説明

水性被覆剤、その製造法及びその使用

本発明は、少なくとも1の飽和、不飽和及び/又はオレフィン系不飽和化合物でグラフトされた、イオン的及び/又は非イオン的に安定化されたポリウレタン、及び、少なくとも1の有機脂肪族非官能化溶剤を含有する水性被覆剤において、溶剤が、δ<10(cal/cm31/2の溶解パラメーター、及び、少なくとも25:75のCH基及びCH2基の数対CH3基の数の比に相当する分岐度を有することを特徴とする水性被覆剤に関する。本発明はさらに該水性被覆剤の製造法及び該水性被覆剤の使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1の飽和、不飽和及び/又はオレフィン系不飽和化合物でグラフトされた、イオン的及び/又は非イオン的に安定化されたポリウレタン、及び、少なくとも1の有機脂肪族非官能化溶剤を含有する新規の水性被覆剤に関する。さらに、本発明は水性被覆剤の新規の製造法に関する。さらに、本発明は新規の水性被覆剤及び新規の方法により製造された水性被覆剤の使用に関する。
【0002】
背景技術
少なくとも1の飽和、不飽和及び/又はオレフィン系不飽和化合物でグラフトされた、イオン的及び/又は非イオン的に安定化されたポリウレタンを含有する水性被覆剤は公知である。該水性被覆剤は、物理的、熱的又は熱的及び化学線硬化性である。有利に、該水性被覆剤は色及び/又は効果を付与する顔料を含有し、かつ色及び/又は効果を付与する塗膜、特に多層塗膜の範囲のベースコート又はソリッドカラートップコートの製造に使用される。
【0003】
公知の水性被覆剤は、有機溶剤、特に高沸点有機溶剤、例えば複素環式、脂肪族又は芳香族炭化水素、1価又は多価アルコール、エーテル、エステル及びケトン、例えばN−メチルピロリドン、トルエン、キシレン、ブタノール、エチレングリコール及びブチルグリコール並びにその酢酸塩、ブチルジグリコール、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、エトキシプロパノール、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、アセトン又はイソホロンを含有することができる(欧州特許出願EP 0 228 003 A1及びEP 0 634 431 A1を参照のこと)。
【0004】
水及び水性系へのシリコーン油の極めてわずかな溶解性に制約されて、水性被覆剤の汚染は塗膜において湿潤欠陥を招き得る。この場合、当業者はベースコート及びクリアコートからの構成において生じ得る以下の現象を区別している。
・凝集ベースコート塗膜上のクリアコートの湿潤欠陥(Aクレーター)
・クリアコートの湿潤欠陥及び凝集サーフェーサー塗膜上のベースコートの湿潤欠陥(Cクレーター)
・凝集サーフェーサー塗膜上のベースコートの湿潤欠陥、その際、クリアコートは湿潤欠陥箇所の上方に凝集塗膜を形成する(Dクレーター)
これまでに、シリコーン汚染により生じる欠陥を最小化又は回避するための手段を記載した文献は公知でない。
【0005】
JP 2000-246324には、補修性及び耐水性を改善するための疎水性有機溶剤の使用が記載されている。JP 2000-390442には同様に、耐水性を改善するための脂肪族炭化水素の使用が記載されている。耐水性の改善に加えて、US 1988-155458にはさらに、疎水性有機溶剤の使用による水性配合物中での非極性有機ポリマーの安定化が記載されている。前記特性はさらにJP 2000-369981及びJP 1977-41159に記載されている。
【0006】
発明の課題
本発明は、容易に製造可能であり、かつ吹付け塗装の後に、シリコーンで汚染されている場合にもクレーターをもはや有しない、少なくとも1の飽和、不飽和及び/又はオレフィン系不飽和化合物でグラフトされた、イオン的及び/又は非イオン的に安定化されたポリウレタンを含有する新規の水性被覆剤を提供することを課題としている。
【0007】
新規の水性被覆剤は、特にウェット・オン・ウェット法による多層塗膜の色及び/又は効果を付与するベースコートの製造のための水性ベースコートとして好適であることが望ましい。この場合、塗膜がシリコーンで汚染されている場合にももはやクレーターを有しないことが望ましい。
【0008】
新規の水性被覆剤は、シリコーンで汚染されている場合にも完全にか又は十分に、塗膜欠陥、例えばクレーター及び有利にワキ及びピンホールをも有しない、被覆、有利に色及び/又は効果を付与する被覆、有利にベースコート及びソリッドカラートップコート、特に多層塗膜中のベースコートをもたらすことが望ましい。
【0009】
本発明による解決法
上記課題は、溶剤が、δ<10(cal/cm31/2の溶解パラメーター、及び、少なくとも25:75のCH基及びCH2基の数対CH3基の数の比に相当する分岐度を有することを特徴とする、冒頭に記載した種類の被覆剤により解決される。ここで溶解パラメーターとは、J. Am. Chem. Soc, 51, 第66-80頁, 1929に記載されているヒルデブラント溶解パラメーターと解釈される。
【0010】
さらに、本発明による水性被覆剤の新規の製造法において、少なくとも1の飽和、不飽和及び/又はオレフィン系不飽和化合物でグラフトされた、イオン的及び/又は非イオン的に安定化されたポリウレタン、少なくとも1の湿潤剤又は分散剤、及び、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、トリデカン、テトラデカン、ペンタデカン、ヘキサデカン、ヘプタデカン、オクタデカン、ノナデカン、エイコサン、ヘネイコサン、ドコサン、トリコサン、テトラコサン、ペンタコサンの分枝鎖異性体からなる炭化水素の群から選択された少なくとも1の有機脂肪族非官能化溶剤を混合することを特徴とする方法が見出された。
【0011】
とりわけ、色及び/又は効果を付与する多層塗膜を製造するための、本発明による被覆剤及び本発明による方法により製造された被覆剤の新規の使用が見出され、これを以下で「本発明による使用」と呼称する。
【0012】
さらなる本発明の対象は、特許請求の範囲及び以下の記載から明らかである。
【0013】
発明の利点
従来技術に鑑み、本発明の課題が、本発明による被覆剤、本発明による方法及び本発明による使用により解決されることは、意想外でありかつ当業者に予見不可能である。
【0014】
特に、毒物学に懸念すべき成分をもはや含有せず、かつ吹付け塗装の後でクレーター、ワキ及びピンホールを有しないか又は極めてわずかに有するに過ぎない、本発明による被覆剤を容易に製造できることは意想外である。
【0015】
意想外にも、本発明による被覆剤は、本発明による使用の範囲内で、ウェット・オン・ウェット法による多層塗膜の色及び/又は効果を付与するベースコートの製造のための水性ベースコートとして使用することができる。この場合、塗膜はシリコーンで汚染されている場合にもクレーターを示さないか又は極めてわずかに示すに過ぎない。
【0016】
本発明による被覆剤は、本発明による使用の範囲内で、シリコーンで汚染されている場合にも完全にか又は十分に、塗膜欠陥、例えばクレーター、ワキ及びピンホールを有しない、本発明による被覆、有利に色及び/又は効果を付与する被覆、有利にベースコート及びソリッドカラートップコート、特に多層塗膜中のベースコートをもたらす。さらに本発明による被覆剤は、特に高い隠蔽力及び卓越した光学的な全体的印象(外観)を有する。従って本発明による被覆剤は自動車ボディの塗装に抜群に好適である。
【0017】
発明の詳細な説明
本発明による被覆剤は、物理的、熱的又は熱的及び化学線硬化性である。この場合、熱的に、又は熱的に及び化学線で行われる硬化を物理的硬化により促進することができる。
【0018】
本発明の範囲内で、「物理的硬化」との概念は、場合により塗膜の乾燥後に皮膜化することにより、被覆剤からなる塗膜を硬化させることを意味する。通常、このために架橋剤は不要である。場合により、物理的硬化を空中酸素か又は化学線の照射により促進することができる。
【0019】
本発明の範囲内で、「熱的硬化」との概念は、被覆剤からなる塗膜を熱で開始して硬化させることを意味し、その際、通常は別個に存在する架橋剤が適用される。該架橋剤は、ポリウレタン中に存在する反応性官能基と相補的である反応性反応基を含有する。通常、これは当業者に外部架橋と呼称されている。すでに相補的な反応性官能基又は自己反応性官能基、即ち「それ自体と」反応する基がポリウレタン中に存在する場合、前記基自体が架橋する。好適な相補的反応性官能基及び自己反応性官能基の例は、ドイツ連邦共和国特許出願DE 199 30 665 A1、第7頁、第28行〜第9頁、第24行の記載から公知である。
【0020】
本発明の範囲内で、化学線とは、電磁線、例えば近赤外線(NIR)、可視光線、UV線、X線又はγ線、特にUV線、及び粒子線、例えば電子線、β線、α線、陽子線又は中性子線、特に電子線であると解釈される。UV線による硬化は、通常ラジカル又はカチオン光開始剤により開始される。
【0021】
本発明による被覆剤において熱硬化及び化学線での硬化が一緒に適用される場合、「デュアルキュア」とも呼称される。
【0022】
本発明による被覆剤は一成分(1K)系であってよい。
【0023】
本発明の範囲内で、一成分(1K)系は熱硬化性被覆剤であってよく、その際、バインダー及び架橋剤は並存、即ち一成分で存在する。このためには、双方の成分が比較的高温で及び/又は化学線の照射で初めて相互に架橋することが前提となる。
【0024】
本発明による被覆剤はさらに二成分(2K)−又は多成分(3K、4K)系であってよい。
【0025】
これは本発明の範囲内で、特にバインダー及び架橋剤が相互に別個に少なくとも2成分で存在しており、適用の直前になって初めて合一される被覆剤を意味する。前記の形式は、バインダーと架橋剤とがすでに室温で相互に反応する場合に選択される。この種の被覆剤はとりわけ、特に自動車補修塗装における熱的に敏感な下地の被覆に適用される。
【0026】
本発明による被覆剤の第一の本質的な成分は、有利に脂肪族、脂環式、脂肪族−脂環式、芳香族、脂肪族−芳香族及び/又は脂環式−芳香族ポリイソシアネートをベースとする、少なくとも1の飽和、不飽和及び/又はオレフィン系不飽和化合物でグラフトされた、イオン的及び/又は非イオン的に安定化されたポリウレタンである。安定化のために、ポリウレタンは、
・中和剤及び/又は四級化剤によりカチオンに変換可能な官能基、及び/又はカチオン性基、又は
・中和剤によりアニオンに変換可能な官能基、及び/又はアニオン性基、及び/又は
・非イオン性親水性基
を含有する。
【0027】
好適なポリウレタンは、例えば以下の記載から公知である:
・ドイツ連邦共和国特許出願DE 199 14 98 A1、第1欄、第29〜49行及び第4欄、第23行〜第11欄、第5行、
・ドイツ連邦共和国特許出願DE 199 48 004 A1、第4頁、第19行〜第13頁、第48行、
・欧州特許出願EP 0 228 003 A1、第3頁、第24行〜第5頁、第40行、
・欧州特許出願EP 0 634 431 A1、第3頁、第38行〜第8頁、第9行、又は
・国際特許出願WO 92/15405、第2頁、第35行〜第10頁、第32行。
【0028】
本発明による被覆剤中に、該ポリウレタンは慣用かつ公知の量で含有される。
【0029】
本発明による被覆剤が、物理的、熱的自己架橋性又は熱的自己架橋性でかつ化学線硬化性である場合、そのポリウレタン含分は、それぞれ本発明による被覆剤の皮膜形成性固体に対して有利に50〜100質量%、有利に50〜90質量%、特に50〜80質量%である。
【0030】
本発明による被覆剤が熱的外部架橋性又は熱的外部架橋性でかつ化学線硬化性である場合、そのポリウレタン含分は、それぞれ本発明による被覆剤の皮膜形成性固体に対して有利に10〜80質量%、有利に15〜75質量%、特に20〜70質量%である。
【0031】
<10(cal/cm31/2の溶解パラメーターδ、及び、少なくとも25:75のCH基及びCH2基の数対CH3基の数の比によって特徴付けられる分岐度を有する脂肪族溶剤が使用される。
【0032】
有機溶剤は慣用かつ公知の市販の製品である。前記有機溶剤は例えばExxon社から商標Isopar(R)で市販されている。
【0033】
有機溶剤の量は非常に広範囲に及んでよく、かつ個々の場合の必要条件に最適化させることができる。しかしながら本発明による被覆剤の水性の性質に鑑み、有機溶剤の含分を可能な限りわずかに抑えることに努力がなされる。ここで、本発明の有利な技術的効果を達成するために、本発明による被覆剤中の有機溶剤含分がそれぞれ本発明による被覆剤に対して0.1〜10、有利に0.5〜7、特に0.5〜5質量%であることが特に有利である。
【0034】
さらに、本発明による被覆剤はさらに少なくとも1の添加剤を含有することができる。有利に、本発明による被覆剤は少なくとも2の添加剤を含有する。有利に、該添加剤は被覆剤の分野で慣用の添加剤の群から選択される。特に有利に、添加剤は、残滓不含であるか又は実質的に残滓不含の熱分解性塩、ポリウレタン以外の物理的、熱的及び/又は化学線硬化性バインダー、架橋剤、前記有機溶剤以外の有機溶剤、熱硬化性反応性希釈剤、化学線硬化性反応性希釈剤、色及び/又は効果を付与する顔料、透明顔料、フィラー、分子分散可溶性染料、ナノ粒子、光安定剤、酸化防止剤、揮発分除去剤、乳化剤、スリップ助剤、重合阻害剤、ラジカル重合開始剤、熱不安定性ラジカル開始剤、接着助剤、均展剤、皮膜形成助剤、例えば増粘剤及び構造粘性タレ防止剤、SCA、難燃剤、腐食防止剤、流動助剤、ワックス、乾燥剤、殺生剤及び艶消し剤からなる群から選択される。
【0035】
上記タイプの好適な添加剤は、例えば以下の記載から公知である:
・ドイツ連邦共和国特許出願DE 199 48 004 A1、第14頁、第4行〜第17頁、第5行、
・ドイツ連邦共和国特許出願DE 199 14 98 A1、第11欄、第9行〜第15欄、第63行、又は
・ドイツ連邦共和国特許出願DE 100 43 405 C1、第5欄、段落[0031]〜[0033]。
該添加剤は慣用かつ公知の有効量で使用される。
【0036】
本発明による被覆剤の固体含分は非常に広範囲に及んでよく、かつ個々の場合の必要条件に最適化させることができる。第一に、固体含分は、適用、特に吹付け塗装に必要な粘度に依存するため、当業者が自身の一般的な専門知識に基づいて場合により若干の情報収集試験を利用して設定することができる。有利に、該固体含分はそれぞれ本発明による被覆剤に対して5〜70質量%、有利に10〜65質量%、特に15〜60質量%である。
【0037】
本発明による被覆剤の製造は、有利に本発明による方法により行われる。この場合、上記成分を水性媒体中に、特に水中に分散させ、その後、得られた混合物を均質化する。本発明による方法は方法論的に特別なところはなく、慣用かつ公知の混合法及び混合装置、例えば撹拌釜、溶解機、撹拌ミル、混練機、スタティックミキサー又は押出機を用いて実施することができる。
【0038】
特に有利に、本発明による被覆剤は、単層ソリッドカラートップコートを製造するためのソリッドカラートップコートとして、又は、色及び/又は効果を付与する多層塗膜を製造するため水性ベースコートとして使用される。極めて特に有利に、本発明による被覆剤はこの場合、多層塗膜、有利に自動車ボディ用多層塗膜の色及び/又は効果を付与するベースコートを製造するための水性ベースコートとして使用される。この場合、本発明による被覆剤は初期塗装(OEM)及び補修塗装に抜群に好適である。
【0039】
極めて特に有利に、本発明による多層塗膜はウェット・オン・ウェット法により製造され、その際、
(1)下塗りされたか又はされていない下地に少なくとも1の水性ベースコートを塗布し、それにより少なくとも1の水性ベースコート塗膜(1)が生じ、
(2)少なくとも1のクリアコートを前記水性ベースコート塗膜(1)上に塗布し、それにより少なくとも1のクリアコート塗膜(2)が生じ、かつ
(3)少なくとも前記の1以上の水性ベースコート塗膜(1)と前記の1以上のクリアコート塗膜(2)とを一緒に硬化させ、それによりベースコート(1)及びクリアコート(2)が生じる。
【0040】
そのようなウェット・オン・ウェット法の例は以下の記載から公知である:
・ドイツ連邦共和国特許出願DE 199 48 004 A1、第17頁、第37行〜第19頁、第22行、又は
・ドイツ連邦共和国特許出願DE 100 43 405 C1、第3欄、段落[0018]及び第8欄、段落[0052]〜第9欄、段落[0057](第6欄、段落[0039]〜第8欄、段落[0050]に関連)。
上記文献に記載された塗膜厚は、本発明による多層塗膜の個々の塗膜に適用される。
【実施例】
【0041】
製造例1
灰色水性ベースコート1の製造
場合により生じる塗膜欠陥をより十分に評価するために、以下の規定に従って製造された灰色水性ベースコートを使用した。
【0042】
混合物1a:
溶解機中に、無機増粘剤(層状ケイ酸ナトリウム−マグネシウム、水中で3質量%)26質量部を装入した。これに、脱塩水30質量部、ブチルグリコール107.5質量部、ドイツ連邦共和国特許出願DE 44 37 535 A1の第7頁、第55行〜第8頁、第23行の記載に従って製造されたポリウレタン変性ポリアクリレート4.5質量部及び市販の消泡剤Nopco(R) DSX 1550の20.5質量%溶液0.6質量部を撹拌下に添加した。混合物1aが生じた。
【0043】
混合物1b:
これとは別に、ドイツ連邦共和国特許出願DE 40 09 858 A1の実施例D、第16欄、第37〜59行の記載に従って製造された水性ポリエステル樹脂分散液3.2質量部、Air Products社製Surfynol(R) 104 52質量%を含有する界面活性剤溶液0.3質量部、ブチルグリコール55質量部、n−ブタノール中の市販の水希釈可能なメラミンホルムアルデヒド樹脂(Surface Specialties Austria社製Cymel(R) 203)4.1質量部及び水中のジメチルエタノールアミンの10質量%溶液0.3質量部を混合した。混合物1bが生じた。
【0044】
混合物1c:
混合物1a及び1bを混合した。混合物1cが生じた。
【0045】
混合物1d:
混合物1cを、脱塩水6質量部、ドイツ連邦共和国特許出願DE 199 48 004 A1の第19頁、第44行〜第20頁、第7行の記載に従って製造されたポリウレタン変性ポリアクリレート20.4質量部、Surfynol(R) 104 52質量%を含有する界面活性剤溶液1.6質量部、ブトキシエタノール48質量部、水中のジメチルエタノールアミンの10質量%溶液0.4質量部、n−ブタノール1.6質量部及びポリアクリレート増粘剤(Ciba社製Viscalex(R))の3質量%溶液3.9質量部と混合した。混合物1dが生じた。
【0046】
カーボンブラックペースト:
国際特許出願WO 91/15528の記載に従って製造されたポリアクリレート分散液25質量部、カーボンブラック10質量部、メチルイソブチルケトン0.1質量部、ジメチルエタノールアミン1.36質量部、市販のポリエーテル(BASF Aktiengesellschaft社製Pluriol(R) P900)2質量部及び脱塩水61.45質量部から、カーボンブラックペーストを製造した。
【0047】
青色ペースト1:
ドイツ連邦共和国特許出願DE 40 09 858 A1の第16欄、第10〜35行の記載に従って製造されたポリウレタン分散液19.4質量部、Paliogen(R) Blau L 6482 13.5質量部、ブトキシエタノール4.3質量部、メチルエチルケトン0.18質量部、ジメチルエタノールアミン0.62質量部、Pluriol(R) P900 1.2質量部及び水61質量部から、青色ペースト1を製造した。
【0048】
青色ペースト2:
国際特許出願WO 91/15528の記載に従って製造されたポリアクリレート分散液15.4質量部、Paliogen(R) Blau L 6470 30質量部、Disperbyk(R) 184 2.6質量部、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル1.6質量部、メチルイソブチルケトン0.1質量部、ジメチルエタノールアミン0.65質量部、1,2−プロピレングリコール0.8質量部及び脱塩水45質量部から、青色ペースト2を製造した。
【0049】
紫色ペースト:
国際特許出願WO 92/15405の実施例1、第14頁、第13行〜第15頁、第27行の記載に従って製造された水性ポリウレタン分散液23質量部、Quindo Violet(R) 19 228-6902 18.4質量部、ブチルグリコール5質量部、メチルエチルケトン0.2質量部、ジメチルエタノールアミン0.26質量部、Pluriol(R) P900 2質量部及び脱塩水51質量部から、紫色ペーストを製造した。
【0050】
ペースト混合物:
カーボンブラックペースト2.5質量部、青色ペースト1 1.0質量部、青色ペースト2 0.3質量部、紫色ペースト0.75質量部及びドイツ連邦共和国特許出願DE 100 04 494 A1の実施例1の記載に従って製造されたペースト0.5質量部から、ペースト混合物を製造した。
【0051】
混合物1e:
ペースト混合物及び混合物1dから混合物1eを製造した。
【0052】
アルミニウム効果顔料ペースト:
第一の65質量%のアルミニウム効果顔料ペースト化物(Eckart社製Alu-Stapa-Hydrolux(R) 2153)及び第二の65質量%のアルミニウム効果顔料ペースト化物(Eckart社製Alu-Starter-Hydrolux 8154)からの0.18質量部、ブチルグリコール0.55質量部及びドイツ連邦共和国特許出願DE 40 09 858 A1の実施例D、第16欄、第37行〜59行の記載に従って製造された水性ポリエステル樹脂分散液0.28質量部から、アルミニウム効果顔料ペーストを製造した。
【0053】
水性ベースコート1:
混合物1e、アルミニウム効果顔料ペースト及び水2質量部から、水性ベースコート1を製造した。次いで、該水性ベースコート1をジメチルエタノールアミンでpH値8に調節し、脱塩水で剪断負荷1000/秒でかつ23℃で58mPasの粘度に調節した。
【0054】
水性ベースコートV1:
水性ベースコートV1を製造するために、製造例1の水性ベースコート1をWacker社製シリコーン油AK 1000(R) 0.1ppmと混合した。
【0055】
水性ベースコートE2:
本発明による水性ベースコートE2を製造するために、水性ベースコートV1を市販の溶剤Isopar L(R)と混合した。
【0056】
【表1】

【0057】
第1表の質量パーセント表記はそれぞれの水性ベースコートに関するものである。
【0058】
クレーターの測定のために、多層塗膜V1及びE2を以下の一般的規定に従って製造した:
寸法40×40cmのアルミニウム板に、プロセス膜厚よりも小さい8〜12μmの膜厚でコーティングした。次いで、得られた板を80℃で10分間乾燥させ、乾燥した水性ベースコート塗膜上に慣用かつ公知の二成分クリアコートを塗布した。次いで、水性ベースコート塗膜及びクリアコート塗膜を強制空気循環炉中で140℃で20分間硬化させた。多層塗膜中のクレーターの数を目視により測定した。第2表に試験結果の概要を示す。
【0059】
【表2】

【0060】
第2表の試験結果は、有機溶剤がシリコーンで汚染された水性コートの塗膜中でクレーター低減ないし回避効果を示すことを証明している。
【0061】
製造例2
水性ベースコートV3の製造
水性ベースコートV3の製造のために、製造例1の水性ベースコートV1をShell社製Shellsol T(R) 2.5質量%と混合し、かつ脱塩水で剪断負荷1000/秒でかつ23℃で70〜75mPasの粘度に調節した。
【0062】
E2とV3との比較試験
ピンホール限界及びピンホール数を測定するために、多層塗膜を以下の一般的規定に従って製造した:
サーフェーサー塗膜で被覆された寸法30×50cmの鋼板の長手縁に接着剤ストリップを取り付け、被覆後に塗膜厚の差を測定できるようにした。水性ベースコートを静電的にくさび形に塗布した。生じた水性ベースコート塗膜を室温で1分間フラッシュオフし、次いで強制空気循環炉中で70℃で10分間乾燥させた。乾燥した水性ベースコート塗膜上に慣用かつ公知の二成分クリアコートを塗布した。生じたクリアコート塗膜を室温で20分間フラッシュオフした。次いで、水性ベースコート塗膜及びクリアコート塗膜を強制空気循環炉中で140℃で20分間硬化させた。生じたくさび形の多層塗膜中のピンホールの目視による評価により、ピンホール限界の塗膜厚を測定した。結果を第3表に示す。
【0063】
【表3】

【0064】
上記結果は、有機溶剤Isoparを使用することにより、市販のShellsolと比較してピンホール限界が著しく高まり、かつ同時にピンホール数が著しく低下することを証明している。
【0065】
製造例3
水性ベースコートV1−1の製造
水性ベースコートV1−1の製造のために、製造例1の水性ベースコート1をWacker社製シリコーン油AK 1000(R) 0.06ppmと混合した。
【0066】
水性ベースコートE3の製造
本発明による水性ベースコートE3の製造のために、水性ベースコートV1−1を、全水性ベースコートE3に対して2.5質量%の市販の溶剤ドデカンと混合した。
【0067】
V1−1とE3との比較試験
クレーターを測定するために、多層塗膜V1−1及びE3を製造例1に記載した一般的規定に従って製造した。
【0068】
多層塗膜中のクレーターの数を目視により測定した。第4表に試験結果の概要を示す。
【0069】
【表4】

【0070】
第4表の試験結果は、有機溶剤がシリコーンで汚染された水性コートの塗膜中でクレーター低減ないし回避効果を示すことを証明している。
【0071】
製造例4
水性ベースコートV1−2の製造
水性ベースコートV1−2の製造のために、製造例1の水性ベースコート1をWacker社製シリコーン油AK 1000(R) 0.1ppmと混合した。
【0072】
水性ベースコートE4の製造
本発明による水性ベースコートE4の製造のために、水性ベースコートV1−2を、全水性ベースコートE4に対して2.5質量%の市販の溶剤Exxsol D 60(R)と混合した。
【0073】
V1−2とE4との比較試験
クレーターを測定するために、多層塗膜V1−2及びE4を製造例1に記載した一般的規定に従って製造した。
【0074】
多層塗膜中のクレーターの数を目視により測定した。第5表に試験結果の概要を示す。
【0075】
【表5】

【0076】
第5表の試験結果は、有機溶剤がシリコーンで汚染された水性コートの塗膜中でクレーター低減ないし回避効果を示すことを証明している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1の飽和、不飽和及び/又はオレフィン系不飽和化合物でグラフトされた、イオン的及び/又は非イオン的に安定化されたポリウレタン、及び、少なくとも1の有機脂肪族非官能化溶剤を含有する水性被覆剤において、溶剤が、δ<10(cal/cm31/2の溶解パラメーター、及び、少なくとも25:75のCH基及びCH2基の数対CH3基の数の比に相当する分岐度を有することを特徴とする水性被覆剤。
【請求項2】
分岐度が、30:70、有利に40:60、特に有利に45:55のCH基及びCH2基の数対CH3基の数の比に相当する、請求項1記載の被覆剤。
【請求項3】
有機脂肪族非官能化分枝鎖溶剤が、25℃で液状でありかつ7〜25の炭素数を有する、請求項1又は2記載の被覆剤。
【請求項4】
有機脂肪族非官能化溶剤が、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、トリデカン、テトラデカン、ペンタデカン、ヘキサデカン、ヘプタデカン、オクタデカン、ノナデカン、エイコサン、ヘネイコサン、ドコサン、トリコサン、テトラコサン、ペンタコサンの分枝鎖異性体からなる炭化水素の群から選択されている、請求項1又は2記載の被覆剤。
【請求項5】
少なくとも1の添加剤を含有する、請求項1から4までのいずれか1項記載の水性被覆剤。
【請求項6】
添加剤が、残滓不含であるか又は実質的に残滓不含の熱分解性塩、ポリウレタン以外の物理的、熱的及び/又は化学線硬化性バインダー、架橋剤、前記有機溶剤以外の有機溶剤、熱硬化性反応性希釈剤、化学線硬化性反応性希釈剤、色及び/又は効果を付与する顔料、透明顔料、フィラー、分子分散可溶性染料、ナノ粒子、光安定剤、酸化防止剤、揮発分除去剤、乳化剤、スリップ助剤、重合阻害剤、ラジカル重合開始剤、熱不安定性ラジカル開始剤、接着助剤、均展剤、皮膜形成助剤、レオロジー助剤、腐食防止剤、流動助剤、ワックス、乾燥剤、殺生剤及び艶消し剤からなる群から選択されている、請求項5記載の水性被覆剤。
【請求項7】
請求項1から6までのいずれか1項記載の水性被覆剤の製造法において、少なくとも1の飽和、不飽和及び/又はオレフィン系不飽和化合物でグラフトされた、イオン的及び/又は非イオン的に安定化されたポリウレタン、少なくとも1の湿潤剤又は分散剤、及び、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、トリデカン、テトラデカン、ペンタデカン、ヘキサデカン、ヘプタデカン、オクタデカン、ノナデカン、エイコサン、ヘネイコサン、ドコサン、トリコサン、テトラコサン、ペンタコサンの分枝鎖異性体からなる炭化水素の群から選択された少なくとも1の有機脂肪族非官能化溶剤を混合することを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項1から6までのいずれか1項記載の水性被覆剤及び請求項7記載の方法により製造された水性被覆剤の使用において、前記水性被覆剤を色及び/又は効果を付与する多層塗膜を製造するための水性ベースコートとして使用することを特徴とする使用。
【請求項9】
色及び/又は効果を付与する多層塗膜をウェット・オン・ウェット法により製造する、請求項8記載の使用。
【請求項10】
下地が自動車ボディ又はその部材である、請求項8又は9記載の使用。

【公表番号】特表2010−535914(P2010−535914A)
【公表日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−520487(P2010−520487)
【出願日】平成20年8月13日(2008.8.13)
【国際出願番号】PCT/EP2008/006654
【国際公開番号】WO2009/021724
【国際公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【出願人】(390008981)ビーエーエスエフ コーティングス ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (155)
【氏名又は名称原語表記】BASF Coatings AG
【住所又は居所原語表記】Glasuritstrasse 1, D−48165 Muenster,Germany
【Fターム(参考)】