説明

水廻り部材

【課題】オンデマンド方式により塗装した塗装層の各部における水に対する性質を異ならせ、ある部分においては相対的に水をはじき、且つ、他の部分においては、水を薄く膜状に広げるようにし、両者の組み合わせにより、水を素早く排水することが可能となる。オンデマンド方式の塗装で塗り分けるので、狭い領域で水に対する性能の異なる塗り分けが正確にできる。
【解決手段】該塗装層2が、オンデマンド方式により親水性塗料を塗布することで形成され、且つ、塗装層2の複数個所が異なる親水性能となるように塗り分けてある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浴室の床パンや浴槽のような水廻り部材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から浴室の床パンや浴槽のような水廻り部材はFRPのような親水性の低い(平坦な面における水の接触角が大きい)材料により形成してある。このため、水廻り部材の表面(上面)に水が水玉状となって残り、排水性が悪いという問題があり、また、表面に残った水は薄く膜状に広がることなく水玉状に盛り上がって残るので、表面積が小さく、乾燥性も悪いという問題がある。
【0003】
そこで、水廻り部材の表面に排水経路を形成し、この排水経路の底を微細な粗面とすることで排水経路の底を親水性にして水が拡散して広がることで水勾配に沿って流れやすいようにする技術が特許文献1により知られている。
【0004】
また、本発明者も本発明に至る過程で、水周り部材の全面を微細な粗面とすることで全面において水を拡散させて水勾配に沿って流れやすいようにすることを考えた。
【0005】
ところが、上記、水廻り部材の表面の排水経路となる部分又は全面を微細な粗面とするものにおいては、微細な粗面を形成するには、水廻り部材を形成する金型に粗面形成用の微細な凹凸加工をする必要があり、金型コストが高くなるという問題がある。
【0006】
また、親水性を発揮させるために粗面とする従来例においては、粗面であるため汚れが取れ難いという問題がある。
【特許文献1】特開2004−251095号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記の従来の問題点に鑑みて発明したものであって、簡単な構成で塗装層の各部における水に対する性質を異ならせ、ある部分においては相対的に水をはじき、且つ、他の部分においては、水を薄く膜状に広げるようにし、両者の組み合わせにより、水を効果的に排水することが可能となる水周り部材を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために本発明に係る水廻り部材は、基材1に塗装層2を形成し、該塗装層2が、オンデマンド方式により親水性塗料を塗布することで形成され、且つ、塗装層2の複数個所が異なる親水性能となるように塗り分けてあること特徴とするものである。
【0009】
塗装層2全面が親水性能が高いと、塗装層2にかかった水は、各部において個々に面方向に薄膜状に広がるため、面方向に広がった水の薄膜同士がつながりにくく、したがって一連の帯状をした水の流れができ難いが、上記のように、塗装層2の複数個所が異なる親水性能となるように塗り分けてあることで、塗装層2の一部が他の部分に比べて親水性能が高いため、基材1の塗装層2に水がかかった場合、親水性能が高い部分3aにかかった水が薄膜状に広がる際に、隣接する親水性能が低い部分3b側には広がらず、他の親水性能が高い部分3aにおいて薄膜状に広がった水とつながりやすくて一連の水の流れができてスムーズに排水できることになる。また、親水性能が低い部分3bにかかった水は親水性能が高い部分3aほど薄膜状に広がらないが、親水性があるためある程度薄膜状に広がり、上記親水性能が高い部分3aにおいて一連の流れとなった薄膜状の水に接触することで、親水性能が高い部分3aにおいて一連となった流れに引かれて親水性能が高い部分3aに流れ込み、これにより親水性能が高い部分3aにおける一連の流れの水量が多くなって、よりいっそう排水がスムーズに行えることになる。また、オンデマンド方式の塗装で親水性塗料を塗装層2の複数個所が異なる親水性能となるように塗り分けるので、これにより親水性能が低い部分3bにかかった水が親水性が低いとはいえ薄膜状に広がって隣接する親水性能が高い部分3aに確実に流れ込むことができて親水性能が低い部分3bに水が残らないような、狭い領域で親水性能が異なるように正確に塗り分けた塗装層2を構成することができる。
【0010】
また、基材1に塗装層2を形成し、該塗装層2が、オンデマンド方式により撥水性塗料を塗布することで形成され、且つ、塗装層2の複数個所が異なる撥水性能となるように塗り分けてあること特徴とするものであってもよい。
【0011】
このような構成とすることで、基材1の塗装層2に水がかかった場合、撥水性能が高い部分4aにかかった水は、高い撥水作用により撥水性能が低い部分4b側に向けてはじかれて流れこむ。一方、撥水性能が低い部分4bにおいては、撥水性能が高い部分4aに比べて相対的に水は薄膜状に広がるが、上記のように撥水性能が高い部分4aからはじかれて流れ込むため、水量が増え、これが撥水性能が低い部分4bにおいて広がることで、水の流れる勢いを部分的に生じさせ、これにより撥水性能が低い部分4bの他の部位で広がっている別の水の膜とつながり、一連の連続した水の流れができてスムーズに排水されることになる。また、オンデマンド方式の塗装で撥水性塗料の異なる撥水性能に塗り分けるので、これにより撥水性能が高い部分4aにかかった水が撥水作用ではじかれて隣接する撥水性能が低い部分4bに確実に流れ込むことができて撥水性能が高い部分4aに水玉が残らないような、狭い領域で撥水性能が異なるように正確に塗り分けた塗装層2を構成することができる。
【0012】
また、基材1に塗装層2を形成し、該塗装層2が、オンデマンド方式により撥水性塗料を塗布することで形成され、且つ、撥水性塗料の塗布厚を違わせることで異なる撥水性能に塗り分けてあることを特徴とするものであってもよい。
【0013】
このような構成とすることで、基材1の塗装層2に水がかかった場合、撥水性塗料の塗布厚が厚くて撥水性能が高い部分4aにかかった水は、高い撥水作用により撥水性塗料の塗布厚が薄くて撥水性能が低い部分4b側に向けてはじかれて流れこむ。一方、撥水性塗料の塗布厚が薄くて撥水性能が低い部分4bにおいては、撥水性塗料の塗布厚が厚くて撥水性能が高い部分4aに比べて相対的に水は薄膜状に広がるが、上記のように撥水性塗料の塗布厚が厚くて撥水性能が高い部分4aからはじかれて流れ込むため、水量が増え、これが撥水性塗料の塗布厚が薄くて撥水性能が低い部分4bにおいて広がることで、水の流れる勢いを部分的に生じさせ、これにより撥水性塗料の塗布厚が薄くて撥水性能が低い部分4bの他の部位で広がっている別の水の膜とつながり、一連の連続した水の流れができてスムーズに排水されることになる。また、オンデマンド方式の塗装で撥水性塗料の塗布厚を違わせることで異なる撥水性能に塗り分けるので、これにより撥水性塗料の塗布厚が厚くて撥水性能が高い部分4aにかかった水が撥水作用ではじかれて隣接する撥水性塗料の塗布厚が薄くて撥水性能が低い部分4bに確実に流れ込むことができて撥水性塗料の塗布厚が厚くて撥水性能が高い部分4aに水玉が残らないような、狭い領域で撥水性能が異なるように正確に塗り分けた塗装層2を構成することができる。しかも、撥水性塗料の塗布厚が薄い方が排水部となるので、撥水性塗料の塗布厚が厚くて撥水性能が高い部分4aにかかった水が、高い撥水作用により撥水性塗料の塗布厚が薄くて撥水性能が低い部分4b側に向けてはじかれて流れ込み易くなり、また、撥水性塗料の塗布厚が薄くて撥水性能が低い部分4bが排水部として確実に機能する。また、塗装層2の上面が凹凸面となり、滑り止め効果がある。
【発明の効果】
【0014】
本発明にあっては、上記のように、塗装層が、オンデマンド方式により塗装した塗装層の各部における水に対する性質を異ならせ、ある部分においては相対的に水をはじき、且つ、他の部分においては、水を薄く膜状に広げるようにし、両者の組み合わせにより、水を効果的に排水することが可能となる。また、従来のように表面を粗面として親水性を付与するものに比べて汚れが取れやすく、また、オンデマンド方式の塗装で塗り分けるので、狭い領域で水に対する性能の異なる塗り分けが正確にできるという利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明を添付図面に示す実施形態に基いて説明する。
【0016】
本発明の水廻り部材5は床パンや浴槽等のように水廻りに使用される部材であり、基材1の表面が排水部6側に向けて下り勾配となった構成のものである。
【0017】
以下水廻り部材5として浴室の床パン8を例として説明する。
【0018】
図1乃至図3に示す実施形態においては、床パン8の一側辺に沿って排水溝9が形成してあり、該排水溝9の一部に排水孔10が形成してあり、本実施形態では、排水部6が排水溝9と排水孔10により構成してある。床パン8の基材1は排水部6側に向けて水勾配が形成してある。この場合、排水溝9に対して略直交する方向に排水溝9側に向けて下り傾斜した水勾配を形成してもよく、あるいは、排水孔10側ほど低くなるように下り傾斜した水勾配を形成してもよい。また、排水溝9の溝底は排水孔10側に向けて下り傾斜した水勾配が形成してある。
【0019】
床パン8の基材1の表面には塗装層2が形成してある。塗装層2はインクジェットなどのオンデマンド方式の塗装により形成されたもので、図1乃至図3に示す実施形態では、オンデマンド方式により親水性塗料を塗布することで形成され、且つ、塗装層2の複数個所が異なる親水性能となるように塗り分け形成することで構成してあり、上記親水性能が高い部分3aは排水経路7となっており、この排水経路7の端部が排水部6に至っている。
【0020】
図1に示す実施形態では、排水経路7となる親水性能が高い部分3aは格子状となっており、この格子状をした親水性能が高い部分3aの格子目部分がそれぞれ親水性能が低い部分3bとなっている。
【0021】
また、図2に示す実施形態では、線状又は帯状をした多数列の親水性能が高い部分3aと親水性能が低い部分3bとを交互に塗り分け形成してあり、各線状又は帯状をした多数列の親水性能が高い部分3aと親水性能が低い部分3bは排水溝9に対してほぼ直交する方向となっていて、各線状又は帯状をした親水性能が高い部分3aと親水性能が低い部分3bの各端部がそれぞれ排水溝9に至っている。
【0022】
また、図3に示す実施形態では、線状又は帯状をした多数列の親水性能が高い部分3aと親水性能が低い部分3bとを交互に塗り分け形成してあり、線状又は帯状の多数列の親水性能が高い部分3aと親水性能が低い部分3bはいずれも排水孔10の方を向くように排水溝9に対して傾斜するように形成してあり、少なくとも排水経路7を構成する親水性能が高い部分3aの端部は排水溝9又は排水孔10に至っている。
【0023】
また、図示を省略しているが、線状又は帯状をした多数列の排水孔10から親水性能が高い部分3aと親水性能が低い部分3bを放射状に形成すると共に排水孔10の周方向に親水性能が高い部分3aと親水性能が低い部分3bとを交互に形成してもよい。
【0024】
上記のように塗装層2を、親水性能が高い部分3aと親水性能が低い部分3bに塗り分けるには、インクジェットなどのオンデマンド方式の塗装により形成する。
【0025】
オンデマンド方式の塗装は、インクジェット塗装方式を例にとって説明すると、1ノズルから数ピコリットルのインク液(塗料)を吐出して基材1の表面の狙った位置に吹き付けることで、吹き付けられた塗料が1ドットとなり、その点が連続したり、集積したりして面を構成することで基材1の表面に塗装層2を形成するものであり、本実施形態においては、親水性塗料をノズルから吐出して、複数のドットの集合としての格子状又は、多数の線状又は帯状に親水性能の高い親水性塗料を小間隔を介して吹き付けて、格子状又は、小間隔を介して多数の線状又は帯状をした親水性能が高い部分3aを形成し、その後、親水性能の低い親水性塗料を別のノズルから吐出して格子状をした親水性能が高い部分3aの多数の格子目部分に吹き付けるか、あるいは、線状又は帯状をした親水性能が高い部分3a間の部分に親水性能の低い親水性塗料を線状又は帯状に吹き付けて、多数の親水性能が低い部分3bを形成することで塗り分けられることになる。
【0026】
もちろん、上記とは逆の順序で塗装してもよい。
【0027】
ここで、親水性を有する塗料とは、例えば、水との接触角が50度以下となる塗膜を形成可能な塗料を意味し、アルカリシリケート類含有無機塗料、金属アルコキシド類含有無機塗料、有機無機複合化塗料、表面親水化塗料等を例示できるが、必ずしもこれにのみ限定されず、他の従来から公知の親水性塗料を使用できる。そして、親水性塗料における親水性能を異ならせるには例えば、溶剤の量を変えて塗料濃度を変えることで親水性能の異なる複数種の塗料を得ることができる。
【0028】
上記のように、床パンのような基材1の表面を、排水経路7となる親水性能が高い部分3aと、親水性能が低い部分3bとに塗り分け形成して塗装層2を形成することで、基材1の塗装層2に水がかかった場合、排水経路7となる親水性能が高い部分3aにかかった水は、高い親水性能により薄膜状に広がるのであるが、この場合、隣接する親水性能が低い部分3b側には広がらず、他の親水性能が高い部分3aにおいて薄膜状に広がった水とつながりやすくて一連の水の流れができてスムーズに排水できることになる。また、親水性能が低い部分3bにかかった水は親水性能が高い部分3aほど薄膜状に広がらないが、親水性があるためある程度薄膜状に広がり、上記親水性能が高い部分3aにおいて一連の流れとなった薄膜状の水に接触することで、親水性能が高い部分3aにおいて一連となった流れに引かれて親水性能が高い部分3aに流れ込み、これにより親水性能が高い部分3aにおける一連の流れの水量が多くなって、よりいっそう排水経路7を排水部6に向かう方向に沿って細長く広がり、水勾配に沿って流れやすくなる。
【0029】
図1に示すように親水性能が高い部分3aを格子状に形成すると共に、該格子状をした親水性能が高い部分3aの格子目部分に親水性能が低い部分3bを形成した実施形態においては、薄膜状に広がる面積が相対的に小さいがこの親水性能が低い部分3bの面積を狭くすることで、親水性能が低い部分3bにかかった水が周囲の排水経路7である親水性能が高い部分3aを流れる薄い膜状の水に接触して流れ込むことになり、親水性能が高い部分3aよりなる排水経路7を介してスムーズに排水できる。
【0030】
また、図2や図3のように、線状又は帯状をした多数列の親水性能が高い部分3aと線状又は帯状をした多数列の親水性能が低い部分3bとを交互に塗り分け形成した実施形態においては薄膜状に広がる面積が相対的に小さいがこの線状又は帯状をした親水性能が低い部分3bの巾を狭くすることで、親水性能が低い部分3bにかかった水が親水性能が高い部分3aに流れ込むことになって、線状又は帯状をした親水性能が高い部分3aを介して素早くかつスムーズに排水できる。
【0031】
なお、図1乃至図3において矢印は水の流れる方向を示している。
【0032】
ここで、いずれの実施形態においても、親水性能が低い部分3bの巾が広いとこの部分にかかった水のうち、中心部にかかった水が水玉となって残るおそれがある。このため、親水性能が低い部分3bの巾はmmサイズ(1cm以下で且つ1mm以上)が好ましく(つまり格子目の一辺がmmサイズであったり、あるいは、線状又は帯状の横巾がmmサイズであることが好ましく)、この場合は、親水性能が低い部分3bにかかった水が薄膜状に広がって親水性能が高い部分3a側に流れ込み、親水性能が低い部分3bに水玉となって残り難くなる。
【0033】
親水性能が高い部分3aの巾は特に限定はなく、巾が数十cmサイズであってもよいが、あまり巾が広いと、親水性能が高い部分3aにかかった水が水勾配方向だけでなく水勾配と交差する方向にも広がることになって、水勾配方向に細長く広がらないので、排水効果が低下する。このため、数cmサイズ又はmmサイズの巾とするのが好ましい。
【0034】
このように狭い領域で排水経路7となる親水性能が高い部分3aと親水性能が低い部分3bとを正確に塗り分けた塗装層2を形成するに当り、オンデマンド方式の塗装で塗り分けるので、簡単且つ正確に親水性能が低い部分3bにかかった水が親水性能が高い部分3aに確実に流れ込んで親水性能が低い部分3bに水玉が残らないような、狭い領域での塗り分けが簡単且つ正確にできる。
【0035】
次に、図4乃至図6に基づいて本発明の他の実施形態を説明する。
【0036】
本実施形態も上記図1乃至図3に示す実施形態と同様に水廻り部材5として浴室の床パン8を例として説明する。本実施形態に置いては、塗装層2の構成が異なるのみで、他の構成は上記図1乃至図3と同様なので、重複する説明は省略し、異なる構成につき以下説明する。
【0037】
床パン8の基材1の表面の塗装層2はインクジェットなどのオンデマンド方式の塗装により形成されたもので、図4乃至図6に示す実施形態では、オンデマンド方式により撥水性塗料を塗布することで形成され、且つ、塗装層2の複数個所が異なる撥水性能となるように塗り分け形成することで構成してあり、上記撥水性能が低い部分4bは排水経路7となっており、この排水経路7の端部が排水部6に至っている。
【0038】
図4に示す実施形態では、排水経路7となる撥水性能が低い部分4bは格子状となっており、この格子状をした撥水性能が低い部分4bの格子目部分がそれぞれ撥水性能が高い部分4aとなっている。
【0039】
また、図5に示す実施形態では、線状又は帯状をした多数列の撥水性能が低い部分4bと撥水性能が高い部分4aとを交互に塗り分け形成してあり、各線状又は帯状をした多数列の撥水性能が低い部分4bと撥水性能が高い部分4aが排水溝9に対してほぼ直交する方向となっていて、各線状又は帯状をした撥水性能が低い部分4bと撥水性能が高い部分4aの各端部がそれぞれ排水溝9に至っている。
【0040】
また、図6に示す実施形態では、線状又は帯状をした多数列の撥水性能が低い部分4bと撥水性能が高い部分4aとを交互に塗り分け形成してあり、線状又は帯状の多数列の撥水性能が低い部分4bと撥水性能が高い部分4aはいずれも排水孔10の方を向くように排水溝9に対して傾斜するように形成してあり、少なくとも排水経路7を構成する親水性能が高い部分3aの端部は排水溝9又は排水孔10に至っている。
【0041】
また、図示を省略しているが、線状又は帯状をした多数列の排水孔10から撥水性能が低い部分4bと撥水性能が高い部分4aを放射状に形成すると共に排水孔10の周方向に撥水性能が低い部分4bと撥水性能が高い部分4aとを交互に形成してもよい。
【0042】
上記のように塗装層2を、撥水性能が低い部分4bと撥水性能が高い部分4aに塗り分けるには、インクジェットなどのオンデマンド方式の塗装により形成する。
【0043】
本実施形態においては、撥水性塗料をノズルから吐出して、複数のドットの集合としての格子状又は、多数の線状又は帯状に撥水性能の低い撥水性塗料を小間隔を介して吹き付けて、格子状又は、小間隔を介して多数の線状又は帯状をした撥水性能が低い部分4bを形成し、その後、撥水性能の高い撥水性塗料を別のノズルから吐出して格子状をした撥水性能が低い部分4bの多数の格子目部分に吹き付けるか、あるいは、線状又は帯状をした撥水性能が低い部分4b間の部分に撥水性能の高い撥水性塗料を線状又は帯状に吹き付けて、多数の撥水性能が高い部分4aを形成することで塗り分けられることになる。
【0044】
もちろん、上記とは逆の順序で塗装してもよい。
【0045】
ここで、撥水性塗料としては、アクリル系、メタクリル系、ウレタン系、フッ素系等の耐水性塗料や、撥水剤として知られるパラフィンワックス系エマルジョン、フッ素系エマルジョンなどを例示できるが、必ずしもこれにのみ限定されず、従来から公知の種々の撥水性塗料を用いることができる。そして、撥水性塗料における撥水性能を異ならせるには例えば、溶剤の量を変えて塗料濃度を変えることで撥水性能の異なる複数種の塗料を得ることができる。
【0046】
上記のように、床パンのような基材1の表面を、排水経路7となる撥水性能が低い部分4bと、撥水性能が高い部分4aとに塗り分け形成して塗装層2を形成することで、基材1の塗装層2に水がかかった場合、撥水性能が高い部分4aにかかった水は、高い撥水作用により撥水性能が低い部分4b側に向けてはじかれて流れこむ。一方、撥水性能が低い部分4bにおいては、撥水性能が高い部分4aに比べて相対的に水は薄膜状に広がるが、上記のように撥水性能が高い部分4aからはじかれて流れ込むため、水量が増え、これが撥水性能が低い部分4bにおいて広がることで、水の流れる勢いを部分的に生じさせ、これにより撥水性能が低い部分4bの他の部位で広がっている別の水の膜とつながり、一連の連続した水の流れができてスムーズに排水されることになる。この場合、隣接する撥水性能が高い部分4a側には広がらず、排水経路7を排水部6に向かう方向に沿って細長く広がり、水勾配に沿って流れやすくなる。
【0047】
図4に示すように撥水性能が低い部分4bを格子状に形成すると共に、該格子状をした撥水性能が低い部分4bの格子目部分に撥水性能が高い部分4aを形成した実施形態においては、撥水性能が高い部分4aにかかった水が高い撥水作用によりはじかれて周囲の排水経路7である撥水性能が低い部分4bに流れ込むことになり、撥水性能が低い部分4bよりなる排水経路7を介してスムーズに排水できる。
【0048】
また、図5や図6のように、線状又は帯状をした多数列の撥水性能が低い部分4bと線状又は帯状をした多数列の撥水性能が高い部分4aとを交互に塗り分け形成した実施形態においては、線状又は帯状をした撥水性能が高い部分4aにかかった水が高い撥水作用によりはじかれて両側の線状又は帯状をした排水経路7である撥水性能が低い部分4bに流れ込むことになって、線状又は帯状をした撥水性能が低い部分4bを介して素早くかつスムーズに排水できる。
【0049】
なお、図4乃至図6において矢印は水の流れる方向を示している。
【0050】
ここで、いずれの実施形態においても、撥水性塗料の撥水性能が高い部分4aの巾が広いとこの部分にかかった水のうち、中心部にかかった水が水玉となって残るおそれがある。このため、撥水性能が高い部分4aの巾はmmサイズ(1cm以下で且つ1mm以上)が好ましく(つまり格子目の一辺がmmサイズであったり、あるいは、線状又は帯状の横巾がmmサイズであることが好ましく)、この場合は、撥水性能が高い部分4aにかかった水が撥水性によりはじかれて水玉となって隣接する撥水性能が低い部分4b側に流れ込み、撥水性能が高い部分4aに水玉となって残り難くなる。
【0051】
撥水性能が低い部分4bの巾は特に限定はなく、巾が数十cmサイズであってもよいが、あまり巾が広いと、撥水性能が低い部分4bにかかった水が水勾配方向だけでなく水勾配と交差する方向にも広がることになって、水勾配方向に細長く広がらないので、排水効果が低下する。このため、数cmサイズ又はmmサイズの巾とするのが好ましい。
【0052】
このように狭い領域で排水経路7となる撥水性能が低い部分4bと撥水性能が高い部分4aとを正確に塗り分けた塗装層2を形成するに当り、オンデマンド方式の塗装で塗り分けるので、簡単且つ正確に撥水性能が高い部分4aにかかった水が撥水作用ではじかれて隣接する撥水性能が低い部分4bに確実に流れ込んで撥水性能が高い部分4aに水玉が残らないような、狭い領域での塗り分けが簡単且つ正確にできる。
【0053】
上記角実施形態においては塗料の濃度を変えて塗り分けしている例を示しているが、同一配合の塗料を用いて異なる撥水性能となるように塗り分けて塗装層2を形成するようにしてもよい。
【0054】
一例を同一配合の撥水性塗料を用いてオンデマンド方式により塗装する例で説明する。なお、図面は上記図4乃至図6を共用して説明する。
【0055】
本実施形態においては、オンデマンド方式による塗装に当って、同一配合の撥水性塗料の塗布厚を違わせることで異なる撥水性能に塗り分け形成することで塗装層2を構成してあり、撥水性塗料の塗布厚が薄くて撥水性能が低い部分4bは排水経路7となっており、この排水経路7の端部が排水部6に至っている。
【0056】
図4に示す実施形態では、排水経路7となる撥水性塗料の塗布厚が薄くて撥水性能が低い部分4bは格子状となっており、この格子状をした撥水性塗料の塗布厚が薄くて撥水性能が低い部分4bの格子目部分にそれぞれ撥水性塗料の塗布厚が厚くて撥水性能が高い部分4aとなっている。
【0057】
また、図5に示す実施形態では、線状又は帯状をした多数列の撥水性塗料の塗布厚が薄くて撥水性能が低い部分4bと、撥水性塗料の塗布厚が厚くて撥水性能が高い部分4aとを交互に塗り分け形成してあり、各線状又は帯状をした多数列の撥水性塗料の塗布厚が薄くて撥水性能が低い部分4b及び撥水性塗料の塗布厚が厚くて撥水性能が高い部分4aは排水溝9に対してほぼ直交する方向となっていて、各線状又は帯状をした撥水性塗料の塗布厚が薄くて撥水性能が低い部分4b及び撥水性塗料の塗布厚が厚くて撥水性能が高い部分4aの各端部がそれぞれ排水溝9に至っている。
【0058】
また、図6に示す実施形態では、線状又は帯状をした多数列の撥水性塗料の塗布厚が薄くて撥水性能が低い部分4b及び撥水性塗料の塗布厚が厚くて撥水性能が高い部分4aとを交互に塗り分け形成してあり、線状又は帯状の多数列の撥水性塗料の塗布厚が薄くて撥水性能が低い部分4b及び撥水性塗料の塗布厚が厚くて撥水性能が高い部分4aはいずれも排水孔10の方を向くように排水溝9に対して傾斜するように形成してあり、少なくとも排水経路7を構成する撥水性塗料の塗布厚が薄くて撥水性能が低い部分4bの端部は排水溝9又は排水孔10に至っている。
【0059】
また、図示を省略しているが、線状又は帯状をした多数列の排水孔10から撥水性塗料の塗布厚が薄くて撥水性能が低い部分4b及び撥水性塗料の塗布厚が厚くて撥水性能が高い部分4aを放射状に形成すると共に排水孔10の周方向に撥水性塗料の塗布厚が薄くて撥水性能が低い部分4b及び撥水性塗料の塗布厚が厚くて撥水性能が高い部分4aとを交互に形成してもよい。
【0060】
上記のように塗装層2を、撥水性塗料の塗布厚が薄くて撥水性能が低い部分4b及び撥水性塗料の塗布厚が厚くて撥水性能が高い部分4aを塗り分けるには、インクジェットなどのオンデマンド方式の塗装により形成する。
【0061】
オンデマンド方式の塗装は、インクジェット塗装方式を例にとって説明すると、1ノズルから数ピコリットルのインク液(塗料)を吐出して基材1の表面の狙った位置に吹き付けることで、吹き付けられた塗料が1ドットとなり、その点が連続したり、集積したりして面を構成することで基材1の表面に塗装層2を形成するものであり、本発明においては、撥水性塗料をノズルから吐出して、ドッドの集積量が少ない部分とドッドの集積量の多い部分とを塗り分けることで、ドッドの集積量が少ない部分、つまり、撥水性材料の塗布厚が薄くて撥水性能が低い部分4bを形成し、ドッドの集積量が多い部分、つまり撥水性材料の塗布厚が厚くて撥水性能が高い部分4aを形成することで塗り分けられることになる。図7には同一配合の撥水性塗料の塗布厚を違わせることで異なる撥水性能に塗り分け形成した概略構成を示す概略断面図を示している。
【0062】
本実施形態において使用する撥水性塗料としては前述の撥水性塗料を用いることができる。
【0063】
上記のように、床パンのような基材1の表面を、排水経路7となる撥水性塗料の塗布厚が薄くて撥水性能が低い部分4bと、撥水性塗料の塗布厚が厚くて撥水性能が高い部分4aとに塗り分け形成することで塗装層2を形成することで、基材1の塗装層2に水がかかった場合、撥水性塗料の塗布厚が厚くて撥水性能が高い部分4aにかかった水は、高い撥水作用により撥水性塗料の塗布厚が薄くて撥水性能が低い部分4b側に向けてはじかれて流れこむ。一方、撥水性塗料の塗布厚が薄くて撥水性能が低い部分4bにおいては、撥水性能が高い部分4aに比べて相対的に水は薄膜状に広がるが、上記のように撥水性塗料の塗布厚が厚くて撥水性能が高い部分4aからはじかれて流れ込むため、水量が増え、これが撥水性塗料の塗布厚が薄くて撥水性能が低い部分4bにおいて広がることで、水の流れる勢いを部分的に生じさせ、これにより撥水性塗料の塗布厚が薄くて撥水性能が低い部分4bの他の部位で広がっている別の水の膜とつながり、一連の連続した水の流れができてスムーズに排水されることになる。この場合、隣接する撥水性塗料の塗布厚が厚くて撥水性能が高い部分4a側には広がらず、排水経路7を排水部6に向かう方向に沿って細長く広がり、水勾配に沿って流れやすくなる。
【0064】
図4に示すように撥水性塗料の塗布厚が薄くて撥水性能が低い部分4bを格子状に形成すると共に、該格子状をした撥水性塗料の塗布厚が薄くて撥水性能が低い部分4bの格子目部分に撥水性塗料の塗布厚が厚くて撥水性能が高い部分4aを形成した実施形態においては、撥水性塗料の塗布厚が厚くて撥水性能が高い部分4aにかかった水が高い撥水作用によりはじかれて周囲の排水経路7である撥水性塗料の塗布厚が薄くて撥水性能が低い部分4bに流れ込むことになり、撥水性塗料の塗布厚が薄くて撥水性能が低い部分4bよりなる排水経路7を介してスムーズに排水できる。
【0065】
また、図5や図6のように、線状又は帯状をした多数列の撥水性塗料の塗布厚が薄くて撥水性能が低い部分4bと線状又は帯状をした多数列の撥水性塗料の塗布厚が厚くて撥水性能が高い部分4aとを交互に塗り分け形成した実施形態においては、線状又は帯状をした撥水性塗料の塗布厚が厚くて撥水性能が高い部分4aにかかった水が高い撥水作用によりはじかれて両側の線状又は帯状をした排水経路7である撥水性塗料の塗布厚が薄くて撥水性能が低い部分4bに流れ込むことになって、線状又は帯状をした撥水性塗料の塗布厚が薄くて撥水性能が低い部分4bを介して素早くかつスムーズに排水できる。
【0066】
なお、図4乃至図6において矢印は水の流れる方向を示している。
【0067】
本実施形態においても撥水性塗料の塗布厚が厚くて撥水性能が高い部分4aの巾が広いとこの部分にかかった水のうち、中心部にかかった水が水玉となって残るおそれがある。このため、撥水性塗料の塗布厚が厚くて撥水性能が高い部分4aの巾はmmサイズ(1cm以下で且つ1mm以上)が好ましく(つまり格子目の一辺がmmサイズであったり、あるいは、線状又は帯状の横巾がmmサイズであることが好ましく)、この場合は、撥水性塗料の塗布厚が厚くて撥水性能が高い部分4aにかかった水が撥水性によりはじかれて水玉となって隣接する撥水性塗料の塗布厚が薄くて撥水性能が低い部分4b側に流れ込み、撥水性塗料の塗布厚が厚くて撥水性能が高い部分4aに水玉となって残り難くなる。
【0068】
撥水性塗料の塗布厚が薄くて撥水性能が低い部分4bの巾は特に限定はなく、巾が数十cmサイズであってもよいが、あまり巾が広いと、撥水性塗料の塗布厚が薄くて撥水性能が低い部分4bにかかった水が水勾配方向だけでなく水勾配と交差する方向にも広がることになって、水勾配方向に細長く広がらないので、排水効果が低下する。このため、数cmサイズ又はmmサイズの巾とするのが好ましい。
【0069】
このように狭い領域で排水経路7となる撥水性塗料の塗布厚が薄くて撥水性能が低い部分4bと撥水性塗料の塗布厚が厚くて撥水性能が高い部分4aとを正確に塗り分けた塗装層2を形成するに当り、オンデマンド方式の塗装で塗り分けるので、簡単且つ正確に撥水性塗料の塗布厚が厚くて撥水性能が高い部分4aにかかった水が高い撥水作用ではじかれて隣接する撥水性塗料の塗布厚が薄くて撥水性能が低い部分4bに確実に流れ込んで撥水性塗料の塗布厚が厚くて撥水性能が高い部分4aに水玉が残らないような、狭い領域での塗り分けが簡単且つ正確にできる。
【0070】
また、撥水性塗料の塗布厚が薄くて撥水性能が低い部分4bの上面は、撥水性塗料の塗布厚が厚くて撥水性能が高い部分4aの上面よりも下方に位置することになるので、撥水性塗料の塗布厚が薄くて撥水性能が低い部分4bは排水溝となって、よりいっそう排水性が良くなり、また、塗装層2の上面が凹凸面となり、滑り止め効果がある。
【0071】
上記実施形態では水廻り部材5として浴室の床パン8の例で説明したが、浴槽やその他の水廻り部材5にも本発明の技術は適用できる。
【0072】
なお、オンデマンド方式による塗装に当って、同一配合の撥水性塗料の塗布厚を違わせることで異なる撥水性能に塗り分け形成することで塗装層2を構成するに当って、ドットの集合としての塗布厚を徐々に変えて塗布することで、塗装層2のある部分から他の部分にかけて徐々に撥水性能を異ならせるようにしてもよい。
【0073】
なお、また、図示を省略したが、オンデマンド方式による塗装に当って、同一配合の親水性塗料の塗布厚を違わせることで異なる親水性能に塗り分け形成することで塗装層2を構成してもよい。この場合も、ドットの集合としての塗布厚を徐々に変えて塗布することで、塗装層2のある部分から他の部分にかけて徐々に親水性能を異ならせるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明の一実施形態の要部拡大平面図である。
【図2】同上の他の実施形態の要部拡大平面図である。
【図3】同上の他の実施形態の要部拡大平面図である。
【図4】同上の他の実施形態の要部拡大平面図である。
【図5】同上の他の実施形態の要部拡大平面図である。
【図6】同上の他の実施形態の要部拡大平面図である。
【図7】同上の概略断面図である。
【符号の説明】
【0075】
1 基材
2 塗装層
3a 親水性能が高い部分
3b 親水性能が低い部分
4a 撥水性能が高い部分
4b 撥水性能が低い部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材に塗装層を形成し、該塗装層が、オンデマンド方式により親水性塗料を塗布することで形成され、且つ、塗装層の複数個所が異なる親水性能となるように塗り分けてあること特徴とする水廻り部材。
【請求項2】
基材に塗装層を形成し、該塗装層が、オンデマンド方式により撥水性塗料を塗布することで形成され、且つ、塗装層の複数個所が異なる撥水性能となるように塗り分けてあること特徴とする水廻り部材。
【請求項3】
基材に塗装層を形成し、該塗装層が、オンデマンド方式により撥水性塗料を塗布することで形成され、且つ、撥水性塗料の塗布厚を違わせることで異なる撥水性能に塗り分けてあること特徴とする水廻り部材。





【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−31665(P2008−31665A)
【公開日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−203961(P2006−203961)
【出願日】平成18年7月26日(2006.7.26)
【出願人】(000005832)松下電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】