説明

水晶振動子用端子、その製造方法及び水晶振動子

【課題】 水晶振動子用端子のメッキ層から発生するガスを放出しないようにする。
【解決手段】 接続電極を有する水晶片を内部に収容した金属製シリンダー状の封止管の解放端に圧入固定され、前記水晶片の接続電極と固定される一対のリード部材を支持するための水晶振動子用端子において、該水晶振動子用端子は、前記一対のリード部材をお互いに絶縁してほぼ平行に支持するための絶縁部材と、この絶縁部材の周囲を包囲しており、前記封止管の解放端に圧入されて封止管内面と接触する金属製のリング部材で構成され、前記水晶振動子用端子の金属部表面には、少なくとも、CuまたはNiを含む金属化合物からなる下地層と、前記下地層の上に、Snを含みPbを含有しない金属化合物でなる第一中間層と、前記第一中間層の上に、Cuを含む金属化合物からなる第二中間層と、前記第二中間層の上に、AuまたはPdNiでなる表面層を備える水晶振動子用端子とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は水晶振動子用端子、その製造方法及び水晶振動子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
水晶振動子は多くの技術分野でクロックとして多用されている。小型の水晶振動子としてシリンダー型の圧入方式水晶振動子が製造されている。
【0003】
図2は本発明に係わる水晶振動子の透視斜視図であり、図3は水晶振動子用端子の断面図である。水晶振動子1は、金属製のシリンダー状の封止管2内に水晶片3を収容したものであり、封止管2の開放端は水晶振動子用端子8が圧入されている。水晶片3の表面には、励振電極4と、該励振電極4に接続された接続電極5が形成されている。水晶片3の一端部の前記接続電極5上に、水晶振動子用端子8の外部から引き込まれる給電電極としてのリード部材7の先端であるインナーリード7aが、このインナーリード7aに予め形成した表面層が溶融されることにより接続されている。
【0004】
水晶振動子用端子8は一対のリード部材7と絶縁部材8c及び金属製のリング部材8bで構成され、一対のリード部材7はお互いに絶縁してほぼ平行に支持され、前記金属製リング部材8bに位置決め固定されている。
【0005】
金属製リング部材8b及びリード部材7の表面にはPbを含むハンダ層8dが形成され、インナーリード7aのハンダ層8dは接続電極5とのハンダ付けに使用され、金属製リング部材8bのハンダ層8dは封止管2との圧入での気密性を保つためのシール材として使用されていた。
【0006】
しかし、Pbの環境への悪影響を避けるためPbを含有したハンダの使用が禁止されることになり、Pbを含有しないハンダの採用が進められている。Pbを含有しないハンダとして有力なのは例えばSnCu等のSn系金属化合物である。SnCuを使用した水晶振動子の例として特許文献1がある。
【0007】
【特許文献1】特開2003-32066号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
図4は水晶振動子用端子の金属性リング部材8bの表面構造を示す断面図である。金属製リング部材8bはコバールや42ニッケル等であり、表面には下地層としてCu又はCuを含む金属化合物(例えばSnCu)がメッキされ、その上にはAgを表面層としてメッキされている。図5は下地層と表面層の間にSnを含みPbを含有しない金属化合物が中間層として形成されている断面図である。いずれも特許文献1に記載された構造である。
【0009】
SnCuメッキ処理中にSnCuメッキ層中に含まれてしまう有機系添加物が加熱によりガス化して表面層を突き破り、表面層が飛散して水晶片の表面に付着することがある。水晶振動子内でガスが発生すると水晶振動子の電気特性が変化し、不具合が発生する。
【0010】
SnCuメッキはSn98%、Cu2%であり、状態図での液層線が260℃と低く、一般的な電子部品のリフロー温度(260℃)で溶融することがあり、リフローによる表面実装での取扱いに注意を要する。
【0011】
SnCuメッキのSnが加熱により表面層に拡散し変色することがある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
接続電極を有する水晶片を内部に収容した金属製シリンダー状の封止管の解放端に圧入固定され、前記水晶片の接続電極と固定される一対のリード部材を支持するための水晶振動子用端子において、該水晶振動子用端子は、前記一対のリード部材をお互いに絶縁してほぼ平行に支持するための絶縁部材と、この絶縁部材の周囲を包囲しており、前記封止管の解放端に圧入されて封止管内面と接触する金属製のリング部材で構成され、前記水晶振動子用端子の金属部表面には、少なくともCuまたはNiを含む金属化合物からなる下地層と、前記下地層の上に、Snを含みPbを含有しない金属化合物でなる第一中間層と、該第一中間層の上に、メッキ浴に有機系添加物を含まないCuを含む金属化合物からなる第二中間層と、前記第二中間層の上に、Au又はPdNiでなる表面層を備える水晶振動子用端子とする。
【0013】
前記下地層と、前記第一中間層と、前記第二中間層と、前記第二中間層の上に設けられる表面層とを合わせた厚みが13.1μm以上27.3μm以下である水晶振動子用端子とする。
【0014】
前記第一中間層と、前記第二中間層のSnとCuを熱処理により相互拡散させる水晶振動子用端子とする。
【0015】
内部に水晶片を収容した金属製シリンダー状の封止管の解放端に圧入固定され、前記水晶片の接続電極と固定される一対のリード部材を支持するための水晶振動子用端子の製造方法において、少なくとも、
前記一対のリード部材をお互いに絶縁してほぼ平行に金属性リング部材に固定して水晶振動子用端子を形成する工程と、前記水晶振動子用端子の金属部表面にCuまたはNiを含む金属化合物からなる下地層を形成する第一メッキ工程と、前記下地層の上にSnを含み、Pbを含有しない金属化合物でなる第一中間層を形成する第二メッキ工程と、前記第一中間層の上にメッキ浴に有機系添加物を含まないCuを含む金属化合物からなる第二中間層を形成する第3メッキ工程と、前記第二中間層の上に、AuまたはPdNiでなる表面層を形成する第4メッキ工程を具備する水晶振動子用端子の製造方法とする。
【0016】
前記第4メッキ工程後熱処理を行ないSnとCuを相互拡散させる工程を具備する水晶振動子用端子の製造方法とする。
【0017】
接続電極を有する水晶片を内部に収容した金属製シリンダー状の封止管の解放端に圧入固定され、前記水晶片の接続電極と固定される一対のリード部材を支持するための水晶振動子用端子を含んでおり、該水晶振動子用端子は、前記一対のリード部材をお互いに絶縁してほぼ平行に支持するための絶縁部材と、この絶縁部材の周囲を包囲し前記封止管の解放端に圧入されて封止管内面と接触する金属製のリング部材で構成され、前記水晶振動子用端子の金属部表面には、少なくとも、CuまたはNiを含む金属化合物からなる下地層と、前記下地層の上に、Snを含みPbを含有しない金属化合物でなる第一中間層と、前記第一中間層の上に、メッキ浴に有機系添加物を含まないCuを含む金属化合物からなる第二中間層と、前記第二中間層の上に、AuまたはPdNiでなる表面層を備え、少なくとも、前記水晶振動子用端子、水晶片、金属製シリンダー状封止管で構成される水晶振動子とする。
【0018】
前記下地層と、前記第一中間層と、前記第二中間層と、前記第二中間層の上に設けられる表面層とを合わせた厚みが13.1μm以上27.3μm以下及びまたは前記第一中間層と、前記第二中間層のSnとCuを熱処理により相互拡散させた水晶振動子用端子を使用した水晶振動子とする。
【0019】
前記水晶振動子用端子の製造方法により製造された水晶振動子用端子を使用した水晶振動子とする。
【発明の効果】
【0020】
請求項1の発明による水晶振動子用端子は、第一中間層であるSnCuメッキ処理中に第一中間層に含まれる有機系添加物が加熱によりガス化するが、第二中間層が第一中間層で発生するガスを押さえているため、ガスが表面層を突き破ることがなくなる。よって、表面層が飛散し、水晶片の表面に付着することがなくなるので、電気特性が変化する等の不具合発生が防止できる。
【0021】
請求項2の発明による水晶振動子用端子は、前記効果を有するとともに、シール機能を果たしながら圧入による不具合発生が防止できる。
【0022】
請求項3の発明による水晶振動子用端子は、熱処理により、第一中間層であるSnCuメッキと第二中間層であるCuが拡散することによりSnCu中のCu量が多くなり、溶融温度が高まる。Sn98%Cu2%の状態図での液層温度は260℃であるが、Sn95%Cu5%の液層温度は350℃であり、一般的な電子部品のリフロー温度(260℃)でも十分耐えうる。よって、リフロー炉による表面実装時の取扱いが容易になる。また、第一中間層であるSnCuメッキのSnが加熱により第二中間層であるCuに拡散するが、第二中間層で拡散するので、表面層までは拡散しなくなり表面層が変色することがなくなる。
【0023】
請求項4、5の発明による水晶振動子用端子の製造方法によると、前記効果を有する水晶振動子用端子が製造できる。
【0024】
請求項6、7、8の発明による水晶振動子は、電気特性の変化がなく、表面実装に適した水晶振動子が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
接続電極を有する水晶片を内部に収容した金属製シリンダー状の封止管の解放端に圧入固定され、前記水晶片の接続電極と固定される一対のリード部材を支持するための水晶振動子用端子において、該水晶振動子用端子は、前記一対のリード部材をお互いに絶縁してほぼ平行に支持するための絶縁部材と、この絶縁部材の周囲を包囲しており、前記封止管の解放端に圧入されて封止管内面と接触する金属製のリング部材で構成され、前記水晶振動子用端子の金属部表面には、少なくとも、CuまたはNiを含む金属化合物からなる下地層と、前記下地層の上に、Snを含みPbを含有しない金属化合物でなる第一中間層と、前記第一中間層の上に、(メッキ浴に有機系添加物を必要としない)Cuを含む金属化合物からなる第二中間層と、前記第二中間層の上に、AuまたはPdNiなどのいずれかの金属化合物でなる表面層を備え、前記下地層と、前記第一中間層と、前記第二中間層と、前記第二中間層の上に設けられる表面層とを合わせた厚みを13.1μm以上27.3μm以下とし、前記第一中間層と、前記第二中間層のSnとCuを熱処理により相互拡散させた水晶振動子用端子とする。
【実施例1】
【0026】
図1は本発明による水晶振動子用端子の金属性リング部材8bの表面構造を示す断面図である。金属製リング部材8bはコバールや42ニッケル等であり、表面には下地層10としてCu又はNiがメッキされている。下地層10の上にはSnを含みPbを含有しない金属化合物(例えば、Sn98%、Cu2%)からなる第一中間層11がメッキされている。中間層11の上にはCuが第二中間層12としてメッキされ、その上に表面層13としてAuがメッキされる。各層の厚さは、下地層3μm、第一中間層5〜15μm、第二中間層5〜10μm、表面層0.1〜0.3μmであり、総厚は13.1〜27.3μmであり、より好ましくは、下地層3μm、第一中間層10〜12μm、第二中間層5〜10μm、表面層0.1〜0.3μmであり、総厚は18.1〜25.3μmである。
【0027】
第一中間層(SnCu)の上に積層される第二中間層であるCuを含む金属化合物(前記例ではCuのみ)をメッキするメッキ浴は有機化合物を含まないものとする。これは、後工程の加熱により第二中間層からガスが発生するのを防止するためである。
【0028】
第二中間層は、加熱により第一中間層から発生するガスで第一中間層が突き破られるのを防止するために、発生するガス圧に耐えられる厚さが必要である。そのため、本発明では第二中間層を5μm以上にしている。
【0029】
メッキ終了後、第一中間層と第二中間層の拡散(本実施例では第一中間層のSnと第二中間層のCu)のため、熱処理をする(例えば、大気中で140℃で20時間)。これによりSnCuにCuが拡散してSn中のCuが増加し、液層温度が260℃から350℃まで上昇する。これにより耐熱性が向上できる。また、第二中間層Cuが存在することにより、第一中間層のSnが表面層に拡散することがなく、表面層の変色を防止できる。従来技術では、表面層のAuメッキの変色を防止するにはメッキ厚が2μm以上必要であったが、本実施例によれば0.3μmでも変色することがなく、コストダウンが可能となった。
【実施例2】
【0030】
図6は本発明による水晶振動子用端子の金属性リング部材8bの表面構造を示す断面図である。金属製リング部材8bはコバールや42ニッケル等であり、表面には下地層10としてCu又はNiがメッキされている。下地層10の上にはSnを含みPbを含有しない金属化合物(例えば、Sn98%、Cu2%)からなる第一中間層11がメッキされている。中間層11の上にはCuが第二中間層12としてメッキされ、その上に表面層14としてPdNiがメッキされる。各層の厚さは、下地層3μm、第一中間層5〜15μm、第二中間層5〜10μm、表面層0.1〜0.3μmであり、総厚は13.1〜27.3μmであり、より好ましくは、下地層3μm、第一中間層10〜12μm、第二中間層5〜10μm、表面層0.1〜0.3μmであり、総厚は18.1〜25.3μmである。
【0031】
実施例1と異なるのは表面層だけである。本発明によると表面層がPdNiでも変色することが防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明による水晶振動子用端子の金属性リング部材の表面構造を示す断面図
【図2】本発明に係わる水晶振動子の透視斜視図
【図3】本発明に係わる水晶振動子用端子の断面図
【図4】水晶振動子用端子の金属性リング部材の表面構造を示す断面図
【図5】下地層と表面層の間にSnを含みPbを含有しない金属化合物が中間層として形成されている水晶振動子用端子の金属性リング部材の表面構造を示す断面図
【図6】本発明による水晶振動子用端子の金属性リング部材の表面構造を示す断面図
【符号の説明】
【0033】
1 水晶振動子
2 封止管
3 水晶片
4 励振電極
5 接続電極
7 リード部材
7a インナーリード
8 水晶振動子用端子
8b 金属製リング部材
8c 絶縁部材
8d ハンダ層
10 下地層
11 第一中間層
12 第二中間層
13 表面層Au
14 表面層PdNi

【特許請求の範囲】
【請求項1】
接続電極を有する水晶片を内部に収容した金属製シリンダー状の封止管
の解放端に圧入固定され、前記水晶片の接続電極と固定される一対のリード部材を支持す
るための水晶振動子用端子において、
該水晶振動子用端子は、前記一対のリード部材をお互いに絶縁してほぼ平行に支持する
ための絶縁部材と、この絶縁部材の周囲を包囲しており、前記封止管の解放端に圧入され
て封止管内面と接触する金属製のリング部材で構成され、前記水晶振動子用端子の金属部
表面には、少なくともCuまたはNiを含む金属化合物からなる下地層と、前記下地層の上に、Snを含みPbを含有しない金属化合物でなる第一中間層と、該第一中間層の上に、メッキ浴に有機系添加物を含まないCuを含む金属化合物からなる第二中間層と、前記第二中間層の上に、Au又はPdNiでなる表面層を備えることを特徴とする水晶振動子用端子。
【請求項2】
前記下地層と、前記第一中間層と、前記第二中間層と、前記第二中間層の上に設けられる表面層とを合わせた厚みが13.1μm以上27.3μm以下であることを特徴とする請求項1記載の水晶振動子用端子。
【請求項3】
前記第一中間層と、前記第二中間層のSnとCuを熱処理により相互拡散させることを特徴とする請求項1または2記載の水晶振動子用端子。
【請求項4】
内部に水晶片を収容した金属製シリンダー状の封止管の解放端に圧入固定され、前記水晶片の接続電極と固定される一対のリード部材を支持するための水晶振動子用端子の製造方法において、少なくとも、
前記一対のリード部材をお互いに絶縁してほぼ平行に金属性リング部材に固定して水晶振動子用端子を形成する工程と、前記水晶振動子用端子の金属部表面にCuまたはNiを含む金属化合物からなる下地層を形成する第一メッキ工程と、前記下地層の上にSnを含み、Pbを含有しない金属化合物でなる第一中間層を形成する第二メッキ工程と、前記第一中間層の上にメッキ浴に有機系添加物を含まないCuを含む金属化合物からなる第二中間層を形成する第3メッキ工程と、前記第二中間層の上に、AuまたはPdNiでなる表面層を形成する第4メッキ工程を具備することを特徴とする水晶振動子用端子の製造方法。
【請求項5】
前記第4メッキ工程後熱処理を行ないSnとCuを相互拡散させる工程を具備することを特徴とする請求項4記載の水晶振動子用端子の製造方法。
【請求項6】
接続電極を有する水晶片を内部に収容した金属製シリンダー状の封止管の解放端に圧入固定され、前記水晶片の接続電極と固定される一対のリード部材を支持するための水晶振動子用端子を含んでおり、該水晶振動子用端子は、前記一対のリード部材をお互いに絶縁してほぼ平行に支持するための絶縁部材と、この絶縁部材の周囲を包囲し前記封止管の解放端に圧入されて封止管内面と接触する金属製のリング部材で構成され、前記水晶振動子用端子の金属部表面には、少なくとも、CuまたはNiを含む金属化合物からなる下地層と、前記下地層の上に、Snを含みPbを含有しない金属化合物でなる第一中間層と、前記第一中間層の上に、メッキ浴に有機系添加物を含まないCuを含む金属化合物からなる第二中間層と、前記第二中間層の上に、AuまたはPdNiでなる表面層を備え、少なくとも、前記水晶振動子用端子、水晶片、金属製シリンダー状封止管で構成されることを特徴とする水晶振動子。
【請求項7】
前記水晶振動子用端子が請求項2または3記載の水晶振動子用端子であることを特徴とする請求項6記載の水晶振動子。
【請求項8】
前記水晶振動子用端子が請求項4または5記載の製造方法により製造された水晶振動子用端子であることを特徴とする請求項6記載の水晶振動子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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