法を完成させたものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
すなわち本発明は、GPS電波受信装置を有する位置検出装置と水深検出装置とを備え、水上を移動して位置と深度を観測する測量手段と、GPS電波に基づく位置情報データと水面下の深度情報データから位置深度データを作成する三次元データ作成手段とを備える水底三次元測量システムを提供する。
【0006】
GPS電波受信装置を有する位置検出装置と水深検出装置とを備え、水上を移動して位置と深度を観測する測量手段と、GPS電波に基づく位置情報データと水面下の深度情報データから位置深度データを作成する三次元データ作成手段とを備えたため、GPS電波の届かない水中にまで、GPSシステムを利用した精度の高い位置情報データをもたらすことができ、深度情報データと融合させることで水底における精密な三次元測量を行うことができる。そして、この位置深度データに基づき、水中鳥瞰図である水底三次元画像を作成することができる。ここで「鳥瞰図」とは、空中から地上を見おろしたように描いた図を言い、水中の地物を描いた図には厳密には当てはまらず鯨瞰図と言うべきものであるが、ここでは水中の地物を三次元的に表す場合も「鳥瞰図」と呼ぶものとする。
【0007】
位置深度データは、位置情報と深度情報とを同期させて作成することができる。位置情報と深度情報とを同期させることで、緯度、経度が正確に捉えられた場所の水深を検出することができる。
【0008】
また、三次元データ作成手段は、水深検出装置に基づく深度情報データに観測時における水面水位データによる補正を加えて位置深度データを作成することができる。水深検出装置に基づく深度情報データに観測時における水面水位データによる補正を加えて位置深度データを作成するため、得られる位置深度データが観測時刻や観測点の標高の相違の影響を受けない正確なデータとすることができる。
【0009】
前記位置情報データは、前記測量手段が水上をらせん状に航行することで検出した位置情報データであるものとすることができる。前記位置情報データを前記測量手段が水上をらせん状に航行することで検出した位置情報データとしたため、観測領域を大概的に網羅して観測することができ、また船の航行もし易いため、位置情報データ及び深度情報データを正確にかつ簡単に得ることができる。
【0010】
前記測量手段は、前記位置情報データと前記深度情報データを三次元データ作成手段に送信する無線通信手段を備えることができる。前記測量手段が前記位置情報データと前記深度情報データを三次元データ作成手段に送信する無線通信手段を備えることとしたため、測量手段とは遠隔地にある三次元データ作成手段であっても三次元データ作成を行うことができる。
【0011】
また、本発明は、位置情報データと深度情報データとを有する位置深度データに基づき、位置情報データを平面上にプロットしポイントを表示するポイント表示手段と、該ポイントを頂点とする原始三角形を形成する原始三角形形成手段と、前記位置深度データの有する深度情報データから前記原始三角形内に新たな創出ポイントを設け、原始三角形を消去して、前記ポイントと該創出ポイントの少なくとも何れか一方を頂点とする新規三角形を形成する再三角形形成手段と、前記平面上に形成された新規三角形に着色する着色表示手段と、を備え、着色された新規三角形の集合体を水底三次元画像とする水底三次元画像作成システムを提供する。
【0012】
位置情報データと深度情報データとを有する位置深度データに基づき、位置情報データを平面上にプロットしポイントを表示するポイント表示手段と、該ポイントを頂点とする原始三角形を形成する原始三角形形成手段と、前記位置深度データの有する深度情報データから前記原始三角形内に新たな創出ポイントを設け、原始三角形を消去して、前記ポイントと該創出ポイントの少なくとも何れか一方を頂点とする新規三角形を形成する再三角形形成手段と、前記平面上に形成された新規三角形に着色する着色表示手段と、を備え、着色された新規三角形の集合体を水底三次元画像とするものとしたため、きめ細かくリアリティ豊かな水底三次元画像を得ることができる。なお、ここでいう「着色」には、白黒の濃淡を変える場合も含むものとする。本発明者は、このシステムを実行することにより水底三次元画像を得るための方法を「等高線相乗細分法」と命名する。
【0013】
水底三次元画像作成システムにおいて、位置深度データの有する深度情報データから原始三角形内に等高線を作成する等高線形成手段を有し、再三角形形成手段が、該等高線上に新たな創出ポイントを設けるものとすることができる。等高線の間隔は任意に設定できるため、創出ポイントの数を任意に定めることで、所望のきめ細かさを有する水底三次元画像を作成することができる。
【0014】
位置情報データに基づく前記プロットが、らせん状に繋がって視認される位置深度データであるものとすることができる。位置情報データに基づく前記プロットをらせん状に繋がって視認される位置深度データとしたため、らせんの交差点付近の立体形状を正確に捉えることができる。
【0015】
また、地上三次元画像を付加するレイヤー積層手段を有するものとすることができる。地上三次元画像を付加するレイヤー積層手段を有するため、水底三次元画像と地上三次元画像を組み合わせることができ、地上三次元画像をも有する水底三次元画像を作成することができる。
【0016】
この水底三次元画像作成システムにおいては、前記水底三次元測量システムを備えるものとすることができる。前記水底三次元測量システムを備えるものとしたため、地球上の正確な水平位置における正確な深度情報データを備えた水底三次元画像を得ることができる。
【0017】
本発明はさらに、GPS電波受信装置を有する位置検出装置にて位置情報データを獲得し、水深検出装置にて水面下の深度情報データを獲得し、位置情報データと深度情報データから位置深度データを作成する三次元データ作成手順を実行し、かつ該位置深度データに基づき、位置情報データを平面上にプロットしてポイントを表示し、該ポイントを結ぶ三角形を形成し、前記ポイントの有する深度情報データに基づいて該三角形内に創出ポイントを形成し、該ポイントと該創出ポイントの少なくとも何れか一方を頂点とする新規三角形を前記三角形に代えて形成し、該新規三角形に着色する水底三次元画像作成手順を実行する水底三次元画像作成方法を提供する。
【0018】
GPS電波受信装置を有する位置検出装置にて位置情報データを獲得し、水深検出装置にて水面下の深度情報データを獲得し、位置情報データと深度情報データから位置深度データを作成する三次元データ作成手順を実行し、かつ該位置深度データに基づき、位置情報データを平面上にプロットしてポイントを表示し、該ポイントを結ぶ三角形を形成し、前記ポイントの有する深度情報データに基づいて該三角形内に創出ポイントを形成し、該ポイントと該創出ポイントの少なくとも何れか一方を頂点とする新規三角形を前記三角形に代えて形成し、該新規三角形に着色する水底三次元画像作成手順を実行するものとしたため、きめ細かく正確な水底三次元画像を得ることができる。
【0019】
この水底三次元画像作成方法は、新たに形成された新規三角形に基づいて、さらに創出ポイントを形成し、この創出ポイントをも含めてさらに新たな新規三角形を形成する手順を含むものとすることができる。
【0020】
新たに形成された新規三角形に基づいて、さらに創出ポイントを形成し、この創出ポイントをも含めてさらに新たな新規三角形を形成する手順を含むものとすれば、さらにきめ細かい水底三次元画像を得ることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の水底三次元測量システムによれば、水底の測量を簡単にかつ正確に行うことができ、その水平位置もまた正確に捉えることができる。また、本発明の水底三次元画像作成システムおよび水底三次元画像作成方法によれば、水底の形状がきめ細かく高精度に再現されて立体的に見える水底三次元画像を平面上に形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
水底三次元測量システム: 水底三次元測量をダムにおける水底測量を例にして具体的に説明する。図1で示すように、ダムの水上を航行する測量船1は、測量船1の水平位置をGPS電波に基づいて検出する位置検出装置2と、ダムの水深を検出する水深検出装置3、及び位置検出装置2から得られた位置情報データ(水平座標データ;X−Y値)と、水深検出装置3から得られた水面下の深度情報データ(水深座標データ;Z値)を入力し記憶させるコンピュータ装置4とを備え、測量手段を形成している。また、このコンピュータ装置4は、位置検出装置2から得られた位置情報データと、水深検出装置3から得られた深度情報データを統合し、処理して観測点(測地点)における位置深度データを作成する三次元データ作成手段としても機能している。
【0023】
位置検出装置2: 位置検出装置2は、測量船1の観測点における水平位置、即ち、地球上における緯度、経度で表される正確な位置情報データを検出する。この位置情報データは、GPS(Global Positioning System/汎地球測位システム)を利用した正確なものである。GPSとは、アメリカ合衆国で航空機、船舶等の航法支援のために開発されたシステムであり、地上約2万kmを集回する6軌道上に合計30個配置されるGPS衛星7と、このGPS衛星7の追跡と管制を行う管制局、測位を行うGPS電波受信機8で構成されるシステムである。GPS衛星7の周期は12時間であり、毎日同じ時刻に同じ衛星がやってくるようになっていて、通常、5〜7個の衛星が観測点から見える上空に位置している。GPS衛星7からは、GPS衛星7の軌道情報、原子時計の正確な時間情報などが含まれる電波が送信されており、この電波を受信することでGPS衛星7からGPS電波受信機8までの距離を測定する。GPS電波受信機8の位置はGPS衛星7から得られた距離を半径とする球面上のどこかにあるから、3つGPS衛星7からの距離がわかれば、3つの球面が交わる2点の何れかであると決定できる。但し、GPS電波受信機8の時計の精度の悪さが、GPS衛星7の速度が速いことに起因して無視できない誤差となってしまうため、この誤差分をもう一つのGPS衛星7からの距離で修正することで正確な位置情報データが得られる。こうしたGPSシステムを利用する位置検出装置2は、GPS電波受信に必要なGPS電波受信機8と、アンテナ、モデムなどで構成される。
【0024】
位置検出装置2は、1台のGPS電波受信機8だけで検出するいわゆる単独測位方式の他、観測点とは別の基地局でもGPS衛星7からの電波を受信して、このデータをもとに実際の測定値を補正する相対測位という方法を採ることもできる。また、海上を航行する測量船1の場合は、電波航法局からの電波も利用できるので、これに基づく位置情報データを利用することもできる。こうした場合には、基地局に置かれたGPS電波受信機8や、電波航法局からの電波受信機も位置検出装置2に含まれる。
【0025】
水深検出装置3: 水深検出装置3は、水面にある測量船1から水底までの水深を正確に測定し、深度情報データを得る装置であり、魚群探知機や超音波測深機などの測深機9を利用することができる。これらの測深機9は超音波や音波(以下まとめて「音波」という)を発信し受信する発信機と受信機とを有し、発信機から発せられた音波が、水底に反射して受信機がその音波を受信するまでの時間を計測することで水深を測定するものである。測深機9には、原則として一束の音波を発するモノビーム方式と複数束の音波を発するマルチビーム方式とがあるが、モノビーム方式を用いることが好ましい。一度に複数束の音波を発することにより同時に多くの測深データが得られるマルチビーム方式は、音波の干渉の影響があり正確な測量が難しいからである。しかしながら、この音波の干渉を防ぐことができれば、一度に多くの観測点を得ることができるマルチビーム方式は有効であり、水深検出装置3として利用できるものである。
【0026】
コンピュータ装置4: コンピュータ装置4は、位置検出装置2から得られた位置情報データを入力、記憶させ、水深検出装置3から得られた深度情報データを入力、記憶させるものであるが、この位置情報データと深度情報データとを統合し、処理して観測点における位置深度データを作成、記憶させることもできる。通常、CPUなどの中央処理装置やハードディスクやメモリなどの補助記憶装置などを備え、必要な処理を実行するコンピュータプログラムを備えて構成されている。
【0027】
測量船1: 測量船1は、位置検出装置2や水深検出装置3、コンピュータ装置4を装備することができ、水上に配置されるものであれば良く、推進力がある通常の船舶の他、他の船に牽引される推進力のない浮遊体のようなものであっても良い。また、自走式でも遠隔操作によって航行可能なものであっても良い。但し、装備される位置検出装置2の水面からの高さや、水深検出装置3の音波の発射角度の変動を抑える必要から、波や風の影響を受けにくい船を用いることが好ましい。
【0028】
測量船1に装備される各種装置は、測量船1が航行する過程においてバランスが取れる位置に装備されることが好ましく、船舶であれば中央部分が好ましい。
【0029】
水底三次元測量方法: 次に、水底三次元測量システムを用いて水底三次元測量を行う方法について説明する。まず、GPS電波受信機8、測深機9、コンピュータ装置4などを測量船1に装備する。測深機9は、測量船1から真下に向かって音波を発するように船底に設置する。GPS電波受信機8のアンテナは、測深機3との位置合わせのため測深機3の直上、換言すれば同一水平位置に設置することが好ましい。しかしながら、測深機3の直上に装備できない場合は、GPS電波受信機8のアンテナと測深機3との位置を予め測定しておき、補正値として入力する。
【0030】
測量船1の航行は、陸地に隣接する部分を陸地に沿って航行する第1の航行法、蛇腹状に航行する第2の航行法、半径5m〜20m程度の渦巻きが徐々に移行してらせん状の航跡を描く第3の航行法などがあり、どのような航行法を採用しても良く、通常は第1の航行法と第2の航行法とを組み合わせて航行させるが、第1の航行法と第3の航行法とを組み合わせて航行する航行法を採用することが好ましい。第1の航行法に基づく観測点は、陸との間隔が短い部分であり、水際から遠くない位置におけるデータを取得する必要性から第1の航行法を採用する。第1の航行法の採用により水際と水底を高精度で繋ぐ水底三次元画像を得ることができる。また、第2の航行法を行うのは、なるべく重複測量をすることなく、測量領域を網羅的に観測する場合に適当だからである。そして、第3の航行法を行うのは、測量領域内を効果的に測量するとともに、モザイク的にならない現実的な水底三次元画像を得るためである。この第3の航行法は航跡が重なる地点を有するため、重複測量を行う可能性を有するが、航跡が重なる箇所の近傍ではデータ量が多くなりより緻密な測量が可能であって、かかる緻密に測量されたデータを有するため、水底三次元画像の作成において緻密な画像を作成することができる。
【0031】
測量船1の速度は、遅ければ遅いだけ測地間隔を密にすることができ、また、水中を伝わる音波の速度が約1500m/秒であり測量船1の速度に比べて速いため、測量船1の速度を50ノットを超える速度とすることもできる。しかしながら、要求される水底三次元画像の緻密さにもよるが、通常は1ノット〜30ノット、好ましくは2ノット〜20ノット程度で航行する。1ノットよりも遅いと測地領域を網羅する時間がかかりすぎたり、データ量が多くなりすぎてデータ処理が困難になるからであり、30ノットを超えると測深点とGPS電波受信点との誤差が大きくなりすぎるからである。
【0032】
測量船1を航行しながら、GPS電波の受信と測深機9からの音波(以下「測深機音波」ともいう)の受信を行う。GPS電波の受信は通常10回/秒程度とすることができ、測深機音波の受信は通常1回/秒〜10回/秒程度とすることができる。すなわち、所定時刻tnごとにGPS電波受信機8でGPS電波を受信して位置情報データをコンピュータ装置4に記憶する。また、所定時刻Tnごとに測深機9で音波を受信して深度情報データをコンピュータ装置4に記憶する。場合によっては、基地局で得られたGPS電波や、電波航法局からの電波も利用して位置情報データの補正用データとしてコンピュータ装置4に記憶する。こうして、測定時間範囲における所定の時間間隔での連続的な位置情報データおよび深度情報データを得る。
【0033】
GPS電波の受信と測深機音波の受信に際し、例えば時刻Tにおける観測点Pにおいて、GPS電波を受信するとともに測深機音波を受信することができれば、GPS電波と測深機音波の同期の問題が発生せずに位置深度データを得ることができる。しかしながら、GPS電波と測深機音波の受信頻度が異なる場合が多く、また、水底の深度が未知であることから測深機音波の受信時刻は予測できないため、測深機音波の受信時刻ちょうどにGPS電波を受信するように予め設定することができない。そこで、GPS電波と測深機音波を同期させる必要がある。
【0034】
GPS電波と測深機音波の同期は次のようにして行う。まず第1の方法としては、GPS電波の受信時刻と測深機音波の発信時刻を同期させる方法である。これは、コンピュータ装置4に内蔵される制御装置からGPS電波受信機8に対し、受信時刻を決定する信号を送出する一方、測深機9に対し、音波の発信時刻を決定する信号を送出し、同時刻においてGPS電波の受信と測深機音波の発信を行うものである。
【0035】
第2の方法もまた、GPS電波の受信時刻と測深機音波の発信時刻を同期させる方法である。この方法は、GPS電波受信機8で受信するGPS電波の受信周期と受信時刻を、コンピュータ装置4に内蔵する制御装置で検出し、次のGPS電波の受信時刻を予測し、その時刻に合わせて測深機9から音波を発するよう制御装置から測深機9に信号を送信する方法である。
【0036】
第3の方法は、これまでの方法が測深機音波の発信時刻と同期させていたのに対し、測深機音波の受信時刻をGPS電波の受信時刻と同期させる方法である。この方法は、例えば図2で示すように、GPS電波の受信時刻が7時00分00.10秒、7時00分00.20秒、7時00分00.30秒・・・・である一方、その時間内における測深機音波の受信時刻が7時00分23秒の1回だけであれば、測深機音波の受信時刻である7時00分23秒における深度情報データ(図2では、Z深度=−1500m)を採用するとともに、7時00分23秒に直近の7時00分00.20秒におけるGPS電波からの位置情報データ(図2では、X緯度=33−30−35.72と、Y経度=133−36−34.71)を採用する。そして、一組の位置深度データ(X緯度=33−30−35.72,Y経度=133−36−34.71,Z深度=−1500m)を作成することでGPS電波と測深機音波の同期を完成する。この手法は、受信頻度の少ない測深機音波を基準として、その受信時刻に直近の時刻におけるGPS電波のデータを採用するものである。こうした手法を採用しても、現状においてはGPS電波の受信頻度が10回/秒を確保できるため、測量船1の速度が30ノット(約55.5km/h)であったとしても次のGPS電波受信までの間に約1.5mしか進まないため、誤差はこれより小さいことから実用上許容できる範囲にあるからである。なお、測量船1の速度がこれより遅ければ誤差はさらに小さくなることは明らかである。
【0037】
測深機音波の受信を基準に同期させる第3の方法の場合は、測深機音波から得られた深度情報データと、その測深機音波の受信時刻とから、深度情報データと受信時刻相互の関係を補正することが好ましい。例えば前記の例で測深機音波の受信時刻が7時00分23秒の際の深度情報データは、Z深度=−1500mであるが、深度=−1500mを測定するためには音波の水中の速度が1500m/秒とすると音波の発信から受信まで2.0秒かかることになる。そのため、Z深度=−1500mの観測点は、測量船1が時刻7時00分23秒にあった時ではなく、それより1.0秒遅い7時00分22秒にあった時である。このように、得られた深度情報データから測深機音波の受信時刻をフィードバックして深度情報データを得た時間を予め補正しておくことが好ましい。
【0038】
深度情報データには別の観点からの修正を加えることも好ましい。水深検出装置3で得られる深度情報データは水面からの距離を表わすものである。そのため、この深度情報データには、観測点がどれだけの標高にあるか、あるいは、海上での観測による場合にはどれだけの干満があるかによって、測量の基準点からの深度とは異なるものになる。そこで、観測点の標高と、観測時刻に基づく干満の状況等などに基づく水面水位データを補足して深度情報データとすることが好ましいのである。
【0039】
こうして、位置検出装置2から得られた位置情報データと、水深検出装置3から得られた深度情報データを融合させて観測点における位置深度データを作成する。図1のコンピュータ装置4では、位置情報と深度情報を同期させ、融合する三次元データ作成手段としての機能を備えるものであり、このコンピュータ装置4に読み込まれたコンピュータプログラムにより、コンピュータ装置4内のCPUなどの中央処理装置がプログラムに基づく演算処理を行う。しかしながら、コンピュータ装置4に無線装置等を接続し無線通信手段として機能させ、位置情報データと深度情報データとを送信可能とすれば、遠隔地に備えた受信機にてこれらのデータを受信し、測量船1内に装備するコンピュータ装置4とは別のコンピュータ装置を三次元データ作成手段として機能させることができる。
【0040】
水底三次元画像作成システム: 次に、位置深度データから水底三次元画像を作成する水底三次元画像作成システムについて説明する。
【0041】
本システムでは、水底における地物の形状を精細に再現することができるように前述の位置深度データを用いることが好ましい。地上における位置情報データはGPS電波に基づく測量が最も正確な手法の一つであるが、電波は水中には届かないため、水面を基準にして位置情報データはGPS電波に基づき取得し、水中における測深機における深度情報データと融合させた前記位置深度データが、水底における位置座標を最も正確に表したものの一つと考えられるからである。しかしながら、別の手法によって得られた水底における位置座標を表すデータの利用を否定するものではなく、そうしたデータの利用も本発明の範囲に含まれるものである。以下では前記位置深度データを用いた例について説明する。
【0042】
水底三次元画像の作成過程を図3のフローチャートに示す。まず、水底三次元画像を作成するコンピュータ装置に、位置深度データを入力する(ST10)。このコンピュータ装置は、測量船1に搭載したコンピュータ装置4を利用するものであっても良いし、陸上に別途準備して設けてあるコンピュータ装置であっても良い。そして、観測点における位置情報データと深度情報データを有する位置深度データから、深度情報データは無視して位置情報データに基づき、平面上に(X,Y)座標をプロットする(ST20)。平面のX方向には位置情報データのうちの経度が示され、Y方向には位置情報データのうちの緯度が示される。これらのプロットは、測量船1からの観測に基づくデータを使用しているため、測量船1の航跡上に表れる。図4には、陸地に隣接する部分を陸地に沿って航行する第1の航行法と、渦巻きが徐々に移行してらせん状の航跡を描く第3の航行法により観測した観測点から得たプロットが連続した点として描かれた図を示す。このプロットの連続は航跡を表わしている。なお、図4において、一つの方眼は10m×10mである。
【0043】
次に、できるだけ小さく正三角形に近い三角形を描くようにこれらのプロットされた点どうしを結び三角形網を形成する(ST30)。得られた三角網を図5(一方眼は10m×10m)に示す。ここで形成する三角形を原始三角形とする。この原始三角形ができた様子を図6に示す。三角形網を形成する各原始三角形はそれぞれの頂点が観測点に対応するため、平面上には隠れているがZ方向に向かう深度情報データを有している。この深度情報データは水面から、あるいは一定の海面(東京湾の平均海面)などからの水深を示す。
【0044】
次に、この原始三角形をもとに、観測点に基づくポイントとは別の新たなポイントを導入する(ST40)。このポイントを創出ポイントとする。創出ポイントの形成にはいくつかの方法がある。まず、第1の方法は、原始三角形の頂点の有する深度情報データに基づき、各原始三角形内に、予め定めた所定の間隔に基づく等高線(等深線)を描く。予め定めた所定の間隔とは、等高線の大きさは通常は地図の縮尺に応じて一定の高度間隔で描かれることが決まっているので、通常はこれにならい例えば5万分の一程度に縮尺されて描かれる程度の大きさの観測領域であれば20m間隔で主曲線、100m間隔で計曲線を描くようにする。但し、これは一例にすぎず任意に設定することが可能である。
【0045】
20m間隔で主曲線を形成する場合、ある一つの三角形△ABCの各頂点の深度情報データが、A=−118m、B=−130m、C=−135mとすれば、この△ABC内に辺ABと辺ACに交差する−120mの主曲線が一本描かれる。このとき、辺ABとこの等高線が交差する位置は、点Aおよび点Bの深度情報データから線形に一義的に導かれる。辺ACとこの等高線の交差する位置も同様にして導かれる。こうした等高線の形成処理を各原始三角形に対して行うのである。等高線が得られれば、その等高線上の任意のポイントは、全て同じ深度情報データ(Z値)を有しているため、等高線上の任意の点を創出ポイントとして形成することができるのである。創出ポイントの選定の際は、等高線の間隔が密な急峻なところでは多く、等高線の間隔が疎ななだらかなところでは少なく選定することが好ましい。等高線の間隔が密で急峻な場所ほど高低差が激しいからである。図7には、観測点に基づくポイントをもとに原始三角形を形成し、原始三角形から等高線を引いた状態で(創出ポイントを導入せずに)原始三角形と等高線に基づいて着色した図を示す。
【0046】
創出ポイント形成のための第2の方法は、原始三角形の各辺を二等分割した中点と頂点とを結ぶ線分(中線)を引き、その交点を創出ポイントとするものである。すなわち、原始三角形の重心を創出ポイントとする。こうして得られた創出ポイントも座標(X,Y,Z)が確定している。
【0047】
創出ポイントを形成した後、観測点に基づくポイントと、この創出ポイントをもとにして、先に原始三角形を形成したのと同じ方法で新たな三角形を形成する(ST50)。得られた三角形網を図8(一方眼は10m×10m)に示す。この新たに形成された三角形を新規三角形とする。この新規三角形ができた様子を図9に示す。図9では図6で示す三角形網がより小さな三角形網に変化していることがわかる。新規三角形形成の際には、原始三角形は消去する。新規三角形が形成されれば原始三角形は不要となり、平面上に残されていると却って新規三角形がわかりにくくなるからである。
【0048】
新規三角形は、観測点に基づくポイントに創出ポイントが加えられているため、新規三角形は原始三角形に比べてさらに小さく形成され、よりきめ細かな水底三次元画像を形成することができるのである。
【0049】
この新規三角形の形成は、必要により何度も繰り返し行うことができる。すなわち、最初に形成された新規三角形をもとにして改めて創出ポイントを形成し、この創出ポイントを含めてさらに新規三角形を形成することができるからである。こうしてさらに小さな新規三角形を得ることができる。
【0050】
最後に、太陽を想定した任意の位置と各新規三角形との交差角度等を計算し、それに基づいて各三角形を色付けする。すなわち、各新規三角形に濃淡や色調を変化させた着色を施す(ST60)この際、ある所定の深さ以上の箇所を目立たせるなどの理由から、等高線を境界として一つの三角形内を色分けすることも可能である。こうして、平面上に色づけされた三角形の集合は、立体的に見ることができる水底三次元画像として得られる。得られた水底三次元画像を図10(一方眼は10m×10m)に、そしてその拡大図を図11に示す。また、参考のため、再三角形形成手段を用いずに仕上げた水底三次元画像を図12(一方眼は10m×10m)に、その拡大図を図13に示す。再三角形形成手段を用いないと、モザイク状に粗い画像となることがわかる。
【0051】
水底三次元画像は、種々の方法で得られた陸上の三次元画像と融合させることができる。陸上の三次元画像は少なくとも任意の二点の位置情報データが明確であれば、水底三次元画像との位置合わせができる。
【0052】
以上のST10〜ST60の処理を行う水底三次元画像作成システム11の構成を図14に示す。水底三次元画像作成システム11は、位置情報データを平面上にプロットしポイントを表示するポイント表示手段12や新規三角形に着色する着色表示手段13として機能するCRTやプリンタなどの三次元表示装置14、ポイントを頂点とする原始三角形を形成する原始三角形形成手段15や新たな創出ポイントを設けて新規三角形を形成する再三角形形成手段16として機能し、CPUやROM、RAMなどを有する中央処理装置17、各種指示を入力するキーボードなどの入力装置18を備えたコンピュータ装置19で構成される。このコンピュータ装置19は、メモリなどに位置深度データを読み込み、内蔵されたコンピュータプログラムにて中央処理装置17に各種処理を実行させ、表示装置14に処理結果を出力する。
【0053】
以下に、いくつかの本発明により得られた水底三次元画像の実例を示す。まず、図15に示すのは、高知県南国市十市前の浜1000m沖の水底三次元画像である。昔より土佐湾沖沿に黒田郷があったとする仮説があるが、この図から白鳳時代の地震(白鳳地震津波;684年(M8.4))により陥没してしまったのではないかと推定できる。また、別の例として図16に示すのは、土佐湾大山礁における漁場を表す水底三次元画像である。
【0054】
さらに、図17および図18に示すのは、高知県安芸郡北川村にある平鍋ダムの水底三次元画像である。この図は、平鍋ダムの地上部分と、ダムの水面下にある水底形状をともに立体的に示している。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明の水底三次元測量システムや水底三次元画像作成システムは、水底の深浅測量への応用に期待できる。例えば、ダムの水底の深浅測量を行うことで、ダム底に堆積した土砂量を測定し、どれだけの土砂を浚渫しなければならないかを計算したり、定期的に測量を行うことで土砂の堆積量の変化を管理したりすることができる。また、海や川などの埋め立てを行う際には、埋め立てに必要な土砂量を計算することができるし、工事の過程で、実際にどれだけ確実に作業を行うことができているかの確認をすることができる。さらに、海峡などの陸地と海の間が狭い場所などの水底測量を簡単に行うことができ、船舶の安全な運行に寄与することができる。
【0056】
本発明はさらに、GIS(Geographical Information Systems/地理情報システム)として活用することができ、水底三次元画像に種々の情報を付加した図を作成することができる。例えば、図19で示すように、水底三次元画像に魚の種類、漁獲高を示したグラフを付加することができる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の水底三次元測量システムに用いられる測量船を示す外観模式図である。
【図2】GPS電波と測深機音波の同調を説明する説明図である。
【図3】本発明の水底三次元画像作成システムの実行過程を示すフローチャートである。
【図4】測量船の航跡を平面上に描いた図である。
【図5】原始三角形を描いた図である。
【図6】原始三角形を示す図5の部分拡大図である。
【図7】観測点から原始三角形と等高線とを示し原始三角形に着色した図である。
【図8】新規三角形を描いた図である。
【図9】新規三角形を示す図8の部分拡大図である。
【図10】本発明の水底三次元画像作成システムにより描いた水底三次元画像である。
【図11】図10の部分拡大図である。
【図12】再三角形形成を行わずに描いた水底三次元画像である。
【図13】図12の部分拡大図である。
【図14】本発明の水底三次元画像作成システムの一実施形態を示すブロック図である。
【図15】本発明の水底三次元画像作成システムにより描いた別の水底三次元画像である。
【図16】本発明の水底三次元画像作成システムにより描いたまた別の水底三次元画像である。
【図17】本発明の水底三次元画像作成システムにより描いたさらに別の水底三次元画像である。
【図18】本発明の水底三次元画像作成システムにより描いたさらにまた別の水底三次元画像である。
【図19】付加情報を付した水底三次元画像である。
【図20】従来の測深方法により得られる水深情報を示したグラフを模式的に表した図である。
【符号の説明】
【0058】
1 観測船
2 位置検出装置
3 水深検出装置
4 コンピュータ装置
7 GPS衛星
8 GPS電波受信装置
9 測深機
11 水底三次元画像作成システム
12 ポイント表示手段
13 着色表示手段
14 三次元表示装置
15 原始三角形形成手段
16 再三角形形成手段
17 中央処理装置
18 入力装置
19 コンピュータ装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
GPS電波受信装置を有する位置検出装置と水深検出装置とを備え水上を移動して位置と深度を観測する測量手段と、GPS電波に基づく位置情報データと水面下の深度情報データから位置深度データを作成する三次元データ作成手段とを備える水底三次元測量システム。
【請求項2】
三次元データ作成手段は、水深検出装置に基づく深度情報データに観測時における水面水位データによる補正を加えて位置深度データを作成する請求項1記載の水底三次元測量システム。
【請求項3】
前記位置情報データは、前記測量手段が水上をらせん状に航行することで検出した位置情報データである請求項1または請求項2記載の水底三次元測量システム。
【請求項4】
前記測量手段は、前記位置情報データと前記深度情報データを三次元データ作成手段に送信する無線通信手段を備える請求項1〜請求項3何れか1項記載の水底三次元測量システム。
【請求項5】
位置情報データと深度情報データとを有する位置深度データに基づき、位置情報データを平面上にプロットしポイントを表示するポイント表示手段と、
該ポイントを頂点とする原始三角形を形成する原始三角形形成手段と、
前記位置深度データの有する深度情報データから前記原始三角形内に新たな創出ポイントを設け、原始三角形を消去して、前記ポイントと該創出ポイントの少なくとも何れか一方を頂点とする新規三角形を形成する再三角形形成手段と、
前記平面上に形成された新規三角形に着色する着色表示手段と、
を備え、着色された新規三角形の集合体を水底三次元画像とする水底三次元画像作成システム。
【請求項6】
前記位置深度データの有する深度情報データから前記原始三角形内に等高線を作成する等高線形成手段を有し、
前記再三角形形成手段が、該等高線上に新たな創出ポイントを設けるものである請求項5記載の水底三次元画像作成システム。
【請求項7】
位置情報データに基づく前記プロットが、らせん状に繋がって視認される位置深度データである請求項5記載の水底三次元画像作成システム。
【請求項8】
地上三次元画像を付加するレイヤー積層手段を有する請求項5〜請求項7何れか1項記載の水底三次元画像作成システム。
【請求項9】
請求項1〜請求項4何れか1項記載の水底三次元測量システムを備える請求項5〜請求項8何れか1項記載の水底三次元画像作成システム。
【請求項10】
GPS電波受信装置を有する位置検出装置にて位置情報データを獲得し、水深検出装置にて水面下の深度情報データを獲得し、位置情報データと深度情報データから位置深度データを作成する三次元データ作成手順を実行し、かつ
該位置深度データに基づき、位置情報データを平面上にプロットしてポイントを表示し、該ポイントを結ぶ三角形を形成し、前記ポイントの有する深度情報データに基づいて該三角形内に創出ポイントを形成し、該ポイントと該創出ポイントの少なくとも何れか一方を頂点とする新規三角形を前記三角形に代えて形成し、該新規三角形に着色する水底三次元画像作成手順を実行する水底三次元画像作成方法。
【請求項11】
新たに形成された新規三角形に基づいて、さらに創出ポイントを形成し、この創出ポイントをも含めてさらに新たな新規三角形を形成する手順を含む請求項10記載の水底三次元画像作成方法。
【請求項1】
GPS電波受信装置を有する位置検出装置と水深検出装置とを備え水上を移動して位置と深度を観測する測量手段と、GPS電波に基づく位置情報データと水面下の深度情報データから位置深度データを作成する三次元データ作成手段とを備える水底三次元測量システム。
【請求項2】
三次元データ作成手段は、水深検出装置に基づく深度情報データに観測時における水面水位データによる補正を加えて位置深度データを作成する請求項1記載の水底三次元測量システム。
【請求項3】
前記位置情報データは、前記測量手段が水上をらせん状に航行することで検出した位置情報データである請求項1または請求項2記載の水底三次元測量システム。
【請求項4】
前記測量手段は、前記位置情報データと前記深度情報データを三次元データ作成手段に送信する無線通信手段を備える請求項1〜請求項3何れか1項記載の水底三次元測量システム。
【請求項5】
位置情報データと深度情報データとを有する位置深度データに基づき、位置情報データを平面上にプロットしポイントを表示するポイント表示手段と、
該ポイントを頂点とする原始三角形を形成する原始三角形形成手段と、
前記位置深度データの有する深度情報データから前記原始三角形内に新たな創出ポイントを設け、原始三角形を消去して、前記ポイントと該創出ポイントの少なくとも何れか一方を頂点とする新規三角形を形成する再三角形形成手段と、
前記平面上に形成された新規三角形に着色する着色表示手段と、
を備え、着色された新規三角形の集合体を水底三次元画像とする水底三次元画像作成システム。
【請求項6】
前記位置深度データの有する深度情報データから前記原始三角形内に等高線を作成する等高線形成手段を有し、
前記再三角形形成手段が、該等高線上に新たな創出ポイントを設けるものである請求項5記載の水底三次元画像作成システム。
【請求項7】
位置情報データに基づく前記プロットが、らせん状に繋がって視認される位置深度データである請求項5記載の水底三次元画像作成システム。
【請求項8】
地上三次元画像を付加するレイヤー積層手段を有する請求項5〜請求項7何れか1項記載の水底三次元画像作成システム。
【請求項9】
請求項1〜請求項4何れか1項記載の水底三次元測量システムを備える請求項5〜請求項8何れか1項記載の水底三次元画像作成システム。
【請求項10】
GPS電波受信装置を有する位置検出装置にて位置情報データを獲得し、水深検出装置にて水面下の深度情報データを獲得し、位置情報データと深度情報データから位置深度データを作成する三次元データ作成手順を実行し、かつ
該位置深度データに基づき、位置情報データを平面上にプロットしてポイントを表示し、該ポイントを結ぶ三角形を形成し、前記ポイントの有する深度情報データに基づいて該三角形内に創出ポイントを形成し、該ポイントと該創出ポイントの少なくとも何れか一方を頂点とする新規三角形を前記三角形に代えて形成し、該新規三角形に着色する水底三次元画像作成手順を実行する水底三次元画像作成方法。
【請求項11】
新たに形成された新規三角形に基づいて、さらに創出ポイントを形成し、この創出ポイントをも含めてさらに新たな新規三角形を形成する手順を含む請求項10記載の水底三次元画像作成方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図14】
【図20】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図14】
【図20】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2007−309824(P2007−309824A)
【公開日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−140182(P2006−140182)
【出願日】平成18年5月19日(2006.5.19)
【特許番号】特許第4012233号(P4012233)
【特許公報発行日】平成19年11月21日(2007.11.21)
【出願人】(506171956)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年5月19日(2006.5.19)
【特許番号】特許第4012233号(P4012233)
【特許公報発行日】平成19年11月21日(2007.11.21)
【出願人】(506171956)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]