説明

水性ポリウレタンエマルジョン、並びにその製造方法及びその用途

【課題】 製造に際し、有機溶剤や強力な攪拌機を用いることなく、再溶解性、密着性、塗膜物性等に優れた被膜が得られる水性ポリウレタンエマルジョンを提供する。
【解決手段】 繰り返し単位中、オキシエチレン基を50モル%以上含有するアルコキシポリ(オキシアルキレン)グリコール(A1−1)とヘキサメチレンジイソシアネート(A1−2)から得られる、実質的にイソシアヌレート基を含有しないアロファネート変性ポリイソシアネート(A1)を含有する有機ポリイソシアネート(A)、活性水素基含有化合物(B)、アニオン性極性基及び活性水素基含有化合物(C)、中和剤(D)を反応させて得られるポリウレタン樹脂が水中乳化している水性ポリウレタンエマルジョンにより解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、既存の設備で製造が可能であり、被膜物性が良好な水性ポリウレタンエマルジョン、並びにその製造方法及びその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
水性ポリウレタンエマルジョンは、基材への密着性、耐摩耗性、耐衝撃性、耐溶剤性等に優れていることから塗料、インキ、接着剤、各種コーテイング剤として紙、プラスチックス、フィルム、金属、繊維製品等に幅広く使用され、またその製造方法についても種々検討されてきた。例えば、アセトン、メチルエチルケトン(以後、MEKと略称する)、N−メチルピロリドン(以後、NMPと略称する)、芳香族系有機溶剤等を単独、若しくは混合溶剤中でウレタン樹脂溶液を製造後に水分散化及び脱溶剤過程を経てエマルジョン、コロイダルデスパージョン、水溶液等の水性ポリウレタン樹脂が開発されてきた。
【0003】
アロファネート変性ポリイソシアネートは、他のウレタン変性ポリイソシアネートやイソシアヌレート変性ポリイソシアネートと比較すると、一般的に低粘度であり、また、変性剤の選定により、イソシアネート骨格内に様々な側鎖基を導入することができる。例えば、ポリオキシエチレン基を導入すれば、親水性のポリイソシアネートが得られる。また、炭素数の多い炭化水素基を導入すれば、貧溶剤可溶のポリイソシアネートが得られる。
【0004】
特許文献1には、側鎖にポリオキシエチレン基を導入したアロファネート変性ポリイソシアネートをポリウレタン樹脂のイソシアネート成分に用いた水性ポリウレタンエマルジョンが示されている。
【0005】
【特許文献1】特開平1−104612号公報
【0006】
しかしながら、特許文献1において、アロファネート変性ポリイソシアネートの原料に、2,4−トリレンジイソシアネート(以後、2,4−TDIと略称する)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)等の異なる反応性を有する2個のイソシアネート基を有する有機ジイソシアネート(非対称ジイソシアネート)を用いている。一般的な非対称有機ジイソシアネートは、通常環構造(一種のラダー構造)を有するため、分子骨格の柔軟性が低く、また、粘度も高いものとなりやすい。
【0007】
特許文献2には、水性ポリウレタン樹脂分散体の製造の際、有機溶剤を用いない方法が提案されている。
【0008】
【特許文献2】特開平10-265539号公報
【0009】
しかしながら、特許文献2の製造方法においては、イソシアネート基末端プレポリマーの粘度が非常に高いため、強力な剪断力を有するホモミキサー、ホモジナイザー、マイクロフルイタイザーを用いないことには、水分散が進行しない場合が多く、製造設備改造の必要がある。
【発明の開示】
【発明の効果】
【0010】
本発明の水性ポリウレタンエマルジョンは、ポリウレタン樹脂のイソシアネート成分に、実質的にイソシアヌレート基を含有せず、かつ、繰り返し単位中オキシエチレン基を50モル%以上含有するアルコキシポリ(オキシアルキレン)グリコールを用いたヘキサメチレンジイソシアネート(以後、HDIと略称する)のアロファネート変性体を用いているため、その製造(特にイソシアネート基末端プレポリマーの製造)の際、有機溶剤を用いなくても、ポリウレタン樹脂中間体の粘度が低い。また、当然のことながら、得られるエマルジョンも有機溶剤を含有しないものである。また、得られる水性ポリウレタンエマルジョンからの被膜は、再溶解性、密着性等に優れ、水性印刷インキに用いた場合は、更に版詰まり性が改善されたものとなる。
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、製造時において、有機溶剤を使用することない、又は有機溶剤使用量の削減が可能であり、再溶解性、密着性等に優れた被膜が得られる水性ポリウレタンエマルジョンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
すなわち本発明は、以下の(1)〜(5)に示されるものである。
【0013】
(1)繰り返し単位中、オキシエチレン基を50モル%以上含有するアルコキシポリ(オキシアルキレン)グリコール(A1−1)とHDI(A1−2)から得られる、実質的にイソシアヌレート基を含有しないアロファネート変性ポリイソシアネート(A1)を含有する有機ポリイソシアネート(A)、活性水素基含有化合物(B)、アニオン性極性基及び活性水素基含有化合物(C)、中和剤(D)を反応させて得られるポリウレタン樹脂が水中乳化している水性ポリウレタンエマルジョン。
【0014】
(2)活性水素基含有化合物(B)が、少なくとも数平均分子量500以上の高分子ポリオール(B1)及び数平均分子量500未満の低分子ポリアミン及び/又は水(B2)を含有することを特徴とする、前記(1)の水性ポリウレタンエマルジョン。
【0015】
(3)低分子ポリアミン及び/又は水(B2)以外の活性水素基含有化合物(B)、アニオン性極性基及び活性水素基含有化合物(C)、及び有機ポリイソシアネート(A)とを、実質的に有機溶剤の不存在下で反応させた後、中和剤(D)にて中和し、得られたイソシアネート基末端プレポリマーを水に乳化させて、低分子ポリアミン及び/又は水(B2)にて鎖延長反応させることを特徴とする、前記(2)の水性ポリウレタンエマルジョンの製造方法。
【0016】
(4)前記(1)又は(2)の水性ポリウレタンエマルジョンを用いた水性塗料。
【0017】
(5)前記(1)又は(2)の水性ポリウレタンエマルジョンを用いた水性印刷インキ。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明で用いられる有機ポリイソシアネート(A)は、実質的にイソシアヌレート基を含有しないアロファネート変性ポリイソシアネート(A1)を含有するものである。イソシアヌレート基を実質的に含有すると、有機ポリイソシアネート(A)の粘度が増大し、このため、水性ポリウレタンエマルジョンの製造時に有機溶剤希釈による粘度低下の必要がある。
【0019】
前記アロファネート変性ポリイソシアネート(A1)は、繰り返し単位中、オキシエチレン基を50モル%以上(好ましくは70モル%以上)含有するアルコキシポリ(オキシアルキレン)グリコール(A1−1)とHDI(A1−2)から得られる。ここで、(A1)の繰り返し単位中のオキシエチレン基が50モル%未満の場合、得られるポリウレタン樹脂の水分散能が不十分となる。また、HDI以外の他の有機ジイソシアネート、例えばTDIやIPDIの場合は、環構造(一種のラダー構造)を有するため、分子骨格の柔軟性が低く、また、粘度も高いものとなりやすい。このため、このようなアロファネート変性ポリイソシアネートを製造する際は、有機溶剤が必要になるため、本発明においては好ましくない。
【0020】
このアロファネート変性ポリイソシアネート(A1)のイソシアネート含量は5〜15質量%が好ましく、8〜13質量%が特に好ましい。また、25℃の粘度は1,000mPa・s以下が好ましく、100〜800mPa・sが特に好ましい。イソシアネート含量が低すぎる場合や粘度が高すぎる場合は、反応の最中における中間反応物の粘度が高くなり、製造装置に大きな負荷がかかることになる。イソシアネート含量が高すぎる場合や粘度が低すぎる場合は、(A1)のアロファネート変性度合が不充分である場合が多く、得られるポリウレタン樹脂の分散能が不充分となりやすい。
【0021】
このアロファネート変性ポリイソシアネート(A1)の製造方法は、次の通りである。アルコキシポリ(オキシアルキレン)グリコールに対して、過剰量のHDI(アルコキシポリ(オキシアルキレン)グリコール/HDI=1/5〜1/20(モル比)が好ましい)を仕込み、ウレタン化反応を行う。次いでカルボン酸の金属塩等のアロファネート化触媒を仕込み、アロファネート化反応を行う。リン酸等の反応停止剤を仕込み、アロファネート化反応を停止させ、薄膜蒸留等で未反応のHDIを除去して、目的のアロファネート変性ポリイソシアネートが得られる。
【0022】
なお、好ましいアロファネート化触媒は、ジルコニウムのカルボン酸塩、ジルコニルのカルボン酸塩、スズ(二価)のカルボン酸塩である。これら以外のアロファネート化触媒では、イソシアヌレート化反応等の副反応の程度が大きく、目的のアロファネート変性ポリイソシアネート含有量が低いものになる。このような方法で得られたポリイソシアネートは平均官能基数が大きく、ポリウレタン樹脂製造の際ゲル化が生じやすい。なお、アロファネート化触媒の具体的商品としては、ニッカオクチックスジルコニウム(日本化学産業株式会社製)等が挙げられる。
【0023】
HDI以外の市場に広く流通している有機ジイソシアネートを用いて、前述のジルコニウム系触媒を用いてアロファネート変性ポリイソシアネートを製造した場合、アロファネート化反応が不充分であり、目的とするアロファネート変性ポリイソシアネートが得られにくい。
【0024】
アロファネート変性ポリイソシアネート(A1)に用いられるアルコキシポリ(オキシアルキレン)グリコール(A1−1)は、一般的には炭素数1〜10の1個の水酸基を有する化合物を開始剤として、エチレンオキサイド50モル%以上含有するアルキレンオキサイドを開環付加させることで得られる。
【0025】
ここで開始剤としては、メタノール、エタノール、プロパノール(各種異性体を含む)、ブタノール(各種異性体を含む)、ペンタノール(各種異性体を含む)等の飽和脂肪族系アルコール化合物、アリルアルコール等の不飽和脂肪族系アルコール化合物、フェノール等のフェノール系化合物、ベンジルアルコール等の芳香脂肪族系アルコール等が挙げられる。本発明では、親水性付与効果を高くするため、炭素数が5以下の脂肪族系アルコールが好ましく、特に好ましくは炭素数2以下の飽和脂肪族系アルコールである。また、アルキレンオキサイドのエチレンオキサイド含有量は、得られるポリウレタン樹脂の水分散能を考慮すると70モル%以上がより好ましい。
【0026】
アルコキシポリ(オキシアルキレン)グリコール(A1−1)の数平均分子量は200〜2,000が好ましく、特に好ましくは300〜1,000である。アルコキシポリ(オキシアルキレン)グリコール(A1−1)の数平均分子量が低すぎる場合は、アロファネート変性ポリイソシアネート(A1)における親水性付与効果が小さく、これを用いたポリウレタン樹脂の水分散能が不充分である。また、数平均分子量が大きすぎる場合は、ポリオキシエチレン鎖の結晶化のため、得られるアロファネート変性ポリイソシアネート(A1)の粘度が大きくなり、又は固化しやすくなり、溶剤を用いることなく水性ポリウレタンエマルジョンを製造することは困難になる。
【0027】
本発明では、前記アロファネート変性ポリイソシアネート(A1)以外の有機ポリイソシアネートを併用でき、例えば、2,4−TDI、2,6−トルエンジイソシアネート、2,2′−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、ジフェニルジメチルメタンジイソシアネート、ジベンジルジイソシアネート、ナフチレンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、HDI、リジンジイソシアネート、2−メチルペンタン−1,5−ジイソシアネート、3−メチルペンタン−1,5−ジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサヘチレン−1,6−ジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサヘチレン−1,6−ジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート、IPDI、シクロヘキシルジイソシアネート、水素添加キシリレンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート、水素添加トリメチルキシリレンジイソシアネート等の脂環族ジイソシアネートがある。これらの有機ジイソシアネートは単独でも用いることができるし、混合物にして用いても良い。更には、これらのアダクト変性体、カルボジイミド変性体、アロファネート変性体(前述のものを除く)、ビュレット変性体、ウレトジオン変性体、ウレトイミン変性体、イソシアヌレート変性体等の変性体も使用できる。この場合、有機ポリイソシアネート(A)全体に対して、アロファネート変性ポリイソシアネート(A1)が25質量%以上となることが好ましい。(A1)以外の有機ポリイソシアネートが多すぎる場合は、得られるポリウレタン樹脂の分子間力が大きくなりすぎるため、凝集しやすくなる。
【0028】
本発明に用いられる活性水素基含有化合物は、少なくとも数平均分子量500以上の高分子ポリオール(B1)及び数平均分子量500未満の低分子ポリアミン及び/又は水(B2)を含有することが好ましい。これは、後述するプレポリマー法によって樹脂を得るためであり、プレポリマー法は、接着性・密着性を付与するウレタン基と耐熱性、強度発現に効果のあるウレア基を、バランスよくポリウレタン樹脂骨格内に導入でき、また、反応途中の粘度を低くすることできるからである。
【0029】
高分子ポリオール(B1)の数平均分子量は500以上であり、好ましくは1,000〜5,000である。また、この(A)ポリオールの平均官能基数は2〜4が好ましく、2〜3が更に好ましい。高分子ポリオールの数平均分子量が下限未満の場合は、被膜が割れやすくなる。また、上限を越えると十分な物性を有する被膜になりにくい。なお、高分子ポリオールの数平均分子量は、平均官能基数と末端基定量法により求めた末端基量から算出したものである。
【0030】
高分子ポリオール(B1)の具体的なものとしては、ポリエステルポリオール、ポリアミドエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリエーテルエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリオレフィンポリオール、動植物系ポリオール等が挙げられる。
【0031】
本発明で好ましい高分子ポリオール(B1)は、密着性を重視する場合は、ポリエステルポリオールであり、耐水性を重視する場合は、ポリエーテルポリオールやポリカーボネートポリオールである。
【0032】
ポリエステルポリオールとしては、公知のフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、コハク酸、酒石酸、シュウ酸、マロン酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、クルタコン酸、アゼライン酸、セバシン酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、1,4−シクロヘキシルジカルボン酸、α−ハイドロムコン酸、β−ハイドロムコン酸、α−ブチル−α−エチルグルタル酸、α,β−ジエチルサクシン酸、マレイン酸、フマル酸等のジカルボン酸又は無水物等の1種類以上と、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、3,3−ジメチロールヘプタン、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、シクロヘキサン−1,4−ジオール、シクロヘキサン−1,4−ジメタノール、ダイマー酸ジオール、ビスフェノールAのエチレンオキサイドやプロピレンオキサイド付加物、ビス(β−ヒドロキシエチル)ベンゼン、キシリレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の低分子ポリオール類の1種類以上との縮重合反応から得られる。更に、ε−カプロラクトン、アルキル置換ε−カプロラクトン、δ−バレロラクトン、アルキル置換δ−バレロラクトン等の環状エステル(いわゆるラクトン)モノマーの開環重合から得られるラクトン系ポリエステルポリオール等がある。更に、低分子ポリオールの一部をエチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、イソホロンジアミン等の低分子ポリアミンや、モノエタノールアミン等の低分子アミノアルコールに置き換えてもよい。この場合は、ポリエステル−アミドポリオールが得られることになる。
【0033】
ポリエーテルポリオールとしては、前述のポリエステルポリオールに用いられる低分子ポリオール類、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、トルエンジアミン、メタフェニレンジアミン、ジフェニルメタンジアミン、キシリレンジアミン等の低分子ポリアミン類等のような活性水素基を2個以上、好ましくは2〜3個有する化合物を開始剤として、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド等のようなアルキレンオキサイド類、メチルグリシジルエーテル等のアルキルグリシジルエーテル類、フェニルグリシジルエーテル等のアリールグリシジルエーテル類、テトラヒドロフラン等の環状エーテルモノマーの単品又は混合物から公知の方法により付加重合することで得られる。
【0034】
ポリカーボネートポリオールとしては、前述のポリエステルポリオール源の低分子ジオール、低分子トリオール1種類以上と、エチレンカーボネート、ジエチルカーボネート、ジフェニルカーボネートとの脱アルコール反応や脱フェノール反応から得られる。なお、前述のポリカーボネートポリオールとポリエステルポリオールとのエステル交換品も好適に使用できる。
【0035】
ポリエーテルエステルポリオールとしては、前述のポリエーテルポリオールと前述のジカルボン酸等から得られるコポリオールがある。また、前述のポリエステルやポリカーボネートと、エポキサイドや環状エーテルとの反応で得られるものがある。
【0036】
ポリオレフィンポリオールとしては、水酸基を2個以上有するポリブタジエン、水素添加ポリブタジエン、ポリイソプレン、水素添加ポリイソプレン等が挙げられる。
【0037】
動植物系ポリオールとしてはヒマシ油系ポリオール、絹フィブロイン等が挙げられる。
【0038】
また、数平均分子量が500以上(好ましくは1,000〜5,000)で、かつ、1分子中に活性水素基を平均1個以上有するものであれば、ダイマー酸系ポリオール、水素添加ダイマー酸系ポリオールの他にエポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ロジン樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、クマロン樹脂、ポリビニルアルコール等の活性水素基含有樹脂も高分子ポリオールとして使用できる。
【0039】
低分子ポリアミンとしては、エチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、イソホロンジアミン、ジシクロヘキシルメタンジアミン、ジフェニルメタンジアミン、ジエチレントリアミン等が挙げられる。本発明での(B2)成分としては、得られるポリウレタン樹脂被膜の物性や耐久性等を考慮すると、水、ヘキサメチレンジアミン、イソホロンジアミンが好ましい。
【0040】
本発明に用いられるアニオン性極性基及び活性水素基含有化合物(C)におけるアニオン性極性基とは、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基、ホスフィン酸基、ホスホン酸基等が挙げられる。ここでアニオン性極性基の具体的なものとしては、スルホン酸塩基、リン酸塩基、ホスフィン酸塩基、ホスホン酸塩基等が挙げられる。本発明では、後述する中和剤(D)の選択によりエマルジョン状態から被膜状態の変化が不可逆的になるカルボキシル基が好ましい。
【0041】
カルボキシル基及び活性水素基含有化合物としては、2,2−ジメチロールプロピオン酸(以後、DMPAと略称する)、2,2−ジメチロールブタン酸(以後、DMBAと略称する)、ポリアミンと酸無水物との反応物、ジメチロールプロピオン酸やジメチロールブタン酸を開始剤としたラクトン付加物等が挙げられる。本発明で好ましいものは、DMPA、DMBAである。
【0042】
本発明に用いられる中和剤(D)としては、アンモニア、エチルアミン、トリメチルアミン、トリエチル アミン、トリイソプロピルアミン、トリブチルアミン、トリエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−フェニルジエタノールアミン、モノエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン、モルホリン、N−メチルモルホリン、2−アミノ−2−エチル−1−プロパノール等の有機アミン類、リチウム、カリウム、ナトリウム等のアルカリ金属、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムの無機アルカリ類等が挙げられるが、乾燥後の耐候性や耐水性を向上させるためには、熱によって容易に解離する揮発性の高いものが好ましく、アンモニア、トリメチルアミン、トリエチルアミンが好ましい。また、これら中和剤は、それぞれ単独又は2種以上の混合物でも使用することができる。
【0043】
本発明では、得られるポリウレタン樹脂被膜の物性等を考慮して、数平均分子量500未満の低分子ポリオールを用いることができる。この低分子ポリオールとしては、前述のポリエステルポリオールを構成する低分子ポリオールが挙げられる。
【0044】
本発明では、ポリウレタン樹脂を合成する際、分子量の調整等必要に応じて反応停止剤を使用することができる。反応停止剤としてはモノアルコール類、モノアミン類があり、場合によってはアミノアルコール類も反応停止剤となりうる。また、フェニルイソシアネート、ブチルイソシアネート、シクロヘキシルイソシアネート等のようなモノイソシアネートも反応停止剤として使用できる。
【0045】
反応停止剤として用いられる具体的なモノアルコールとしては、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、2−エチルヘキサノール等がある。モノアミンとしては、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン等の1級アミンや、ジエチルアミン、ジブチルアミン等の2級アミンがある。アミノアルコールとしては、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン等が挙げられる。
【0046】
水性ポリウレタンエマルジョンの製造方法としては、主なものには以下に掲げる方法が挙げられる。
・有機ポリイソシアネート(A)、活性水素基含有化合物(B)、及びアニオン性極性基及び活性水素基含有化合物(C)を活性水素基過剰の雰囲気で反応させてポリウレタン樹脂を合成し、その後必要に応じて中和剤(D)で中和して水分散させるワンショット法
・有機ポリイソシアネート(A)、低分子ポリアミン及び/又は水(B2)以外の活性水素基含有化合物(B)、及びアニオン性極性基及び活性水素基含有化合物(C)を、イソシアネート基過剰の雰囲気下で反応させてイソシアネート基末端プレポリマーを合成し、その後中和剤(D)で中和してから水分散させ、低分子ポリアミン及び/又は水(B2)にて鎖延長反応させるプレポリマー法
【0047】
ワンショット法の場合、イソシアネート基/活性水素基のモル比は、0.5〜1未満であり、好ましくは、0.8〜1未満である。0.5未満の場合は、ポリウレタンポリマーの分子量が小さすぎるため、耐久性に欠ける。1以上の場合は、ポリマーを合成する際、ゲル化が起こりやすくなる。
【0048】
ウレタン化後、必要に応じて中和剤(D)で中和した後、水を仕込んで樹脂を分散させて、目的とする水性ポリウレタンエマルジョンが得られる。このときの攪拌速度は速ければ速いほうが好ましい。
【0049】
プレポリマー法の場合、プレポリマー合成時のイソシアネート基/活性水素基のモル比は、1.1〜5.0であり、好ましくは1.2〜4.0である。1.1未満の場合は、プレポリマーの分子量が大きくなりすぎて、その後の反応工程に進みにくくなる。5.0を越える場合は、密着性に乏しくなる。
【0050】
プレポリマー化後、中和剤(D)で中和した後、水を仕込んでプレポリマーを分散させ、低分子ポリアミン及び/又は水(B2)及び必要に応じて反応停止剤を仕込んでアミン延長反応を行って目的とする水性ポリウレタンエマルジョンが得られる。アミン延長反応の反応温度は、30〜50℃が好ましい。プレポリマーの分散以降において、攪拌速度は速ければ速いほうが好ましい。
【0051】
本発明の水性ポリウレタンエマルジョンは、樹脂の低粘度化に効果のあるアロファネート変性ポリイソシアネート(A1)を用いることを特徴とする。しかし、ワンショット法では、低粘度化に効果のあるアロファネート変性ポリイソシアネート(A1)を用いていても、水分散直前のポリウレタン樹脂の数平均分子量は10,000以上になっている場合が多く、それなりの高粘度(例えば75℃で100,000mPa・s以上)になり、水分散が困難になりやすい。このため、数平均分子量が低い(粘度が低い)プレポリマーの段階で水分散するプレポリマー法が製造時の無溶剤化が達成できるので好ましい。
【0052】
ウレタン化反応又はプレポリマー化反応の際、反応触媒として公知のいわゆるウレタン化触媒を用いることができる。具体的には、ジオクチルチンジラウレート等の有機金属化合物や、トリエチレンジアミン等の有機アミンやその塩等が挙げられる。ウレタン化時の反応温度は、10〜100℃、好ましくは30〜80℃である。
【0053】
このようにして得られる水性ポリウレタンエマルジョンにおけるポリウレタン樹脂の数平均分子量は、5,000以上が好ましく、特に10,000以上がが好ましい。ポリウレタン樹脂の数平均分子量が5,000未満の場合は、耐久性に乏しくなる。なお、本発明において、数平均分子量は、ポリエチレングリコール検量線によるゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法によって測定されるものである。
【0054】
水性ポリウレタンエマルジョンにおいて、樹脂成分の平均粒径は100nm以下であり、好ましくは80nm以下である。平均粒径が上限を越える場合は、経時で沈殿を生じる場合がある。なお平均粒径とは、動的光散乱法にて測定した値をキュムラント法にて解析した値である。
【0055】
水性ポリウレタンエマルジョンの25℃における粘度は、固形分30質量%時において、2,000mPa・s以下であり、好ましくは50〜1,000mPa・sである。粘度が上限を越える場合は、その後の塗料化が困難となりやすい。
【0056】
本発明におけるポリウレタン樹脂のアニオン性極性基含有量は、0.5mmol/g以下が好ましく、0.3mmol/g以下が特に好ましい。アニオン性極性基含有量が多すぎる場合は、水分散直前の樹脂やプレポリマーの粘度が高くなりすぎて、水分散が困難になる。また被膜の耐酸性や耐アルカリ性が低下しやすくなる。
【0057】
本発明におけるポリウレタン樹脂のノニオン性親水基(ポリオキシエチレン基)含有量は、10〜50質量%が好ましく、15〜40質量%が特に好ましい。ノニオン性親水基含有量が多すぎる場合は、被膜の耐水性が低下しやすい。少なすぎる場合は水性ポリウレタンエマルジョン製造時において、水分散直前の樹脂やプレポリマーの水分散が困難になる。
【0058】
本発明に用いられるポリウレタン樹脂のウレタン基濃度とウレア基濃度の総和は1.0〜3.0mmol/g、好ましくは1.3〜2.7mmol/gである。なお、ウレア基がポリマー中に存在しない場合は、ウレタン基濃度が1.0〜3.0mmol/g、好ましくは1.3〜2.7mmol/gとなる。ウレタン基濃度とウレア基濃度の総和が下限未満の場合は、被膜強度が不十分となりやすい。また、上限を越える場合は、被膜の密着性が不十分となりやすい。
【0059】
本発明の水性ポリウレタンエマルジョンには、必要に応じて水性システムで慣用される添加剤及び助剤を使用できる。例えば、硬化剤、顔料、染料、ブロッキング防止剤、分散安定剤、粘度調節剤、レベリング剤、ゲル化防止剤、光安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、無機及び有機充填剤、可塑剤、滑剤、帯電防止剤、補強材、触媒等を添加することができる。
【0060】
また、本発明のポリウレタン系エマルジョンは、他樹脂系のエマルジョンをブレンドして使用できる。例えば、アクリルエマルジョン、ポリエステルエマルジョン、ポリオレフィンエマルジョン、ラテックス等である。
【実施例】
【0061】
次に、本発明の実施例及び比較例について詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。特に断りのない限り、実施例中の「%」はそれぞれ「質量%」を意味する。
【0062】
〔アロファネート変性ポリイソシアネートの合成〕
合成例1
攪拌機、温度計、冷却器及び窒素ガス導入管のついた容量:1Lの反応器に、HDIを863g、MPEG−1を137g、2−エチルヘキサン酸ジルコニウムを0.2g仕込み、90℃で2時間反応を行った。次いで、リン酸を0.1g仕込み50℃で1時間停止反応を行った。停止反応後の反応生成物のイソシアネート含量は40.2%であった。この反応生成物を130℃×0.04kPaにて薄膜蒸留を行い、アロファネート変性ポリイソシアネートイソシアネートALP−1を得た。ALP−1のイソシアネート含量は11.4%、25℃の粘度は140mPa・s、遊離ジイソシアネート含有量は0.1%であった。また、ALP−1をFT−IR及び13C−NMRにて分析したところ、ウレタン基、イソシアヌレート基はほとんど確認されず、アロファネート基の存在が確認された。
【0063】
合成例2
攪拌機、温度計、冷却器及び窒素ガス導入管のついた容量:1Lの反応器に、HDIを782.6g、MPEG−2を217.4g、2−エチルヘキサン酸ジルコニルを0.2g仕込み、90℃で2時間反応を行った。次いで、リン酸を0.1g仕込み50℃で1時間停止反応を行った。停止反応後の反応生成物のイソシアネート含量は36.5%であった。この反応生成物を130℃×0.04kPaにて薄膜蒸留を行い、アロファネート変性ポリイソシアネートイソシアネートALP−2を得た。ALP−2のイソシアネート含量は7.2%、25℃の粘度は100mPa・s、遊離ジイソシアネート含有量は0.1%であった。また、ALP−2をFT−IR及び13C−NMRにて分析したところ、ウレタン基、イソシアヌレート基はほとんど確認されず、アロファネート基の存在が確認された。
【0064】
合成例3
攪拌機、温度計、冷却器及び窒素ガス導入管のついた容量:1Lの反応器に、NMPを200g、2,4−TDIを265.6g、MPEG−2を534.5g仕込み、80℃で4時間ウレタン化反応させた。このときのイソシアネート含量は9.6%であった。次いでPTSMを0.5g、アセチルアセトン亜鉛0.025g仕込み、100℃にて5時間反応させて、アロファネート変性ポリイソシアネートALP−3を得た。ALP−3の固形分は80%、イソシアネート含量は6.4%、25℃の粘度は50mPa・s、遊離ジイソシアネート含有量は0.1%であった。また、ALP−3をFT−IR及び13C−NMRにて分析したところ、ウレタン基は確認されず、アロファネート基及びイソシアヌレート基の存在が確認された。
【0065】
合成例1〜3において
HDI :ヘキサメチレンジイソシアネート
2,4−TDI:2,4−トリレンジイソシアネート
MPEG−1 :メトキシポリエチレングリコール
数平均分子量=400
MPEG−2 :エトキシポリエチレングリコール
数平均分子量=700
PTSM :パラトルエンスルホン酸メチル
NMP :N−メチルピロリドン
【0066】
〔水性ポリウレタンエマルジョンの合成〕
実施例1
攪拌機、温度計、窒素シール管、冷却器のついた容量:1Lの反応器に、ポリオール−1を125.8g、DMBAを4.7g仕込み、100℃にて均一に混合した。その後、ALP−1を148.2g、DOTDLを0.05g仕込み、80℃で3時間反応させた後、TEAを3.2g仕込んでカルボキシル基を中和し、イソシアネート基末端プレポリマーを得た。このプレポリマーのイソシアネート含量は、3.19%、75℃の粘度は1,350mPa・sであった。その後、水を600g仕込んで乳化させた。乳化したところで、あらかじめ水を100g、IPDAを18.2g配合したアミン水を仕込んで鎖延長反応を行った。FT−IRによりイソシアネート基の存在が確認されなくなったところで反応を終了して、水性ポリウレタンエマルジョンPU−1を得た。PU−1の固形分は29.9%、25℃の粘度は32mPa・s、pHは7、平均粒径は35nmであった。
【0067】
実施例2
実施例1と同様な反応装置に、ポリオール−4を65.8g仕込んだ。その後、ALP−1を77.5g、DOTDLを0.02g仕込み、80℃で3時間反応させて、イソシアネート基末端プレポリマーを得た。このプレポリマーのイソシアネート含量は、2.31%、75℃の粘度は12,200Pa・sであった。その後、水を750g仕込んで乳化させた。乳化したところで、あらかじめ水を100g、IPDAを6.7g配合したアミン水を仕込んで鎖延長反応を行った。FT−IRによりイソシアネート基の存在が確認されなくなったところで反応を終了して、水性ポリウレタンエマルジョンPU−2を得た。PU−2の固形分は15.0%、25℃の粘度は10Pa・s、pHは9、平均粒径は15nmであった。
【0068】
実施例3
実施例1と同様な反応装置に、ポリオール−1を135.3g、DMBAを5.0g仕込み、100℃にて均一に混合した。その後、ALP−1を159.3g、DOTDLを0.05g仕込み、80℃で3時間反応させた後、TEAを3.4g仕込んでカルボキシル基を中和し、イソシアネート基末端プレポリマーを得た。このプレポリマーのイソシアネート含量は、3.19%、75℃の粘度は1,350mPa・sであった。その後、水を702g仕込んで乳化させ、その後40℃にて水による鎖延長反応を行った。FT−IRによりイソシアネート基の存在が確認されなくなったところで反応を終了して、水性ポリウレタンエマルジョンPU−3を得た。PU−3の固形分は30.1%、25℃の粘度は30mPa・s、pHは7、平均粒径は35nmであった。
【0069】
実施例4〜5、比較例1
実施例3と同様な反応装置、手順で、表1又は2に示す原料を用いて、水性ポリウレタンエマルジョンPU−4〜5を得た。なおPU−7(比較例1)は、プレポリマーを水に分散させたところ、全体が均一に分散しなかったため、以後の評価は断念した。
【0070】
実施例6
実施例1と同様な反応装置、手順で、表2に示す原料を用いて、水性ポリウレタンエマルジョンPU−6を得た。
【0071】
【表1】

【0072】
【表2】

【0073】
実施例1〜6、比較例1、表1〜2において
ポリオール−1:3−メチル−1,5−ペンタンジオールとアジピン酸から得られるポリ エステルポリオール
数平均分子量=2,000
ポリオール−2:1,6−ヘキサンジオールとジエチルカーボネートから得られるポリカ ーボネートポリオール
数平均分子量=2,000
ポリオール−3:ポリ(オキシテトラメチレン)ジオール
数平均分子量=2,000
ポリオール−4:1,6−ヘキサンジオール、アジピン酸、5−ソディウムスルホイソフ タル酸メチルから得られる、スルホン酸ナトリウム含有ポリエステルポ リオール
数平均分子量=1,000
スルホン酸ナトリウム含有量=0.4mmol/g
DMBA :2,2−ジメチロールブタン酸
DOTDL :ジオクチルチンジラウレート
IPDA :イソホロンジアミン
EDA :エチレンジアミン
【0074】
平均粒径測定装置:
大塚電子(株)製 電気泳動光散乱系 ELS−800
【0075】
実施例1〜6は、目的の水性ポリウレタンエマルジョンが得られたが、比較例はプレポリマーの水分散工程において、プレポリマーが完全に分散しなかった。これは、NMPが水と任意の割合で混合する。このため、NMPの水との混和速度が、プレポリマーの水和速度より非常に速くなり、分散のバランスが悪くなったためと思われる。
【0076】
〔塗膜評価〕
応用実施例7〜12
水性ポリウレタンエマルジョンPU−1〜6を主剤に、自己乳化型ポリイソシアネート(日本ポリウレタン工業製、アクアネート(登録商標)200を硬化剤にした、2液型水性塗料として評価した。配合比は、固形分換算で主剤/硬化剤=100/50(質量比)とした。評価結果を表3に示す。
【0077】
〔塗布、硬化条件〕
基材 :アルミニウム板(50mm×25mm×0.5mm)
塗布面に、メチルエチルケトンをしみ込ませた脱脂綿にて脱脂。
塗布量 :50g/m2
塗布温度:20℃
硬化条件:室温×10分+50℃×24時間+室温×24時間
〔性能試験〕
密着性 :JIS K5400、碁盤目テープ法に準じて測定
ラビング試験:塗膜にキシレンをしみ込ませた脱脂綿を100回擦り付け、塗膜外観の変 化を観察。
耐屈曲性 :JIS K5400に準じて測定。
心棒の直径は2mmのものを使用。
【0078】
【表3】

【0079】
〔評価基準〕
密着性
○:被膜残存率が80%以上
△:被膜残存率が50%以上80%未満
×:被膜残存率が50%未満
ラビング試験
○:被膜に傷等がほとんど確認できない
△:被膜に傷等が多少確認できる
×:被膜に傷等がかなり確認できる
耐屈曲性
○:被膜に割れや剥がれ等が全く認められない
△:被膜に多少割れや剥がれ等が認められる
×:被膜に割れや剥がれ等が著しく認められる
【0080】
[インキ化試験]
応用実施例13〜18
以下の配合で白インキを調製した。これらのインキを用いて各種基材に印刷し、印刷サンプルにおけるインキ性能を評価した。評価結果を表4に示す。
(インキ配合)
インキ配合処方(PU−2以外)
水性ポリウレタンエマルジョン 26.7g
チタンホワイト 32.0g
水 17.3g
イソプロパノール 4.0g
上記組成の混合物を、分散メディアにガラスビーズを混合物と同量用いて、ペイントシェイカーにて2時間練肉した。次いで練肉物を濾過して、これにアクアネート200の水乳化物(アクアネート200/水=100/100、質量比)を8g添加し、水性印刷インキの評価サンプルを作成した。
【0081】
インキ配合処方(PU−2)
PU−2 53.3g
チタンホワイト 32.0g
イソプロパノール 4.7g
上記組成の混合物を、分散メディアにガラスビーズを混合物と同量用いて、ペイントシェイカーにて2時間練肉した。次いで練肉物を濾過して、これにアクアネート200の水乳化物(アクアネート200/水=100/100、質量比)を8g添加し、水性印刷インキの評価サンプルを作成した。
【0082】
【表4】

【0083】
表4における各試験方法は以下の通り。
(評価項目)
顔料分散安定性
インキ配合してから48時間静置した後、顔料の沈殿等の有無を確認
版詰まり性
印刷後、簡易型グラビア印刷機のグラビアロールに、洗浄ビンにてイソプロパノール/水=1/1(質量比)の混合溶剤を降りかけ、グラビアロールからインキを洗い流せるかどうかを観察する。
評価 ○:容易に洗い流せる
×:単に混合溶剤を降りかけただけでは、洗い流せない
密着性
印刷直後及び、印刷してから1晩静置した後、印刷面にセロハンテープを貼り付け、これを急速に剥がした。
評価 ◎:印刷被膜が90%〜100%残存した。
○:印刷被膜が70%〜80%残存した。
△:印刷被膜が50%〜70%残存した。
×:印刷被膜が50%以下しか残存しなかった。
(印刷条件)
インキ :上記で調製した白インキ
印刷機 :グラビアプレートを備えた簡易型グラビア印刷機
印刷速度:20m/分
インキ厚:インキ厚1μ(ドライ)
印刷基材:コロナ処理延伸ポリエステルフィルム(20μm厚)
(ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム)
【0084】
本発明の水性印刷インキは、特に版詰まり性が良好という性能を示した。これは、用いた水性ポリウレタンエマルジョンにおけるポリウレタン樹脂の再溶解性が良好であるためと思われる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
繰り返し単位中、オキシエチレン基を50モル%以上含有するアルコキシポリ(オキシアルキレン)グリコール(A1−1)とヘキサメチレンジイソシアネート(A1−2)から得られる、実質的にイソシアヌレート基を含有しないアロファネート変性ポリイソシアネート(A1)を含有する有機ポリイソシアネート(A)、活性水素基含有化合物(B)、アニオン性極性基及び活性水素基含有化合物(C)、中和剤(D)を反応させて得られるポリウレタン樹脂が水中乳化している水性ポリウレタンエマルジョン。
【請求項2】
活性水素基含有化合物(B)が、少なくとも数平均分子量500以上の高分子ポリオール(B1)及び数平均分子量500未満の低分子ポリアミン及び/又は水(B2)を含有することを特徴とする、請求項1に記載の水性ポリウレタンエマルジョン。
【請求項3】
低分子ポリアミン及び/又は水(B2)以外の活性水素基含有化合物(B)、アニオン性極性基及び活性水素基含有化合物(C)、及び有機ポリイソシアネート(A)とを、実質的に有機溶剤の不存在下で反応させた後、中和剤(D)にて中和し、得られたイソシアネート基末端プレポリマーを水に乳化させて、低分子ポリアミン及び/又は水(B2)にて鎖延長反応させることを特徴とする、請求項2に記載の水性ポリウレタンエマルジョンの製造方法。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の水性ポリウレタンエマルジョンを用いた水性塗料。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の水性ポリウレタンエマルジョンを用いた水性印刷インキ。


【公開番号】特開2006−22133(P2006−22133A)
【公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−198891(P2004−198891)
【出願日】平成16年7月6日(2004.7.6)
【出願人】(000230135)日本ポリウレタン工業株式会社 (222)
【Fターム(参考)】