説明

水性ゲル状化粧料

【課題】電解質が存在していても、水性ゲルが生成し、保存安定性が良好で、肌への伸び広がりが均一である等の使用感に優れる水性ゲル状化粧料を提供すること。
【解決手段】
(A)リゾリン脂質
(B)グリセリンモノアルキルエーテル
(C)水
(D)電解質
を含有することを特徴とする水性ゲル状化粧料に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リゾリン脂質、グリセリンモノアルキルエーテル、水、電解質を配合する水性ゲル状化粧料に関するものである。より詳細には、電解質が存在していても、水性ゲルが生成し、保存安定性が良好で、肌への伸び広がりが均一で、べたつきが無い水性ゲル状化粧料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
リン脂質は生体膜の構成成分として知られており、皮膚への親和性が良好で、安全性の高い化粧料基材として利用されてきた。特に水素添加リン脂質を用いたリポソームは、水素添加リン脂質の親水基と親油基が同心円上に並んだ球状のラメラ液晶構造をとったものであり、親油基部分にコレステロール等の包水性物質を内包させることにより肌への保湿効果を高めることや、各種美容成分等を配合する技術が知られている(特許文献1参照)。また水素添加リン脂質の応用利用として、水素添加リン脂質とグリセリン骨格を有するノニオン性界面活性剤と水を組み合わせると、肌への保湿効果が高い水性ゲル状化粧料が得られることが知られている(特許文献2参照)。
【0003】
一方、リゾリン脂質は、リン脂質に類似した機能を有するものの、親水性が高いことから乳化剤としての応用もされている。例えば、リゾリン脂質と油と電解質と水を組み合わせると、保存安定性が良好でエモリエント効果が高い液状乳化化粧料が得られることが知られている(特許文献3参照)。またリゾリン脂質と水相成分と油相成分と電解質としてカゼイン塩を組み合わせると、安全性が高く安定性にも優れる親水性ゲル状組成物が得られることが知られている(特許文献4参照)。
【0004】
このようにリン脂質あるいはリゾリン脂質を用いてさまざまな製剤開発がなされており、その性状は液状からゲル状と多岐に応用展開されている。中でも水性ゲル状組成物は、チキソトロピー性を有し、応力の無い状態においては流動性を示さないが、外力が加わると水性ゲル構造の分子間力の一部あるいは全部が破壊されるため、ゾル状態となるため流動性を復元するという特徴を持つため、化粧料に用いると、例えば手に取るときには流動性が低いためこぼれにくく、肌に塗布しやすいといった使用性に優れ、肌上では手による外力で水性ゲル構造が壊れて流動性を有するため、肌への伸び広がりが良好になり化粧効果が向上するといった効果があるため長年水性ゲル状組成物の開発が行われてきた。
【0005】
【特許文献1】特開2008−2663234号公報
【特許文献2】特開2005−32024号公報
【特許文献3】国際公開第05/077322号パンフレット
【特許文献4】特開平3−196833号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが特許文献2のゲル状化粧料は、使用性には優れるものの、例えば肌への保湿効果を期待するL−アラニン、β−アラニン、L−アルギニン、L−アスパラギン酸、ポリアスパラギン酸、L−グルタミン、ポリグルタミン酸、グリシン、トリメチルグリシン、L−ヒドロキシプロリン、L−プロリン等のアミノ酸のような電解質を配合すると、ゲルが形成できず化粧料として分離する排液現象が見られて保存安定性が優れない場合があった。これは特許文献1の技術においても同様であり、電解質濃度が高い美容成分の配合は困難であった。一方、特許文献3の液状乳化化粧料は、電解質配合においては製剤としての安定性には優れるものの、液状のため粘度値が2000mPa・s以下であるため、十分な粘度を出すことができず、使用性が良好でなかった。
また、特許文献4の親水性ゲル状組成物は、リゾリン脂質に特定の電解質であるカゼイン塩を用いてゲル状組成物を製造する技術であり、本発明にある種々の電解質を配合したゲル状化粧料を安定化する技術とは全く異なるものである。また、カゼイン塩特有のべたつきがあるため、化粧料として優れたものではなかった。
従って、肌への伸び広がりが均一で、さまざまな電解質等を含有し、さらには保存安定性に優れるゲル状化粧料の開発が望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる実情において、本発明者は上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、リゾリン脂質、グリセリンモノアルキルエーテル、水を組み合わせることにより得られる水性ゲル状組成物に、化粧料に有用な電解質を含有させた場合においても、保存安定性が良好で、肌への伸び広がりが均一な水性ゲル状化粧料となることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち本発明は、次の成分(A)〜(D)、
(A)リゾリン脂質
(B)グリセリンモノアルキルエーテル
(C)水
(D)電解質
を含有することを特徴とする水性ゲル状化粧料に関するものである。更に、20℃における電気伝導度が100〜2000mS/mであることを特徴とする水性ゲル状化粧料、また更には、
成分(A)と成分(B)の含有質量比(A)/(B)が0.5以上10以下であることを特徴とする水性ゲル状化粧料に関するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の水性ゲル状化粧料は、電解質が存在していても、水性ゲルが生成し、保存安定性が良好で、肌への伸び広がりが均一である等の使用感に優れる特徴を有するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明に用いられる成分(A)のリゾリン脂質は、酵素改質リン脂質の1つで、リン脂質をホスフォリパーゼにより2位のエステル結合が加水分解されたものをいう。リゾリン脂質は、2本鎖の脂肪酸を有するリン脂質とは異なり、疎水基である脂肪酸が1つしかないため、HLBが高く、リン脂質とは異なる化学的性質を有する。また、リゾリン脂質はその構造中に不飽和脂肪酸が含まれる場合が多く、そのために不飽和脂肪酸部分が光や酸素によって酸化され、着色、異臭発生等を引き起こし化粧品の品質を低下させる場合がある。そこでこれらの品質低下を防止するために、不飽和結合を水素添加して飽和結合とした水素添加リゾリン脂質があるが、これを本発明の成分(A)として用いることができる。
【0011】
本発明に用いられる成分(A)のリゾリン脂質は、リゾホスファチジルコリン、リゾホスファチジルエタノールアミン等の複数種のリゾリン脂質を含有していてもよい。中でも、少なくともリゾホスファチジルコリンを含有しているのが好ましく、15質量%(以下、単に「%」とする。)以上含有しているのがより好ましく、20%以上含有しているのがさらに好ましい。リゾホスファチジルコリンを15%以上含有していると、保存安定性の点で好ましい。
【0012】
本発明の水性ゲル状化粧料における、成分(A)の含有量は、特に限定されないが、0.1〜1%が好ましく、0.2〜0.5%がより好ましい。この範囲であれば、十分な水性ゲル生成と肌への伸び広がりが均一である等の使用感を得ることができる。
【0013】
本発明の成分(B)グリセリンモノアルキルエーテルは、グリセリン中の1位の水酸基がエーテル化されているノニオン性界面活性剤を指し、アルキル鎖の炭素原子数は16〜18のものであり、化粧料に使用されるものであれば特に限定されない。具体的には、グリセリンモノステアリルエーテル、グリセリンモノセチルエーテル、グリセリンモノオレイルエーテル等が挙げられ、必要に応じて1種、又は2種以上用いることができる。中でも、水性ゲル生成、及び保存安定性の観点から、グリセリンモノステアリルエーテルが特に好ましい。
【0014】
本発明に用いられる成分(B)の含有量は、特に限定されないが、水性ゲル形成、及び保存安定性の観点から、化粧料中0.1〜5%であり、肌への伸び広がりが均一である等の使用感から、0.3〜3%がより好ましい。
【0015】
本発明に用いられる成分(C)の水は、通常の化粧料に使用されているものである。このような水としては、精製水、温泉水、ローズ水やラベンダー水等の植物由来の水蒸気蒸留水等を使用することができる。これらの中から一種または二種以上を使用してもよい。本発明の水性ゲル状化粧料における、成分(C)の配合量は特には限定されないが、べたつきのない感触を得るためには、30〜99%が好ましい。
【0016】
一般に成分(A)リゾリン脂質を水中に分散させると、リン脂質より高い親水性を有することから球状ミセルを形成することが知られている。そのため成分(A)を水中に分散しても、水性ゲルを形成することはできない。しかし本発明の成分(B)グリセリンモノアルキルエーテルを組み合わせることにより水性ゲル状化粧料として保存安定性に優れたラメラ液晶構造を取ることが可能となるために必須に含有するものである。なお、ここでのラメラ液晶構造の確認は、日本電子社製の走査型電子顕微鏡(JSM−6700F)を使用して顕微鏡観察写真より行った。
【0017】
本発明において、水中に成分(A)と成分(B)を含有することで、ラメラ液晶構造をとりうるが、特に含有質量比(A)/(B)を0.5以上10以下とすることで,ラメラ液晶の形成比率が高まり、保存安定性に優れることからも、特に好ましいものとなる。
【0018】
本発明に用いられる成分(D)の電解質としては、皮膚科学的に肌に有効な美容成分であり、化粧料として通常用いられるものであれば、有機・無機を問わず用いることができ特に限定されるものではない。皮膚科学的に肌に有効な美容成分としては、保湿剤、消炎剤、美白剤、紫外線防御剤等であり、電解質の物質をいう。
具体例を挙げるとすれば、例えば、保湿剤の例として、塩化ナトリウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、硫酸アルミニウムカリウム、リン酸水素ナトリウム等の無機電解質、ピロリドンカルボン酸塩、エデト酸塩、尿素、クエン酸、乳酸、乳酸ナトリウム等、クエン酸塩、乳酸塩、コハク酸塩、リンゴ酸塩、L−アラニン、β−アラニン、L−アルギニン、L−アルギニン塩酸塩、L−アスパラギン一水和物、L−アスパラギン酸、ポリアスパラギン酸、L−シトルリン、L−システイン、L−システイン塩酸塩一水和物、L−シスチン、L−ドーパ、L−グルタミン酸、N−アシルグルタミン酸、L−グルタミン酸塩酸塩、L−グルタミン、ポリグルタミン酸、グルタミン酸塩、グリシン、トリメチルグリシン、L−ヒスチジン、L−ヒスチジン塩酸塩一水和物、L−ヒドロキシプロリン、L−イソロイシン、L−ロイシン、L−リジン、L−リジン塩酸塩、L−メチオニン、L−オルニチン塩酸塩、L−プロリン、L−フェニルアラニン、L−セリン、L−スレオニン、L−トリプトファン、L−チロシン、L−バリン、L−αアミノ酪酸等が挙げられる。消炎剤の例としてグリチルリチン酸塩類、グリチルレチン酸塩、サリチル酸、サリチル酸塩等が挙げられる。美白剤の例として、L−アスコルビン酸、L−アスコルビン酸−2−リン酸ナトリウム、L−アスコルビン酸−2−リン酸マグネシウム、L−アスコルビン酸グルコシド、トラネキサム酸等が挙げられる。紫外線防御剤の例として、フェニルベンズイミダゾールスルホン酸塩、及びヒドロキシメトキシベンゾフェノンスルホン酸塩が挙げられ、これらは必要に応じて一種又は二種以上を用いることができる。
【0019】
本発明においては上記成分(D)の電解質を配合した場合においても安定な水性ゲル状化粧料であることが特徴である。なお、本発明においての電気伝導度は、水性ゲル状化粧料を20℃にて導電率計を用いて測定して行ったものである。
【0020】
本発明の水性ゲル状化粧料における成分(D)の電解質の配合量は、電解質の種類によって異なり特に限定されるものではないが、0.1〜10%が好ましく、0.3〜3%がより好ましい。
【0021】
本発明の水性ゲル状化粧料は、成分(D)電解質を含有した場合においても水性ゲル生成および保存安定性にすぐれることを特徴としている。このような成分(D)を含有した場合においては、20℃における電気伝導度が100〜2000mS/mであると電解質の肌への効果に優れ、また安定性に優れるので特に好ましいものとなる。
【0022】
本発明の水性ゲル状化粧料には、肌にしっとり感を与えるため、さらに油剤を含有することができる。本発明に用いられる油剤は、通常化粧料に用いられる油剤であれば特に限定されず、動物油、植物油、合成油等の起源及び、固形油、半固形油、液体油、揮発性油等の性状を問わず、炭化水素類、油脂類、ロウ類、硬化油類、エステル油類、脂肪酸類、高級アルコール類、シリコーン油類、フッ素系油類、ラノリン誘導体類等の油剤が挙げられる。具体的に例示すれば、流動パラフィン、スクワラン、ワセリン、ポリイソブチレン、ポリブテン、パラフィンワックス、セレシンワックス、マイクロクリスタリンワックス、フィッシャトロプスワックス等の炭化水素類;モクロウ、オリーブ油、ヒマシ油、ミンク油、マカデミアンナッツ油等の油脂類;モンタンワックス、ミツロウ、カルナウバワックス、キャンデリラワックス、ゲイロウ等のロウ類;セチルイソオクタネート、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル、トリオクタン酸グリセリル、ジイソステアリン酸ジグリセリル、トリイソステアリン酸ジグリセリル、トリベヘン酸グリセリル、ロジン酸ペンタエリトリットエステル、ジオクタン酸ネオペンチルグリコール、コレステロール脂肪酸エステル、N−ラウロイル−L−グルタミン酸ジ(コレステリル・ベヘニル・オクチルドデシル)等のエステル類;ステアリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ベヘニン酸、イソステアリン酸、オレイン酸、ロジン酸、12−ヒドロキシステアリン酸等の脂肪酸類;ステアリルアルコール、セチルアルコール、セトステアリルアルコール、ミリスチルアルコール、ラウリルアルコール、オレイルアルコール、イソステアリルアルコール、ベヘニルアルコール等の高級アルコール類;低重合度ジメチルポリシロキサン、高重合度ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、フッ素変性シリコーン等のシリコーン類;パーフルオロポリエーテル、パーフルオロデカン、パーフルオロオクタン等のフッ素系油剤類;ラノリン、酢酸ラノリン、ラノリン脂肪酸イソプロピル、ラノリンアルコール等のラノリン誘導体類;等が挙げられ、これらを1種又は2種以上用いることができる。
【0023】
本発明における油剤の含有量は目的によって決められるが、特に0.01〜10%の範囲であると、本発明の水性ゲル状化粧料は、ラメラ液晶の疎水基部に油剤を抱えることが可能であることから、ラメラ液晶構造を保ち、保存安定性が良好であるだけでなく、使用感としても優れたものとなるため好ましい。
【0024】
本発明の水性ゲル状化粧料には、上記成分に加え、目的に応じて本発明の効果を損なわない量的、質的範囲において、保湿剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、防腐剤、香料、美容剤等の通常化粧料に汎用される成分の配合が可能である。
【0025】
本発明におけるゲル状とは、チキソトロピー性を有しているものであることから、B型回転粘度計の粘度値として、ローターの回転が、初期の1回転時の測定値が10000mPa・s以上であり、かつその1回転目の測定値と6回転目の測定値との測定値の減少率が30%以上のものを本発明のゲルとした。
【0026】
また、本発明の水性ゲル状化粧料は、水溶性高分子により水に粘性を付与した水性ゲル状化粧料とは異なるものであり、本発明の成分を組み合わせることにより、特に水溶性高分子を配合せずとも水性ゲル状化粧料が容易に得られる。このため、本発明の水性ゲル状化粧料は、水溶性高分子を特には必要としない。
【0027】
本発明の水性ゲル状化粧料の用途は、クリーム、美容液、保湿用化粧料、美白用化粧料、日焼け止め用化粧料、ボディ用化粧料、パック料、マッサージ料等のスキンケア化粧料、化粧用下地化粧料を例示することが出来、その使用法は、手又はコットンで使用する方法、不織布等に含浸させて使用する方法等が挙げられる。
【0028】
本発明の水性ゲル状化粧料の製造方法の一例として、成分(A)リゾリン脂質および成分(B)グリセリンモノアルキルエーテルを70℃で溶解し、そこに成分(C)水および成分(D)電解質を添加し、デスパー等の混合機器を用いて混合した後、室温まで冷却することで得られる方法が挙げられる。またこの水性ゲル状化粧料を、クリーム容器やチューブ容器に充填することにより化粧料としてより使用性が良好なものとなる。
【実施例】
【0029】
以下に実施例を挙げて、本発明を更に詳細に説明する。尚、これらは本発明を何ら限定するものではない。
【0030】
実施例1〜11及び比較例1〜5:保湿用水性ゲル状美容液
表1〜3に示す組成及び下記製法に保湿用水性ゲル状美容液を調製し、電気伝導度、粘度、保存安定性、肌への伸び広がりについて、下記評価方法により評価し、併せて表1〜表3に示した。
【0031】
【表1】

【0032】
【表2】

【0033】
【表3】

【0034】
(製法)
A.成分1〜8を75℃に加熱し、均一に混合溶解する。
B.成分9〜12を75℃に加熱し、均一に混合溶解する。
C.AにBを添加する。
D.Cを冷却し保湿用水性ゲル状美容液を得た。
【0035】
<ラメラ液晶構造の確認>
(試験方法)
上記で得られたラメラ液晶構造を走査型電子顕微鏡により確認した。ラメラ液晶構造を形成している場合は、ラメラ液晶特有の層状構造が観察される。代表として実施例1の走査型電子顕微鏡写真を図1に示す。
【0036】
図1において凍結レプリカによる走査型電子顕微鏡写真図においても層状の構造を示しており、ラメラ液晶構造を有していることが確認された。
【0037】
(評価方法)
20名の専門パネルにより、実施例1〜11及び比較例1〜6の保湿用水性ゲル状美容液を使用試験し、各々に対して、「肌への伸び広がり」について、下記の評価基準に基づき5段階評価した。更に、その評点の全パネルの平均点より、下記判定基準により判定した。
【0038】
評価基準
[評価結果] :[評点]
伸び広がりが非常に良好 :5
伸び広がり良好 :4
伸び広がりは普通 :3
伸び広がりが悪い :2
伸び広がりが非常に悪い :1
【0039】
判定基準
[評点の平均点] :[判定]
4.5点以上 :◎
3.5点以上4.5点未満 :○
2.5点以上3.5点未満 :△
2.5点未満 :×
【0040】
(保存安定性の評価)
実施例1〜11及び比較例1〜5の保湿用水性ゲル状美容液を、8号ガラス規格瓶容器に充填し、50℃の恒温下に1ヶ月間保管し、目視により状態を観察した。
【0041】
判定基準
状態に全く変化無し :◎
排液はほとんど観察されない :○
上層部に1ミリ以上 :△
【0042】
(電気伝導度の測定)
実施例1〜11及び比較例1〜6の保湿用水性ゲル状美容液を、8号ガラス規格瓶容器に充填し、20℃の恒温下に1日保管し、電気伝導率計(東亜電波工業株式会社製・CM−60G)にて測定した。
【0043】
(粘度値の測定)
実施例1〜11及び比較例1〜6の保湿用水性ゲル状美容液を、8号ガラス規格瓶容器に充填し、20℃の恒温下に1日保管し、B型回転粘度計(東芝システム株式会社・ビスメトロン粘度計VDA2)にて測定した。
ここでB型回転粘度計はローターをサンプルにセットし、回転しながらの値を測定するが、ローターの回転が1回転目の値(A)と6回転目の値(B)を測定し、下記式(1)より減少率を算出し、減少率が30%以上であれば、本発明における水性ゲル状であるとした。
減少率(%)=((A)−(B))/(A)×100 (1)
【0044】
表1〜3の結果から明らかなように、本発明の実施例1〜11の保湿用水性ゲル状美容液は、肌への伸び広がりが均一で、さらには保存安定性に優れた保湿用水性ゲル状美容液であった。一方、成分(A)又は成分(B)を含有しない比較例1、比較例2は水性ゲル生成することができず、また成分(A)にかわり、リン脂質を含有した比較例3でも水性ゲル形成することができなかった。また成分(C)を含有しない比較例4や、成分(B)のかわりにペンタステアリン酸デカグリセリルを含有し、水溶性高分子で粘度値を高めた比較例5においても水性ゲル形成することができなかった。
【0045】
実施例12:美白用水性ゲル状乳液
(成分) (%)
1.グリセリンモノステアリルエーテル 1.0
2.ポリオキシエチレン(10モル)コレステリルエーテル 0.3
3.ホホバ油 3.0
4.水素添加リゾリン脂質*2 0.5
5.グリセリン 5.0
6.1,2−ペンタンジオール 1.0
7.ジプロピレングリコール 10.0
8.精製水 残量
9.L−アスコルビン酸グルコシド 2.0
10.エチレンジアミンテトラ酢酸ジナトリウム塩 0.1
11.コハク酸 0.2
12.エタノール 5.0
*2:リゾホスファチジルコリンの含有量が40質量%
【0046】
(製造方法)
A.成分1〜7を75℃に加熱し、均一に混合溶解する。
B.成分8〜11を75℃に加熱し、均一に混合溶解する。
C.AにBを添加し乳化する。
D.Cを冷却し、成分12を添加し、美白用水性ゲル状乳液を得た。
【0047】
実施例12の美白用水性ゲル状乳液は、20℃における電気伝導度が1500mS/mであり、20℃での粘度値が1回転目が15000mPa・sであり、6回転目が9000mPa・sであり、減少率が33%であった。また、肌への伸び広がりが均一で、さらには保存安定性に優れた美白用水性ゲル状乳液であった。
【0048】
実施例13:水性ゲル状日焼け止め化粧料
(成分) (%)
1.グリセリンモノオレイルエーテル 2.0
2.ポリオキシエチレン(10モル)コレステリルエーテル 1.0
3.水素添加リゾリン脂質*3 1.0
4.グリセリン 5.0
5.パラメトキシケイ皮酸2−エチルヘキシル 5.0
6.ジプロピレングリコール 10.0
7.精製水 残量
8.ヒドロキシメトキシベンゾフェノンスルホン酸塩 1.0
9.ジエチレントリアミンペンタ酢酸ペンタナトリウム塩 0.1
10.リンゴ酸 0.2
11.エタノール 2.0
12.香料 適量
13.パラオキシ安息香酸メチル 適量
*3:リゾホスファチジルコリンの含有量が80質量%
【0049】
(製造方法)
A.成分1〜6を75℃に加熱し、均一に混合溶解する。
B.成分7〜10を75℃に加熱し、均一に混合溶解する。
C.AにBを添加し乳化する。
D.Cを冷却し、成分11〜13を添加し、水性ゲル状日焼け止めを得た。
【0050】
実施例13の水性ゲル状日焼け止めは、20℃における電気伝導度が2000mS/mであり、20℃での粘度値が1回転目が11000mPa・sであり、6回転目が6000mPa・sであり、減少率が41%であった。また、肌への伸び広がりが均一で、さらには保存安定性に優れた水性ゲル状日焼け止めであった。

【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の水性ゲル状化粧料がラメラ液晶構造を有しているものである実施例1の走査型電子顕微鏡の写真

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(A)〜(D)、
(A)リゾリン脂質
(B)グリセリンモノアルキルエーテル
(C)水
(D)電解質
を含有することを特徴とする水性ゲル状化粧料。
【請求項2】
20℃における電気伝導度が100〜2000mS/mであることを特徴とする前記請求項1記載の水性ゲル状化粧料。
【請求項3】
成分(A)と成分(B)の含有質量比(A)/(B)が0.5以上10以下であることを特徴とする前記請求項1又は2の項記載の水性ゲル状化粧料

【図1】
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【公開番号】特開2010−202605(P2010−202605A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−51395(P2009−51395)
【出願日】平成21年3月4日(2009.3.4)
【出願人】(000145862)株式会社コーセー (734)
【Fターム(参考)】