説明

水性ベースコートおよびトップコートでコーティングされた基材を乾燥させ硬化させるための多段プロセス

水性液体ベースコートおよびトップコートでコーティングされた基材を乾燥させ硬化させるための多段プロセスであって、(a)水性液体ベースコーティング組成物を基材表面に塗布する工程と、(b)ベースコーティング組成物を、温度が周囲から約40℃の範囲の空気に約30秒の時間曝して、液体ベースコーティング組成物から揮発性材料の少なくとも一部を揮発させる工程であって、ベースコーティング組成物の表面における空気の速度が毎秒約0.3から約1メートルである工程と、(c)ベースコーティング組成物に、約30から約45秒の範囲の時間、加熱された空気を吹き付ける工程であって、ベースコーティング組成物の表面における空気の速度が毎秒約1.5から15メートルの範囲であり、空気の温度が約30℃から約90℃の範囲である工程と、(d)ベースコーティング組成物に、約30から45秒の範囲の時間、赤外線の照射と加熱された空気の吹き付けを同時に行う工程であって、ベースコーティングの表面における空気の速度が毎秒約1.5から5メートルの範囲であり、空気の温度が約30℃から約60℃の範囲であり、これによって、十分に乾燥されたベースコートが基材の表面上に形成されるようにする工程と、(e)トップコーティング組成物をベースコートの上に塗布する工程と、(f)ベースコーティング組成物およびトップコーティング組成物をともに同時に硬化させる工程と、を含むことを特徴とする多段プロセス。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車コーティング塗布のための水性液体(liquid waterborne)コーティングを乾燥させることに関し、より詳細には、その後のトップコート塗布のための対流乾燥および赤外線の組合せを含む、水性液体コーティングを乾燥させるための多段プロセスに関し、これは、本願特許出願人クイックドライ(QwikDri)(商標)プロセスとも呼ばれる。
【背景技術】
【0002】
今日の自動車ボディは、自動車の外観、たとえば、色、金属効果、光沢などを向上させ、また、たとえば、腐食、チッピング、紫外光、化学物質、ならびにコーティング外観および下にある車のボディを劣化させることがある他の環境条件からの保護をもたらす多数のコーティング層で処理される。
【0003】
これらのコーティングの配合は広く変わることができる。しかし、すべての自動車製造業者が直面する主な難題は、最小の資本投資およびフロアスペースで、どのようにこれらのコーティングを急速に乾燥させ硬化させるかであり、これは、製造工場において重視される。
【0004】
熱空気対流乾燥などの、自動車コーティングのための乾燥および硬化プロセスの速度を上げるために、さまざまな考えが提案されている。熱空気乾燥は急速であるが、スキンがコーティングの表面上に形成することがあり、これは、コーティング組成物からの揮発性物質の逃げを妨げ、かつ乾燥されたコーティングの外観を損なうポップ(pops)、気泡、またはブリスタを引起す。
【0005】
自動車ボディに塗布されたコーティングを乾燥させ硬化させるための他の方法および装置が、米国特許公報(特許文献1)、米国特許公報(特許文献2)、米国特許公報(特許文献3)、および米国特許公報(特許文献4)に開示されている。
【0006】
今日、自動製造業者は、また、溶剤ベースの材料の代わりに水ベースの材料の代用を増加させて、環境問題に応じている。これは、乾燥および硬化プロセスに付加的な負担をかけ、というのは、水ベースの材料が、一般に、必要な水蒸発のためにより長い乾燥時間を必要とするからである。また、水性コーティングは、上述された機構と同様の機構によって引起される、コーティングに閉じ込められた空気、水、および/または溶剤による、乾燥および硬化プロセスの間のピンホールとして説明される特定の欠陥を生じやすい。これは、自動製造業者に付加的な負担をかけ、というのは、これらの欠陥が、車両の仕上げの現場修理を必要とするからである。
【0007】
米国特許公報(特許文献5)は、2つの背中合せの組合された赤外線/加熱空気乾燥ゾーンを使用して、そのような水ベースの系の乾燥および硬化を加速するための方法を開示している。2つの赤外ゾーンを維持することは、高価なだけでなく、むだでもある。
【0008】
【特許文献1】米国特許第4,771,728号明細書
【特許文献2】米国特許第4,907,533号明細書
【特許文献3】米国特許第4,908,231号明細書
【特許文献4】米国特許第4,943,447号明細書
【特許文献5】米国特許第6,291,027号明細書
【特許文献6】米国特許第4,980,398号明細書
【特許文献7】米国特許第5,095,051号明細書
【特許文献8】米国特許第5,356,960号明細書
【特許文献9】米国特許第5,219,900号明細書
【特許文献10】米国特許第4,403,003号明細書
【特許文献11】米国特許第4,539,263号明細書
【特許文献12】米国特許第5,198,490号明細書
【特許文献13】米国特許第5,401,790号明細書
【特許文献14】米国特許第5,071,904号明細書
【特許文献15】米国特許第5,760,123号明細書
【特許文献16】米国特許第6,069,218号明細書
【特許文献17】米国特許第5,681,622号明細書
【特許文献18】米国特許第4,907、533号明細書
【特許文献19】米国特許第6,607,833号明細書
【特許文献20】米国特許第5,162,426号明細書
【特許文献21】米国特許第4,591,533号明細書
【特許文献22】米国特許第6,544,593号明細書
【特許文献23】米国特許第6,080,816号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特に、液体トップコートでオーバコートされるべき水性液体ベースコートでの使用のために、表面欠陥の形成およびコーティングの入り込み(strike−in)を抑制する、自動車コーティングのための急速で経済的な多段乾燥プロセスが必要である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、特に、プライマー、プライマーサーフェイサー、ベースコート、およびクリアコートを含む水性液体コーティングでの使用のための、基材をコーティングし、同時の対流乾燥と組合せて、1つの赤外乾燥ゾーンだけを使用して、コーティングされた基材を急速に乾燥させるためのプロセスを提供する。
【0011】
本発明は、特に、後のトップコート塗布のために基材上の水性液体ベースコートを急速に乾燥させるための方法であって、(a)典型的にはスプレーブース内で、水性液体ベースコーティング組成物を基材の表面に塗布する工程と、(b)好ましくはフラッシュゾーンで、ベースコーティング組成物を、温度が約20℃(周囲)から約40℃の範囲の空気に少なくとも約30秒の時間曝して、液体ベースコーティング組成物から揮発性材料の少なくとも一部を揮発させる工程であって、ベースコーティング組成物の表面における空気の速度が毎秒約0.3から約1メートルである工程と、(c)好ましくは対流オーブンゾーンで、ベースコーティング組成物に、約30秒から2分の時間、加熱された空気を吹き付ける(applying)工程であって、ベースコーティング組成物の表面における空気の速度が毎秒約1.5から約15メートルであり、空気の温度が約30℃から約90℃の範囲である工程と、(d)好ましくは組合された対流/赤外線オーブンゾーンで、ベースコーティング組成物に、約30秒から2分の時間、好ましくは1平方メートルあたり約25kW以下の電力密度の連続またはパルス赤外線の照射と加熱された空気の吹き付けを同時に行う工程であって、ベースコーティング組成物の表面における空気の速度が毎秒約1.5から5メートルであり、空気の温度が約30℃から約60℃であり、これによって、十分に乾燥されたベースコートが基材の表面上に形成されるようにする工程と、(e)トップコーティング組成物をベースコートの上に塗布する工程と、を含むことを特徴とする方法に関する。
【0012】
上記概要および次の好ましい実施形態の詳細な説明は、添付の図面と関連して読まれると、より良好に理解されるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
全体を通して同じ番号が同じ要素を示す図面を参照すると、本発明による基材をコーティングし乾燥させるための多段プロセスのフロー図が図1に示されている。
【0014】
本発明のプロセスは、プライマー、プライマー−サーフェイサー、ベースコート、およびクリアコートなどの、いかなる水性液体コーティング、特に自動車コーティングを乾燥させるのに適している。ここで、本発明を、後のトップコート塗布のために水性液体ベースコートを乾燥させることとの関連において一般に説明する。当業者は、本発明のプロセスが、いったん適切に配置されると、また、水性液体プライマー、プライマー−サーフェイサー、および/またはトップコートでコーティングされた基材を乾燥させるのに有用であることを理解するであろう。
【0015】
このプロセスは、また、バッチプロセスまたは連続プロセスにおいて金属基材またはポリマー基材をコーティングするのに適している。バッチプロセスにおいて、基材はプロセスの各処理工程の間静止しており、連続プロセスにおいて、基材は組立ラインに沿って連続移動する。ここで、本発明を、連続組立ラインプロセスにおいて基材をコーティングすることとの関連において一般に説明するが、このプロセスは、また、バッチプロセスにおいて基材をコーティングするのに有用である。
【0016】
本発明のプロセスによってコーティングすることができる有用な基材としては、金属基材、熱硬化性材料および熱可塑性材料などのポリマー基材、ならびにそれらの組合せが挙げられる。本発明のプロセスによってコーティングすることができる有用な金属基材としては、鉄、鋼、およびそれらの合金などの鉄金属、アルミニウム、亜鉛、マグネシウム、およびそれらの合金などの非鉄金属、ならびにそれらの組合せが挙げられる。好ましくは、基材は、冷間圧延鋼、熱浸漬(hot dip)電気亜鉛めっき鋼もしくは電気亜鉛めっき鉄−亜鉛鋼などの電気亜鉛めっき鋼、アルミニウム、またはマグネシウムから形成される。
【0017】
有用な熱硬化性材料としては、ポリエステル、エポキシド、フェノール(phenolics)、反応射出成形ウレタン(RIM)熱硬化性材料などのポリウレタン、およびそれらの混合物が挙げられる。有用な熱可塑性材料としては、ポリエチレンおよびポリプロピレンなどの熱可塑性ポリオレフィン、ナイロンなどのポリアミド、熱可塑性ポリウレタン、熱可塑性ポリエステル、アクリルポリマー、ビニルポリマー、ポリカーボネート、アクリロニトリルブタジエン−スチレン(ABS)コポリマー、EPDMゴム、それらのコポリマーならびに混合物が挙げられる。
【0018】
好ましくは、基材は、自動車、トラック、およびトラクタを含むがこれらに限定されない自動車を製造するための部品として使用される。基材は、いかなる形状も有することができるが、好ましくは、自動車用のボディ(フレーム)、フード、ドア、フェンダ、バンパ、および/またはトリムなどの自動車ボディ部品の形態である。
【0019】
最初に、本発明を、金属自動車ボディをコーティングすることとの関連において一般に説明する。当業者は、本発明のプロセスが、また、非自動車金属部品および/またはポリマー部品をコーティングするのに有用であることを理解するであろう。
【0020】
ここで、図1を参照すると、上で示されたように、プロセス全体は、後のトップコート塗布のために、水性液体ベースコートでコーティングされた基材を乾燥させることとの関連において説明される。
【0021】
本発明のプロセスによる処理前、金属基材をきれいにし脱脂することができ、ミシガン州マディソンハイツのヘンケル・テクノロジーズ(Henkel Technologies, Madison Heights, Michigan)によって供給されるボンデライト(BONDERITE)(登録商標)958前処理などの前処理コーティングを、金属基材の表面上に堆積させることができる。あるいは、またはさらに、電着可能なコーティング組成物を金属基材上に電着させることができる。有用な電着方法および電着可能なコーティング組成物としては、参照により本明細書に援用する米国特許公報(特許文献6)、米国特許公報(特許文献7)、および米国特許公報(特許文献8)に説明されたカチオンエポキシベースコーティングなどの従来のアニオンまたはカチオン電着可能コーティング組成物が挙げられる。前処理コーティングおよび電着可能なコーティングの塗布後、適切なプライマーまたはプライマーサーフェイサー、液体または粉末を塗布してもよい。
【0022】
図1に示されているように、上述された前処理後、本発明者らの迅速乾燥プロセスのために設計された好ましい水性液体ベースコーティング組成物が、第1の工程110において、金属基材(図2に示された自動車ボディ16)の表面に、好ましくは、上述されたような電着コーティング、またはプライマーの上に塗布される。液体ベースコーティングを、当業者に周知のいかなる適切なコーティングプロセスによって、たとえば、ディップコーティング、ダイレクトロールコーティング、リバースロールコーティング、カーテンコーティング、スプレーコーティング、ブラシコーティング、およびそれらの組合せによって、工程110において基材の表面に塗布することができる。液体ベースコーティング組成物を基材に塗布するための方法および装置は、基材材料の構成およびタイプによって部分的に定められる。
【0023】
しかし、自動車組立工場において、スプレーブース内のスプレー塗布が用いられることが一般に好ましく、というのは、顔料制御、特にフレーク顔料配向の点から、最良の結果が達成されるからである。圧縮空気スプレー、静電スプレー(ガンまたは回転ベル)、ホットスプレー、およびエアレススプレーなどの既知のスプレー手順のいずれも採用してもよく、手動方法または自動方法のいずれも適している。最も一般に、ベースコートは、2つのコートで塗布され、1つのコートが高電圧(約60,000から約90,000ボルト)での高速(約20,000から約100,000毎分回転数)回転ベルアトマイザなどの従来の静電スプレー設備で塗布され、第2のコートが従来の空気噴霧スプレー設備で塗布される。
【0024】
本発明に使用される好ましい液体ベースコーティング組成物は、フィルム形成材料またはバインダー、任意に架橋剤、揮発性液体材料、ならびに適切な色、効果、および隠蔽のために液体中に分散された顔料粒子を含む着色組成物である。本発明のベースコーティングに使用される揮発性材料は、水性液体媒体であり、これは、ベースコーティングを乾燥させることをはるかに困難にする。これは、一般に、水性ベースコーティング組成物と呼ばれ、溶剤放出を低減するために自動車組立工場においてますます使用されている。「水性液体媒体」とは、水だけ、またはアルコール、ケトン、エステル、グリコールエーテルなどの1つまたは複数の凝集溶剤と混合された水を意味する。当業者によって理解されるように、水性媒体は、また、ベースコート組成物のpHを調整するために導入される水溶性物質を含有してもよく、好ましくはそれらを含有する。
【0025】
非常にさまざまな市販の自動車水性ベースコーティング組成物のいずれも、たとえば、自動車組立工場で今日使用されるもののいずれも、本発明に使用してもよい。典型的には、これらの組成物は、1つまたは複数のフィルム形成材料またはバインダーおよび任意に架橋剤、揮発性液体材料、顔料および/または充填剤、および他の塗料産業添加剤をベースとした、自己乾燥(物理的乾燥)、自己架橋、または外部架橋(熱硬化性)組成物である。コア−シェルラテックス技術に基いた1つのそのようなコーティングが、参照により本明細書に援用する米国特許公報(特許文献9)に開示されている。
【0026】
好ましくは、ベースコーティングは、アクリル、ポリエステル(アルキドを含む)、ポリウレタン、およびエポキシなどの少なくとも1つの水適合性熱硬化性フィルム形成材料と、アクリルミクロゲル粒子またはラテックスなどの少なくとも1つの水分散性架橋ポリマー微粒子またはミクロゲルと、アミノプラスト、ポリイソシアネート、ポリ酸、ポリ無水物(polyanhydrides)、およびそれらの混合物などの少なくとも1つの架橋材料とを含む架橋性コーティング組成物である。自己架橋性および熱可塑性フィルム形成材料も使用することができる。液体ベースコート中のフィルム形成材料の量は、一般に、ベースコーティング組成物の総重量固形分を基準にして、約40〜98重量パーセントの範囲である。液体ベースコーティング組成物の固形分含有量は、一般に約10〜60重量パーセントの範囲であり、好ましくは約20〜50重量パーセントの範囲である。
【0027】
ベースコーティング組成物は、1つまたは複数の、顔料、または触媒、UV吸収剤、レオロジー制御剤、および界面活性剤などの他の添加剤をさらに含むことができる。有用なフレーク顔料としては、アルミニウムフレーク、青銅フレーク、コーティング雲母、ニッケルフレーク、スズフレーク、銀フレーク、銅フレーク、およびそれらの組合せが挙げられる。他の適切な顔料としては、酸化鉄、カーボンブラック、二酸化チタン、およびフタロシアニンなどの着色有機顔料が挙げられる。特定の顔料対バインダー比は、所望のフィルム厚さおよび塗布固形分において必要な隠蔽および効果(「ソリッドカラー」効果、「グラマーメタリック(glamour metallic)」効果、または「真珠光沢」効果など)をもたらす限り、広く変わることができる。
【0028】
カラー−プラス−クリア(ベースコート/クリアコートとしても知られている)複合コーティングのための適切な架橋性熱硬化性水性ベースコート(エナメルとしても知られている)としては、参照により本明細書に援用する米国特許公報(特許文献10)、米国特許公報(特許文献11)、米国特許公報(特許文献12)、米国特許公報(特許文献13)、および米国特許公報(特許文献14)に開示されたものが挙げられる。カラー−プラス−クリア複合コーティングのための適切な非架橋性自己乾燥水性ベースコート(ラッカーとしても知られている)としては、参照により本明細書に援用する米国特許公報(特許文献15)および米国特許公報(特許文献16)に開示されたものが挙げられる。カラー−プラス−クリア複合コーティングのための適切な自己架橋性水性ベースコートエナメルとしては、参照により本明細書に援用する米国特許公報(特許文献17)に記載されたものが挙げられる。
【0029】
基材に塗布されるベースコーティング組成物の厚さは、着色、基材のタイプ、および基材の意図された用途、すなわち、基材が配置されるべき環境、および接触する材料の性質のような要因に基いて変わることができる。一般に、基材に塗布されるベースコーティング組成物の厚さは、約0.4〜1.5ミル(約10〜40マイクロメートル)の範囲、より好ましくは約0.5〜1.2ミル(約12〜30マイクロメートル)の範囲である。
【0030】
ここで、図1および図2を参照すると、ベースコートを塗布した後、本発明のプロセスは、ベースコーティング組成物を、温度が約20℃(周囲)から約40℃の範囲、好ましくは約20℃から約30℃の範囲の低速空気または脱水された空気に、少なくとも約15秒、好ましくは少なくとも約30秒の時間曝して、液体ベースコーティング組成物から揮発性材料の少なくとも一部を揮発させ、ベースコートを「凝集し」、それによりフィルムが形成される第2の工程12、112を含む。この初期強制乾燥工程は、一般に「フラッシュオフ」工程または「フラッシュ乾燥」工程と呼ばれ、これは、好ましくは、連続組立ラインプロセスにおけるスプレーブースの後に配置される「フラッシュゾーン」として知られているものにおいて行われる。好ましくは、スプレーブースとフラッシュゾーンとの間に位置決めされた静かなゾーン(図示せず)があり、フラッシュ乾燥工程が行われる前、ベースコートは、事実上空気移動がない状態に最大約15〜30秒の間曝される。
【0031】
いったんフラッシュ乾燥ゾーン12、112にあると、この工程の間のベースコーティング組成物の表面における空気の速度は、ベースコーティングされた表面を過ぎて吹く空気流れによってフィルムを乱すことも損なうことも(波立たせることもさざ波を立てることも)ないように、好ましくは毎秒約0.3から約1メートルの範囲である。
【0032】
この工程の間のベースコート14からの揮発性物質の揮発または蒸発は、オープンエアで行うことができるが、好ましくはフラッシュオフチャンバ18内で行われ、脱水されたまたは加熱された空気が、図2に示されているように低速で循環されて、気体性(airborne)粒子汚染を最小にし、また、図2に示されているように湿った周囲空気の好ましくない影響を最小にする。自動車ボディ16は、フラッシュオフチャンバ18への入口に位置決めされ、上述されたようなベースコートの揮発を可能にする速度で、組立ライン態様でそれを通って移動される。赤外ヒータはこの工程で使用されない。自動車ボディ16が第1の乾燥チャンバ18および以下で説明される他の乾燥チャンバを通って移動される速度は、乾燥チャンバ18の長さおよび構成に部分的によるが、好ましくは、連続プロセスについて毎分約3メートルから毎分約9メートルの範囲である。当業者は、必要に応じて、個別のドライヤをプロセスの各工程のために使用することができること、またはプロセスの各工程に対応するように構成された複数の個別の乾燥チャンバまたは乾燥セクション(図2に示された)を有する1つのドライヤを使用することができることを理解するであろう。
【0033】
空気は、好ましくは、図2に仮想的に示された任意のブロワ20またはドライヤによってフラッシュオフチャンバ18に供給される。空気を周囲温度で循環させるか、必要な場合は、約20℃から約40℃の範囲の所望の温度範囲に加熱することができる。好ましくは、ベースコーティング組成物は、自動車ボディ16が乾燥プロセスの次の段階に移動される前、約30秒から約2分の範囲の時間空気に曝される。
【0034】
もう一度図1および図2を参照すると、プロセスは、ベースコーティングから揮発性液体材料の大部分を除去するために、少なくとも約15秒、好ましくは少なくとも約30秒、より好ましくは約45秒、約2分までの時間、ベースコーティング組成物に、比較的高速の加熱された空気を吹き付ける(対流乾燥させる)次の工程114を含む。この工程は、一般に「対流乾燥」工程と呼ばれ、これは、好ましくは、フラッシュゾーン後に来る「対流オーブンゾーン」で行われる。
【0035】
ベースコート14からの揮発性物質のこの対流乾燥は、好ましくは対流乾燥チャンバ22内で行われ、加熱された空気(すなわち、熱空気に温める)が、車両の表面の上で高速で循環されて、コーティングフィルムを脱水し続ける。この段階の間、わずかに粘着性のフィルムまたは好ましくは粘着性のない(ほこりおよび他の気体性汚染物質の接着に抵抗する)フィルムを車両の表面上に形成することが望ましい。
【0036】
ここで、図2および図3を参照すると、好ましい対流乾燥装置22は、空気28が、内部乾燥チャンバ22に入るために通過されるノズルまたはスロット開口部26を有するバッフル(baffled)側壁24を含む。この工程の間、ベースコーティング組成物の表面30における空気の速度は、毎秒約1.5メートルから毎秒約15メートルの範囲、好ましくは毎秒約2.0から約10.0メートルの範囲、より好ましくは毎秒約3.0から約7.0メートルの範囲である。
【0037】
対流ゾーンの空気28の温度は、一般に約30℃から約90℃の範囲、好ましくは約40℃から約80℃の範囲である。どんな場合であろうと、空気は、コーティング中に残っている水が沸騰し、フィルムを損傷することを防止するために、90℃未満に保たなければならない。空気は、ブロワ32またはドライヤによって供給され、外部から、または空気をチャンバ内に装着された加熱要素(図示せず)の上を通過させることによって予熱することができる。また、望ましくない溶剤蒸気を、対流乾燥チャンバ22の内部から、外部壁に形成されたダクトを通って除去することができるか、サブフロア34を介して内部乾燥チャンバ22を通って上に循環させることができる。好ましくは、空気流れは、効率を増加させるために再循環される。空気流れの一部を逃がして、汚染物質を除去することができ、濾過された新しい空気を加えて、いかなる損失も補うことができる。
【0038】
自動車ボディ16は、対流乾燥チャンバ22への入口に位置決めされ、上述されたようなベースコート中の水の揮発を可能にする速度で、組立ライン態様でそれを通ってゆっくり移動される。赤外ヒータはこの工程で使用されない。赤外ヒータがこの対流乾燥チャンバ内に設置される場合(図3に示されていない)、それらはオフにしなければならない。
【0039】
再び図1および図2を参照すると、本発明のプロセスは、「組合せ対流/IR乾燥」工程ともここで呼ばれる別の乾燥工程116を含み、これは、好ましくは、上述された対流オーブンゾーンに続く組合せ「対流/IRオーブンゾーン」で行われる。この工程は、オーバコートをベースコートに塗布することができる前の最後の乾燥工程を構成する。対流が、水が蒸発されるので水を絶えず除去し、十分な温度が所望の速度で蒸発を続ける。しかし、基材上のベースコートの固形分が増加するにつれて、水は、除去するのがますます困難になり、というのは、それは、より高いエネルギー入力を必要とするより遅い拡散プロセスによって除去されるからである。これは、放射エネルギーが最も有用かつ費用効果的である場合であり、というのは、それがコーティング中に侵入し、水分子を直接活性化し、したがって、非常に効果的に水を気化させるからである。これは、表面だけでの対流乾燥よりはるかに効果的である、乾燥の後の段階における水の除去のための内部駆動力をもたらす。しかし、対流乾燥は、表面から水を除去するためにこの段階で依然として必要である。先に言及された米国特許公報(特許文献5)の教示と対照的に、本発明において、赤外線が、ベースコート乾燥プロセスのこの最終乾燥工程116の間使用されるだけであり、最後から2番目の工程および最後の工程の両方と異なる。
【0040】
代替実施形態において、本発明に用いることができる乾燥チャンバの別の可能な配列は、IR/対流ゾーン116を対流ゾーン114の前に配置する。この配列は、最終乾燥ゾーンでIRを使用するより望ましくないが、この配列が適切であり、2つのIRゾーンと関連する費用、メンテナンス、および複雑を依然としてセーブするであろう個別の自動車組立ライン状況があるであろう。
【0041】
再び、図1および図2に示された好ましい実施形態を参照すると、本発明に用いられるトップコート塗布前の最後の乾燥工程116は、それにより、少なくとも約15秒、好ましくは少なくとも約30秒、より好ましくは約45秒、約2分までの時間、金属基材(自動車ボディ16)上のベースコーティング組成物に、赤外線の照射と加熱された(すなわち、温かい)空気の吹き付けの両方を同時に行うことを含む。この乾燥工程におけるベースコーティング組成物の表面における空気の速度は、一般に毎秒約5メートル未満、好ましくは毎秒約1.5から約5メートルの範囲である。温かい乾燥空気は、一般に、温度が約30℃から約60℃の範囲である。プロセスのこの時点における塗布されたコーティングの固形分は、少なくとも70%から100%、好ましくは80%から95%、より好ましくは85%から95%でなければならず、したがって、基材の表面上の乾燥されたベースコートを形成する。「乾燥された」とは、ベースコートが、その上に塗布されるトップコート(またはトリコート(tricoat)仕上げの場合半透明パールコート)の質が悪影響されないように十分に乾燥されることを意味する。
【0042】
この組合せIR/対流乾燥工程は、組合された赤外線/対流乾燥チャンバ38内で行うことができる。自動車ボディ16は、この組合せ乾燥チャンバ38への入口に位置決めされ、上述されたようなベースコートの揮発を可能にする速度で、組立ライン態様でそれを通ってゆっくり移動される。
【0043】
一般に、以下で説明される組合された赤外線および加熱空気対流オーブンなどの、いかなる従来の組合せ赤外/対流乾燥装置も、工程116に使用することができる。個別の赤外エミッタを、以下で説明されるように構成し、個別にまたはグループで、マイクロプロセッサ(図示せず)によって、所望の加熱速度および赤外エネルギー伝達速度をもたらすように制御することができる。
【0044】
付与される放射エネルギーは、約0.7から100,000μMの放射線スペクトルの範囲内である。この範囲は、約0.7から100μMの波長の赤外領域を含む。好ましくは、放射線範囲は、近赤外領域(0.7から1.5マイクロメートル)放射線および中赤外領域(1.5から20マイクロメートル)放射線、より好ましくは約0.7から約4マイクロメートルの範囲の波長範囲を含む。放射線は、また、波長が約100から100,000μMのマイクロ波放射線、より好ましくは462.200から462.500MHzの製造業者用FCC周波数指定を含むことができる。照射される放射線は、放射線に曝されるコーティング基材のクラスA(外部)表面40を加熱する。ほとんどのクラスAでない表面は、放射線に直接曝されないが、自動車ボディを通る伝導、および放射線のランダムな散乱によって加熱される。マイクロ波の使用は、当業者に周知の特定の安全性要件を必要とし、したがって、さらなる説明は赤外使用のみを説明する。
【0045】
ここで、図2および図4を参照すると、赤外線は、組合せ赤外/対流乾燥装置38の内部乾燥チャンバ44内に配列された複数のエミッタ42によって照射される。各エミッタ42は、好ましくは高強度赤外ランプ、好ましくはタングステンフィラメントを有する石英エンベロープランプである。有用な短波長(0.76から2マイクロメートル)高強度ランプは、ゼネラル・エレクトリック・カンパニー(General Electric Co.)、シルバニア(Sylvania)、フィリップス(Phillips)、ヘレウス(Heraeus)、およびウシオ(Ushio)から市販されているようなモデルNo.T−3ランプを含み、照射率が、光源において1線インチあたり75から100ワットである。これらのバルブと関連する問題を回避するために、短波長ランプを100%未満の電力で使用することができるが、コーティング組成物からの揮発性物質の逃げを妨げ、かつ乾燥されたコーティングの外観を損なうポップ、ピンホール、気泡、またはブリスタを引起す、表面があまりに迅速にシールされることを防止するために、少なくとも最初、中波長(2から4マイクロメートル)ランプを使用することが一般に望ましい。好ましい中波IRランプは、同じ供給業者から入手可能である。エミッタランプ42は、好ましくは略ロッド形であり、オーブンの構成に合うように変えることができる長さを有するが、一般に、好ましくは長さ約0.75から約1.5メートルである。好ましくは、内部乾燥チャンバ44の側壁46上のエミッタランプは、グラウンド48に略水平に配列された内部乾燥チャンバ44の底部におけるエミッタの数列50(好ましくは約3から約5列)以外は、グラウンド48に対して略垂直に配列される。
【0046】
エミッタ42の数は、放出されるべきエネルギーの所望の強度によって変わることができる。好ましい実施形態において、内部乾燥チャンバ44のシーリング52に装着されたエミッタ42の数は、線状の並んだアレイに配列された約24から約32であり、エミッタは、中心から中心まで約10から約20センチメートル、好ましくは約15センチメートル隔置される。内部乾燥チャンバ44の幅は、自動車ボディ、またはその中で乾燥されるべきどんな基材部品でも収容するのに十分であり、好ましくは幅約2.5から約3.0メートルである。好ましくは、チャンバ44の各側壁46は約50から約60のランプを有し、ランプは中心から中心まで約15から約20センチメートル隔置される。
【0047】
各側壁46の長さは、自動車ボディおよびボディキャリヤまたはその中で乾燥されているどんな基材部品の長さも取囲むのに十分であり、好ましくは約7から約8メートルである。側壁46は、好ましくは、自動車ボディのサイドの形状に適合するように角度をつけられた4の水平セクションを有する。側壁46の頂部セクションは、好ましくは、6のゾーンに分けられた24の平行なランプを有する。乾燥チャンバ44への入口に最も近い3つのゾーンは中波長で動作され、出口に最も近い3つは短波長で動作される。側壁の中間セクションは頂部セクションと同様に構成される。側壁の2つの下部セクションは、各々、好ましくは、2×3のアレイで6のバルブを収容する。入口に最も近いバルブの第1のセクションは、好ましくは中波長で動作され、他の2つのセクションは短波長で動作される。
【0048】
再び図4を参照すると、エミッタランプ42の各々は、好ましくは研磨アルミニウムから形成されたトラフ形反射体54が中に配置される。適切な反射体としては、BGK−ITWオートモーティブ(Automotive)、ヘレウス(Heraeus)、およびファノン・プロダクツ(Fannon Products)から市販されているアルミニウム反射体または一体的金外装反射体が挙げられる。反射体54は、エミッタランプから伝達されたエネルギーを集め、エネルギーを自動車ボディ16に集中させて、エネルギー散乱を少なくする。
【0049】
内部乾燥チャンバ44内の自動車ボディ16の構成および位置決め、ならびに乾燥されるべきベースコートの色のような要因によって、均一な加熱をもたらすために、クラスA表面40から最も遠いエミッタランプを、クラスA表面に最も近いランプより大きい強度で照明することができるように、エミッタランプ42をマイクロプロセッサ(図示せず)によって独立して制御することができる。たとえば、自動車ボディ16のルーフ56がエミッタランプのセクションの下を通過するとき、ルーフが熱下で座屈することを防止するために、ルーフが通過するまで、そのゾーンのエミッタランプをより低い強度に調整することができ、次に、強度を増加させて、エミッタランプ42からルーフ56より大きい距離にあるデッキリッド58を加熱することができる。
【0050】
また、エミッタランプ42からクラスA表面40までの距離を最小にするために、側壁46およびエミッタランプ42の位置を、図4に、それぞれ、方向矢印60、62によって示されるように、自動車ボディの方にまたは自動車ボディから離れて調整することができる。当業者は、エミッタランプが自動車ボディ16のクラスA表面に近いほど、表面およびそれらの上に存在するコーティングを加熱するために付与される利用可能なエネルギーのパーセンテージが大きいことを理解するであろう。一般に、赤外線は、好ましくは約24kW/mを照射する、自動車ボディ16のフードおよびデッキリッド58に面するエミッタランプ42より近い、自動車ボディ16のサイド64(ドアまたはフェンダ)に面するエミッタランプ42について、エミッタ壁表面の1平方メートルあたり約10から約25キロワット(kW/m)の範囲、好ましくは約12kW/mの範囲の電力密度で照射される。
【0051】
エミッタランプ42は、また、自動車ボディが高強度熱下で過熱し座屈することを防止するようにパルスすることができる。パルス周波数も、マイクロプロセッサ(図示せず)によって独立して制御することができる。
【0052】
適切な組合せ赤外/対流乾燥装置の非限定的な例は、ミシガン州ウィクソムのダー(Durr of Wixom, Mich.)、ニュージャージー州マナスカンのサーマル・イノベーションズ(Thermal Innovations of Manasquan, N.J.)、オハイオ州クリーブランドのサーモベーション・エンジニアリング(Thermovation Engineering of Cleveland, Ohio)、インディアナ州グリーンバーグのドライ−クイック(Dry−Quick of Greenburg, Ind.)、およびウィスコンシン州イースト・トロイのウィスコンシン・オーブン・アンド・インフレアド・システムズ(Wisconsin Oven and Infrared Systems of East Troy, Wis.)から市販されているものである。自動車組立工場において過去において使用されている別の有用なIR/対流乾燥オーブンは、ミネソタ州ミネアポリスのBGKオートモーティブ・グループ(BGK Automotive Group of Minneapolis, Minn)から市販されているBGK組合された赤外線および加熱空気対流オーブンである。このオーブンの一般的な構成は、以下で説明され、参照により本明細書に援用する米国特許公報(特許文献1)、米国特許公報(特許文献18)、米国特許公報(特許文献3)、および米国特許公報(特許文献4)に開示されている。他の有用な組合せ赤外/対流乾燥装置は、当業者には明らかであろう。
【0053】
ここで、図4を参照すると、好ましい組合せ赤外/対流乾燥装置38が示されている。いくつかの場合、この装置は、前の乾燥工程において赤外エミッタがオフにされる以外は、前の乾燥工程で使用されたのと同じタイプの装置であろう。前の対流乾燥チャンバと同様に、好ましい組合せ赤外/対流乾燥装置38は、空気68が、毎秒約5メートル以上の速度で乾燥チャンバ38の内部に入るために通過されるノズルまたはスロット開口部66を有するバッフル側壁46を含む。この工程の間、ベースコーティング組成物の表面36における空気の速度は、毎秒約5メートル未満、好ましくは毎秒約1.5から約5メートルの範囲、より好ましくは毎秒約2から約4メートルの範囲である。
【0054】
空気68の温度は、一般に約30℃から約60℃の範囲、好ましくは約30℃から約40℃の範囲である。低速の温かい乾燥空気68は、ブロワ70またはドライヤによって供給され、外部から、または空気を加熱された赤外エミッタランプ42およびそれらの反射体54の上を通過させることによって予熱することができる。空気68をエミッタ42および反射体54の上を通過させることによって、これらの部分の作業温度を低下させることができ、それにより、それらの有用な寿命を延ばすことができる。また、望ましくない溶剤蒸気を内部乾燥チャンバから除去することができる。空気は、また、サブフロア48を介して組合せ乾燥チャンバの内部を通って上に循環させることができる。好ましくは、空気流れは、効率を増加させるために再循環される。空気流れの一部を逃がして、汚染物質を除去することができ、濾過された新しい空気で補充して、いかなる損失も補うことができる。
【0055】
当業者によって理解されるように、基材温度が上昇される速度、およびピーク基材温度を制御することによって、工程112、114、および116の組合せは、ポップ、ピンホール、および気泡などの、表面外観のきずを最小にして、液体ベースコート、および液体または粉末トップコート複合コーティングを提供することができる。高フィルム構造(builds)が、また、短い時間で最小エネルギー入力で達成することができ、フレキシブルな操作条件は、現場修理の必要を減少させることができる。
【0056】
組合された赤外/対流乾燥工程116の間自動車ボディ16の表面上に形成されたベースコート36は、トップコート(またはいくつかの場合中間コート)の質またはベースコートの外観が悪影響されないように、トップコートの塗布を可能にするのに十分に乾燥される。
【0057】
多すぎる水が存在する場合、その上に塗布されたトップコートは、トップコートの乾燥の間、亀裂、気泡、ポップ、またはピンホーリングを示すことがあり、というのは、ベースコートからの水蒸気がトップコートを通過しようと試みるからである。多すぎる水は、また、トップコートが、ベースコートに入り込む(strike−in)ことを引起し、劣った外観、すなわち、ベースコートのまだら、劣った光沢およびDOI(イメージの明確さ)を備えたフィルムを作ることがある。
【0058】
本発明のプロセスは、図1に仮想的に示された任意の乾燥および/または硬化工程118を含んでもよい。付加的な乾燥チャンバ118が、加えられた色効果、たとえば下部2トーン仕上げのための付加的なコーティングを使用する自動車ウェット・オン・ウェット(wet on wet)プロセスで特に有用である。たとえば、トップコートが塗布される前、付加的な色効果のための溶剤または水性下部2トーンコートをスプレーすることが望ましいであろう。その後、上部ベースコート色塗布、および工程110から116の通過の前、十分な乾燥およびマスキングのため、自動車を付加的な乾燥チャンバ118に送ることができる。代替実施形態において、トップコートが塗布される前、車両を、2回目、スプレープロセスゾーンおよび迅速乾燥プロセスゾーン110、112、114、および116を通って送り返して(図示せず)、2トーン仕上げを急速に乾燥させることができる。2トーン仕上げのほかに、特定の熱硬化性組成物のための個別のベースコート硬化工程119を有することも望ましく、工程116の後、典型的には少なくとも約6分、好ましくは約6から20分の時間、乾燥されたベースコート36に、熱空気が吹き付けられて、コーティングされた基材を約110℃から135℃の範囲のピーク金属温度で保持し、ベースコートを硬化させる。ここで使用されるように、「硬化させる」とは、乾燥されたベースコートのいかなる架橋性成分も実質的に架橋されることを意味する。
【0059】
これらの付加的な乾燥および/または硬化工程118および119は、上で説明されたような熱空気対流ドライヤを使用して、または組合せ赤外線/対流乾燥装置を使用する上記工程116と同様の態様で行うことができる。
【0060】
本発明のプロセスは、典型的には約50〜60℃の、工程116および/または119からの上に硬化されたベースコートを有する自動車ボディ16の温度が冷却される冷却工程(図示せず)をさらに含むことができる。しかし、当業者は、今日使用されるクリアトップコートが熱いボディ上に置かれるように設計されるので、この工程が典型的には自動車施設に必要でないことを理解するであろう。
【0061】
自動車ボディ16上のベースコーティングが乾燥された(望ましい場合は、硬化され、および/または冷却された)後、トップコーティング工程120において、トップコーティング組成物が乾燥されたベースコートの上に塗布される。
【0062】
標準的な溶剤性クリア、水性クリア、または粉末クリア、スラリー粉末クリア、UVクリア、2Kクリアなどを含む非常にさまざまな市販の自動車クリアコートのいずれも本発明に使用してもよい。
【0063】
クリアトップコートは、1つまたは2つのパスで、高電圧(約60,000から約90,000ボルト)での高速(約20,000から約100,000毎分回転数)回転ベルアトマイザなどの従来の静電スプレー設備によって、約40から約65マイクロメートルの厚さに塗布することができる。
【0064】
好ましくは、クリアトップコーティング組成物は、少なくとも1つの熱硬化性フィルム形成材料と、少なくとも1つの架橋材料とを含む架橋性コーティングであるが、ポリオレフィンなどの熱可塑性フィルム形成材料を使用することができる。低VOC(揮発性有機含有量)を有し、かつ現在の汚染規制を満たす高固形分溶剤性クリアコートが、一般に好ましい。典型的には、有用な高固形分溶剤性トップコートとしては、参照により本明細書に援用する米国特許公報(特許文献19)、米国特許公報(特許文献20)、および米国特許公報(特許文献21)に開示された、高固形分カルバメート/メラミン樹脂またはアクリロシラン/メラミン樹脂をベースとしたもの、参照により本明細書に援用する米国特許公報(特許文献22)に開示された、ポリイソシアネートをベースとした2Kクリアコート、ならびに参照により本明細書に援用する米国特許公報(特許文献23)に開示された、オリゴマーシランをベースとした、スーパーソリッド(SuperSolids)(商標)、超高固形分コーティングが挙げられる。
【0065】
クリアトップコーティング組成物は、また、上で説明されたような他の架橋材料および付加的な成分を含むことができる。これらの組成物は、顔料がなくてもよいし、結果として生じるクリアコートが依然として実質的に透明であることを条件として、小量の顔料を含有してもよい。基材に塗布されるトップコーティング組成物の量は、基材のタイプ、および基材の意図された用途、すなわち、基材が配置されるべき環境、および接触する材料の性質のような要因に基いて変わることができる。優れた光沢およびDOI(イメージの明確さ)を備えた魅力的な自動車外観を与えるために、溶剤性液体トップコーティングが水性ベースコートより一般に好ましい。
【0066】
好ましい実施形態において、本発明のプロセスは、乾燥されたベースコートの上の塗布後、液体トップコーティング組成物を硬化させるベーキング工程とも呼ばれる硬化工程122(図1に示された)をさらに含む。乾燥され架橋されたクリアコートの厚さは、一般に約1から約5ミル(約25から125マイクロメートル)、好ましくは約1.5から約3ミル(約37から75マイクロメートル)である。液体トップコーティングは、自動車産業がコーティングプロセスを、トップコートへの損傷なしに、コーティングされた自動車ボディを輸送するのに十分に完全であるとして受入れるような程度に、液体トップコーティングのいかなる架橋性成分も架橋されるように、熱空気対流乾燥、および望ましい場合は赤外加熱によって硬化させることができる。液体トップコーティングは、上で説明されたようないかなる従来の熱空気対流ドライヤまたは組合せ対流/赤外ドライヤも使用して硬化させることができる。一般に、液体トップコーティングは、約20から約40分の時間、約120℃から約150℃の温度に加熱されて、液体トップコートを硬化させる。
【0067】
あるいは、液体トップコートを塗布する前にベースコートが硬化されなかった場合(これは、一般に「ウェット・オン・ウェット」塗布と呼ばれ、すなわち、トップコートはベースコートに塗布され、ベースコートを硬化させることも完全に乾燥させることもない)、上で詳細に説明されたような装置を使用して、熱空気対流を吹き付けるおよび/または赤外加熱することによって、ベースコートおよび液体トップコーティング組成物の両方をともに硬化させて、ベースコートおよび液体コーティング組成物の両方を個別に硬化させることができる。ベースコートおよび液体コーティング組成物を硬化させるために、基材は、一般に、約20から約40分の時間、約120℃から約150℃の温度に加熱されて、液体ベースコートおよびトップコートの両方を硬化させる。トップコートのベースコートへのウェット・オン・ウェット塗布は、一般に、今日自動車組立工場において好ましく、というのは、それは、塗装操作を行うのに必要なフロアスペースを最小にするからであり、これは、組立工場において重視される。ウェット・オン・ウェット塗布を可能にするために、工程114および116は、トップコートの塗布前、ベースコーティングの成分の完全な乾燥または化学反応または著しい架橋を誘起するのに十分な温度にフィルムが加熱されないように管理される。
【0068】
本発明の別の態様は、自動車ポリマー基材をコーティングするためのプロセスである。このプロセスは、プロセスが基材の変形温度または撓み温度より高い温度で行われない以外は、上記金属基材をコーティングするために用いられる工程と同様の工程を含む。加熱撓み(heat distortion temperature)温度は、ポリマー基材が物理的に変形し、その前の形状を取戻すことができない温度である。たとえば、いくつかの一般的な熱可塑性材料の加熱撓み温度は、次の通りである。熱可塑性オレフィン約138℃(280°F)、熱可塑性ポリウレタン約149℃(300°F)、およびアクリロニトリル−ブタジエン−スチレンコポリマー約71〜82℃(160〜180°F)。
【0069】
当業者によって理解されるように、本発明のプロセスを、また、基材の表面上にコーティングされた水性液体プライマー、プライマー−サーフェイサー、およびトップコート(すなわち、クリアコート)を急速に乾燥させるために用いることができる。図1に仮想的に示されたブロック124および126は、乾燥工程および任意の硬化工程112、114、116、および118を、また、それぞれの水性プライマーおよび水性トップコートで使用することができることを示す。
【0070】
これまで説明された実施形態からなされた変更が、本発明の概念からの逸れをもたらさないことが、当業者によって理解されるであろう。したがって、本発明が、開示された特定の実施形態に限定されないが、特許請求の範囲によって規定されるような本発明の精神および範囲内にある変更を網羅することが意図されることが理解される。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本発明による液体トップコーティングのために液体ベースコートを乾燥させるためのプロセスのフロー図である。
【図2】連続組立ラインプロセス上で行われる図1の迅速乾燥プロセスの一部の概略側面図である。
【図3】図2の概略図の一部の線3−3に沿った正面図である。
【図4】図2の概略図の一部の線4−4に沿った正面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水性液体ベースコートでコーティングされた基材を乾燥させるための方法であって、
(a)水性液体ベースコーティング組成物を前記基材の表面に塗布する工程と、
(b)前記ベースコーティング組成物を、温度が約20℃から約40℃の範囲の空気に約30秒の時間曝して、前記液体ベースコーティング組成物から揮発性材料の少なくとも一部を揮発させる工程であって、前記ベースコーティング組成物の表面における前記空気の速度が毎秒約0.3から約1メートルである工程と、
(c)前記ベースコーティング組成物に、約30秒から2分の時間、加熱された空気を吹き付ける(applying)工程であって、前記ベースコーティング組成物の表面における前記空気の速度が毎秒約1.5から約15メートルであり、前記空気の温度が約30℃から約90℃の範囲である工程と、
(d)前記ベースコーティング組成物に、約30秒から2分の時間、赤外線の照射と加熱された空気の吹き付けを同時に行う工程であって、前記ベースコーティング組成物の表面における前記空気の速度が毎秒約1.5から5メートルであり、前記空気の温度が約30℃から約60℃であり、これによって、十分に乾燥されたベースコートが前記基材の表面上に形成されるようにする工程と、
(e)トップコーティング組成物を前記ベースコートの上に塗布する工程と、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記基材が、鉄、鋼、アルミニウム、亜鉛、マグネシウム、それらの合金および組合せからなる群から選択される金属であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記金属基材が自動車ボディ部品であることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
工程(b)において、前記時間が、約30秒から約2分の範囲であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
工程(d)で照射される前記赤外線が、約0.7から約20マイクロメートルの範囲の近赤外領域から中赤外領域内の波長で照射されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
工程(d)で照射される前記赤外線が、約0.7から約4マイクロメートルの範囲の近赤外領域内の波長で照射されることを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項7】
工程(c)において、前記時間が約30秒から約45秒の範囲であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項8】
工程(d)において、前記時間が約30秒から約45秒の範囲であることを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記トップコーティングがウェット・オン・ウェット(wet on wet)で前記ベースコートの上に塗布されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記トップコーティング組成物の塗布後、前記ベースコーティング組成物および前記トップコーティング組成物を同時に硬化させる付加的な工程をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記基材がポリマー基材であり、前記方法の間の前記基材のピーク温度が、前記ポリマー材料の加熱撓み温度(heat distortion temperature)を超えないことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項12】
放射線源がマイクロ波エネルギーであることを特徴とする請求項1に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2007−503994(P2007−503994A)
【公表日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−525492(P2006−525492)
【出願日】平成16年9月3日(2004.9.3)
【国際出願番号】PCT/US2004/028920
【国際公開番号】WO2005/023437
【国際公開日】平成17年3月17日(2005.3.17)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】